人民新報 ・ 第1274号<統合367号(2011年2月15日)
  
                  目次

● アメリカ追随と軍拡の方向へ進む菅政権

● 幸徳秋水らの処刑の日から一〇〇年目に   国会で「大逆事件一〇〇年後の意味」集会

● けんり春闘が本格スタート

● JALは不当解雇を撤回しろ!   裁判原告を励ます会開く

● 「日の丸・君が代」強制反対! 新自由主義教育路線と対決しよう!   都教委包囲・首都圏ネット主催の2・6総決起集会

● KODAMA  /  長いモノには巻かれず

● 映 評  /  「ノルウェイの森」

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  危険な「新防衛大綱」を作成した側の弁解






アメリカ追随と軍拡の方向へ進む菅政権

       
 対ロシア関係でも危機的状況へ陥る

 菅民主党政権は、昨年、防衛大綱を改訂し、中期防衛力整備計画を策定した。そこでは、北朝鮮、中国、ロシアを仮想敵に設定し、とりわけ中国について「世界と地域のために重要な役割を果たしつつある。他方で、中国は国防費を継続的に増加し、核・ミサイル戦力や海・空軍を中心とした軍事力の広範かつ急速な近代化を進め、戦力を遠方に投射する能力の強化に取り組んでいるほか、周辺海域において活動を拡大・活発化させており、このような動向は、中国の軍事や安全保障に関する透明性の不足とあいまって、地域・国際社会の懸念事項となっている」「自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部について、必要最小限の部隊を新たに配置するとともに、部隊が活動を行う際の拠点、機動力、輸送能力及び実効的な対処能力を整備することにより、島嶼部への攻撃に対する対応や周辺海空域の安全確保に関する能力を強化する」とした。対ロシア(旧ソ連)のために北方重視から、南西方面を主方向とする中国シフトは明白である。
 これは、民主党が政権交代にむけて約束したマニフェストや鳩山政権当時主張された東アジア共同体論、対米関係で対等な地位を目指すとしたことから、菅内閣になって、日米同盟深化、アメリカ主導のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加などアメリカ一辺倒政策となったことと表裏一体である。
 昨年の「尖閣諸島」をめぐる日中関係の対立は、前原誠司ら凌雲会一派の親米派が作り出したものであるが、その「(日本の)国内法に沿って粛々と」「実効支配論」という主張が、これまでの日中関係と領土問題の解決の条件を一挙に打ち壊すことになった。マスコミは報じていないが、現在、問題の周辺海域では、中国が日本政府と同様に「実効支配」を強めてきている状況を招いている。
 それだけではない。菅政権は、ロシアとの領土問題も解決不能の段階に陥れようとしている。二〇〇九年六月、麻生自民党政権の末期に「北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律」が一部改正された。これは第一条目的の「北方領土問題が今なお未解決である現在の状況並びにこれに起因して」の前に「北方領土が我が国固有の領土であるにもかかわらず」と入れたものであった。当時からロシア側はこれに厳重な抗議を行っていた。昨年一一月のロシア・メドベージェフ大統領の国後島訪問を待つまでもなく、ロシア側が強硬な対抗措置をとることは明らかであったのに、政府もマスコミもまったく無視・無対応であったのである。日本政府は具体的な政策と情勢展望もなく、国内世論・ナショナリズムに迎合するだけで、危険な対ロ攻撃をしかけたのであるが、このことさえいまだに自覚さえしていない。この失策のツケは大きいものになるだろう。
 ロシアの対応は急である。昨年一二月にはシュワロフ第一副首相が現地のプロジェクトの進展を視察し、今年一月にはブルガコフ国防次官の率いる国防省委員会代表団が択捉島の軍事施設を視察し、またバサルギン地域発展相の率いるロシア政府代表団(漁業局、交通省、経済発展省、エネルギー省、衛生・社会発展省、財政省の官僚で構成)が国後島を訪問し、メドベージェフ大統領の指示で「南千島列島社会経済発展計画(07〜15年)」の実施状況を視察した。ロシアは同地域での軍事力を強化しているが、最近の報道では、ロシアはフランスからミストラル級強襲揚陸艦四隻を購入し、二隻を極東地区に配備するという。また、一九五六年の日ソ共同宣言では「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要請にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞諸島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」とされていたが、ロシアは昨年以来、この共同宣言の有効性についても見直しを言い始めている。もしメドベージェフ大統領が歯舞と色丹島を視察して主権を表明するようなことにでもなれば日ロ領土交渉は根本から動揺することになるのである。
 アメリカの態度は次のようなものであった。メドベージェフ大統領が国後島を訪問したことに関しアメリカの国務次官補クローリーは一一月一日に「北方領土に関して、アメリカは日本を支持している」と述べたが、次の日には、北方領土に日米安全保障条約が適用されるかについて、「現在は日本の施政下にないため、第五条(各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する)は適用されない」と述べ、実行支配権がロシアにある以上、アメリカは「共通の危険に対処するように行動」はしないとした。
 政府・与党は、日増しに強まるロシアのこうした北方領土実効支配強化に行動に、遺憾・抗議の声明をつづけて行っているが、まったく事態を変化させるものではない。逆にロシアの対抗措置をエスカレートさせるものになっている。
 日本は、日米軍事同盟頼みと近隣諸国との軍事拡張競争の路線ではなく、対米自立と憲法九条にもとづく外交路線によって現在の閉塞状況から抜け出すべきなのである。


