人民新報 ・ 第1258号<統合351号(2009年10月15日)
  
                  目次

● 自民党政治からの完全な脱却を!  自民党的なものの完全解体が必要だ

● 郵政労働者ユニオン  期間雇用社員解雇反対で9・18スト  JPEX統合は延期 解雇撤回勝ち取る

● さあ派遣法改正だ!  連立政権政策合意の早期実施を

● 原子力はもう終わりだ   脱原発! エネルギー政策の転換を

● 「9・15ピョンヤン宣言7周年のつどい」で蓮池透さんが講演  制裁でなく対話で解決を

● JCO事故10周年で諸行動  行き詰る原子力とその危機

● 有利な情勢生かして闘争解決へ  鉄道運輸機構訴訟第5回控訴審口頭弁論

● 中村哲医師が講演  ペシャワール会現地報告会 「武力で平和はつくれない アフガニスタンに緑と生命(いのち)を」

● KODAMA  /  労働基準の国際化を

● 複眼単眼  /  意気消沈する田母神のカラ元気戦略





自民党政治からの完全な脱却を!

           
自民党的なものの完全解体が必要だ

徹底した情報公開を

総選挙での政権交代は日本政治の歴史的な流動化をうみだしつつある。だがこれは第一歩にすぎない。この動きを継続・深化させるために多くのことがなされなければならない。
 そのために、いまこそ、長きにわたって日本を支配してきた自民党政治(財界・官僚)や日米同盟関係の実態が明らかにされるべきである。
 日米核密約はやがて明らかにされることになっている。すでに防衛省はこのほど航空自衛隊イラク派兵の「週間空輸実績」を全面開示した。自公政権時代は開示請求に対して黒塗りの文書しか開示せず、情報公開とはほどとおいものであった。その内容は、約四万五〇〇〇人の空輸人数総計うち米軍・米軍属が約六三%、イラク活動していた自衛隊・防衛省関係者で約二六%、国連職員は約六%などとなっており、前政権の言っていた復興支援なるものが、米軍と自衛隊の軍事行動支援そのものであったことは明らかとなった。墨塗りの裏の真実は軍事的なものであろうと心ある人たちは考えてきたがそれが立証されたのである。
 こうした動きを多くの分野で実行して、自民党政治の醜い姿を満天下にさらさなくてはならない。

自民党基盤を崩せ

 鳩山新政権の発足から一カ月余り、敗北した自民党は谷垣禎一を総裁として再出発の態勢立て直しにやっきだが、とても順調にいっているとはいえない。
 だが、マスコミの多くは、自民党が敗北を総括して、民主党に対抗できる野党として再建されるべきで、国民の大多数もそれを望んでいるとしているが、こうした民主・自民による政権たらい回しを狙う保守二大政党体制を創ろうとする企みで、流動化し始めた日本政治を制動するものにしかすぎない。
 当面する課題のひとつは、民主党の圧勝、社共の議席維持、三党連立政権の発足という情勢で、自民党の基盤を完全に掘り崩さなければならないということだ。
 民主党にも右翼的ファッショ的な潮流が存在するが、それらのもっとも反動的な基幹部分はいまだに自民党の中にもぐりこんでいることを忘れてはならない。
 日本で公然たる右翼政党が進出できないのは、民主主義をまもる運動がそれをおさえていること、アジアの多数の人びとがそれを望まないことによるが、自民党の一部が右翼勢力の柱になっていることにもよるのである。
 戦後の日本政治は、財界とアメリカ、そして反動勢力が自民党を通じて支配してきたのである。
 だが、自民党が野党に転落したのを契機にその支持団体の離反も激しくなってきている。そうした動きは歓迎され、いっそう積極的に促進されるべきものである。自民党の復活を絶対に許してはならない。「水に落ちた犬は徹底的に叩き」、完全に解体しなければならない。

象徴的な派遣法改正

 民主党、社会民主党、国民新党は連立政権樹立のスタート時に、「連立政権樹立に当たっての政策合意」の「実施に全力を傾注」を宣言した。すでにいくつかは本格的に動き出している。
 とくに「雇用政策の強化―労働者派遣法の抜本改正」では、「『派遣業法』から『派遣労働者保護法』にあらためる」「雇用保険の全ての労働者への適用、最低賃金の引き上げ」「男・女、正規・非正規間の均等待遇の実現を図る」などの方向が出されており、この有利な局面を最大限に活用して、多くの労働組合をはじめ広範な支持の中で、早期の法成立・制度改革を実現しなければならない。これを第一歩としてさらに労働者の生活と権利の拡大を図るために全力をつくべきである。
 郵政事業の抜本的見直しについても、動きが始まっている。「JPエクスプレス(JPEX)」問題にも表現されている郵政民営化の破綻状況は、自民党とりわけ小泉・竹中らの規制緩和路線からの完全な離脱を求めている。

