人民新報 ・ 第1290号<統合383号>(2012年6月15日)
目次
● 大飯原発3・4号機再稼動阻止! 野田内閣の危険な策動を粉砕しよう
● 講演会 / さようなら原発 ― 脱原発・持続可能で平和な社会をめざして
● 郵政民営化監視ネット 市民・利用者の立場から「特別委員会参考人質疑」
● 2012年 国会ピースサイクル 防衛省、都教委、東電本社、外務省、内閣府へ要請行動
● 経営者の《逆ギレ》をはね返し、働く者の権利を確立していこう ブラック企業に立ち向かう仲間たちの集会
● 沖縄「日本復帰」40年 日米両政府による沖縄の軍事植民地化を打ち破れ
● KODAMA
朝日新聞のエセ革新性を怒る
講演会「さようなら原発」で考えた
● せ ん り ゅ う
● 複眼単眼 / 生活保護費支給削減ではなく憲法25条の実現を
大飯原発3・4号機再稼動阻止!
野田内閣の危険な策動を粉砕しよう
政府は関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼動を強行しようとしている。野田首相が八日の記者会見で、原子力発電が必要であることを「国民に説明」したことで、福井県の西川一誠知事は再稼働について同意の条件が整ったとしてGOサインを出すことになった。野田は「政府の責任」で原発の再稼働を判断するとしているが、安全性についてなにも保障しているわけではない。そして七月中には、3、4号機ともにフル稼動させようというのである。
昨年の3・11事で、われわれは日本という地震国の脆弱性、そこでの原子力発電所の危険性、その事故のとりかえしのつかないほどの深刻さ・悲惨さを思い知らされた。にもかかわらず、政府、電力会社、経済界とそれに連なるマスコミ、学者などは、依然として、これまでの原子力推進の路線をいっこうに反省することなく、多くの人々を道連れにして「破滅への道」を進もうとしている。支配階級は、かつての侵略戦争のときの「一億玉砕」を繰り返そうとしているのである。日本は再び危険な状況に突入させられることになる。こうした暴挙を絶対に許してはならない。再稼動阻止、脱原発社会の実現を目指して、全国で反対運動をいっそう強めていかなければならない。
「さようなら一〇〇〇万人署名」は、六月五日現在で七、二二二、二九七筆が集まった。一〇〇〇万名署名の実現も現実的なものとなってきた。脱原発の力は着実に前進している。
六月六日には、日比谷野外音楽堂で「許さない!大飯原発再稼働 さようなら原発一〇〇〇万人署名第一次集約集会」が開かれた。
集会の演壇上には、七〇〇万筆をこえた署名簿の一部が積み上げられ、オープニングコンサートでは加藤登紀子さんなどが脱原発の思いを歌い上げ、大江健三郎さん(作家・呼びかけ人)、落合恵子さん(作家・呼びかけ人)、賛同者の佐高信さん(評論家)らが、署名に寄せた広範な人々の確固たる意思を脱原発運動の広がりに生かし、大飯原発の再稼動を許さず、原発に抜本的に「さよなら」を告げる日の実現をめざそうと述べた。さようなら原発福井ネットワーク代表の山崎隆敏さんの現地報告、日本女子修道会と新潟県平和運動センターから署名取り組み報告、そして、さようなら原発一〇〇〇万人アクション事務局から当面の行動の提起が行われ、集会アピール(別掲)を参加者の拍手で確認してパレードに出発した。
いま連日、大飯再稼動阻止の闘いが取り組まれている。この闘いを積み上げ、政府・電力資本の再稼動策動を阻止しよう。そして、脱原発の思いをひとつに、さまざまな潮流の大合流をかちとり、七月一六日に予定されている「さようなら原発10万人集会」を大きく成功させよう。そして、世界の人々ともに脱原発社会の実現にむけて運動を飛躍させよう。「10万人集会へのよびかけ」はアピールしている。「日本に住むひとびとの八割以上が、『原発は嫌だ』と考えています。世界のひとたちも不安を感じています。しかしその思いを目に見える形で表現しなければ、原発を護持・存続させようとする暴力に勝つことはできません。私たちはいまこそ、日本の指導者たちにはっきりと、『原発はいらない』という抗議の声を突きつけましょう。電気はいまでも足りています。さらに節電ができます。いのちと健康を犠牲にする
経済などありえません。人間のための経済なのです。利権まみれの原発はもうたくさんです。反省なき非倫理、無責任、無方針、決断なき政治にたいして、もう一度力強く、原発いやだ、の声を集めましょう。」
世界の人々と連帯をひろげ脱原発社会の実現にむけて運動を飛躍させよう。
大飯再稼動阻止!
集会アピール 許さない!大飯原発再稼働 原子力政策を転換させよう!
