人民新報 ・ 第1241号<統合334号(2008年5月15日)
  
                  目次

● 9条世界会議が大成功 !    日本から、世界から改憲阻止の力が大結集(全国で3万人)

● 武力で平和はつくれない STOP!海外派兵恒久法   5・3憲法集会に四三〇〇人が参加

● メーデーの伝統を継承し、生活と権利、反戦平和、改憲阻止をかかげ、第79回日比谷メーデー開催

● 連合メーデー  非正規労働者問題への取り組みの状況

● 労働者派遣法の抜本改正に向けて、自民党を除く各党が参加して院内集会

● 自衛隊のイラク派遣は違憲   画期的な名古屋高裁判決が確定

● 民営化・格差社会を問う! ノーモアJR尼崎事故! 4・20尼崎集会

● 環境破壊と歴史偽造を糾弾し、「昭和の日」反対行動

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼 / 安倍はやはり究極の護憲派だった




9条世界会議が大成功 !

  
日本から、世界から改憲阻止の力が大結集(全国で3万人)

 小泉、安倍とりわけ安倍は「自分の任期中の改憲」を公言し、改憲手続法まで強行成立させた。しかし、九条改憲策動は、いま大きな障害にぶちあたっている。
 いくつかの世論調査でも、憲法九条改悪に反対する人びとの増加は明らかであり、改憲派は減少している。それは、改憲派のごり押し、そして改憲派の狙うアメリカの侵略戦争への全面的かつ公然たる参加という政策の危険性が、イラク戦争の現状、在日米軍による凶悪犯罪の続出、防衛省の腐敗・汚職の暴露などで明らかになり、九条改憲の危険性が広く知られるようになってきたことの反映である。

 こうした人びとの動きをはっきりと示したものが、「九条世界会議」の大成功であり、これは改憲阻止の運動をいっそう前進させるとともに、改憲勢力に決定的な打撃を与えるものとなった。

 「武力によらない平和、それが『9条世界会議』のテーマです。イラク、中東、アフリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界五大陸から、紛争地での平和活動や、武器や軍隊をなくした経験を語り合います。紛争を対話で解決すること。軍事費を人々のために回すこと。基地をなくして環境を守ること。核のない平和なアジアをつくること。一人ひとりを大切にする持続可能な社会をつくること……。九条の考え方を世界の平和に役立てていくために私たちに何ができるのか、話し合いたいと思います」。
 こうした目標を持った世界会議の成功を目指して、この間、全国各地で、さまざまな取り組みがなされてきた。そして、世界に、そして世界から多くの発信がなされてきた。
 世界の多くの人びととしっかりと連携して、これまでの憲法運動への結集を量的にもおおきく上回り、九条の精神を世界的なスケールで生かし、改憲阻止の運動を新たな段階に高めていくために、世界会議開催の準備が積み重ねられてきたのである。

 五月四日から六日にかけて、幕張メッセでの「9条世界会議」には、予想をおおきく上回る人びとが参加した。会議の始まるはるか前から、開場を待つ長い人びとの列ができあがった。時間がたつにつれてその後ろにまた人、人、人が並んだ。
 初日の全体会には、一二〇〇〇人が参加したが、満員のため入場できない人たちの第二会場も急きょ作られ、計一五〇〇〇人という人が結集した。

 全体会は、はじめに、ピースボートの吉岡達也さんが開会あいさつ。
 基調講演は次のお二人から行われた。
 まず北アイルランドのノーベル平和賞受賞者であるマイレット・コリガン・マクワイアさんが、北アイルランドのプロテスタント系とカトリック系の武力衝突で多くの犠牲者が出たが、ようやく平和が訪れた、平和こそ自由の基礎だ、九条こそ平和を守るものだと述べた。
 つづいてアメリカの平和運動家のコーラ・ワイスさんが、戦争のない世の中をつくるために世界中で手をつなごうと述べた。
 平和の歌「ねがい」の三〇〇〇人による大合唱やベートーベンの「第九」の演奏などがあり、そのほかにも国内外からのスピーチ・報告が行われた。

 第二部「戦争のない世界を創る」では、エマニュエル・ボンバンデ(ガーナ)、ベアテ・シロタ・ゴードン、 李錫兌(韓国)、カルロス・バルガス(コスタリカ)の海外ゲストが発言した。つづくトークセッション「イラク、アメリカ、日本」では、アン・ライトさんや高遠菜穂子さんなどの発言があった。

