人民新報 ・ 第1296号<統合389号(2012年12月15日)
  
                  目次

● 脱原発、集団的自衛権反対、格差拡大をゆるすな  右翼・改憲・戦争政権を阻止しよう!

● 宇都宮けんじさんが訴え   東京から「人にやさしい政治」を作り出していこう

● 労働者・労働組合こそが脱原発運動を担おう   脱原発労働者実行委員会が結成総会

● NUCLEAR FREE NOW さようなら原発アクション   東京・福島で成功させよう

● 日本航空の不当解雇撤回をめざして、「勝利をつかむ集会」に多くの労働者が結集

● 労働弁護団総会  労働法制、労働者の権利などについて諸決議があげられた

● 映 評  /  「菖蒲(ショウブ)」( 09 ポーランド )

● KODAMA  /  反原発ハンスト

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  都知事選が実現した統一候補の画期的な意義

● 冬季カンパの訴え  労働者社会主義同盟中央委員会






脱原発、集団的自衛権反対、格差拡大をゆるすな

            右翼・改憲・戦争政権を阻止しよう!

 現在、総選挙と東京都知事選が闘われている。この結果がどうなるか、それが日本政治の中期的な様相を決定する。自民党政治にNOを突きつけ政権交代から三年余、野田民主党はアメリカと財界の圧力の下に自民党政治へと復帰し、安倍自民党は民主党との違いを出すためにいっそう反動化し、その右に立つ石原・橋下の維新の会という構造で日本政治の右傾化を加速させた。かつての保守二大政党による安定的な政治の実現という支配層の狙いとは逆に、政党分立・超多党化と首相が一年ごとに替わるという世界にもまれにみる混迷状況を生み出した。小泉の新自由主義的な規制緩和による格差拡大・貧困層の拡大と日米同盟強化と靖国神社参拝などによる近隣諸国との関係の緊張、その後をついだ安倍、福田、麻生などの末期症状を示した自民党政治から離れて、社会福祉の充実や東アジア共同体、総体としての「国民の生活が第一」という民主党のマニフェストに多くの人びとが一定の期待をかけたことで二〇〇九年夏の政権交代となった。しかし、その後の政治は、まれに見る失政の連続となった。日米安保体制の下、独占資本の利益のため、官僚主導の政治の壁は大きく、民主党はそれに呑み込まれた。民主党のマニフェスト自体が選挙向けのものであり、民主党の中心は、松下政経塾出身の新自由主義、保守主義、親米派によってしめられていた。かれらは、政権につくと自民党政治と変わらない政策を強引に推し進めた。
 政権交代が、民衆自身の力によって実現したものではなく、民主党への幻想に基づく支持によるものであった。期待は大きかったが、政権交代の成果の破綻もまた容易に到来することになった。現在の政治状況の背景には、日本が直面する危機的な状況の大きさにある。それは日本の内外の基本構造をそのままにしたままでは、決して手解決できないようなものである。

経済バランスの変化

 わが国のいわゆる失われた一〇年は、なおも続いている。一一月末、経済協力開発機構(OECD)は日米欧などのエコノミック・アウトルック(経済見通し)を発表しが、そこでの先進国の二〇一三年の成長率の予測はすべて下方修正された。アメリカの一三年の成長率は前回予測から〇・六ポイント下げて二・〇%、ユーロ圏はマイナス〇・一%で二年連続のマイナス成長だ。日本は一・五%から〇・七%に引き下げられたが、それは今年後半に輸出や生産が落ち込み、来年は持ち直し傾向になるものの、復興需要の縮小などがあるためだ。
 同じOECDの「二〇六〇年までの長期経済成長見通し」(OECD加盟三四カ国及び非加盟の主要経済八カ国を対象とした新しい長期経済見通し)では、日本の状況はもっと厳しいものになると予測されている。OECD東京センターの「今後五〇年で世界経済のパワーバランスは劇的に変わる」は次のように書いている。「最新のOECD報告書によると、今後五〇年、躍進を遂げる新興経済が世界のGDPの大部分を占めることとなり、世界経済のパワーバランスは劇的に変わることが予測されます。これまで私たちが慣れ親しんだパターンとは異なる長期的経済成長を辿ることで、各国経済の世界に占める割合は大きく変化することになります。現在トップに君臨する米国は、早くて二〇一六年にも中国に追い超され、いずれはインドにも追い越されるでしょう。さらに中国とインドを合わせれば、まもなくG7全体の経済力をも追い超し、二〇六〇年にはOECD加盟国全体を追い越すことが予測できます。急速な高齢化が進むユーロ圏や日本といった現在の経済大国は、若年層が人口を占める新興経済のインドネシアやブラジルのGDPに圧倒されることになります」。この予測がその通りになるかどうかはわからないが、深刻な事態であることには違いない。日本の状況には、急速に進む人口減少がある。社会保障制度の縮小、増税、少子化、無縁社会化、自殺者の高止まりなど、一握りの富裕層がますます豊かになる一方で、人びとの生活が成り立たなくなっていくことの証左だ。こうした状況で、民主、自民、公明の三党は、大衆収奪そのものである消費税増税法を一致して成立させたのである。

