人民新報 ・ 第1275号<統合368号(2011年3月15日)
  
                  目次

● アメリカ支配層の対日占領意識を自己暴露  メア暴言を断固糾弾する!
 
   幕引き・隠蔽を許さず、メアと米政府の責任を徹底的に追及しよう!

● 差別・偏見・排外主義に反対して、朝鮮学校への「無償化」即時適用をもとめる大集会

● 巨大地震、津波、原発事故   支援の輪を広げ支え、原発政策からの転換、よりよい社会制度実現のために闘おう

● 日本労働弁護団主催 「労働者性の否定を許さない集会 ― そんなあなたは『労働者』 ― 」

● 春闘勝利、非正規労働者の正社員化を求め郵政本社前要請行動  /  郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議

● 高江米軍ヘリパッド建設阻止へ

● 2・24  闘う春闘の前進を!  けんり春闘全国実行委の東京総行動

図 書 紹 介  大内要三 『日米安保は必要か? 〜 安保条約の条文を読んで見えてきたこと』
● 
● KODAMA  /  酒税と戦争そして植民地支配

映 評  /  「戦火の中へ」  (71 into the fire)

せ ん り ゅ う

複眼単眼  /  「コンピュータ監視法」だって?



アメリカ支配層の対日占領意識を自己暴露  メア暴言を断固糾弾する!
 
       
幕引き・隠蔽を許さず、メアと米政府の責任を徹底的に追及しよう!

   アメリカ国務省のケビン・メア日本部長は、沖縄県民について「ごまかしとゆすりの名人」などと差別的発言をしてアメリカ政府の本音をうっかりもらし、沖縄民衆をはじめ多くの人びとから非難され、日米関係を揺るがす役割を果たした。こうした暴言に対して、三月八日、沖縄県議会は発言の撤回と謝罪要求を決議し、辺野古新基地予定地をかかえる名護市議会をはじめとして各自治体での議会決議がつづいて、メア発言に対す怒りは広範なものとなっている。当初、メア発言を極力無視しようとしてきたアメリカ政府も事態の深刻さがわかるにつれて、ついにメアを更迭せざる得なくなった。メア発言が曝露された際に日本外務省は、沖縄県側への感情に配慮はまったくないまま「政府として実際にどのような発言があったか承知していない」とするなど、菅政権も発言の影響を過小評価していた。だが、地元で広がる強い反発にようやく対応を修正したのである。メア発言は、日米軍事同盟の本質、アメリカ支配層の対日占領意識、日本政府の対米追随ぶりを明らかにしたものであり、米政府の「謝罪」やメアの更迭などによる事態の収拾・幕引き隠蔽を断じて許してはならない。

 昨年一二月、ワシントンのアメリカン大学での講演で、メアは沖縄について次のように述べている。「日本の文化は合意に基づく和の文化だ。合意形成は日本文化において重要だ。しかし、彼らは合意と言うが、ここで言う合意とはゆすりで、日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ。…沖縄ではゴーヤーも栽培しているが、他県の栽培量の方が多い。沖縄の人は怠惰で栽培できないからだ。…沖縄は離婚率、出生率、特に婚外子の出生率、飲酒運転率が最も高い。飲酒運転はアルコール度の高い酒を飲む文化に由来する。…沖縄の人はいつも普天間飛行場は世界で最も危険な基地だと言うが、彼らは、それが本当でないと知っている。(住宅地に近い)福岡空港や伊丹空港だって同じように危険だ」(だが、二〇〇三年に普天間飛行場を上空から視察して「事故が起きない事が奇跡だ」といったのはラムズフェルド国防長官(当時)であり、その翌年には海兵隊のヘリコプターが沖縄国際大のキャンパスに墜落したのであったことを忘れてはならない。また沖縄県のゴーヤー生産は一位であり、メアはこんな事実さえ知らない)。またメアは、日米安保条約、憲法九条や「おもいやり予算」などについても発言し、沖縄をはじめ日本全体がアメリカにとっての利益となっていることを臆面もなくしゃべったのである。こうした人物が二〇〇九年まで駐沖縄総領事であり、国務省の日本部長と役職についていたのである。

 沖縄県議会の「ケビン・メア米国務省日本部長の発言に対する抗議決議」(三月八日)は、「(メア)発言は、基地のない平和で安心・安全な沖縄県をつくることを切に願ってきた沖縄県民の心をまさに踏みにじるものであり、県民を愚弄し、侮辱した発言にほかならず、断じて許せるものではない。ケビン・メア米国務省日本部長は、在沖米国総領事を務めてきた平成一八年から平成二一年の間にも、沖縄への差別的言動を繰り返してきた経緯がある。その後は、米国務省においても、米軍普天間飛行場の移設問題など日米交渉に実務者として深く関与してきた人物であり、今なおこのような認識を持っていることは、極めて遺憾であり、決して看過できるものではない。よって、本県議会は、今回のケビン・メア米国務省日本部長の発言が沖縄県民の願いと民意を全く無視し愚弄するものにほかならず、到底許しがたいものであることから、ケビン・メア米国務省日本部長本人、米国務長官および駐日米国大使に対し強く抗議するとともに、ケビン・メア米国務省日本部長に対し発言の撤回と沖縄県民への謝罪を強く要求する」とメアとアメリカ政府に対して怒りを叩きつけたのである。また高嶺善伸議長ら県議会代表は在日アメリカ大使館を訪問し、決議文を突きつける。
 こうした沖縄の怒りと闘いを断固として支持し、普天間基地即時撤去、辺野古新基地建設阻止、米軍基地の縮小・撤去の闘いを一段と強め、日米安保体制の打破にむけて全力をあげよう。