共同行動の拡大を

 政権交代の流れを推し進めて自民党政治からの完全な離脱として実現するためにも、連立政権の政策の推進すべきものを推進し、反対すべきはこれと断固戦って阻止する運動が必要である。
 そして、なによりも労働運動、反戦平和運動、憲法運動、さまざまな市民運動の前進と共同行動の拡大が要請されているのである。
 自民党も民主党も一緒だという立場で傍観者的になるのではなく、また連立政権に任せておけばよいというわけにはいかない。われわれにとっては、この情勢を次の段階、そして社会主義に向かって生かせるかどうか、その運動を形成していくことが問題なのであり、さらなる団結を実現するために奮闘しなければならない。


郵政労働者ユニオン  期間雇用社員解雇反対で9・18スト  JPEX統合は延期 解雇撤回勝ち取る

郵政民営化破綻状況

 小泉内閣の規制緩和・新自由主義路線の最大の柱であった郵政民営化は崩壊に向かいつつある。〇五年九月の「郵政」選挙の圧勝を背景に、〇七年一〇月一日に日本郵政グループが誕生した。しかし、いま事態は一変した。鳩山連立政権の誕生で、かんぽ生命とゆうちょ銀行の株式売却は凍結され、経営形態の見直し、日本郵政の西川善文社長の辞任も求められている。これは、郵政民営化が、地方郵便局の廃止をはじめ多くの人びとにサービス低下の犠牲を強い、また郵政職場での非正規労働者の増加、労働条件の低下など、全国で不満を高め、郵政選挙で民営化賛成に票を投じた有権者も大挙して自民党政治に反対の意思表示をしたことの結果に他ならない。
 その郵政民営化の破綻の象徴が、「JPエクスプレス(JPEX)」である。郵便事業会社の宅配便「ゆうパック」と日本通運の「ペリカン便」を統合するJPEX計画は、民営化の目玉事業としてあった。だが、前自公政権においてすら「実現性、具体性に欠けている」として、統合日は延期につく延期となり、同時にJPEXの赤字は膨らみつづけてきた。そして九月には総務省が統合を承認しないことを決め、九月一一日には統合延期が決定的となり、郵政民営化丸二年となるこの一〇月一日に予定していたJPEXへの宅配事業の統合は阻止されたのである。

郵政ユニオンの要求

 JPEX計画で、事業会社は八月に統合に伴う雇用調整の対象である非正規社員(期間雇用社員)に雇い止め・解雇を通告したのをはじめ、そのほかにも勤務日数の大幅削減で給与の急減などを強いてきた。
 この間、郵政労働者ユニオンは、「一人の首切りも許さない」「生活を維持できない雇用調整は認めない」という立場で、事業会社に対して三次にわたり要求書を提出し、十数回の中央交渉をもち解決に努力してきた。にもかかわらず、事業会社はその政策を改めようとはしなかったのである。
 そして九月一八日に郵政労働者ユニオンは、JPEXを巡る期間雇用社員の雇い止め・解雇や勤務日数の削減などの雇用条件の一方的な不利益変更の撤回を要求して、船橋支店(千葉県)、千葉支店(千葉県)、佐野支店(栃木県)の三支部での一〇名の指名スト(そのうち「ゆうパック」配達期間雇用社員七名)に突入した。当日の船橋支店前でのストライキ突入集会は、午前七時半からユニオン組合員はじめ支援の労働者など一〇〇人をこえる人びとが結集して開かれ、スト突入者の決意表明をはじめ発言がつづいた。

「雇用調整」を撤回


 9・18スト以降、事態は大きな変化を見せている。各支店で、「雇用調整」は次々に撤回され、郵政ユニオンにも雇い止め・解雇の撤回が通知されてきた。
 こうして、JPEX統合は延期されて、ストの要求はかちとられた。
 だが、JPEX計画それ自体が放棄されたわけではない。今後も、さまざまな手直しをしながらJPEX統合がもくろまれてくることは必至だ。郵政ユニオンは、JPEX統合計画と郵政民営化見直しをかかげ、いっそう闘いを強めていくとしている。


さあ派遣法改正だ!

