人民新報 ・ 第1277号<統合370号(2011年5月15日)
  
                  目次

● 改憲派の火事場泥棒的策動を許さず、参院憲法審査会規程策定阻止へ!

● 東日本大震災の被災者に心をよせ 生かそう憲法 輝け9条  5・3憲法集会

● 大震災の被災者の救援・復興・連帯、すべての原発を即時停止を掲げて  第82回日比谷メーデー

● エネルギー政策の転換を求める脱原発運動のうねり

● 植民地主義の歴史と現在を問う4・29反「昭和の日」行動

● 強まる監視・管理社会化  共通番号制、コンピュータ監視法を考える

● 日米政府は辺野古新基地建設を断念せよ

● 映 評  /  戦火のナージャ

● KODAMA  /  文化批評・「午前10時からの映画館」

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  米軍「トモダチ」作戦は友情ではなく、米国益から






改憲派の火事場泥棒的策動を許さず、参院憲法審査会規程策定阻止へ!

 民主党は五月一〇日の常任幹事会で、党憲法調査会(会長・前原誠司)を設置した。前原はタカ派のホープであり、集団的自衛権・日米軍事共同作戦論者であり、自民党にも受けがよい。
 民主党は五月二日に参議院議院運営委員会に「参議院憲法審査会規定」の提案をしており、早期に国会に上程・採決を目指している。改憲にむけて早期に衆参両院の憲法審査会を始動させるためである。
 衆院ではすでに憲法審査会規定は可決されており、改憲派は震災・原発事故という重大事の状況下で一気に憲法改悪に向けた動きを具体化させようとしている。

 この間、改憲派の動きが活発化している。四月二八日に、「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘)が国会内で「新しい憲法を制定する推進大会」を開き、民主、自民、公明、みんな、国民新、たちあがれ日本などの各党の改憲派議員が参加し、改憲に向けた発言が続いた。首相就任後退会していた民主党の鳩山由紀夫前首相は、今年を憲法改正を行う大きなきっかけの年としたいと述べ、議員同盟顧間に復帰した。
 同日には、衛藤征士郎衆院副議長を会長とする「衆参対等統合一院制国会実現議員連盟」(民主、自民、公明各党などの超党派議連)総会が、衆参両院で可及的速やかに憲法審査会の「審査会規程」を整え、委員の選任を行うよう求める特別決議を行い、衆参両院議長に申し入れを行った。改憲派は震災・津波・原発事故というかつてない災害が起きているというこの時期に火事場泥棒のような卑劣な行動に出てきているのである。
 
 五月一〇日、参議院議員会館で5・3憲法集会実行委員会の主催による「参議院憲法審査会規定強行策定反対緊急院内集会」が開催され一〇〇名余が参加した。
 許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんが開会のあいさつ。中曽根などは、非常事態法がないのが憲法の欠陥だと言う。また改憲を首相公選の方向から行おうという主張がある。中曽根、小泉や橋下大阪府知事など同じような感じの人たちが口をそろえていっている奇妙な光景がある。こうして憲法を貶めて最後には九条を変えようということだ。いま参院で憲法審査会規程をつくり改憲の動きを強めようとしているが、5・3憲法集会実行委員会はこうした動きに断固として反対して運動を強めていく。
 日本共産党を代表して井上哲士参議院議員が発言。二〇〇七年に改憲手続法ができたが、両院で憲法審査会を始動させるには、規程を作る、各党が名簿を出す、委員会を作るということが必要だ。当時は衆院で自公与党が多数で作られてしまったが、参院では作らせなかった。野党だった民主党も反対していた。ところが昨年の参院選で民主党など与党が過半数割れし、国会運営もあって自民党の意向に同調して民主党も作ることを合意してしまった。民主党は与党になったから、政局のためにとかで、かつての主張を投げ捨てたのは国民を愚弄することだ。
 社民党を代表して福島みずほ党首・参議院議員。手続法の成立の時に、参院では多くの付帯決議が付けられた。これらがまったくつめ切れていない生煮えの状態で参院審査会が始動させられようとしている。じつは自民党の中にも反対の議員はいる。なんとしても作らせないために闘おう。いま政治がやるべきことは、地震・津波・原発事故の被災者、避難民の支援・救済であり、憲法を変えるとかいうような状況ではない。改憲ごっこ、政局ごっこをしている場合ではない。大切なのは、憲法を生かしていくこと、人権を実現していくことであり、基本的な人権の制限する非常事態宣言などをいう必要は全くない。

