人民新報 ・ 第1264号<統合357号(2010年4月15日)
  
                  目次

● 沖縄の人々とともに声をあげよう  普天間基地即時閉鎖! 新基地建設反対!

● 改憲手続き法の凍結解除・施行はできない!4・6緊急院内集会  改憲手続法を執行できない法律に

● 非正規社員の正社員化と均等待遇の実現などをかかげ 郵政ユニオン・郵産労が統一スト

● 卒業式でまたも都教委が不当処分  「日の丸・君が代」処分に反撃を

● 10春闘勝利! けんり春闘4・7中央総行動  経団連や厚労省へ申し入れ

● WORLD PEACE NOW 3・ 20   「沖縄から基地をなくそう」 「イラク・アフガンから外国軍の撤退を」 「パレスチナ占領をやめさせよう」

● 1047名問題解決のために政府・JRは誠意を示せ!  四者四団体が政府和解案を受諾

● 高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開に反対し、廃炉を求める

● KODAMA  /  尼崎列車事故でJR西日本歴代四社長起訴へ

● せ んりゅう

● 複眼単眼  /  新刊 「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」





沖縄の人々とともに声をあげよう

    
普天間基地即時閉鎖! 新基地建設反対!

 自民党内閣時代にアメリカと決めた米海兵隊普天間基地の代替施設として辺野古に最新鋭基地を建設するという案は、沖縄をはじめとする反対運動で実行はいよいよ困難になってきている。基地の県内移転などという沖縄に犠牲を押し付け続ける欺瞞にはもうだまされない! 

 四月二五日には沖縄読谷村運動広場で米軍普天間飛行場の県内移設に反対し、県外・国外移設を求める県民大会が開かれる。これは沖縄県議会の超党派による呼びかけで鳩山政権に対し「県民の大同団結で県内への移設を許さない島ぐるみの声を突きつけていこう」と一〇万人規模の集会がめざされている。そして大会に向けて、各地で実行委員会が設立され、バスで大勢の市民を会場まで送ることにしている。
 こうした中で、県民世論はいっそう大きな広がりを示している。沖縄県の自治体は四一市町村あるが「県内移設」反対などを求める意見書・決議をあげた市町村議会が大多数となった。
 鳩山民主党は、総選挙で県外移設を主張して、沖縄では自民党を全滅させる勝利を勝ち取った。にもかかわらず、政権に就くとアメリカと財界の圧力そしてそれにつながる党内勢力の画策によってゆれ動いている。三党の連立合意では「沖縄県民の負担軽減の観点から米軍再編や在日米軍基地のあり方について見直しの方向で望む」とした鳩山内閣は、沖縄県内のキャンプ・シュワブ陸上部、勝連半島沖や鹿児島県の徳之島などを「移設」先としてあげ、五月末までに決着させるといっている。だがもはや、沖縄の米軍基地の県内たらいまわしは絶対に許されない。そしてアメリカでさえ認めた「世界一危険」な普天間基地は無条件撤去されなければならないのである。

 いまこそ、沖縄を先頭に全国で反基地・反米の闘いを強めていくときである。当面、沖縄県民大会の大成功とそれに連帯する各地の行動を連動させて、普天間基地即時撤去、新基地建設反対の大きな世論を作り上げることが課題である。

 東京では、この間、辺野古への基地建設を許さない実行委員会が、「今こそ、沖縄の民意を最優先すべきです」「名護市辺野古への基地建設断念を求めます」「『キャンプ・シュワブ陸上案』も論外です」「普天間基地の無条件返還を求めます」をスローガンに、毎週金曜日の午後六時半から首相官邸前行動を行い、毎回大勢の参加者が、鳩山首相宛に申し入れを行うとともに、基地撤去のシュプレヒコールをあげている。

 四月六日から九日にわたって、国会前で、彫刻家の金城実さんや読谷村議で反戦地主の知花昌一さんなどをはじめ沖縄県民(ウチナンチュ)が、鳩山政権に対して「非暴力」で公約遵守を求める意思表示を行った。連日の集会には国会議員も参加して、「県外移設」の不履行は絶対に認めないなどをアピールした。

 4・25沖縄県民大会に合わせ、東京での米軍普天間飛行場早期閉鎖・返還と県内移設に反対し国外・県外移設を求める集会デモが予定されている(下段集会案内参照)。
 ひきつづいて同日二五日午後六時からは、「沖縄に基地はいらない」全国同時アクションTOKYOが主催し、沖縄一坪反戦地主会関東ブロックとWORLD PEACE NOWの協賛で「沖縄に基地はいらない 全国同時アクションTOKYO 〜キャンドルで人文字をつくろう!@明治公園」が取り組まれる。主催者は、「沖縄で『島ぐるみ』の県民大会が行われます。これ以上沖縄に基地を押しつけないでほしい! その思いをキャンドルに託して、人文字をつくります。NO BASE! OKINAWA≠アの日、日本全国が沖縄に呼応します」と呼びかけている。

