人民新報 ・ 第1248号<統合341号>(2008年12月15日)
目次
● 麻生内閣・自民党政治は完全に行き詰った 必ず与野党逆転を勝ち取ろう
● 派遣労働者の雇い止め切り捨てを許すな! 派遣法の抜本改正を求める!
● パナソニックは解雇撤回・直接雇用を認めよ
● 九条の会が第三回全国交流集会 小学校区単位の「会」の結成に意欲的取り組みを
● 田母神問題から三無事件をふりかえる
● KODAMA / 「新しい階級社会・新しい階級闘争」を読んで
● せ ん り ゅ う
● 複眼単眼 / まず派兵ありきの特措法よりイエメン沖海賊問題でなすべきこと
● 年末カンパのお願い 労働者社会主義同盟中央委員会
麻生内閣・自民党政治は完全に行き詰った
必ず与野党逆転を勝ち取ろう
追い詰められる麻生
麻生政権は断末魔の様相を色濃くしてきている。福田に代わり「総選挙の顔」としてようやくにして政権に手に入れた麻生だったが、当初の傲慢な強気はどこへやら、記者会見でも上目づかいの卑屈なヘラヘラ笑いに象徴されるようにいまやまったく自信のない様子があらわであり、ただひたすら超短期政権・自民党政治幕引き総理大臣としての「汚名」を記録に残されるのを避けることのみを願って不安な日々を送っている。
そして、一二月上旬には世論調査で数字的にその現実がはっきりと示されることになった。
各社の調査でもほぼ同じような傾向を示しているが、そのうちでももっとも自民に近く、自民・民主大連立構想など保守政治の補修・再編でつねに策を弄している渡辺恒雄がグループ本社代表取締役会長・主筆をつとめる読売新聞のものを見てみる。
読売新聞社の一一月初めの調査で麻生内閣の支持率は四〇・五%だったが、それが一二月五〜七日に実施した全国世論調査では、二〇・九%とほぼ半減へと急激に下降した。逆に、不支持率は六六・七%(前回調査では約四一%)約二五ポイント跳ね上がった。三〇%といわれる危険水域をすでに下回ってしまっているのである。
また、麻生首相と小沢民主党代表のどちらが首相にふさわしいかという問いでも、麻生が二九%(前回比二一ポイント減)に落ち込み、小沢は三六%(一四ポイント増)となり、ついに逆転した。麻生の「国民的人気」なる幻想を最後のよりどころとして総選挙で自民・公明与党の優位を保とうとした思惑も完全に消滅することになったのである。
このような調査が発表された一二月八日の自民党役員会で、麻生は内閣支持率が急落したことについて、「これはすべて私の責任だ」と述べざるを得なくなったのである。
政局の一層の流動化
麻生内閣は発足二ヶ月あまりでどん詰まり状況に追い込まれてしまい、麻生の政権投げ出し、自民党分裂も否定できない情勢である。麻生の下での総選挙では、自公与党の大敗北は避けられない事態いとなったことが確実になる中で、政局はいっそう流動化し始めている。野党の攻勢はもちろんだが、与党議員もこのままでは議席を失う恐怖心からさまざまな動きが出てくるようになってきている。まさに落城寸前の状況の現出である。
一二月九日付の読売社説「内閣支持率急落 麻生自民党は立ち直れるか」は「(調査の結果は)政権維持がおぼつかなくなる水準の数字だ。支持率急落の原因は、この一か月間の『麻生政治』にある」として、三つの理由をあげた。@追加景気対策を盛り込む第二次補正予算案の延長国会への提出を見送ったこと、A定額給付金の所得制限をめぐる首相発言の揺らぎ、B「医師は社会的常識が欠落している人が多い」といった首相の失言や漢字の誤読、である。そして、「当面なすべきは、首相とともに、有効な景気・雇用対策の立案と遂行に全力をあげること」だとする。ほとんど内容のない社説であり、あの読売新聞でさえ麻生内閣の惨状にはまったく手の施しようがないと突き放したような書き方であった。
日々強まる解散・総選挙の早期実施の大衆的な声を前に麻生はひたすら逃げの延命策を取ろうとしている。しかし、この世の中は麻生個人の「名誉」をまもるなどいうくだらないことのために存在するわけではない。
いまこそ、麻生内閣をいっそう追い詰め、これを自民党政治の「最終内閣」として与野党逆転を実現しなければならない。麻生には、自分の祖父(吉田茂)がスタートさせた戦後保守政治の幕引きの役割が与えられたのである。
新テロ特措法阻止
解散・総選挙による与野党逆転が焦眉の課題ではある。だがいかなる形でそれを実現するかが今後の日本政治の行方に重大な影響を及ぼすことを見ておかなければならない。
国会の会期末は一二月二五日、通常国会は来年一月五日に召集されることになりそうである。
一二月八日、民主党の輿石東参院議員会長と簗瀬進参院国対委員長は終盤国会への対応として、参院で審議中の金融機能強化法とともに新テロ対策特別措置法改正案について、会期内に採決する方針を確認した。この二法案は、参院では野党の反対多数で否決されるが、与党は両案を衆院で再可決して成立させることになる。民主党の方針は、与党に重要法案成立させることで早期解散を狙っているのだが、この方式は、この国会会期のはじめからのものであった。だが、それを麻生に裏切られ続けて、解散先き送りの結果となった誤った戦術であったというべきである。さらに重要なことは、重要対決法案を選挙のための取り引き材料として闘いを放棄することである。こうして、新テロ特捜法はまたも成立させられる運びとなっている。