昨年五月からスタートした「さようなら一〇〇〇万人署名」は、本日七、二二二、二九七筆(六月五日現在)が集まりました。そしていまも続々と署名が届いています。この署名は全国各地から、そして世界四〇カ国を超える国々から集まりました。人口の五%を超える人々が直接自らの名前を書き込み、原子力政策の転換を求める意志を表しました。この数は決して軽いものではありません。
署名は原発現地をはじめ、原発のない離島や地域からも数多くの声が届いています。沖縄の竹富島では、島の人口三四〇人のうち一五〇人の署名が送られてきました。また、老若男女、学生、主婦、お寺、教会、生協、農協、漁協、幼稚園・保育園、労働組合、病院、NGO・市民団体など実に様々な人々が、福島原発事故を契機に、脱原発に向けて大きく動き出しました。この七二〇万筆を超える声の後ろには、もっと多くの脱原発の声があるはずです。いま政府や推進側は、その声に真摯に向き合うべきです。
福島原発事故から一年余りを経過した今日、事故の収束は見えず、故郷を奪われた人々は、いまだ苦しい避難生活を余儀なくさせられています。遅々として進まぬ補償や健康不安が高まるなかで、いまも暮らしています。
いま、日本の原発は全て停止したままです。にもかかわらず電気は十分に足りています。しかし、関西電力をはじめ原発推進派は、やみくもに夏の電力危機を叫び、原発の再稼働にやっきとなっています。「命」よりも「経済」と原子力ムラの「生き残り」を優先させようとしています。原発事故の原因究明と対策でさえまともにできず、再稼働の国民的議論も合意もないまま大飯原発の再稼働を強行しようとしています。私たちはこのような動きに強く反対します。
再び第二、第三のフクシマを繰り返さないためにも、生命にかかわる原発を再稼働させてはなりません。周辺住民の合意もないまま、数人の首長が密室で再稼働を決め、首相が責任を取るなどの無責任は許せません。
私たちは、大飯や伊方など、政府が準備する原発の再稼働を認めません。原発廃止の声がこの七二〇万署名の声と日本の核施設の稼働にこれ以上の巨額な資金を投入するよりも、被災者への支援や補償、健康維持に全力をあげるべきです。そのためにも原子力政策からの抜本的な転換を強く求めます。
二〇一二年六月六日
許さない! 大飯原発再稼働 さようなら原発一〇〇〇万人署名第一次集約集会参加者一同
講演会
さようなら原発 ― 脱原発・持続可能で平和な社会をめざして
福島原発事故で未曾有の被害を出しながら、政府や電力会社などは原発再稼動を強行しようとしている。これを許すのか、脱原発社会へ向かうのか、この国は重大な岐路にある。
五月二六日、日本教育会館ホールに約五五〇人が参加して、講演会「さようなら原発―脱原発・持続可能で平和な社会をめざして―」が開かれた。主催は、「さようなら原発」一〇〇〇万署名市民の会(呼びかけ人・内橋克人、大江健三郎、落合恵子、鎌田慧、坂本龍一、澤地久枝、瀬戸内寂聴、辻井喬、鶴見俊輔)。
はじめに呼びかけ人でルポライターの鎌田慧さんが、脱原発の社会にするにはいまが一番大事なときだ、多くの人の原発に反対する声を結集して原発の再稼動を許さない運動をつくりだそうと主催者挨拶を行った。
原子力委員会新大綱策定会議で原発推進派と鋭い論戦を繰り広げている金子勝慶応大学教授が講演した。政府や電力会社は原発を再稼動させないと、とくに関西ではこの夏に電力不足、停電の事態なると宣伝している。しかし、原発依存度の高い関西電力管内でも、電力は不足しない。なぜなら企業は自家発電施設を増設しているからだ。政府が示した電力供給量よりも一〇〇万キロワットくらいは発電できる。電力会社などは、原発でないと火力発電で石油などの燃料コストがかかって電気代が上がるといっているが、デマキャンペーンにすぎない。沖縄電力、電源開発、中国電力などの原発を持っていないか依存度の低い会社が黒字なのに、原発をたくさん持っている東京電力や関西電、九州電などは赤字をだしている。原発は止まっていても燃料を冷やすなどの費用がかかり余計に損失が生まれる。だから関電や九電などは必死に再稼働しようとしている。東電が儲けているのは家庭むけだということもわかってきた。全体電力量の三八%が家庭向けなのに、そこから利益の九一%をあげている。企業向けは、販売の自由化による競争で値上げできない。その分が家庭向け料金にしわ寄せされているのだ。日本を変えるには、東電解体ということが欠かせない。解体に向けて、賠償責任の追及、福島県民を救うための賠償方式に変えること、発送電分離がぜひとも必要だ。「もんじゅ」や六ヶ所再処理工場など原子力予算を組み替えていかなければならない。