差別・偏見・排外主義に反対して

        朝鮮学校への「無償化」即時適用をもとめる大集会


 二月二六日、代々木公園野外ステージで、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会の主催(フォーラム平和・人権・環境の共催)で、「朝鮮学校への『無償化』即時適用をもとめる大集会」が開かれ、二〇〇〇人をこえる人々が参加した。

 はじめに主催者からのあいさつ。高校授業料無償化は、外国籍の人にも適用される画期的なもので、中華学校などにも適用されたが、全国一〇校の朝鮮学校だけが「保留」とされた。昨年の暮れには文科省が朝鮮学校への適用の審査基準を「正式決定」したが、また凍結となっている。これは、日本社会の差別と偏見と排外主義の問題だ。
 集会では朝鮮高校生、校長会、オモニ会から、また日本の大学生や教職員組合、愛知・三重・福岡などからかけつけた人々からの発言があった。
 集会の最後に参加者一同は「2・26朝鮮学校への『無償化』即時適用を求める大集会」の決議を採択した。

 集会終了後、「高校無償化をすべての高校に!」「排外主義反対!」「軍事衝突を朝鮮学校差別の口実にするな!」「菅政権は植民地責任にかけて無償化をおこなえ!}などのシュプレヒコールをあげながら渋谷駅周辺でのデモを行った。


巨大地震、津波、原発事故

  支援の輪を広げ支え、原発政策からの転換、よりよい社会制度実現のために闘おう


 三月一一日午後、東北地方太平洋沖の巨大地震が東北、関東を襲った。その後、長野、新潟そして山梨、静岡などへ震源地が拡大している。地震、津波、そして原子炉災害は、かつてない犠牲者を生み出している。死者の数は日をおうごとに増えている。未曾有の事態といってよい。だが、いまだに多くの被災者が救済・支援から取り残されている。一刻も早い救済・救援が行われなければならない。より広範な人びとの力でともにこの悲劇を乗り越え、困難な状況からの脱出のために力を合わせよう。市民の連帯をいたるところでつくりだそう。
 にもかかわらず、それを遅らせる妨害となっているのみならず、犠牲を増やしつづけているのが東京電力福島原子力発電所の深刻な事故である。いまの時点ではどこまでその事故の規模が拡大するかわからない。政府と電力会社は、日本の原発は世界でもっとも安全と豪語してきた、そして、原発立地にカネをばら撒き、地元政治家・有力者と結託し、反対運動を圧殺してきた。マスコミも、原子力発電は安全かつ安上がりとキャンペーンを張ってきたのである。反原発運動の主張と原発の危険性についての世論形成があったにもかかわらず、日本政府は原発増設を押しすすめてきた。悲劇的な事態の第一の責任は、電力会社、政治家、官僚、御用学者どもにある。今回、電力会社は、その秘密主義とともに事態にまったく対応できないという姿を全国に自己暴露し無能さを露呈させた。電力会社をはじめかれらを徹底的に糾弾し、十分な責任を取らせるとともに、これまでの原発推進の政策を完全にストップさせ、原発依存体制からの脱却を実現しなければならない。
 いま、これまでの日本社会のつもりに積もった矛盾が激発している。悲劇の原因は、原発事故にはっきり見られるように多くは人災であり、資本主義という社会制度にある。今後、この犠牲・被害をだれが負担するかをめぐって、階級的な対立はいっそう鋭いものになることは必至だ。
 わたしたちは、犠牲になられた人びとを哀悼し、困難な状況にある人びとへの支援の輪を拡大し支えるために奮闘するとともに、よりよい社会制度の形成のために団結してともに闘わなければならない。