 沖縄に連帯して全国から基地撤去の声をあげよう。


改憲手続き法の凍結解除・施行はできない!4・6緊急院内集会

                 
 改憲手続法を執行できない法律に

 五月一八日は、二〇〇七年五月に強行採決・成立させられた「日本国憲法の改正手続に関する法律(改憲手続法)」の施行日とされている。この法律は、九条を変え戦争のできる国家にするためのものだが、重大な欠陥をもっている。
 そして安倍首相が自分の在任期間中に改憲を断行すると意気込んでいた頃とは情勢は大きく変化した。安倍自身は無様な退陣を余儀なくされ、それから時間も経たずに、自民党政権は崩壊した。そしていまは「一〇〇年に一度の世界不況」にあり、多くの人々の関心は改憲にはない。なにより改憲反対派が多くなっているのである。それにもかかわらず、反動派は改憲策動をやめてはいない。

 四月六日、衆議院議員会館で「このまま改憲手続き法の凍結解除・施行はできない!4・6緊急院内集会」が開かれた。アンポをつぶせ!ちょうちんデモの会、憲法を生かす会、日本山妙法寺、ふぇみん婦人民主クラブ、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会などの呼びかけによるものだ。
 はじめに呼びかけ団体を代表して市民連絡会の高田健さんがあいさつ。九条を変えさせないというのが国民の意向であることははっきりしている。国会の憲法審査会もまだ始動させていない。この改憲手続き法は欠陥法律だ。改憲派勢力はこの法律の不十分さを埋めようとしたが、それができずに三年間が過ぎ、施行期日を迎えることになる。五月一八日は天王山だというように考える人もいるが、いまはそうした状況ではない。今大事なことは、反対運動を強めて、施行されるが執行できない法律とすることだ。
 
 小沢隆一慈恵医科大学教授(憲法学)が改憲手続法の欠陥性について講演。
 この法律では「第三条【投票権】日本国民で満一八歳以上の者は、国民投票の投票権を有する」となっている。しかし、こうするためには、公職選挙法はもちろん民法など多くの法律を変えるなどのことが必要であり、「附則の一」で、「必要な法制上の措置を講ずるもの」とされている。その上で「附則の二」では「前項の法制上の措置が講ぜられ、年齢満一八年以上満二〇年未満の者が国政選挙に参加すること等ができるまでの間」、投票権、投票人名簿の被登録資格、在外投票人名簿の被登録資格、在外投票人名簿の登録の申請などの「規定の適用については、これらの規定中『満一八年以上』とあるのは、『満二〇年以上』とする」とある。まず、「前項の法制上の措置が講ぜられ」ることが必要なのであり、まだそれがなされていないのだから、改憲派が主張するような、当面「『満二〇年以上』とする」という解釈は誤りだ。そのことは、衆議院憲法調査特別委員会(2007・4・12)での審議録を見ればはっきりする。「与党修正案の附則の第三条第一項では、この法律が施行するまでの間に公選法あるいは民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとするというふうにされていますけれども、…『法制上の措置を講ずる』というのは、法律を公布することなのか、あるいは施行までを指すのか、この点について確認をしておきたいと思います」という質問に、自民党衆議院議員(当時)での改憲派の急先鋒であった船田元(日本国憲法に関する調査特別委員会理事)は、次のように答えている。
 「船田委員 法整備ということはどこまでを指すのかということでありますが、これは公選法あるいは民法の規定にしても、いずれも公布ということを考えております」。船田も公布ということが必要だとしているのである。さすがにこれではまずいと思ったのか、同じ自民党の議員(当時)の葉梨康弘は、「先ほど船田委員から万々が一というような話がありましたけれども、例えばその施行が、民法の関係法令なんかの場合はもしかしたら一年ということがあるかもわからない。あるいは公選法なんかでは半年ということがあるかもわからない。そういったような期間がもしもあった場合に、投票権年齢だけ一八で施行してしまっていいんだ、この法律で国民投票をやりましょうといったときに、この法律は一八だけれどもこの法律では二〇がまだ施行されないで残っているといったときに、国民投票の正当性の問題にもやはりかかわってくる。ですから、技術的な話として、その場合に国民投票の正当性が変な形で問われないようにするための技術的な規定として二〇というのを置かせていただいているということは、決して我々が消極的だという意味ではないということを御理解願いたいと思います」と苦しい助け舟を出している。
 だが、附則三条一項と二項はワンセットであり、一項を前提にして二項があるのであり、一項は、「法律が施行されるまで」(三年間)に「法制上の措置」を講ずること(具体的には関連法律の公布)を規定しており、二項は、一項に基づく「措置」として「公布」された関連法律の「施行」が憲法改正手続法の施行に間に合わなかった場合の経過規定とされるべきである。従って、現在の法状態は、附則三条一項が想定する法整備がされなかったという状態であり、「法の欠缺(けんけつ)」の状態にあるといえる。そして、こうした状態を手当をすべきは立法府たる国会であって、憲法七三条一号で「法律の誠実な執行」を義務づけられている内閣・省庁ではないということだ。
 しかし、総務省による政令等の準備というものは、附則三条二項と一項を勝手に切り離して解釈するものとなっており、国会審議から理解される立法の趣旨、すなわち立法者意思を無視するものにでしかない。総務省が、「国民投票法の施行=その執行可能な状態の成立」という理解で政令等の整備を進めているのであれば、そのような「整備」は中止させるべきなのである。