総選挙で、民主党が衆院で単独過半数を占めるようになった場合、民主党は他の野党の意見を尊重せず、また大連立策動に乗って、実質上、自民党政治の延命に手を貸すことになるだろう。
しかし現在の参議院は、与野党逆伝状況ではあるが、民主党単独過半数ではない。その結果、共産党、社民党、国民新党、無所属などの主張も取り入れた議会運営、法案提出などという「良い」パフォーマンスを生んでいるのである。この状況を衆院でも実現することが、これからの政治にとって重要な意味を持つのであり、与野党逆転をぜひともこうした形で勝ち取ることでなければならない。
激動の二〇〇九年へ
いま日本は歴史的な大転換の中にある。これまでの転換期との今回の違いは明瞭である。一九七〇年代中期には、高度経済成長の終焉と前首相の逮捕=ロッキード事件をはじめ数々の事件が続発し、社会的基盤の動揺と人心の不安が高まった。しかし、当時の財界の指導者の一人だった日経連の桜田武は、日本的労資関係と警察・検察の権威の二つの安定帯があればなんら問題はないと豪語していた。しかし、今、非正規雇用労働者の増大、正社員を含めての無慈悲な解雇の強行などによって労働者は会社への忠誠心を希薄化させ、同時に警察・検察の腐敗はその権威をおおきく揺るがせている。しかも自民党政治と奥田・御手洗とつづく経団連の強欲かつ先見の明のない財界の搾取・収奪路線は、階級的対立をいっそう鋭いものにしている。
日本の変動・転換は世界的地殻変動の一環であり、それに連動するものである。八年にわたるアメリカ・ブッシュ共和党政権は、イラク・アフガニスタンの対テロ戦争での敗北とアメリカ発の経済恐慌の中で、民主党オバマに政権を奪取されることになった。オバマに政権が変わったといってもアメリカが直面する危機が簡単に克服されるわけではなく、アメリカはその世界支配を保つために対テロ戦争の実質的な継続をせざるをえないし、世界資本主義の危機からの脱却もきわめて困難である。世界的にもこれまでのシステムの根本的な変革が求められるようになってきている。市場万能主義の新自由主義政策は破綻したが、多国籍企業と列強は犠牲をより弱いものにしわ寄せして延命しようとしている。この中で、労働運動の再活性化をはじめ民衆運動の高揚、国際的な反グローバリゼーション運動、中南米諸国に代表される反米民主政権の誕生、そして新しい左翼勢力の形成に向けての努力などが世界的に見られるようになってきている。
来年の日本政治の最大の課題は、総選挙で与野党逆転を実現することであり、自民党政治を終焉させるという民衆の側からの戦後政治の真の総決算である。だが、このことは単に総選挙での投票行動によって実現されるものではない。労働運動、反戦平和の闘い、改憲阻止などを職場・地域から地道に作り出し、その力を背景に自民党政治を打倒し、同時に民主党の動揺を制動していかなければならないのである。
断末魔の麻生内閣を打倒しよう!
自民党政治を完全に終焉させよう!
労働運動をはじめ民衆運動の力強い前進を勝ち取ろう!
派遣労働者の雇い止め切り捨てを許すな!
派遣法の抜本改正を求める!
一二月四日、日比谷野外音楽堂で、「まやかしの顛派遣法改定案国会上程弾劾!派遣労働者の雇い止め切り捨てを許すな!派遣法の抜本改正を求める12・4日比谷集会」が開かれ、二〇〇〇人を超える労働者が参加した。この集会は、雨宮処凛(作家)、宇都宮健児(弁護士・反貧困ネットワーク代表)、鎌田慧(ルポライター)、小島周一(日本労働弁護団幹事長)、斎藤貴男(ジャーナリスト)、佐高信(評論家)、堤未果(ジャーナリスト)、本田由紀(東京大学大学院准教授)、森ます美(昭和女子大学教授)、湯浅誠(自立生活サポートセンターもやい事務局長)、脇田滋(龍谷大学教授)、西谷敏(近畿大学教授)、石坂啓(漫画家)、神田香織(講談師)、中野麻美(NPO法人派遣労働ネットワーク・弁護士)などの人びとによって呼びかけられたものである。
集会でははじめに司会の棗一郎弁護士が次のように述べた。
最近、厚労省は来年三月までに派遣労働者などの解雇が三万人を超すだろうという調査結果を発表した。しかし、そんなものではない。実際には、数十万人に上ることになるだろう。雇用契約が切られれば、ただちに寮なども追い出される。この寒空に、仕事もなくなり、そして住むところもないという酷い目に多くの非正規雇用の労働者が追い込まれている。そして解雇は正規雇用の労働者にも広がっている。こうした状況を作り出したのは、一九八五年にでき、その後たびたび改悪された労働者派遣法である。これで非正規雇用が急激に増えてきたのである。政府・与党は、悲惨な現実からの批判の高まりをまえに、派遣法の改正案を出してきたが、それはまったくまやかしのものだ。必要なのは、抜本的な改正なのである。今日の集会を成功させ、労働者、市民の手で国のすがたを変えていこう。
