人民新報 ・ 第1240号<統合333号(2008年4月15日)
  
                  目次

● 憲法集会、9条世界会議を成功させ、改憲の動きを封じ込めよう

● 立川反戦ビラ弾圧事件  最高裁の不当判決を糾弾する

● 非正規の均等待遇などを求め、郵政ユニオン春闘スト貫徹

● けんり春闘4・3統一行動  ストライキ、日本経団連申し入れ、霞ヶ関デモ

● 都教委の根津さん解雇は阻止された

● イラク戦争・占領まる5年  アメリカはイラクから出て行け!  WORLD PEACE NOW3.22パレード
 
● 在日米軍への怒り  防衛省包囲行動

● 国鉄闘争勝利に向けて、GOGO座り込み貫徹

● 日本経団連会長の実像と自己認識  御手洗冨士夫「強いニッポン」を読む

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  深刻な政府危機がつづく日々




憲法集会、9条世界会議を成功させ、改憲の動きを封じ込めよう

改憲世論の後退

 いま、憲法をめぐる世論は大きく動いている。
 読売新聞社が、三月一五、一六日に実施した憲法に関する全国世論調査(面接方式)によると、憲法を変える方がよいと思う人が四二・五%、改正しない方がよいと思う人は四三・一%で、非改正派が改正派を上回った。この調査では、一九九三年以来、改正派が非改正派を常に上回ってきた。しかし、改正派はこのところ連続して減少し、ついに今回わずかな差だが逆転した。特徴的なのは、自民党支持層のうちでも改正派は四七%で、九八年以降では初めて五割を切る数字となった。自民党支持者でも当面、改憲は困難と判断しているのだろう。民主党でも同じような状況だ。二〇〇五年には民主党支持層の改正派は六七%もあった(当時の自民党支持層では六四%)。ところが今回は四一%に急減している。
 改憲派は困惑を隠せない。なぜこんなことになったのか。
 この事態を四月八日付の読売社説「憲法世論調査 改正論を冷やす政治の混迷」は、「日本政治の混迷が、憲法改正の世論を冷やしているのだろう。…最大の要因は、国会や各政党の憲法論議の沈滞にあるだろう」としているが、真の原因は、多くの人びとが憲法「改正」なるもの、とりわけ九条改憲が、戦争国家化もたらすものだと切実に感じ始めたということであり、読売が期待するように、改憲論議が再開し、軌道に乗れば改憲は可能だというのはあまりにも希望的な観測だといわざるを得ない。
 改憲派世論が後退しているのは、もっと本質的な根拠がある。臨時国会ではインド洋での海上自衛隊の給油活動再開が焦点になった。アメリカの「対テロ」戦争の実態が、イラクでもアフガニスタンでも明らかになった。前防衛次官の汚職事件、イージス艦の漁船衝突・漁民殺し、そしてあいつぐ在日米兵の凶悪犯罪など、日米軍事同盟強化に連動する憲法改悪の本質が見え始めてきたのである。

改憲派の巻き返し

 改憲派は、現在の状況に猛烈な危機意識を抱き、執拗に巻き返しを図っている。
 三月二七日には、自主憲法期成議員同盟が改称し、元首相中曽根康弘が新たに会長に就任して、新憲法制定議員同盟が発足した。その方針で、「護憲派の運動(例えば九条の会)が盛んになっているので、是非、当議員同盟が中心になってこれに対抗する運動を強力に展開してゆくべきである」としているように、九条の会を名指しし、明確に意識して、全国的に改憲反対運動との対決をつよめ、改憲派の草の根運動を展開しようとしている。

五月の連続憲法行動

 改憲阻止運動は、九条の会を全国の各地域・各階層に文字通り網の目のように組織することを軸に、国論二分の闘いに打って出て、絶対的な多数派となり、改憲派を圧倒的し孤立させ粉砕しなくてはならない。

 この五月には各地での例年の5・3憲法集会に引き続いて、画期的な九条世界会議が開催される。

 関東圏では、5・3憲法集会実行委員会の主催で「武力で平和はつくれない STOP!海外派兵恒久法」をかかげて「生かそう憲法 輝け9条 2008年5・3憲法集会&パレード」(5月3日午後一時半開会 日比谷公会堂 三時半パレード出発)が予定されている。湯川れい子さん(音楽評論家、作詞家)、アン・ライトさん(元米陸軍大佐、元外交官)、福島みずほさん(社会民主党党首)、志位和夫さん(日本共産党委員長)などのスピーチが行われる。

 九条世界会議は、五月四日に幕張メッセ・イベントホールで今世紀最大の平和集会「9条を考える」をはじめ、翌五日には同国際会議場などで分科会やさまざまの自主企画などが開かれる。
 また五日に広島での集会、六日には仙台と大阪で集会が開催される。