茨城県東海村村長の村上達也さんは「『原子力発祥の地』からの脱原発宣言」と題して発言。東海第二原発の防波堤工事終了は東日本大震災のわずか二日前だった。もし完了していなければ、津波で全電源喪失して大事故となっていただろう。あわや福島の二の舞となっていた。わたしがここにいるのが奇跡にも思える。福島事故の社会的背景には「安全神話」「国策」「想定外」「仮想事故」があった。外国で事故が起きても日本では起きないとするうぬぼれがあった。原発は国策で進められてきた。スマトラ沖大地震で大津波が発生しても、日本の原発の安全性確認で生かされなかった。これで「想定外」だというのだ。そして事故対策でも「仮想」だから具体的対応は必要ないとしてきたのである。国は福島事故で住民よりも原子力産業を守ろうとしたし、いまだに目先のカネで進めているのであり、このような国に原発を持つ資格はない。原発依存は疫病神、貧乏神で絶対に必要のないものだ。
写真家・大石芳野さんは、福島原発から二〇km圏内で撮影された写真で、原爆被災地の厳しい状況を報告した。
シンポジウム「再稼働をめぐって―安全と電力不足と原発―」では、井野博満東大名誉教授(経産省ストレステスト意見聴取会委員)は、現在は脱原発は多数になったが、原子力ムラは健在で、権力構造は不変だ。大事なのは発生源から止めることで、まず再稼動をさせない、寿命延長を認めないこと、そして被曝を小さく見せようとする企みをつぶすことだ、述べた。環境エネルギー政策研究所の松原弘直主席研究員は、夏の電力「不足」は産業界がピーク時に節電すれば電力は足りる、もんじゅ廃炉や再処理凍結など脱原発依存と発送電分離などの電力市場改革が求められている、と述べた。
郵政民営化監視ネット
市民・利用者の立場から「特別委員会参考人質疑」
五月一八日、東京・新宿角筈地域センターにおいて、郵政民営化を監視する市民ネットワーク(以下、「監視ネット」)の第八回総会、そして四月二七日に参院本会議で「郵政民営化法改正法案」が可決・成立したことを受けて、市民・利用者の立場からその成立を検証する「監視ネット特別委員会参考人質疑」が行われた。
監視ネットは二〇〇五年の当時の小泉・竹中による郵政民営化攻撃の中で、市民の立場から民営化を監視することを目的に設立され、この七年間郵政民営化と分社化の問題点を鋭く提起し、発信し続けてきた。昨年八月に行われた第七回総会では三・一一大震災を踏まえて「被災地と公共サービス」をテーマに、被災地の復興・復旧における公共サービスのあり方を問い直してきた。
総会では一年間の活動報告が行われた。「改正法」が成立したが、会は存続し、今後の活動方針として、TPPと郵政金融事業についての研究と問題提起、郵政有期雇用労働者問題の研究と問題提起という取り組みを確認した。
第二部の「特別委員会参考人質疑」は衆院に設置された「郵政改革特別委員会」のまさに市民版であった。
今回成立した「民営化改正法」そのものに対する評価と問題点、金融二社のユニバーサルサービスのあり方、それがもたらす地域サービスの利便性、日本最大の二〇万人有期雇用労働者が働く職場状況とその影響等について、それぞれ五人の参考人が「国会議員」の質問に答えていった。実際に現場で働く郵政労働者もいる各参考人の発言はユーモアに富み、鋭い視点のものであり、今日の郵政事業とその職場状況を端的に浮かび上がられた。この企画はなかなかおもしろく、有意義なものであった。
この間、まさに政治に翻弄され続けられた郵政民営化問題。改正法の成立で一定の「区切り」がついたといえ、まだまだその状況を監視し、点検・検証し続ける意味は大きい。
監視ネットの役割も労働組合のそれとは一味違った意義をもつものである。
2012年 国会ピースサイクル
防衛省、都教委、東電本社、外務省、内閣府へ要請行動
ピースサイクルは一九八六年に大阪の郵便局で働く青年たちがはじめた自転車を使って全国を走る平和運動だ。今年も六月二三日の沖縄・糸満の国際反戦集会からスタート(辺野古へ)し、ヒロシマ・ナガサキ・六ヶ所村に向けて全国で平和・環境・人権に関することをアピールする。
二〇〇五年からはじまった「国会ピースサイクル」は夏のピースサイクル本走前段のとりくみとしてある。今年の国会ピースサイクルは、五月二十五日、当日は時折の雨という天候だったが、参加者は元気いっぱいで、原発の再稼動ストップ!沖縄基地NO!を掲げて、行動を展開した。防衛省、東京都(教育委員会)、東京電力本社、外務省・内閣府などにたいして、要請行動をおこなった。
東京都知事・石原慎太郎と東京都教育委員会委員長・木村孟へは「良心の自由を奪う不当な教員処分取り消しを要求する申し入れ書―戦争の旗と天皇の歌の強制をやめてください!」で三点を要請。