 講演のあと、会場からは総務省の行っている「日本国憲法の改正手続に関する法律施行令案」などに対する意見の募集についての発言が多く出された。総務省は、「日本国憲法の改正手続に関する法律の施行に伴い、『日本国憲法の改正手続に関する法律施行令案』、『日本国憲法の改正手続に関する法律施行規則案』及び『日本国憲法の改正手続に関する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案』を作成しました。つきましては、これらの政令案及び省令案についての意見募集を三月二七日から四月二五日まで実施します」としている。だが、政権交代、経済危機という状況の激変にもかかわらず、このように改憲手続法の施行・執行を強行しようとすることは許されるものではない。総務省などの動きに抗して運動を強めていくことを確認して集会を終えた。


非正規社員の正社員化と均等待遇の実現などをかかげ 郵政ユニオン・郵産労が統一スト

 郵政民営化は小泉構造改革の最大の課題としてあげられ、小泉は郵政民営化を争点に二〇〇五年の衆議院総選挙に大勝した。
 だが、小泉のデマ宣伝はすぐに破綻し、それがサービスの低下、郵政労働者の労働条件低下、国民財産の売り渡しなどその実態が明らかになり、新自由主義・構造改革路線と自民党政治への批判となって噴出するようになった。
 そして、郵政民営化に反対する地方の声などを背景にして政権交代・新政権の誕生となり、さらに現在に至って、非正規労働者の正社員化への転換さえもを政府閣僚が発言するという状況となり、郵政民営化にたいする急速かつ抜本的な見直しの気運が生れている。

 三月一八日、郵政労働者ユニオンは、@非正規社員の正社員化と均等待遇の実現、A大幅賃金引き上げ、B大幅増員の実現、C「郵政民営化」見直しを柱とする郵政関連労働者の要求実現にむけ、東京(小石川支店)、神奈川(藤沢支店)、静岡(浜松東支店、浜松東郵便局)、大阪(大阪西支店)、広島(広島支店、広島東支店、呉支店、呉郵便局、安芸府中郵便局)、香川(高松中央郵便局)、福岡(若松支店)、長崎(長崎支店、長崎中央郵便局)でストライキに突入した。同日郵政産業労働組合もストに入り、小石川支店、広島県広島支店でははじめての両組合による統一ストが実現した。

 早朝から、日本郵便小石川支店前では、両組合によるスト突入にあわせて一〇〇人をこえる大衆的な集会が開かれた。ストに突入する両組合の労働者が決意表明を行い、郵政ユニオンの非正規労働者や支援の労働組合などからの連帯あいさつが行われた。
 
 その後、一〇時からは、日本郵政本社前でのストライキ突入集会が開催され、ここには小石川、銀座、目黒などでストライキを闘いぬいた組合員も参加した。はじめに郵産労山崎清委員長、郵政ユニオン須藤和広書記長が両組合を代表して挨拶し、全労連大黒作治議長、全労協の藤崎良三議長をはじめ国公労連、全国一般全国協議会が連帯発言をおこなった。最後にストライキ宣言が読み上げられ、郵政本社に向けてシュプレヒコールがあげられた。

 なお、当日の早朝ビラ、ストライキ、集会などの行動には全国で一二〇〇人が参加した。

 10春闘 ストライキ宣言

 私たちは、本日、@非正規社員の正社員化と均等待遇の実現A大幅賃金引き上げB大幅増員の実現C「郵政民営化」見直しを柱とする郵政関連労働者の要求実現にむけ、統一ストライキを決行します。

 郵政職場では民営分社化以降、正社員は六〇〇〇人減らされる一方、非正規社員は一万五〇〇〇人も増大し、二一万三〇〇〇人となり日本一の非正規雇用企業になっています。
 非正規社員は正規社員と同じ基幹的業務を担っているにも関わらず、常時雇用する約一七万二〇〇〇人のうち六四%が生活保護基準に満たない年収二〇〇万円以下という実態の中で、生活を維持するためにダブルワーク、トリプルワークを余儀なくさせられている人も多くいます。

 日本郵政グループは日本で最大のワーキングプアを生み出し、民営・分社化の下で「貧困と格差」を急速に拡大させたばかりか、コスト削減を目的に勤務日数・勤務時間の削減や雇止めによる身勝手な雇用調整を行う等、企業としての社会的責任と雇用責任を放棄していることは断じて許すことはできません。
 亀井郵政改革担当大臣が国会答弁で契約更新を三年以上繰り返している一二万一千人の正社員化を確約しました。日本郵政グループは正社員化に向けた具体的道筋について明らかにすると同時に、契約更新三年以下の非正規社員の正社員化への計画を明らかにし、時給制社員の時給引き上げと均等待遇についても積極的な回答をすべきです。

 大企業は、「貧困と格差」が社会問題になり、不況と言われる中でもこの一〇年間で賃下げ、首切り合理化、派遣切りなどで内部留保を二〇〇兆円も積み増し、四二九兆円もの莫大な利益をため込んでいます。
 一方、労働者の賃金は二八〇兆円から二五三兆円へと二七兆円も下がり労働者の犠牲の上に大儲けをしていることが明らかとなっています。
 財界・大企業は内部留保を社会的に還元し、日本経済の再生に責任を持つべきです。