 五月憲法行動を大きく盛り上げて成功させ、改憲派を圧倒し、改憲阻止の闘いを広げ新しい段階に高めていこう。


立川反戦ビラ弾圧事件

  
最高裁の不当判決を糾弾する

 四月一一日、最高裁第二小法廷(今井功裁判長)は、立川自衛隊宿舎反戦ビラ弾圧事件で住居侵入罪に問われた市民団体のメンバー三人(「立川自衛隊監視テント村」の大西章寛さん、高田幸美さん、大洞俊之さん)の上告を棄却し、不当な有罪判決を確定した。
 この事件は、日本政府がアメリカ・ブッシュ政権の要求にしたがって、当時の小泉内閣による自衛隊をイラクに参戦させる動きが強まる状況に中で起こされた。
 侵略戦争への加担、自衛隊のイラク派兵に反対して「立川自衛隊監視テント村」のメンバーは二〇〇三年一〇月以降、自衛隊官舎に「ビラ」を入れ、自衛官に派兵問題について真剣に考えるよう訴えてきた。
 ところが、三人は「住居侵入」だとして二〇〇四年二月に理不尽にも逮捕され、七十五日間もの長期にわたって拘留された。自衛隊官舎には、このビラだけでなく、他所と同じようにさまざまなビラが入れられていたにもかかわらず、この弾圧が強行されたのでる。
 明らかに反戦運動の封じ込め・弾圧を狙った逮捕と長期勾留であることは明らかである。
 二〇〇四年一二月一六日、第一審の東京地裁八王子支部(長谷川憲一裁判長)は無罪判決を出した。それは、「住居侵入」は認めたものの、政治的なビラは商業的ビラより優越的な地位を占める、罰するほどの罪ではないとしたものであった。
 ところが、地検側は控訴し、二〇〇五年一二月九日、東京高裁は、他人の権利を侵害している、として逆転有罪の不当判決を下した。そして、今回、最高裁は三人を有罪としたのである。
 なお、今井裁判長は横浜事件再審請求棄却、袴田事件再審請求棄却の判決を出すなど札付きの司法反動の中心人物である。
 この間、社会保険庁職員国家公務員法違反事件、葛飾政党ビラ配布事件、また板橋高校卒業藤田先生事件など、微罪逮捕がつづいている。この手法は警備・公安警察の常套手段であり、明確な反戦運動・政治活動圧殺を狙ったものである。ちなみに立川ビラ事件と葛飾ビラ事件を担当したのは同一の公安担当検事であった。日本における政治警察による民主主義の圧殺は、国内だけでなく世界的にも問題視されるようになってきている。
 立川・反戦ビラ弾圧救援会声明が宣言しているように、「私たちは今日の最高裁の不当な判決を批判し続け、その他のあらゆるビラまき弾圧裁判勝利の日まで闘い抜く」運動を広げていこう。

立川・反戦ビラ弾圧救援会声明

 本日最高裁は我々の上告を棄却し高裁の有罪判決を支持した。救援会はこの不当な有罪判決を批判し続けることをここに宣言する。
 この四年二ヶ月に渡る裁判闘争で、私たちは被告らの行動が「犯罪」にはあたらず、憲法でも保障された正当な表現活動であることを緻密に立証してきた。検察側はこれに対して反戦ビラが問題であったのか、ビラ一般の配布が問題であったのかを明確にすることができず最後まであいまいなままとした。さらに昨年共産党機関紙「赤旗」の記事により、自衛隊情報保全隊が公安警察と密接に協力し、現場検証などを行いこの弾圧を画策するのに手を貸していたことが明らかになった。我々はそれに対する批判も補充書として最高裁に提出した。イラクに自衛隊が派兵され始めた時期に、それを不安に思う自衛官や家族に対して反戦運動の側からの働きかけを遮断し、運動そのものに冷水を浴びせかけて萎縮させる。この弾圧のねらいがそこにあったことは明かである。しかし、こうしたこの弾圧の本質的な問題点を無視し、最高裁は不当判決を下した。
 立川の弾圧事件を皮切りにビラまきに対する不当な弾圧事件が日本では相次いでいる。二つの国公法事件や板橋高校事件、葛飾マンションビラ入れ弾圧事件などである。これらの裁判を見てみると立川と葛飾事件では東京地裁は無罪判決を下している。少なくとも地裁段階ではビラまきという行為を犯罪とすることに反対が強かったことがうかがえる。
 そもそも日本全国で一日にポストに投函されるビラの枚数がどれくらいの数になるのか、見当もつかない。ポスティングという行動は専門業者がいるように、社会的にも認知された行為なのである。そして商業ビラだけではなく政治的な主張を書いたビラはさらに重要だ。選挙が近づけばあらゆる政党のビラが投函されるはずだ。この間弾圧されたのは、反戦運動のビラや日の丸君が代押しつけに反対したビラ、共産党のビラであり、権力者に対して批判的な内容のものばかりである。これらの弾圧は、ポスティングそのものは犯罪とは出来ないので、その場その場で住居侵入罪や国公法違反、威力業務妨害罪など様々な罪状を恣意的に運用して、ポスティングそのものを封殺しようとした政治的なものであることは明らかだ。
 陸上自衛隊はイラクから撤退したが、航空自衛隊は残ったままである。イラク戦争を始めたブッシュ政権の人気はもはやどん底にあり、イラク戦争への批判の声は日に日に高まっている。こうした中で最高裁は言論の自由をないがしろにするかのような不当な判断を下したのである。
 救援会は、司法の独立性そのものがますます本日の不当判決で危うくなったと判断し、それを深く憂慮し糾弾せざるをえない。

 最後まで裁判闘争を闘い抜いた力は、全国・全世界の裁判を支援する人びとによってもたらされた。救援会は深くこのご支援に感謝する。私たちは今日の最高裁の不当な判決を批判し続け、その他のあらゆるビラまき弾圧裁判勝利の日まで闘い抜く。