 午後七時からの第三部はでは、UA、FUNKIST、加藤登紀子さんによる音楽演奏・歌があり、最後に全員で「イマジン」(ジョン・レノンの歌)を合唱した。

 二日目に開かれた分科会には六五〇〇人が参加した。
 最終日の総会にも三〇〇人が参加した。

 会議事務局の発表によると、会議は次のような世界的な規模のものとなった。
 海外からの参加者は、三一カ国・地域から一五〇名以上で、参加国・地域は、アメリカ、イギリス、イタリア、イラク、インド、エクアドル、オランダ、オーストラリア、カナダ、ガーナ、韓国、北アイルランド、ケニア、コスタリカ、スイス、スリランカ、セネガル、台湾、中国、ドイツ、ニュージーランド、ネパール、パキスタン、パレスチナ、フィリピン、フランス、ベトナム、ボスニア、香港、モンゴル、ロシア。
 そして、最終日のまとめの会議は、世界会議の成果を確認するとともに、次の四つの文章を発表した。
 @「戦争を廃絶するための9条世界宣言」(三面に要旨掲載)、A「核不拡散条約(NPT)再検討準備委員会に対する9条世界会議の声明」、B「G8に対する9条世界会議声明」、C「9条世界会議 第一次レポート」。

 また、五月五日には、一一〇〇人が参加して「九条世界会議ヒロシマ」が開催され、平岡敬元広島市長は、世界の行き詰まりを打開するには九条が必要だと開会宣言で述べた。六日には、仙台と大阪での会議があり、それぞれ二五〇〇人、八〇〇〇人もの人々が参加した。

 今回の九条世界会議は画期的な成功を収めて終了した。憲法運動は、量的にも質的にも新しい地平を獲得した。改憲阻止の闘いをいっそう広めるために奮闘しよう。

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 戦争を廃絶するための九条世界宣言

         二〇〇八年 五月四〜六日  九条世界会議


 日本国憲法九条は、戦争を放棄し、国際紛争解決の手段として武力による威嚇や武力の行使をしないことを定めるとともに、軍隊や戦力の保持を禁止している。このような九条は、単なる日本だけの法規ではない。それは、国際平和メカニズムとして機能し、世界の平和を保つために他の国々にも取り入れることができるものである。九条世界会議は、戦争の廃絶をめざして、九条を人類の共有財産として支持する国際運動をつくりあげ、武力によらない平和を地球規模で呼びかける。
 人類は、戦争のない世界に向けてたえず努力してきた。歴史の中で、土着の伝統や偉大な人物たち――とりわけ女性たちは戦争に積極的に反対してきた――は、たえず人類を平和へと導こうとしてきた。
 二〇世紀の近代戦争でもたらされた犠牲は、この流れをさらに前に進めた。一九二八年のケロッグ・ブリアン不戦条約は、国策の手段としての戦争を明確に放棄した。一九四五年の国連憲章は、明確に定義された異常事態の場合を除いては「武力による威嚇または武力の行使を慎まなければならない」ことを加盟国に義務づけた。
 日本によるアジア太平洋への侵略戦争と広島・長崎への原爆投下の後に一九四七年に施行された日本国憲法九条は、武力の行使を認めるいかなる例外ももたないという点において、世界平和のための国際規範の発展におけるさらなる一歩前進である。この日本の動きに続いて、コスタリカは一九四九年、軍隊や自衛隊をもたなくても国家は平和的に存在できるという例を世界に示した。
 九条の精神はまさに、すべての戦争が非合法化されることを求めている。そして、すべての人々が恐怖や欠乏から解放され平和のうちに生きる固有の権利を有することを世界に投げかけている。

今日の世界における九条(略)

九条と地球市民社会(略)

九条の約束を実現する

 九条の主要な原則を国際レベルで実行するためには、大国から小国まですべての国々は、暴力紛争の発生を予防する責任を果たし、いかなる状況下でも武力による威嚇や武力の行使を放棄しなければならない。そして安全保障というものを、人間の観点またジェンダー・バランスの視点から見直す必要がある。
 貧困と不平等が紛争の根源的要因となっていることは、古くより知られるところである。現在のグローバリゼーションは、南北の格差をさらに深刻にしている。こうしたなかで各国政府は、国連ミレニアム開発目標の達成を第一歩として、すべての人々にとっての持続的繁栄と社会正義を築くために資源を使わなければならない。
 日本の九条は、国家の平和的存在を可能にし、人間の発展のための革新的な資金メカニズムを創ろうとする努力を後押しするものである。それは、軍備を規制し世界の資源の軍事費への転用を最小化すると定めた国連憲章二六条を補完している。
 九条の精神は、小型武器、地雷、クラスター兵器、核兵器、生物・化学兵器などを含むあらゆる軍備の拡大および拡散や、軍事産業の活動を否定する。それはさらに、安全保障政策における核兵器への依存を拒否し、核兵器の非合法化と廃絶を求めている。
 潘基文国連事務総長が再確認したとおり、世界的に軍事費を削減し限られた資源を持続可能な開発に振り向けることは、地球規模で人間の安全保障を促進し、軍事活動による環境への悪影響を軽減することにながる。
 持続可能な開発に関する世界サミットおよび国連委員会は、各国政府および企業に対して、地球の気候、水、森林、生物多様性、食糧、エネルギー供給を保全するよう求めている。同時に、気候変動は紛争の発生、悪化、助長をもたらす危険があり、気候変動の過度の影響から地球を守ることに投資することが重要である。
 二〇〇五年七月、「武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ(GPPAC)」の世界提言は「日本国憲法九条はアジア太平洋地域全体の集団的安全保障の土台になってきた」と指摘した。すなわち九条が、この地域の安定に重要な貢献をしており、包括的かつ持続的な平和の構築のために大きな潜在力をもっていることを認知したのである。世界の他の地域においては、欧州連合、アフリカ連合、東南アジア諸国連合といった形で、平和のための地域メカニズムがつくられている。東北アジアにおいては、九条が、地域の平和的統合の土台になりうる。

