人民新報 ・ 第1238号<統合331号>(2008年2月15日)
目次
● 日の丸・君が代強制を跳ね除け闘おう 根津公子さん、河原井純子さんの解雇阻止!
● 多発する米兵犯罪 米軍基地撤去・安保条約破棄
● 沖縄・高江 米軍ヘリパッド建設阻止!
● 許すな!戦争国家の「歴史偽装」 2・11
反「紀元節」行動
● 全動労判決を受け団結して国鉄闘争勝利へ
● ブッシュ外交の失敗と新たな米外交政策の模索
● 希望の持てる働き方をめざして労働者派遣法の抜本改正を
● 図書紹介 / 隠して核武装する日本
● KODAMA / 安倍川労組支援共闘会議を結成!
● 複眼単眼 / 福田康夫と自衛隊海外派兵恒久法
日の丸・君が代強制を跳ね除け闘おう
根津公子さん、河原井純子さんの解雇阻止!
日米軍事結託強化・在日米軍再編・自衛隊の海外派兵強行などは、アメリカの世界支配のための戦争に日本を強固に組み込む体制作るものである。そして教育現場における「日の丸・君が代」強制は、戦争政策に従順に従う「小国民」を作り出すためのものである。
石原慎太郎東京都知事は、好戦派右翼として、全国に先駆けて、教育現場に「日の丸・君が代」強制を始めた。二〇〇三年一〇月二三日、東京都教育委員会(教育長横山洋吉)は、都立高等学校長と都立盲・ろう・養護学校長にあてて「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」をだした。「10・23通達」である。その別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」で、「@式次第には、『国歌斉唱』と記載する。A
国歌斉唱に当たっては、式典の司会者が、『国歌斉唱』と発声し、起立を促す。B式典会場において、教職員は、会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する。C国歌斉唱は、ピアノ伴奏等により行う。」などとされた。
こうした攻撃に対して、戦争への道は絶対に許さないと良心的教職員の不起立の闘いがはじまった。これにたいして都教委は不当な処分を行ってきた。その上「再発防止研修」などという名の転向強要が行われてきた。
10・23通達以降現在までの被処分者累計は、都立高校(三三一名)、障がい児学校(三二名)、小・中学校(二五名)で、総計三八八名にも上る。そのほかにも、嘱託再任用取り消し、「再発防止研修」未受講による処分、「再発防止研修」時のゼッケン等着用による処分その他文書訓告、厳重注意など多数である。
こうした処分が累積された結果、昨二〇〇七春には、根津公子さん(都立南大沢養護学校)に停職六ヵ月、河原井純子さん(八王子東養護学校)に停職三ヵ月という処分が出された。この年三月の卒業式でも、根津さん、河原井さんは不起立の闘いを決意している。
しかし都教委は「停職は六ヶ月まで」としていることから、根津さんと、そして高等部と小中学部で卒業式が分かれており、双方で処分される可能性がある河原井さんの免職処分が危惧されている。 いま根津さんには、作業着として着ていたトレーナー(「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」と背中にプリント)を理由にさらなる処分攻撃がかけられようとしている。日の丸・君が代闘争をいっそう大きく広げて、根津さん、河原井さんの免職処分を断固として阻止していこう。
二月一〇日には中野ゼロホールで「『日の丸・君が代』強制反対!処分撤回!総決起集会」(主催・「都教委包囲首都圏ネットワーク」)が開かれた。
集会では、沖縄戦教科書問題や勝利した争議についての発言、二月七日に出た東京都「君が代」嘱託教職員再雇用拒否事件東京地裁判決勝訴の報告につづいて、卒・入学式に向けた闘いの決意表明が行われた。
「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会の近藤徹事務局長は今年の卒入学式闘争について提案。
河原井さんは、決して諦めずに、楽しく闘っていこうと述べた。
根津さんは、トレーナー着用での校長・教育委員会の攻撃について報告し、「日の丸・君が代」強制教育で子どもたちを決して「小国民」にしてはならないと決意を表明した。
根津公子さんの解雇を阻止する特別決議
東京都教育委員会が二〇〇三年に「一〇・二三」通達を出し、職務命令と処分をもって「日の丸・君が代」を強制してから早くも五度目の卒業式を迎えようとしています。
都教委は卒業式の主人公は児童・生徒という教育の基本をふみにじり、卒業式を「儀式」に変え、ひたすら「君が代」不起立者・ピアノ伴奏拒否者をゼロにすることをめざしてきました。しかし、不起立者、不伴奏者を根絶やしにすることなどできません。教職員の闘いは継続され、これまでに被処分者は都立学校、義務制の小中学校で、のべ三八八人にも拡大しています。東京都の教職員の抵抗運動は、東京及び日本中の教育労働者・他の産業の労働者や市民に支持され、新たな抵抗を生みだし、また、海を越えてアメリカ、フランスの教職員からも支持の声があがっでいます。