     
連立政権政策合意の早期実施を

 九月三〇日、参議院議員会館で「政権交代ーさあ派遣法改正だ!院内集会」(主催・労働者派遣法の抜本改正を求める共同行動)が開かれた。
 はじめに「鴨桃代全国コミュニティ・ユニオン連合会会長があいさつして、待ちに待った政権交代が実現した今こそ派遣法の改正を実現しよう、と述べた。
 つづいて共同行動の棗一郎弁護士が基調報告を行う。
 政権交代で派遣法の抜本改正がいよいよ現実的なものとなってきた。非常に感慨深いものがある。振り返れば、昨年、厚生労働省の審議会が労働者派遣制度の改正についての非常に問題のある答申を出した。そして、当時の自公与党は、少しの手直しと引き換えに事前面接を許すなどの実質的な改悪にむけて、一一月の臨時国会に旧与党案が提案された。
 これに対して断固阻止の運動の態勢をつくり、一二月四日には日比谷で二五〇〇人をこえる集会をもった。その直後には年末年始の「年越し派遣村」に取り組み、労働組合と市民運動が一体となって、ここで魂が入った。今年に入ってからは六月末には野党三党による共同の改正案が出されたが、国会解散で廃案となった。
 しかし政権交代で抜本改正が見えてきた。共産党も改正案を提案しているが、民主・社民・国民新党の新政権の政策合意がまとまり、その「六、雇用対策の強化―労働者派遣法の抜本改正―」では「『日雇い派遣』『スポット派遣』の禁止のみならず、『登録型派遣』は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の『直接雇用みなし制度』の創設、マージン率の情報公開など、『派遣業法』から『派遣労働者保護法』にあらためる」とあり、いまだ不十分なものではあるが抜本改正にむけての現在の第一段ではこの内容で行きたい。
 しかし一方で、派遣業界の方からは、「派遣のニーズがあり、そうした改正が行われれば失業が増える」などという反撃が強まり、一部のメディアがそれに連動している。このような動きには断固として抗する運動を強めなくてはならない。
 当面、登録型派遣では専門職は残す、常用型派遣は残すということになるが、今後はこうしたものについても禁止していく必要がある。そして雇用の安定、の象徴的なものとして労働者派遣法の抜本改正にむけての国会議員の活躍に熱烈に期待したい。
 集会には、多くの民主党、共産党、社民党の議員が参加して発言し(国民新党からはメッセージ)、公明党の谷合正明参院議員も参加して派遣法の改正について発言した。
 現場からの発言では、三菱ふそう、パナソニック、阪急トラベルサポートなどの労働者の訴えがあった。
 反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠さんが発言。日本はOECDの調査でもアメリカ以上に貧困率が高く、世界に冠たるワーキングプア天国だ。その上日本の場合、貧困者の八割が勤労者で、「仕事はあるはずだ」「働けば食べていける」など言うのは神話だ。新自由主義・規制緩和への怒り政権交代をもたらしたのだ。
 労働弁護団小島周一幹事長は、労働弁護団の会員が拡大していること、また派遣切りに遭うなど不当な待遇を受けた派遣労働者の声を集めた「派遣労働酷書」を発行したことなどについて報告した。
 最後に「労働者派遣法の早期抜本改正をもとめるアピール」(別掲)を採択し、10・29日比谷集会への参加が呼びかけられた。

 集会後には、10・29集会の大結集を勝ち取るための全国相談会が開催された。

労働者派遣法の早期抜本改正を求める9・30院内集会アピール

 八月三〇日の総選挙の結果、長い長い自・公政権支配が終焉し、やっと政権交代が実現した。これにより、我々の悲願である「労働者派遣法の抜本改正」がいよいよ現実のものとなってきた。一九八五年に労働者派遣法が成立して以来二四年の長い年月を経てようやく労働法制の規制緩和の流れに終止符を打つ時が来た。
 民主・社民・国民新党の連立内閣は、九月九日の「連立政権樹立にあたっての政策合意」において、雇用対策の強化の筆頭に「労働者派遣法の抜本改正」を掲げ、「派遺業法」から「派遣労働者保護法」に改めること、「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止にとどまらず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とすること、製造業派遣も原則禁止すること、違法派遣の場合の派遣先との直接雇用みなし制度を創設すること、マージン率の情報公開を実現するとしている。共産党はより徹底した派遣法の改正を求めている。
 我々は、昨年秋以降の「派遣切り」などの非正規労働者に対する雇用破壊の元凶は、使用者の非情なまでの雇用切り捨てを法的に許している「労働者派遣法」をはじめとする現行の労働法制にあることを指摘し、わが国の労働者の失業不安を払拭し雇用の安定を取り戻すためには、何よりもまず労働者派遣法の抜本改正を行うことが必要であると強く訴えてきた。
この我々の訴えが現実政治を動かし、国会における労働者派遣法の抜本改正の動きにつながった。
 しかしながら、未だ派遣法改正はなされず、現在も失業率は戦後最悪を更新しており、厚生労働省の発表だけでも完全失業者数は三六〇万にも上り、潜在的にはそれ以上の失業者が溢れている状況にある。雇用破壊の嵐は未だ止むことはなく、今や非正規労働者だけでなく正社員労働者をも巻き込んで、極めて深刻な事態が進行している。このような悲惨な雇用情勢を一刻も早く改善し、安易な派遣切りなどの雇用切り捨てを二度と許さないために、我々は改めて一刻も早く以下のような労働者派遣法の抜本改正を実現することを求める。

 @ 登録型派遣を原則禁止すること
 A 製造業務への派遣を原則禁止すること
 B 違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」を創設すること
 C 派遣労働者と派遣先労働者との労働条件の均等待遇原則を確立すること
 D マージン率の上限規制を設けること

 雇用破壊と「貧困と格差」の拡大、弱肉強食の規制緩和・構造改革路線を変えたいという総選挙に示された国民の強い付託に答えることこそ、新しい国会に課せられた使命である。最も重要で効果のある失業と貧困の対策は、失業が発生した後のセーフティネットを張るという事後的な対策ではなく、失業そのものを予防することであり、現在横行している違法な解雇・雇止めと安易な雇用の切捨てをさせないための労働法制を整備することである。我々は三党連立政府と立法府の素早い対応を強く熱く期待する。