 私たちは、平和で持続可能な世界をつくることができる。しかしそれは、すべての国が真の多国間主義に参加し、国連をはじめとする国際的誓約を尊重してはじめて可能になる。九条を実行し、他の国々もまた九条をもつようになるためには、国際システムの改革が同時並行的に必要である。さらに市民社会は、暴力に対する平和的オルタナティブをつくり出し、地元、国内、地域、世界の各層におけるネットワークを通じて平和を構築する力をもっている。軍事主義を止め将来の戦争を予防するために、市民社会の力を発揮していこうではないか。
 これらの目標を達成するために、九条世界会議に参加した私たちは、以下の通り提言する。
 私たちは、すべての政府に以下のことを求めます。(中略)

 私たちは、日本政府が以下のことに取り組むことを奨励します。
 一、日本国憲法九条の精神を、世界に共有される遺産として尊重し、保護し、さらに活性化しつつ、国際平和メカニズムとしての潜在力を実行に移すこと。
 二、軍事化の道を歩まず、東北アジアにおける不安定な平和を危機に陥れるような行動をとらないこと。
 三、世界各地における持続可能な開発のための人間の安全保障に注力するとともに、ミレニアム開発目標の達成という経済大国としての責任を果たすことによって、国際社会で主導的な役割を果たすこと。

 私たち市民社会は、以下のことに取り組むことを誓約します。
 一、九条の主要な原則の維持・拡大を地球規模で促進していくことに真剣に取り組み、平和の文化を普及していくこと。
 二、政治的、市民的、経済的、文化的なあらゆる人権の普遍性と不可分性を認め、あらゆる人権が実現するための必須条件として、平和のうちに生きる権利を公式に認めるよう求めること。
 三、平和、人権、人道援助、軍縮、環境、持続可能な開発といった異なるセクター間の協力を強めることで能力を高め、効果的なネットワークを築くこと。地元、地域、世界レベルでの市民社会の参加をより拡大するために、政府、国家機関、国際機関との定期的な連絡チャンネルを設置すること。
 四、南アフリカの真実和解委員会の経験に学びつつ、過去から学び、紛争予防としての和解の取り組みをすすめること。
 五、人々が、調停、合意形成、非暴力的社会変革といった平和創造の技術をすべてのレベルにおいて身につけることができるよう、公的および民間の平和教育システムを支持すること。
 六、不公平を生み環境を破壊し紛争を助長するようなグローバル経済の力の集中に対抗して、平和、開発、環境に投資し、公正で非軍事的な経済をつくり出すこと。
 七、兵器の生産と貿易に反対してこれらを監視し、企業の社会的責任の責任規範のなかに平和を位置づけるよう呼びかけること。
 八、以上の提言、および、「二一世紀の平和と正義のためのハーグ・アジェンダ」(一九九九年)、GPPACの世界および地域提言(二〇〇五年)、「バンクーバー平和アピール」(二〇〇六年)、「暴力のない世界に向けたノーベル平和賞憲章」(二〇〇七年)などのさまざまな平和文書に盛り込まれた提言を、実行に移すこと。
 九、九条世界会議の成果を発展させつつ、「戦争廃絶のためのグローバル九条キャンペーン」によるフォローアップ・メカニズムを創設すること。


武力で平和はつくれない STOP!海外派兵恒久法

          
5・3憲法集会に四三〇〇人が参加

 憲法施行六十一周年の五月三日、各地で、改憲阻止、海外派兵恒久法反対の行動が展開された。

 東京では、日比谷公会堂で「5・3憲法集会」が開かれた。入場できずに会場外の日比谷公園では屋外設置されたオーロラビィジョンの大型スクリーンで集会の進行を見守る人など、四三〇〇人もの参加者があった。
 主催の実行委員会には、憲法改悪阻止各界連絡会議、女性の憲法年連絡会、「憲法」を愛する女性ネット、平和憲法 世紀の会、憲法を生かす会、平和を実現するキリスト者ネット、市民憲法調査会、許すな!憲法改悪・市民連絡会など八団体で構成され、さまざまな憲法運動が大結集し、改憲阻止闘争の中軸を担っている。
 音楽評論家の湯川れい子さんは、日本というこの小さな島国は世界に信頼される国、お役に立つ国にならなければならないが憲法九条こそがその中心にならなければならないと語った。
 元アメリカ陸軍大佐のアン・ライトさんは、アメリカのイラク戦争に反対して軍隊を辞めたこと、自衛隊をブッシュの戦争に協力させないように運動している日本の人びとともに、九条の精神を世界に広げて行きたいと述べた。
 社会民主党の福島みずほ党首、共産党の志位和夫委員長は、それぞれ改憲の動きに反対して大きく運動を合流させようとの発言を行った。
 二月に広島を出発した九条ピース・ウォークの報告、子どもパレードの歌などがあり、最後に集会アピールを確認した。
 集会のあとパレードに出発し、憲法を生かそうと訴えた。