幸徳秋水らの処刑の日から一〇〇年目に

      
 国会で「大逆事件一〇〇年後の意味」集会

 明治天皇を爆裂弾で暗殺しようとしたという口実で一九一〇年五月に多数の社会主義者・無政府主義者が逮捕・検挙され、一九一一年一月一八日に刑法七三条(大逆罪)を強引に適用し、死刑二四名、有期刑二名の判決が出され、一月二四日に幸徳秋水、森近運平、宮下太吉、新村忠雄、古河力作、奥宮健之、大石誠之助、成石平四郎、松尾卯一太、新美卯一郎、内山愚童の一一名が、二五日に管野スガが処刑された。そのほかに無期刑で獄死した高木顕明、峯尾節堂、岡本一郎、三浦安太郎、佐々木道元の五人がいる。このことを契機に、日本帝国主義支配層は、韓国併合への朝鮮民衆の抵抗、活発化しはじめた労働運動、社会主義運動を圧殺する大弾圧をより強化した。

 大逆事件の幸徳秋水らの処刑の日からちょうど一〇〇年目に当たる一月二四日、参議院議員会館で、院内集会「大逆事件一〇〇年後の意味」が開かれた。社民党の福島みずほ党首、民主党の今野東衆議院議員らが呼びかけ、約二五〇人が参加し、国会議員も一二人が参加・発言するなど盛況だった。
 ルポルタージュ作家の鎌田慧さんが講演。大逆事件は、韓国併合からアジア侵略への体制作りのための一環としてあり、国内の反対勢力や部落解放運動への弾圧でもあり、侵略・弾圧・差別の体制への反逆を封じ込めるものだった。幸徳秋水らは、日露戦争でも非戦論を主張し、そのため「万朝報」を退社し、堺利彦たちと「平民社」をおこし、そこではマルクス「資本論」の翻訳や反戦の主張、トルストイの平和主義の紹介なども行っていた。そのために弾圧の対象となったのである。秋水の「ヒューマニズムと平和の思想」は今も継承されていかなければならない。大逆事件は、大審院次席検事の平沼騏一郎、神戸地裁検事局の検事正だった小山松吉らによってフレームアップされたものだった。いまも問題になっている司法・検察によるデッチあげである。日本にもっとも民主主義が遅れているのが司法界だ。これをどう正していくのか。この問題を真剣に考えることが今日の集会の意義である。
 「大逆事件の真実をあきらかにする会」世話人の大岩川嫩(ふたば)さんは、これまでの会の活動について報告した。
 ジャーナリストのむのたけじさんからは、「明治維新以降の日本の歴史を、国定教科書を裏返しにした角度から洗い直し、見つめなおす。この作業を進めよう。このことによって、希望に満ちた人間集団の日本社会が実現されていきます。一緒にがんばっていきましょう」とのメッセージが届いた。
リレートークでは、桜美林大学教授の早野透さん、作家の中森明夫さん、安田好弘弁護士らが発言した。 
 幸徳秋水の誕生の地である高知県四万十市からは「幸徳秋水を顕彰する会」の北澤保会長が参加し次のように発言した。幸徳秋水は、ジャーナリスト・文学者で、時勢に直接手を下す革命家ではなく、思想家であり、国民主権を訴えた指導者であって、日本政治が一部権力者の帝国主義を掲げ、世界の列強国をめざす時代に生きながら、毅然と国際的視野に立ち政治を「主権在民、非戦・平和、相互扶助」に命をかけて唱え、立ちはだかった人として、現代にも生き続ける人として評価されている。秋水の地元四万十市中村では、四万十市長を実行委員長として実行委員会を結成し、シンポジュウム、「大逆事件サミット」、「幸徳秋水特別展」などを行ってきた。
 犠牲者の出身地である和歌山県新宮市、岡山県井原市の市民団体からもメッセージが寄せられた。