よびかけ人を代表しての発言は鎌田慧さん。
労働者派遣法こそ悪の根源である。わたしたちは派遣法解体のためにとりあえず改正から始めていくということであり、目標はこれを完全になくしてしまわなければならないということだ。派遣法は、戦前・戦中の中間搾取・たこ部屋制度をなくそうとして制定された職業安定法を骨抜きにして、ピンはねの労働者供給を合法化した。この法律は、労働者解雇法、ホームレス製造法とよばれるべきものである。労働者・市民は力をあわせて自らの生活を守っていかなければならない。労働者の生活の手段を奪う解雇にはすべてをあげて闘わなければならない。しかし今、一人は万人のために、万人は一人のためにという、こういう労働組合の基本的な精神が失われてきている。一人の労働者の運命をみんなで守っていくことがなにより必要なことだ。これから年末にかけて状況はいっそう厳しいものとなり、生命の危険にすら去らされる人がたくさん出てくる。世界的に見ても、資本主義はすでに末期症状を呈してきている。自民党政府を打倒して、労働者が人間らしく生きられる尊厳ある社会をつくるために、これからも長い闘いになるがともにがんばろう。
つぎに「現場の仲間の声」。一方的な「派遣切り」「不当解雇」の実情の報告と反撃の決意表明が集会参加者の拍手のなかで続いた。いすゞ、日産オートモーティブ、阪急トラベルサービス、グッドウィル、パナソニック、大分キャノンなどの労働者だ。その中では、「僕たちにも二〇〇九年を迎えさせてください」「寮を追い出さないでください」などの切実な要求とともに、新たに労組を結成したり、すでに闘いの中で裁判闘争に勝利したりしている経験が語られた。
国会からは、民主党代表代行の菅直人衆議院議員、共産党は幹部会委員長の志位和夫衆議院議員など七名、社民党は党首の福島瑞穂参議院議員など七名、国民新党は副幹事長の亀井亜紀子参議院議員が集会に参加し、各党を代表しての発言が行われた。
弁護団挨拶では、日本弁護士連合会の宇都宮健児弁護士、労働弁護団の小島周一幹事長、自由法曹団の松井繁明団長が紹介され、代表して宇都宮弁護士が次のように挨拶した。
日弁連は、毎年、人権擁護大会を開いているが、今年一〇月の大会は三つある分科会のひとつでワーキングプア問題を扱った。そして大会宣言として「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」を満場一致で採択した。大会には、大企業の顧問士など経営サイドの弁護士も参加していたが、ひとつの反対もなく大会決議となった。これは大変重要な意味を持つものである。政府の改正案が上程されたがこれはまったく不十分なものである。これにたいし日弁連は一一月にも、「ワーキングプアの解消に向けて〜労働者派遣法の抜本改正を求める院内集会」をひらいた。いま貧困問題はさしせまった問題となっている。今日の集会を契機にして派遣法の抜本改正にむけた論議をつくりだしていこう。
集会宣言(別掲)を確認してデモ・請願に出発し、衆参両院の議員面会所では野党の議員とともに、派遣法抜本改正の運動を一段と盛り上げていこうとシュプレヒコールをあげた。
12・4集会アピール
今、日本国中で、派遣労働者に対する「派遣切り」と有期雇用労働者に対する解雇・雇い止めの嵐が吹き荒れている。時は師走に入り、厳冬の季節の中に放り出され、「雇用の調整弁」として無残にも使い捨てられている多数の労働者があふれている。製造、流通などの現場で働く派遣労働者の中には、職を失うばかりか、住居まで追い出され、路上生活を余儀なくされて、年の瀬の街の中を流浪するしかない者たちが大勢いる。日本の非正規雇用労働者全体の生存が脅かされている非常事態である。
私たちは、このような労働者の惨状を断じて容認することはできない。「派遣切り」「更新拒絶」を安易に許すような労働市場を作り上げた者たちを決して許しはしない。全ての使用者は直ちに派遣切りと更新拒絶を止めるべきであり、雇用を維持する社会的責任を果たさなければなら
ない。政府は直ちに緊急の雇用対策と住居・生活対策を策定し実施しなければならない。それとともに、今こそ、このような《ワーキング・プア》を生み出す温床となっている労働者派遣法を抜本的に改正しなければならない。
ところが、今年一一月四日に政府が閣議決定し、臨時国会に上程した「労働者派遣法改正案」は、貧困と格差が広がるわが国の社会において、ワーキング・プアの象徴である日雇い派遣労働者を含む多くの派遣労働者の不安定な雇用と低賃金労働を解消していくには程遠い内容であり、