政治右傾化の競争

 総選挙の中では、保守・反動政党は、外交・防衛問題について右傾化競争を激化させている。野田佳彦は、集団的自衛権の法的解釈見直しに言及し、安倍晋三は「自衛隊の国防軍化」を公約に掲げ、石原慎太郎にいたっては「核保有」を叫んでいる。そして、改憲、憲法の破壊を狙っている。これらの政治家が政権を担当することになれば、東アジアの情勢は急激に緊張し、戦争の可能性も出てくる。この状況にアメリカの一部でも危惧するような意見も出始めている。リチャード・アーミテージと並んでアメリカの対日政策の要を担う位置(いわゆるジャパン・ハンドラー)にいるジョセフ・ナイは、英フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿した「日本のナショナリズムは衰退の兆候」で、安倍首相が誕生して日本は右傾化するが、それは衰退を意味し、そして日本は内向きになり、アジアが不安定化するとしている。同様な意見は、ワシントン・ポストなどにも見られる。
 しかし、一方で、アメリカは、日中間の尖閣(釣魚島)諸島の問題について、一一月二九日、上院本会議で、尖閣諸島について、「尖閣諸島の主権に関して特定の立場を取らない」との姿勢を堅持するとしながら、日本の施政権下にあることを認め、「日米安保条約第五条に基づく責任を再確認する」と宣言する条項を、二〇一三会計年度国防権限法案に追加する修正案を全会一致で可決した。下院での可決、大統領が拒否権を発動しなければ成立する。野田、安倍、石原をはじめとする勢力はこのことで勢いづき、強硬姿勢を強めている。こうしたやり方でアメリカは、日本をけしかけるとともに、中国などに向けては、日本の「暴走」に危惧を抱いていることをアピールしている。これは、日中など東アジア諸国の間に摩擦を起こし、それぞれの国がアメリカとの関係を強め、そのことによってアジア・太平洋地域における覇権的影響力を拡大するというオバマ政権の「アジア回帰」路線に基づくものだ。アメリカは、日本に対しては、軍事戦略上の任務を負わせるとともに、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)へ抱え込むことによって、日中韓の経済的連携を分断しようとしている。
 外交的懸案は、対話による平和的解決が必要である。関係諸国それぞれのナショナリズムの加熱を抑えることこそが、戦争熱を冷まし、理性的に物事に対処することになるのであり、わが国は、積極的主導的に憲法九条の精神を今こそ発揮するべきなのである。

右派勢力に打撃を

 アメリカの新覇権主義的な狙いとそれを忠実に実行することで支配を固めようとする日本の反動的な勢力こそが、日本と東アジアに破滅をもたらすのだ。
 そうしたことを許さないために総選挙と都知事選に勝利しよう。
 右派勢力の国会占拠を許さず、社民党や共産党などの生活と平和、憲法を守る議席を確保すること、そして総選挙後には新しい情勢について論議し、真剣にかつ本格的に右派政治と対抗する政治勢力の形成のために奮闘すべきときである。