 「貧困と格差」を解消し、景気回復を図るためには、外需依存から内需主導へと日本経済を転換させることが求められています。その近道は雇用増大と賃金引き上げです。
 日本一の大企業である日本郵政グループは多額の内部留保を抱えており、賃金改善・非正規社員の社員化は実現可能です。

 私たちは、今日まで会社と交渉を積み上げてきましたが、会社は、いまだ誠意ある回答を行っていません。
 私たちは会社の姿勢に怒りを表明するとともに、要求実現に向けて本日ストライキをもってたたかうことをここに宣言します。

二〇一〇年
   三月一八日

 郵政産業労働組合中央闘争委員会

 郵政労働者ユニオン中央闘争委員会


卒業式でまたも都教委が不当処分

     
「日の丸・君が代」処分に反撃を

 三月二九日、東京都教育委員会は臨時会を開き今年の卒業式の「君が代」処分を決定した。高校一名(不起立減給一カ月)、特別支援学校一名(不起立・減給六ヶ月)、中学校一名(不起立四回目・停職一カ月)、小学校一名(ピアノ不伴奏、停職一ヶ月)という不当なものだ。すでに改憲を呼号していた安倍のような極右勢力が政権中枢に座るという状況ではない。にもかかわらず、石原慎太郎に指図された都教委は依然として処分を乱発している。
 しかし、今回も、都教委は、懲戒免職、分限処分をすることはできなかった。これは、被処分者たちのいかなる脅迫にも屈しない闘い教職員の中に広がる抵抗の動き、各地での支援体制の取り組みなどの成果である。今後、入学式などにおいて闘いの態勢を強化していかなければならない。

 三月三一日、全水道会館で、「君が代」処分を許さない!不起立・不伴奏を孤立させるな!卒業式処分発令抗議・該当者支援行動へ!をスローガンにして、総決起集会が開かれた。
 はじめに、主催者(卒入学式対策本部)からのあいさつ。処分撤回の裁判は最近あいついで不当判決が続いているが、最高裁での闘いを進めていきたい。こういうなかで、社会保険庁職員の堀越明男さんが総選挙にあたって「しんぶん赤旗」号外などを休みの日に、郵便ポストに配布したことを国家公務員法違反だとして起訴された裁判で、東京高裁は逆転無罪の判決をだしが、大きな意義がある。

 つづいて被処分者からの決意表明。
 停職一月処分の不当処分をうけた近藤順一さん(八王子市立第五中学校)。校長室で都教委係官二名、市教委係官、校長の立ち会いの下に、三月三〇日付で処分が発令された。が私は三月三一日で退職するが、実際には最後の一日だけということになるのだが、停職処分の実績をつくろうとするものだ。わたしたちはプロの教員であり、不起立は体でもって生徒を指導することだ。
 その後、被処分者、支援の人びとが闘いの決意表明を行った。
 
 「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会・東京「君が代」裁判原告団は「卒業式における『日の丸・君が代』不当処分に抗議する声明」を発表した。以下その要旨。「二〇〇三年10・23通達以来、二〇〇九年春までの延べ四二三名という前代未聞の大量処分に続く昨日の不当な処分の強行は、職務命令を根拠に処分を振りかざして、教職員・生徒に『日の丸・君が代』を強制する教育破壊の暴挙である。私たちは、この暴挙に満身の怒りを込めて抗議し、不当処分の撤回を求めるものである。…私たちは、都教委の『暴走』にストップをかけ、自由で民主的な教育を学校現場に甦らせ、生徒が主人公の卒業式・入学式を取り戻すため、生徒・保護者・市民と共に手を携え、『日の丸・君が代』強制に反対し、都教委の暴圧に屈せず、不当処分撤回まで闘い抜くものである。何よりもこの国を『戦争をする国』にさせず、『教え子を再び戦場に送らない』ために!」


0春闘勝利! けんり春闘4・7中央総行動

         
 経団連や厚労省へ申し入れ

 今春闘では、三月一七日がJCなど民間大手集中回答日だったが、ほぼ定昇維持がやっとで、賃上げ無しという結果だった。非正規労働者の賃金問題でもまったく改善なしという状況だった。いま大手企業労組の春闘相場形成力はほとんど失われている。そして中小、非正規労働者の闘いはこれから本格化する。地域から総結集した力で労働運動の反転攻勢の力を作り出そう。