けんり春闘が本格スタート

 二月一日、交通ビル地下ホールで、11けんり春闘全国実行委員会主催による「11けんり春闘発足集会・学習集会」が開催された。
 主催者を代表してけんり春闘共同代表の伊藤彰信全港湾委員長からの挨拶につづいて、中岡基明事務局長から11けんり春闘の闘う方針の提起が行われた。日本経団連の経営労働政策委員会報告が今春闘の基本方針を明らかにした。それは「労使一体となってグローバル競争に打ち勝つ」として、国際競争力強化のために法人税負担減を要求する一方で、「賃金よりも雇用」を主張し、「多様性に富む労働市場へ」として労働者派遣法改正に反対し、有期労働契約の規制強化に反対するとしている。非正規労働者の処遇は総合的視点が重要だとして、実は総額人件費を抑制し均等待遇を拒否している。労使パートナーシップ対話ということで、「春闘」から「春討」への転換を求めている。そして、二五七兆円もの内部留保は労働者へではなく投資や研究開発へ向けるというのである。連合は今春闘では、統一要求をしない。そして、「すべての労働者のために一%を目安に配分を求め、労働条件の復元・格差是正に向けた取り組みが必要」とか「賃金制度が未整備な組合は、連合が示す一年間差の社会的水準である五〇〇〇円を目安に賃金水準の維持をはかる」などとしているだけである。全労連・国民春闘共闘は、春闘を「大企業優先の政治・経済に終止符を打ち、労働者・国民の懐を温め、地域から内需を拡大させる道に舵を切る、節目のたかいとなる」という方針だ。
 けんり春闘は、「闘いの目標」を、@貧困・格差社会に反対し、「人間らしい仕事と生活」が可能な大幅賃上げの獲得、A長時間労働の規制……過労死、過密労働による精神疾患、サービス残業の撲滅、B成果主義能力主義に反対し、いじめ・パワハラの撲滅、C最低賃金の大幅引き上げと公契約法の制定、自治体による仕事の確保・創出、非正規労働者、女性労働者、移住労働者の均等待遇実現、D労働者派適法の抜本改正の早期実現、有期労働契約の規制強化、E沖縄・普天間基地の即時撤去返還と辺野古新基地建設を許さない、新防衛大綱反対、集団的自衛権容認・武器輸出三原則見直し反対する、ことにおく。
 組織体制としては、共同代表に、二瓶久勝(金属機器労組連絡会事務局長)、金澤壽(全労協議長)、伊藤彰信(全港湾委員長)、事務局長を中岡基明(全労協事務局長)とし、事務局は全労協に置くこととする。
 当面のスケジュールとしては、二月二四日に、全ての争議勝利・総行動の日として、日本経団連への要請・抗議行動を昼休み集中結集で闘う。また、外国人労働者のためのけんり総行動として、三月七日に東京・日比谷公園小音楽堂ほかで展開する。公共サービス関連、大手企業春闘としては、郵政ユニオンが郵産労と共闘しての本社前決起集会を三月三日に行い、三月中旬のストライキを設定するほか、NTT関係の闘いに取り組む。全港湾は、三月一七日に政策要求ストを、三月三一日には全国港湾のストをそれぞれ予定している。そして、四月六日に「11春闘勝利!中央総行動・デモ」を経団連と政府に対して起し、二〇日には全国運動の集約・中小と未解決組合支援に取り組む。
 また、労働者派遣法の早期成立を求める闘いとして国会行動を展開する。