日本労働弁護団主催

   
 「労働者性の否定を許さない集会 ― そんなあなたは『労働者』 ― 」

 三月四日、日本労働弁護団主催の「労働者性の否定を許さない集会―そんなあなたは『労働者』―」が開かれた。
 
 はじめに、日本労働弁護団会長の宮里邦雄弁護士による「基調報告」。
 いま「労働者」性(「労働者の定義」)がなぜ重要な問題となっているのかといえば、「個人請負」「業務委託」による就労者が増えているからだ。この「非雇用化」「非労働者化」は、厚労省の研究会の推計でも、二〇〇〇年に六三万人だったのが、二〇〇八年には一一〇万人にまで拡大している。労働保険・社会保険の事業主負担及び使用者としての労働法上の責任を免れるための安上がりの労働として利用されているのである。有期労働契約規制の緩和が行われれば、さらに増加する可能性があり、労働現場に労働法規が適用されなくなるという可能性が大きくなっている。同時に、このことは、労働ダンピングを招いて企業間の競争上の不公正をもたらすという点からも問題である。こうした問題を社会的に顕在化させたのは「個人請負」就労者自身の闘いであった。かれらは、労働組合を結成し就労条件改善を求めての団体交渉申入れたが、企業側は「個人事業主であって労働者でない」として団交を拒否した。これに労働委員会への救済申し立てを行ってきた。しかし、この間、労働性を認めた労働委員会命令を否定する三事件の判決がでている。新国立劇場運営財団事件、INAXメンテナンス事件、ビククーサービスエンジニアリング事件である。
 労働法の適用対象になるかならないかは、労働法上の保護を受けられるか否かにかかる重大なことだ。
 現在の労働法においては三つの「労働者」概念がある。一つは労働基準法で、その九条は「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」となっている。二つ目が、労働契約法の二条に「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」とある。三つ目が、労働組合法で、三条は「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」となっている。労組法上の労働者は、労基法、労契法のそれより広く把えられている。労組法では、@「使用される」という文言がない(指揮命令を受けるということは要件に入っていない)。A「賃金」「給料」のみならず、「これに準ずる収入」によって「生活する者」とされている。B定義のちがいは、労基法と労組法の立法目的の違いによるものだ。労組法上の労働者は、使用者と対等な立場に立って、その地位を向上させるために、団結し、団体交渉や団体行動をすることが予定されている存在としての労働者と位置づけられているが、これは、憲法二八条や労組法一条に基づいている。これらの労働者と違って、「独立自営事業主」は、契約上も実態上も「自らの計算と責任」によって業務を営む者とみなされ労働者ではないとされる。この違いは大きいが、労働者の定義規定は抽象的なため、労働者性の判断については、見解が対立している。これまでの裁判の流れを見ると、CBC管弦楽団事件(最高裁判決 S51・5・6)では、楽団員をあらかじめ会社の事業組織に組み入れる、出演報酬は演奏という労務の提供に対する対価などとして、労組法上の労働者であると判断した。しかし、労働者性の一般的な判断基準を明示的に提示してはいない。先にあげた三事件では、県労委や中労委が労働者性を認め、団体交渉を命じたのに対し、判決では、労働者性を否定し、労働委員会の命令を取り消した。これらの三判決に共通する労働者性否定の判断の問題点は以下のようなものだ。@就労実態ではなく、契約形式・契約文言の重視―事実よりも契約上の建前を重視、A法律上の権利義務の有無の重視―「法的な指揮監督の有無」「法的な諾否の自由」、B指揮監督の有無等労基法上の労働者性と実質的に異ならない判断、団結権・団体交渉権が保障されるべき労働者という視点の欠如、C「労働者性」を狭く限定して、団結権、団体交渉権を否定していることだ。
 現在、三事件判決は最高裁(第三小法廷)に係属中である。これまでの闘いの成果として、新国立劇場運営財団事件の口頭弁論が三月一五日、INAXメンテナンス事件のそれが三月二九日に開かれることになった。最高裁は、高裁判決をどのように見直すかが問われている。
 重要課題として、憲法二八条と労組法一条・三条をふまえた判断基準が必要であり、労組法上の労働者概念の独自性を定立する判断基準の再構築をしなければならない。そして「労働者権」の確立を日ざす闘いとしてとりくまれなければならない。

 つづいて、新国立劇場財団事件、INAXメンテナンス事件、ビクターサービスエンジニアリング事件からの闘争報告、また連合東京、ソクハイユニオン、東京東部労組、フリーター全般労組、YMSスガナミユニオンからの発言があり、最後に集会アピールが確認された。


春闘勝利、非正規労働者の正社員化を求め郵政本社前要請行動

             郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議


 二月二八日に日本郵政グループの持ち株会社、郵便局会社、郵便事業会社(日本郵便)の三社は総務省に一一年度の事業計画の認可申請・届け出した。日本郵便は、一一年度の事業計画も一〇〇〇億円をこえる赤字見込みで申請している。その原因は宅配便「ゆうパック」事業の統合の混乱や郵便物の引受数の減少である。また日本郵便の業績不振のあおりを受けた形で郵便局会社も約一一〇億円大幅の赤字を予定している。
 それらの赤字はもともと無理なぺりかん便との統合強行とその迷走などによって生れたものであるが、その責任はすべて経営陣にある。これらを郵政各社は労働者とりわけ非正規社員に犠牲を押し付けることによって乗り切ろうとしている。旧郵政時代から郵政職場では、非正規雇用社員の期間雇用は半年〜一年ごとに契約更新して、実質的な長期雇用が続けられてきたのであり、数十年勤続のベテラン非正規社員は少なくない。それを、短期の期間雇用社員の契約を更新しないという口実で、大量解雇を強行しようとしているのである。
 いま、郵政職場での大量解雇の危機が迫っているが、これを断固として阻止するための闘いが進められている。