メーデーの伝統を継承し、生活と権利、反戦平和、改憲阻止をかかげ

               
第79回日比谷メーデー開催

 「大幅賃上げ、全国一律最賃制・公契約条例・非正規雇用労働者の待遇改善・均等待遇・同一価値労働同一賃金の実現。中小、下請け、契約・パート・派遣労働者など不安定雇用と低賃金を強いられている仲間と連帯し、労働組合の団結をひろめよう」「米兵による女子中学生暴行事件、地方を力でねじ伏せる『米軍再編推進特措法』弾劾、在日米軍再編・自衛隊と米軍の『融合』・日米軍事同盟の強化・米原子力空母の横須賀配備反対、PAC3配備・移動展開阻止、新たな軍事基地の建設・機能強化を許さず、軍事基地撤去を求める沖縄をはじめとした全国の反基地闘争に連帯し、日米安保条約破棄、核兵器廃絶、反戦・平和の闘いを進めよう」などのスローガンを掲げて、第七九回日比谷メーデーが、五月一日、野外音楽堂を中心に、日比谷公園各所に多くの労働組合が集まって行われた。

 メイン会場の野外音楽堂では主催者を代表して、石上浩一国労東京委員長があいさつ。
 メーデーの伝統を受け継ぎ、労働法制改悪と経営側による違法・脱法行為と闘い、社会的な格差を生み出す構造を立て直そう。憲法に対する攻撃は、安倍内閣の退陣によって緊急性が薄れたとも言われているが、派兵恒久法など実質改憲の動きと闘わなければならない。国鉄一〇四七名の闘いはいまきわめて重大な時期を迎えている。大きな団結で勝利を勝ち取っていこう。

 連帯挨拶にたった増淵静雄都労連委員長は、格差拡大、ワーキングプア問題、年金・社会保障制度の崩壊的な危機と闘うために労働者は大きく団結しようと述べた。

 来賓の福島みずほ社民党党首(参議院議員)は、福田内閣の政策と対決し追い詰め、自民党政治をおわらせようと訴えた。

 つづいて、韓国・全国民主労働組合総連盟などのメッセージが披露され、全統一労組外国人労働者分会、均等待遇アクション21、国労闘争団全国連絡会議からの決意表明が行われた。
 メーデー・アピールが採択され、藤崎良三全労協議長の音頭での団結がんばろうで、土橋・鍛冶橋コースにわかれてのデモ行進に出発した。

第79回日比谷メーデー・アピール

 本日、私たちは、第79回日比谷メーデーを開催しました。
 メーデーは、全世界の労働者が生活と権利をかけて闘ってきた「統一行動日」であり、歴史と伝統のある「働く者の祭典」です。
 労働法制の改悪とともに横行する「偽装請負」「違法派遣」等、経営側による違法・脱法行為は、「ワーキングプア」層を増大させ、生死に関わる問題として労働者を襲っています。同時に、企業による人員削減と労働強化、競争主義の強制は、長時間労働を生みだし、過労死・過労自殺・精神疾患・労災事故を多発させ、「偽装管理監督職」やニセ「みなし労働」の現出は、「サービス残業」の温床となっています。
  春闘は、貧困と格差を問題にし、労働者の生活と権利を掲げ、賃上げの獲得とともに大企業を中心とする企業利益最優先のあり方を変えようとの決意で、各職場・地域から取り組みました。
 経営側の戦略は、企業が国際競争戦に生き残るためのコスト削減策であり、人間たる労働者がその対象としてみなされています。「構造改革」路線の大合唱は、生きるための安心・安全の崩壊を隠蔽し、「貧困」の対極として公務員バッシングを煽り、公務・公共サービスの民営化による職場合理化と社会保障制度の改悪は、利用者の生存権さえ剥奪しようとしています。規制緩和による公共政策の崩壊は、自助努力・自己責任政策を労働者市民に押し付けています。
こうした世の中にしたターニングポイントである「国鉄改革」から二十二年、私たちは一〇四七名解雇問題の早期解決を政府に決断させ、誰もが安心して暮らせる社会を求めます。また、外国人研修生・技能実習生などが人権無視の労働を強制されるケースが多発しており、移住労働者の権利確立が必要です。
 福田政権でも米国追従政策は変わらず、「新テロ特措法」を強行成立させ、「在日米軍再編」とそれに伴う自衛隊の再編・日米軍事同盟の強化、海外派兵の恒久化と憲法審査会の設置・作動による改憲攻撃は、戦争への道に踏み込んでいます。全国で基地がある故の米兵による犯罪が後を絶たず、横須賀では原子力空母の母港化が本年八月に迫っています。
 私たちは、未組織労働者、非正規労働者、移住労働者の低賃金と労働条件の改善を高々と掲げ、労働者の生活と権利を守る闘い、憲法擁護・第9条を活かし、平和と民主主義を確立する闘いに、すべての労働者の総団結のもと決起するものです。
 全世界で深刻な問題となっている地球温暖化や自然環境の破壊、飢餓問題や社会的不平等の拡大等を引き起こしているのは、市場原理優先の規制緩和・新自由主義グローバリゼーションであり、自己責任・自助努力を強制する企業利益優先の社会です。この企業利益優先のグローバリゼーションを推進するWTO、FTA・EPAに対し、世界的な反対運動が広まっています。私たちも、本年七月に開催されるG8洞爺湖サミットに反対します。
 公平・公正な社会を求め、あらゆる差別を許さず、生活と権利、平和と民主主義を掲げ、すべての労働者市民、そして戦争に反対する全世界の人々と手をつなぎ、ともに闘っていきましょう。
 私たちは、メーデーを「闘いの広場」と位置付け、統一メーデーの実現を求めてきました。今こそ、労働者の幅広い結集と一層の団結と闘いが求められていることを確認し、第79回日比谷メーデーの成功を宣言します。


