人民新報 ・ 第1263号<統合356号(2010年3月15日)
  
                  目次

● 辺野古新基地・ペテン的シュワブ地上案粉砕! 日米関係の抜本的な見直しの時期が来た!

● 「第 回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」  「改憲手続き法の凍結・廃止」運動の拡がりを!

● 「国鉄闘争2・16中央集会」に四〇〇〇人が参加  新政権は解雇当事者の要求を実現せよ

● 郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議が郵政本社前集会  郵政期間雇用社員の均等待遇・正社員化を

● 骨抜きを許さず労働者派遣法の抜本改正実現を

● 「韓国併合」100年 真の和解・平和・友好を求めて  「今こそ100年に及ぶ不正常な関係に終止符を!2・27集会」

● 2・11 天皇制の植民地支配責任を追及する  訪韓で幕引きをさせない!

● 図 書 紹 介  /  金子勝・武本俊彦 「日本再生の国家戦略を急げ! 〜民主党政権への緊急提言」

● KODAMA  /  釧路で国際女性デー集会

せ ん り ゅ う
● 

● 複眼単眼  /  山川暁夫さんから学んだものを噛みしめて






辺野古新基地・ペテン的シュワブ地上案粉砕!

    日米関係の抜本的な見直しの時期が来た!

 
世界一危険な基地

 ブッシュ政権当時の国防相ラムズフェルドは沖縄基地を視察した時、市街地の真ん中にある普天間基地(宜野湾市)を「世界でもっとも危険な基地である」と言った。二〇〇四年八月には、アメリカ軍普天間基地所属の大型輸送ヘリコプターCH―53Dが沖縄国際大学に墜落した。その危険と恐怖は今も少しも減っていない。普天間基地は即時閉鎖しなければならない。ところがアメリカと自民党政府は、普天間基地の「移設」と称して、辺野古(名護市)に、最新鋭の基地を建設する約束をした。だが、名護をはじめ沖縄県民の反基地の声と運動のために、沖合い案も沿岸案も新基地建設は阻止されつづけている。

鳩山は「県外」訴え

 昨年夏の総選挙では、民主党の鳩山などは普天間基地の「国外・県外」への「移設」を訴えていた。そして沖縄県民は、県内には基地「移設」させないという民主党などを勝利させた。民主・社民・国民新三党による新樹立にあたっての「政策合意」でも、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とした。これが、鳩山政権としての公約である。
 今年、一月の名護市長選挙でも基地反対の稲嶺進市長を誕生させた。こうしたなかで、沖縄自民党や自民党に支持される仲井眞弘多沖縄県知事も県外移設を主張するようになってきている。
 「県内新基地建設はノー」―これが沖縄県民の意思であることは明らかになっている。
 いま、自民党政権時代には考えられなかった、沖縄米軍基地問題をめぐってのさまざまな「迷走」が起こっている。鳩山首相は五月までの期限をつけながらも一定の決定引き延ばしをおこなった。この情勢は、沖縄をはじめ反基地運動の盛り上がりをうながすことになった。その上、不十分ながらも日米密約が暴露され、隠されていた日米関係と歴代内閣の犯罪が明らかなってきた。いまこそ、日米安保体制の根底的な見直しが必要なときである。
 それにもかかわらず、国民新党をはじめ政府・与党内に名護市の米軍キャンプ・シュワブの陸上部に移す案が出てきている。この案は、普天間基地の問題点をまるごと「移転」させるだけであり、ひとつも「沖縄県民の負担軽減」にならないものであることは言うまでもない。

名護市議会が意見書

 政府・与党の県民意思を無視したやりかたに、地元の名護市議会は鋭く反撃に出た。名護市議会は八日、定例会で、政府内で浮上している米軍キャンプ・シュワブ陸上案に反対する意見書案と同案を政府・与党の沖縄基地問題検討委員会に提出した国民新党に対する抗議決議を全会一致で可決したのである。
 意見書(要旨)は次のような内容だ。「そもそも普天間代替施設の協議のスタートは、住宅密集地の危険性除去が目的だったにもかかわらず、今回国民新党が提案決定した陸上案は、これまでの移設案よりも住宅地域に近接することになり、単に、普天間飛行場の航空機騒音や危険性をそっくりそのまま、名護市に移しただけのものであり、言語道断だ。陸上案は、名護市民の生活環境のみならず、教育環境までも破壊するものであり、断じて許されるものではない。よって名護市議会は、陸上案に断固として反対を表明する。」 意見書は首相、防衛相、知事などへ、決議は国民新党代表にあてたものだ。この意見書・決議の採択をうけて、稲嶺進市長は施政方針演説で「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らせない信念を最後まで貫く」と述べた。

沖縄は受入れない

 政府・与党の沖縄基地問題検討委員会(委員長・平野博文官房長官)の三月八日の会議では、国民新党がシュワブ陸上案など県内移設の二案、社民党はグアムへの国外移設と訓練を九州など県外で行うなどとする三案、そして平野案が提示されたといわれるが、それらの内容はいまのところ明らかになっていない。ここでの検討を基礎に三月中に政府案がまとめられることになる。「本土に受け入れる素地がない」という発言が国民新党の下地幹郎国対委員長などから出されている。しかし、陸上案についてはすでに沖縄県議会、名護市議会とも反対を表明している。沖縄には絶対に受け入れる素地はないのであることは明白であろう。

 いまこそ、普天間基地を即時閉鎖せよ!
 辺野古新基地・ペテン的シュワブ地上案粉砕!
 日米関係の抜本見直しを!
 日米安保粉砕!