 各団体の発言があり、最後に、審査会規程策定に反対するために、各政党と参院議院運営委員への働きかけを強めることが呼びかけられた。


東日本大震災の被災者に心をよせ 生かそう憲法 輝け9条

                            
5・3憲法集会

 五月三日、日比谷公会堂で、二〇一一年5・3憲法集会実行員会による憲法集会「東日本大震災の被災者に心をよせ、生かそう憲法 輝け9条」が開かれ、二八〇〇人が参加した。
 スピーチのはじめは千葉大学教授の三宅晶子さん。一九四七年の憲法の施行では二度と戦争を起さないことを世界に宣言するとともに、廃墟の中から生きる権利を主張した。憲法二五条で規定された生きる権利だ。二六条の教育権、二七条の勤労権などもこれにもとづいているが、新自由主義政策によって破壊され、「生きさせろ!」の声と運動が巻き起こっている。
 日本が東アジアでなすべきことは、真に戦争を終らせること、アジアから世界へ平和を構築していくことであり、それが九条が希求していることだ。いま世界的に大きな転換が起こっている。大戦の経験者がいなくなるなかで、その記憶・教訓を受けつぐ責任が私たちにはある。そしてもう一つは戦後の意味を根底から問いなおすことだ。それは、ヒロシマ、ナガサキからフクシマへという流れから今後どういう選択をしていくかということでもある。世界には、ヒロシマ、ナガサキの名をつけた通りや広場がある。首都ベルリンにヒロシマ通りのあるドイツでは、二五万人が脱原発を掲げてデモを行い、ドイツ政府も核政策の見直しへと動き出した。いま分岐点に立っている。失敗することによって分岐点に立つことになるのだが、それは責任の道と厚顔無恥の道である。現在と未来の人の生存権をかけて、二五条と九条を生かしていこう。
 つづいてジャーナリスト伊藤千尋さん。アイスランドでは地熱発電が盛んだ。その地熱発電の技術は日本のものだ。水力と地熱で十分電力はまかなえる。日本でもできる。天地自然の恵みを生かしていけば、地熱発電で原発二〇基分、それに風力発電で原発四〇基分という試算もある。オーストリアでは、一九九九年に新たな憲法条項で、原子力発電は造らない、造っても使わないとした。スペインでも太陽光パネル、風力などの自然エネルギーを活用しているが、カナリア諸島にはヒロシマ・ナガサキ広場があり、日本国憲法九条記念碑が建てられ、その除幕式にはベートーベンの第九が演奏された。このようにヒロシマ、ナガサキそして九条の精神は広まっている。コスタリカは日本に続いて平和憲法を持ったが、軍事費をすべて教育費に回した。そして小学校に入学すると校長が、人は誰でも愛される権利を持っている、愛されていないと思ったら憲法違反の裁判を起すことができると教える。これまでに八歳の小学二年生が原告になった例もある。日本では、困ったときには議員にお願いする、請願・嘆願するのが普通だが、コスタリカでは子どもも一人前の扱いを受けている。そして、この国は平和憲法を使って、隣国の三つの戦争をやめさせ平和を輸出するという実績を持っている。韓国の大統領だった金大中さんは、「行動する良心たれ!」と言った。行動しない良心は悪の側にいるとも言った。日本でも自覚した市民として社会を変えていくことが求められているのだ。
 社会民主党を代表して福島みずほ党首。今日は大震災以降はじめての憲法集会だ。自治体やボランティアが被災者と労苦を共にする活動もひろがり、3・11の前とは違う社会をつくる動きが出てきている。3・11は人災であり政治災害であった。憲法は九条、そして二五条の生存権、一三条の幸福追求権などを規定しているが、こうした憲法価値を実現した社会がめざされなければならない。放射性物質が撒き散らされている中では、平和的生存権、幸福追求権などは不可能だ。脱原子力、脱原発の政策こそが必要なのだ。とりわけ最も危険な浜岡原発は即時停止させなければならない。東海地震の起きる可能性は八七%といわれている。そして柏崎刈羽原発も差し迫った危険性がある。原発と手を切る社民党としてのアクションプログラムを近く発表することにしている。次に沖縄の辺野古基地建設の問題だ。このことで私は大臣を罷免されたが、普天間基地を即時撤去させるとともに、新基地建設を絶対に阻止していかなければならない。また、武器輸出三原則の見直しを許さないとともに原発輸出を止めていかなければならない。
 日本共産党を代表して志位和夫委員長。「震災復興と日本国憲法」というテーマで話をしたい。被災者が一日も早く安心と希望がもてる生活を取り戻すための一番の力となるのが、憲法であり、国民の闘いだ。復興の大原則は、一人ひとりの被災者の生活再建こそ、復興の目的であり土台でなければならない。住まいと仕事と公共の再建が一体になってすすむことが大事だ。大震災のもとで、憲法第一三条、二五条などの権利が侵害されている。国の責任が問われている。復興の進め方では、計画は住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で、ということが基本にならなければならない。上からの青写真の押し付けは絶対にやってはならない。ここでも憲法第八章の地方自治の原則が生かされなければならない。ところが大震災を利用して、「新憲法制定議員同盟」などが、「非常事態規定」のない現憲法の欠陥が明らかになったので緊急の憲法改定が必要だなど言い始めた。文字通りの「火事場泥棒」的なやり方による九条改定に道を開く動きだ。今回の大事故をふまえ、原発から撤退し、自然エネルギーへの戦略的な大転換を決断することがいまこそ必要だ。日本国憲法を生かし真の復興を!、これを合言葉に、力をあわせてがんばろう。
 集会でのカンパ総額が、一二六万円をこえた(被災三県に送られる)。
 最後に、「憲法集会アピール」を確認し、両党の党首を先頭に銀座パレードに出発し、沿道の人びとにアピールした。