連合メーデー

    非正規労働者問題への取り組みの状況


 連合の中央メーデーは、四月二六日に、東京・代々木公園で開催された。来賓として、舛添要一厚労相や小沢一郎民主党代表、社会民主党の福島みずほ党首、国民新党の亀井久興幹事長などが出席した。
 ところで連合は非正規労働センターを発足させたが、今年のメーデーでの取り組みはどうだったか見てみよう。
 高木剛会長の主催者あいさつでは「私たち連合は、昨年の大会でこの非正規雇用の問題を当面の最重要課題の一つと位置づけ、昨年一〇月一五日に非正規労働センターを立ち上げ、処遇の改善や労働者派遣法の見直しなど働き方のルールの是正、非正規雇用労働者の組織化やネットワークづくり、相談活動などの活動を続けています。非正規雇用問題に関する課題は、多岐にわたりますが、一つずつ問題の解決を目指して努力していかなければなりません。この非正規雇用問題は格差社会の是正のための最大の課題であり、私たちの職場にも係わる問題です。皆さんの非正規雇用労働者問題に対するご理解、ご協力を切にお願い申し上げる次第です」とあった。  
 昼過ぎからは、野外音楽堂で、連合としては初めての「非正規労働メーデー」を開いた。高木会長と作家の雨宮処凛さん、非正規労働者の組織化に取り組む労組などが発言した。
 まだ連合の取り組みは始まったばかりで、大労組が真剣に取り組んでいるようには見えないし試行錯誤の段階にあることは確かだが、こうしたテーマが連合を含めてどこでも取り上げられるようになったことは確認できた。企業内組合の巻き返しに抗して、この動きをいっそう進めていくべきである。


労働者派遣法の抜本改正に向けて

     自民党を除く各党が参加して院内集会


 労働法制に対する運動の前進は、改悪阻止の段階から一歩進んで、一部では改善を求めるところにまで到達している。バブル経済崩壊後、企業はリストラと非正規雇用(@短時間労働、A有期契約、B間接雇用)の拡大を強行してきた。今日、非正規雇用は働くものの三分の一、とくに女性では過半数になっている。そのなかで、偽装請負や日雇い派遣など深刻な事態が蔓延し、マスコミも取り上げるようになってきている。
 四月一七日、参院議員会館で、「今こそ希望のもてる働き方の実現を! さあつくろう派遣法改正案、各党の改正案を聴く院内集会」が開かれた。
 主催は、格差是正と派遣法改正を実現する連絡会で、昨年の一〇月、一一月、今年に入ってからは一月と連続して院内集会を開いてきた。
 主催者側は、昨年七月参院選での野党圧勝という状況をうけて今の通常国会では、参院先議の議員立法を通じての派遣法の抜本的改正を目指している。
 院内集会では、はじめに主催者を代表して、全国ユニオン事務局長の安部誠さんが、いまこそ国民運動を背景に派遣法の抜本的改正案を実現しようと次のように述べた。院内集会は四回目となったが回を重ねるごとに活動が具体化し前進してきたのを感じる。派遣法の制定そして度重なる改悪が、現在の日雇い派遣、ワーキングプアなどの悲惨な状況をもたらしている。運動を大きく盛り上げて抜本的な改正を勝ち取ろう。今日の集会をその礎にしよう。
 集会には自民党を除いて四野党と公明党の国会議員が参加し、各党からの派遣法についてさまざまな改正案の提案が紹介された。
 国会議員の発言順は、名前のアイウエオ順というユニークもので、国民新党の亀井亜紀子参議院議員、日本共産党の小池晃参議院議員、社会民主党の近藤正道参議院議員、公明党の谷合正明参議院議員、民主党の山田正彦衆議院議員が発言した。
 各党の提案を受けて、中野麻美弁護士(派遣労働ネットワーク代表)、池田一慶ガテン系連帯共同代表、関根秀一郎派遣ユニオン書記長が各党に質問を行った。
 つづいての特別報告は、武庫川ユニオンからの尼崎市役所臨時職員の争議解決報告と不当労働行為と闘うKDDIエボルバユニオンからの発言があった。