「第 回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」

        
 「改憲手続き法の凍結・廃止」運動の拡がりを!


 安倍政権時代に激しかった改憲の動きは、自民党政治への大衆的な拒否と政権交代の中で頓挫している。こうした状況は改憲阻止運動にとって有利な情勢を切り拓いたが、財界とアメリカの圧力による改憲策動はいぜん止まってはいない。いま、明確な方向性を確認し、運動のいっそう大衆的な拡がりを獲得強化するときである。

 二月一三日、一四日に東京で、全国各地で憲法運動に取り組む市民団体によって、「第一三回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」が開かれた。
 一三日午後には公開企画「主権者は私たち 日米安保五〇年、憲法九条・二五条、改憲手続き法を考える」が開かれた。
 一橋大学教授の渡辺治さんは講演で、安保の歴史の現在について話した。いまは「グローバル安保への強化と軍事大国・構造改革の時代」にあるが、政権交代と民主党政権の成立で、安保・日米同盟はその矛盾を噴出させる時代に入った。民主党は、内閣法制局長官の国会答弁をなくすなど国会改革の名の下で改憲に有利な状況を作ろうとしているが、これを阻止し、真に九条を実現し、また二五条を具体化させることが重要だ。「東アジア共同体」構想、日朝国交正常化のためにも日米安保の見直しは避けて通ることはできない。

 「しんぐるまざーず・ふぉーらむ」の赤石千衣子さんの講演に続いて、沖縄県憲法普及協議会事務局長の加藤裕弁護士、許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんが報告。
 高田さんは、改憲手続法が凍結期間の解除を迎えるこの五月一八日を前にして運動を強めることについて提起を行った。
 改憲手続法は参議院での採決時に与党自らが一八項目もの附帯決議をつけるような欠陥立法だ。その上、これまでのいくつかの国政選挙で示された民意は改憲などではまったく無いことが示された。憲法審査会も法制定以降これまで三年間にわたって始動させなかった。改憲手続法についても凍結を継続させ、そして廃止させる運動が必要だ。

翌日の交流集会では、共同声明「改憲手続き法の凍結・廃止を要求します〜改憲手続き法施行予定の5月18日に際して」(別掲)が採択された。この共同声明を全国に広め手続法施行阻止の運動を広げるために多くの賛同を募集することが呼びかけられた。

共同声明「改憲手続き法の凍結・廃止を要求します〜改憲手続き法施行予定の五月一八日に際して」

 改憲手続き法(日本国憲法の改正手続きに関する法律)は安倍晋三内閣の下、二〇〇七年五月一四日、参議院で強行採決され、成立しました。「美しい国」「戦後レジームの転換」を掲げ、「任期中の改憲」を公言し、それを急いだ安倍内閣と与党の強引な採決でした。まともに審議が尽くされないまま、ひたすら改憲を急ぐために強行された同法は、多くの「附則」や「附帯決議」がつけられた、まったくの欠陥立法というべきものでした。
 議論が先送りされ、附帯決議などで与党も不備を認めた同法の主な問題点は以下のようなものです。
 一、投票権者をどう規定するか(一八歳投票権問題、公職選挙法や民法との整合性の保障)。
 二、国民投票の対象はなにか(憲法だけでなく、国政の重要問題についての国民投票の可否)。
 三、広報や広告など、メディアの在り方(議席数で広報の量の配分を決めてよいか、有料広告を認めると資金能力で宣伝に差ができる)。
 四、国民投票運動の自由に関する問題(公務員や教育関係者の政治活動、地位利用の制限などによって、自由な活動が制限される)。
 五、投票成立の要件をどうするか(過半数の分母問題や、成立に必要な最低投票率規程の有無)、などなど。

 当時、同法は世論の冷却をねらって「憲法改正の発議」や「国民投票」の部分の施行を三年間凍結されました。その結果、同法の施行(凍結解除)は二〇一〇年五月一八日に予定されていますが、以後の国会では、ここにあげたような同法の附則や、附帯決議にもとづく検討や法改正は、まったく行われておりません。

 〇九年六月、安倍晋三の意向を受けついだ麻生内閣により衆議院憲法審査会「規程」が強行採決されましたが、当時の野党が委員の選出にも応じなかったため、衆議院審査会はつくられず、野党多数の参議院では「規程」の議論すら行われませんでした。憲法審査会は改憲手続き法成立後、二年九ヵ月、まったく始動していません。

 この間、〇七年の参院選や、〇九年の衆院選で与野党議席数が逆転し、明文改憲の動きを推進してきた自公政権が下野するなど、政治情勢は大きく変わりました。またこの間の世論も改憲を要求していません。新政権は憲法問題ではなく、小泉政権以来の構造改革政策の転換、「生活が第一」を掲げて多数議席を得ました。新政権に有権者が期待しているのは改憲などではなく、「生活」問題の解決です。