東日本大震災の被災者に心を寄せ 生かそう憲法 輝け9条 二〇一一年5・3憲法集会アピール

 三月一一日、東日本一帯を襲った大地震、大津波、そして最大規模の原発事故という大震災の三重苦のさなかにあって、私たちは今年で一一回目になる「5・3憲法集会」を開きました。東日本においては、今回の大震災で三万近い人びとがいのちを失い、あるいは行方がわからず、一〇数万の人びとが避難生活を送っており、加えて原発事故の放射能が人びとのいのちと暮らしを脅かしつづけています。

 私たちはこの「5・3憲法集会」の名において、全ての被災者の皆さんに心からの連帯を表明します。
 すでに明らかなように、今回の福島第一原発の事故は重大な「人災」にぼかなりません。いまこそ政府は、「安全神話」をふりまいてきた原発推進政策を根本から転換し、エネルギー政策の転換を実現しなければなりません。また政府は憲法二五条の精神に基づき、すべての被災者の救済と、原発事故による放射能被害の拡大をくい止め、生命、健康、地域社会の保全を最優先させるために力を尽くすべきです。私たちは日本国憲法の示す平和に生きる権利と基本的人権の尊重が実現されるよう、強く求めます。

 三月一一日を経て、私たちはいまあらためて平和と国際協力・連帯の重要性を痛感していまず。国内外のさまざまな人びとの努力と大きな支援のなかで、憲法九条の精神はいっそう輝きを増しています。

 東日本大震災のなかで、この状況に使乗して「大連立政権」の動きが見られます。これは党利党略の極めて不謹慎な動きであり、政府の責任をあいまいにし、議論と批判を封殺することに通じる恐れがあり、民主主義とあいいれないものです。いま、この大連立を先取りするかのように、国会では民主党、自民党などの合意により参議院憲法審査会の規程制定を強行する動きや、国家財政の危機を口実に国会議員の比例区定数削減の正当化や消費税増税に利用する動きもありますが、本末転倒と言わなくてはなりません。

 今年は日米安保条約が調印されてからちょうど六〇年の年です。沖縄では普天開基地撤去の県民あげての切実な声がいまだに実現されず、日米政府の合意によって名護市辺野古に新基地が作られようとしていることは容認できません。私たちは軍事同盟や軍事力による「抑止」で東アジアの平和は実現されないと考えます。普天間基地は直ちに撤去されるべきです。

 「5・3憲法集会」は一〇年以上にわたって、「憲法改悪は許さない、憲法を生かし、実現しよう」という共通の立場で、思想や政治的立場の違いを超えて広範な共同の運動を連めてきました。こうした努力は今日、ますます重要な意味を持ってきていると確信し、いっそうの共同のひろがりを呼びかけます。


大震災の被災者の救援・復興・連帯、すべての原発を即時停止を掲げて

                              
第82回日比谷メーデー

 五月一日、日比谷野外音楽堂とその周辺で、第八二回日比谷メーデーが開催された。メイン集会の壇上には、「東日本大震災の被災者の救援・復興にともに連帯し全力をあげよう!」「すべての原発を即時停止し廃炉へ、原発依存のエネルギー政策の転換を!」のスローガンが掲げられていた。
 開会宣言が行われ、全参加者での黙祷につづいて、石上浩一・国労東京池本委員長が主催者挨拶を行った。大地震、津波、原発事故はかつてない被害をもたらした。事故を起こした東電福島原発は依然として放射能を撒き散らし、原子炉の冷却もままならないという状況にあり現在も進行中であり予断をゆるさない事態にある。一刻も早いライフラインの復旧と原発事故の事態収拾が求められている。原発事故は「想定外」ではすまされない。危険な原発を停止させ、再生可能なエネルギーに転換させていかなければならない。こうした中で、雇用問題が深刻化している。緊急雇用対策を採らなければならない。同時に、労働者派遣法の改正、有期雇用契約法制の見直しを早期に実現しなければならない。昨年の尖閣問題、ヨンビョン島砲撃事件などを口実に日米軍事同盟が強化されようとしている。沖縄・普天間基地を閉鎖させ、辺野古への移転を許さず闘おう。
 連帯挨拶は武藤弘道都労連委員長。マスコミなどは今回の震災・原発被害への救援での自衛隊の役割を突出させているが、各地の公務員の献身的な活動を強調したい。防災無線で津波からの避難をよびかけつづけて犠牲になった町役場の職員をはじめ、原発の冷却のために最前線で放水し続けた東京消防庁職員など公務員労働者は命をかけての仕事をしている。被災からの復旧は困難を極めているが、原発がなかったならこんなことにはならなかった。市場原理主義、原発推進を軸とするエネルギー政策によって犠牲者はうまれた。それを「自己責任」として切り捨てようとすることは断じて許されない。歴代自民党、そしてそれを受けついだ菅政権の政策を転換させなければならない。そして、反失業・雇用確保の闘い、労働者派遣法の改正がますます重要になってきている。国鉄闘争では昨年の政治解決につづいて雇用問題の解決に協力していきたい。
 来賓挨拶は、前田信弘東京都産業労働局長と福島みずほ社民党党首・参議院議員が行った。また大阪中ノ島メーデー実行委員会、第八二回中央メーデー実行委員会、韓国・民主労総などからのメッセージが披露された。
 決意表明では、東京東部労組メトロコマース支部、全統一労組、宮城全労協、JAL不当解雇撤回裁判原告団からの発言があり、メーデー・アピールを採択し、金澤壽全労協議長の音頭での団結がんばろうで第一部が終了した。第二部では各団体よりのアピールが続いた。土橋コースと鍛冶橋コースに分かれてデモが行われた。