 学習集会では立命館大学の松尾匡教授が「不況は人災です!」と題して講演。

 最後に金澤共同代表が11春闘を果敢に闘い勝利しようとあいさつし、団結ガンバロウで集会は終了した。

<11けんり春闘スローガン>

 ●11春闘勝利! 生活できる大幅賃金引き上げを!
 ●どこでも誰でも1、200円/時間の賃金保障を!
 ●不況を口実とした、雇い止め、解雇・リストラ反対! 総人件費抑制を許さない!
 ●全ての労働者に「健康で文化的な」最低限の生活を保障せよ!
 ●労働者派遵法の抜本改正実現! 有期労働契約の規制を!
 ●非正規労働者の権利確立、均等待遇を実現せよ!
 ●貧困・格差社会反対! セーフティーネットの拡充を
 ●消費税引き上げ反対! 大企業優遇の法人税引き下げ反対!
 ●公共サービスの破壊をもたらし、賃金引き下げ・人員削減をねらう公務員制度改革反対!
 ●雇用問題を解決し、JR不採用問題の全面解決の実現を!
 ●整理解雇の四要件を無視し、組合つぶしをもくろむ日航の指名解雇反対!
 ●普天間基地即時撤去一辺野古新基地建設反対!
             新防衛大綱・日米韓軍事同盟化・武器輸出三原則見直し反対!


JALは不当解雇を撤回しろ!

       
裁判原告を励ます会開く

 日本航空(JAL)は昨年一月に経営破綻し、会社更生法の適用を受けた。東京地裁に提出された『更生計画案』では、二〇一一年三月末の人員削減目標がJALグループ全体で約一六〇〇〇人とされた。会社側は猛烈な圧力をかけて退職を強要し続けてきた。その結果、希望退職応募者数は、会社設定の目標数を大きく上回った。にもかかわらず、会社は整理解雇人選基準案をもとに、運航乗務員・客室乗務員に対し解雇予告を行い、希望退職に応じなかった一六五人(運航乗務員八一人、客室乗務員八四人)に対し、なんと一二月三一日に解雇を強行した。こうした中、日航機の安全運行は伝統の継承もできなくなり、極めて危険な状況におかれている。
 
 一月一九日には、日本航空乗員組合と日本航空キャビンクルーユニオンの一四六名(パイロット七四名、客室乗務員七二名)が原告団を結成し、一六五名の整理解雇は違法・不当であるとして、東京地裁に撤回を求める裁判を起した。
 提訴の当日、科学技術館サイエンスホールで、日航不当解雇撤回裁判原告を励ます会(主催・日本航空の不当解雇撤回をめざす国民支援共闘会議)が開かれた。
主催者を代表して、全労連の大黒作治議長があいさつ。整理解雇四要件を無視する解雇攻撃に反対して闘おう。われわれは長期の裁判を望んでいないが、長期戦も覚悟しなければならい。勝利できる体制をしっかりとつくっていこう。
 航空労組連絡会(航空連)の近村一也議長が経過報告。会社は、JAL破綻の責任を一方的に労働者におしつけ、強引な解雇攻撃を行ってきた。安全より利益を優先する会社の攻撃を跳ね返そう。
 弁護団報告は山口泉弁護士。裁判の目的は四点ある。@原告らに対する解雇を撤回させ、地位確認、職場復帰等の全面解決を実現する。A「安全性」と「公共性」を確保した公共交通機関としてあるべきJALの再生を実現していく。B整理解雇法理を守り、働く者の権利を守る。C歪んだ航空行政の誤りを明らかし、市場原理主義の航空政策を改めさせ、利用者国民の期待に添ったJALの再生を実現していく。とくに整理解雇の四要件の関連では、二〇〇九年一一月に安中俊夫常務取締役が、JALの経営危機は経営が原因であり、社員に責任はない、と明言していることでも明らかだ。また一四六〇億円もの営業利益を計上するなど業績は計画を大幅に上回っており、更生計画の実行のために人員削減による人件費削減の必要性はまったくない。
 全国港湾労組、自由法曹団、婦人団体連合会の代表がともに闘うとあいさつ。
 最後に原告団声明(別掲)が確認され、団結ガンバロウで闘争勝利を誓い合った。