こうした中で、あくまでも「君が代」不起立を貫いている根津さん(南大沢学園養護学校教員)に対して、都教委は「累積加重処分」ですでに停職六ヶ月の処分を行い、今度の卒業式での不起立に対して、「解雇」しようとしています。これは誰が見ても理不尽です。それゆえ、現在「君が代」解雇反対の声が続々と寄せられています。そのため、都教委は二月一日に、根津さんが学校で着ていたトレーナーの「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」の文言が「職務専念義務
違反」「職務命令違反」だとして事情聴取を行い、卒業式の前に、新たな処分を、みせしめ処分・解雇をもくろんでいます。いかなる処分・解雇も許さず、根津さんとともに不起立で闘い、あるいは根津さんを包んで闘いましよう。闘い続ければ展望はひらけます。
二月七日、都立高校の教員たちの「嘱託不採用撤回裁判」の判決で、東京地裁・中西裁判長は、「『君が代』不起立による処分を過大視した嘱託不採用は、客観的合理性や社会的相当性を著しく欠くもので、その裁量を逸脱、濫用したものである。よって、本件不合格は、都教委による不法行為であると認められるから、原告の損害を賠償すべきである。」としました。
一昨年の予防訴訟判決で、東京地裁・難波裁判長は「違憲違法の一〇・二三通達と職務命令にもとづく、いかなる処分もしてはならない」と断じました。
にもかかわらず、一〇・二三通達以降、石原・都教委は愛国心教育をいっそう強め、貧困と格差拡大を助長する差別・選別教育を行い、職員会議を校長方針の伝達の場に変え、人事考課制度・評価制度による職場の管理支配と教育現場の破壊に突き進んでいます。
しかし、現場教職員の日常的なねばり強い闘い、根津公子さんをはじめ、多くの教職員の「君が代」不起立、ピアノ不伴奏の闘いが「一〇・二三通達」強制をうち破り、貧困と格差社会の矛盾を「戦争による解決」に向かわせない力となり、「子どもたちを戦場に送らない」という原点を支えて続けているのです。
私たちは「東京の教育」を取りもどすためにも、根津さんへの処分を許さず、教職員、保護者、子どもたち、地域の労働者・市民は団結して闘いましよう。
そして同時に都教委に対して、以下の点を申し入れます。
−、根津公子さんの解雇を絶対にしないこと
以上、決議します。
二〇〇八年二月一〇日
「日の丸・君が代」強制反対! 処分撤回! 2・10卒・入学式総決起集会参加者一同
多発する米兵犯罪 米軍基地撤去・安保条約破棄
二月一一日、沖縄署は、在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹タイロン・ハドナット容疑者が沖縄本島中部の女子中学生を乗用車内で暴行したとして、強姦の容疑で逮捕した。
仲井真弘多知事は「決して許すことができない」と非難し、東門美津子沖縄市長と野国昌春北谷町長は米海兵隊外交政策部に抗議を行った。
沖縄県内では一九九五年に海兵隊員三人による暴行事件が起き、沖縄県民をはじめ多くの人びとの怒りを巻き起こし、それを恐れて米軍は陳謝し、綱紀粛正と再発防止を確約したのであった。
仲井真知事は「事件が起こるたびに米軍に抜本的な対応を迫っているが、またもや事件が生じたことは極めて遺憾。被害者やご家族へも配慮し、適切に対応したい」と述べたが、二〇〇六年一月横須賀での女性殺人事件をはじめ米兵の犯罪はあとを絶たない。
「沖縄タイムス」二月一二日夕刊は「安保の影 犠牲また」と題してこの事件を報じている。「『助けて』という少女の叫びは届かなかった。十日発生した米海兵隊員による暴行事件。訓練された兵士が、また牙をむいた。北中城村の容疑者宅周辺では、三十八歳の容疑者が甘い言葉を操り、執拗に少女に追いすがる様子が目撃されていた。おびえる子どもたち。大人たちは、痛憤に声を震わせた。少女一人の尊厳も守れない安全保障とは何か。繰り返されてしまった凶悪事件は、基地と隣り合わせで生きる意味をあらためて突き付けた」。
記事には、基地・軍隊を許さない女たちの会共同代表で強姦救援センター・沖縄(レイコ)代表の高里鈴代さんの発言が掲載されている。「安心できるはずの場所から言葉巧みに誘い出されて、少女は被害に遭った。すごく悪質で絶対に許されない。犯人が巧みなのであって、彼女に一切落ち度はない」「若い兵士の夜間外出制限が犯罪防止策として出るが、この兵士は三十八歳で、基地の外に住んでおり、防止策が全部ぶっ飛ぶ出来事。じゃあ、どうやって米兵の犯罪を防ぐのか。米軍は事件のたびに『綱紀粛正』と言い続けているが、事件はずっと続いている。しかも性犯罪で表に出るのは、実際にあった被害の一部でしかない」。
日米安保体制が問われているのだ。事件の根源である米軍基地撤去、日米軍事同盟廃棄をめざして闘おう。
沖縄・高江 米軍ヘリパッド建設阻止!