第82回日比谷メーデー・アピール

 本日、私たちは第八二回日比谷メーデー開催しました。メーデーは、全世界の労働者が生活と権利をかけて闘ってきた「統一行動日」であり、歴史と伝統のある「働く者の祭典」です。
 三月一一午後、東北関東沖を震源とする史上最大級の大地震と大津波が発生し、太平洋沿岸を中心に多くの人命が失われ壊滅的な被害をうけました。
 この度の震災で、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた皆さま方に心より・お見舞いを申し上げます。
 私たちは、被災された人々への激励・支援に全力をあげ復興活動に取り組んでいきます。
 また、東京電力福島原子力発電所で、大量の放射能放出・飛散を起こすという、恐れていた重大事故が起きています。原子力優先のエネルギー政策の誤りと、原発の危険性が露わになりました。原発の即時停止と建設中止を求め、脱原発のエネルギー政策を確立するとともに、地元住民と原発で働く労働者の人命を第一にしなければなりません。
 日本経済は大企業中心に、リーマンショックを乗り越え業績はV字回復を達成しながらも、リストラと労働者の非正規化による総人件費抑制と、下請け企業へのコスト削減攻撃、利益は内部留保へ貯め込むことによって国内需要は回復せず、深刻なデフレ状況が続いています。加えて、公務員制度改革と称する公務員賃金の引き下げと人員削減により賃金の引き下げスパイラルが続いています。こうした中で、震災を口実とした首切り・賃下げ・リストラなどの攻撃を許してはなりません。
 また、外国人研修生・技能実習生をはじめ移住労働者の権利確立、生活向上のために支援連帯を強め、労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会をめざしていきます。
 私たちは、貧困と格差、地球規模で進む環境破壊、食糧危機や飢餓などの根源である市場原理優先の規制緩和・新自由主義グローバリゼーション、自己責任・自助努力を強制する企業利益優先の社会に反対し、未組織労働者・非正規労働者・外国人労働者の低賃金と労働条件全般の改善、すべての争議の勝利、国際連帯を図り、働く者の団結で生活と権利、平和と民主主義を守る闘いに決起していきます。
 今こそ、公平と公正、共生と共存、平和と民主主義を掲げ、すべての労働者市民、そして戦争に反対する全世界の人々と手をつなぎ、ともに闘っていきましょう。
 私たちは、メーデーを「闘いの広場」と位置付け、統一メーデーの実現を求めてきました。労働者の幅広い結集と一層の団結と闘いが求められていることを確認し、第八二回日比谷メーデーの成功を宣言します。

二〇一一年五月一日


エネルギー政策の転換を求める脱原発運動のうねり

 福島第一原発事故は収束できないどころかますますその被害を拡大させ、原子炉本体の状況も悪化する一方である。原発事故を引き起こした東京電力など電力会社、政府などに対する怒りの声は日増しに高まり、脱原発を求める運動が各地で展開されている。
四月二四日に、プルトニウムなんていらないよ!東京、日本消費者連盟、大地を守る会、たんぽぽ舎、原子力資料情報室などで構成する原発とめよう!東京ネットワーク主催の集会が開かれ、四五〇〇人が参加した。集会では、ロシアからのゲストで、チェルノブイリ原発事故の汚染地域で活動するパーベル・イヴァノヴィッチさんが参加し、チェルノブイリとフクシマを深刻な警告として永遠に残るようになすべきすべてを尽くさなければならないと述べた。福島現地からは地震と原発事故、避難の状況、子どもたちの健康被害などが報告された。集会決議では「今、立場の違いはあっても多くの人たちは原子力発電所に対して疑問を持っています。今日私たちは、チェルノブイリ原発事故の汚染地域からパーベルさんを迎え、また福島現地から報告も聞きました。今後絶対に原発震災を起こしてはならないことを深く心に刻みました。この思いをより多くの人に伝えるために力を合わせ、声を大きくし、世論を動かし、今度こそ脱原発社会を実現しましょう」とアピールした。集会後、「つくろう! 脱原発社会」をかかげて、芝公園から東電本社、中部電力東京支社、原子力安全・保安院などに抗議し日比谷公園までのデモ行進が行われた。
五月七日、渋谷での「5・7原発やめろデモ!!!!!!」では一五〇〇〇人を超える参加者があった。これに警察は介入・妨害して、四人を逮捕し、うち二人を留置した。反原発運動の高揚に脅威を感じた権力の側からの弾圧であり、断じて許されない行為だ。
六月一一日に全国各地で大規模な集会が準備されているなど、力を合わせて脱原発、エネルギー政策の転換を求める巨大なうねりをまきおこそう。