 二〇〇八年四月一一日


非正規の均等待遇などを求め、郵政ユニオン春闘スト貫徹

歴史的な4・3郵政スト


 四月三日午前八時、郵政労働者ユニオン(内田正・中央執行委員長)は郵便事業会社全国一〇支店の拠点で、整然と一時間の時限ストに突入した。民営郵政初めて、そして期間雇用社員=ゆうメイトの均等待遇実現と大幅賃上げ・大幅増員などを要求の柱としてのストであった。郵政職場のストライキとしては一九七五年末のスト権奪還闘争以降実に三十三年ぶりのことである。
 スト突入拠点は、東京都(蒲田支店、高輪支店、麻布支店)、千葉県(千葉支店)、京都府(左京支店)、大阪府(豊中支店、吹田千里支店)、広島県(広島東支店)、福岡県(若松支店)、長崎県(長崎支店)。
 東京では、当日朝、午前七時から郵便事業会社東京支店のある麻布支店(郵便局)前でスト突入集会が開かれた。
 集会では、郵政労働者ユニオン東京地方本部の中村知明委員長が主催者あいさつを行い、全国でのストライキ突入状況を報告するとともにストライキ参加者を紹介した。
 つづいて内田中央執行委員長が、春闘での要求について報告し、とくに郵政職場における非正規労働者の格差是正、均等待遇の実現に向けて闘う決意を表明した。
 集会には多くの仲間がこの歴史的なストの激励のために駆けつけた。
 藤崎良三全労協議長は、この日の「けんり春闘」行動に多くの組合・労働者がストに決起し、また日本経団連などに向けた総行動に立ち上がっていることを報告するとともに、郵政ユニオンのストへの全労協の全面的な支持を表明した。
 郵産労、国労闘争団、電通労組、南部全労協、全国一般東京なんぶ、都庁職駒込病院分会、郵政民営化を監視する市民ネットワーク、中小労組政策ネットワーク、国鉄闘争に勝利する共闘会議などからの連帯挨拶がおこなわれた。
 集会には、国内外の労組や国会議員からメッセージが寄せられた。
 アオテアロア・ニュージーランド郵便労働組合、SUD―PTT(フランス「連帯―統一―民主」郵便労組)、山崎清・郵産労中央執行委員長、元木末一・全港湾労組中央執行委員長、練馬地域ユニオン、均等待遇アクション21事務局、ゆうメイト全国交流会、郵政シルバーユニオンなどからであった。
 棣棠浄副委員長は中央交渉について報告した。
 午前九時、一時間のストを貫徹し、就労する仲間をシュプレヒコールで見送って、スト突入集会は終了した。

 労働者が強大な資本と闘う武器は何よりも拡大していく団結である。資本の側にとっては、労働者を各層に分断し、団結を破壊することが労働者支配と搾取の基本である。いま正規労働者と非正規労働者の分断と格差の拡大によって労働者・労働組合の力を弱める攻撃が拡大している。郵政ユニオンの春闘行動・ストは、非正規労働者の均等待遇実現を中心的な柱にすえての重要な意義を持つ闘いであった。
 今後、民営郵政の労働者に対する労働条件低下、賃金切り下げ、差別支配の強化は必至であり、郵政の各会社・職場で働く労働者にとって郵政ユニオンに対する期待は大きなものとなっていくだろう。郵政職場の闘う潮流のさらなる大きな団結・統一が求められている。同時に、今回の闘いが先駆的に示した非正規・正規の壁を突破した団結形成の実現が全国、全産業に広がっていくことが期待されている。

春闘要求と会社回答

 郵政ユニオンの二〇〇八年賃金引き上げ等に関する要求書(二月一二日)

 一、賃金引き上げに関する要求
 (一)正社員の俸給支給額を一人一律三五、〇〇〇円引き上げること。
 (二)正社員の年間一時金について五ヶ月分を支給すること。
 (三)月給制契約社員の賃金を一人一律三五、〇〇〇円引き上げること。
 (四)パートタイマーについて時給二〇〇円引き上げること。
 (五)契約社員・パートタイマーの年間一時金を大幅に引き上げること。
 (六)期間雇用社員最低賃金を下記の通り保障すること。
 @、時給一、二〇〇円とすること。
 A、月額一五〇、〇〇〇円とすること。
 二、時間外労働割増率引き上げ要求について
 時間外労働割増率を一〇〇分の一五〇、休日労働を一〇〇分の二〇〇とすること。
 三、期間雇用社員の均等待遇、福利厚生、雇用に関する要求
 (一)郵政グループの民営化実施計画に不足する正社員一一、八〇〇人を採用すること。なお、採用にあたっては、契約社員、パートタイマーから優先採用すること。
 (二)正社員への登用制度について、月給制契約社員からのみの登用のあり方を見直しパートタイマーからも広く登用する制度とすること。
 (三)月給制契約社員への登用を拡大すること。
 (四)パートタイマーから月給制契約社員、月給制契約社員から正社員への登用基準を明確にし、協約化を行うこと。
 (五)「雇用労働条件通知書」には、労働契約期間、就業場所および従事すべき業務、労働時間と休日、賃金、退職などの他、勤務日数について明示すること。
 (六)「給与支給明細書」に関して、正社員と同様に勤務日数、勤務時間、超勤(一二五/一〇〇、一三五/一〇〇、一〇〇/一〇〇)、祝日勤務時間を明示すること。
 (七)有給休暇付与日数を正社員と同様にし、計画休暇制度、時間休暇制度を新設すること。
 (八)病気休暇の有給化を行うこと。
 (九)すべての期間雇用社員に退職金を支払うこと。
 (一〇)交通費支給に関して正社員と同様にすること。
 (一一)人間ドック受診のあっせんを正社員と同様に行うこと。

 前記のような要求にたいして、各会社は三月一三日に回答したが、それは、ユニオンの一人一律三万五千円要求に対して、正社員基準内賃金六〇〇円、月給制契約社員基本月額四〇〇円、期間雇用社員にたいしてはゼロ回答という超低額回答であった。会社側の回答を受けて、団体交渉が行われたが、会社側の対応は不誠実なものだった。
 こうして四月三日、郵政労働者ユニオンは会社側の回答を不満としてストライキに突入した。