日本航空不当解雇撤回裁判提訴にあたって

 本日、私たち一四六名(パイロット七四名、客室乗務員七二名)は、去る一二月三一日に日本航空が強行した一六五名の整理解雇は違法・不当であるとして、東京地裁に提訴しました。
 私たちはこの裁判で第一に、今回の整理解雇が、これまで多くの労働者の闘いによって築き上げられてきた「整理解雇四要件」@高度な必要性A回避努力義務B人選基準の合理性C労使協議手続きを根底から覆す無謀・非道なものであり、断じて許されない行為であることを明らかにしていきます。
 第二に、日本航空再建で国民から求められているものを明確にします。現在進められている再建計画では「安全性」と「公共性」が後回しにされ、金融機関等のための利益確保が最優先で進められています。日本航空に働く者が安心して働ける職場環境の実現は、安全運航の基盤であり再建の要です。公共交通機関としての役割を果たす真の日本航空の再建を求めていきます。
 第三に、日本航空が経営破綻に至った「原因と責任」を明らかにします。これまでの歪んだ航空行政の責任を免罪したまま、現在政府の主導で「会社更生法」下での再建が進められています。また同時に、長年に亘る日本航空の放漫経営ぶりを明らかにし、原因が労働者には一切ないことを論証していきます。労働者犠牲の再建は誤りであり、国民が期待する再建に逆行するものです。
 また、今回の整理解雇の特徴は、人員削減だけを目的としたものではないことです。希望退職から整理解雇に至る経過を検証すると、職場の要求実現に向けて先頭に立って活動してきた労働組合役員を排除する意図が明瞭となっています。日本航空経営はこれまで数々の違法行為を繰り返し、その度に裁判所や労働委員会から断罪されてきました。経営は「過去と決別して新生JAL」を標榜していますが、違法・不当な労務政策こそ決別すべきものです。
 今回の解雇事件に対しては、航空界だけでなく全国の労働団体や女性団体などの市民団体、また法曹界などからも熱い支援の声が寄せられ、その組織人数は三五〇万人を超えています。これに加え、国際運輸労連(ITF)や国際パイロット協会(IFALPA)からの支援も集まっています。また、国際労働機関(ILO)の調査も始まりました。私たちは今回の裁判が、労働者の権利を守る闘いであり、同時に日本航空が公共交通機関として、「安全と公共性」を基本とした利用者に信頼される再建をめざす闘いでもあると考えています。
 私たちは法廷内だけでなく、法廷外においても「不当解雇撤回・原職復帰」を目指して全力で闘う決意です。多くの皆様のご支援とご協力をお願い申し上げます。

二〇一一年一月一九日

 JAL不当解雇撤回裁判 原告団


「日の丸・君が代」強制反対! 新自由主義教育路線と対決しよう! 

          
 都教委包囲・首都圏ネット主催の2・6総決起集会

 二月六日、東京しごとセンター講堂で、石原・都教委の暴走をとめよう!都教委包囲・首都圏ネットワーク主催による「『日の丸・君が代』強制反対! 新自由主義教育路線と対決しよう! 2・6総決起集会」が開かれた。右翼の街宣車が会場周りでガナリたてる中、二一〇名の参加者で会場は一杯になった。
 はじめに連帯挨拶として、神奈川での自由社版「新しい歴史教科書」採択に対する闘い、東京の杉並区立和田中学校で大手進学塾SAPIXグループを使って行っている夜間塾経営有料授業「夜スペシャル」に対する闘い、朝鮮学校への「無償化」即時適用を求める取り組み、大阪の門真三中「君が代」処分取り消しを求める闘い、などが報告された。
 つづいて学校現場からの発言。東京三鷹の小学校での校長らが教員の「自己申告書」を勝手に都教委に出したり、教員の出勤簿を偽造してそのカネを着服するなどの不祥事の報告。東京都高度情報化推進システム「TAIMS」の問題点について、ずさんな就学計画で大量の不足ワクが発生してしまっていること、特別支援学校の現状、業績評価裁判と職場での取り組みなどについて発言があった。
 見城赳樹都教委包囲首都圏ネット代表は、基調報告で、運動としては困難な段階にあるが労働者の団結を拡大しながら分断の克服を図っていこう、いまエジプトなどで起こっていることはやがて民衆の立ち上がるということをしめすものだと強調した。

 講演は、元都立高校教員で教育評論家の佐々木賢さんが「教育と貧困」をテーマに行った。

 「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会の永井栄俊共同代表が、一月二八日の「国歌斉唱義務不存在等確認訴訟」の控訴審(東京高裁第二四民事部)での一審判決を取り消し、本件請求を棄却する不当判決について報告。教育現場での「国旗・国歌」の一律の強制は、教職員ひとり一人の思想・良心の自由、教育の自由等を侵害することになるととともに、生徒の思想、良心の自由をも侵害することになる。判決は、国歌斉唱義務不存在確認等の請求及び処分差止の請求については、訴えの利益がないとして請求を却下するとともに、 ・ 通達及び職務命令を合憲、合法とした。また損害賠償請求についても否定した。基本的人権のなかでもその根幹である思想、良心の自由、教育の自由についての理解に欠けた極めて不当なものである。原告団として上告の手続きを取った。

 裁判闘争の報告と被処分者の発言がつづき、今後の活動の行動提起では、@予防訴訟逆転判決の不当性・反動性を暴露する、A現場での抵抗運動を発展させる、B卒業式でのビラまきを成功させる、の三点が確認された。