@二〇〇三年一〇月二三日付「入学式・卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」は憲法とそれに基づく諸法に違反しておりただちに廃止すること。
A「日の丸・君が代(国旗・国歌)」の取り扱い方については、学校長に職務命令を出させる「強制の連鎖」をやめること。各学校の教員の裁量に委ねること。さらにこのことを、児童生徒及び保護者に伝えること。
Bすべての「日の丸・君が代」を強制する職務命令違反での処分を撤回すること。
東京電力へは以下の要請。
@福島第二原発、刈羽・柏崎原発の再稼動は絶対に行わないこと。
A大惨事の責任を取って、東京電力の原発を全て即時に廃止することを宣言すること。
B「原発安全神話」によって、安全対策を怠り、大惨事を招いた貴社の責任を明らかにすること。
C「原発がなければ電気は足りない」「計画停電の実施」などマスコミへの広告料金を使っての世論誘導・脅かしはしないこと。
D大震災を理由とした免責は許されない。東京電力の責任において被害者すべてに対し、早期に充分な補償をすること。
E生命にかかわる放射能汚染にさらされ作業を余儀なくされている労働者の安全、労働条件に万全を期するとともに、被ばく線量の管理を徹底すること。
F今後も陸地、海洋を問わず放射能測定地を増やし、放出された全ての放射性核種や数値を速やかに公表すること。
G地震大国で核のゴミを埋め捨てすることが不可能な中で、核燃料サイクルからの撤退を表明すること。
H国民の七割程度が、脱原発・再生可能な自然エネルギーへの転換を支持している。東京電力は、率先して「地産地消」型の再生可能な自然エネルギー政策への転換を表明すること。I一般家庭用の電気料金は絶対に値上げをしないこと。
国会ピースサイクル野田首相への申し入れ
内閣総理大臣 野田佳彦 様
●甚大な原発大震災を踏まえて、今こそ、原発の再稼動をやめ、再生可能な自然エネルギー政策に転換することを求めます。
●政府は憲法9条を守って、沖縄・普天間基地の無条件閉鎖、辺野古への建設を断念し、米軍再編による全国の軍事基地強化の中止を求めます。
昨年三月一一日、東日本を襲った大震災と福島第一原発による原発大震災によって、私たちの社会と生活は、『第二の敗戦』と呼ばれるほどの深い傷を負いました。一年余が経っても、今なお、大量の放射能が大地と海を汚染し続け、住み慣れた土地に帰りたいという願いを果たせない人々が十数万人もおり、外で自由に遊ぶこともできず、被曝による健康被害の恐怖にさらされつづける何十万人もの子どもたちがいます。
これらの現実を見るとき、原発を安全だと言って推進してきた、政治家、官僚、電力会社、御用学者、マスメディア等々の人々の責任と罪がどれほど重<大きいかは明らかです。
沖縄県民は、普天間基地を始めとする米軍基地を巡る歴代政権の無責任な対応によって、そのつど翻弄され、大きな負担を強いられてきました。沖縄県民の願いは、基地のない平和な島・沖縄です。
私たちピースサイクル全国ネットワークはこの二七年間、自転車で全国の人々と連なり、平和、人権、環境保護を訴えてきました平和団体です。
六七年前の日本帝国によるアジア・太平洋地域での植民地支配と侵略戦争の歴史を学び、この日本とアジア、世界の平和を目指そうと毎年夏に自転車を走らせ、全国をリレーしながら、平和のメッセージを集め、広島、長崎、沖縄、六ヶ所に届けています。
また、韓国、中国の南京・東北、ベトナム、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポールなどアジア各地にも自転車を走らせ、現地の人々と共に旧日本軍の侵略の爪痕を見学し、戦争被害者との交流を深めてきたところです。
●なぜ、地震大国で原発推進策を強行するのですか?
原発大震災以降、政府・電力会社などの原発「安全神話」を信じる人々はいなくなりました。それでも、政府・電力会社などは『原発がなければ電力が不足する』と人々を脅かし原発推進政策に躍起になっています。ところが現実は、原発が稼動しなくても電気は不足していません。地震大国、直近に大地震が各所で発生することが予測される中で、なぜ再稼動を強行しようとするのですか。「ストレステスト」をテコに拙速な「政府暫定基準」をつくり、地元自治体を強引に説得しようとしています。最新の世論調査(朝日新聞)では、「再稼動反対」五七%が「賛成」二七%を大き<上回っています。
このような中で、政府と電力会社等が取りうる唯一のエネルギー政策は、原発に頼らない再生可能な自然エネルギー政策への大転換です。再稼動などは許されません。さらに、原発大震災によって被った被害の実態を把握し、被災者に対して速やかに万全な補償をすることを政府と東電に求めます。
●なぜ、沖縄県民の総意を踏まえて、米国政府と再交渉が出来ないのですか?