実効性に極めて乏しいものとなっている。それどころか、政府・与党の派遣法改正案は、派遣先による派遣労働者の事前面接などを解禁し、さらには、派遣受け入れ期間の制限のない業務について、派遣先の労働契約の申込み義務を免除することとなっており、この改正案は常用型派遣の固定化を容認し、「常用代替を防止し、派遣は臨時的・一時的な雇用形態である」という労働者派遣法の基本的理念に反するものであり、派遣労働者保護のための規制強化ではなく、規制を緩和するものとなっている。
私たちは、このような政府・与党の派遣法改正案に断固反対するとともに、以下のような抜本的改正を強く求める。すなわち、第一に、日雇い派遣に例外業務を認めず全面的に禁止すること、第二に、三〇日以内の期限付雇用を禁止するなどという中途半端な改正ではなく、登録型派遣を廃止するか真に労使対等の実態のある専門業務に限定し、期限の定めのない常用型派遣を原則とすること、第三に、平均的なマージン率の情報提供義務では何の意味もなく、派遣料金のマージン率規制について上限規制を設けること、第四に、派遣労働者の賃金等の待遇改善策について、派遣先の同種労働者との「均等待遇」を使用者に義務付けること、さらに、偽装請負・違法派遣があった場合の派遣先との《みなし雇用》規定を創設し、違法派遣を受け入れた派遣先の雇用責任を厳しく問うことなどである。
現在の労働者派遣法は、「労働を使い捨て、人間を使い捨てる法律」である。労働は市場で自由に調達できる商品ではない。労働は人間が人たるに値する生存を保障するものでなければならない。一部の強者や富裕層だけが優遇され、社会的弱者や貧困層が見捨てられるような社会は断じて認められない。
本日、日比谷野外音楽堂に集まった私たちは、日本の職場で働く全ての労働者とその家族、地域の市民、学生たちと共に連帯して、政府・与党の派遣法改正案に断固として反対し、この臨時国会から来年の通常国会へかけて、真の労働者保護が実現する労働者派違法の抜本的な改正を成し遂げる決意である。とめどもなく非正規雇用を拡大し、ワーキング・プアを生み出してきた規制緩和政策の流れを変えて、真に労働者・市民のためになる労働法制の立法化を実現していくことをここに宣言する。
パナソニックは解雇撤回・直接雇用を認めよ
一二月一四日、日比谷野外音楽堂で、「パナソニックの偽装派遣を告発し、解雇撤回・直接雇用を求める佐藤さんを支援する会」による集会が開かれた。
佐藤さんは、約一八年間パナソニック(旧松下)電工のショウルームで働いてきたが、松下がパナソニックに社名変更する大キャンペーンを行っている最中、雇止め解雇された。佐藤さんの訴えは「私が所属していたのは、パナソニック電工の完全子会社である派遣会社(ABM)で、社員として採用されたのですが、会社の都合で転籍させられ、そしてまた突然にグループ内別会社(HEG)への転籍を求められ、提示された労働条件は月額賃金で四割の賃下げと六ヶ月単位の契約というものでした。そして『仕事は今までと全く同じ。一切の条件交渉はしない。答えは残るか残らないかだけでいい』と通告されました。私は労働組合に加入し、団体交渉を申し入れて交渉を始めました。しかしパナソニック電工グループは、私をダマしこの最中に『転籍拒絶・雇止め解雇』を決定し強行したのです。…私は、一一月一四日福島地裁郡山支部に『業務偽装による違法派遣』で、派遣契約そのものが当初より無効であり『親会社であり派遣先であるパナソニック電工との間に黙示の労働契約が存在する』として地位確認を求めることを中心に三社を提訴しました」。
集会では、福島や宮城の仲間たちや松下プラズマディスプレイ社の偽装請負と闘っている吉岡力さんや全労協全国一般全国協の石川源嗣副委員長などからともに闘い勝利しようとの挨拶が行われた。
九条の会が第三回全国交流集会
小学校区単位の「会」の結成に意欲的取り組みを
全国で七、二九四
一一月二四日、日本教育会館で「九条の会第三回全国交流集会」が開かれ、九〇〇人を超える人びとが参加した。
事務局長の小森陽一さんからは、現在、地域・分野あわせて七、二九四にまで九条の会がひろがったとの報告があった。
呼びかけ人の発言
はじめに四人の呼びかけ人によるあいさつが行われた。
大江健三郎さん
(大江さんと岩波書店が被告になっている)沖縄戦についての裁判では、原告側が、裁判を「政治的に大きな目的を持っている」ものとして争っていることがますますはっきりしてきた。しかし私は政治的目的はあまり考えず、日常生活の中での問題として考えてきたが、これは九条の会のおかげだ。いろいろ地方に出かけて講演しているが、「九条の会」に何世代もの家族が入っているところがある。こうしたことが平和主義を伝統にしていくものだと思う。
奥平康弘さん
田母神論文はまったくでたらめなものだ。これが仲間内での懸賞論文で第一位になっている。政府は、「極めて不適切であった」としているが、こうしたなかで、公務員や教員などへの規制を強める動きとなっていることを見ておかなければならない。
澤地久枝さん