原子力はもう終わりだ

      
脱原発! エネルギー政策の転換を 

 一〇月三日東京・明治公園で、七〇〇〇人が参加して、エネルギー政策の転換と脱原発をかかげる「NO NUKES FESTA2009〜放射能を出さないエネルギーへ〜」が開催された。午前中は激しい雨で、一日中あいにくの空模様だったが全国から反原発を闘う人びとなど市民団体や労働組合が参加する久々の大集会となった。
 会場には、多くの展示、小集会、売店などがだされて賑やかな雰囲気。
 メインの演壇では、第一部として歌や演奏などを交えながら青森県六ヶ所再処理施設に反対する運動をはじめ浜岡原発、柏崎刈羽原発、岐阜の高レベル放射能廃棄物問題など各地からの報告があり、JCO事故被害者の大泉昭一さんも最高裁での闘いについて発言した。ピースサイクルも登壇してあいさつ(一面に写真)。
 第二部は、はじめに呼びかけ人を代表してルポライターの鎌田慧さんによるあいさつ。
 同じく代表の小木曽美和子さん(福井)は「原子力をめぐる全体状況」について提起。原発推進政策は、アメリカのオバマ政権が核燃料再処理を白紙撤回するなど世界的に行き詰っていて、各国で撤退が始まっている。しかし日本はその逆に核燃料サイクルをいっそう推し進めようとしている。いまプルトニウムを処理するためのプルサーマル計画も縮小が進み五基のみが予定されているがそれすら反対運動などによって実施はできていない。原発からの核廃棄物は溜まるいっぽうだ。そのためにも一刻も早いエネルギー政策の転換が必要で、それを新政権に強く求めていきたい。
 国会からは、民主党の相原久美子参議院議員、社民党からは福島みずほ党首と近藤正道参議院議員があいさつした。
 つづいて、青森(再処理)、佐賀(プルサーマル)、山口(上関原発建設)などからの発言があり、平和フォーラム・原水禁代表の福山真劫さんのまとめで集会を終了した。

 集会アピールでは、「わたしたちは、非自民の新政権が発足した今こそ、原発の新増設を中止し持続可能な社会を目指す方向にエネルギー政策を転換するべきであると考え、本日、明治公園に集まりました。危険なプルトニウム利用として計画されている六ヶ所再処理工場の稼動、各地の原発でのプルサーマル、もんじゅの運転再開を中止させ、原発の新増設を止めさせましょう。破たんしている原子力政策大綱の見直しを政府に要求して行きましょう。また、原子力安全規制体制の抜本的見直しを要求して行きましょう。わたしたちと子どもたちの未来のために!」と確認した。

 集会後は、パレードに出発し、青山、表参道、原宿などでエネルギー政策の転換の実現を訴えた。


「9・15ピョンヤン宣言7周年のつどい」で蓮池透さんが講演

                       制裁でなく対話で解決を


 二〇〇二年九月一七日に、当時の小泉純一郎首相が訪朝し、金正日国防委員長とのピョンヤン宣言が出されてからのこの七年は、日本の右翼勢力の妨害により日朝関係は改善と逆行する年月でもあった。

 九月一五日、文京区民センターで、「9・15ピョンヤン宣言7周年のつどい 過去の清算と拉致問題の解決を考える―日朝国交正常化早期実現を!―」(主催、「韓国併合」から一〇〇年 真の和解・平和・友好を求める二〇一〇年運動)が開かれ会場に溢れる二二〇人が参加した。
 蓮池透さん(元拉致被害者家族連絡会事務局長)は、強硬論以外には報道しないマスコミへの批判から初めて次のように述べた。
 核問題は全世界の問題だが、拉致問題は日朝固有の問題だ。これをきっちり区別して考えるべきだ。経済制裁は、いじめる、締め上げる、苦しめることだ。核・ミサイル問題や拉致問題を解決するとして行われているが、手段が目的化してしまっている。世論調査でも効果がないとするものが過半数だ。それでも制裁を言うのは感情論である。日本の国連大使は制裁強化を言うが、どういうプロセスで解決するか聞いてみたいものだ。安倍政権では制裁は強化されたが一人も帰ってこなかった。痛めつけのための制裁は私にとっては大変残念である。
 家族会が言うから政府は制裁をやる。だが、これは政府によるエクスキューズであり、国内向けのパフォーマンスにすぎない。DVD、マンガ、インターネット配信はすべて国内向けで拉致はひどいという「啓蒙」活動なのである。対策本部がやることとは「啓蒙」だけなのか。必要なのはどうしたら帰ってくるかということで、それには北と話をしなければならない。制裁はラク、言っているだけはラクだが、対話ならタフな交渉をしなければならない。相手は三〇年もやっている。日本では三年で外交官は変わってしまう。交渉は相手の視点、思考回路を良く考えてやらなければならい。ただ制裁では結果が出ない。制裁強化だけ―これは一種の思考停止だ。北朝鮮打倒を言っていた麻生政権は崩壊した。民主党のマニフェストでは「全力をつくす」と書いてあるが、麻生までの強硬路線が変わるのかはまだどうかわからない。首相となる鳩山さんの友愛、対話と協同に期待したいが、民主党の中には強硬論一辺倒の人もいる。水と油の混沌とした民主党を鳩山さんがどうまとめていくのか見ものだ。
 これまでの北との交渉では、四回も日本側が約束を破っている。経済制裁では国を変えることはできないことは歴史が示している。日本は難しいことは先送りしてきた。歴史のヤミの中へである。北は日本は信用できないといっているが、これをどう修復していくかが日本政府の責任だ。ところが日本は制裁に行った。そして、安倍、福田、麻生と総理がコロコロと変わっている。自民党は外交チャンネルを作れなかった。鳩山新政権に私が期待するのは、なぜ北が怒っているのかを理解することだ。