けんり春闘4・3統一行動

   
ストライキ、日本経団連申し入れ、霞ヶ関デモ

 四月三日を春闘勝利の統一行動日として、けんり春闘実行委員会に参加する労働組合はストライキを含む全一日の行動を貫徹した。
 この日、ストを闘い抜いたのは、電気通信産業労働組合(電通労組)―全日スト、NTT関連労働組合協議会(N関労) ―半日スト、郵政労働者ユニオン―一時間スト、東京労組・フジ美製版労組―半日スト、ヤマト労組―全日スト、書泉労組―半日スト、東京カソウド労組―全日スト、少年写真新聞労組―全日スト、凸版ムーア労組―全日スト、栄堂労組―半日スト、東伸社労組―全日スト、旭屋書店労組―半日スト、アドリブ労組―半日スト、全国一般東京なんぶ・ベルリッツ東京ユニオン―半日スト、サイナルアカデミー労組―全日ストなどであった(全労協発表)。 
 午後はNTT持株会社前での行動につづいて、二時から、中央総行動として、日本経団連前で集会を行い、日本経団連への要請を行った。
 藤崎良三けんり春闘代表があいさつ。
 財界と自民党政府の政策によって、経営が大きな儲けを上げる中で労働者は賃金・労働条件を切り下げられ、貧困問題が差し迫ったものになってきており、社会の疲弊・崩壊の危険が増している。労働者の春闘での要求はきわめて切実なものとなっており、ストライキを軸にした闘いで要求を勝ち取ろう。経済界とりわけそのトップにある経団連は企業の社会的責任を自覚し、総額人件費抑制政策を改め賃金引上げを行い、また日雇い派遣、偽装請負、違法派遣などを直ちにやめさせるようにし、さらなる労働分野の規制緩和を行わないようせよ。
 経団連前集会をおわって、首都高速会社前の決起集会、厚労省、裁判所、国交省、日本郵政本社などに抗議要請の霞ケ関包囲デモ行動を約七〇〇名で展開した。

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 (社)日本経済団体連合会 会長 御手洗 富士夫殿

08けんり春闘全国実行委員会
 代表 藤崎良三
 代表 二瓶久勝

    要 請 書


 貴団体の日頃の活動、ご苦労様です。
 私たち「08けんり春闘全国実行委員会」は、全国労働組合連絡協議会をはじめ、全港湾や金属機器労組協議会、全日建運輸連帯労働組合など純中立組合、さらには、中小労働組合が結集して、08春闘を闘うために結成された全国組織です。
 私たちは、この間の貴団体の主張に、疑問と不安を感じざるを得ません。
 昨年十二月十八日に発表された「経営労働政策委員会報告」を見れば、「豊かな国民生活は企業活動の活性化を通じてしかできない」とし、史上空前と言われる企業利益を、労働者や社会に還元するのではなく、さらなる企業利益の拡大を追求しようとしています。
 また、昨今問題にされている、格差や貧困については、冒頭に「影」として捉え、「影の部分に光をあてる制度・施策が不可欠」と述べながら、その要因分析を一切せず、「競争の結果として経済的格差が生じることは当然」と容認論をとり、「再チャレンジ政策」で対処しようとしています。
 今こそ、財界団体とそのトップが、企業の社会的責任を自覚し、格差社会の進行、労働者の「貧困化」にストップをかけるため、それを生み出している非正規雇用」の規制や諸施策をとることを求めて、下記の通り要請をします。真摯な回答を待ちます。

        記

1、総額人件費抑制策を改め、賃金引き上げを行うこと。
2、日雇い派遣、登録型派遣をやめること。
3、正当な理由のない有期雇用契約を行わないこと。
4、企業の社会的責任に基づき、偽装請負、違法派遣を直ちにやめるよう傘下団体に強力な指導を行うこと。会長企業が率先してこれを実行すること。
5、企業利益優先の法人税実効税率一〇%引き下げと消費税引き上げの主張を撤回すること。
6、過労死を促進する日本版ホワイトカラーエグゼンプション=自律的働き方にふさわしい労働時間管理制度=導入を行わないこと。
7、労働時間規制の柔軟化、解雇の金銭解決導入、派遣労働の完全自由化、最低賃金制骨抜きなど、さらなる労働分野の規制緩和・撤廃を行わないこと。


都教委の根津さん解雇は阻止された

 東京都教育委員会は、三月三十一日に卒業式不起立者十九人に対する処分発令を強行した。石原都政・都教委の「日の丸・君が代」強制は、子供たちを戦争に追いやるものだとして拒否し続けてきた根津公子さん(東京都立南大沢学園養護学校)に対する処分は、停職六ヶ月、あきるの養護学校への異動だった。都教委は、今回、抵抗を続ける根津さんを解雇処分にする動きを強め、抵抗する教職員の首を切り教育現場から一掃しようとしていた。しかし、全国そして世界に広がる根津さんの闘いを支援する輪の広がりは解雇という暴挙を阻止した。
 根津さんは、「私を首にすることはできなかった。ともに10・23通達を撤回させましょう」と語っている。


イラク戦争・占領まる5年  アメリカはイラクから出て行け!