 強行採決され、改憲国民投票では国民の意思が正当に反映されないという点において多くの問題点を持っている欠陥立法は、五月一八日がきても、ひきつづき凍結されるべきです。中身が伴わないままに「規定された三年が過ぎた」などという理由で、同法を施行するなどは許されないことです。改憲手続き法は凍結し、いったん廃止にして出直すべきです。


「国鉄闘争2・16中央集会」に四〇〇〇人が参加
    
           
新政権は解雇当事者の要求を実現せよ

 国鉄闘争・一〇四七JR不採用問題は、二四年目を迎えた。一九八七年に旧国鉄が分割・民営化された際、国労組合員ら七六三〇人がJRに不採用となり、うち一〇四七人が九〇年に旧国鉄清算事業団から解雇された。すでに六〇名の闘争団員が闘いの道半ばで亡くなり、その解決はまさに待ったなしの状況だ。政権交代したいまこそ解決の好機だとして、「一人も路頭に迷わせない解決を」を求めての政治的な行動が取り組まれ、与党三党と国労や訴訟団との話し合いの中で、国労などは@JRへの再就職、不採用者が設立した事業会社への財政支援などによる雇用の確保A解雇後も厚生年金に加入していたとみなすなど年金制度の回復B慰謝料を含めた解決金という三項目を要求してきた。

 JR不採用を通告されたのは二月一六日。その日には毎年大きな行動がとり決まれてきた。
 二月一六日、日比谷野外音楽堂で「JR不採用問題 解決へ! 2・16中央集会」が開催され、みぞれ交じりの雨にも関わらず、四〇〇〇人の労働者・市民が参加した。
 高橋伸二国労本部委員長は、新政権のもとで解雇当事者の要求を絶対に実現させようと訴えた。
 藤本泰成平和フォーラム事務局長、大黒作治全労連議長、武藤弘道都労連委員長があいさつした。
 国鉄闘争共闘会議の二瓶久勝議長が情勢報告。この闘いを金銭だけの解決で終わらせてはならない。また妨害勢力の動きをはねのけ解決するため、当事者である四者を中心に四団体、そして支援者の団結をより固めることが必要だ。現在、政治解決にむけた過程にあるが油断せず、解決をするまで、共に闘いぬこう。
 当事者からの訴えでは国労闘争団全国連絡会議の小野浩二副議長が、家族の訴えでは音威子府の杉山智子さんが、解決を勝ち取ろうと決意表明した。
 全動労争議団の池田孝治団長が読み上げた集会アピールでは、経過と今後の方針について次のように述べている。
 「昨年の『JR不採用問題の解決に向けた11・26集会』で、政権与党と野党の代表者は、『二三年が二四年にならないように各党が力をあわせて解決に全力を尽くす』と発言、一二月二五日には、与党三党が鉄道・運輸機構に『話し合いを開始するよう』要請しています。本年、一月一三日には、与党・政府・国土交通省が解決に向けた考え方を議論、一月二五日に四者・四団体は、与党三党に『路頭に迷わない解決』要求の提出と説明を行いました。また、一月一九日には、前原国土交通大臣が、記者からの質問に、『長年解決していない問題、一日も早い解決が望ましい。与党でいま、動かれているということでございますので、私の方に何らかの要請と要望があれば対処していきたい』とコメントし、一月二七日、鉄道・運輸機構は四者・四団体の申し入れに対し、『政府・政治の判断には従う』と応えています。いまこそ解決を!『四者・四団体』と本集会に結集された諸団体・個人のみなさま、全国でこのたたかいを支えていただいているみなさまとの強固な団結のもと、世論と運動を盛り上げ、納得できる解決『雇用・年金・解決金』を勝ち取るため力をあわせて奮闘しようではありませんか。」

 壇上には全国から結集した一〇〇名を越える当事者と家族が登り建交労佐藤陵一委員長が閉会の言葉を述べた。

 そして与党三党と公明党の実務担当者が政治決着に向けた素案をまとめる段階に入った。それによると、解決金などとして一世帯当たり平均二九五〇万円(総額約二八七億円)。財源は、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の特例勘定からで、係争中の原告九一二世帯が対象になるという。雇用面では、JR側に約二〇〇人の雇用確保を要請する。また不採用者が設立した事業会社一八社に各一億円の支援金などとなっている。

 こうした素案が政府段階でどうなるのか、妨害勢力の工作を阻止してこれ以上の切り下げを許さないのはもとより、なにより重要なのは当事者・家族が納得できる解決案とならなければならないことだ。


郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議が郵政本社前集会

            
郵政期間雇用社員の均等待遇・正社員化を

 小泉・竹中の新自由主義路線の中心政策であった郵政民営化の見直しが大きなうねりとなって進められている。郵政職場でも労働者の利益を誰が守るのか、が問われている。
 三月四日、郵政本社前で、二百人が結集して郵政期間雇用社員の均等待遇・正社員化を求める行動が展開された。主催は、郵政労働者ユニオン、郵政産業労働組合、郵政倉敷労働組合で構成する「郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議」。
 郵産労の山崎清委員長が主催者あいさつ。政権交代は要求実現のチャンスだ、亀井静香郵政担当相も正社員化を語っている、力をあわせて闘おうとあいさつ。
 つづいて全労協の藤崎良三議長、全労連小田川義和事務局長が連帯あいさつ。日本労働弁護団の棗一郎弁護士が、労働法制の改正についてアピール。
 郵政ユニオンの松岡幹雄委員長は、非正規労働者の均等待遇と正社員化を求める運動で、全国署名は約二万五千筆以上にのぼった。
 各地からの非正規・期間雇用社員が、平等な待遇と正社員化にむけて闘う決意を表明した。
 行動アピールを採択し、郵政本社に対してシュプレヒコール。


骨抜きを許さず労働者派遣法の抜本改正実現を

 今国会へ政府は労働者派遣法改正案を上程しようとしているが、それは多くの人々が求める抜本改正には程遠いものである。労働者の要求と財界の圧力とどちらが優勢となるのか、いままさに抜本改正運動にとっての大きな山場を迎えている。

 二月一九日、参議院議員会館で、「派遣法抜本改正の骨抜きは許せません! 政治主導で解決してほしい! 2・19緊急院内集会」が開かれ、会場に溢れるほどの人が参加した。集会の直前の二月一七日、労働政策審議会に「労働者派遣法の一部を改正する法律要綱」が諮問されたが、その内容は、昨年に野党時代の民主・社民・国民新の三党共同改正案から大幅に後退しているだけでなく、現行派遣法よりも改悪されているところもあるというものになっている。
 集会には、社民党の福島みずほ党首、山内徳信衆議院議員、共産党の山下芳生議員、民主党の工藤仁美衆議院議員なども参加。国民新党からはメッセージ。
 「派遣法改正共同行動」の棗一郎弁護士が「法案要綱」について説明した。
 棗弁護士は、企業にとって有利な抜け穴が多く、こうしたものを早急に埋めなければ抜本改正とは言えないものになってしまう、この「法案要綱」では、事前面接の禁止が緩められてしまうこと、日雇派遣でも三党案では二ケ月以下の派遣を全面禁止となっていたのが、今回は政令で定める業務は例外とされ実質的に日雇い派遣を法的に認めるものとなる、「みなし雇用制度」でも要件を派遣先が違法を知っている故意過失があった場合のみとしていて会社が知らなかったと強弁すればそのままになる点などを問題点としてあげた。
 つづいて派遣ユニオンの関根秀一郎書記長、全労協全国一般東京東部労組の菅野存委員長、昨年末から「公設派遣村」の二人からの発言があり、最後に全労連事の井上久務局次長がまとめの言葉を述べた。

 三月八日には、政府・連合の政策協議会が開かれ、そのなかで連合側は労働者派遣法改正案について、労働政策審議会の答申通りに早期成立させるよう要望し、四月上旬にも鳩山由紀夫首相と古賀伸明連合会長の会談を行う方向で調整することで一致したと報じられた。力を合わせて、抜本改正実現に向けて闘いを強めていかなければならない。


「韓国併合」100年 真の和解・平和・友好を求めて

   「今こそ100年に及ぶ不正常な関係に終止符を!2・27集会」


 今年は、日本の「韓国(大韓帝国)併合」から一〇〇年、そして日本の植民地支配からの独立を求め朝鮮半島全土で人々が立ち上がった3・1独立運動から九一周年の年。しかし、日本と韓国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との間には不正常な関係が克服されていない。
 こうした歴史の節目に、日本と朝鮮半島の真の和解と平和・友好の転換の年にするために、さまざまな取り組みが行われている。

 二月二七日、文京区民センターで、「韓国併合」一〇〇年 真の和解・平和・友好を求める二〇一〇年運動(略称・二〇一〇年運動)の主催による、「『韓国併合』一〇〇年― 3・1朝鮮独立運動九一周年 今こそ一〇〇年に及ぶ不正常な関係に終止符を!2・27集会」が開かれ、多くの人々が参加した。会場周辺には「在特会」などの右翼が集会を破壊しようと騒ぐが、強固な集会防衛体制に完全に阻止した。