 西野瑠美子さん(バウネットジャパン共同代表)は、「従軍慰安婦問題」においては、被害者不在であってはならないということを強調した。そして過去の清算では加害責任と被害の原状回復を抜きにしてはならないということが必要である。南アフリカでマンデラ政権は真実和解委員会では真相の解明において、加害者処罰の放棄を掲げたが、これにより、より正確で広範な事実の解明が可能となり加害者の特定がおこなわれた。日本の新政権に対して、教科書に『慰安婦』記述を復活させるよう多くの人が声をあげていこう。

 つづいて、新しい反安保行動をつくる実行委員会、許すな!憲法改悪・市民連絡会、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、「日韓一〇〇年ネット」、在日韓国民主統一連合から発言があった。
 最後にアピール「鳩山新政権に対朝鮮政策の転換を求めます」が採択された。そこでは、「新政権がピョンヤン宣言に基づき、@制裁を解除し、日朝国交交渉を速やかに再開すること、A一〇〇年余に及ぶ過去の清算を真摯に行うこと、B拉致問題もその一環として対話を通じて速やかに解決すること―を強く求めます。また北朝鮮船舶への臨検に道を開く『貨物検査法案』や、まして先制攻撃のための『敵基地攻撃』論に強く反対する」ことを呼びかけた。


JCO事故10周年で諸行動

         
行き詰る原子力とその危機

 一九九九年九月三〇日、JCO(住友金属鉱山の子会社)の茨城県東海村にある核燃料加工施設で臨界事故が起こった。被曝による死者二名をはじめ長く続く被害を出した原子力事故で、る。
 今年の九月三〇日は事故一〇周年に、たり、さまざまな行動が取り組まれた。「東海村臨界被曝事故を忘れない9・30一〇周年東京圏行動」は、午前中の経済産業省前で追悼と抗議行動を行い、六時からは、文京区民センターで講演集会を開いた。
 集会では、活動報告と当面の方針について提起された後、たんぽぽ舎の山崎久隆さんがJCO臨界事故について報告。
 作家の広瀬隆さんは「日本の原発の危機的状況について―東海村JCO事故一〇周年」と題して講演。
 日本の原子力のルネサンスなどというものはありえない。間違いなく終焉に向かっている。原子力は危機的な状況なのだ。それには二つの面がある。第一は、日本の原子力産業そのものが、すでに完全に崩壊して、末期的な状況にあるという「原子力産業にとっての危機」だ。第二に、崩壊していながら原子炉が運転され、また再処理工場の運転再開が目論まれているという私たちの側に危険性が迫っているということである。
 先進国では原子炉の廃炉の時代にあり、世界中で廃炉ラッシュだ。高速増殖炉でも米仏伊独はやめた。開発に失敗したからだ。日本でも「もんじゅ」は事故で止まっている。こうして増殖炉は年が経つにつれてその実現の目処が遠くなる。すでにだめだということだ。しかし、原発の出すゴミはたまりに溜まってきていて、それを六ヶ所へ持ち込もうとしてきた。だが、その再処理施設はすでに絶望的という状況だ。原発新設をなんとか口実をつくって推し進めようとしているが、それは中間貯蔵施設が欲しいからなのだ。すでに、廃棄物の保管期限は七年を切っており、原子力の時代は終わらなければならない局面に到達している。そのうえ、原子力なしでも電力は間に合うということもはっきりしてきている。いま原子力はとめられる時期に来ているのだが、電力会社は、耐用期限を延長したり、危険な出力調整運転をしたりする無謀なことをやっている。
 原発と再処理にかかわる具体的な問題としてはつぎのようなものがあげられる。@日常の放射能放出と労働者被曝の危険性、A大事故の危険性、B迫り来る大地震による原発震災、C六ケ所再処理工場の運転再開問題、D目前に迫ったプルサーマル運転の危険性、E高速増殖炉もんじゅの運転再開問題、F日本の原子力産業が生き延びるための外国への原子力技術の輸出、G日本政府の核兵器開発意欲と憲法改悪、H高レベル放射性廃棄物の最終処分場、Iこれから巨大になる廃炉の処理問題だ。どれもが大変な問題である。
 JCO事故被害者の大泉昭一さんが裁判闘争の報告を行ったのをはじめ反原発や反戦反基地運動団体からの発言が行われた。集会アピールでは「今秋、九電玄海原発でのプルサーマル運転の本格化、そして、島根原発、伊方原発や浜岡原発でのプルサーマル開始、また、現在、山口県上関町では上関原発着工を阻止するために、連日たたかっています。六ケ所村再処理工場では、ガラス固化設備での放射能汚染や操作機器が破損して、核燃料再処理は完全にゆきづまっています。そして地雪国日本での原発は、浜岡・柏崎刈羽原発事故のように大惨事をもたらします。本日の集会で、広瀬隆さんや山崎久隆さんから報告されたように、日本原子力の技術基盤のゆきづまりを原子力推進側は民主党政権とともに打開しようとしています。私たちは、こういう現実を、一〇年間の取り組みの成果をもって、多くの人たちと話し合い、力を合わせて変えてゆきましよう」と確認した。