植民地主義の歴史と現在を問う4・29反「昭和の日」行動

 四月二九日、4・29反「昭和の日」行動実行委員会の主催で、「サンフランシスコ講和条約・日米安保条約調印から六〇年植民地主義の歴史と現在を問う連続行動*4・29反『昭和の日』行動」が闘われた。
 小泉八雲記念公園で集会が開かれた。
 集会では、評論家の彦坂諦さんが発言。天皇が被災地に行って「慰問」した。その前に菅首相が行ったときには、怒りで迎えられたが、天皇の場合には「感激」で迎えられたと報じられた。これが天皇制である。かつての戦争末期の東京大空襲の時には、人びとが土下座をして「申し訳ない」とお詫びするという光景があった。私たちが個としてあることを忘れさせるのが天皇の存在なのである。自分たちの頭でしっかりと考えることをしなければならない。共和制では代表を自分たち自身で選び、責任ははっきりしている。君主制は権力側に都合がよいものだ。天皇制はイギリスの王室と比べても権力側にとって優れたものだ。これを何とかしなければ私たちは解放されない。
 つづいて実行委員会参加団体などからの発言があった。
 集会を終って、警察と右翼の妨害をはねのけながら新宿までのデモを行った。


強まる監視・管理社会化

     
共通番号制、コンピュータ監視法を考える

 昨年夏に文書や写真など保存データのすべてを魚介類のイラストに変換してパソコンを使用不能に陥れた「イカタコウィルス事件」がおこったが、菅政権は、「ウィルス事件」に適用する法律がなく十分な対応できなかったとして、「ウィルス作成罪」などの法案を通常国会に提出するとしてきた。このウィルス作成罪をふくむ不正指令電磁的記録等作成等の罪(コンピュータ監視法)案は、捜査当局が裁判所の捜査令状なしでインターネットのプロバイダに特定利用者の通信記録保全を要請できるようにするもので、共謀罪新設法案などとともに「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」として二〇〇四年に上程されたが、共謀罪に対する批判の強まりのなかで廃案となったものだ。それを菅政権は震災事態の中で、閣議決定した。

 五月九日、東京仕事センターでシンポジウム「強まる監視・管理社会化 共通番号制、コンピュータ監視法を考える」が開かれた。ネットワーク反監視プロジェクト、盗聴法に反対する市民連絡会、反住基ネット連絡会が共催した。
 問題提起のはじめに富山大学教員の小倉利丸さんが「反監視の思想」と題して発言。監視社会化が進んでいるが、この際の二つの大きな敵・相手は政府と企業・資本だ。近代社会は国民国家によって一つの価値観に無理やりまとめるシステムでなりたつ。国家としては国民一人ひとりの情報をつかむことを強めるという特徴を持つ。所得、私生活など社会福祉のための個人情報が必要とされることになり、福祉国家は一方で監視社会だということだ。高度な福祉社会は一方で高度な監視社会だ。そのために一つに権威主義的で抑圧的な監視体制がある。警察や地域の監視カメラなどが、自由を守るなどということで正当化されている。もう一つは、規制を内面化する自己監視ということだ。やっかいなのはこのような自己監視である。また、市場経済も、消費者の行動を把握する必要があり、情報を集めている。こうして、国家と資本が監視を強めている。このことの反面には、「外部からの脅威」を排除するということがある。外国人、犯罪者、テロリズムが対象だが、体制からはみ出しつつある自己もその対象になってしまう。秩序を維持し再生産していくメカニズムだ。
 二人目に、菅政権下で加速する国民総背番号制(共通番号、国民ID)について、やぶれっ!住基ネット市民行動の原田富弘さんが問題提起。共通番号、国民IDの導入は二〇〇九年に政権についたときの民主党の政権政策案にある。その後、政府・与党社会保障改革検討本部が設置され、今年に入って一月に社会保障・税に関わる番号制度についての基本方針が、四月には、社会保障・税に関わる番号制度についての実務検討会の「社会保障・税番号要綱」がでた。これから六月に「大綱」、そして二〇一四年六月に個人に「番号」、法人等に「法人番号」を公布するとしている。問題は、何のための番号化なのかなど前提の検討がなされずに、導入だけが推進されていることだ。結局、番号は住民票コードから作成され、住基ネットの再構築となり、以前から心配されてきた住基カードの一挙的利用ということになる可能性が高い。しかも民主党はこれに反対してきたにもかかわらずである。第三者機関(いわゆる三条委員会)を設置して個人情報の保護などを行うとしているが、国家による監視は防げるわけではない。こうしたものは、無駄、使えない、コスト高、というものでありすすめ方も強引・拙速なものであり、強く反対していかなければならない。