 はじめに主催者の「二〇一〇年運動」を代表して渡辺健樹さんが基調報告。
 日本の敗戦から六五年もの歳月が経過しようとしている現在もなお、韓国との間では過去の清算が未解決であるばかりか、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との間には国交すらないまま今日に至っている。これ自体、異常なことである。私たちは、あらためて「韓国併合」一〇〇年という歴史の節目を、過去に真摯に向き合い、日本と朝鮮半島の真の和解と平和・友好の転換の年にしていく必要がある。しかし、いま一部右翼による朝鮮学校襲撃など暴力的な排外主義行動も顕在化している。また、鳩山首相は「日韓安保共同宣言」をめざすと言明し(一月八日)、天皇訪韓も取りざたされている。私たちは、新たなナショナリズム・排外主義や天皇訪韓など「未来志向」の名による欺瞞的な過去清算問題の幕引き、日韓安保協力に反対する。
 われわれの要求は以下のようなものだ。@日本政府は強制連行・日本軍「慰安婦」被害者等への謝罪と補償をおこなえ。A北朝鮮への制裁を解除し、対話・交渉の速やかな再開と日朝国交正常化の早期実現を強く求める。一〇〇余年に及ぶ過去の清算を真摯に行い、その一環として拉致問題も速やかに解決すべきである。B「韓国併合」一〇〇年にあたり、謝罪・反省の国会決議および政府談話等を要求する。C永住外国人の地方参政権問題をめぐり朝鮮籍の人々の排除など新たな差別・分断をもたらす動きに反対する。また「高校無償化」から朝鮮学校を除外する動きにも強く反対する。何よりも民族教育の保障をはじめとする在日外国人の民族的民主的権利の確立を。在日外国人への差別・排外主義と暴力の根絶を!D天皇制は侵略・植民地支配に最高の責任を負っており、何らの責任もとらない天皇の訪韓に断固反対する。        
 講演は、「『韓国併合』一〇〇年―日本と朝鮮半島の過去・現在を問い直す」と題して、元千葉工業大学教授の伊藤晃さんが行った。
 戦後二代にわたる天皇は、日本の戦争・植民地支配に関する国家責任をかわすために大いに活躍してきたが、これまで朝鮮半島にだけは足を踏み入れることはできなかった。ところが、民主党の鳩山・小沢政権はその天皇の訪韓を韓国併合一〇〇年の今年に実現させたいらしい。日本が東アジアのヘゲモニー国家になるためには、韓国との間のわだかまりを解くことが本質的な問題になっているからだ。しかもこの地域に「不正常」な関係をもたらし、いまももたらしつづけている日本の責任はあいまいにしたままでの「国家間の和解」をするというのが日本国家の希望である。そのための天皇・皇室外交の役割が期待されているのだ。昨年、中国国家副主席との会談問題で、小沢の「天皇の政治的利用」が問題となったが、戦後の日本支配集団は共同で天皇を政治的に使ってきた。しかし、今回の小沢のやり方では、これまで暗黙のうちにやられてきたことが公然化してして、天皇の政治性というものが暴露されてしまうという危惧が小沢批判を生み出しているのだ。
 つづいて昨年一二月在特会による京都朝鮮第一初級学校襲撃の映像が上映され、NPO役員の「安さんが朝鮮学校襲撃を許さないと報告、中原道子・VAWW―NETジャパン共同代表は日本軍「慰安婦」問題の解決に向けての発言を行った。
 韓国からのゲストとして集会に参加した韓国進歩連帯代表のハン・チュンモクさんが特別アピールを行い、韓国での共同宣言運動を報告した。
 そして、「東北アジアの真の和解と平和のための二〇一〇日韓(韓日)民衆共同宣言が読み上げられた(韓国側では三月一日に記者会見で発表後、ソウル市内でデモ行進)。「宣言」は、@「韓国併合」一〇〇年に際し、日韓(韓日)民衆は共同して訴える、A朝鮮半島の平和と統一は東アジア平和の土台、B東アジアの非核・平和構築により、共同繁栄の未来をつくろう!、の三部構成となっており、それぞれに要求する項目を掲げている。
 その「東アジアの非核・平和構築により、共同繁栄の未来をつくろう!」では、以下の五項目が示された。@日本における一部政治勢力の軍国主義右傾化の動きは、平和を望む日本民衆の願いと逆行するものであり、東北アジアの平和を求める共同の努力を阻害する危険要素である。日本の憲法九条と非核三原則は、東アジアの平和のための努力の象徴として、厳格に守られなければならない。Aこれまで核兵器廃絶の公約にもかかわらず、米国の核能力はいまだに統制、削減されておらず、これまでのブッシュ政権時代の先制核攻撃政策は全世界の人類を対象とした強圧的覇権政策と違わなかった。米国のオバマ政権は、これまでの核保有、核攻撃政策と断固決別し、世界に核の先制不使用を公約し、口先だけでなく実質的な核軍縮・核廃絶の先頭に立たねばならない。B東北アジアにおける核の脅威を除去するためには、一切の核攻撃の脅威を除去せねばならないところから、日韓(韓日)両国政府は防御の名目のもと実質的攻撃を行おうとする米国の「拡大抑止(核の傘)」戦略から断固として離脱すべきである。C東北アジアにおいて依然と残っている冷戦型の軍事同盟は即時解体されるべきであり、新たな安保協力体制を構築すべきである。このためには米軍は沖縄・日本・韓国から撤退すべきであり、沖縄の辺野古地区の新基地建設計画は即時中止されなければならない。D私たちは、東アジアの平和を大切にし、全世界の他国や他民族に対する戦争にも反対する。日韓(韓日)両国政府は、米国の一方的な侵略戦争であるイラク・アフガニスタン侵略への軍隊派遣を即時中止しなければならない。


2・11 天皇制の植民地支配責任を追及する

               
訪韓で幕引きをさせない!