有利な情勢生かして闘争解決へ

       
 鉄道運輸機構訴訟第5回控訴審口頭弁論

 九月二九日、鉄道運輸機構訴訟第五回控訴審の口頭弁論が開かれ、夜にはSKプラザ地下ホールで報告集会が開催された。
 はじめに国鉄闘争共闘会議の二瓶久勝議長があいさつ。鳩山新政権の発足は闘いに有利な状況をつくった。しかし年金・雇用・解決金の三項目なくしての解決はありえない。秋の臨時国会にむけて政治決着の実現のために闘争を強めていこう。
 萱野一樹弁護士は、今回の弁論では、採用差別で不当労働行為を認めながらも、それと不採用との間の因果関係を否定する誤りを批判した。その誤りとは、不採用は、差別のためなのか勤務評価で成績が低かったからなのか原告が証明をせよと言うことだが、われわれは国労という組合が全体的に不当労働行為により差別されたものであり因果関係を認めるべきだと主張した。
 加藤晋介弁護士は、いわゆる国鉄専権論を批判。国鉄改革法二三条は、国鉄が自らの権限と責任において名簿の作成を行うことを明記しており、設立委員=JRがこの名簿に載っていない者を採用するのは不可能であり、JRに責任は無い、とするが、「振り分け」は当事者の地位の変動を与える法律行為である。
 最後に川端一男鉄運訴訟原告代表が決意表明を行い、団結がんばろうで闘争勝利にむかって態勢を強化することを確認した。


中村哲医師が講演

        ペシャワール会現地報告会 「武力で平和はつくれない アフガニスタンに緑と生命(いのち)を」

 
 九月一九日、東京・社会文化会館ホールでWORLD PEACE NOWの主催によるペシャワール会現地報告会「武力で平和はつくれない アフガニスタンに緑と生命(いのち)を」が開かれた。
 アメリカ・オバマ政権は、アフガニスタンを対テロ戦争の主戦場とさだめ、NATOや日本などを引き込み、兵力を増強しようとしている。だが現地では、いっこうに「治安回復」がなされないばかりか、アメリカ軍などの誤爆の頻発により、占領軍に対する反発は一段と増大している。大統領選挙が行われたことになっているがアメリカに支援されたカルザイ「政権」は不正選挙の疑惑が消えないままでいる。欧州の派兵国もいかに早期の撤退をするかに腐心しており、アメリカ本国を含めて各国の戦争反対の世論は過半数を超えている。しかし、アメリカはアフガニスタンの不安定さの策源地はパキスタンにあるとして、戦争地域を拡大させている。
 ペシャワール会は、中村哲医師のパキスタンでの医療活動を支援する目的で一九八四年に結成され、パキスタンの北西辺境州(ペシャワールは北西辺境州の州都)やアフガニスタンの北東部で活動し農業支援などで多くの成果をあげている。昨年の八月には、現地ワーカーの伊藤和也さんがアフガニスタン東部で殺害されたが、その葬儀には多くの村人が参加するなどペシャワール会の活動は現地の人びとから広範な支持を受けている。
 鳩山連立政権は、戦争支援のためのインド洋給油活動を期限切れの来年一月には停止するとしており、いまや民衆に犠牲を強いるこの戦争を終結させる段階に入っている。しかし給油活動に替わっての支援として国際治安支援部隊(ISAF)に自衛隊を参加させるという意見もあり、これまでに増していかにして軍事でない協力をしていくのかが問われるときになっている。