二月七日、首相官邸で、米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第六回会合が開かれた。政府からは、町村信孝官房長官、石破茂防衛相、岸田文雄沖縄担当相、沖縄からは仲井真弘多沖縄県知事、島袋吉和名護市長、東肇宜野座村長らが参加した。仲井真知事や島袋市長は、普天間飛行場代替施設の位置を可能な限り沖合に移動することを訴えたのに対して、石破防衛相は、「現在の政府案(V字形滑走路案)は生活環境、自然環境、実行可能性を考慮し、地元の要請を踏まえて最も適切な形として米側と合意した。今後アセス手続きを進める中で客観的なデータを収集、評価した上で誠意を持って対応したい。再編交付金の指定については、これまでの他の市町村の実例も踏まえ検討する」、また町村官房長官は、「沖合へ、という話もあるので、しっかり念頭において」と述べた。政府部内で事前に配られていた発言要領では、「地元の要望を念頭に置いて、できるだけ早い時期に決着を図りたい」と書かれていたという。沖縄からの反発にその場しのぎの官房長官発言とも見られるが、アメリカ政府からの強い要請になんとか早期に沖縄の了承を取り付けたい政府のあせりのあらわれでもある。
だが、沖縄の世論を代表しているのは県知事や名護市長のような条件受け入れ派ではない。普天間基地即時撤去・県内移設反対、基地の縮小・撤去を求める多くの県民の声が存在しているのであり、在日米軍再編・基地強化反対の運動を一段と強めていかなければならない。
日米政府は、「日米特別合同委員会(SACO)最終報告」で米軍北部訓練場の一部返還に伴い新たにヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)を新設するとしている。建設を強行しようとしている沖縄県国頭郡東村にはすでに一五のヘリパッドがあり、新たに高江区を中心に六ヶ所それも民家からわずか四〇〇メートルという距離で建設されようとしている。そこには、MV22オスプレイ新型機が配備される。この機種は墜落事故が多発するの有名である。
いま、高江では機材搬入車阻止などの闘いが連日続けられている。
この七日には、沖縄から上京団が防衛省などに工事中止の申し入れなどの行動を展開した。
ヘリパッドいらない住民の会(代表・安次嶺現達、伊佐真次、宮城勝己)は、石破茂防衛相に「沖縄防衛局が進める沖縄県東村高江区周辺における米軍ヘリパッド建設の即時中止及び北部訓練場の将来的全面返還を求める要請」をおこなった。
「…現在、沖縄県東村高江区周辺に二〇〇七年七月から、名護市辺野古への米軍新基地建設と連動して、ヘリパッドの建設が着手されています。しかし地元住民は二十四時間体制で座り込みを続け、建設の進行を止めています。豊かな自然に囲まれた高江区は戦争のできる国に向かう日本の最前線となってしまいました。このことは沖縄だけの問題ではありません。いずれ日本全国各地で起こりうることでもあります。
一、沖縄防衛局が進めている沖縄県東村高江区周辺における六ヶ所のヘリパッド建設を即時中止すること。
二、米軍北部訓練塀を将来的に全面返還すること。」
二月七日には、全水道会館で「ヘリパッドいらない東京集会」(「ヘリパッドいらない」住民の会と沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの共催)が開かれた。
集会では、沖縄から比嘉真人さん、安次嶺現達さん、森岡浩二さん、本末貴子さんが行動の報告を行った。また、社民党の山内徳信参議院議員が発言し、共産党の赤嶺政賢衆議院議員からのメッセージが読み上げられた。
許すな!戦争国家の「歴史偽装」 2・11 反「紀元節」行動
二二月一一日、天皇制と戦争・戦後責任、歴史認識とナショナリズム、靖国と「慰霊」をめぐる反天皇制運動の日常化・大衆化をめざして「許すな!戦争国家の『歴史偽装』─2・11反『紀元節』行動─」が闘われた。
全水道会館では集会が行われ、基調報告で、「日本政府による戦争の歴史に対するきわめて不誠実な対応や戦争責任をなきものとする居直りの姿勢は、国内外で大きな問題を作り続けている。この政府の歴史認識問題は、極右の安倍政権から福田政権に、移ったところで、良い方向に軌道修正されたというわけではない。福田首相は、被害者や運動側の声に応えるかのような素振りをみせているが、実際は事態を沈静化させるための政治的な動きとしてある。…なによりも、日本がいまのままの天皇制であり続ける以上、この歴史認識問題で日本政府が従来のスタンスを変えること自体が難しいことであろう。…天皇制の強化を許さず、戦争・戦後責任を問い、天皇制国家の『歴史偽装』を許さない立場から、反天皇制運動の強化をめざし、反戦・反派兵・反改憲・反サミットなどの行動と連帯し、戦争をする国づくりにプレーキをかけていく運動のうねりをつくりだしていきたいと考える。今年も、天皇制の『三大行事』として、全国植樹祭(六月・秋田)、全国豊かな海づくり大会(九月・新潟)、国民体育大会(同・大分)が予定されている。また、皇太子のブラジル訪問(六月)も予定されている。また、洞爺湖サミットを前に、サミット首脳を招いての『宮中晩餐会』など『皇室外交』の大きな舞台も準備されるであろう。私たちは、これらの『非政治』の顔をした天皇イベントに対する批判も強めていきたい。そして、多くの人たちとともに『戦争も天皇制もいらない』の声をあげていこう」と提起された。