 二月一一日、2・11反「紀元節」行動の主催で「天皇制の植民地支配責任を追及する 訪韓で幕引きをさせない!」行動が闘われた。
 右翼の妨害をはねのけてデモ、その後の文京区民センターでの集会では、はじめに反天皇制連絡会の桜井大子さんからの基調報告。
 「官民」をあげてさまざまな「奉祝」行事を準備しながら、昨年の「天皇即位二〇年」は、ついに大衆的な盛り上がりをつくりだすことができないままに終わった。しかし私たちは、その直後に予想もしないかたちで、天皇制にかかわる論議を目にすることになった。昨年の夏、政権交代を果たした民主党政権のもとで、少なくとも表面上、従来の自民党政治とは一線を画そうとする動きが現われている。昨年一二月、「ルール」を無視した小沢民主党幹事長の「ごり押し」で、天皇と中国の国家副主席との会見が行われたとして、「天皇の政治利用反対」の声が上がった。そのことは憲法上、天皇の行為はいかにあるべきか、「天皇の意志」はどのようなものか、宮内庁はどういう組織であるべきかどいう、さまざまな議論を噴出させることになった。さらに小沢は、同じ時期に訪問した韓国で、永住外国人への地方参政権付与に言及しながら、天皇の訪韓について「韓国の皆さんが受け入れ、歓迎してくださるなら結構なことだ」などと述べた。「日韓併合」から一〇〇年にあたる今年、「過去清算」を求める立場から天皇訪韓をという声が、「リベラル派」の中からもあがっている。私たちは今年の反天皇制運動の大きなテーマとして、天皇訪韓をはじめとした民主党政権下の天皇制との対決ということを、つねに意識していかなければならない。そのために私たちは、本日の反「紀元節」行動を、天皇訪韓による植民地支配責任、戦争責任の欺脆的な清算を許さないという立場から取り組む。
 つづく講演は吉澤文寿さん(日韓会談文書・全面公開を求める会共同代表)が「天皇の植民地責任」と題して、四五年前の一九六五年二月の椎名悦三郎外相(当時)の訪韓と日韓基本条約仮調印から話し始めた。
 日韓会談と日韓基本条約を再検討する動きがある。日韓両政府は当時の文書を公開しているが、韓国政府は全面公開だが、日本政府のものは二五%の不公開部分を含んでいる。その不公開部分は、第一に「独島=竹島領有権問題」、第二に財産請求権問題にかかわるものが多い。前者については、日本政府内部における同島領有権についての研究に関する記述がほとんど開示されていない。仮に日本政府独島=竹島領有権を主張するのであれば、国が現在の主張に至った経緯を情報開示によって明らかにすべきである。もっとも、独島=竹島領有権問題は日露戦争を有利に戦うために、一九〇五年二月に日本政府が同島を領土編入したという経緯に照らせば、韓国のみならず、朝鮮民主主義人民共和国との関係でも考えられるべきである。後者については、日本政府が韓国政府の主張する請求権の金額を試算したもの、請求権問題を解決するための方案、そして在朝日本人財産についての試算額などが不開示となっている。外務省は前者については韓国との関係、後者についでは朝鮮民主主義人民共和国との関係を意識しているようである。植民地主義と分断体制の克服が今日の日本と南北朝鮮との関係における最も重要な課題であるとすれば、上述した日韓基本条約及び諸協定の問題点は遅くとも日朝国交正常化の時点において克服されなければならないが、それを待たずとも一刻も早く克服すべきである。日本が朝鮮を植民地化し、植民地支配をし、朝鮮解放後も分断体制の強化に努めてきたことを認め、植民地主義の克服につながるような強い決意を示すことが大切である。日本国家及び日本国民が率先して、植民地被害者への補償を実現し、在日朝鮮人の生存権を保障することにより、朝鮮人たち自らが取り組む「過去清算」を助けることにもなるはずである。そして、何よりもそのような行動は日本国民自身を植民地主義の桎梏から解き放つことになるだろう。
 最後に、「第四四回なくそう!建国記念の日、許すな!靖国国営化 2・11東京集会」からのメッセージが紹介され、「韓国併合」一〇〇年 真の和解・平和・友好を求める二〇一〇年運動、新しい反安保行動をつくる実行委員会、「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会、沖縄一坪反戦地主会関東ブロックなどからアピールが行われた。