 四月七日、「10けんり春闘全国実行委員会」の「10春闘勝利!4・7中央総行動」が展開された。けんり春闘は、全労協傘下組合、金属機器労組連絡会や全港湾労組、全日建運輸連帯労組などで構成されている。
 午前中には東部総行動が闘われ、午後一時半からは、日本経団連前で集会が行われた。10けんり春闘を代表して、藤崎良三全労協議長が主催者挨拶。大企業はかつてない不況の犠牲を労働者に押し付ける一方で空前の内部留保を溜め込んでいる。非正規労働者の均等待遇をかちとり、賃金要求を実現しよう。同時に沖縄の反基地の闘いと連帯してこの春闘を闘いぬこう。
 つづいて、東京労組・新聞輸送分会、東部けんり春闘、郵政労働者ュニオン、神奈川シティユニオン、国労闘争団、東水労、昭和シェル労組からの決意表明が行われた。日本経団連に対しては以下の項目について要請した。@総額人件費抑制策を改め、「雇用確保」と「賃金引き上げ」を行うこと。A派遣労働者など非正規労働者の雇用打ち切りを行わないこと。B製造業派遣、日雇い・登録型派遣をやめ、派遣労働者の正社員への転換を進めること。C雇用を拡大し、正社員として採用すること。偽装請負、違法派遣を直ちにやめること。D正当な理由のない有期雇用契約を行わないこと。E企業経営を「株主重視」から「従業員重視」、「社会的責任」を自覚した経営に転換すること。Fサービス残業、名ばかり管理職、違法な「見なし労働」を根絶すること。G下請け企業に対する不当な単価切り下げの強要を行わないこと。
 経団連前行動を終ってからは、日本郵政本社前、首都高速会社前で集会を開き、厚労省前集会、そして最後の国会デモでは社民党と共産党に請願を行い、全一日の行動を闘い抜いた。
 厚労相前集会では長妻昭厚労相に以下の要請を行った。@派遣先企業責任の明確化を中心とする労働者派違法抜本改正を行い、直ちに施行すること。A全ての労働者に適用させるセーフティーネットを充実させること。雇用保険(日雇保険を含む)、社会保険に全ての労働者を加入させること。そのための法整備を行い、加入を拒む使用者には罰則をもうけること。B最低賃金を大幅に引き上げるとともに、公契約の締結に際しては生活できる賃金の保障を法律で確立すること。ILO九四号条約を直ちに批准し、国内法の整備を行うこと。C各自治体において失業対策事業を実施し、仕事おこしによって雇用の場を剔出すること。D外国人労働者、研修・技能実習生の労働環境実態(賃金、労働時間、休日、労災、労働・社会保険加入状況、住環境など)を至急調査し、均等待遇実現に必要な施策を行うこと。E改正労働基準法の施行にあたって中小企業労働者の適用除外、企業規模による差別条頂を早期に廃止すること。


WORLD PEACE NOW 3・ 20

  
「沖縄から基地をなくそう」 「イラク・アフガンから外国軍の撤退を」 「パレスチナ占領をやめさせよう」

 ブッシュのアメリカによる無法なイラク侵略戦争開始から七年。その対テロ戦争は、アフガニスタンとあわせて数え切れないほどの民衆の犠牲を生み出した。いま、アメリカの戦争は泥沼化して、財政危機を招き、国力の弱体化をもたらした。また当時アメリカの指揮棒に従って参戦した各国の政権も次々に崩壊して孤立するアメリカは欺瞞的な口実を設けてイラクからの脱出を狙い、オバマ政権が登場した。
 イラク侵略戦争に反対する中で生れた「WORLD PEACE NOW」は、ねばり強く反戦の闘いを展開してきたが、今年も開戦の日である三月二〇日に、芝公園に八〇〇人が参加して、「戦争も基地もいらない WORLD PEACE NOW 3・20」を開催した。今年は、「沖縄から基地をなくそう」「イラク・アフガンから外国軍の撤退を」「パレスチナ占領をやめさせよう」の三つのスローガンを掲げた。
 集会ではジャーナリストの志葉玲さん、パレスチナ子どものキャンペーンの大河内秀人常務理事につづいて、ヘリ基地反対協(「海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会」)共同代表の安次富浩さんが発言。沖縄の米軍は、凶悪な事件を次々に起している。先ごろのひき逃げ事件では、加害者はなんの通報もせずに逃げ去ったが、こうした行為があるのは戦争をやっている者としては至極当たり前の感覚なのだろう。こうした状況に沖縄は置かれている。いま沖縄の怒りは頂点に達している。昨年夏の総選挙では沖縄の自民党候補は全滅した。そして今年一月の名護市長選では移設反対の稲嶺進さんが勝利し市長になった。しかし、政府は沖縄の思いを全然わかっていない。名護市長選直後に平野官房長官の県民の意思があらわれた選挙結果をまったく無視した発言は断じて許せないものだ。現に沖縄から米軍は戦争に出て行っている。沖縄での闘いで米軍を追い出さなければならない。沖縄の闘いと結びついた全国での運動を強めていこう。
 JVC(日本国際ボランティアセンター)代表理事の谷山博史さんは、アフガン復興ということでは戦争をやめさせることが必要なのに日本政府のそれはまったくそうした方向を持っていないと批判し、戦争ではなく平和的交渉でアフガニスタンに平和を実現すべきだと訴えた。
 最後に集会アピールを確認して、パレードに出発した。


1047名問題解決のために政府・JRは誠意を示せ!