つづいて、元教員の北村小夜さん。
戦中教育の内容は国語でも歴史でも天皇制・神話と結び付けられていたこと、とくに唱歌では「天長節」「紀元節」「一月一日」「明治節」などの歌詞・メロディーガ頭の中に注ぎ込まれ、知らず知らずのうちについ口すさんでしまうところまで刷り込まれている。教科書で沖縄戦「集団自決」での日本軍の関与の削除問題が起こったが、イマ各地で検定も何もない副読本が配布されているが、その内容もまた問題なのである。
東南アジア史研究者の中原道子さんは、「日本軍性奴隷制問題は世界へ」と題して、アメリカをはじめオランダ、カナダ、欧州議会などで日本政府に歴史責任を公式に認め謝罪を求める決議が続いていること、それに対し日本政府はかたくなに拒否しているが、日本政府ハ追い詰められていることなどについて講演した。
集会のあとは、右翼の妨害と攻撃をはねのけて、紀元節反対をアピールしてデモを行った。
全動労判決を受け団結して国鉄闘争勝利へ
一月二三日、東京地裁(佐村浩之裁判長)は全動労争議団原告(五十八名)の損害賠償請求訴訟で判決を出した。その内容は、JR採用候補者名簿作成について、国鉄には「中立保持義務」に反する不当労働行為のあったことを認め、被告である独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(国鉄、清算事業団、鉄建公団の承継組織)は原告一人当たり五〇〇万円の慰謝料とその一割にあたる五〇万円の弁護士費用と、これに対する一九八七年四月一日以降年五%の遅延損害金の支払い(合計して原告一人当たり一一〇〇万円)を命ずるものであった。
佐村判決には正反両面がある。その評価すべき点は、所属組合によっておこったJR採用差別は、国鉄には使用者として「中立保持義務」があったにもかかわらず、それに違反したことは、不当労働行為に当たるとしたこと、消滅時効は〇三年一二月の最高裁判決の時点から進行するなどとの判断である。これは今後の闘いに生かして行くべき点である。 だが、二〇〇五年九月の鉄建公団訴訟東京地裁(難波孝一裁判長)判決が認めた原告らのJR採用への「期待権」が、佐村判決では消えている。
この件に関して佐村判決は、「改革法二三条は、国鉄職員を新たに、承継法人において採用するとの方式を採用し、国鉄職員が直ちに承継法人の社員に移行する方式を取っていない。また、国鉄の分割・民営化計画は、そもそもが、多数の国鉄職員に転職を迫ることを想定した枠組みのものであったことを勘案すると、国鉄職員は、承継法人、すなわちJR北海道等によって採用されることそれ自体につき、何らかの権利や直接の法的利益を有していたと言うことは出来ない」としている。組合差別を受け、公平な取り扱いを受けるべき権利は侵害されことは認めるが(この範囲内での慰謝料ということだ)、しかし「国鉄職員は、承継法人、すなわちJR北海道等によって採用されることそれ自体につき、何らかの権利や直接の法的利益を有していたと言うことは出来ない」として、国鉄とJRをまったく別なものだとして、「期待権」を完全に否定したのである。断じて認められない判断である。
これは、鉄建公団訴訟の控訴審(東京高裁)での闘いをはじめ国鉄闘争全体に重大な影響をもたらすものである。控訴審闘争などでは、難波判決の「期待権」を拡大して、国労闘争団全国連絡会議の「解決にあたっての具体的要求」(二〇〇七年七月)をかちとる方向で闘われて来た。
国鉄闘争の獲得目標として今一度確認しておくことが必要である。「具体的要求」では、一、雇用(@鉄道運輸支援機構、JR各社及び関連会社もしくはJR各社に準ずる条件の雇用を確保すること。A闘争団の運営する事業体及び新規起業に対し助成を行うこと。B雇用の確保にあたっては、高齢者、病弱者に対する配慮を行うこと。)、二、年金(@一九九〇年四月以降も国鉄清算事業団職員同様の年金加入条件とし、その受給権[被保険者資格期間]を回復すること。A年金受給権[被保険者資格期間]の回復が困難な場合は、以下の取り扱いを行うこと。イ、現行年金受給者に対し、同年齢のJR退職者の平均受給額との差額を支払うこと。ロ、今後年金を受けるものに対しては、JR社員の退職後の受給額との差が生まれないよう、差額分を支払うこと。)、三、解決金(解決金として以下のとおり支払うこと。@JR不採用により受けた損害金を支払うこと。A精神的苫痛に対する慰謝科を支払うこと。)
こうした原則を堅持し、また今回の佐村判決の危険な側面をしっかりと見つめながら、闘うのでなければならない。今回の判決の有利な側面のみを強調して、政治解決の好機とだけ捉えるのは、非常に危険性を持つものだ。判決の全面肯定も全面否定もともに誤っているのである。
9・15判決にも正反の両面があったが、その有利な点を生かして、闘いを前進させてきたが今回も同様であろう。
闘いの旗を堅持し、具体的な目標を獲得するために、一〇四七名の団結を固め、支援の輪を広げて勝利的決着を実現しよう。
ブッシュ外交の失敗と新たな米外交政策の模索
ブッシュは「落第」点