      WORLD PEACE NOW3.22パレード


 ブッシュ政権のイラク戦争・占領政策の破綻は誰の目にも明らかになった。ブッシュ自身でさえ、制圧は失敗し米軍の早期撤兵策の放棄を公然と宣言せざるを得なくなった。
 三月二〇日は、二〇〇三年のアメリカのイラク侵略戦争開始からまる五年目になる。
 その直後の三月二十三日、イラクの首都バグダッドで、道路脇に仕掛けられた爆弾が爆発、米兵四人が死亡した。これで開戦以降の米軍関係者の死者数は四〇〇〇人に達したのである。
 開戦当初、ブッシュやチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官(当時)らは、早期の戦争勝利を楽観視していた。ところが、いま事態はかれらの思惑とはまったく逆の様相を見せている。
この間のアメリカ政府の動きを見てみればかれらがいかに困難な立場に陥っているかが明らかとなる。
 四月八日、イラク占領米軍の現地最高責任者であるペトレイアス司令官は、クロッカー駐イラク米大使と共に上院軍事委の公聴会で証言し、イラク駐留の米軍兵力水準について次のように述べた。(アメリカは昨年九月、治安が改善したとして)昨年末から部分撤退を始め、今年七月に増派分の撤退が完了する。しかし撤兵策はこれで中断し、増派前の水準である約一四万人規模にとどめる。そして、「情勢の集約・評価期間」(四十五日間)を置くよう求める。
 この提言を受ける形で、ブッシュは、四月一〇日にホワイトハウスで全国民向けに演説し、ペトレイアスの提言に基づく政策を正式に発表した。
 ブッシュは、これまでの増派が成功したことを強調しつつも、「イラクは米国にとっての二大脅威のアルカイダとイランが集まる地点だ」と派兵占領継続が必要性であるとしたのである。
 結局、増派してもアメリカにとって事態は改善されなかったのである。
 イラク戦争の終結・米軍の完全撤退ということを抜きにして、ブッシュはなんとか任期を終わろうと画策しているのだが、これはイラク民衆だけでなくアメリカの国民とくに下層の人びとに犠牲を強いることを長引かせるもの以外のものではない。アフガニスタン戦争も同様だ。そして、このことは、任期中には自らの引き起こした戦争に決着がつけられず、「歴代で最低のアホでマヌケな大統領」となったという事実を認めないで、政策が成功していると強弁しながら、次の政権にすべてをマル投げするという卑劣な手段以外に逃げ切る道はないことを告白したということである。
 アメリカ本国でも、最近の調査で明らかなように過半数の人びとが「(べいぐbっぼ)イラクでの勝利」は不可能としており、イラク帰還兵の反戦運動参加者も増えているという。

 三月二十二日、千五百人が参加して「イラク占領、まる五年 武力で平和はつくれない WORLD PEACE NOW 3・22〜平和をねがい世界が動く〜」が行われた。
 集会会場の芝公園では、土井登美江さんが主催者あいさつ。
 日本政府は、アメリカのイラク侵略に積極的に加わり、民衆に多大な損害を与えてきた。いままた、アメリカとともにいつでもどこでも戦争ができる派兵恒久法を制定しようとしている。武力では決して平和はつくれない。
 元JVCスタッフの原文次郎さん、シャンティ・ボランティア・アソシエーションの山本英里さん、横須賀原子力空母母港化反対運動の呉東正彦弁護士がアピール行った。
 集会終了後のピースパレードでは、米大使館に抗議のシュプレヒコール。WPN代表団は、大使館に申し入れ(別掲)を行った。

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

2008年3月22日 
 
           WORLD PEACE NOW


米国大統領への要請文

  武力で平和はつくれない。戦争と占領をやめ、米軍はイラクからもアフガニスタンからもただちに撤退を


 ジョージ・ウォーカー・ブッシュ大統領。
 あなたが、「サダム・フセインは大量破壊兵器を所有している」「サダムの政権はアルカイダなどの国際テロリスト組織とつながりがある」などの空言で世界を欺き、国連憲章や国際法にも違反して、イラクヘの一方的な武力攻撃を開始してから早くも五年がたちました。
 この五年間で、あなたが主張していた「中東での自由と民主主義の確立」への希望の光が少しでもさしこんできたのでしょうか。事実は正反対です。正確な数は誰にも分からないとはいえ、この五年間でイラクではすでに十万人とも数十万人とも言われる人びとが殺されました。シーラー国連イラク人道問題調整官が二月一一日に明らかにしたところによれば、人口二、七〇〇万人のイラクで四〇〇万人が飢餓に直面し、四〇%の人びとが安全な水を手に入れることができず、国内難民も二〇〇六年から倍増し、二五〇万人に上っているということです。この数字に一〇〇万人を超えると言われる国外への難民を付け加えなければなりません。米兵の死者もすでに四、〇〇〇人を目前にしています。イラクの人びとの人権も当の米軍によって蹂躙されていることは、アブグレイブ収容所での拷問、ファルージャでの市民大量虐殺などによって突きつけられてきたことでした。
 もはやあらゆるごまかしや傲岸不遜な言動を捨て去るべき時です。米国とともにイラク戦争・占領に加わった諸国も統々とイラクの戦場から離脱しました。しかしブッシュ大統領、あなたはあくまでも軍事力による制圧に固執し、アフガニスタンやイラクの現実から学ぼうとはしていないようです。
 昨年あなたは、あなたのお父さんの腹心だったベーカー元国務長官を座長とした「イラク研究グループ」による、「イラン、シリアとの対話」による「和解の実現」、二〇〇八年三月までの全戦闘部隊の撤退という提言を無視して、一三万人に上る駐留軍に加えてイラクヘの三万人もの米軍増派を強行しました。今年一月の年頭教書演説であなたは、この「増派」の「成果」を強調しました。「増派」によってイラクの治安が「劇的に改善」されたというのがあなたの主張でした。
 しかし昨年の米兵の死者は戦争開始以来最多となりました。そして年頭教書演説以後、むしろ「自爆テロ」などによる死者は激増の気配を見せています。イラクの人びとの反米・占領反対の意識は、拡大の一途をたどっており、イラクの主権を奪って石油資源を多国籍企業に委ねる「石油法」が国会の承認を得るメドもたっていません。何よりも、あなたのお膝元の米国でも軍の撤退を求める世論がますます広がっているではありませんか。あらゆる国家間紛争は政治交渉による解決が可能です。イラクやアフガニスタンでの殺戮と破壊をやめ、政治的解決に移行すべきです。
 私たちWORLD PEACE NOWは、二〇〇三年以後、イラク戦争に反対し、日本政府の戦争支援・自衛隊派兵に反対する行動を継続してきました。私たちは今年も、全世界の人びととともに戦争と占領を終わらせる集会とピースパレードを行っています。
 武力で平和はつくれません。民主主義も人権も自由も、戦争と占領が続くかぎり、破壊されるのです。
 私たちはこれが最後の訴えとなることを願いながら、ブッシュ大統領と米国政府に要求します。戦争と占領をやめ、米軍はただちにイラクからもアフガニスタンからも撤退すること!