大震災以降、在日米軍は、大震災を有事訓練の場として様々な動きを行ってきました。憲法に対する配慮から慎重であった日米軍事行動が当然のように行われています。米軍再編で日米両軍がやりたかった軍の一体化の先取りです。
政府は一昨年五月に普天間基地の代替基地と称して、自公政権時代の約束にもどり辺野古に今後一〇〇年間、米軍が使える基地=軍港付新空港をつくる事に同意しました。沖縄県民は戦後六六年もの間、苦渋を強いられてきました。『日米同盟』とは、米国政府に追従するだけの関係ですか。政府は、米国追随の外交政策を改め沖縄県民の総意を踏まえて、米国政府との再交渉に臨むべきです。
さらに、日米軍事再編により横須賀・池子・座間・岩国・佐世保・南西諸島をはじめ、日本各地で米軍及び自衛隊の基地の強化が進められています。私たちはこれを認めることはできません。東アジア地域の安全保障のためにも、米軍基地の撤退と自衛隊の基地強化の中止を求めます。
●要請事項
一、原発の再稼動をやめ、全ての原発を廃止すること。原発の輸出は絶対にしないこと。
二、核燃料サイクル政策を抜本的に見直し、早期に再生可能な自然エネルギー政策に転換すること。
三、原発大震災によって被った全ての被災者へ、東電が速やかな補償をするように政府は責任を持つこと。
四、放射能に汚染された瓦磯の拡散を止め、現地で処理をして放射性物質の含まれた灰はすべて東電に送るよう政府は指導すること。
五、一般家庭の電気料金の値上げは認めないこと。
六、政府は、沖縄・普天間基地の辺野古への移設を撤回し、無条件返還を実現すること。
七、日米の軍事行動一体化と米軍再編による全国の軍事基地の強化を中止すること。
以上
国会ピースサイクル到着の日
一〇一二年5月25日
経営者の《逆ギレ》をはね返し、働く者の権利を確立していこう
ブラック企業に立ち向かう仲間たちの集会
この間、日本の社会はさまざまな面で異常な事態に陥っているが、労資関係はその最たるものである。政治の行き詰まり・時代の閉塞の象徴であるが、待遇改善を求めて声を上げたら、経営者に逆ギレされた―こんな例は全国各地にある。
五月一八日、文京区民センターで、「声を上げたら《逆ギレ》ばっかり PARARTU ブラック企業に立ち向かう仲間たちの集会」が開かれた。
主催は、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)、ネットワークユニオン東京、首都圏青年ユニオン、新聞労連、全国一般東京南部などによる実行委員会だ。
集会の第一部「ブラック企業と闘う『激しい』現場報告」。 はじめに阪急トラベルサポートと闘う全国一般東京東部労組。
添乗員の仕事だが、社会保険もなく、有給休暇も、残業代さえ支払われなかった。二〇〇七年に組合を作り、いろいろな問題を解決してきたが、会社は組合を敵視してきた。そして委員長を週刊誌のインタビュー取材に応じたこと、それにもとづいて記者が労働条件のひどさを書いたことを口実に配員停止などの攻撃をしてきている。
つづいて、すき家と闘う首都圏青年ユニオン。
すき家は全国チェーンで社長は長者番付にのるほどの大金持ちだ。それも非正規労働者を食いものにしてのことだ。牛丼の帝王は団交が嫌いだ。組合員のいる仙台の店は震災を口実に閉鎖したままで、他の店で働かせるなどの嫌がらせを続けている。
全国一般東京南部。
語学学校のベルリッツでは賃金・労働条件の改善を求めて春闘でストをした。この正当な行為に会社は巨額の損賠請求してきている。
大阪教育合同労組。
大阪では、橋下大阪市長はまじギレのハシズムの嵐をおこしている。橋下の府知事の時代に負債が増した。橋下は失敗したのだ。いま大阪の教員給与は全国最低となった。それを公務員バッシングで乗り切ろうということだ。市職員への思想調査や組合事務所の撤去、職場内での通報制度などがそれだ。
沖縄県宮古の宮古毎日新聞は三〇年以上にわたってワンマン経営が続いてきた。そのドーカツ経営と宮古毎日新聞労組は闘っている。
第二部は「労働組合の権利について語ろう」と題して、水谷研次さん(都労委あっせん員)のお話。聞き手は新聞労連委員長の東海林智さん。水谷さんは次のように述べている。職場はひじょうにきつい状況となっている。むかしはそうでもなかった。一九八九年の連合結成以来、職場の交渉権が上に持っていかれてしまい、闘えない労働組合が日本中に満ち満ちている。労組のない、労組の弱い職場は大変だ。何とかしなければならない。労働委員会のことで言えば、かなり扱う案件が変わってきている。かつては、不利益取り扱い、支配介入などが多かったが、いま団交拒否が多い。労組を作っても、まず団交拒否だ。労働法の根本が問われている。労働法の基本は、労働条件の最低基準を作る労働基準法と、労組を作り、それを企業が認めて良好な労使関係を形成するという労働組合法の二つだ。そのなかで労働委員会は、労組の活動を保証する、セーフティーネットの役割がある。