            
 四者四団体が政府和解案を受諾
      
 一人の労働者も路頭に迷わせないなどといいつつ当時の中曽根政権は、国鉄の分割民営化によって大企業に甘い汁を吸わせるとともに、国労・総評・社会党を解体して改憲をおこなうことを狙った。こうした意図は中曽根自身によっても語られているが、まさに今日の市場至上主義の格差・貧困社会を生み出す契機となったものである。国鉄分割民営化に反対し一〇四七名問題の解決のための闘いは、長期にわたって、新自由主義政策・規制緩和攻撃に抗する労働運動の中心軸として闘いぬかれて来た。
 これまでの経過を振り返ればいくつかの転換点があった。
 国労などの組合員のJRへの不採用問題は、地労委・中労委がJRの不当労働行為を認定したにもかかわらず、二〇〇三年に最高裁は、JRに違法行為はない、あるとすれば旧国鉄の責任だとした。ここで国鉄闘争は極めて重大な局面に立たされた。当時の国労本部の一部指導部は闘いを放棄しようとした。
 だが、闘争団の有志は当時の鉄建公団(旧国鉄清算事業団、現・鉄道運輸機構)に対する訴訟を提起して闘いを継続した。それは国労本部との激しい対立、本部からの不当な処分に耐えながら運動を新たな段階に押し上げた。
 その結果が二〇〇五年の東京地裁9・15判決であった。それは、旧国鉄が「原告らが国労組合員であったことを嫌悪し不記載を行った」などを「不法行為」と認めるとともに、「国鉄から違法に不利益扱いを受けたことで正当な評価を受けるという期待権を侵害され、差別を受け、精神的な被害を被ったこと」を認めたものだった。
 この時点から、国労本部なども闘争勝利の展望ありとして、鉄道運輸機構裁判などで闘いに合流するようになってきた。
 だが、国鉄の分割民営化と組合差別・解雇そしてその根拠となった国鉄改革法二三条を突破することはきわめて困難であり、それからの裁判判決には厳しいものが予想された。それを避け早期の解決に向けて、政治の責任での解決が模索された。しかし自民政権時代にはほとんど前進がなく、ようやく与野党逆転・新政権樹立という情勢が条件を形成することになった。
 三月一八日に、与党三党と公明党による解決案が政府にだされた。その後、官僚側や妨害勢力による抵抗によって、さまざまな対立がくりかえされながらも四月九日に最終的な政府案がだされた。以下のような内容である。@和解金(原告個人に対するもの)は、高裁判決金額として原告一人あたり一一八九万三七五〇円(利子こみ)、訴訟費用等として原告一人あたり三七四万円。A団体加算金として五八億円。これは「四者四団体が、国鉄清算事業団を解雇された者(動労千葉及び組合未加入者を除く一〇二九人)の生活面の支援を続けてきたことに鑑み、当時、斡旋に応じて再就職した者の雇用主に支払われていた雇用奨励金及び住宅確保奨励金を参考にし、四者四団体に団体加算金として五八億円を支払う。四者四団体は営利企業でないことを考慮し、当時の給与総額を算定根拠とする。(なお、この団体加算金については、団体の判断により今後の原告等の就職活動、自営業の資金等に活用することも可能」とされている)。
 だが一方で、政府は、解決案受け入れの条件として以下の確認を求めてきている。それは、「四者四団体(原則原告団九一〇名全員)が、次の事項について了解し、その旨を正式に機関決定すること。@この解決案を受け入れること。これに伴い、裁判上の和解を行い、すべての訴訟を取り下げること。A不当労働行為や雇用の存在を二度と争わないこと。したがって、今回の解決金は最終のものであり、今後一切の金銭その他の経済的支援措置は行われないこと。B政府はJRへの雇用について努力する。ただし、JRによる採用を強制することはできないことから、人数等が希望どおり採用されることを保証できないこと」となっており、とりわけ雇用面では厳しい内容となっている。
 この政府和解案をうけて、四月九日、国労闘争団全国連絡会議、鉄建公団訴訟原告団、鉄道運輸機構訴訟原告団、全動労原告団の四団体と、国労、建交労(旧全動労)、国鉄中央共闘、国鉄共闘会議の四者は、受け入れの諾否を協議し、受け入れを決定した。
 政府和解案は被解雇当事者たちの要求からすればかけ離れた内容であるはいうまでもない。だが、人道的見地からの政治解決の選択を受け入れは、四者四団体としてもこれ以上の内容の獲得は不可能であるとの苦渋の決断であろう。闘争解決となれば、これ以上の突破ができなかったという労働運動の現状を克服し新たな労働運動の展望の確立が課題として残されるが、まず闘争の真剣な総括が必要であり、論議はすぐに開始しなければならないだろう。


高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開に反対し、廃炉を求める

 日本政府は原子力政策の基本に「核燃料サイクル」を位置づけている。その重要な一環としてある日本原子力研究開発機構の研究用高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」は、一九九五年にナトリウム漏出火災事故を起こして運転を休止して以来、一四年以上停止しているが、国は原子炉起動を強行しようとしている。事故当時に情報隠しを行ったなどの安全性無視の組織の体質は変わっていないし、国も技術的な問題点が解決されたとはいっていない。とくに冷却材としてナトリウムを使うこの原子炉は、水などとの反応性が高いため、取り扱いがむずかしいとされ、現にそれで事故を起したのだ。他の原子炉以上に危険なのである。
 「もんじゅ」の再開には、おおくの人々、団体が反対の声を上げている。政府は関係自治体などと協議しながら年度内三月中には「もんじゅ」の再開をするとしていたが、またも延期となっている。反対運動を拡大して、再開反対、廃炉を実現していこう。