在日米軍への怒り

    
 防衛省包囲行動

 沖縄では二月に米兵の少女への性暴力事件がまたしても起こり、三月一六日には米空軍憲兵も加わったタクシー強盗事件が発生した。そして三月一九日には神奈川県横須賀で米兵によるタクシー運転手殺害事件が起こった。在日米軍による連続した凶悪事件は全国に怒りの声を広げている。まさに「軍隊は住民を守らない」、基地ある限り軍隊による事件・事故はなくならない。沖縄戦でこのことを骨身にしみて実感させられた沖縄の人びとは、いままた日米軍事同盟の強化・在日米軍再編による基地機能拡大によっていっそうの犠牲を強いられようとしている。
 この間、政府・防衛省は、辺野古新基地建設を強行するための策動を進めている。世界でもまれな環境が基地建設によって破壊されるため慎重な環境影響評価が必要であるのに、調査方法が確定する前から本格調査に入ろうとしている。東村高江では、新たなヘリ基地を居住地の周辺につくろうとしている。

 四月六日には、「基地をけとばせ! ストップ!米軍再編 4・6防衛省『人間の鎖』」行動(海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会、沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会、辺野古への基地建設を許さない実行委員会の呼びかけ)が行われ、五五〇人が参加した。全国から反基地闘争を闘う人びとも参加し全国をつなぐ闘いの場となった。人間の鎖のウエーブで、日米政府に対する抗議の意思を表した。防衛省に対しては、ヘリ基地建設反対協議会や沖縄平和市民連絡会などが要請書を手渡した。

 午後六時からは、「基地強化を許さない交流集会」開催され、安次富浩さん(ヘリ基地反対協議会・代表委員)と高里鈴代さん(平和市民連絡会、基地・軍隊を許さない行動する女たちの会)が沖縄からの訴えを行った。そして、岩国、神奈川、横田などからの闘いのアピールがなされた。
 集会アピールは、「『世界のなかの日米同盟』といわれるなかで、沖縄で、岩国で、横須賀で米兵の性暴力事件などの凶悪犯罪や事件、事故の米軍犯罪が後をたちません。二月に起きた沖縄海兵隊員による少女事件のあと、米軍優位の日米地位協定の改定を要求する声は、再び沖縄県内外や野党からもたかまっています。三月二三日には六〇〇〇名が集まる『怒りの県民大会』が開催されました。私たちは日米地位協定の改定への動きを現実のものとしていくことで、生存権を脅かす在日米軍再編を拒否し基地撤去を要求する力にしていきましょう。平和を求める私たちは〈米軍は日本からでていけ!〉、〈基地はどこにもいらない!〉の声をひびかせ米軍再編をけっとばそう!」


国鉄闘争勝利に向けて、GOGO座り込み貫徹

 国鉄闘争は重大な山場を迎えている。
 三月二十六日午前一〇時から二八日午後五時まで、国土交通省正門前でのGOGO(五十五時間)に及ぶ延べ三日間の昼夜をおかない連続座込みが闘われた。同時に、そして、原告の家族・遺族が上京して、鉄道運輸機構への要請をはじめ、各政党への要請、院内集会などの行動を展開した。

 四月一日には、「国鉄改革から22年 政府の解決決断を求める4・1集会」が開かれた。
 主催した四者四団体を代表して高橋伸二・国労委員長は、民主党を窓口に早期政治解決を求める、民主党の鳩山幹事長や連合の高木会長も解決にむけた環境作りに動いている、更に大きなうねりをつくり解決に向かおうとあいさつ。民主党、共産党、社民党の国会議員も駆けつけて連帯のあいさつ。
 加藤晋介弁護士は、東京地裁民事一九部の3・13鉄運機構訴訟不当判決にたいして、不当な地裁判決に対しては高裁判決をもって叩き返すと方針を提起。
 国鉄闘争に勝利する共闘会議の二瓶久勝議長は、政治解決にむけては、決して四党合意の二の舞はしない、裁判闘争と大衆闘争を強化し抵抗と述べた。
 国労闘争団全国連絡会議の神宮義秋議長は、団結なくして解決なしだ、雇用・年金・解決金の要求を獲得するために奮闘しようと決意表明した。