 集会で、中村哲さんは次のように話した。
 ペシャワール会の活動もこれからが本格的な仕事をする段階に入る。日本からの支援がなければ活動は継続できなかったが、寄付した人の行為は十分に生かされてきたと思う。
 現地では医療から活動をはじめた。だが、それより以前にまず食べることやきれいな水の問題を考えざるをえなくなった。アフガニスタンという国は山の国であり国民の九割が農業で自給自足の生活をしている。一九九九年、二〇〇〇年には世紀の大干ばつが起こった。そのために今まで以上に急速に砂漠化が進行している。子どもを下痢、赤痢、腸チフスなどが襲っている。飢えや渇きは医療では治せない。まず清潔な飲料水だ。アフガニスタンなどにはカレーズという地下用水があるがそれも涸れてきている。まず灌漑が必要であり、用水事業が必要だった。現地のことわざに「金がなくても生きていけるが、雪がなくては生きていけない」というのがある。雪は解けて水になるから、雪はなにより大事なのだ。その雪解け水が涸れて、そのために腸管感染症などで死ぬ子供が多い。そのために灌漑事業を進めてきたが、七年間で多くの砂漠の農地化ができた。その面積は九州の筑後平野の三分の一くらいになる。私は医者だが、土木工事の現場監督のようなことをやってきた。
 アフガニスタンの人は非常に宗教的な国民だ。イスラム教を基礎に生活もモスクを中心にしている素朴なものだった。それがアメリカ軍が入ってくるようになって、貧富の差がはげしく拡大した。病気になってもたった数十円程度のお金がなくて薬が買えなくて死んでいく人が多数いる。その一方で、ニューヨークやロンドンへ飛行機で行って治療できる人がいる。こうした一握りの声が国際社会に入りやすいが、かれらはけっしてアフガン人を代表してはいない。
 私は二五年前にハンセン病撲滅のためにペシャワールに行った。その活動の中で、患者=現地の人の生活・気持ちを理解することの重要さを深く感じるようになった。自分たちの善悪の尺度で見てはならないということだ。現地の習慣については尊重し、まず病気を治すことに専念した。ペシャワール会は文化的には中立の立場を守っている。
 ここでアフガニスタンの人びとの日本に対すイメージについて述べたい。アフガン人は非常に親日的である。それには、かつての日露戦争で大国ロシアを相手にして日本が負けなかったこと。そして、ヒロシマ・ナガサキに原爆を投下されながらも、短期間に再生したこと。そして経済的に繁栄している国なのに外国に軍隊を送らない、平和で強い国というものだ。だから、わたしたちは日本人であることで現地ではいつも温かく迎えられた。しかし、いま、日本に対するマイナスの評価が広がりつつある。強いものにペコペコし、利益のために戦争をやる国になったという見方だ。
 二〇〇一年九月十一日、ニューヨーク・テロ事件が起こったが、その翌日から当時のブッシュ大統領はアフガニスタン攻撃の準備をはじめた。テロ対策といえばなんでも通る異常な雰囲気だった。米軍やタリバン政権と対立していた北部同盟などの力によって「政権交代」が実現し、アフガン復興ブームがおき、二〇〇二年までつづいた。イラクの陰でアフガニスタンは忘れられたような状態となった。けれども、タリバンからの解放とは、麻薬のケシ栽培の自由、女性の売春の自由、餓死する自由、外国人におべっかを使うアフガン人が富む自由などでしかなかった。
 そうした中でもわれわれは変わらず、国の基本は農業であり、緑を回復し、失業者を出さないために、用水路を掘り続け、乾燥に強い作物のために試験農場をつくった。手作りの水路の建設だった。日本の伝統的な蛇籠(じゃかご)をつかった。それは蔓や鉄線などを編んで中に石などを詰めたもので、福岡県の山田堰をモデルにしたものだ。
 これまでアフガニスタンはたびたび外国からの侵略を受けているが、そのたびに撃退している。一九七九年暮れには当時のソ連が入ってきて、一〇年後の一九八九年に撤退するが、当時は世界のだれも予測できなかったが、アフガン人は「彼らは帰る」と断言していた。それが事実となったのだった。アフガニスタンは再び独立国にもどった。国外に逃れていた難民も続々戻ってきた。ペシャワール会も活動を活発化させて、山の中に診療所を建てた。
 しかし、現在、アフガニスタンの情勢はご承知のように非常に厳しいものとなってきている。戦火はパキシタンのペシャワールにも及んできている。このためわれわれのペシャワール病院も一時的に撤退を余儀なくされている。このままではパキシタンは内戦状況に陥り、パキスタン国家はいずれ分裂するだろう。
 いま誤爆による犠牲者が増え続けている。米軍が進駐すると、そこがガタガタになる。増派がつづくと誤爆が増える。治安は軍隊の数にしたがって悪くなるのだ。このことをマスコミもようやく認めるようになった。米軍が対テロ戦争を強化すればするほど、外国人兵士の死者も増え続けている。
 考えてほしい。アフガニスタンを占領し続けたものはだれもいないということを。