田母神という人は、この懸賞論文に多数の部下に応募させ、自分が命令を下したなら一〇〇〇人を超えるものが応募しただろうなどといっている。自衛隊の教育は非常にゆがんだ歴史観に基づいて行われている。しかも麻生首相は懲戒免職にしようとしていない。しかし今、九条の会の運動は大きく広がってきている。これからの課題では、平和(九条)と生存(二五条)を結び付けていくことが大切なことだ。
鶴見俊輔さん
アメリカは二つの原爆を日本に投下したが、かれらはすでに日本に戦争する力がないことを知っていた。それにもかかわらず投下したのは、その二つの原爆の効果の違いを実際に確かめたかったからなのだ。
JVC谷山さん報告
特別報告は谷山博史・日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事が行った。
対テロ戦争というのは、対話の否定である。アフガニスタンでは、OEF(不朽の自由作戦)やISAF(国際治安支援部隊)が展開されているが、私たちNGOはひとつの信念を持っている。それは非暴力の手段での問題の解決であり、そのためには対話がもっとも重要だということだ。しかし、アフガニスタンではアメリカをはじめ外国占領軍が住民を虐殺し、それに対して武装勢力が反撃、自爆テロなどが相次いでいる。軍事力によってはまったく事態は悪くなるばかりである。市民・住民が主体的に参加した復興支援こそが求められているのである。
各地の「九条の会」から
地域・分野から、福岡・南区九条の会、北海道・グリーン九条の会、岐阜・九条の会、教育・子育て九条の会、宮城・憲法九条を守る首長の会の報告が行われた。
事務局からアンケート(第三回交流会に向けての)結果についての報告によると、日常活動の状況についてつぎのようにあった。「約七〇%の会が学習会を問催し、四六%が宣伝・署名の活動、三六%が講演会や映画上映、コンサートなどの文化行事、三〇%が戦争体験を聞く会、二五%が懇談会、一一%が史跡めぐりを行っています。各会が活発に学習を積まれ、宣伝等を積極的に行われていることがわかります。また、戦争体験を聞く会の数の多さには、各会が現在の戦争と平和の問題と過去の戦争の体験や記憶との重ね合わせを大切にしていることがうかがえます」。
昼の休憩に入り午後からは、分科会・分散会に分かれて論議が行われ、三時半からは再び全体会が開催された。分科会・分散会からの報告があり、最後に「『九条の会』からのよびかけ」(別掲)がおこなわれ、改憲阻止の運動を一段と広げていくことを確認した。
「九条の会」からのよびかけ
◎一人ひとりの創意や地域の持ち味を大切にした取り組みで、憲法を生かす過半数の世論を。
◎継続的・計画的に学習し、条文改悪も解釈による憲法破壊も許さない力を地域や職場に。
◎思い切り対話の輪を広げ、ひきつづき小学校区単位の「会」の結成に意欲的取り組みを。交流・協力のためのネットワークを。
2008年11月24日
田母神問題から三無事件をふりかえる
田母神追及の強化を
田母神論文をめぐる騒ぎが起こっているが、その積極的な面のひとつは、自衛隊高級幹部の中に、はっきりと侵略主義的なグループが存在していることを示したことであり、いっそう徹底的した追及と解明・暴露が必要である。
田母神は、過去の侵略戦争を美化し、再び戦争を行う体制つくるべきだとし、自分たちの気の食わない政府の見解・政策に公然と反しても良いのだとしている。この主張が行動に移されればそれは自衛隊によるクーデターによる政権交代となるのは明瞭である。
三無事件とは
田母神事件を見る上で、一九六一年暮れに発覚・摘発され破防法適用第一号となったクーデター事件=三無事件を思い起こすのはムダではない。事件は、戦時中に軍需産業の大物として東条英機の側近の一人であった川南豊作(川南工業社長)を頭に陸軍士官学校第五九・六〇期同窓会を中核にした十数人のグループが中心的な参加者だったが、そのほかにも元陸軍少将・桜井徳太郎、元海軍中尉で五・一五事件の首謀者の三上卓、元大本営参謀でノモンハン事件、ガダルカナル作戦などの立役者だった辻政信などが関係ありとして名があがった。自衛隊との関係も疑われた。なお「三無」とは無税・無失業・無戦争という彼らの主張からきている。目的は、容共的な閣僚、政治家や総評、日教組などの労組指導者を粛清し、新政府を作り上げることで、六〇年安保闘争における左翼勢力の拡大に対抗するクーデターの計画だった。
こうした事件での自衛隊幹部の関与はあいまいにされたままにおかれるのがこれまでの流れであった。そのことが、田母神のような存在を放置し、増殖させてきたのであり、歴史をふりかえって究明されなければならない。
この問題を扱った何冊かの著作から考えてみたい(紙面の関係でそれぞれ簡単にしか触れられないが)。
まず、事件を題材にしたものに大野芳『革命』(祥伝社 二〇〇一)があり、ルポライターの鎌田慧さんが「この徹底取材の精神と壮大なる構想力に脱帽!」と賞賛しているように、裁判記録や執拗な取材による材料によって事件の経過をうかがい知ることができる。