宇都宮けんじさんが訴え

      東京から「人にやさしい政治」を作り出していこう


 一一月二九日告示、一二月二六日投開票の都知事選は、石原都政の継続か否かが最大の焦点となっている。
 幾人ものが立候補しているが、知事選はマスコミ報道でも石原シンタロウに後継指名された猪瀬直樹副知事と、宇都宮けんじさんの対決の構図となってきていると報じている。

 猪瀬は、東京都知事選に出馬を表明したが、マニフェストでは、「強者が弱者を、余裕のある人がない人を扶(たす)ける。健常者が障害のある人を扶(たす))け、女性が働きやすい職場をつくる。互いに助け合う東京をみんなでつくろう」「周産期医療およびリスクの高い小児医療の充実を図ります」「二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック招致」などの政策を掲げた。しかし、出馬会見で、「東京都民の安全と安心を守るために、それだけではなく、日本の国そのものを東京から支えていく」とし、「決断が大事です。国は何も決められない。しかし、東京は、決断し、そして問題があれば突破し、そして解決すると。『決断、突破、解決』、この力を東京国が示すことによって、日本を変え、一三〇〇万人の東京都民の安全と安心を築く。さらにはこの首都圏全体、千葉、埼玉、神奈川からも東京都に通っています。この首都圏全体のグレーター東京を考えながら、この国を支えたいと思っています」と述べている。猪瀬は、石原との二人三脚で都政を行い、石原の福祉破壊、日の丸・君が代強制処分などの政策を支えてきた。そして、「石原カラー」を継承する。 猪瀬は、「石原都政最大の失敗」とされる新銀行東京問題では、改革が進んでいるとして争点回避を狙っている。「被災地復興」を掲げての五輪招致は、石原都政継承そのものである。そして、原発問題では東京電力に東電に経営改革をおこなわせるよう要求しているなどとの言葉で、原発否定はしない立場である。
 総選挙では維新の会から石原が比例東京ブロックから出馬している。猪瀬が都知事に当選すれば、東京都政は石原らの国政での日本維新の会や安倍自民党などの右翼的な政権の暴走の重要な支柱となることは間違いない。
 
 宇都宮さんへの支持は広がっている。社民党、共産党はもちろん未来の党、生活者ネットなどが応援している。宇都宮さんは、都民の声に耳を傾ける都政の実現をめざしている。
 東京を変え、日本を変えよう。
 東京から新しい人にやさしい政治を作り出していこう。


労働者・労働組合こそが脱原発運動を担おう

        
 脱原発労働者実行委員会が結成総会

 一一月二〇日、脱原発社会をめざす労働者実行委員会の結成総会が開かれた。
 同実行委員会を構成する全日本港湾労働組合、国鉄労働組合、全日本建設運輸連帯労働組合、全国一般労働組合全国協議会、東京清掃労働組合、全水道東京水道労働組合、東京都労働組合連合会など七労組・団体は、脱原発運動に取り組むとともに、さらに多くの労働者・労働組合が運動に参加することをよびかけてきた。この八月一二日には、小出裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)の講演会に千名をこえる人びとが結集して脱原発社会の労働者集会を成功させた。

