人民新報 ・ 第1259号<統合352号>(2009年11月15日)
目次
● 普天間基地即時閉鎖・辺野古新基地建設断念・日米地位協定の見直し 鳩山政権・民主党の公約からの後退を許すな
● 10・17「国際反貧困デー」 反貧困世直し大集会が新政権に政策実行を求める
● 応益負担を核とする障害者自立支援法を廃止へ 長妻厚労相も出席して約束
● 国鉄闘争とすべての争議の解決へ 23回目の団結まつり
● さぁ、労働者派遣法の抜本改正だ ! 日比谷集会と国会請願デモ
● 外国人研修生問題の解決に向けて日中韓シンポジウム
● 「日本の若い人は過去の歴史を知ってほしい」 盛岡「731部隊・細菌戦被害者の証言」・細菌戦パネル展
● 11・3憲法記念日のつどい「なによりも生命 軍事力によらない国際協力を」
アフガニスタン報告 / 長谷部貴俊(日本国際ボランティアセンター・アフガニスタン代表)
軍事力によらない国際協力を / 前田哲男(軍事評論家)
● 複眼単眼 / 小沢一郎の「国会改革」の危険性と憲法解釈
普天間基地即時閉鎖・辺野古新基地建設断念・日米地位協定の見直し
鳩山政権・民主党の公約からの後退を許すな
米国軍隊規律の崩壊
オバマ米大統領の来日は当初予定の一一月一二日から訪日日程を一日遅らせることになった。米テキサス州のフォートフッド陸軍基地で銃乱射・大量殺傷事件がおき、オバマは米軍の最高司令官として犠牲者の追悼式に出席することをいかなる予定にも優先することになった。これはアメリカ国内での厭戦気分の広がり・軍隊規律の崩壊の兆しであり、オバマ政権の重要課題であるアフガニスタン・イラク対テロ戦争戦略が最終的な破綻の局面に来ていることをなによりも鮮明に示すものである。
そして、沖縄では米兵によるひき逃げ死亡事故という基地・軍隊被害がまたしてもおこった。
こうしたことは、これまでにもまして、いまこそアメリカの戦争政策とそれを支える日米軍事同盟の根本的真直しが必要だということである。
民主党は公約を守れ
政権交代をもたらした八月総選挙で、沖縄では自公は全滅した。沖縄県民は、自民党政権の日米同盟中軸政策とその下での沖縄への米軍基地のしわ寄せにたいして怒りを爆発させ、それに変わる政権と政策を求めたのである。
民主党は選挙マニフェストで「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とし、支持を拡大した。
昨年の民主党沖縄プログラムの「在沖縄米軍基地の大幅な縮小を目指して」では「日本復帰後三六
年たった今なお、在日駐留米軍専用施設面積の約七五%が沖縄に集中し、過重な負担を県民に強いている事態を私たちは重く受け止め、一刻も早くその負担の軽減を図らなくてはならない。民主党は、日米安保条約を日本の安全保障政策の基軸としつつ、日米の役割分担の見地から米軍再編の中で在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目指す」と明確に県外・国外移転を主張していたのだ。
そして鳩山三党連立政権の政策合意では「主体的な外交戦略を構築し、緊密で対等な日米同盟関係をつくる。日米協力の推進によって未来志向の関係を築くことで、より強固な相互の信頼を醸成しつつ、沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」として、沖縄をはじめとして基地被害の軽減をもとめる人びとの期待をもりあげてきた。
最近の沖縄県内世論調査でも「普天間基地の県外・国外移設」と「辺野古への移設反対」がともに七割近くなっている。まさに沖縄県民をはじめ民主党を勝利させた民意は沖縄基地の縮小・撤去にあったのである。
沖縄県民の負担―その象徴が人口密集市街地にある超危険な普天間基地であり、その撤去が長年求められてきたのであり、そうした多くの人びとの声にこたえて、鳩山政権はアメリカの恫喝に屈せず、断固として、普天間基地の即時閉鎖、辺野古新基地建設停止を宣言すべきである。基地問題での公約で有権者の支持をあつめた民主党が、いままでの主張を後退させることを断じて許すことはできない。
沖縄の基地反対の声
オバマ来日と日米首脳会談を直前にした一一月八日、「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する県民大会」が、普天間基地の即時閉鎖などを求めて、@日米両政府も認めた「世界で最も危険な普天間基地」の即時閉鎖・返還A返還跡地の利用を促進するため、国の責任で環境浄化、経済対策B返還に伴う、地権者補償、基地従業員の雇用確保C日米地位協定の抜本的改定などをスローガンに同基地のある宜野湾市内で開かれた。
県民大会には会場の海浜公園屋外劇場に入りきれない人を含めて二万一〇〇〇人が参加した。
伊波洋一宜野湾市長が主催者を代表してあいさつ。県民大会は鳩山新政権に沖縄県民の戦後六四年も続く米軍基地の負担、苦しみと悲しみに終止符を打つ英断を鳩山首相に求めるものだ。フィリピンやエクアドルでも米軍基地は閉鎖を余儀なくされている。日本でもできないわけはない。