自衛隊のイラク派遣は違憲

     
 画期的な名古屋高裁判決が確定

 四月一七日、名古屋高等裁判所民事第三部は、自衛隊のイラクへの派兵差止等を求めた事件(原告・「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」)の判決において、派遣差し止めの訴え自体は不適法として原告側控訴を棄却したものの、「自衛隊の活動、特に航空自衛隊がイラクで現在行っている米兵等の輸送活動は、他国の武力行使と一体化したものであり,イラク特措法二条二項,同三項かつ憲法九条一項に違反する」という画期的な判断を下した。
 「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会・自衛隊イラク派兵差止訴訟弁護団」は、この判決の意義を、「この違憲判決は、日本国憲法制定以来、日本国憲法の根本原理である平和主義の意味を正確に捉え、それを政府の行為に適用したもので、憲政史上最も優れた、画期的な判決であると評価できる。判決は、結論として控訴人の請求を退けたものの、原告らを始め日本国憲法の平和主義及び憲法九条の価値を信じ、司法に違憲の政府の行為の統制を求めた全ての人々にとって、極めて価値の高い実質的な勝訴判決と評価できるものである」としている。
 この判決は形式的には国側の勝訴だから国側からは上告できないので、原告側が上告しなければこの判決が確定することになり、訴訟の会は上告せず、ついに五月二日、イラクでの航空自衛隊の行動は違憲であるという判決が確定したのである。
 これまでの裁判の判例では、自衛隊を違憲とした長沼ナイキ訴訟の札幌地裁・福島判決(一九七三年)があり、また米軍駐留を違憲とした判決には砂川事件の東京地裁・伊達判決(一九五九年)があるが、ともに上級審で逆転されている。

 今回の名古屋高裁判決は、イラクでの空自の活動を詳細に認定し、政府の自衛隊海外派遣に関する解釈を踏まえた上で「武力行使に当たる」と判断している。また、「平和的生存権」についてもふれ、具体的な権利と判断している。これらのことは、政府の戦争政策とそれへの参加の強要に対して差し止めや損害賠償請求ができるということであり、憲法に違反して存在し、アメリカの侵略戦争の一翼を担って活動する自衛隊と自民党政府の行動を縛ることのできる法的な根拠ともなる。
 しかし、それには今後の民衆的な運動のおおきな盛り上がりが前提条件になることは言うまでもない。

 政府・自衛隊は、この判決に狼狽し、必死に、この判決を無視しようとして画策している。この違憲判決を広め、戦争策動に反対する運動のための鋭利な武器としていくことが必要である。


民営化・格差社会を問う! ノーモアJR尼崎事故! 4・20尼崎集会

 よく晴れた日曜日となった四月二〇日。 JR尼崎駅前の小田公民館で「民営化・格差社会を問う! ノーモアJR尼崎事故! 命と安全を守れ! 4・20尼崎集会」が開催されました。会場には約二〇〇名の市民や地域の労働者・労働組合員が集まり、熱気のある集会が行われました。
 ジャーナリストの安田浩一氏から「民営化」・格差社会と安全問題」と題して約一時間の講演があり、JR西日本は本当に変わったのかなどのテーマで掘り下げたお話を受けた。また御遺族からのメッセージとしてビデオ上映もありました。
 そしてJRの現状について国労組合員からの発言がありました。 
 鉄建公団訴訟原告団団長の酒井直昭氏は、この間の裁判の流れや闘う決意が述べられた。
 集会後には、事故現場までデモ行進を行い、参加者は事故現場で献花をしました。
 中曽根から小泉そして安倍・福田と続く国民の生活を破壊する政治にはNO!の声を巻き起こそう。(大阪・N)