 「日の丸・君が代」強制反対!新自由主義教育と対決しよう! 2・6総決起集会決議

 二〇〇九年九月の政権交代から一年半が経過しました。新自由主義を推進した自民党政治の転換を求める国民多数の思いはいま裏切られています。菅民主党政権は「成長戦略」と称して、ますます格差拡大の新自由主義路線を推進しています。
 私たちは、この経済社会システムのもとにおいては、どのような政権であろうとも、私たち自身の要求と批判精神に基づいた確固とした運動をつくりあげていかねばならないという当たり前のことを再確認しなければなりません。
 政権交代後も改悪教育基本法実働化の流れは変わっていません。東京都が先鞭をつけた新動評―人事考課制度はほぼ全国に広がっています。主任制度の改悪、主幹等の導入も同様に全国化しつつあります。
 新学習指導要領に基づく道徳教育の強化、教科書の記述内容の改悪も進行しています。また、つくる会教科書採択を推進する勢力の拡大も無視することはできません。
 「ゆとり教育からの脱却」を理由とする詰め込み教育が復活し、進学受験競争が煽られる一方で、就学の機会を奪われる生徒も多数出現しています。教職員は労働強化・管理強化・孤立化の中で精神疾患をはじめとする疾病者が続出しています。
 また、政権交代によって一旦は廃止の方向が打ち出された悪評の教員免許更新制も廃止の動きはまったくなく、それどころか民主党が打ち出した六年間の教員養成を柱とする教員管理の強化につながる「新たな教員免許制度」の中教審での審議も強行されています。私たちはこのような動きに対して早急に運動を立ち上げねばならない段階に来ています。
 一方、10・23通達から七年が経過した東京都の卒業式・入学式等における「日の丸・君が代」の強制に対しては、都教委の度重なる弾圧に抗する不起立等の闘いは継続されています。不起立者の根絶という当初の彼らの目標の達成を阻んでいます。「日の丸・君が代」強制の全国化をいまなお阻止しているのは、四三〇名の彼処分者の闘いです。
 全部で二一件、原告数延べ七五六人にも達する10・23通達関連の裁判闘争は、今、熱い大きなうねりとなって広がっています。
 一月二八日、東京高裁は予防訴訟控訴審で原審を破棄する不当判決を出しました。しかし、私たちはこのようなことでは決してくじけません。私たちは原告団とともに最高裁勝利へ向けて以前にも増して、断固とした闘いを進めます。
 私たちは、いまこそ闘いの原点に立ち返り、動評・学テ反対闘争以来の過去の闘いに学び「日の丸・君が代」強制反対、新動評・主幹制等を含めたあらゆる「新自由主義教育」体制に抵抗する広範な運動を広げていこうではありませんか。


KODAMA

      
長いモノには巻かれず
    
 以前、フジテレビ系で「フリーター、家を買う」というドラマがあり、高視聴率で終った。今の家庭のゆがみをシビアに描いて多く人の共感を呼んだ。教育現場を舞台にして江口洋介主演の「スクール」、そして同じく若い教師を主役にした「大切なことはすべて君が教えてくれた」が始まった。江口校長がヒーローだったり、後者もおそらくハッピーエンドになるだろうことは鼻につくが、子どもたちの状況はかなりリアルに描かれているので晩酌はやめて観た方が良い。

 以前、中学校のPTAの役員をやっていた。職場に「生徒たちが暴れているのですぐ来てほしい」と校長からの電話が入った。着いてみると現場はまるで戦場だった。鼻血を出して倒れているセンセー、廊下では子どもたちが金属バットでガラスを割るは、物は飛んでくるわの大騒ぎ。やがて学ランのボタン全部を外して赤いTシャツにチェーンを巻きつけた、まだ幼さが残る番長が出てきてしばらくニラミあい。「テメエら親がちゃんとせんと、オレだってバカなあいつらタバネれられねぇじゃねえか」と一言残して消えていくと、どういうわけか、その場は急に静かになった。遠くから救急車のサイレンが近づいてきた。今から思うと、オイラもヤツラと同じレベルの子どもたちみたいな対応をしていたと反省はしているが、だから分かり合える点もあったとおもう。
 今、学校では、イジメ、社会では自殺者の増加(昨年は交通事故死の七倍)が大きな問題となっている。これらは個人の《弱さ》が原因ではなく、社会的病気として対応していくべきだろう。