つづいての翁長雄志那覇市長、野国昌春北谷町長も米軍基地撤去、嘉手納統合案にも反対するとの意見を表明し、沖縄の声を鳩山首相に、そしてオバマ大統領にむけてあげた。
各地で沖縄連帯行動
沖縄の民衆の闘いに呼応して全国各地で連帯行動が取り組まれた。
東京・銀座の水谷橋公園では、辺野古への基地建設を許さない実行委員会の主催の「鳩山とオバマにモノ申す! 普天間基地を即刻閉鎖し、辺野古新基地建設を断念せよ」集会に四百人が参加した。
集会では、ピースリンク広島・呉・岩国、東水労青年女性部、許すな!憲法改悪・市民連絡会、沖縄戦教科書検定の撤回を求める練馬の会、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、9条改憲阻止の会、沖縄の闘いに連帯する東京東部実行委員会から発言があった。
集会の途中で沖縄平和市民連絡会の崎原盛秀さんから電話での沖縄県民大会の様子がスピーカーから流れ、続々結集してくる状況が報告された。
集会を終わって銀座をデモ、普天間基地即時返還などのシュプレヒコールでアピールした。
デモの終了後、参加者の大多数はアメリカ大使館へ。警察の不当な警備・規制に抗して三〇団体を超える申し入れをおこなった。
一一月一〇日には、一〇〇名が参加して、5・3憲法集会実行委員会が主催した国会前集会が行われた。この集会は、「沖縄の普天間基地撤去・辺野古新基地建設反対」を掲げたもので、沖縄
・8県民大会の決議を政府などに伝え要請する沖縄上京代表団の六名も参加して挨拶した。安次富浩ヘリ基地反対協(海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会)代表、伊佐真次ヘリパットいらない住民の会共同代表、山城博治沖縄平和運動センター事務局長、沖縄県高教組(沖縄県高等学校・障害児学校教職員組合)の松田寛委員長、前田政明県議(共産党)、西銘純恵県議(共産党)。
代表して安次富さんがあいさつ。沖縄では県民大会で基地反対の意思をあらわした。全国各地で連帯する行動が起こったことに感謝したい。岡田外相の選挙中の県外移設・国外移設は公約ではないという発言に腹の底から怒りがこみ上げる。危険な普天間基地は即時閉鎖しかない。
集会には、共産党の笠井衆院議員、社民党の重野安正幹事長(衆議院議員)、山内徳信参議院議員が発言した。
沖縄をはじめとする米軍基地撤去、日米地位協定の抜本見直し、アメリカの「対テロ」戦争への日本の加担をやめさせよう。
日本での反戦・反基地の闘いを大きく前進させ、そして基地・軍隊被害の根源である日米安保同盟体制を打破し、憲法9条の精神で日本、アジア、世界の新しい構図を作り出していこう。
11・8沖縄県民大会決議
私たちは、辺野古への新基地建設と県内移設に反対するために、本日ここに県民大会を開催し、老いも若さも世代を超えて結集しました。
沖縄県は、先の大戦で地上戦の戦場とされ、戦後は米軍の銃剣とブルドーザーによって、豊かな県土が奪われ、米軍の占頷下に置かれました。復帰後三七年が経過しましたが、今なお、国土面積のわずか〇・六%にすぎない小さな島に全国の米軍専用施設の七五%が集中しています。
米軍基地は県土の一〇・二%、本島の一八・四%を占め、米軍犯罪や墜落事故などによって県民生活が脅かされ、経済発展にも大きな影響を与えています。
米軍基地の整理・縮小・撤去は県民の願いです。一九九五年には、10・21県民大会を開催し、県民の意思を内外に発信しました。一九九七年一二月の名護市民投票でも、新基地建設に反対する市民意思が明確に示されました。昨年七月には、県議会で、辺野古への新基地建設反対が決議されました。各種の世論調査でも、県民の圧倒的多数が新基地建設反対です。普天間飛行場の辺野古への移設、新基地建設を米軍再編で合意し、それを強行してきた旧政権から、民主党中心の新政権に代わった今、あらためて、県民の新基地建設ノーの意思を明確に伝えるものです。
辺野古海域は、沖縄県が自然環境保全に関する指針で評価ランク1に指定している県民の宝の海です。国の天然記念物であるジュゴンをはじめ希少生物をはぐくみ、新たなアオサンゴの群落が発見されるなど、世界にも類を見ない生物多様性の豊かな海域です。この間強行されてきた環境アセスに対する、県環境影響評価審査会の答申も実質「書き直し」を提起しました。辺野古への新基地建設は、貴重な自然環境を守る上でも許せるものではありません。
ところが、一〇月に来日したゲーツ米国防長官は、鳩山首相、北沢防衛大臣と相次いで会談し、恫喝とも思えるやり方で、辺野古への新基地建設を迫っています。オバマ米大統領との日米会談に向けて、新政権は、米側の圧力に屈せず、対等な日米交渉で、県民の声を堂々と主張すべきです。
私たち沖縄県民は、全国の温かい支援にも支えられながら、この一三年間、辺野古への新基地建設の杭一本打たせませんでした。世界一危険な普天間基地は一日も早く閉鎖し返還すべきです。私たちは、一三八万県民が、安心して暮らせる平和で安全な沖縄にするため、声を大にして主張します。小さな島・沖縄にこれ以上の基地はいりません。辺野古への新基地建設と県内移設に反対します!