 結成総会では、はじめに、全日建連帯労組の長谷川武久委員長が、開会のあいさつ。労働者が脱原発運動を担わなければならないし、労働組合は持続的に運動を支える態勢を作るべきだ。しかし、現実には、大労組である電力総連や電機連合などのように原発推進派が多数だ。八月の労働者集会の成功を基礎にさらに労働者の脱原発運動を大きく広げていかなければならない。被災者は非人間的な生活を強いられている。労働運動は被災者支援に真剣に取り組まなければならない。そして被曝労働者の問題である。被曝労働者は原発関係、福島事故収束作業の労働者だけではない。放射性物質が飛散するなかで多くの労働者が被爆者になっている。労働者のための運動をやらなくてなにが労働組合だ。そして、これからの都知事選、総選挙の中でも原発をどうするかが問われているが、はっきりと原発に反対する意志を表そう。
 つづいて、全港湾の伊藤彰信委員長が、結成経過と当面の組織・活動計画の提案をおこなった。八月に「脱原発社会をめざす労働者集会」を開催し、その後、集会の総括、会計処理を行うとともに、集会基調にもとづき活動を行う継承組織をつくることを確認した。継承組織に関する相談会を開催し新たな実行委員会を結成して、当面、来年三月にむけて活動を行うこととした。新実行委員会は、労働者集会を開催した七労組・団体が呼びかけ、「8・12集会基調の趣旨に賛成する労働組合」で構成する。当面の活動計画としては、第一に、さようなら原発一〇〇〇万人アクションの来年三月の取り組みー三月九日〜一一日の全国一斉アクション(東京では三月九日に明治公園で集会)と三月二三日に被ばく二周年の福島集会(福島市・吾妻体育館)の成功のために闘う。第二には、福島とつながる映画上映会「原発の町を追われて」〜避難民・双葉町の記録(一二月一四日)に取り組む。第三に、来年の二月一五日に、脱原発社会をめざす労働者集会(東京・日本教育会館大ホール)を開催する。第四に、脱原発映画の上映を東京以外の地方でも取り組む。第五に、引き続き「さようなら原発一〇〇〇万人署名」に取り組む、第六には、フォーラム平和・人権・環境や被曝労働ネットワークなど他団体と協力して、労働現場での放射線被曝、除染作業などの問題に取り組む。
 以上の提案を受けて質疑がおこなわれ、参加者は当面の方針を確認し、労働者実行委員会は正式に発足した。

 ひきつづいて第二部の記念学習会では脱原発法制定全国ネットワーク事務局長の海渡雄一弁護士が、「脱原発基本法のめざすもの」と題して講演をおこなった。


NUCLEAR FREE NOW さようなら原発アクション

              
東京・福島で成功させよう

 一二月一五日から一七日まで、福島県・郡山市の「ビッグパレットふくしま」(福島県産業交流館)で「原子力安全に関する福島閣僚会議」が日本政府の主催、国際原子力機関(IAEA)の共催で開かれ、IAEA加盟一五四カ国の代表らが参加する。日本政府は、「本閣僚会議は,国際的な原子力安全の強化に貢献することを主な目的としています。本会議は、東京電力福島原子力発電所事故から得られた更なる知見及び教訓を国際社会と共有し,更に透明性を高め,そして、国際原子力機関(IAEA)行動計画の実施を含む原子力安全の強化に関する国際社会の様々な取組の進捗状況を議論する機会」にするといっている。だが、IAEAは、「原子力の平和利用」のための国際機関であるとされているが、その発足は、アメリカの核戦力のためのプルトニウムやウランなどの生産を維持する機能を果たしてきたものでる。原発と核兵器は表裏一体のものであり、石原慎太郎などの核武装のための原発推進論はそのあからさまな表現である。
 福島では、いまだなお県民の多くが現に放射線被曝による健康障害の不安に苦しんでいる。それだけではない。政府の収束宣言とは逆に、福島第一原発はさらなる爆発事故の危険性もまったく消えていないのである。IAEAは、その福島に事務所を設置し、そこを拠点に福島県立大学と共同して被曝と除染の調査・研究おこなうとしている。そして、「原子力安全に関する福島閣僚会議」なるものを開催するというのだ。 
 野田政権とIAEAによる原発政策推進のための国際会議である福島閣僚会議でいったい何がなされようとしているのか。日本政府とIAEAは、原子力問題については秘密主義でことをおこなってきたし、そうした対応を続けていこうとしている。「原発いらない福島の女たち」などは、一四〜一六日の三日間、福島市と郡山市で抗議行動を展開する。一五日の閣僚級全体会合開会に対しては会場前でさまざまな行動を展開する。

 NUCLEAR FREE NOW さようなら原発世界大集会を成功させよう

 一二月一五日から一七日にかけて、日本政府と国際原子力機関(IAEA)が「原子力安全・福島閣僚会議」を福島県郡山市で開催する。これに対抗してNUCLEAR FREE NOW実行委員会の主催、さようなら原発一千万署名 市民の会、首都圏反原発連合の呼びかけで、一五日と一六日に東京・日比谷と福島・郡山で同時参加型アクション「NUCLEAR  FREE  NOW」が行われる。