労組があるとないとでは大違いだ。経営者は労働条件を下げることもできるが、労組がある場合、労組と交渉しなければならない。ちゃんとした労組であるなら一定の歯止めをかけることができる。配置転換でも、その必要性、なぜその人なのか、労働条件の変更の程度などについてだ。しかし労組がない場合は、そうはいかない。労働委員会にも時々ひどい公益委員がいる。悪い命令には、意識のある労組は断固抗議するなどしなければならない。いい命令をださせれば活用できる。いま司法の反動化で、労組の街宣などのあたりまえとされてきた行為が、威力業務妨害などとされるなど労働基本権への不当な侵害が増えている。このままではいったい何をされるかわからないという状況だ。しかし、ドイツなどでは裁判所などがストライキ権をもたない労組は正当なものではないという見解を出している。
KDDIエボルバユニオン、郵政労働者ユニオンの非正規解雇裁判、がくろう神奈川から、闘いのアピールがあった。
全国一般全国協の平賀雄次郎委員長が、広く深く運動を拡大していこうとまとめの発言を行い、最後に集会宣言を確認した。
沖縄「日本復帰」40年
日米両政府による沖縄の軍事植民地化を打ち破れ
五月一五日は、沖縄の施政権の日本返還から四〇年となった。だが、在日米軍基地の七四%が集中し、軍事基地に起因する事件・事故により沖縄の人々の生命・人権が脅かされている状況に変化はない。そして、いま政府は、「中国脅威」論をあおりながら、日米軍事同盟の強化、沖縄のいっそうの軍事化を図ろうとしている。沖縄の負担は増し、生命・人権はまったく無視されようとしている。しかし、この間の、日米政府の理不尽なやり方に沖縄の人々の怒りは爆発し、普天間「県外」移設、辺野古新基地建設反対、高江へのヘリパッド建設反対、与那国島への自衛隊配備反対の声は沖縄の総意となっている。
野田内閣は、六月四日に内閣改造を行ったが、新しい防衛相となった森本敏は、辺野古移設が持論だ。そのための人事である。経歴は防衛大学卒業、航空自衛隊(一九六五〜七九年)、そののち外務省で情報調査局安全保障政策室長、野村総合研究所研究員などである。自民党の麻生太郎首相時代には防衛相補佐官で、安倍晋三など自民党右派と関係が親密だ。本来、自民党系の人物であり、辺野古移設強行の可能性が高い。それだけではない。あの事故頻発の危険な「欠陥軍用機」で名高い垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備を急いでいることである。それも野田首相は六月二三日の「慰霊の日」に合わせ、配備を県に要請することを検討しているというのである。まさに「日米両政府による沖縄の軍事植民地化」以外の何者でもない。
こうした事態が、「復帰」四〇年目の現実なのである。
五月一五日、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの呼びかけで、沖縄「日本復帰」40年を問う!抗議行動が行われた。
午後四時時からは、「復帰 周年記念式典」糾弾!首相官邸前抗議行動が展開され、雨の降りしきる中首相官邸前に一一〇名を超える人が参加して、抗議のシュプレヒコールを挙げ、「5・15声明」(別掲)やさまざまな要請書などを申し入れた。
六時半からの代々木公園・けやき並木での集会・デモには二〇〇名余りの人々が参加し、渋谷デモを行った。
5・15 声明― 沖縄「日本復帰」四〇年の現実を問う
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一九七二年五月一五日に沖縄は日本に復帰しました。しかし復帰に託した県民の願いは叶えられず、広大な米軍基地はそのまま居坐り続け、今なお、在日米軍基地の七五%が集中し、基地から派生する事件や事故はあとを絶たず、演習の激化や爆音で県民は危険にさらされています。
復帰とともに適用されたのは平和憲法としての日本国憲法ではなく日米安保条約でした。さらに、復帰後も沖縄の反戦地主だけを狙い撃ちにした、沖縄差別法の「公用地暫定使用法」(一九七一年一二月)、「地籍明確化法」(一九七七年五月)の制定と「米軍用地収用特別措置法」の改悪(一九九六年四月)による米軍用地の強制使用の継続だったのです。
沖縄県民はこの四〇年間、米軍基地の縮小・撤去そして日米地位協定の改定を求めて闘い続けてきました。
しかし県民の願いは日本政府に踏みにじられ続けています。
日本政府は復帰から四〇年の大きな節目の年に、沖縄を引き続き「基地の島」として強化するために、辺野古新基地建設、高江ヘリパッド建設、与那国への自衛隊配備を強行しようとしています。
辺野古への基地建設を許さない闘いは大きく前進しています。仲井真知事は、基地建設に反対する県民の揺るがぬ総意を受けて、二月二〇日と三月二七日に環境影響評価書に対して、重ねて「県内への移設は不可能である」として「県外への移設」を明記しました。もはや日本政府は辺野古への基地建設が不可能だと認識すべきです。