以上決議します。
大会スローガン
1・日米両政府も認めた「世界で継も危険な普天間基地」の即時閉鎖・返還を求める。
2・返還後の跡地利用を促進するため、国の責任で、環境浄化、経済対策などを求める。
3・返還に伴う、地権者補償、基地従業員の雇用確保を国の責任で行うよう求める。
4・日米地位協定の抜本的改定を求める。
辺野古への新基地建設と県内移設に反対する県民大会
10・17「国際反貧困デー」
反貧困世直し大集会が新政権に政策実行を求める
政権交代の背景には、格差・貧困化を推し進めた小泉・竹中路線に対する激しい怒りがあった。
それらの声を追い風にして政権与党となった鳩山民主党にはこの問題の早急な解決に重大な責任があるのは言うまでもない。
一〇月一七日、この日は「国際反貧困デー」で、世界各地で貧困問題にたいする取り組みが行われた。日本では、東京・芝公園四号地で、「反貧困世直し大集会2009〜ちゃんとやるよね!?新政権〜」が開かれた。
開会あいさつは、反貧困ネット代表の宇都宮健児弁護士。昨年の反貧困キャラバンは全国にタネをまき、年越し派遣村は貧困問題を社会につきつけた。しかし雇用情勢は悪化の一途をたどり、炊き出しに並ぶホームレスの人は去年の二倍だ。今年も派遣村を作らなければならない状況だが、そうならないように政府に緊急対策を求めたい。湯浅誠さんが国家戦略室の政策参与に選ばれたが、私たちが送り出したのであり、私たちは継続して運動していかなければならない。
つづいて貧困に直面する当事者たちが母子加算、労働者派遣法、障害者自立支援法、後期高齢者医療制度などについて次々に発言した。
集会には、厚労政務官の山井和則衆議院議員(民主党)が参加し、反貧困ネットなどが要求してきた政府としての貧困率の測定を実行しており、近々に発表する、また貧困問題に取り組むためにNPOや現場の人たちの協力を要請するとともに、この年末年始には、政府として派遣村が必要とされない対策をとると述べた。
採択された集会宣言は「去る九月一六日、マニフェストで次のように宣言した民主党が中心の新政権が誕生しました。『コンクリートではなく、人間を大事にする政治にしたい』『すべての人が、互いに役に立ち、居場所を見出すことのできる社会をつくりたい』『すべての人が生きがいと働きがいを持てる国を、あなたと民主党でつくり上げようではありませんか』と。私たちは、ここに示された理念こそが、最大の政権公約だと考えます。この理念が失われれば、マニフェストに書かれた個々の政策が実現しようとも、そこに『魂』はない。もし、マニフェスト実現のためにその理念が犠牲にされるようなことがあったら、私たちはそれを歎大の公約崖反とみなし『すべての人が、互いに役に立ち、居場所を見出すことのできる社会』を作るために、新たな選択を行うでしょう。何のためにマニフェストを実行するのか、その目的と理念こそが重要です」と政府に迫っている。
政権交代と連立政権の政策合意で、反貧困の運動は新しい段階に入った。この集会でも労働者派遣法の改正など三党政策合意を早期に実現させるとともに、これまでの運動の幅をいっそう広めて貧困のない社会実現のために活動を強めていくことが確認された。
応益負担を核とする障害者自立支援法を廃止へ
長妻厚労相も出席して約束
一〇月三〇日、日比谷野外音楽堂とその周辺に一万人をこえる人びとが参加して、「さよなら!障害者自立支援法 つくろう!私たちの新法を!」全国大フォーラム(主催は日本障害者協議会、障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会、全日本ろうあ連盟などでつくる実行委員会)が開かれた。
主催者を代表して全日本ろうあ連盟理事長・石野富志三郎さんが手話で、自立支援法をただちに廃止し、当事者参加の新法制定を一日も速く実現しよう、正々堂々と国民に訴えていこう、とあいさつ。
つづいて、政府に要求する集会アピール(要旨・別掲)が提案され、大きな拍手で確認された。