秋の大統領選を巡ってアメリカでは予備選挙での候補者選びに沸いている。誰が次期大統領になるかは全世界に重大な影響をもたらす。ブッシュのイラク・アフガニスタンをはじめとする対テロ戦争の破綻は誰の目にも明らかだが、今後アメリカの外交政策はどうなっていくのか、世界の注目が集まっている。
前号では、ブッシュ・ネオコン外交が、中東に足を引きずりこまれ身動き困難な情況の中で、戦略的な重点であるユーラシアでアメリカの覇権に対抗する新たな勢力の伸張を許してしまっていることに対するブレジンスキーの批判を見てきた。
では、ブレジンスキーの構想するアメリカ外交とはどんなものなのかを見ていこう。
「アメリカのリーデーシップはひどいの一言に尽きる。…グローバル・リーダーの自己戴冠式から十五年余が経ったいま、アメリカ合衆国は政治的な敵意に満ちた世界の中で、恐怖と孤立感にさいなまれる民主主義政体となりつつあるのだ」として「二○○六年現在」の「アメリカ合衆国に不利な地政学上の主要トレンド」として、つぎの項目をあげた。
…イスラム世界全体で高まる西側諸国への敵愾心、一触即発の中東、ペルシャ湾地域におけるイランの優位、核保有国パキスタンの不安定性、ヨーロッパの離反、不満をつのらせるロシア、東アジア共同体の設立をもくろむ中国、アジアで孤立を深める日本、ラテンアメリカに渦まくポピュリズム的反米主義、破綻する核不拡散体制。…
いずれも今年二〇〇八年に入ってからもアメリカにとって憂慮すべき事態がいっそう進行しているのである。
こうした危機的事態をもたらしたとして三人の大統領の通信簿をのせている(図参照)。その中でも現ブッシュの総合評価は「落第」となっている。
この「三代目は、自らチャンスをピンチに変え、自業自得で負った傷を悪化させながら、アメリカにたいする敵意を世界じゅうで燃えあがらせた」と糾弾しているのである。
ブレジンスキーはアメリカ外交には二つの重大な失敗があったという。第一に挙げるのは「共通の世界戦略に集中してとりくむ大西洋共同体を構築できなかったこと」である。二つ目が、「イスラエル・パレスチナ問題にたいして必要な行動をとらなかったこと」だ。
イスラエル・パレスチナ問題でのアメリカの失敗は周知のことなので大西洋同盟問題についてみていく。
「アメリカとヨーロッパが力を合わせれば、世界を良い方向へ動かすことが可能であった。逆に、米欧のあいだが疎遠になれば、米欧のあいだに反目が生まれれば、世界が袋小路へ入り込み、世界の混迷が深まるのは確実であった。世界唯一の超大国の地位を享受した十五年間、遺憾ながらアメリカはEUとの提携強化に本腰を入れてこなかった。」
だから、アメリカはまず第一に米欧関係の修復・強化に全力をあげるべきだ、とする。これは、政治・軍事関係だけではない。
「もしも、大西洋共同体内で協議による意思決定の習慣ができあがり、相互信頼関係を強化する試みが継続されていれば、グローバリゼーションの基本ルールをめぐる根深い南北対立にも進展があっただろう。WTOのドーハ・ラウンド交渉が行きづまった主因は、米欧が互いの立場を頑として譲らなかったこと、日本(農業補助金)や中国(通貨切り下げと製造品輸出)など、自由化によって短期的な不利益をこうむる国、も、この状況下で国益の確保に走った。もしも、米欧がもっと柔軟な姿勢をみせ、公正な貿易交渉の手本を示していれば、日本と中国は追随せざるをえなかっただろう」とくやんでいる。
日本をこき使え
ブレジンスキーの構想では日本は重要な役割を担わされている。
「大西洋共同体の安全保障にかんしては、もうひとつ大きな『たられば』が存在する。もしも、大西洋共同体の戦略にもっと直接的なかたちで日本が組み込まれていたら、増大しつづける中国の脅威に対抗すべく日本の軍事力を向上させる、という考え方に日米両国が傾く可能性は低くなっていただろう。そして、日米軍事同盟の強化がなければ、中国の指導層も安全保障面でロシアとの関係を強化しようとは思わなかっただろう」。
NATOと日本が連携を強めるというこの構想は、西からのNATO拡大で復活し強大化しつつあるロシアを押さえつけることと連動して、ユーラシアでの新興覇権の勢力拡大を阻止しようという伝統的な地政学の手法である。
アメリカ覇権の危機
ブレジンスキーの悪夢はユーラシアでのはっきりした反米勢力の強大化である。「将来的には、東アジアの中国と、ユーラシアのインドおよびロシアの主導により、もっとあからさまな反米同盟が出現する可能性もある。ここにはイランが加わってもおかしくない。ありそうもない話だと感じる人のために、興味深い事実を披露しておこう。二〇〇六年夏、史上初となる中国・インド・ロシアの三国首脳会談がサンクトペテルブルクで開催されたあと、中国の外交専門家たちは郷愁を込めて次のように指摘した。かつてレーニンはこの三国による反『西』同盟を提唱した。現在、中印ロが手を組めば、世界の人口の四四パーセント、面積の四四パーセント、GNPの二二パーセントを押さえることとなる、と」。
これに反米イスラム勢力が連合し、また「活力みなぎる東アジア共同体と特別な関係を構築しておくことは、長い目で見ればEUの利益につながる」としてヨーロッパもそちらにひきつけられる可能性も大きいのである。
その一方で、孤立するアメリカは、貿易赤字、財政赤字で負債がふくれあがっていく。