 大不況というキツイ時代、せめて自分の生活だけは守りたいという新しい保守層が増えて「主張したりするとソンする」という風潮が蔓延している。孤立を恐れず《長いモノには巻かれず》、蹴っ飛ばしてやろうじゃないか。  (盛岡市 高橋龍児)


映 評

       
 「ノルウェイの森」

   原作  村上春樹

   監督・脚本 トラン・アン・ユン


     主演 ワタナベ …… 松山ケンイチ
         直子   …… 菊地凛子
         ミドリ  …… 水原希子


                  2010年 133分


 「ノルウェイの森」は村上春樹が一九八七年に発表した作品で文庫版も含めて現在国内で一〇〇〇万部以上の売り上げを誇るロングセラー作品になっている。ただ誤解を承知で言えば私は村上作品のまったく熱心な読者ではなく、たった一行も読んでいないということを告白しなくてはならない。なにか生理的に受け付けないものがあるし、作品世界に世代的ギャップを感じてしまうからだ。もちろん、原作と映画はまったく別のものなので、今回はあたりまえのことだが、映画「ノルウェイの森」の批評だけを書いてみたい。

 ワタナベは三〇代半ばを過ぎ、二〇代になったばかりの時代を回想する。当時、親友が自死し、親友の恋人だった直子と再会するのだが、直子はいまだに恋人の死を精神的にひきずっていて症状を悪化させていった。精神を病み、自然環境のいい病院に入ってしまう。直子と別れたワタナベは東京の大学へ進学し、そこで天真爛漫な性格のミドリと出会う。やがて直子も自殺してしまい、ワタナベは新しい旅立ちをはかる。

 この作品は、大人になりきれない青年のほんのわずかな愛と性についての成長物語だといっていいだろう。人間だれしも通過する儀式のようなもので、この映画を観てある種のなつかしさがこみあげてきてしまう。ワタナベたちの揺れ動く心象風景がよく表現されている。

 ワタナベは常に抑揚のないしゃべり方をし、衝撃的なことが起こっても動揺を顔にはださない。直子は世界の不幸を一身で背負っているような表情をし、自分の世界に閉じこもってしまう。ミドリは持ち前の天真爛漫さで常に周りを驚かせてしまうなど、それぞれの個性を大変よく表現している感じがし、監督の演出力はさえわたっていると思う。この映画は静寂に包まれた作品で、たとえ冬の海が荒れ狂うシーンでもなぜか静けさが支配している。

 瑞々しい緑がまぶしいくらいの初夏の草原、ワタナベと直子が向き合う秋のススキの野原、静寂が支配する一面の銀世界。この映画に出てくる風景はとても上質で美しい。風景のえがきかたに既視感を感じてしまった。実は撮影の李屏賓(マーク・リー・ピンビン)は台湾の有名な映画監督である候孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『恋恋風塵』(87)、『戯夢人生』(93)のカメラマンだったのだ。『恋恋風塵』の田園に吹きわたるアジアモンスーン地帯特有の季節風の感覚がとても心地よいものだったのだが、その撮影技術がここにも生かされていたのだ。
 
 六〇年代後半の大学構内、学生寮などが一つの舞台になっているのだが、それも背景の風景のようなもので、水色の奇妙なヘルメットをかぶった一団がキャンパス内を駆けぬけたりしている。

 ベトナム人監督のトラン・アン・ユンは、『青いパパイヤの香り』(81)でデビューしたのだが、ベトナム人監督と台湾人カメラマンが日本の風景をとても上質にきりとっている。そのあたりに新鮮さを感じる。 
 一九八一年、大森一樹監督が村上春樹の処女作『風の歌を聴け』( 81を映画化しているが、村上は原作の映画化の許可を出さないそうだ。
 映画は、早稲田大学。神戸大学学生寮などさまざまな舞台で撮影されているのだが、早大で撮影された映画は『青春の門・自立編』(原作・五木寛之 監督・浦山桐郎)、「男はつらいよ・サラダ記念日」(歌人俵万智の関連)など数えるほどしかない。本作品は村上が母校に強力にプッシュしてやっと実現したものだ。
 近年、村上春樹は政治的にもコミットしだしている。一連のオウム真理教事件についても文章を寄せているし、二〇〇九年のイスラエルでのエルサレム賞授賞式のあいさつの「壁と卵」の比喩の表現は相当話題にのぼった。またノーベル文学賞にもっとも近い作家だと何年も言い続けられている。
 私の最終的な評価としては、このような映画があってもいいかなという感じで、全面的に評価するという感じではない。もっとも量産されているあまり面白くない日本映画よりは相当ましだとも言えるのだが、ラストシーンでワタナベがつぶやく「僕はどこにいるんだろう」、さまよえる青年が獲得した新しい地平ではある。
 蛇足を承知で言えば、映画に登場する美しい草原は兵庫県神河町にある砥峰(とのみね)高原で、ビートルズの原曲NORWEGIAN WOODは、原語の歌詞をよく読めば、「ノルウェーの森」ではなく、「センスのいい北欧の家具」とのことだそうだ。にわかには信じがたいことではあるが、そう言えば、IKEAもスウェーデンの家具メーカーだったな。  (東幸成)