三無事件は一九六一年一二月一二日、警視庁公安部が川南豊作他一三人を逮捕し、銃器などを押収した。一九六四年五月、東京地裁は川南に懲役五年、腹心の篠田英信(元軍人)に同一年六月などの判決を下した。そして、一九七〇年七月に最高裁は一審判決を全面的に支持して裁判は終わった。川南は六八年一二月に死去している。
その後、この事件は、ほとんど忘れ去られたようになった。しこの事件には現役自衛官それも高級幹部の関与が取りざたされながら、究明はうやむやに終わっているのである。大野『革命』にもその方面についての言及はほとんどない。
一九七〇年に一一月には、三島由紀夫と「楯の会」による市谷自衛隊乱入・クーデター扇動の事件が起こった。マスコミは、自衛官は三島の扇動に乗らなかった、三島のエキセントリックな行動だっただとして、クーデター未遂事件として重視されないままに過ぎていった。
しかし時の流れとともに、いくつかの事実が浮上してきている。
自衛隊高官の関与
山本舜勝は、陸軍中野学校(スパイ学校である)の教官で敗戦時は参謀本部陸軍少佐で、戦後は陸上自衛隊調査学校(これもスパイ学校)副校長、一九七二年の退職時には陸将補(かつての陸軍少将にあたる)だったが、三島由紀夫と「楯の会」を指導した。その山本の「自衛隊影の部隊 三島由紀夫を殺した真実の告白」(講談社 二〇〇一)は、三無事件発覚直前までその調査に従事したこと、数名の幹部自衛官が事件の首謀者と旧知の仲で、酒を酌み交わしていたと書いている。
大衆的支持を狙う
川南のブレーンであった小島玄之の『クーデターの必然性と可能性』(小島玄之論文集刊行会 一九八八)には、事件の前後の論文が集められているが、「クーデターと『三無事件』―「国民を背景とする強力政治を』―」という文書では、「三無事件が検挙される以前に、その関係者の集った場所には、当局の隠しマイクが設置されていたこと、また関係者とみられる中心人物には或る期間尾行がつき、その動勢をつぶさに探知されていたこと。その点は公判廷において片鱗的に検察側の検事証言でも洩らされていた。とすると、現在の治安機構は、民間人運動を調査、察知するための隠密的捜査において、戦前の特高警察と変りないばかりか、犯罪予防の建前からそれをやっているというより(もしそうであれば、当然隠しマイクを設置する前に、夫等関係者に犯罪行為に至る危険を警告し注意すべきである)、一定段階までその動きを温めておき、犯罪の構成するときを狙って、或は政治的効果を狙い、検挙する手段をとる危険性のあること、その点を三無事件の教訓としてくみとり警戒する必要がある」などと書いている。警察に察知されない秘密工作をもっと慎重にやるべきだったというのだ。なお、小島は戦前には農民運動の指導者で共産党員であった。
注目すべきはおなじく小島本にある綱領的文書の「民族再生の基本政策」である(こうしたものを実質的に三無事件でも旗印にしたかったようである)。
「(この政策は、全国民が、戦争で生命を失い、戦災と敗戦により財産を失ったものの犠牲に想いいたり、それに協力・奉仕する自覚と精神をもって、はじめて実現可能となる。)
第一 占領憲法を破棄し、独立・平和憲法を制定する。
第二 日本固有の領土の返還を要求し、安保・行政協定を廃棄する。
第三 平等互恵を原則とする対米親善関係を確立し、各国と友好関係を締結する。
第四 破棄する憲法に基き選出された議員による国会は、独立憲法制定までの暫定立法機関とする。
第五 戦争指導と、占領政策に迎合した政治責任を明かにするため、国民審査制を実施する。
第六 金融機関ならびに重要産業を、国有化し公営とする。
第七 年収百万円(他収入も含む)以下の農耕地・商店ならびに生活に必要な住宅の個人所有を除き、一切の土地・建物・資源を国有とする。
第八 内閣制度を根本的に編成換えし、官公諸機構を整理統合する。
第九 全産業に企業別経営委員会を設け、産業別の上級委員会を構成し、関連企業との連繋、運営、指導にあたる。
第十 全労働者は、その職場の労働組合に加盟し、各産業別労働組合を編成する。
第十一 十八才より二十二才までの健康な国民は、開発自衛隊に服役の義務を有し、国土の開発と自衛訓練に励み、労働組合と共に国民組織の主柱たる任務を完うする。
第十二 保育・教育・保健・医療・養老・娯楽の諸機関施設を統合し、それに浴する公正にして平等の機会を全国民に保証する。
第十三 綜合企画にもとづき、新産業都市を開発建設し、大都市の計画的分散をはかり、道路、住宅を完備する。
第十四 健康にして労働の義務に服さない者、第六、第七項の国有化に応じない者等を、一定期間労働匡正所に収容し、国民的奉仕と労働訓練に服せしめる。
第十五 恩赦を実施し、新刑法の基本を明かにする。」