ブレジンスキーの考えるアメリカの将来は極めて暗い。たとえ、かれのアメリカ覇権再生策を次期大統領が実行することになってもこの趨勢はかわらないだろう。
希望の持てる働き方をめざして労働者派遣法の抜本改正を
昨年一二月二五日、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会の「労働者派遣制度の検討状況(中間報告)(案)」が出された。それは、諸悪の根源とも呼ばれる労働者派遣法の改正について、「労使それぞれ根本的な意見の相違があり,隔たりが大きい状況にある」「このような意見の相違は,労働者派遣が原則自由であるべきと考えるのか,本来は限定的なものであると考えるのかという基本的考え方の違いに起因するものであり,労働者派遣制度の根本的な検討を行うことなく,個別の制度の仕組みの議論を続けても,有意義な結論に到達することは困難であると考える」として「現時点では、登録型派遣の考え方等労働者派遣制度の在り方の根幹に関わる問題については、厚生労働省に学識者からなる研究会を設け」るとした。事実上、改正論議を中断した。だが、日雇い派遣をはじめとして派遣労働者の実情はきわめて厳しいものがあり、早期の改正、抜本的な改正が求められているのである。
一月三〇日、参院議員会館で「希望の持てる働き方を今こそ!格差是正と派遣法政正を実現する院内集会」(主催・格差是正と派遣法改正を実現する連絡会)が開かれた。
安倍誠全国ユニオン事務局長が開会挨拶。
現在の労働者派遣法は、派遣業法であり商売のための法律であり、その中では労働者は「モノ」とみなされている。戦後の労働法制の基礎は、八時間労働制と中間搾取の排除だった。派遣労働では中間搾取がまかり通っている。現代の貧困問題のおおきな要因はこうした派遣労働である。この弊害についてはマスコミも取り上げるようになった。多くの力を合流させて派遣法の改正を実現しよう。
つづいて、関根秀一郎派遣ユニオン書記長が、「現局面における問題点と私たちの見解」と題して主催者報告を行った。
いま大問題になっている日雇い派遣の問題点は、ピンはねによって三〜五割もの賃金ダウンさせられるよいう低賃金、「明日仕事はない」の一言であぶれるという不安定雇用、そして危険を伴う作業に安全対策さえ講じられることなく慣れない仕事をさせられて労働災害が多発するということである。厚生労働省は、「日雇派遣労働者の雇用の安定等を図るために派還元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針案要綱」などを出しているが有まったく無内容である。また、現行の労働者派遣法の規制では、危険な港湾業務などへの違法派遣は防げないのであり、派遣法の早期の改正が求められる。私たちは、「派遣制度をどう見直すべきか」(別掲)を提起している。
小島周一労働弁護団幹事長は、日本労働弁護団の提言を述べた。 労働界からは全労連の伊藤圭一政策局長、全労協の中岡基明事務局長が発言した。連合の代表は欠席したが、連合方針が紹介された。
毛利勝利中央大学教授が「派遣労働を承認する社会的・法的意味の再認識を」と題して研究者からの提言を行った。
派遣労働ネットワーク代表の中野麻美弁護士のコーディネートで各党・参加国会議員からの挨拶がおこなわれた。民主党・細川律夫衆議院議員、共産党・小池晃参議院議員、社民党・近藤正道参議院議員、国民新党・亀井亜紀子参議院議員が発言した。
最後に、小谷野毅・全日本建設運輸連帯労組書記長が閉会の挨拶をおこなった。
派遣制度をどう見直すべきか
@派遣対象業務の専門業務への限定
一九九九年派遣法改正時の対象業務の原則自由化が「日雇い派遣」を拡大させ、雇用の著しい劣化を招いたことに鑑み、対象業務を一九九九年派遣法改正前に認めていた業務に限定すること。
なお、対象業務となる政令指定業務の範囲(ポジティブリスト)については、高度な専門性を必要とする業務という観点から厳格に限定すること。
A常用型派遣を原則とする労働者派遣制度への転換
専門業務の派遣も「細切れ契約」(短期契約の反復更新)の横行により、ますます契約期間が短期化し、雇用を不安定化させていることに鑑み、労働者派遣はすべて「常用型派遣」とし、「登録型派遣」を禁止すること。
なお、現在、登録型派遣で長期間(三年以上)働いている労働者については、常用型派遣に転換すること。
Bマージン率の上限規制
多額のマージン取得(「ピンはね」)が労働者の賃金水準を著しく低下させていることに鑑み、有料職業紹介制度における紹介手数料の上限規制(一〇・五%)と同様に、労働者派遣制度においてもマージン率の上限規制(例えば「二五%以下」)を設けること。
※ここでいう[マージン]とは、(派遣料金―賃金)を指します。マージン率=(派遣料金―賃金)/派遣料金
図書紹介
隠して核武装する日本
槌田敦(他)著 核開発に反対する会 編 影書房 1,500円+税
極右勢力が中枢を形成した改憲安倍内閣は、同時に核武装(核兵器保有・使用)への志向を強くもった政権でもあった。安倍の無様な自滅によって、福田「低姿勢」内閣が登場となったはいえ、日本支配層の一部にある根強い核武装への野望が消え去ったりしたわけではない。
『隠して核武装する日本』は、核武装化への危険な動きを暴露し、警鐘を打ち鳴らすものだ。