来賓の長妻昭厚労相は政務官とともに出席し、集会アピールを受け取り次のように述べた。政権交代が起こり、政策が変わる。私どもとしては、この応益負担という非常にみなさまに重い負担と苦しみと尊厳を傷つけるこの障害者自立支援法の廃止をするということを決断をしているところであり、これは、私ども民主党だけでなく、国民新党、社会民主党、連立を組む三党の合意文章の中にも盛り込まれているもので、これから四年間の政権の一期の中で、この応益負担から応能負担に変える新しい制度を創設をしていく。その際には、本当にみなさま方お一人お一人のご意見をできる限り拝聴して、みんなで一緒によりよい制度をつくっていきたい。
つづいて、反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長、障害者自立支援法訴訟原告の家平悟さんの発言があり、政党シンポジウムでは民主党の石毛えい子衆議院議員、共産党の高橋ちず子衆議院議員、社民党の阿部知子衆議院議員、国民新党の亀井郁夫参議院議員が発言し、また主催三団体の意見の発表があった。
集会では、障害者自立支援法の廃止と新法制定に向けて国会内外の運動を強めていこうと確認された。
集会参加者の多さ、熱気と政府与党の対応は、政権交代で、政策が大きく変わったことを実感させ、運動すれば要求を実現することができるということを確信させる感動的な大集会となった。
10・20全国大フォーラム アピール(要旨)
一、応益負担を核とする障害者自立支援法を廃止し、介護保険との統合を行わないことを前提として、「制度の谷間をつくらない新たな総合法」の制定・検討を進めて下さい。
二、制定・検討にあたっては、私たち当事者の十分な参加を保障し、法的根拠を持った協議機関を設置して下さい。
三、新法においては、「制度の谷間」のない、障害を持つ全ての人がサービスからもれ落ちることなく、必要なサービスが受けられるように、障害の定義を抜本的に見直して、障害者権利条約に依拠した定義として下さい。又、運用等の改善で対策が可能なものについては、危機的状況にある当事者への経過的な緊急措置を実施してください。
四、来年度予算において、応益負担の廃止や、月額払いの実施など緊急性の高いものは、盛り込ませて下さい。
五、手話・要約筆記などのコミュニケーション保障は、権利であることを明確にし、無料として下さい。
六、介護、日中活動など地域生活の社会資源が維持できるよう、現行の日額払いを改めるとともに、報酬単価・体系の見直しを行なって下さい。
七、サービスの決定にあたっては、障害者のニーズが十分に満たされるものとなるように、当事者の意見が反映される仕組みとして下さい。
八、極めて障害の重い人の地域生活が真に可能となるように、そのサービス量に対して、国の財政支援のシステムを確立して下さい。
九、社会的入院の解消の実効性を高めるため、精神科の救急医療体制の整備を進め、介護、相談や住宅政策などへの思い切った予算のシフトをはかって下さい。
一〇、働く問題を国際基準に合致させるために、福祉と労働行政の連携を確立させ、働く権利の観点から施策の強化を図って下さい。
一一、「子ども」の支援について現行の「自立支援法」の枠組みではなく、「子ども」の権利の観点からつくり直して下さい。
一二、所得保障、扶養義務問題など、手付かずの問題の解決や、真のノーマライゼーション社会を実現させるため、障害者差別禁止法など必要な立法を行って下さい。
一三、先進国の中で、極めて低いわが国の障害者予算を、対GDP比世界一〇位以内に、飛躍的に押し上げて下さい。
国鉄闘争とすべての争議の解決へ 23回目の団結まつり
一〇月二五日、東京・木場公園で「団結まつり」が開かれた。団結まつりは、今回で二三回目をむかえたが、ようやく訪れた政権交代を国鉄分割民営化によってうまれた一〇四七名解雇問題の解決の契機とするために、また、すべての争議の解決と戦争・貧困・差別のない社会を作り出すための団結の場としてあった。
当日は、当初の激しい雨も止み、参加者も順調に増えていき、最終的には、二一〇〇〇名が参加した。
メインステージでの開会集会では実行委員会を代表して二瓶久勝国鉄闘争共闘会議議長が開会挨拶。長い闘いの中で多くの闘争団員がなくなっている。いまこそ解決すべきときだ。年内決着を実現し、来年の団結まつりは勝利集会にしよう。
続いて闘争団全国連絡会議、松下パナソニック偽装請負事件原告の吉岡力さん、建交労鉄道本部、中央共闘会議から発言があった。
まつりの最後には、一〇四七名当該による壇上での決意表明がなされ、団結ガンバローで早期解決の決意を固めあった。
さぁ、労働者派遣法の抜本改正だ !