 三月三日、日本郵政グループ本社前で、「郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議」(郵政産業労働組合、郵政労働者ユニオン、郵政倉敷労働組合で構成)の主催による「11春闘勝利! 非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇を求める本社前要請行動」が行われた。
 はじめに郵産労本部の広岡元穂委員長が、赤字の大部分はぺりかん便との宅配便統合の失敗によるものであり、総務省も会社に責任があると認めている。労働者に犠牲を押し付けない解決は可能だ、と述べた。郵政労働者ユニオンの松岡幹雄委員長は、赤字を口実にした非正規切りを許さない強力な闘いを行おう、と訴えた。
 連帯のあいさつを全労連の根本隆副議長、全労協の金澤壽議長が行い、経過報告、四人の非正規の仲間の発言が続いた。萩原和也さん(郵政ユニオン岡山支部)は、二月に広島高裁岡山支部で「雇い止め」無効と「三年分の未払い給与の支払い」という勝利判決を勝ち取ったと報告し、参加者一同からの大きな拍手で迎えられた。
 最後にアピール(別掲)を参加者一同の拍手で採択し、郵政本社にむけてシュプレヒコールを行った。

 集会を終ってからの郵政本社への要請で、全国から寄せられた二万二二二三筆の「郵政に働く非正規労働者の正社員化と均等待遇を求める要請署名」を提出した。

 午後からは議員会館で院内集会が行われ、全国から集まった郵政非正規労働者が実状の報告と決意の表明を行った。集会には、共産党、社民党の国会議員も参加し、共に闘うとあいさつした。

 11春闘勝利―非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇を求める本社前要請行動アピール

 日本郵政グループにおける非正規社員の正社員化は昨年一二月一日付けで八、四三八人が正社員として登用され「正社員があたりまえの社会」の実現に向けた第一歩を踏み出した。
 しかし、今回の登用数は「希望者する人全員を正社員にすべき」との国会答弁を現実なものとし、正社員として働くことを希望した非正規社員の期待に叶うものにはならなかった。
 郵政に働く非正規労働者は、民営・分社化の下で、効率化の対象として雇用され、会社に犠牲を強いられてきた。日本郵政が明らかにした「六四%が年収二〇〇万円以下のワーキングプア」という実態がそのことを示している。

 郵便事業会社は、二〇一一年度三月期業績見通しで一〇〇〇億円をこえる営業赤字を見込んでいるとして、人件費を大幅に削減する意向を明らかにしている。
 大幅な赤字の要因でもある、宅配便事業統合を進めてきた日本郵政及び郵便事業会社経営陣の責任を「棚上げ」にしたまま、労働者に痛みを押し付けるリストラ計画や賃金引下げ、非正規労働者への雇い止め、さらには、非正規社員の正社員化に対して「負担増」という形で正社員化への流れを止め、「合理化」を強行しようする日本郵政の姿勢は断じて認めることはできない。

 本日、本社前要請行動に結集した全国の仲間をはじめ、署名に賛同してくれた方々の声を日本郵政グループ本社に要請する。
 一、希望する非正規社員の正社員化を行なうこと
 二、正社員化にあたっては公正・公平な正社員登用をおこなうこと
 三、非正規社員の時給を最低でも一二〇〇円以上に引き上げること
 四、勤務時間や出勤日数削減をやめ生活できる賃金を保障すること
 五、年次有給休暇、育児休暇、夏期及び冬期休暇等、正規社員並みの待遇を保障すること

 わたしたちは郵政民営化の見直しのなかで、国民のため郵政サービスの拡充と併せて、非正規社員の正社員化や待遇改善を最重要課題として位置づけて、すべての仲間の賃金引き上げで内需拡大をはかり、雇用・生活の安定を求めるとともに、将来に希望を待って働いて行けるような職場環境をつくるため全力をあげてたたかいを展開していく。


高江米軍ヘリパッド建設阻止へ

 アメリカの意をうけて、菅内閣は沖縄の米軍基地の再編・強化の動きを強め、米海兵隊のヘリコプターの離着陸帯(ヘリパッド)六か所を沖縄島北部につくろうとしている。この地域は生物多様性豊かな「やんばるの森」の一部である。現在、防衛省の地方支分部局である沖縄防衛局が、地域住民の反対を押し切って、工事を強行している。米軍ヘリパッドの建設強行は、決して許されない。政府は、工事の強行を中止し、ヘリパッド建設計画の撤回しなければならない。