日本経団連会長の実像と自己認識

   
御手洗冨士夫「強いニッポン」を読む

 日本財界のトップである日本経団連会長はキャンノン会長の御手洗冨士夫だが、この人物きわめて評判が悪い。率先して違法行為を行っているのだ。
 二〇〇六年にキャノン宇都宮光学機器事業所でレンズの製造などに携わる労働者が本社に申し入れを行った。労働者たちの主張はつぎの通りだ。一年間は派遣労働者として働いたが、それ以外の期間は、キヤノンから製品の生産を請け負った人材会社の労働者として働いたのに、その間もキヤノン側の指揮命令を受けて働いた。これは典型的な偽装請負・違法派遣である。そして、労働者たちは、一年以上働いているので、労働者派遣法で定めるメーカー側の直接雇用の申し込み義務が適用されるべきである。
 そして、キヤノンでは、この宇都宮工場をはじめその他の子会社などでも偽装請負が発覚し、労働局から文書指導を受けた。
 ところが、御手洗は、経済財政諮問会議で、現行法の請負では製造業者が労働者に指揮・命令できないことにこそ問題があり、法律のほうを変えろなどと発言していた。
 御手洗自身は、こうした己の醜い姿をまったく認識していない。それどころか、人に「公徳心」までも説教しているのである。
 御手洗冨士夫「強いニッポン」(朝日新書 二〇〇六年一〇月)では、日本を「希望の国」「強い日本」にするために、人こそ最大の日本の資産だとして、強いリーダーが欠かせないと言う。
 その第九章「リーダーよ、出でよ」で、リーダーにはなによりも「私心のない」ことが重要だと御手洗は言う。「この私心がないということの大切さは、私がアメリカに二十三年間いたときに、アメリカのリーダーたちからも感じた。彼らも人一倍、克己心や自制心を持っていた。私利私欲にまみれるような次元の低いことはしなかった。また、アメリカの事業家には、社会に寄付をする、還元するという精神がある。学歴もなく、織物工場の工員から『鉄鋼王』と呼ばれるまで上り詰めたアンドリュー・カーネギーさんは、『社会で稼がせてもらったものは、死んでいくときに社会に返していく。金持ちで死ぬのは恥だ』と言って、私財を投じて大学や音楽ホールをおくったが、そういう精神が、アメリカを支えている。日本がだらしないのは、そういうものが足りないからだ」。
 カーネギーの実像がはたしてここに書かれているようなものだったかどうかは知らないが、御手洗自身が、「社会で稼がせてもらったものは、死んでいくときに社会に返していく。金持ちで死ぬのは恥だ」と死んでいくのだろうか。偽装請負までもして自社の儲けに専念している人物がそうするというイメージを浮かべるのは難しい。
 もうひとつ注目すべきは「愛国心」の問題だ。「軍国主義を防ぐのが『愛国心』」で、「不幸にして日本人が軍国主義にかり出された当時、ほんのわずかしか、世界の広さを実体験的に知っていた人がいなかった。国民の、ほんの一部だった。いまは、年間に千何百万人が外国へ行く。世界中、こんなところにも来ているのかと思うところにも、日本人がいる。そうやって、何千万人もの人が実体験的に世界を知り、異文化に触れ、それを楽しみ、友だちをつくり、資産を置く人間までいて、もう、世界観が昔とは全然違う。どこの愚か者が、戦争に行くことを考えるものか。軍国主義に戻る? 冗談じゃない。『いつまで、あなた方は終戦時のままでいるのか』と言いたい。」
 海外に出かけていく人間が多くなれば、軍国主義がなくなるとはじつに欺瞞的な「理論」だ。「冗談じゃない」とはこっちが言いたい台詞だ。 
 また「もっと、世界平和を希求してきた日本を誇りとして、この平和国家日本を守り、これからも続けていく。そういう平和を希求する日本を愛し、生きていく気持ちが、『愛国心』だ。軍国主義に向かおうとする動きがあれば、それを体を張って防ぐのが、『愛国心』だ。…『卑怯なことを見逃さない気持ち』と同じだ。もっと、『愛国心』を前向きにとらえなさい。『愛国心イコール軍国主義』などという考えを、捨てなさい。どこに根拠があって、いまの日本人が軍国主義へ行くなどと言うのか。これだけ世界を知っている人たちが、行く訳がない。国民を、馬鹿にしてはいけない。」とまで言う。まさに「国民を、馬鹿にしてはいけない」たわごとだ。
 いまの日本はアメリカの戦争に参加する形で軍国主義、戦争国家になっていっているのである。御手洗の「理論」では、アメリカと戦った戦争は誤りだった、アメリカとともに戦争をするのであれば、そしてそのための国内支配の戦争のできる国家作りは軍国主義ではないということなのである。

 二〇〇六年一一月の日米財界人会議で御手洗は「日本の政治経済状況」と題して次のようなスピーチを行った。米財界人を前に本音をしゃべっている。
 当時は五年間続いた小泉政治の後継として安倍内閣発足直後で「安倍内閣による小泉前総理の改革路線の確実な継承を国民も支持し、また総理の中国・韓国への訪問に見られる有言実行、北朝鮮への機敏、かつ毅然たる対応などが、国民の信頼を得た証と思われます」とした上で、「私は本年五月に経団連の会長に就任した際の挨拶の中で、日本を『希望の国』にしたいと申し上げました。…これは安倍総理が提唱する『美しい国』と軸を一にするものです。安倍内閣には、小泉前政権に劣らない長期政権を維持して、『美しい、希望の持てる』日本を実現していただきたいと存じます」などと、それから一年もたたない〇七年七月の参院選で、小泉・安倍政治そしてそれを支え先導してきた御手洗財界の方針に国民多数がノーを突きつけるという自民党の歴史的大敗、参院の野党制覇などをまったく予想できないノー天気振りを発揮していた。
 そして「日本の対外関係の基軸は、なんといっても日米関係」であり、「(その)枠組みとして、日米EPAを真剣に検討すべき時期が来ています。日米という二大先進国が締結するEPAは、従来のEPAの基本形に限定されない、包括的かつ高水準の協定であるべきだと考えます。関税の撤廃にとどまらず、サービス貿易の自由化、投資規制の緩和、安全かつ円滑な人の移動及び物流の実現、知的財産権分野における協力等をEPAの枠組みの下で推進することにより、現存する両国間のビジネス上の問題を解決し、経済関係の緊密化をさらに一歩、進めることが期待されます」とした。小泉・竹中改革によって日本国民資産のアメリカ金融資本による結い上げが体制化されたものを、いっそう、そのシステムを強化しますという宣誓であった。