 東京では一二月一五日、午後一時より日比谷野外音楽堂で「さようなら原発世界大集会」が開かれ、「さようなら原発」の呼びかけ人の鎌田慧さん(ルポライター)、内橋克人さん(評論家)、澤地久枝さん(作家)からの発言、田中優子さん(法政大学教授)、福島の被災者の大賀あや子さん(ハイロアクション福島原発四〇年実行委員会)の発言、そして、海外ゲストのアンドレイ・オザロフスキさん(リトアニア/環境NGO・ベローナ)、モニカ・ゾッペさん(イタリア/環境NGO・レーガンビエンテ)の発言があり、集会終了後の二時半からは、「NUCLEAR FREE NOW 世界大行進」が出発する。総選挙と東京都知事選の前日、脱原発の大きな力を表現し、アピールしていこう。


日本航空の不当解雇撤回をめざして、「勝利をつかむ集会」に多くの労働者が結集

 日本航空(JAL)は、二〇一〇年一二月三一日に乗員、客室乗務員の大量解雇を強行した。争議団が結成され、東京地裁への提訴がおこなわれた。しかし、二〇一二年、乗員は三月二九日に、客室乗務員は翌三〇日に、それぞれ請求棄却の不当判決が言い渡された。
 政府はJALが経営破綻したとして、「再生計画」にそって人員削減計画や利益計画を実行させてきた。そして、二〇一〇年一二月九日に解雇通告がだされた。しかしその時までに、希望退職者数はすでに一、六九六名(削減目標・一五〇〇名)、営業利益は一、四六〇億円(利益目標・六四一億円)となっていた。こうした中で一六五名もが整理解雇された。労組の活動家などが狙い打ちに首を切られたのである。この不当性は、最高経営責任者の稲盛和夫会長自身が、「その時の収益力から誰が見ても雇用を続けることに不可能ではないと思った」といっている。このことからも不当性は裏付けられている。
 整理解雇においては、四要件(会社を維持するために人員整理を行う経営上の必要性があること、解雇を回避するための努力がなされていること、解雇をされる人間の選定基準が妥当であること、事前に従業員側に対し十分な事情説明があること)の法理が言われるが、JALの場合、その第一の「経営上の必要性」がなかったことは明らだ。「経営上の必要性」は、会社の合理化の必要上やむを得ないような理由が現に存在しなければならないということで、具体的には、売上げや業務量の低下の程度、資産や借入れの状況、新規従業員の募集、採用の程度などから総合的に判断される。
 しかし、労働法制の改悪と司法の反動化の中で、近年は、企業の維持存続が危殆に瀕する程度に差し迫った状態になくても、経営上の合理的な理由が認められれば足りるとされる傾向にある。だが、それでも、今回の解雇は異常であり、それを認めた東京地裁の判決はきわめて不当なものである。JAL闘争は、JAL解雇労働者の問題であるだけでなく、こうした解雇が認められてしまうことは、すべての労働者の雇用と生活の権利に重大な関係を持つものであり、広範な労働者・労組・市民の力を結集して絶対に勝ち抜かなければならないものである。