 二月二三日、参議院議員会館で、JUCON(基地から沖縄の自然を守りたい日米市民のネットワーク)とWWF(世界自然保護基金)ジャパンの主催で、「緊急院内集会・記者会見 生物多様性を破壊し、住民の暮らしを脅かす沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド建設を中止させよう!」が開かれ、緊急の集会だったが約一三〇名が参加した。
 花輪伸一さん(WWFジャパン)が主催者を代表してあいさつし、やんばるの森の豊かな自然と生物多様性などについて説明し、生物多様性と地域住民の生活を守るため、工事の中止にむけてがんばろう、と述べた。
 つづいてグリーンピース・ジャパン、グリーンピース・USA、自然保護協会、日本環境法律家連盟、US FOR OKINAWA PEACE ACTION NETWORK、WORLD PEACE NOW、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、沖縄を踏みにじるな!緊急アクション、ゆんたく高江などからの発言が続いた。
 国会からは、社民党の福島みずほ参議院議員、山内徳信参議院議員、照屋寛徳衆議院議員、吉田忠智参議院議員、服部良一衆議院議員、共産党の赤嶺政賢衆議院議員、民主党の瑞慶覧長敏衆議院議員が挨拶した。

 集会のあと防衛省へ申し入れ。交渉の中では、@住民の反対を無視し、自然を破壊するヘリパッド工事の強行に強く抗議する、A現在行われている工事を即時中止することを要求する、B米軍ヘリパッド建設計画自体を廃止するように要請・申し入れた。

 二月二五日には、「工事の強行をやめさせよう―沖縄・東村高江のヘリパット基地建設抗議2・25支援集会」が開かれた。
 集会では、高江の闘いに参加した人から、そして高江現地からの伊佐信次さんの電話メッセージなどで緊迫した状況が報告された。
 最後に集会決議は「防衛省・経理装備局では『強制排除はしていない。三月からは《重機など音の出ること》はしない』言っている。その際、平然と『チェーンソーは重機ではない』と言っているが、それは大きな音が出るではないか。今すぐにも使用はやめるべきである。トラックも工事のために立ち入るべきではない。そもそも工事関係者は立ち入るべきでない。三月を待たず、すぐにも工事は中止すべきである。沖縄防衛局は警備会社を雇って『防衛』している。その『警備会社の会社名は言えない』とのことだが、住民は抗議しているだけで妨害はしていない。警備会社の防衛は不要なはずだ。無駄な費用支出はやめるべきである」と即時の工事中止を求めた。


2・24  闘う春闘の前進を!  けんり春闘全国実行委の東京総行動

 三月一六日の自動車大手などの集中回答日だが、今年も資本の前に完全に押さえ込まれている状況にある。二月二四日、11けんり春闘全国実行委員会による東京総行動が展開された。労働者の生活と権利を守りぬく闘う春闘行動である。

 みずほ銀行本店をスタートし、フジテレビ、松下PDPなどへ争議解決に向けての抗議・要請の社前集会をつぎつぎにおこないながら、都心でアピールした。
 昼には、日本経団連前に集合。主催者を代表して金澤壽全労協議長が挨拶。連合大手組合は今年も賃上げを断念した。非正規労働者が急増する中で、違法派遣、そして派遣切りが続いている。過労死もあとをたたず、自殺も高水準のままだ。けんり春闘に結集したわれわれは、闘いの体制をかため、ストライキも準備しながら、春闘の前進と勝利に向けて活動を強めていこう。
 つづいて、郵政労働者ユニオン、東京労組、全造船関東地協、埼京ユニオン、NTT関連労組、なかまユニオンなどからの決意表明が行われた。
 集会はけんり春闘の経団連への要請書を確認。@総額人件費抑制策を改め、内部留保金を「雇用拡大」と「賃金引き上げ」に充てることA派遣労働者など非正規労働者の雇用打ち切り、新採用予定者の内定取り消しを行わないことB派遣・契約社員等労働者の正社員への転換を進めることC偽装請負、違法派遣、サービス残業、名ばかり管理職、違法「見なし労働」を根絶することD正当な理由のない有期雇用契約を行わないことE下請け企業に対する不当な単価切り下げの強要を行わないことF企業経営を「株主重視」から「従業員重視」、[社会的責任]を自覚した経営に転換することについて申し入れる。ところが、経団連側はガードマンを導入して、要請団を中に入れない。抗議の行動が行われ、怒りのシュプレヒコールをあげ、団結がんばろうを行い、午後からの総行動へと移った。


図 書 紹 介

   
 『日米安保は必要か?  〜 安保条約の条文を読んで見えてきたこと』

          著者:大内要三(編集者・平和運動者)   発行:窓社  定価1200円+税

 今年は日米安保条約(旧安保)から六〇年で、昨年は安保改定から五〇年だった。このことは単に過去の歴史の記念日ではなく、まさに日本現代史の重要問題を考える契機にほかならない。この安保問題に関して、昨年、『日米安保を読み解く〜東アジアの平和のために考えるべきこと』(窓社)を出した大内さんが、つづいて本書を出した。まず、その意欲的活動に敬意を表したい。