それにもかかわらず、日本政府は、辺野古へ移設しなければ普天間基地が固定化されることになると県民を脅迫し、辺野古への基地建設を推し進めています。さらには一二月頃に埋立申請強行画策しています。
一方、東村・高江のヘリパッド建設では、政府は二名の住民を「通行妨害禁止」で裁判所に訴え、司法の力を使って住民を弾圧しています。政府は住民の声を踏みにじり繰り返し工事を強行していますが、住民の会は阻止し続けています。さる三月一四日に、一名に対して通行妨害を禁止する不当な判決が出ました。住民の会は、ただちに控訴し、判決を恐れることなく座り込み闘争を継続して闘い続けることを決意しています。
他方、与那国への自衛隊配備は、沖縄を米軍と自衛隊が一体となった中国封じ込めの最前線化にむけての自衛隊基地の強化の一環です。政府は本年中にも用地を決定しようとしています。住民は町民投票も視野にいれながら、不屈に闘っています。
今年の五・一五 闘争はこのような米軍基地、自衛隊基地を巡る緊迫した情勢の下で闘われます。私たちは、復帰四〇年の節目の年に、日本政府が力づくで基地建設を強行し、沖縄をさらなる軍事植民地化として拡大・強化することを絶対に阻止しなければなりません。
日本政府による沖縄差別を許さず、沖縄と「本土」の連帯を強化して、共に日米両政府による沖縄の軍事植民地化を打ち破りましょう。
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック
KODAMA
朝日新聞のエセ革新性を怒る
去る五月五日は原発ゼロ社会の日となり、北海道の泊3号機が停止し、国内の原発五〇基すべてが停止した。翌六日の朝日新聞は編集委員竹内敬二氏が「段階的に減らしていくべきだと思っている」と述べるにとどまり、これまで朝日の主張に「原発ゼロにすべきだ」という言葉を一度も見たことがない。五月の五日、六日にわたって社説で「原発ゼロ社会」(上)(下)を載せた。
いかにして原発ゼロ社会にするかという内容かと思って読んだが見事に裏切られた。題名と異なり、原発の是非を問うものではなく、国会を中心に参加型で議論するというのがメインの手続き論にすりかえられていた。
それどころか「国民の多くは必ずしも急進的な脱原発を志向しているわけではないだろう」とその存続を指示するとも受け止められる表現さえ使っている。
一方で作家の高橋源一郎氏の「論壇時評」の言葉をひいて、いまある制度の延長線上でしか語れない政治の貧困を指摘し、「この国で起こったこと(福島第一原発事故のこと)から何も学ばなかったのだろうか」と「革新的ですよ朝日は」とカッコつけてみせる。
社説の隣の紙面はオピニオン面になっていて高橋氏や池澤夏樹氏、梅原猛氏などが社説とは異なる鋭い切り口で論じているが社説を書く人物はおそらくこれを読んでいたとしても無視している。
そうかと思うと同社説の中で「再稼働問題で政府を批判する橋下徹大阪市長」などと平成のファシスト、ポピュリズムに乗っかって国を乗っ取ろうとする動きにエールを送るようなことも書いてある。とんだタヌキの朝日新聞だ。社説の終わりに「とことん考え合うことのできる空間をどう作り出すか、明日の社説ではそれを論じる」とあった。
六日の(下)を読んでさらに驚いた。同じ面の一般の読者の「原発事故の刑事責任追及を」と題する東京電力を痛烈に批判する声が載っているのに比べ、社説(下)は気の抜けたサイダーみたいな内容であった。いわく原発について意見を言う「参加者は基礎知識を学んだうえで(被災者はそんなものを学ばなくても原発は悪だと身をもって知っている)、じっくり考え、議論し、行政や議会に尊重させるといった流れをとるが最終的な決定権はない。選挙で選ばれた議会に変わるわけではない」。このあたりは橋下氏の「維新の会」の手法にそっくりだ。
「市民参加型の熟議を支えるうえで、大きな役割を果たしているのが議会(国会だ)と結んでいる。3・11そして福島第一原発の事故(梅原猛氏は、文明災と呼んでいる)に際してほとんど何もできなかった国会や国会議員はもはや信用できない存在へとなりさがっている。高橋源一郎氏は、朝日新聞のオピニオン面で議員任せの間接民主主義は終わりにしてパソコンを使ってテレビで議員のいうことにイエス、ノーを一斉に押す直接民主主義で移行すべきだ(そううまくはいかないだろうが…)、テレビを男よりよく見る女性の政治への参加も促すと述べていた。
TPPの参加、不参加の議論が盛り上がった時には「慎重に対応すべきだが参加すべきだ」という論陣を張り、野田政権の消費税増税が打ち出された時も「国の財政を立て直すためには必要」という社説を載せた。
一九八七年五月三日の憲法記念日に朝日新聞阪神支局で小尻知博記者(当時二六歳)が夜八時過ぎに乗り込んできた男に散弾銃によって殺されてから二五年になる。まだ事件は解決していないが、このような記者根性を持って仕事をする人とは最近出会ったことがほとんどなくなった。みんなサラリーマン記者になってしまった。朝日新聞はもう一度みずからの社会的使命は何かに立ち戻って、襟を正すべきだ。 (R・T)