 一二月六日、東京高裁でJAL不当解雇事件の控訴審(乗員)第一回目の口頭弁論が開かれた。
 午後六時半からは、みらい座いけぶくろで、六六〇名が参加して「JAL不当解雇撤回 12・6控訴審勝利をつかむ大集会」が開かれた。
 はじめに関西・東海を巡った原告団のキャラバン隊が到着・登壇して、国労近畿地本の園秀樹委員長が報告した。
 全労協の金澤壽議長が開会挨拶。今、総選挙が闘われているが、一部の労働者の政党を除いて、右傾化を競っている。労働法制も改悪され、維新の会の橋下などは最低賃金制をやめようなどと言い出し、公務員削減などの「実績」を誇っている。いま、労働者にはリストラの嵐が吹き荒れているが、既成の大労組は闘うどころか逆に会社の側に立っている。そうしたなかでのJAL闘争だ。この闘いを前進させ、勝利させるために、支援の輪を大きく広げ、JAL闘争を支える会の会員を増やして、闘いぬける体制をつくりあげることがなによりも大事だ。
 つづいて、上条貞夫争議団弁護団長が、「高裁段階の展望」と題して報告。今回のJAL解雇では、従来から日航の社長、副社長が管財人の代理人、配下の日航労務機構(客室本部、運航本部)を通じての一貫した不当労働行為政策が貫かれてきた。会社更生手続の中に、構造的に組み込まれた不当労働行為政策という整理解雇の中でも異常なものだ。その例をあげてみる。会社側は、辞めさせようと狙った組合員に対して、乗務外し(仕事取り上げ)の圧力の下に退職強要をしたり、年齢が高いから「定年までの企業貢献が少ない」として選別解雇したり、安全運航のため必要な病休を理由に選別解雇したりした。年齢が高い従業員とは経験豊富なベテランということだ。身体の調子が悪いときにはこれまでの航空事業では無理やりにも休ませたものだった。それは、事故を予防し安全な運行をおこなうためのものだ。しかし会社は、利益優先という経営方針の下に、解雇を強行した。このことは安全という面で非常に危険な状況を作り出すものとなった。また、スト権投票に露骨に介入して、労使交渉を不当労働行為で切崩すことをおこなった。こうしたことで労働者の側がストを背景に経営側に迫るという構図が崩され、経営側との力関係はきわめて不利になった。そして、今年三月の東京地裁の判決で、乗員・客乗の二つの不当判決が出された。この地裁二判決には重大な誤りがある。第一には、「会社更生手続として行われた解雇」だから正当だ、という偏見から結論を先に出して、理由を無理にこじつけていること、第二には、確立された判例法理とくに解雇の必要性判断を、頭から否認したことである。
 整理解雇に関する闘争では、整理解雇の四要件を支持する判例の本流とそれを否定する逆流が交互に現れているが、JAL地裁判決は逆流の最たるものだ。これまでの労働運動の実績では、不当判決を現場の闘いで覆した例も多くある。いまの厳しい情勢でのJAL闘争は、人権・憲法の闘いとして実現していかなければならない。 
 つづいて、劇団「げんこく」による構成劇『必ず勝つで、ごJAL』は、会社のやり方を暴露、皮肉るもので会場は大きな笑いに包まれた。
 連帯挨拶は、JAL闘争を支える静岡の会の増田和明事務局長、新日本婦人の会の平野恵美子男女平等働く女性部長、日本乗員組合連絡会議の馬場高浩LEG委員長が行った。 都知事選を闘っている宇都宮けんじ候補が登壇し、共に闘う決意を表明。宇都宮さんは、弁護士として、これまでもJAL闘争をともに闘ってきた。宇都宮さんの登場とあいさつに参加者は大きな拍手を送った。
 IFALPA(国際民間航空操縦協会連合会)からのビデオレターが映し出され、国際的な支援の輪が広がっていることが紹介された。
 国民支援共闘会議の津恵正三事務局長が当面する行動の提起をおこなった。第一には、口頭弁論期日の取り組みと裁判所前の宣伝行動だ。今日に引き続く乗員の第二回口頭弁論期日は来年の二月七日となった。客乗裁判第一回口頭弁論期日は一二月一四日、不当労働行為事件裁判は、来年一月二八日であり、これらの日にはいずれも裁判所前の宣伝行動と報告集会をおこなう。第二には、東京高裁宛要請署名運動で、団体署名では年内に目標の一万団体達成をめざし、個人署名では年内に目標の一〇〇万筆に迫る回収を行い、一月の目標達成をめざす。第三には、大きな世論を築き、日航、高裁、政府を包囲する行動だ。全国一斉駅頭宣伝行動、日航本社前宣伝行動、原告団主催銀座デモなどを展開し、一月一九日に「提訴二周年宣伝行動・デモ」をおこなう。こうした課題にしっかりと取り組み、闘いの勝利に向かっていこう。
 支える会の柚木事務局長は、闘争勝利のためには広く厚い支援・共闘組織が不可欠であり、支援する会への入会と会費納入を訴えた。
 山口宏弥乗員原告団長と内田客乗原告団長は闘いの勝利に向けて決意の表明をおこなった。
 全労連の大黒作治議長が閉会のあいさつで、JAL控訴審での闘いを進め、また政治の反動化に抗して総選挙・都議選での勝利をめざそうと述べ、最後に団結ガンバロウで、闘争をともに進める決意を確認した。