 私は大内さんの前著について、昨年七月一五日発行の本紙に「本書の『帯』」に評論家の高野孟が『鳩山総理に読ませたい本だ』と書いているが、いまでいえば『菅直人総理に読ませたい本だ』というところだ。私たちは、昨年の政権交代で防衛相になった北澤俊美が初々しいほどに『国防を任された私の立場から申し上げれば、内閣は憲法を遵守することが義務づけられておりますので、まず憲法九条の中で防衛を考えていくことを念頭に置く』(『世界』臨時増刊799号)などとのべながら、その防衛問題の認識の浅薄さもあって、ずるずると日米防衛官僚の論理の虜になっていく過程を見た。
 メディアの安保問題への関心の希薄さはいうまでもないが、それに挑戦できるわれわれの側の水準も問われている。…いまいちど、日米安保について整理してみようとする読者に最適の本である。ぜひ購読をおすすめしたい」と書いた。

 今回の本は「安保問題の入門編」とでもいうべき著作だ。日頃、安保について考えていなかった人、安保条約について触れたことがなかった人も十分に分かり易く読める本で、若者にも小難しくなく読める本だと思う。編集は、まず全一〇条からなる日米安保条約の逐条解説に日米地位協定の解説が加えられている。
さらに本書でとてもいいのは十一項目の「Q&A」だ。この各項目は、今日学習会等を主催したり、講演したりした人なら誰でも直面することだが、そうした場で必ず出されるといってよいほどの質問と、それへの分かり易い回答だ。この部分が本書のお薦めの最大の理由だ。
たとえば「敵が攻めてきたらどうする?」「抑止力としての軍は必要ではないか?」「北朝鮮は何をするかわからない?」「中国との『国境紛争』は?」「自衛隊によるクーデターをどう防ぐ?」などなどの「Q」だ。
 「A」の内容は読んでのお楽しみ。なんだか、いつぞやの「朝まで生テレビ」みたいだが、こうした問いにうまく答えられそうもないと思う人もぜひ読んでみて頂きたい。 (T)



KODAMA

    
酒税と戦争そして植民地支配

 侵略戦争というものは、侵略される人民はもちろん侵略する側の人民にも大きな不幸をもたらし、それは長い傷として残るものである。
 さて、戦争と日本酒の話である。日本の清酒は本来すべて米と米麹だけで造られ文字通り《清らか》なものとされてきた。ところが近代になって日清・日露の戦争が近づいてくると日本酒は大きく変化していった。
 第一に日本酒への需要が高まったこと、第二に増税の必要があったこと、つまり国家方針による戦争をするための資金として酒税が必要となったのである。そこで国家による詐欺とも言える「五悪・六悪」が行われた。@三倍増醸(水を加えて一本を三本にする)、Aアルコール添加(サトウキビが原料のエチルアルコールを入れる)、B糖類添加(あまり辛くならないようにブドウ糖を入れる)、C合成添加物(旨みをだすため「味の素」を大量に入れる)、Dオケ買い(他の酒屋へ発注して自分の工場のラベルを貼って売る)、E級別制(特級、一級、二級と分けて課税しやすいようにする)。
 酒は免許制とされ酒税は所得税、法人税とならぶ三大税となり、その多くが日露戦争のために使われた。米は文字通り軍事資源となり農家は政府によって無理やり供出させられた。その結果、食べることさえできないほど疲弊した農村では多くの少女が身売りをせざるを得なくなり、若い男は徴兵され二百三高地などで死体の山を築いた。
 一九三七年七月の中国全面侵略以降、酒税はさらに八回にもわたって加重された。最近、当時酒蔵を経営した人の話を聴いたが、憲兵より税務署のほうが恐ろしい存在であり、投獄され獄死したり自殺に追い込まれた者も少なくなかったという。
 二〇世紀になって字義通りの「植民」をしたのは日本ぐらいのものであろう。「もともと朝鮮人と日本人とは酒に対する嗜好が異なり、朝鮮人ははじめのうちは日本の清酒を余りこのまないので需要の対象は殆ど日本人に限られていたが、総督統治の進展と共に、在住日本人も多くなり、また日本酒を好む朝鮮人も多くなった」と『朝鮮酒造業四〇年の歩み』にある。こうして伝統的な朝鮮の酒《薬酒》は廃絶へと追い込まれたのだ。
 日本人は大量に朝鮮に入植し支配層となった。朝鮮の人びとの生活の端々にまで日本人の価値観を強要したが、これは朝鮮の人びとにとってガマンできないことだった。アメリカ人が味噌汁や納豆を口にしないように、朝鮮の人びとの嗜好が変わったわけではない。一九一〇年の日本の韓国併合以降、朝鮮にも酒税法が適用されて収奪は強められた。
 いつの日にか両国の人民が本当に笑いあいながら美味しい酒を酌み交わす日が来るように努力していかなければならない。  (辻宏)