 御手洗の経歴を見るとこうした発想の出てくる所以が理解できる。
 御手洗は、一九三五年九月生まれで、六一年にキヤノンカメラ(現・キヤノン)入社し、六六年から八九年までの二十三年間米国に勤務(キヤノンUSA社長を一〇年間務める)し、帰国後、本社の専務、副社長を経て九五年に社長、〇六年三月に会長兼社長となり、五月にキヤノン会長、日本経団連会長に就任した。アメリカ化された人物である。「強い日本」でも、アメリカ礼賛はすごい。とくにレーガン元大統領への評価は高い。
 「アメリカでは、ジョンソン、ニクソン、フォード、カーター、レーガン、ブッシュ(父)と六人の大統領の時代を経験したが、レーガンさんのリーダーシップが最も印象深い。彼が八〇年の大統領選挙に出てきて何を言ったかというと、『強いアメリカを取り戻そう』と繰り返した。多くの人が『そんなことは、できはしない』と嘲笑したが、オールドエコノミストと呼ばれるシカゴ学派の経済学者らを起用し製造業の供給力を強める「サプライサイド・エコノミクス」の政策をとった。これが見事に時代の要請に応えた。レーガン政権の政策のなかで。とくに印象に残るのが、独禁法を緩和して競争力を強化の強化を企業にもとめたことと、大学に先端技術の特許を集めて多くのハイテク企業が排出する土台を築いたことだ。」
 御手洗の新自由主義、規制緩和論は筋金入りなのである。だが、それは、日本でも、本場アメリカでも資本主義体制の根幹を揺るがすほどの危機を招き寄せることになっているのである。


せ ん り ゅ う


 水責めでブッシュの口(くち)をまげたいね

 ドッキング宇宙だけにしてください

 米兵は米軍でないと司令部言う

 「集団自決」隠すなかれああ戦禍

 生き残り俺知らぬとほざく元将校

 救急拒否政府に未必の殺意

 自己責任を庶民に迫る厚労省

 貧乏の収奪分知事使い
 
 桜咲くなかに佇むわれが居る

           ゝ史(ちょんし)

二〇〇八年三月

 ○ 三月八日、水責め禁止法案に米大統領拒否権発動。○米軍と自衛隊のドッキングはお断り。○米兵事件への米軍の無責任にはいつも驚く。○瀕死を乗せて救急車は動かない。医療改革で貧乏人を長生きさせない。年金記録問題にしても厚労相は大変に賢く立ち回る。○石原文芸です。プチブル救済銀行で四〇〇億円の無駄使い。


複眼単眼

  
 深刻な政府危機がつづく日々

 マスメディアの世論調査での福田内閣の支持率が急落している。四月はじめの読売の調査で支持率は二八・〇%、不支持率が五七・七%となったのに続いて、産経新聞の調査では支持率は二三・八%で、不支持率が五九・〇%となった。二〇%が政権維持の危険水域などといわれるが、福田内閣はほぼそれに近づいたのだ。
 衆議院で議席の三分の二を持つ内閣の支持率が二割台という異常な「ねじれ」現象だ。福田首相はこの自らの支持率と無関係の、かつて小泉内閣が「郵政改革」を旗印にかすめ取った議席に依拠して、先の新テロ特措法につづいて、暫定税率の期限切れ、道路特定財源問題でも衆議院での再議決を辞さない構えだという。
 かつて小泉純一郎元首相が「痛みに耐えて改革を」と叫んで進めた「三位一体の改革」などさまざまな悪政のツケが、ここに来て民衆の生活を直撃し、「痛みに耐えきれないような」深刻な格差と貧困、生活破壊の事態が進んでいる。支持率の急落は当然のことだ。この流れは福田内閣の下では変わりそうもない。さらに支持率の低落がつづくことだろう。
 事態は、すでに小手先細工の常套手段である「内閣改造」などではどうしようもないところに来ている。衆議院の解散をすれば敗北が明らかなだけに解散もできないところに追いつめられている福田康夫首相が、内閣改造すらできなくなっている。未解決の年金問題、防衛省をめぐって相次ぐ問題、ガソリン税問題、後期高齢者医療制度導入問題、後継日銀総裁問題などなど、難問は山積している。
 安倍内閣が政権を投げ出さざるを得なくなって以来の政府危機は、この福田「背水の陣内閣」のもとでもより深刻になっている状況だ。
 福田首相はこの目に見えていた「行き詰まり」状態を、あの「大連立」によって突破したかったのであろうが、世論の批判を怖れた民主党執行部の反対でもろくもついえた。ここで失敗したために、背水の陣で繰り出した「連立」の切り札がもはや機能しなくなっている。切り札を失った福田内閣は、いまとるべき先述の選択肢がなくなった状態なのだ。
 福田康夫首相はいま、自衛隊海外派兵恒久法に「連立」の望みをかけているかも知れない。民主党は給油新法の対案で恒久法の制定に言及した。これで民主党を揺さぶって、チャンスを引き寄せる可能性はある。しかし、これも防衛省の諸問題が災いして、新法案の準備の与党協議会も開けない状態だ。今期通常国会中にも法案化して、秋の臨時国会で採決したいとねらう福田首相の思惑通りには進んでいない。そうこうしているうちに、給油新法の一年の期限がきてしまう。福田首相の前途はかくも真っ暗だ。
 他人事のように語るのが特徴の無責任ぶりを各所でしめしてきた福田康夫首相が、前任者の安倍のように政権を投げ出す日が近いのかも知れない。 (T)