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 「もんじゅ」を動かすな!声明

       特殊原子炉「もんじゅ」再開の動きに反対し、廃炉を求めます


核開発に反対する会  (代表 槌田敦)


 福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の特殊原子炉「もんじゅ」は一九九五年一二月八日に事故を起こし、一五年以上停止していました。昨今慌ただしく「もんじゅ」の二〇一〇年三月に再稼働が喧伝されていますが、「年度内」などというお役所の都合に合わせた計画で安全が担保できるはずもありません。
 二月一一日には原子力安全保安院が、二月二三日には原子力安全委員会が再開を了承したと報道されました。まだ細かい試験項目が出来てもいないのにマスコミは「安全宣言」と宣伝しています。いったいどういうつもりでしょうか。

地震の危険〜真下に活断層あり

 「もんじゅ」の敷地の地下には活断層があります。活断層を想定した審査をしていると言いますが、地震学者は地震の規模想定の精度が悪いことを憂慮しています。いくらコンピュータで計算をしても、元の条件が不明確なら結果は不明確となるのは当然です。精度の悪い地震想定で導き出された耐震性能もまた精度が悪いと言わざるを得ません。地震でこわれる心配のある、活断層の上の原発を運転するなど、正気の沙汰ではありません。

ズサンな改修と老朽化の進行

 一五年前の「もんじゅ」事故の後、安全に改修したと宣伝されますが、根本的な改造をするほどの手間と予算は掛けていないため、事故発生の懸念は拭えません。
 二〇〇三年名古屋高裁での設置許可取消判決で指摘された安全審査の不備なども解消されている訳ではありません。更に、一五年間の長期停止期間中にもんじゅは老朽化しました。排気ダクトが錆びて穴が空くような状況です。一五年もの間停止していた原発を動かす例は世界にありません(日本にもありません)。そんな原発を動かすことを優先し、穴のあいた排気ダクトの交換すら後回しにして運転を再開しようとするようでは、安全文化の枯渇です。

実用化しない技術に無駄遣い


 政府は、高速増殖炉の実用化予定は二〇五〇年だといいます。現在から四〇年も先の話です。そもそも高速増殖炉は戦後米国で最初の発電用原子炉として企画されて以来、既に開発に六〇年以上掛かっています。都合一〇〇年とは開発期間が長すぎです。
 これほど長い期間、実用化しないということは発想の根本が間違っている証拠です。
 既に「もんじゅ」には巨額の税金(約一兆円)がつぎ込まれています。「事業仕分け」でムダと判定されました。にも関わらず、今後四〇年も税金の無駄遣いを使い続けるのでしょうか。
 「もんじゅ」が存在するだけで毎日六〇〇〇万円もの予算が使用されています。無駄な支出である「もんじゅ」は廃止するべきです。

核兵器材料の製造は大問題


 「もんじゅ」は長崎型原爆の製造に適した高純度プルトニウムを年に六四 生産する予定になっています。同位体二三九の純度の高いプルトニウムは「兵器級」と呼ばれ、国際社会では核兵器に使用される物質として大きな意味を持ちます(警戒される)。一方、エネルギー源としては年に高々六四sくらいでは全く意味がありません。
 核武装準備をしている国々に「日本もやっているではないか」と口実を与えることになります。
 非核三原則を標榜し、核廃絶を国是とする日本のやることではありません。

 通常の原発よりも更に危険で無駄な原子炉「もんじゅ」の廃炉を求めます。

                                           以上


KODAMA

  尼崎列車事故でJR西日本歴代四社長起訴へ


 国鉄一〇四七名問題の政治解決の話がメディアで報じられているが、中曽根行政・構造改革の最大の目玉商品として売り出された国鉄の分割民営化こそは、今日の儲け第一に基づく格差拡大・貧困化社会という悲惨な日本社会を作り出すひとつの結節点であったことがあらためて思い起こされる。

 二〇〇五年四月に起こったJR西日本の福知山線脱線事故は、乗客と運転手の一〇七人が死亡するという重大なものだった。
 この事件でのJR西日本会社の責任については、すでに山崎正夫前社長が起訴されている。だが、これまで井手正敬元会長ら歴代社長三人(後の二人は南谷昌二郎前会長と垣内剛元社長)については、検察は不起訴処分としてきたのだった。
 しかし、ついにこの三月二六日、神戸第一検察審査会は、かの歴代三社長に対し、二度目となる「起訴相当」議決を行った(二回の起訴相当議決を受けると自動的に起訴され、裁判所が指定する弁護士を検察官として刑事訴訟が行われる)。
 こうしてJR西は歴代社長四人が裁判で刑事責任を問われるという異例の事態となった。こうした会社体質は、西日本会社だけではなくほかのJR各社も同様であり、福知山線事故は儲け至上主義体質の危険性の氷山の一角に過ぎない。
 歴代社長の中心人物はなんと言っても井手正敬だ。井手は、松田昌士(JR東日本)、葛西敬之(JR東海)とともに、「国鉄改革三人組」の一人として、国鉄の分割民営化の立役者だった。