KODAMA

       
労働基準の国際化を

 労働者派遣法の抜本改正問題が具体化してきた。これが労働法制の大きな変革の端緒になることを期待したい。この数十年で世界の労働運動は大きく変わった。二〇〇六年、国際自由労連(ICFTU)、国際労連(WCL)とどの国際組織にも加盟していなかった八つの労働組合が統合して、国際労働組合総連合(ITUC)が結成された。その最大の課題は、グローバル化を変革し、働く者に役立つそれを追求することである。
 それと近年の国際労働機関(ILO)の活動も注目すべきだ。ILOは、中核的労働基準分野として、結社の自由及び団体交渉権、強制労働の禁止、児童労働の実効的な廃止、雇用及び職業における差別の排除をあげそれぞれ条約をあげている。そのうち日本は、一〇五号「強制労働の廃止に関する条約」(公務員法でのスト懲役刑が条約に抵触)、一一一号「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」(差別を明確に禁止する国内法の不在が抵触)が未批准。批准すれば労働者に有利に働く。
 派遣法改正について言えば、日本も批准した(一九九九年七月二八日)民間職業仲介事業所条約(第一八一号)がある。この批准で派遣労働が拡大した。この条約は民間職業紹介事業所の世界的な拡大を追認して作らたが、一方でかなり厳密な労働者保護を規定している。これらは表裏一体のものとしてある。その第一一条には、「加盟国は、国内法及び国内慣行に従い、…民間職業仲介事業所に雇用される労働者に対し次の事項について十分な保護が与えられることを確保するため必要な措置をとる。(a)結社の自由(b)団体交渉(c)最低賃金(d)労働時間その他の労働条件(e)法令上の社会保障給付(f)訓練を受ける機会(g)職業上の安全及び健康(h)職業上の災害又は疾病の場合における補償(i)支払不能の場合における補償及び労働者債権の保護(j)母性保護及び母性給付並びに父母であることに対する保護及び給付」とある。
 日本は批准しているのに、まったく保障がない。このようなグローバル化には大いに賛成だ。 (H)


複眼単眼

       
意気消沈する田母神のカラ元気戦略

 今度の総選挙結果と政権交代は右翼には大変なショックだったようだ。雑誌『正論』十一月号は「社会党なき社会党の時代」という渡部昇一論文を軸にした「総力(!)特集」を掲載している。
 そのなかに、最近ではその議論がほとんどピエロ化している田母神俊雄元航空幕僚長(彼の講演会の宣伝の肩書きには田母神俊雄閣下とある!)の「保守を元気にする5つの戦略」(田母神は統幕学校長時代に「航空自衛隊を元気にする10の提言」というトンデモ論文を書いたことがある)という文章もある。
 田母神はこの文章で「反転攻勢の秋(とき)」などと叫んでいるが、「保守を元気にする」どころか、自らが意気消沈している様子を隠しきれないありさまだ。
 曰く「日本列島は日本人のものだけではないと公言する人物が首相になるのは民意の結果だが、わずか七議席しか得なかった反自衛隊の政党党首が閣僚入りするのはいかがなものか」「自民党の迷走も嘆かわしいことこの上ない。……総裁選に出馬したのは、いずれもリベラル思想の持ち主。……だがションボリしているだけではなにも変わらない。むしろこういう時だからこそ、保守勢力は再結集し、攻勢に転じるべきである」などなど。
 田母神がいう「5つの作戦」の「作戦1」は「歴史論争を挑め」だ。ここでも田母神が意気込んで国会に乗り込んだときに北沢俊美委員長に発言を封じられたと嘆いて、「その北沢氏が防衛大臣に就任したことに私はめまいを感じている」という始末。こんなことで「めまい」をしている司令官が勝てる作戦を指揮できるものだろうか。
 「作戦2」は「ついでに防衛論争をしかけよ」だが、その議論とは「核議論である」という。北朝鮮に対抗して核を保有せよ、と。
 「作戦3」は「対米『対等』外交をけしかけよ」である。民主党が「対等」を貫くようにと、右派ナショナリストの立場からけしかけるべきだという。
 「作戦4」は「保守は保守らしく」だ。「たしかに自民党は大敗した。しかしそれは、航空幕僚長だった私を解任した麻生政権が今度は国民から解任されただけのことで、保守層が消えてなくなったわけではない」というのには恐れ入る。この人はホントにジコチューだ。「自民党の中には旧社会党波の左翼思想の持ち主も少なくない」「最近、自民党の左傾化はますます強まり、昨年と今年の八月十五日に靖国神社を参拝した閣僚はたった一人ずつ、しかも(!)男性閣僚は皆無という有様」だと。自民党が左翼に支配されたとは、保守もお先真っ暗だね。
 「作戦5」は「政策による政界再編を」という。これぐらいはまともに言うのかなと思ったら、また自民党総裁選は「いずれも民主党顔負けのリベラル政治家。いかに楽観主義者の私でも、『この党は終わった……』と嘆かざるをえない」と嘆き、自民党と民主がそれぞれ分裂して、平沼グループも加えた保守新党を誕生させるのだという。そのために田母神は総選挙で幸福実現党も応援したのだと。田母神作戦は、この党も含めて「小異を捨てて大同につくべきだ」という。なるほどすばらしい作戦だ。これで保守の人びとは元気が出たでしょうか。
 田母神閣下の仲間に贈る、「桐一葉 落ちて天下の秋を知る」かな。 (T)