日比谷集会と国会請願デモ
労働者派遣法の抜本改正の情勢はいよいよ成熟してきた。
一〇月二九日、日比谷野外音楽堂で「派遣法抜本改正まったなし! 政権交代、さぁ、派遣法改正だ」大集会(主催・派遣法抜本改正を求める共同行動)が開かれ二五〇〇〇人が参加した。
はじめに全国ユニオン会長の鴨桃代さんが、ありとあらゆる力を結集して、派遣法改正を実現しよう、と呼びかけた。
国会からは、民主党の吉川さおり参院議員、社民党の福島瑞穂党首、国民新党の亀井亜紀子参議院議員、共産党の小池晃参院議員らがあいさつした。
日本労働弁護団会長の宮里邦雄弁護士は、労働政策審議会職業安定分科会においても、三党案を批判し、派遣法の規制強化に反対する意見が述べられているが、日本労働弁護団はそれらに反論する「労働者派遣法規制強化反対論に対する意見」を発表したと述べた。
ルポライターの鎌田慧さんは、ピンハネ、低賃金強要の派遣法改正の動きに対して経営側の反撃が激しくなってきているが、抜本改正には労働者の未来がかかっている、いまこそ連合の労働組合もたちあがるべき時だと述べた。
反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長は、先ごろ発表された貧困率は一五・七%を超え、年収二〇〇万円をこえない人が一〇六七万に上っている、こうした状況を変えていくために仲間を増やしてひとつづつ陣地を獲得していこう、と述べた。
集会は、アピール(別掲)を確認し、国会への請願デモに出発した。
「派遣法改正 まったなし」 10・29日比谷大集会アピール
我が国の雇用情勢は昨年以降急激に悪化し、依然として派遣切り・雇い止めが止まらない。
年末にかけて非正規労働者の失職が加速し、失業率がさらに悪化することも懸念されている。
こうした中、新政権のもとで、労働者派遣法の抜本改正に向けた論議がはじまった。労働法制の相次ぐ規制緩和がもたらした雇用破壊に歯止めを掛けてほしいという国民の願いが集まっている。
労働政策審議会の議論の中では、製造業派遣や登録型派遣の原則禁止について、使用者側委員だけでなく、公益委員からも「国内企業の海外展開を促し雇用喪失につながる」とか、「派遣で働きたい人の職業選択の自由を侵害する」などという国民の期待に背を向けた消極意見が出されている。
これらは、労働現場の実情を顧みない意見であり、これまで積み重ねられてきた労働者派遣法改正の議論をなし崩しに白紙撤回させようとするものであって、到底容認できない。
現行法は、登録型派遣を認め、製造業現場にまで派遣労働を広げた。専門職とは名ばかりの業務を期間制限からはずして恒常的業務に「派遣」として使い続けることを容認した。その一方で、均等待遇も確保せずに賃金差別を放置し、派遣先企業の違法行為に対しては、罰則はおろか直接雇用さえ義務付けていない。
派遣先企業の買い叩きによって、派遣労働者の賃金は値崩れを起こし、貯蓄もままならず、失職が即路上生活につながるような貧困と絶望を生んだ。派遣先企業は、労働者派遣契約を安易に中途解除し、雇用主であるはずの派遣会社もこれを易々と受け入れて、派遣労働者を切り捨てる。社宅から追い出し、路上生活に追いやっても恥じるところがない。
職場では、派遣労働者は「外部」の労働者として仲間とみなされず、弱い立場におかれて、いじめ、セクハラ・パワハラは日常茶飯事である。悪質な性的被害も起きているのに、派遣会社は労働者の訴えに耳を貸さず、派遣先企業に毅然とした態度をとることもない。多くの派遣労働者は泣き寝入りを強制されている。
派遣労働者の労働災害は、正規労働者よりもはるかに多く発生しており、派遣労働者の生命・身体の安全に対する関心すら希薄だ。
人を雇うということがこれほどまでに軽視されていいはずがない。
このような労働者派遣法の構造的欠陥を是正するためには、@労働者派遣法を労働者保護を目的とする法律に変えること、Aみなし雇用規定の創設や違法派遣への罰則導入等の派遣先責任を強化すること、B日雇い派遣の全面禁止と登録型派遣、製造業派遣を原則禁止することは急務であり、さらには、均等待遇の義務付け、現行専門業務の見直し、中間搾取率の上限設定など、より踏み込んだ議論も不可欠である。
労働者派遣法は、労働者の間に身分を設定して、労働者を分断してきた。働く者の連帯を奪い、労働者の間に差別心を植え付けた。労働者派遣法の抜本改正は、貧困の克服と雇用の安定確保にとどまらず、労働者が真に連帯を取り戻すための重要な試金石であり、働くことの尊厳をすべての労働者が取り戻し、誰もが安心して暮らせる社会を築く第一歩である。
連立政府は、総選挙で示された国民の強い付託に応え、一日も早い労働者派遣法の抜本改正を実現すべきである。
本日、日比谷野外音楽堂に結集したわたしたちは、すべての労働者、家族、市民と連帯して、労働者派遣法の抜本改正実現を成し遂げるまで全力を尽くす決意である。
外国人研修生問題の解決に向けて日中韓シンポジウム