目次は、「核武装」推進議員が増加、@核武装を準備する日本―このままでは不幸な未来が予想される、A戦後日本の核政策史、B「核武装論議の解禁」が私たちに問うもの、C「核」攻撃とミサイル防衛、D「平和」のための核兵器、E東海村臨界事故と核開発―偽装された事故原因と責任を明らかにする、F日本核武装の疑惑を追う市民の活動―あとがきにかえて、となっている。
左の表「核武装の検討を容認する国会議員リスト」(毎日新聞のアンケートによる)を見ればわかるように、自民党・民主党のかなりの国会議員の名前が挙がっている。
槌田敦さんは、第一章で、現在進行しているのはアメリカのための日本核武装だとしてつぎのように書いている。「一九九〇年代に入って、…中国の核が脅威になってきた。そしてインド、パキスタンも核武装路線に参入した。そのようなことになると、今度は日本に対するアメリカの『核の傘』が問題になる。日本を守るためにアメリカが核を使うと、今度はアメリカが核攻撃される。そこで、アメリカは核の傘を外し、日本に核武装させ、自衛させたほうがアメリカにとって安全ということになる。この動きはすでに始まっている。親米・国粋主義者の中西輝政京大教授はアメリカに代わって日本が核武装すべきと提案している。」
そして、「補論2 中西輝政の核武装論―日本の『右翼』はどのような軍国日本を考えているのか」でとくに中西の論を取り上げている。中西の主張は核武装論者の代表的なものであり、それはアメリカのために日本を盾とするものだ。
中西は「北朝鮮の核が既定路線となることで、最大の脅威にさらされるのは、日本ということになる」「日本は核武装すべき」と主張している(以下、槌田さんの引用には掲載雑誌が記されているが略)。
「中西氏は言う。『北朝鮮は、二〇〇六年七月五日、テポドン2を含む七基のミサイルを日本海に向けて発射した。テポドン2は射程距離が長く、アラスカからさらにはアメリカ西海岸にまで到達可能とされる。そうなったときに、アメリカが果たして、自国民を犠牲にしてまで、日本人を守ってくれるだろうか』。つまり、アメリカによる核の傘の信頼性への疑問から彼の議論は始まる。そして、在日アメリカ海兵隊が、沖縄からグアムヘ移転することを例にして、『アメリカは、日本の核戦争に巻き込まれる危険を感じ、逃げ腰になり始めている』と言う。どちらもそのとおりである。そこで、『ならば日本は、米国が逃げられないように縛りつける努力をしなければならない。現時点で、日本が北朝鮮の核に対抗し得る唯一の方法は、アメリカの核を在日アメリカ軍に配備することである』と言う。しかし、日本の核戦争から逃げたがっているアメリカがそのようなことをする訳がない。これについては、『アメリカがそれを拒むならば、(中略)日米同盟の範囲内で、核保有を検討する選択肢しかない』と短絡することになる。これはきわめて問題が大きい。この方法を使えば、アメリカは日本の核の使用を支配できる。しかも核を使ったことの責任を日本が負うことになるので、アメリカ本土への攻撃を免れることができる。要するに、これによってアメリカは、アメリカのために、日本に核武装をさせることができるのである。このように、中西氏は、日本の運命をアメリカに売ることを提案している。このような行為をする者を昔は『売国奴』と言った。日本の右翼もだらしなくなったものだ。」
これが右翼の核武装論の方向であるが、では、日本にその条件はあるのか。中西は「ある」という。まず、発電用の核燃料を核弾頭用に高濃縮しなければならなが、それは高速炉を使えば可能で、「もんじゅ」(福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉)は事故を起こし現在は停止中だが今年二〇〇八年に運転再開強行の予定である。「しかし、核弾頭が製造できたとしても、それだけでは核武装とは言えないとし、ミサイル、潜水艦、サイロなど実戦配備する予算などが必要だという。その通りである。これについては『最低でも一〇年はかかる』としている。したがって、もんじゅが運転を再開して軍用プルトニウムの供給が開始されれば、技術的には一〇年で日本の核武装は完成する。日本の核武装の準備はそこまできているのである」。
以上が、一〇年以内に核武装するという中西輝政の核武装論のスケジュールある。
この核武装した日本をアメリカは縛り付ける体制も強化しようとしていると槌田さんは強調している。
「しかし、これ(日本に核武装を許すこと)には裏があることについては隠している。たとえば、アメリカは、極東軍の司令部をワシントン州から日本の神奈川県座間に二〇〇八年九月までに移転する計画であるが、これは日本の裏切りを監視する措置であることについて、何も述べていない」。
中西らの核武装論は、日本の右翼勢力による、日本とアジアの民衆を犠牲にした、アメリカ(そしてそれに従属する日本支配層)のためのものなのである。
槌田さんは、日米同盟の強化と日本の核武装は、アジアとくに日中間の緊張激化・戦争をもたらすものとなるとして、「これを防ぐ唯一の方法は、中西氏の結論とは違って、日本が核兵器を持たないことである」と日本核武装の阻止の大衆運動を呼びかけている。
KODAMA
安倍川労組支援共闘会議を結成!