これは戦後右翼主流とは違って、独立・平和を言い、安保・行政協定の破棄や百万円の所得制限などを主張するきわめて国家社会主義的な色彩の強いものとなっている。先に引用した非公然活動についてと、この綱領的な観点からすると、三無事件は、それがどの程度本気だったかはわからないがクーデターと下からの大衆的な決起と結合を狙っていたことがわかる。三島の檄が「反革命宣言」であり、「文化防衛論」からのものと違って、こちらの方は、アメリカ、大資本・大金持ちをも敵として、一種の「革命」を目指すものであり、下層大衆へのアピールが意図されているところに特徴がある。
一国的範囲でなく
宇都宮忠『三島事件と類似の《三無事件》」(新風書房 二〇〇二)は、三無事件と外国との関係について分析している。著者についてはいかなる人物であるか不知であるが、さまざまな資料に当たって有益であった。ひとつは、韓国である。川南は韓国から武器調達をしようとしていた。一九六一年五月一六日には朴正煕(パク・チョンヒ)らによるいわゆる5・
軍事クーデターがおこり軍事独裁政権が作られた年である。また、宇都宮は三無事件についてアメリカとくに在日米軍諜報機関が知らないはずはなく、この面についていくつかの証拠を挙げているが、今後いっそうの解明が必要だとしている。
自衛隊の軍閥化
田母神論文に端を発する事態は、自衛隊に戦前の軍閥に類似したものが存在すること、それは政府の統制を公然と否定する態度を堅持していることを白日のもとにさらすことになった。今回の事態が、田母神らの計画的行為であったのか、それとも軍人にあるまじきフライングを犯し、いま公然化したのはまずかったと総括しているのかどうかはわからない。
今度の事件も、断固たる追及がなされることなければ、自衛隊の中に、侵略主義集団を温存させることになるだろう。一つ一つの事件をしっかりと調査し解決しておくことが、後での危険な事態を起こさせない保障なのである。
いずれにせよ、ほぼ半世紀前のクーデター事件であり、登場する人物、団体も広範囲に及んでいるのに三無事件の全容はいまだ闇の中という状況である。今後も、三島事件、田母神事件などとともに解明を進めていくべき対象であろう。 (MD)
KODAMA
「新しい階級社会・新しい階級闘争」を読んで
橋本健二著「新しい階級社会 新しい階級闘争 〈格差〉ですまされない現実」(光文社)を書名に惹かれて手にした。どのような社会認識をもってどのようにこれからを展望しているのだろうか。だが、読後はがっかりである。
『人民新報』を読む方々、運動の中にいる仲間にとって、経済的社会的階層の多重性は昔から知っている。最下層の闘争を支えているのは運動の仲間たちなのだから。
大学教授橋本健二氏にとって運動・闘争は研究対象である。だから真に客観的に鋭い視点を期待するのだが、どうであろうか。マルクス主義のいうブルジョアジー←→プロレタリアートの二階級対立は今日、四階級(※)の対立=これが「新しい階級社会」=に変化していると分析しているのだが、これから「新しい階級闘争」への展望を見出していない。
マルクス主義の言う古典的階級闘争は終焉したのであり、マンガ「巨人の星」などに描かれる孤独な闘争、また永山則夫やオウム真理教等数々の事件が新しい階級闘争の現象だという。そして最近のアンダークラスの闘争の芽生えに期待を抱くのだ。一体、橋本氏にとって階級闘争とは何なのであろうか。先ず「階級闘争」というものが実在していて、その存在の現象を研究するという形而上学を私は感じる。今の時代はたしかにイデーを失っている。人間とはいかなる存在なのかというイデーを失っている。イデー無き政治であり、イデー無き学問であり、イデー無き産業経済であり……。「理想」を懐いているとかつてマルクス主義者たちは、イデアリズム・観念論だとして非難した。また、かつてブルジョア・イデオローグたちは空腹なソクラテスと太ったブタとどっちを選ぶべきかなどと「理想」を笑いものにしていた。しかし、あの頃のマルクス主義者は理想が高かったし、ブルジョア思想かも理想の前に大きな苦悩を抱えていたことを私は知っている。苦悩もなく理想もなく「社会」を語ることのできる時代になってしまったことに……空虚を感じざるを得ない。
※ 橋本健二氏による「現代日本の階級構造」は以下のように分析されている。
●資本家階級(三三五万人、五・四%)平均収入六四五万円(従業員三〇人以上では九六三万円)
●新中間階級(一二二一万人 一九・五%)平均収入五三五万円
●正規雇用の労働者階級(二二八八万人 三六・七%)平均収入 三四七万円
●アンダークラス(一三八一万人 二二・一%)平均収入一五一万人(派遣社員・請負社員・フリーターなど)
――これらはそれぞれ上の階級に「搾取」されている。正規雇用の労働者階級とアンダークラスが「労働者階級」を構成する。
そのほかに、
●自営業者や農民の旧中間階級(一〇二〇万人 一六・三%)平均収入三四三万円
ゝ史(ちょんし)
せ ん り ゅ う
― 日 本 の 癌 ―
癌脳(ブレーン)に増殖中末期
セイフ癌カンリョウ癌でのた打ち回る
自公という悪腫瘍がのさばり
ガンとして恐慌といわぬ癌政治
癌治療を拒絶中アッソウ!
救急車タライ回しするアッソウ!