外国人研修・技能実習制度は「我が国で開発され培われた技術・技能知識の開発途上国等への移転を図り、当該開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に寄与する」ための制度とされているが、実際には研修=「人づくり」とは名ばかりの酷い搾取制度として問題になっているものだ。
実際に、研修・技能実習制度のほとんどが中小零細企業によって安い労働力として期待されて受け入れられている。その問題点には、主なものとして「研修生に労働関係諸法令の適用がない」、「研修生・技能実習生を保護する法律がない」、「送り出し機関を取り締まる法律がない」などがあげられる。具体的には、時給三〇〇円程度の奴隷労働、賃金不払い、パスポート取上げ、携帯電話の所持禁止、セクシュアルハラスメント、そして強制帰国などが頻発しているのである。なかでも昨年八月に山梨県で起きた中国人技能実習生に対する強制帰国強要・暴行傷害事件は、中国国内にも知れわたり、この事件を契機に、外国人研修・技能実習制度による労働基準破壊や人権侵害に対して日本、中国、韓国の国境を越える連携をつくりがはじまった。
一〇月一〇日には、東京・明治大学リバティタワーで日中韓シンポジウム「外国人研修・技能実習制度から見た労働契約法制〜中国、韓国、日本の弁護士、学者、NGOの連携に向けて」が開催された。
問題提起は中国と日本からの二人。中国人民大学の常凱・教授の「海外派遣労働者の保護・グローバルな労働法と労働問題の新課題―日本の研修生制度の研究から」と日本労働弁護団会長の宮里邦雄弁護士の「日本における労働契約法制の外国人労働者への適用と労働契約をめぐる紛争の裁判管轄について」だった。
具体的事例の検証と討論のパネルディスカッションでは、中国の陳歩雷・中国労働関係学院副教授、王晶・首都経済貿易大学労働経済学院副教授、李天国・人力資源和社会保障部労働科学研究所労働関係研究室主任研究員、馮喜良・首都経済貿易大学労働経済学院教授、段毅・広東労維律師事務所主任弁護士、韓国からは民主労総未組織非正規職室・移住労働者担当のパク・スギョンさん、チョン・チョンフン弁護士、日本からは外国人研修生問題弁護士連絡会指宿昭一弁護士、すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワークの早崎直美さん、全統一労働組合の中島浩書記次長が発言した。
来年には北京で第二回目のシンポジウムが開催される。
「日本の若い人は過去の歴史を知ってほしい」
盛岡「731部隊・細菌戦被害者の証言」・細菌戦パネル展
去る一〇月二六日、岩手県盛岡市で「731部隊・細菌戦被害者の証言」と細菌戦パネル展示が行われた。これは「アジア太平洋地域戦争犠牲者に思いを馳せ心に刻む会」が、東京、高松、北海道など全国六ヶ所で開催したものの一環である。
今年の呼びかけ人には作家の川田文子さんや瀬戸内寂聴さんなどが名をつらねている。
731部隊がまいたペスト菌に感染して家族を失った徐万智(シュー・ワンジ)さん(68)は、高熱で痙攣し鼻から血を流すなどして次々と亡くなっていく家族の様子などを涙を流しながら語り、「日本の若い人は私の証言を聞いて過去の歴史に何があったのか知ってほしい。世界の平和を望む人びとと交流することを願っている」と結んだ。
中国で細菌戦被害を研究している湖南文理学院歴史研究科の陳致遠(チェン・ジュアン)教授も講演し、今だなお残されたままの毒ガス弾の状況などについて語った。
終了後、約四〇人の参加者が活発な質疑応答が行われ関心の高さを示した。(岩手通信員)
11・3憲法記念日のつどい「なによりも生命 軍事力によらない国際協力を」
憲法公布の記念日である一一月三日には各地でさまざまな催しが開催された。
東京・水道橋の韓国YMCAスペースYホールでは、11・3憲法記念日のつどい「なによりも生命 軍事力によらない国際協力を」が二一〇人の参加で開かれた。
主催は、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、憲法を生かす会東京連絡会、市民憲法調査会、全国労働組合連絡協議会、日本消費者連盟、VAWWーNETジャパン、ピースボート、ふぇみん婦人民主クラブ、平和憲法
世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会で構成する11・3憲法集会実行委員会。
集会でのメインの講演は、日本国際ボランティアセンター(JVC)・アフガニスタン代表の長谷部貴俊さんによるアフガニスタン現状報告と軍事評論家の前田哲男さんによる「軍事力によらない国際協力を」と題するお話(以下に紹介)。
また吉岡しげ美さんによる金子みすゞの詩の「すずと、小鳥と、それからわたし、みんなちがって、みんないい」などに曲をつけた歌が唱われた。
アフガニスタン報告
長谷部貴俊(日本国際ボランティアセンター・アフガニスタン代表)