映 評

    
 「戦火の中へ」  (71 into the fire)

                 監督 イ・ジェハン 

                 主演 守備隊長 オ・ジャンボム  ・・・ チェ・スンヒョン 
 
                     人民軍少佐 パク・ムラン  ・・・ チャ・スンウォン


                                        韓国2010 121分


 作品を批評する前に朝鮮戦争が勃発した時代背景にすこしふれておく。一九四五年八月一五日、朝鮮民衆は日本軍国主義の支配から解放され、やがて北側に朝鮮民主主義人民共和国、南側に大韓民国が成立した。東西冷戦構造のただ中、一九五〇年六月二五日、北朝鮮人民軍は三八度線を越えて南側に進軍し、三日でソウルを陥落させ浦項(ポハン)戦線まさに釜山の近くまで進撃しつつあった。連合軍は九月一五日マッカーサーの指揮のもとに仁川上陸作戦を行い反撃を開始した。その後、中国の人民義勇軍の参戦により戦局は一進一退をくり返し、五三年三月スターリンの死去により、七月二七日休戦協定が結ばれ、三八度線が休戦ラインとされ現在に至っている。三年一ヵ月にわたったこの戦争で二〇〇万人が死亡したといわれている。戦争の過程で南北それぞれに離散家族が発生し、時たま南北離散家族再会のニュースが報じられることにもなった。当時この戦争は日本で「韓国動乱」と呼称され、日本からさまざまな物資が輸送され日本は「朝鮮特需」にわいた。日本の高度経済成長の礎がこの時に築かれたのだ。

 韓国軍の主力部隊は洛東江(ナクトンガン)戦線に釘付けにされ手薄になった浦項戦線で学徒兵が募集され、それに応じてにわか仕立てで軍隊―軍人になったのが、この映画にえがかれている学徒兵なのだ。浦項女子中学に立てこもった七一人の学徒兵は奇襲に備えた。そこでリーダーに選ばれたのが多少の実戦経験があったオ・ジャンボムだった。彼はなまいきな不良少年三年組のいやがらせに悩みながらも少しずつ指導力・統率力を発揮していく。
 実はこの作品は戦火の中でなくなったイ・ウングという学徒兵が故郷に残した母親にあてた手紙をもとに構成されている。その手紙は彼の死後に発見された。手紙の中の「…死ぬのが怖いのではなく、お母さんにも兄弟にも、もう会えないと思うと、恐ろしくなるんです。…」 後に発見されたこの手紙は涙なくしては読むことはできないだろう。知覧の特攻隊員が家族に残した手紙のように。
 洛東江戦線に攻め入るように命令を受けていたパク少佐は命令を無視して敵の裏をかいて浦項を攻撃しようとする。浦項の女学校に籠城する七一人の学徒兵は突如現れた北朝鮮軍なすすべもなく敗退してしまう。態勢を立て直した学徒兵たちの陣地にパク少佐は部下一人とジープに乗り込んできてこう言い放つ。「君たちは李承晩傀儡政権とその背後にいるアメリカ帝国主義の盾にされているだけだ。この戦争が終ったあと、君たちは新しい国づくりをになう有能な若者ばかりだ。もしこちらが指定する時間に太極旗(韓国の国旗)ではなく、白旗をかかげれば攻撃することはしない」と。確かにこの言葉はこの戦争の本質をいいあてている。アメリカに寄生する李承晩とその政権を支えるアメリカは韓国の民衆と青年たちをただのコマとして認識していただろう。しかしこの少佐はあまりにかっこよくえがかれすぎている。だが、学徒兵たちは太極旗をかかげ続けた。そして悲惨な攻防戦が開始された。物量ともに劣る学徒兵たちの陣営は無残な敗北をとげた。

 戦争をテーマにした映画だからしかたがないのだが、あまりにも戦闘シーンが多すぎる。何しろ映画の三分の一が戦闘シーンが連続するのだ。個人的な好みでいえば私は戦争映画が好きではない。戦争オタク、軍事オタクなら別だろうけど、遊撃戦や爆破シーンの連続はあまり精神的によくない。平和主義者でいたい。もちろんそのようなことで世界が動いていないことは十分に理解しているが、映画のラストシーンで生き残った学徒兵二人のインタビューがでてくる。朝鮮戦争が残したものはなんだったのか。国土の荒廃と人身の混乱をもたらしただけだったのではないか。それよりも大国のエゴイズムのままに動かされた南北を問わず朝鮮半島に住む人びとの悲哀を感ぜざるをえない。