図 書 紹 介

金子勝・武本俊彦


   「日本再生の国家戦略を急げ! 〜民主党政権への緊急提言」


                                         小学館 1,680円

 大きな期待を持って行われた政権交代と民主党を中心にした鳩山政権の誕生だったが、新内閣は支持率を急角度で失いながら失速している。だが、こうした状況でも、右シフトを強調することで復権を狙う時代錯誤の自民党は党内造反を激化させるだけで、一向に支持を回復できていない。この事態は、民主党マニフェストなどに表現された新たな展望を支持して生まれた政権がその公約を貫徹できていないところにある。すでに世界史的な激動の過程に入っているのに、そして国外では、多くのところで変化に対応する政策の実行がなされ始めているのに、日本では、自民党のみならず、民主党も変革の萌芽を示しながら、自ら本質的なものをしっかりとつかめていない。政権党になってからはアメリカや財界、マスコミの圧力の前に、後退を強いられているのだ。いま、政権交代をもたらしたものの政治的な意味、新政権の政策そして哲学的には何が求められていたのかをはっきりと認識することが重要であり、おおいに論議が起こるべきであろう。
 経済学者の金子勝慶応大学教授と衆議院調査局農林水産調査室の武本俊彦主席調査官の共著「日本再生の国家戦略を急げ! 民主党政権への緊急提言」には、鋭い指摘がある。
 「いまや、日本社会の持続可能性を取り戻し、日本経済を再生させる『経済再生戦略』が求められている」「今回の政権交代は、そのための大きなチャンスだ」とする本書は、鳩山政権は日本政治の大きな転換を実現していないとする。「それは民主党政権が、自らのマニフェスト、あるいはそのもとになった民主党政策INDEX2009の意味を十分に理解していないことに大きな原因」があると言う。そこで本書では、民主党の農業政策作成に深く関わってきた武本俊彦が「自らの分析に基づいて民主党の政策戦略の理念と成り立ちを示し」、「日本版ニューディール政策によって世界で進みつつある『新しい産業革命』を実現するための道筋を示す」という。
 昨年末に出された鳩山政権の「『新成長戦略(基本方針)〜輝きのある日本へ〜』の政策の中身については、「福田政権時代や麻生政権時代に持ち出された関係各府省の案が衣をかえて出てきたようで、民主党がマニフェストやINDEX2009に掲げた政策の理念も政策体系も反映していません」と批判する。
 積極的な主張としては、農業とエネルギー面の政策が中心だ。そこでは農業の六次産業化、再生可能エネルギーの開発などが提起される。とくに三つの重点分野への注力が強調される。第一は、新しい成長産業をつくり産業の競争力を回復させる産業政策、一〇〇年に一度のエネルギー転換=「日本版ニューディール」構想だ。第二には、雇用や社会保障制度の再生の課題。第三は、新しい政策理念と政策体系を実現するために、政府と官僚組織の意思決定メカニズムを変革する課題である。
 目次をあげておこう。「はじめに チェンジは可能か?」「1 民主党はなぜ混乱するのか」「2 民主党マニフェストを検証する」「3 基本に立ち返って政策を考える―農林水産政策策定の過程から」「4 政策理念を根本的に転換する―危機を克服して農村地域の経済再生を」「5 日本版グリーンニューディールを急げ―環境エネルギー革命による経済再生ビジョン」「6 いま民主党政権がなすべきこと」。
 著者は、民主党が基本理念と政策を忘れているというが、民主党がマニフェストやINDEX2009を読んだ上で、民主党のこの間の動きを見てみると、民主党の幹部たち、議員たちはそもそもはじめから理解していたとは思えない。たしかに、民主党の中でも、筒井信隆衆議院のような人はいる(例えば洋泉社新書『日本版グリーン革命で経済・雇用を立て直す』)のだが、理念よりも選挙での多数の獲得に集中しがちなのが、このごろの民主党である。
 たしかに民主党のマニフェストやINDEX2009には注目すべき観点が多いようだ。著者たちは、そのエッセンスをかれらなりに再構成しての政策提言となっているといえる。また、民主党の政策などは、民主党の独創でないのはもちろんで、ヨーロッパ諸国、そして中国やオバマのアメリカでさえすでに、こうした大転換に向けて取り組んでいるようであり、世界の潮流に完全に乗り遅れそうになっている日本の閉鎖性はすごいものだとつくづく感じさせられた。 (MD)


KODAMA

   
釧路で国際女性デー集会

 三月七日に、3・8釧路集会実行委員会(連合釧路青年女性委員会、平和運動フォーラム、I女性委員会、市民フォーラム946、社青同などで構成)の主催で、イラク支援ボランティアの高遠菜穂子さんを招いて「命に国境はない イラク戦争とはなんだったのか」をテーマに3・8国際女性デー第四九回釧路集会が開かれ二〇〇名が参加した。
 高遠さんは、イラク戦争開戦の最大の根拠であった大量破壊兵器保有の情報が誤りであったことが明白となった中で、イギリスやオランダではイラク戦争の検証を行う調査委員会が発足し、参戦の正当性を問う動きが始まっている。にもかかわらず、日本の外務省のホームページにはいまだに「イラクの大量破壊兵器保有の疑惑」についての記載があるのはまったくおかしいと指摘した。これからは日本政府において独立の「第三者検証委員会」を作りアメリカのイラク戦争支持の政府判断や自衛隊のイラク派遣の是非を問うことが必要と訴えた。
 人質事件については、米軍に肉親を殺された怒れる遺族たちに拘束されたが、解放後は日本で激しいバッシングに晒され武器を持ったイラク人には殺されなかったが武器を持たない同胞には「殺され」た。
 しかし四ヶ月後にはイラク支援を再開し、支援調整のために近隣諸国に三〇回の渡航と五年で総額三六六〇万円の支援を行った。昨年四月には支援活動を評価したイラク人に招待され、五年ぶりにイラクを訪問したことを映像も交えて紹介した。自分にとって米軍による虐殺のあったファルージャでお墓参りをしなければ二〇〇四年の事件は終わらないと思っていた。そのファルージャの墓地では身元が分からず『母と子』としか書かれていない墓碑を前にして涙が止まらなかった。
最後に、高遠さんは、生きている限り、イラク戦争を語っていこうと誓ったと述べ講演を終えた。  (S)