二〇〇一年九月一一日事件の背後にアフガニスタンの当時のタリバン政権がいるとして、アメリカは翌月には爆撃を開始した。それ以来、民間人に多数の犠牲が出ている。今日ははじめにアフガニスタンの現状について報告したい。第一の特徴は、アフガニスタンの現カルザイ政権とアメリカに対する信頼度が著しく低下していることだ。今年の二月にイギリスのBBCなどが、「米国によるアフガニスタンでのパフォーマンスをどう見るか」という調査を行ったが、その結果は劇的なものだった。
二〇〇五年の調査では、「よい」が七〇%で、「悪い」が三〇%だったが、今回は、「よい」が三〇%で、「悪い」が七〇%となった。評価が逆転したのだ。とくに、大統領選挙ではカルザイ派が各地で不正を行って、なかなか結果が確定しない。カルザイは選挙に勝利するために地方の軍閥と密約を交わしているといわれ、アフガニスタンの混乱に拍車をかけることまでしている。こうした不正や混乱に対して人々の不信感が大きくなっている。そのうえ、カルザイ大統領の兄弟が麻薬ビジネスで大儲けしているなどの腐敗もものすごい。そして、なによりアフガンの人が危惧しているのは民間人被害が増大し続けていることだ。数字を挙げれば、〇八年の市民の被害者数は二一一八人で、アフガン国軍、OEF(テロとの戦いを標榜しての「不朽の自由作戦」)、ISAF(国際治安支援部隊)の攻撃によるものが八二八人(うち空爆五五二人)にのぼる。今年も昨年以上のペースで民間人被害が相次いでいる。アメリカなどは増派を考えているが、それはさらなる反政府勢力の増加を招くだけである。こうして人々の犠牲と高まる反発のなかで、もはや対テロ戦争なるものは出口を失って完全に泥沼化している。いまでは、アフガニスタン人口の三八%が十分な食料が得られない状態にある。
では現在、日本がすべきことはなにか。日本の「支援」についてはアフガニスタンではほとんど知られていない。自衛隊の給油についてもカルザイですら三年もの間知らなかったという。アフガン人の日本に対する信頼度はいまだに強いものがある。こうしたわが国への信頼の高さを活かしてアフガニスタン国内での平和的アプローチ、たとえば武力での解決は不可能であることを強く主張することだ。インド洋上給油に反対するなど対テロ戦争への協力の見直しにむけて、対話の仲介役をできる立場にいるのが日本でないかと思っている。そして、軍事と一線を画した人道・復興支援をすべきであろう。
その時には、自衛隊派遣だけでなく、PRT(地方復興チーム)の文民派遣もふくめ反対しなくてはならない。PRTとは、軍と文民が協力して地域復興に当たる枠組みだ。それは地域ごとに拠点を設け、軍が治安維持や警察支援などを担い、文民が教育や保健分野の復興支援に当たるという体制で、現在アフガニスタンとイラクで行われている。しかし、PRTの問題点は、住民には軍事なのか、支援なのか、わからないし、中立性が喪失している。そして、治安の維持など目先の成果を追い求めるばらまき援助にはしっており、長期的視点や住民の要求などについて考えないものとなっている。日本も外務省職員四名をPRTに派遣している。その派遣先のチャグチャランはアフガニスタン国内でも比較的安全な場所である。だが安全であるならば軍隊といっしょに活動する必要はないし、文民でも活動できるのである。
自民党内だけでなく民主党の中にもアフガニスタンの人びとの真に求めるものを理解していない国会議員が多い。必要なのは、軍隊ではなく日本にしかできない役割を果たすべきことだという世論を広げていくことだ。
軍事力によらない国際協力を
前田哲男(軍事評論家)
かつてアフガニスタンにはソ連軍の支配下にあったときに訪れたことがあるが、いまも相手はアメリカに変わったが戦いがつづいている。
今日は憲法公布の日だが、われわれの憲法の前文には「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とあり、平和的生存権を宣言している。憲法の下で、われわれのやることははっきりした。若い人たちのやっているJVCの活動はわれわれがなにをなすべきかの手本を示しているように思われる。この間、ピースボートで世界をまわったが、ここでも活動の中心は若い人たちだ。
こうした活動が憲法を生かすことだが、NGOだけがやっていて、政府はやっていないことはまことに残念だ。このような憲法をつくることは大事なことだったが、憲法を生きる、運動を維持し多岐にしていく、もっと大きくする、憲法に体現された日本の大きな目標を広げていく活動が必要で、これが憲法を生かしていくことだ。
わたしは憲法が公布された時には小学校の一年生で、小田実さんたちの世代のように、戦争体験や戦後の教科書墨塗り体験などはない。それは同時に、戦争中の屈辱感やその後の解放感もないが、人生は憲法とともにいきてきたということになる。それだけになし崩し的な改憲、既成事実の積み重ねには危機感が大きい。