せ ん り ゅ う

   戦争の正義はみんな不正義で

   戦争をしかけテロに怯えてる

   振り切って見る大空の広きこと

   女一匹この髪すいて問う決意

                     瑠 璃


◎ 瑠璃さんには二年前の一月号に寄稿を頂いている。
 その一作に

  非国民そういうあなたは何なのさ

 ブッシュの戦争に加担する小泉政権時、イラクで戦災児救護活動の高遠菜穂子さん拉致事件が起こった。非国民だの自己責任だのと高遠さんをめぐって右翼が叫んだ。事件は、国境のない市民・ボタンティアたちの救助活動により無事に解放終結した。このとき、インターネットを介して国際的連帯が形成され、私たちも尽力した記憶がよみがえります。
 今春、瑠璃さんは国際ボランティア活動へと踏み出しました。    (ヽ史)

  相撲さん政界よりは増しといい ヽ史


複眼単眼

     
危険な「新防衛大綱」を作成した側の弁解

 昨年一二月に発表された新「防衛大綱」をめぐって、一月二八日の『朝日新聞』が「オピニオン欄」で「耕論〜中国脅威論の落とし穴」という二人の論者による記事を載せた。
 松田氏は元防衛研究所主任研究官で、新防衛大綱のたたき台になった報告書「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想〜『平和創造国家』 を目指して」をつくった「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・佐藤茂雄京阪電鉄代表取締役CEO)の構成メンバーだ。
 西崎氏はアメリカ外交の研究者。
 「安防懇報告」作成の当事者の一人である松田氏が言うことに興味が惹かれた。彼によれば、「日本は、現実には中国脅威論に立脚した対中政策をとっていない」し、安防懇報告も新防衛大綱も「中国脅威論に立脚した伝統的バランス政策ではない」ということになる。この松田氏の議論はおかしな議論であるが、その検討の前に、もう少し松田氏の意見を紹介したい。
 松田氏はいう。「中国は不確実性と不透明性が高い国である。一方的な軍拡や海洋進出などで、周辺諸国に大きな懸念を与えている。周辺諸国がそれに対応するときに、中国のよりよい変化を期待して『関与戦略』をとると同時に、最悪の事態に備えて『ヘッジ戦略』をとるのは、当たり前のことである」「日本の防衛政策は、自らがやるべきことを淡々とやり、現状を武力で乱すような国が現れたら、それに対応できるようにしておくヘッジ政策である。これは不確実性の高い東アジアにおいては至極まっとうな政策である」と。
 「ヘッジ政策」という説明の中に本音が出ているが、全体のトーンは従来の専守防衛論に立った「基盤的防衛力構想」を放棄し、動的防衛力、南西重視戦略に転換する新防衛大綱を作成した当事者の言としては眉唾だ。
 西崎氏が「テロやミサイル拡散などの新しい脅威に対する即応性をうたう防衛大綱が、憲法九条をどう位置づけているかは明らかではありません。ただ言えるのは『基盤的防衛力構想』から『動的防衛力』への転換は、差し迫った脅威に対する『戦争未満』の軍事行動を想定することによって、結果的に武力行使のハードルを下げることです」と指摘するのは正当だ。まさに、防衛大綱や安防懇報告の路線は、日本が東アジアに強まりつつある軍拡のスパイラルの当事者としての役割を果たしている。松田氏は「素朴な『中国脅威論』は卒業した方がいい」などと、防衛大綱の危険性を指摘する声に対して、弁明を図ろうとしているが、それで新防衛大綱の危険性が薄れるものではない。新防衛大綱は日本の防衛政策を危険な新たな段階に引きあげた意味で、すでに「ルビコンを渡った」のである。
 松田氏はここをごまかしてはならない。   (T)