せ ん り ゅ う

   スパイラルぼくの月給デフレーション

   歴史ですお国の刀で作りもの

   自殺3万無縁死3万あたりまえ

   3万の未必の故意は経団連

   リコールは乾いた雑巾の垂れ汁

      ○

   痛み入る、写真の中の君の顔

            ヽ 史 (ちょんし)

 ● 景気スパイラルその責めは明確に政治にある。 ● 一月三十一日「日中歴史共同研究委員会」報告書を発表。日中二ヶ国での政策的な歴史共同研究なぞ不毛に決まっている。 ● 昨年は、三万二千七百五十三人の自殺、無縁死三万二千人。その半分位は行旅死亡人として公報が引取者を求めている。 ● 欠陥製品は非人間的工場の産物ではないか。ホームレス激増で政府はリコール責任を取れ! 
 Θ 古いアルバムを開くと深くお世話になった又教えられた旧友恩師に胸がいっぱいになる。山川さんの十周忌。


複眼単眼

   
山川暁夫さんから学んだものを噛みしめて

 三月六日、都内で「山川暁夫=川端治没後一〇年のつどい」が、東北地方や関西からの人びとを含め、各界の人士、約一〇〇名の参加で開かれ、山川暁夫さんのこの一〇年の「不在」と向き合う中で、「山川暁夫さんの遺志」を確かめ、「未来を切り開く元気」を分かち合った。
 第一部の「山川さんから学んだこと」では、宮本なおみ(元目黒区議)が司会をし、浅井真由美(労働情報)、長谷川慶太郎(経済評論家)、有田芳生(民主党参議院議員候補者)、保坂展人(社民党前代議士)、宋世一(韓統連事務総長)、池田五律(元・派兵チェック編集委員会)、高田健(許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局)、本尾良(女性九条の会)など(敬称略)の人びとがスピーチした。
 第二部の「懇親会」では、労働運動、市民運動など、各界から多彩な人びとが山川暁夫さんを偲んで発言した。最後に山川さんのお連れ合いの山田聡子さんが挨拶した。
 つどいでは山川さんが民衆運動の多彩な分野の人びとに大きな影響をあたえ、それが運動の中で脈々と継承されていることが口々に語られた。
筆者の関わっている憲法運動の分野でも同様だ。
 山川さんは一九九三年に、当時の改憲の動きを見抜いて、一九六八年のチェコの二千語宣言運動にヒントを得て、新しい護憲運動の「三千語宣言運動」を提唱した。これは運動としての広がりはもてずに終わったが、当時、山川さんの指摘した視点はその後の憲法運動に極めて重要な影響を与えた。
 山川さんの認識では、新しい改憲の動き(市民運動はその後、九〇年代明文改憲運動と呼んだ)は、@国際貢献に名をかりた改憲(占領憲法批判などではなくて)、A解釈改憲が極限に達した段階での改憲攻撃、Bマスコミの世論調査で、改憲支持が改憲反対を上回ってきている段階での改憲運動、C世界的な「改革」=新自由主義の台頭と歩調を合わせた改憲運動だ、という認識であった。
 山川さんは九三年の「世界」四月号掲載の「平和基本法」提唱や社会党内の「安全保障法」構想の提唱を批判、社会党の「九三年宣言」に警鐘をならした。一方で、現行憲法の欠陥を指摘することで、新改憲を主張するような一部新左翼の流れをも批判し、「新しい護憲」を提唱した。
 これらの指摘はすぐれた先見性を持っていた。これはPKO派兵や九三〜九四年の朝鮮半島の核危機に対応して急速に台頭しつつあった「九〇年代明文改憲運動」の流れへの警鐘と、それへの対抗運動の提唱だった。これは一九九四年には読売改憲試案、九〇年代後半の有事法制立法化、そして教育基本法改悪、防衛省昇格、改憲手続き法制定、戦争のできる国づくりへと進んでいった。
 世論調査では二〇〇四年には改憲賛成六五%、改憲反対二三%にまでいたった。小泉、安倍の改憲派は「戦後レジームの転換」を唱え、「任期中の明文改憲」実現をめざした。構造改革と明文改憲のセットで進めようとした。しかし、〇七年の参院選と、〇九年の衆院選で敗北し、自公連立政権は破産した。〇八年には一五年ぶりに改憲賛成四二・五%、改憲反対四三・一%と逆転した。
 この要因は「九条の会」など全国的な改憲反対運動の高揚と、世論への働きかけの結果といって過言でない。
 山川さんは、世論がそれを破産させた「九〇年代明文改憲運動」とのたたかいの先駆であった。六日はこうした山川さんの仕事を振り返り、今後に生かしていく決意を固める日となった。(T)