一月二四日、静岡市の労政会館で「安倍川製紙労組支援共闘会議」結成集会が開かれ、当該の組合員や支援者ら六二名が結集をした。支援共闘会議の結成は、二〇〇七年一月、親会社である王子特殊製紙(東京に本社)が安倍川製紙労組に対して、二〇〇八年八月をもって静岡市内にある静岡製造所(旧・安倍川製紙)の閉鎖と富士地区にある工場への配転などを一方的に通告してきたことから始まった。
静岡製造所が閉鎖になれば、安倍川製紙労組の仲間は五〇キロも離れた富士地区の工場に転勤せざるを得なくなり、三交替で働く勤務では実質的な全員解雇となってしまう。この間、安倍川製紙労組は数度の団体交渉で、@閉鎖に至った経営責任の明確化、A転勤に関する労働条件、B長距離通勤への配慮、C法令順守の向上、D静岡の組合事務所の維持などを要求し、交渉を粘り強く続けてきたが、進展が見られなかった。安倍川製紙労組は、全国一般・全国協議会に加盟し、地域の労働運動・市民運動の闘いを何十年も牽引し、現在も地域労働運動の拠点として、安倍川労組の組合事務所は無くてはならないものとなっている。支援共闘会議に結成する仲間は、安倍川製紙労組を断固として支援し、闘いを勝利させるために奮闘する決意でいる。
(静岡・読者)
複眼単眼
福田康夫と自衛隊海外派兵恒久法
福田康夫内閣は六〇年安保の大闘争で打倒された岸信介内閣のあとの池田勇人内閣に似て、低姿勢が売り物だ。自分でも「韓信の股くぐり」をやっていると自任しているほどだ。
国会討論を聞いていても、どうにもつかみ所のない答弁を乱発する。この男、内閣総理大臣とは何者なのか、責任の重さを理解していないのではないかと疑いたくなるほど、ぬらりくらりと人ごとのような答弁をする。衆議院では三分の二議席を譲り受けたが、参議院は少数与党である以上、これしか手はあるまいと腹をくくっているようだ。
しかし、見くびることはできない。就任以来、この数ヶ月で派兵給油新法は強引に仕上げた。福田は首相に就任するときに、安部前内閣が放り投げたこの問題は何としてもやり遂げる決意をして、日米首脳会談をやったはずだ。そのことによって、安部政権のもとでギクシャクしがちだった日米関係をとりあえずは安定軌道に乗せた。
「次は予算とサミットだ、そうこうするうちに、暫定政権ではなく、何とか長期政権の芽もでてくるだろう」などと考えているのかも知れない。
しかし前途多難であることには違いはない。そうこうしているうちに、給油新法は一年の期限がきれる。秋の臨時国会が福田内閣のもとで招集されるにしても、ここではこの新法の延長か、あるいは自衛隊海外派兵恒久法の制定か、いずれかが迫られる。
折しも米国の大統領選挙の最中になるが、目下、争っているどの大統領候補者が当選したとしても、「集団的自衛権の行使可能な日本」という米国の要求は変わるまい。
であるなら、まずは明文改憲の前に派兵恒久法の制定だということになる。安倍前政権が失敗した道をたどりたくはないから、自民党の主流の連中は、こう考えているにちがいない。これは究極の解釈改憲の道だ。
こうした情勢を反映して、与党の中で恒久法の動きが始まった。二月中には与党プロジェクトチームが発足する。座長は自民党外交調査会会長の山崎拓、それに中谷元・元防衛庁長官や、公明党の山口那津男・元防衛政務次官らが加わる予定だ。
中谷元は「一般法(派兵恒久法)は悠長な問題ではない。この国会にも対応しなければならない」と述べ、通常国会の期間中に与野党間で協議に入る必要性を主張している。
福田康夫は小泉内閣の官房長官だった二〇〇二年に、私的諮問機関「国際平和協力懇談会」をつくり、派兵恒久法が必要だという報告書を出させている。その後、集団的自衛権の憲法解釈の変更と、明文改憲をめざす安部政権のもとで、この報告書は立ち消えになったが、彼の恒久法にたいするこだわりは人一倍強い。先の福田・小沢会談の中で同法がひとつの焦点になったのは必然的なことなのだ。
一方、石破防衛大臣は彼が自民党防衛政策小委員会委員長の時代の二〇〇六年八月に「国際平和協力法」(案)=石破試案を作っている。
すでに派兵恒久法案づくりの道具立てはそろっているのだ。 (T)