特効薬「オザワ」に副作用あるや
タモガミ癌軍部へと潜伏気味悪い
ヂエイタイ癌化か腐臭洩れた
ゝ史(ちょんし)
二〇〇八年十二月
複眼単眼
まず派兵ありきの特措法よりイエメン沖海賊問題でなすべきこと
アフリカのソマリア沖とアデン湾で頻発する「海賊被害」から民間船舶を守るために、日本も海上自衛隊を出すべきで、その特別措置法制定を急げという声が与党と民主党の一部から出ている。
この新規立法(海賊行為防止活動特別措置法)の動きとあわせて、「議連」までつくられて、あからさまに武器使用の拡大や集団的自衛権の政府解釈の見直し、自衛隊海外派兵恒久法の制定を主張するむきもある。日本も共同提案国の一翼を担っている国連安保理決議がでていることとあわせて、かつてマレーシア沖海賊対策で叫ばれたように「シーレーン防衛は日本の生命線」という調子の海外派兵論がでている。これは「マッチ・ポンプ」そのものではないか。
報道によれば、今年になって(九月まで)ソマリア沖の事件は六三件あり、未遂事件は一〇〇件以上あったという。ねらいは人質との身代金交換であり、人質はほとんど危害を加えられていない。海賊の大半は無政府状態のソマリアの漁民であり、主要な武器は自動小銃とロケット砲だ。アデン湾は年間二万隻もの船が通行し、これが海賊の格好のターゲットになっている。
普通、こうした問題はさまざまな対策が考えられる。
船舶のアデン湾航行が危険なら、海賊のいないアフリカ南端の喜望峰廻りは考えられないか。業界は「喜望峰廻りはカネと時間がかかる」として、ソマリア沖に固執する。しかし、憲法に反してまで、自衛隊を派遣する莫大な費用はどうなのか。喜望峰を廻って貿易すればいいというだけのことだ。商業船舶が金儲けのために自らアデン湾という危険地帯につっこんでいくことが当然視されているのはおかしなことだ。
特措法制定論者の特徴は「まず自衛隊派兵ありき」であることだ。なぜ、海賊問題に自衛隊派兵なのか。海賊対策は警察マターであり、日本でいえば海上保安庁マターであり、自衛隊の戦争ではない。しかし、海上保安庁の警察活動にソマリアまで含めることは困難だ。まして日本の沿岸に適用される自衛隊法の「海上警備活動」をソマリアにまで拡大するのは逸脱だし、臨検など、
海賊との戦闘を自衛隊に容認するのは九条違反である。武力を行使して外国艦船を防衛するというのは集団的自衛権の行使であり、明白に九条違反である。
国連 決議があろうが、なかろうが、日本は憲法のもとでできることとできないことをはっきりさせるのをおそれてはならない。「九条の国」日本は「戦争のできる普通の国」であってはならない。
日本にできることとして、沿岸諸国の警察活動の資金・技術面での支援ということが考えられてよい。朝日新聞の十一月一五日の報道によれば、現に、イエメン沿岸警備隊長はそうした支援を日本に要求している。大海原に自衛艦が点で海賊対策をするよりも、沿岸に土地勘のあるイエメン沿岸警備隊を支援するほうが、よほど費用対効果からみてもいいことだ。イエメンの要求は港湾の建設や、海上保安庁の技術援助の要求など、非常に具体的だ。ケニアについても同様な方法が有効であろう。かつて問題になったマラッカ海峡の海賊問題でも自衛隊の派遣ではなく、こうした方法で対処してきたはずだ。実際、これまで日本政府は、既にいくつかこうした対策に取り組んでいる。
人材育成(イエメン)、国際テロ事件捜査セミナー(イエメン・タンザニア)、上級警察幹部セミナー(イエメン)、沿岸警備隊職員の海賊対策への日本での研修(タンザニア、)税関行政(ケニア・タンザニア)、東部アフリカ警察行政セミナー・資金支援(一〇〇万ドル)、ソマリア暫定連邦政府の入管職員をナイロビでセミナー実施(四〇〇万ドル)、ソマリア暫定政府の警察官の訓練)などなど。これをイエメン沿岸警備隊長の言うように、より本格的に行えばいいのである。
そしてより長期的には、ソマリア沖海賊問題は、背景にはソマリアの無政府状態の解決と、ソマリア沖海洋を各国が我が物顔に横行し、漁場を破壊し、海洋を汚染し、沿岸漁民を苦しめているという問題がある。
海賊とは漁民である。
ソマリアの無政府状態の問題は米国がこの地域に介入し、直接介入が困難になるとエチオピアを使って紛争に介入し、内戦を激化させてきたことによる。国連は欧米諸国のそのよこしまなねらいを止めさせ、AU(アフリカ統一機構)等の仲介によるソマリア和平を支援しなくてはならない。九条を持つ国、日本がいまやるべきことは、自衛隊の派遣ではなく、こうした方向で和平を促進することだろう。
(T)
年末カンパのお願い
労働者社会主義同盟中央委員会
読者のみなさん!
麻生内閣は完全に追い詰められています。ブッシュ政権の無法なイラク侵略戦争に積極的に加担し、国内では大企業の儲けを確保し、その一方で社会保障費などを大幅に削減するという政治はいま大きな反発をうけ、総選挙があれば自民党の歴史的な大敗と政権喪失が確実視される状況になってきました。自民党政治とくに小泉のアメリカ追随と規制緩和・新自由主義政治の負の遺産で、安倍、福田と立て続けに政権投げ出しという無様な事態がつづき、最後の切り札として登場してきたのが麻生でした。だが、その人物と政策は予想以上のひどさで、まさに自民党政治の崩壊期にふさわしい首相となりました。
私たちの任務は一刻も早くこの政権を打倒することです。そして、反戦・平和・憲法改悪阻止の共同の闘いに全力をあげ、いっそう広範な統一を実現しなければなりません。解雇攻撃が強まる中で労働運動の強化し、反転攻勢の力をつくりあげましょう。そして、労働者の解放にむけて社会主義勢力の再編・再生のための努力をいちだんと推し進めましょう。
そのために、私たちは一段と奮闘する決意です。
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二〇〇八年冬