 問題提起に続いて、提起者の二人に加えて、盗聴法に反対する市民連絡会、反住基ネット連絡会、一矢の会(Nシステムによるプライバシー侵害の問題に取り組んでいる市民団体)によるシンポジウムが行われた。


日米政府は辺野古新基地建設を断念せよ

 四月二九日、政府は米軍普天間飛行場代替施設と称して推し進めている名護市辺野古新基地の形状について、滑走路をアメリカ側が望む二本のV字案とする方針を固め、滑走路が一本のI字案は断念し、今後の日米両国の外務、防衛相による「日米安全保障協議委員会(2プラス2)」での正式合意を目指すことになったと報じられた。

 だが事態は日米両国政府が望むような形で進行してはいない。四月二七日には米上院軍事委員会のレビン委員長などが沖縄県を訪問して仲井真弘多知事と会談したが、知事は普天間の県外移設を要求したのだった。
 菅直人首相は六月下旬の訪米で普天間・辺野古基地問題の決着をしようとしている。そのため北澤防衛相と仲井真沖縄県知事と会談が五月七日に行われたが、北澤はV字案を全く持ち出さなかった。沖縄県側の反発の強さを予想してのことで、菅政権は打つ手を失っている。

 五月二日には、辺野古への基地建設を許さない実行委員会による毎月第一月曜日の定例・防衛省前行動が取り組まれ、抗議集会、シュプレヒコール、申し入れなどが行われた。沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックは、北澤防衛相へ次のように申し入れた。@普天間基地はたたちに閉鎖せよ。A普天間基地の辺野古移設は不可能であり、断念せよ。B沖縄県知事に対して軍事基地の押しつけをするな。
 
 さらに運動を強めて、普天間基地即時撤去、辺野古新基地建設阻止へ!


映 評

  
戦火のナージャ

       2010 ロシア 150分

   監督、脚本、製作 ニキータ・ミハルコフ

    
 コトフ大佐 … ニキータ・ミハルコフ

     ドミートリ … オレグ・メンシコフ


     ナージャ  … ナージャ・ミハルコワ


 前作の「太陽に灼かれて」(94)はスターリンの粛清の嵐が吹き荒れていた一九三六の夏の一日だけを描いた作品でカンヌ映画祭で審査員グランプリとアカデミー外国語映画賞を同時に受賞した。
 残念ながら私はこの作品を観ていない。収容所におくられたコトフ大佐はドイツ軍の爆撃で破壊されたその場所から脱出し、懲罰部隊にひとりの兵士として参加していてドイツ軍の進出を阻止するために要塞の建設に従事していた。ソ連国家保安委員会(KGB)幹部のドミートリは突然スターリンに呼び出される。粛清したはずのコトフ大佐が生存しているらしいという情報を確かめるために。
 時は一九四一年、第二次世界大戦のまっただ中だ。甲板に大きな赤十字の旗を広げた傷病兵や避難民を乗せて航行していた船は、本来戦争協定で攻撃をまぬかれるはずなのだが狂気にかりたてられたドイツ軍パイロットたちは無慈悲に攻撃をくりかえす。沈みゆく輸送船に。海に投げ出された従軍看護師のナージャは奇跡的に船の機雷にしがみつきとある海岸にたどりつく。ナージャから離れた機雷は波間を漂い、党の公式文書を積載した船に接触し沈没させてしまう。
 ドミートリを呼び出したスターリンを演じる俳優は本物の(?)スターリンとあまりにも似た俳優が演じているので逆に滑稽感をかもしだしている。前出の輸送船には巨大なスターリンの彫像が何体も積み込まれ、「大切なものだからていねいに積み込むように」と船長は船員に言い渡す。このあたりもミハルコフ監督の面目躍如といった感じがする。どんな権威にも屈服しないというしたたかな精神がみてとれる。
 ナージャが漂着した海岸にも党所属の船が爆破してしまったあとに豪華なシャンデリアの残骸とともにスターリンの彫像が降りそそぐ。
 コトフ大佐が所属する懲罰部隊に訓練されたはずの幹部候補生(ピオニール)部隊が参加するが古参兵士が戯れに打ち上げた花火の音に驚愕してしまう。ここにもたとえ訓練されていても実戦では学歴も党歴もほとんど役にたたないんだというミハルコフ監督のシニシズムが見て取れる。もっとも経験が戦争で役にたってもらっては困るのは事実なのだが。
 気になるシーンをいくつかあげよう。
 進出してきたドイツ兵は思ったような戦果をあげられないためにあせり、踊りや歌で行進してきたロマの人びと(ジプシー)を殺戮してしまう。ひとり生き残ったあどけない少女はとくに驚いた様子も見せないでひとこと「殺さないで」とつぶやく。その静寂感のあるシーンが心を打つ。
 また塹壕にたてこもっていたコトフ大佐たちは意表をついたドイツ軍戦車部隊の総攻撃を前になすすべもなく敗退してしまう。そしてそこに参加していたモスリムの兵士たちはモスリム流の祈りをささげる。コトフはその祈りを容認する。この二つのシーンはとても印象的だ。この戦争の時代に差別されていたであろう人びとへの愛情が感じられるのだ。
 ミハルコフ監督は戦争を描くことで戦争の狂気、無謀な戦争が何ももたらさないことを見事に描いて見せてくれた。当たり前のことだが、どんな戦争にも正当性など存在しないのだ。正義の戦争などはない。ミハルコフの言いたいことはそこにあるように思える。それにしても過激なスターリン批判、いやスターリン主義批判、これはペレストロイカ以降のロシア国内での表現の自由の拡大の賜物だと言えなくもないのだろうか。
 戦闘シーンと対極にあるようなドイツ軍兵士たちが侵入した村の田園風景はとても美しい。幼かったナージャがかつて父と暮らした平和な日々が回想シーンとして何度かあらわれるが、その風景はやはり美しい。戦争シーンと平和な田園風景との対比のしかたが心にくいほどうまいのだ。
 映画の中で監督と監督の娘ナージャが出演者として重要な役割を演じている。普通なら身内を重要な役まわりに使うことは非難を浴びることはあっても称賛はされないはずなのだが、妙にうまく映画にとけこんで上質の映画にしあがっていると思う。これはミハルコフ監督のたぐいまれな才能の結果なのだろうか。
 この映画は莫大な制作費と長い準備期間のもとに製作されたが、なぜかロシア国内ではあまりヒットしなかったそうだ。そんな逆境をものともせず続々編(八作目)として「THE CITADEL(要塞)」の準備にとりかかっているそうだ・完成がいつになるかわからないが、私たちはミハルコフの作戦にまんまと乗りかかってみようではないか。(東幸成)