 今まで朝鮮戦争をテーマにした映画はそれほど多くない。「太白山脈」(94)、「ブラザーフッド」(04)の二作品があるくらいだ。現実的にいまだ朝鮮半島が分断されている状態で朝鮮戦争をえがくことは難しすぎるということもあるのであろう。本作品も浦項女子中学での人民軍と学徒兵との戦いというきわめて限定的な局面をとらえたものなので、朝鮮戦争の全体像を理解することは困難なのだろう。学徒兵のリーダーと不良少年三人組との葛藤はそれはそれで面白いのだが、私はこの映画の別の側面を指摘しておきたい。かつての韓国映画に出てくる北朝鮮の指導者、軍人たちはすべてずるがしこく人間的に尊敬されないようなステロタイプのえがかれ方ばかりされていたが、この作品に登場するパク少佐のように敵ではあるが、毅然として人間味に溢れて悩みをかかえているような描き方が多くなってきている。これは私見だが、一〇年間の左派政権の太陽政策のおかげだと考えたい。かつてはマスコミの北朝鮮の表現は「北傀(プッケ)」だったが、現在は「北韓(プクハン)」になっていることからも理解されよう。
 また映画に浦項の戦闘で生き残った元学徒兵二人のインタビューが映し出されるが、元学徒兵にインタビューすることでドキュメンタリー映画も作れるなと思った。
 なお当時籠城した七一人のうち四七人が戦闘の過程で死亡したそうだ。一九五〇年代の朝鮮半島の歴史に興味をもつ人はこの映画を観てほしいとおもう。ただ全体像はつかみにくいと思うが。 (東幸成)


せ ん り ゅ う

       ピラミッドよりも大きい政治デモ

       八百長といわぬが政界のマナー

       方便だけは継いでます菅政治

       国守れ煽動の朝までテレビ

                        ヽ 史


      核廃絶日本に権利義務責任

                        瑠 璃

 
   ◎ 2月25日、朝まで生テレビの田原総一郎が、国民に国を守る義務があるのか?と踏絵を出した。ああ、戦争への愛国マスコミ恐ろし。中東では人民が国家を毀している最中だ。一言いおう、人民には国をつくる義務がある、と。国体を守る義務はないのだ。国体とは、現在は大企業大資本に在る。マスコミ田原たちのやり方戦闘準備に警戒。


複眼単眼

    
 「コンピュータ監視法」だって?

 いま、怒濤のように始まった北アフリカ・中東での民衆革命は「SNS革命」などとも呼ばれている。闘いのなかで、民衆が情報通信手段としてのインターネットを駆使しているからだ。
由来、独裁政権は民衆に自由な情報伝達手段を与えないために苦心する。二〇世紀の東西冷戦における「鉄のカーテン」もその典型だ。独裁者にとって、インターネットとはなんとも始末の悪いものだ。だからこそ、独裁者は革命をおそれて、強権を駆使してインターネットの遮断をはかる。今回、火に油を注いだ形になったエジプトでの闘いでも、インターネットを遮断しようとする国家権力と、それに対抗する民衆のSNS構築の闘いが重要な革命と反革命の闘争の舞台になった。
 しかし、この世界的な時代の流れはいかなる独裁政権でも止めようがないだろう。SNSは民主主義にとって不可欠の通信手段となりつつある。
 しかし、驚いたことに、世界的範囲で、こうした「SNS革命」の流れがあるのに、日本の法務省が、この第一七七通常国会で、「ウィルス作成罪」を含んだ「コンピュータ監視法」を制定しようとしている。これは「ウィルス対策」に名を借りて、市民の自由な言論・表現に権力が介入してくる恐れがある危険な法案だ。
 これはコンピュータウィルスの「作成」や「保管」に「ウィルス作成罪」という刑事罰を科す法律だ。実際のウィルス被害がなくても、コンピュータウィルスを作っただけでも、また保管しただけでも、刑事罰に問われるものだ。この結果、同法を機能させようとすれば、使用されていないプログラムを常に監視しなくてはならなくなり、捜査当局によるインターネットの日常的な監視が不可欠になる。これではインターネットによる通信全体が権力により監視されることになりかねない。憲法が保障する「通信の秘密」の侵害そのものだ。
 「作成罪」というのは悪名高い共謀罪を思い出させる。先ごろ共謀罪が多くの人びとの反対で、廃案になったが、事実、このコンピュータ監視法は共謀罪の一部を切り離して復活させているものだ。
 この共謀罪は民主党も反対した。今回は法務省にそそのかされて、民主党政権が率先して国会に出そうとしている。早ければ三月はじめにも閣議決定され、五月頃の法案成立が企てられているという。
 「政治主導」を看板にして「政権交代」を成し遂げた民主党政権が、欧米諸国が狙うサイバー犯罪条約批准を推進したい法務省官僚にささやかれて、民主党内でのまともな議論もなされないままに、まさに官僚主導でこの悪法を成立させようとしている図はあられもない状態だ。
 もともと、共謀罪は自公連立政権時代に出されたものだ。その一部復活をねらう「コンピュータ監視法」を与党民主党が提案すれば、この二つの野党が乗ってくるのは間違いない。こんな悪法は、いま、つぶしてしまわないと、ゾンビのように復活してくる恐れがある。  (T)