この八月三〇日の総選挙・政権交代のニュースはインド洋上のピースボートで聞いた。改憲派の大物が次々に落選するのをインターネットで見ていた。二〇〇一年の一一月に当時の小泉政権はインド洋に海上自衛艦をおくり給油活動がはじまった。いままでに二四四億円の油が使われたという。しかし、アフガニスタンは内陸国であり、テロとの戦いへの燃料補給というが状況は周知のとおりだ。そして、ソマリア沖の海賊対策にでかけた。いまは海上自衛隊だけでなく、それの支援のためにP3Cなど航空自衛隊、そしてその基地を守るためだといって陸上自衛隊がとなって、ついに総勢一〇〇〇人程度の自衛隊がいっている。そもそも海賊だって常に海上にいられるわけではなく地上の基地がいる。藤原純友の乱、倭寇でもそうした基地を押さえられて鎮められた。ソマリア海賊問題も海賊にならざるを得ない状況を解決せずに、単に海上での海賊対策ではなんの問題解決にもむすびつかないのだ。政策が完全に違っているのだ。
二〇〇一年からすでに一〇年過ぎた。これは前後二つに分けられるだろう。アメリカではブッシュからオバマへかわった。特徴的なのは九月という月だ。二〇〇一年九月にはニューヨークでの事件が起こって戦争の嵐が吹き荒れた。昨年の九月にはリーマン・ショックが襲った。これは国際協調で乗り切ろうという方向だ。核政策でも大きい変化だ。サミットでもテーマは、軍事・核抑止力から地球温暖化、エネルギー、食料、水などにうつった。地球共同体の志向だ。日本でも、小泉とその後継内閣から鳩山へと変わった。鳩山は「東アジア共同体」構想を打ち出している。マスコミなどは現実性がないなどと批判しているが、EUも出発点は戦争を繰り返してきたヨーロッパとくにドイツとフランスの反目を解決するためだった。当時も可能性は低いといわれてきたが、今日のようなところまで来ているのであり、東アジア共同体も曲折はあろうが、進んでいくだろう。
時代は大きく動いている。今回の政権交代で、中心的な改憲派は政権の座から放逐された。これは護憲運動にとって大きな勝利であり、憲法を生かす運動をより進めていくことがいっそう必要になってきている。
複眼単眼
小沢一郎の「国会改革」の危険性と憲法解釈
衆議院で圧倒的な多数議席を占めた民主党の幹事長・小沢一郎が政治主導の「国会改革」を看板に、国会法の改定にからんだ危険な動きを強めている。これは議会制民主主義と憲法の遵守の立場から看過できない動きだ。
小沢一郎が主張する国会改革に官僚答弁の禁止がある。それはこの間、国会の論戦において、野党の質問に対して、閣僚が自ら答えることなく官僚に答弁させて事足れりとしてきたことへの批判の形をとっている。
たしかにこの間の自民党が定着させた官僚答弁は目に余るものだった。閣僚はまったく不勉強で、官僚がつくった答弁書を棒読みし、質問されて答えに詰まると官僚に答弁させるという光景が目立ち、この慣習は民衆の政治不信の一つの要因であった。小沢一郎の官僚答弁禁止案は、こうした人びとの疑問と不満に便乗しようとしている。
小沢一郎は一〇月七日の記者会見で、従来、国会で政府の憲法解釈を引き受けてきた「内閣法制局長官」の答弁を禁止する意向を示した。
従来の国会法では、内閣法制局長官は公正取引委員長、人事院総裁などとならんで、独立性の高い機関の長として「政府特別補佐人」とされ、国会論議に於いて答弁が認められてきた。内閣法制局は各省庁作成の法案を閣議にかけるまえに憲法や他の法律との整合性を審査し、チェックしてきた。そして、国会での論戦に於いては政府の憲法解釈を独占的に解釈し、答弁してきた。
9条と集団的自衛権に関する解釈などはその答弁の典型であった。
その意味で、内閣法制局は歴代自民党内閣の解釈改憲の論建てを進め、海外派兵などを合理化する役割を果たしてきた機関である。内閣法制局には重大な問題があった。
しかし、内閣法制局は憲法9条の縛りからまったく解き放たれた解釈をすることはできず、海外派兵や集団的自衛権行使の合憲化を推進しようとする極右派からみれば、目の上のたんこぶ的な存在でもあった。
事実、内閣法制局は小沢一郎が幹事長だった一九九〇年に国連平和協力法案(廃案となる)に関して、自衛隊の派兵条件の著しい緩和に抵抗し、怒った小沢らが罷免を主張したこともある。以来、この問題は小沢の執拗な標的になってきた。また、安倍政権のもとで集団的自衛権の行使の緩和を求める動きをした極右からごうごうたる不満がでたこともある。
一一月四日、平野官房長官は記者会見で小沢一郎の考え方に呼応して「内閣法制局長官の過去の答弁に縛られない」考えを示し、憲法9条などの解釈は「今後は内閣が政治判断する」とした。鳩山首相も同日、「法制局長官の考え方を金科玉条にするのはおかしい」と述べた。
これは従来の憲法解釈をその時々の一内閣の判断で自由に変えようとするものであり、立憲主義の立場から見ても極めて危険な考えだ。
よく知られているように、小沢一郎には国連の決定があれば武力行使を含むものでも自衛隊の参加は憲法違反ではないという特殊な憲法論を持っている。小沢の国会改革が進めば、この独特の憲法解釈を合理化することが可能になる。小沢の国会改革論に反対する課題は急務である。 (T)