KODAMA

 
 文化批評・「午前10 時からの映画館」

 「午前10時からの映画館」でアメリカン・ニューシネマの特集があったので何日か足を運んだ。ハリウッドの映画の流れを大きく変えた作風で、当時の日本の私を含めて《不良少年》のド肝を抜くと同時に、《不良は正しくてカッコイイ》という自信を与えてくれた。
 始めにニューシネマの代名詞的作品『イージー★ライダー』(69)が上映された。ピーター・フォンダとデニス・ホッパー(監督・脚本)がハーレーダビッドソン(マシンと呼んでいる)を股いでアメリカ大陸を走りぬけながら当時のアメリカを鮮烈に描いていく。
 アウトローの弁護士(ジャック・ニコルソン)が旅に加わると、ストーリーはますますクレージーになっていく。それでもネイティヴアメリカンと生活をして、彼らを差別する白人から守ったりするエピソードがはいっていて、しっかりとした反体制映画になっている。楽に気ままに生きてきたために体制の規律に縛られた白人に撃たれて殺されてしまうところがイージーなのだ。
 次に観たのが『カッコウの巣の上で』だった。一九七五年のアカデミー作品賞、ジャック・ニコルソンが主演男優賞をとっている。ニコルソンが刑務所の強制労働からのがれるために精神病院に入ってきて、患者たちを支配する婦長(ルイーズ・フレッチャー 主演女優賞)にことごとく逆らう。それは例えばテレビで大リーグを観せろとか、タバコは自由に吸わせろ、外出させろとか、たまにはビールくらいは飲ませろというもので、人間として当然の権利を求めるものであった。その中で無気力であった患者たちもそれに加わって次第に活性化していく。終盤近くに吃音のために引っ込み思案の青年の患者にみんなが協力して彼女をつくってやり、乾杯して喜び合うシーンには涙が出た。ニコルソンは仮病か本物の精神病かわからないという設定になっているが、私は多少自滅的ではあるが正気の反逆者であったと思う。せっかく脱出できるチャンスがあったが酔いつぶれておジャンにしてしまう。みんなのためにつくったルールが、いつの間かルールを守らせることが自己目的化する。舞台は病院だが、描かれているのは現実社会のことであるのは言うまでもない。
 三日目に観たのがロバート・デ・ニーロが二七歳という設定で主演した『タクシー・ドライバー』(79)。ニューヨークの下水の蒸気の中から、かったるいサックスフォーンのジャズとともにイエローキャブがあらわれるファーストシーンはいま観ても衝撃的だ。ベトナム戦争の海兵隊から帰還し、人生に鬱屈した思いを抱えながら、常に生きる目的をさがし不眠症に苦しんでいる。ある日、民主党と思われる大統領候補の選挙事務所で、好みの女性と出会うが、はじめてのデートでポルノ映画へ連れて行ったためにふられてしまう。彼の怒りはニューヨーク全体へ向けられ、銃を手に入れて武装し、髪もモヒカン刈りにしてしまう。大統領候補を銃殺しようとするが失敗。彼の怒りは娼婦を牛耳る町のヤクザへと向けられる。後に『羊たちの沈黙』(91)や『告発の行方』(88 主演女優賞)で存在感を示すジョディ・フォスターが一三歳で娼婦役を演じきっている。デニーロはこのヤクザの根城へ押し入りヤクザ三人を射殺してジョディ・フォスターを親元へ送りヒーローとなって映画は終る。問題はデニーロもヤクザと同じ地平に立ってしまい、反体制とはヤクザへの道へも転落しかねないという危険性があり、私など侠気(おとこぎ)にあこがれる性格のある者は、よほど心しないといけないことを警告している。もっとも監督がギャング映画を作り続けているマーチン・スコッセッシなので当然の帰結とも言えるだろう。
 なにも昔のじいさん好みの映画ばかり観ているわけではない。最近、若者の多くに指示されている『GANTS』だって観てきた。「一〇〇点取るまでオレたちに闘えというのか!」というセリフが気に入っている。  (H・T)