環境破壊と歴史偽造を糾弾し、「昭和の日」反対行動

 四月二十九日、「許すな! 環境破壊と歴史偽造―反『昭和の日』4・29行動(主催 集会実行委員会)が闘われた。

 文京区民センターで集会。
 はじめに関東学院大学教授の林博史さんが、「日本の戦争責任・歴史認識問題と『過去の克服』―沖縄戦・『慰安婦』をてがかりに」と題して講演。
 現在、百人斬り訴訟、「集団自決」訴訟、DV問題、ジェンダーでの攻撃、映画「靖国」妨害などなど右からの攻撃がかけられてきている。
 沖縄戦への教科書検定問題では、抗議の声に押されて一部記述の訂正が行われたが、教科用図書検定調査審議会日本史小委員会では、訂正の審査にあたって「軍の命令により行われたことを示す根拠は、現時点では確認できていない」「過度に単純化した表現」はダメ、としてあくまでも日本軍の強制は認めない立場を維持した。
 「集団自決」を引き起こした原因は次のようなものであった。
 @住民に対しても、捕虜になるな、捕虜になることは恥、との教育宣伝、A米軍に捕らえられると、男は戦車でひき殺され、女は辱めを受けたうえでひどい殺され方をすると脅迫・恐怖心の扇動。若い女性には、とりわけ深刻だった。中国での経験が日本兵から語られることによってそれらは増幅された、B米軍に投降しようとする者は非国民、裏切り者と見なされ、殺されても当然であるという意識があり、それも単なる脅しではなく、実際に日本軍が殺害した、C「軍官民共生共死の一体化」があり、日本軍とともに住民も「玉砕」するという意識、Dあらかじめ日本軍あるいは日本軍将兵が住民に自決用の手りゅう弾を配布し、いざというときはこれで自決せよと命令あるいは指示・勧告があった、E慶良間諸島の住民が「集団自決」するきっかけとなっているのが、「軍命」が下されたと聞いたことであった。
 このようにして、「軍命」に従って自決するのが当然であると信じ込まされていたのである。まさに、日本軍とその当時の国家の強制・誘導・脅迫・教育などによって住民が死を強いられたものだったのである。
 沖縄だけのことではない。日本全体が侵略戦争のなかで「集団自決」を強いられていたのである。特攻隊にしても自発的に志願で行ったものではない。こうしたことは、捕虜を許さない日本軍・国家の思想が生み出したものであった。餓死、「玉砕」、捕虜虐待、南京虐殺、捕虜処刑があり、そうした侵略戦争の行き着いた先に沖縄戦があったのである。
 とくに中国戦線での経験が、日本軍将兵・住民に与えた影響は大きい。沖縄守備隊の司令官の牛島満も参謀長の長勇も南京戦で大きな役割を果たした。中国戦線での三光(殺し尽くす・焼き尽くす・奪い尽くす)作戦や性暴力、またシンガポール・マレー半島での華僑粛清などが沖縄に持ち込まれたのである。
 現在の教科書問題は、こうした日本がおこなった戦争全体の認識にかかわる問題であり、日本軍が自国の民衆を犠牲にしたことを隠蔽しようとする意図に貫かれたものなのである。
 「新しい歴史教科書をつくる会」の目標は、慰安婦、南京事件、「(強制された)集団自決」の再評価ということであるが、そのやりかたは、被害者・住民の証言は信用しないということ、全体の状況から切り離し一点のみからすべて否定する手法をとることだ。こうして、軍命令がない、よって強制ではないとする。沖縄の人たちは、金ほしさにウソを証言している、また元慰安婦は援護の金ほしさに軍命令をでっち上げたと攻撃しているのである。
 しかし、いまこうした言説は通らなくなってきている。一九九〇年代に世界の認識の転換があったのである。各地で戦場性暴力がくり返されるのは、日本軍「慰安婦」の不処罰がもとになっており、女性の人権、人間の尊厳の回復を求める声の高まりのなかで日本人の戦争観が問題になってきているのである。そして二〇〇〇年一〇月には、国連安保理が「すべての国家には、ジェノサイド、人道に対する罪、性的その他の女性・少女に対する暴力を含む戦争犯罪の責任者への不処罰を断ち切り、訴追する責任があることを強調する」ことを決議した。これを発展させたのが、同年一二月の女性国際戦犯法廷だった。日本のメディアは黙殺し、そのうえ中傷まで行ったが、世界的な流れはとまらなかった。その後、米議会決議(二〇〇七・七)やEU議会決議(二〇〇七・一二)などが次々と出されるようになっているのだ。

 つづいて、ジャーナリストの天笠啓祐さん(市民バイオテクノロジー情報室代表)が、「地球環境破壊・食料・エネルギー問題を考える」と題して、石油価格や穀物価格が高騰し、地域紛争が深刻化し、悪化する治安や格差社会、そして温暖化等の地球環境の異常事態が起こっている原因はグローバリズム(自由競争の国際化)にあるとして、勝ち組・負け組二極分化の弱肉強食の世界がもたらされている実情について報告し、最後に「グローバル化に対抗する論理」として、スローフードの精神とGMO(遺伝子組換作物)を許さないこと、多様性と経済規模の縮小、代替エネルギーではなく地域循環型社会、有機農業の推進と農業の多様性、輸入食品から地産地消などを提起した。

 集会は各参加団体からのアピールを受け、集会宣言(別掲)を確認し、右翼の妨害を撥ね退けながらデモを貫徹した。

反「昭和の日」行動 4・29集会宣言

 …
 殺戮と破壊がすべての戦争と、アジア諸国への侵略・占領・植民地支配の歴史。その戦争責任を取らずじまいの敗戦後の歴史。その戦後とは高度成長と賞賛されつつ、国内外で公害をたれ流し、朝鮮戦争やベトナム戦争などの「特需」によって、世界の経済大国となっていった歴史でもあった。「昭和」と呼ばれる時代と、戦前の実質の権力者、戦後の最高権威者としてあった昭和天皇ヒロヒトについて語るとき、これらの歴史を忘れるわけにはいかない。