講演会「さようなら原発」で考えた
五月二六日の講演会で講師の金子勝さんは演壇の前に立って大きな身振り手振りで原発の危険性と原子力ムラの犯罪性を告発していた。金子さんのブログを覗いてみたら「経産省・電力による国家転覆計画が始まりました。東京電力の総合特別事業計画がこのまま実施されれば、この国の根幹を腐らせていきます。すでに、この計画が放つ異常な腐臭が漂っているのに、政治家もメディアも鼻づまりなのかもしれません」「普通のサラリーマンが酔っ払い運転をして人身事故を引き起こせば刑務所入りですが、福島第一原発事故という重大事故を引き起こした社会的犯罪企業であるにもかかわらず、経営者を交替させただけで経営責任も問われません。貸し手責任も一切問われません。これは、かつての銀行の不良債権問題とそっくりの構図です。この国は、新たな『失われた三〇年』になりかねない危機的状況にあります」とあった。この調子で、原子力委員会新大綱策定会議でも推進派と遣り合っているのであろう。いろいろなところでの動きを総合すればかなりおおきなことができる。脱原発の取り組みもこれからだ。 (U)
せ ん り ゅ う
札束が動力源でうごく物
野田が出て第二自民の顔が出た
公約は選挙終わればおじゃま虫
死にてえと百に近づく口達者
フクシマのヒバク者またも忘れられ
ヽ 史
複眼単眼
生活保護費支給削減ではなく憲法25条の実現を
自民党の片山さつき参院議員がお笑いタレント「次長課長」の河本準一さんの母親の生活保護受給問題を暴露し、批判したことを契機に、河本が袋だたきにあい、これに便乗して政府部内で生活保護費の支給水準の引き下げの検討が始まった。
片山さつき議員は自民党の「生活保護に関するプロジェクトチーム」のメンバーで、生活保護制度の改悪を企てる中心人物の一人だ。
これに乗って小宮山洋子厚生労働大臣らは、今秋に政府が策定する予定の「生活支援戦略」の柱に「生活保護制度の見直し」「生活保護給付適正化」を打ち出す方針だ。
野田内閣が企てている消費税増税の正当化に使っている「社会保障と税の『一体改革』」は、まやかしの少子高齢化社会論(胴上げ型から、騎馬戦型、そして肩車型へなどという)の進行などを口実に「医療」や「介護」、「年金」などの見直し、改悪とあわせて「生活保護の見直し(適用の適正化、給付基準のひき下げ等)」をねらうものだ。
河本はこの「財源論」のための絶好のスケープゴートにされ、「不正受給」追及でバッシングされ、不正受給が社会に横行しているかのように宣伝される材料にされている。現在、生活保護受給者は二〇九万人で、給付総額は三兆七千億円に達しており、近年、これが増加傾向にあるとして、野田内閣による行政改革のターゲットのひとつにされている。しかし、これは五月二五日に発表された「生活保護問題対策全国会議」の「緊急声明」で指摘されているように、「(日本では)利用率は一・六%にすぎず、先進諸国(ドイツ九・七%、イギリス九・三%、フランス五・七%)に比べてむしろ異常に低い」のである。このことは雇用制度の崩壊や高齢化の深刻な進展の中で、本来、生活保護が必要な人びとが大量に放置されている可能性を示している。現に、餓死や孤独死がメディアの報道で相次いでいる。この河本バッシングで、生活保護適用申請対象者の萎縮化傾向が大幅に広がる可能性があることは深刻な問題だ。
実際、河本問題はそんなに悪質なのか。上記の「緊急声明」は次のように指摘している。
「本来、生活保護上、扶養義務者の扶養は、保護利用の要件とはされていないこと、成人に達した子どもの親に対する扶養義務は『その者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせた上で、余裕があれば援助する義務』にすぎないこと、しかも、その場合の扶養の程度、内容は、あくまでも話し合い合意をもととするものであること、もし、扶養の程度、内容が、扶養義務の『社会的地位にふさわしい生活を成り立たせ』ることを前提としても、なお著しく少ないと判断される場合には、福祉事務所が、家庭裁判所に扶養義務者の扶養を求める手続きが、生活保護法七七条に定められていることなどの扶養のあり方に関する正しい議論がされないまま、一方的に『不正受給』がおこなわれているかのごとき追及と報道がなされている」と。
憲法第二五条はこう書いている。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」
雇用を破壊し、医療保険制度を破壊し、貧困や格差を増大させてきた小泉改革以来の新自由主義政策の抜本的見直しによる、誰でもが最低限度の文化的生活を維持できる社会の創造なしに、弱い者いじめの生活保護費の削減を企てるなどはもってのほかで、最悪だ。 (T)