せ ん り ゅ う

    米軍ただちに駆けつけ核演習

    TOMODACHIはころし仲間と翻訳し

    TOMODACHIが来て辺野古へと背中おす

    レベル7菅政権のレベルです

    廃炉から流るる塵で廃畑に

    うれしげにオバマは語る殺しあい

                  ヽ 史


    あの夢もこの夢も抱いて藤の花

                  瑠 璃


 ◎ 政局は震災・原発事故で大わらわだが、陰でちゃっかり沖縄基地問題を推進している。ここにトモダチ作戦=OPERATION TOMODACHIの本意が……。

◎ ウサマ・ビンラーディンが米国軍によるテロ行動で殺害された。世界中に絶えない紛争戦争の主人公に常にアメリカの顔がある。


複眼単眼

    米軍「トモダチ」作戦は友情ではなく、米国益から


 今回の東日本大震災に際して、米軍は一万八〇〇〇人規模の海・空・海兵隊・陸軍の将兵を参加させた。海軍は空母ロナルド・レーガンをはじめとする一〇隻の艦艇、海兵隊はNBC兵器(核兵器・生物兵器・化学兵器)対策を専門とする特殊部隊などを派遣した。両国政府ともこの作戦を日米同盟に基づく両国の友情の証とする宣伝を大々的に行った。おおかたのマスメディアも米軍の活動をそのように礼賛した。
 そうしたなかで商業新聞ではあるが、『東京新聞』の五月二日の社説「日米を真のトモダチに」が米軍による今回の「支援」の背景を分析していて興味深かったので紹介する。
 社説は支援の狙いを分析し、三つに分類する。
 第一。「自衛隊との連携を通じて、良好な日米関係を内外にアピールすること」。ハワイの太平洋軍司令部にある常設司令部を横田に移してトモダチ作戦司令部をつくり、新ガイドラインで合意した「日米共同調整所」を防衛省、横田基地、陸自仙台駐屯所に設置するなど、「日本有事や周辺有事に活用する予定の米軍や日米の組織」を災害に転用した。これによって緊急事態に「自衛隊と米軍が密接に連携できることを日米双方が確認し」、それを「中国や北朝鮮にも示した」と社説は指摘する。
 まさにトモダチ作戦は、日米合同軍事演習であり、中国、朝鮮への示威作戦だったということだ。
 第二。「オバマ米大統領が掲げた新規の原発建設を推進するクリーンエネルギー政策に影響を与えないこと」。「福島第一原発での事故が拡大し、在日米人や米本土に放射能被害が及ぶ事態になれば、政策転換を迫られかねない」。「在日米軍の家族七千五百人を帰還させ、福島原発の周囲八十キロを避難地域に指定した。これを受けてトモダチ作戦は八十キロ圏外で行われている。フクシマを米国に波及させないことに関して、米政府は徹底している」と社説は指摘する。フランスのサルコジ大統領が日本に飛んできたり、フランスの原発産業が直ちに支援を表明したのにも似て、米政府による自国の原発産業保護の狙いが明らかだ。
 第三。「日本を経済大国の地位から転落させないこと」。「世界の勢力地図が書き換えられる場面では、自衛隊による対米支援を折り込んだ米国のアジア太平洋戦略も見直しを迫られる。……いわゆる中国包囲網の手を緩めないのが……米国の戦略である。そこから日本が脱落する事態は想定外といえる」と社説はいう。
 米国にとって、日本の産業の重要な位置を占める東北地方の被災は、アジア戦略の見直しになってしまうのだ。
 そして「社説」は最後に、米国が「トモダチ」作戦に用意した資金は六十五億円、思いやり予算は毎年千八百八十一億円の高止まりで五年間の特別協定を結んだ。「自民党政権でさえ避けてきた負担増を民主党政権はやすやすと飲み込んだ」と指摘している。
 『東京新聞』にはこのようなジャーナリスト魂を持った人物がいると感服した次第。 (T)