 天皇制の現在は、アメリカの世界戦争に積極的に加担していく戦争国家や、環境破壊の先頭を走る経済大国の、あるいは人々を家父長的モラルにしばりつける女性差別、特権階級の頂点に座する身分制格差社会の象徴としてある。その天皇と天皇一家は、日本社会の産業・経済界がつくり出している環境破壊や、多くの人権・生存権が踏みにじられている事態を隠ぺいし、一方ではそういった事態に心を砕くという演出を繰り返しているのだ。そもそも五月四日に移された「みどりの日」も、天皇代替わりの際につくり出された、戦争責任とは無関係の環境を心配する「クリーンでグリーン」な天皇の演出でしかない。
 …
 私たちは、天皇制の問題と向き合うなかでこそ、日本の戦争の歴史と向き合うことができることを確信している。即位二〇周年を迎える来年に向け、天皇制はあらたな演出、イメージづくりを模索し始めるだろう。私たちはその欺瞞を撃ち、この社会に生きる人、の意思で天皇制を葬りされる時をめざし、運動をすすめていきたい。
 戦争を行うための改憲、先進国のしかも支配層のためだけにあるG8サミット、歴史への欺脆と偽造・改竄を繰り返す天皇制国家。私たちはこれらと対決する言論を、これからも多くの人々とともにつくりあげ、ともに行動を起こすことを宣言する。


せ ん り ゅ う

 福田ちゃん小沢党首に駄々をこね

 貧困の苦労も知らぬ苦労節

 道路から年金からもドロボー国家

 後期とか言われ国家もいじめする

 違憲出た米兵空輸の罪深し

 九条を輸出しようよ会議する

 九条を語ると世界に敬われ

          ゝ 史(ちょんし)

○ 四月九日福田首相が野党に下った先輩小沢氏に苦労の弁可愛かったね。


複眼単眼

    
安倍はやはり究極の護憲派だった

 「安倍首相は究極の護憲派だ」という言葉は、昨年春の憲法調査特別委員会で民主党の枝野幸男委員が吐き捨てるように発言した言葉だ。
 枝野は「安倍はこんな強行採決のような乱暴をして、民主党が協力できないようにする。野党の協力なしに国会の三分の二は確保できないのに、安倍は、本当に改憲をするつもりがないんじゃないか」と言いたかったのである。
 私はこの枝野発言を一種のパロディとして高く評価していた。改憲手続き法を野党との協調体制をぶっ壊してまで強行し、公約である「自らの任期中の改憲」実現に突っ走ろうとした安倍晋三。改憲手続き法の成立は改憲スケジュールの前進ではない、自民党の改憲スケジュールを大幅に後退させるものと読んでいた。
 事実、改憲手続き法は成立したが、現在、憲法審査会の設置は止まったままだ。参議院選挙で改憲を公約の第一番に掲げた安倍は野党に大敗して、政権を投げ出した。
 「戦後レジームからの脱却」等と称して、教育基本法の改悪、防衛省の昇格などの新国家主義的な政策を相次いで強行した安倍内閣の暴走政治は、多くの国民の不安を呼び起こした。このまま自民党の安倍に任せておいては危ないという、平和憲法の下で培われた平和主義、民主主義的感情を呼び覚ました。
 安倍首相のこの一年はまさに国民の「KY(空気が読めない)」状況だった。この結果が、各メディアによる今年の憲法記念日を前にした憲法に関する世論調査にはっきりとあらわれた。
 この一年、安倍の改憲の音頭取りとは正反対に、「改憲反対」「9条護憲」の国民意識が急増した。
 その最たるものが四月八日に発表された読売新聞の世論調査だ。同調査では一五年ぶりに改憲賛成派が改憲反対派に逆転された。改憲賛成は四二・五%、改憲反対が四三・一%となった。改憲反対が昨年より四・〇%増え、改憲賛成が三・七%減った。九条については変えないが六〇%、変えるが三一%とダブルスコアであった。
 朝日の世論調査ではこの一年で九条改憲しない派が一七%も増えて、六六%になり、九条改憲派は一〇%減って二三%になった。これはダブルスコアならぬ三分の一だ。改憲賛成か、反対かは読売調査と異なり、五六%が賛成、三一%が反対で、反対は昨年より四%増えたが必要は二%減っただけであった。
 北海道新聞の調査では九条維持が昨年より九%増えて五八%になり、九条改憲は一四%減って三一%となった。改憲容認は七一%、反対は二四%と、これも傾向としては朝日型だった。
 いずれにしても安倍の一年は九条への危機感を駆り立てた一年であったことがよくわかる世論調査結果だ。  (T)