 検察審査会の議決は次のように言っている。
 井手は社長在任中の一九九六〜九七年にJR東西線への乗り入れで利用客を増やし、収益拡大を図るため、現場カーブの半径を半分にした。ダイヤ改正でカーブの転覆限界を超える速度を出せる車両を大量投入し、快速列車を急増させた。そして後任の南谷、垣内両人もこの状況を把握しながら、運転時間を短縮し、快速列車を増発した。三人は社長時に総合安全対策委員長として事故防止業務を統括しており、自動列車停止装置(ATS)で防げたJR函館線の脱線事故(九六年)を同委員会で十分審議すべきだった。
 三人には事故の危険性を認識しながら、現場カーブにATS整備を指示することを怠った過失がある。

 ここでは明確に「利用客を増やし、収益拡大を図るため」に「事故の危険性を認識しながら、現場カーブにATS整備を指示することを怠った過失」があったと指摘されているのである。

 分割民営化の結果生れた新生JR各社の中心課題となったのは、安全よりも利益だった。公共交通の最大の課題は何よりも安全輸送であることは言うまでもない。
 しかし、「国鉄改革三人組」はそれを、民営化とは利潤優先であるとしてきたのであった。それは、労働者支配の強化、組合差別と表裏一体の関係としてあったことは明らかで、国鉄分割民営化の問題性が暴露されたということだ。今後の裁判でその犯罪性をいっそう暴き追い詰めていくことが必要である。  (H)


 せ  ん り ゅ う

  密約ばれた自民歴代の尻

  自民死んで水俣国労ホット和解

  基地のあるまんま沖縄戦時中

  血の民主主義ああ赤服十万人

  野菜工業おやマグロ牧場も

         ヽ 史  (ちょんし)

二〇一〇年三月

● 九条で詐欺師よろしくお歴々の嘘秘め事がボロリとボロボロ 航空行政厚生労働運輸農政ボロボロ……尻拭い。●地図で沖縄を見たら米軍基地だらけ情なや戦後どころか只今戦争中 ●3月 日バンコクで民衆は自分たちの血液300リットルを撒き散らし赤服姿で民主主義を求めた。世界中の民衆が蠢いている。ここだ。米国が主導する対テロ戦略の本音はここだ。 ●オートメーション工場で野菜を……労働の形態も意味も進化していく。


複眼単眼

   
新刊 「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」

 二〇〇四年以来、「九条の会」のよびかけ人として、その先頭に立って来た作家の澤地久枝さんが、ペシャワール会の中村哲さんの聞き手となって語らせた本が、いま、相当な勢いで売れているという。
 多忙な澤地さんが、これまた超多忙な中村さんを何度もつかまえて、インタビューをしている。
 決して自らの体調がいいわけではない澤地さんのこのエネルギーにはすごいものがある。
 ペシャワール会の活動を知った澤地さんは「なにか、役に立ちたい」と思案する。そして、澤地さんは自らがかつて編集者であり、今日、有数のノンフィクション作家であることを生かして、中村哲さんの本を作り、その印税を全てペシャワール会に寄付しようと考える。
 この本の企画を進めている間、各地の講演会で澤地さんは自分の本ではかつてやったことがないような、前宣伝をした。澤地さんは「私は自分のために名前を売るとか、大きなカネを得るとか、そういう目的で努力するのはひどく苦痛で、ぜったいにやりたくない。やったこともない。しかし、『このこと、この人のため』と思いこんだら、少々の苦労や恥など私はなんでもなくなる。『奇人』と人はいうかもしれないが」と書いている。
 澤地さんは一年半かけてこの本を作り上げた。
 澤地さんのすごさはそれだけではない。貴重な対談の時間を前に、中村さんのことを徹底して調べ上げている。中村さんの伯父・火野葦平のことは、アジア太平洋戦争の検証に取り組んできたノンフィクション作家である澤地さんはとうに知っていたことでもあろうが、その豊富な資料の読み込みが、中村さんをして自分史を詳細に語らせている。中村さんは著書を多数持っているが、自分史や家族のことはほとんど書いていない。澤地さんはそれを引き出しながら、なぜ中村さんがアフガンに行くことになったのか、いまどのように活動しているのかを見事に描き出している。作家とはこういうものかとあらためて感嘆させられる。
 この本のすこし妙な題名はこういうところから来ている。
「中村医師が己を語ろうとしないのは、自慢話は死ぬほど嫌であることのほか、苦労や愚痴話は言ってどうなるものか、という誇りもしくはあきらめあってのものと思える。……ドクター・サーブ、つまり『お医者さま』と特別の敬称で呼ばれる医師は、休むことなく、現地の水路建設現場や農場で働く日本人ボランティアと、現地人スタッフを中心に、アフガン人の労働力を得て事業を進めてきていた。資金はペシャワール会会員の会費と人びとの寄付。クリスチャンにして、現地での二五年間のボランティア活動、妻子とは別居――と書くと、堅苦しくきまじめな人、笑うこともない人を思い浮かべるかも知れない。喜びがない仕事は、長くはつづかない。人を信じられなくては、異国の地にとどまることなどできない。中村医師は『わが歳月』を思い、人は愛するに足るものであり、真心は信じるに足ると考える境地を生きている。そして、もちろん、『趣味とよろこび』のある生活――」。その趣味は虫の研究と音楽である。
 ぜひ、一読をおすすめしたい。岩波書店刊、一九〇〇円+税。  (T)