労働弁護団総会

     労働法制、労働者の権利などについて諸決議があげられた


 一一月九日と一〇日、日本労働弁護団の第五六回総会が開催され、「有期労働契約に関する改正労働契約法の正しい運用とさらなる有期労働契約規制を求める決議」「『過労死防止基本法』の早期制定を改めて求める決議」「均等・均衡待遇の原則を実現するパートタイム労働法改正を求める決議」「JAL整理解雇事件の控訴審での適正な解決を求める決議」「大阪市における職員・職員組合バッシングに抗議し、職員の政治活動の自由・労働基本権の保障を求める決議」「電力会社気事業者に原発労働者の安全確保の直接責任を課す政令改正を求める決議」「公契約法及び公契約条例の制定を求める決議」の七つの決議と「団体行動権を侵害する仮処分、損害賠償請求、刑事弾圧に抗議する声明」(別掲)が採択された。
 なお総会では、宮里邦雄弁護士が退任し、鵜飼良昭弁護士が新会長に選任された。

団体行動権を侵害する仮処分、損害賠償請求、刑事弾圧に抗議する声明

 憲法二八条は、労働基本権の一つとして団体行動権を保障しており、団体行動権の中心はストライキ権である。使用者に対して劣位の立場に置かれる労働者が団結して、ストライキなどの団体行動を行うことによって、使用者との対等な地位を確保し、その生存権を守ることができるのであるから、団体行動権が極めて重要な基本的人権であることは疑いないことである。

 ところが、最近、労働組合の争議行為に対して、裁判所が、使用者の申立を受けて、抗議行動や街頭宣伝を差し止める仮処分決定が発令される例が報告されている。また、使用者に肩入れするかのような裁判所の姿勢の変化をみて、使用者が、労働組合のホームページに記載された記事や取引先への要請行動を名誉毀損、営業妨害だとして損害賠償請求をする事例、ストライキを行った労働組合及び組合役員に対する損害賠償請求をする事例が増えている。さらに、団体交渉や工場・職場での抗議行動を口実にした刑事弾圧事件も立て続けに起こっている。

 また、津地方裁判所による争議行為の差止めを認めた仮処分決定がある。二〇一二年八月二二日、津地方裁判所は、労働関係調整法による調整手続きを無視し、無審尋で、決定理由も付さずに、三重一般労働組合及び同労組鈴鹿さくら病院分会に対して、「平成二四年八月一七日付けストライキ通告書に基づく争議行為をおこなってはならない。」との仮処分決定を下した。

 争議行為等の団体行動は、所有権や契約の自由などの市民法秩序と緊張関係に立つものであるが、憲法が団体行動権を保障していることにより、正当な団体行動を行った労働者及び労働組合について、刑事免責及び民事免責が認められる。これは、日本及び全世界の労働者が長い闘争の結果、闘い取ってきた基本的人権であり、尊重されなければならないものである。裁判官を含む国家公務員は日本国憲法を遵守することを誓約しているものであり、裁判所は憲法と法律を守るための国家機関である。裁判所みずから憲法上の権利を否定するかのような職権行使をすることは許されない。

 日本労働弁護団は、労働者・労働組合の権利を擁護する法律家団体として、裁判所による不当な規制に強く抗議し、裁判所、警察、使用者に対し、労働基本権の尊重を求める。

二〇一二年一一月一〇日
 
日本労働弁護団総会


映 評

  
  「菖蒲(ショウブ)」 

           09 ポーランド

      監督・脚本 …… アンジェイ・ワイダ
      原作 …… ヤロスワフ・イヴァンシュキェビッチの同名小説「菖蒲」
      主演   マルタ・女優 …… クリスティナ・ヤンダ
            ボグシ     …… パベウ・シャイダ


 ワイダの作品「大理石の男」(77)、「鉄の男」(81)の撮影カメラマンだったエドヴァルト・タウォシンスキは、この作品の撮影中に病死してしまう。その後、ワイダはこの映画の形態を大きく変化させた。作品は三つのパーツに分けられる。一番目、本来の原作の物語(劇映画)、二番目、夫のカメラマンの最後の日々を語る妻・女優についてのドキュメンタリー、少し注釈を加えておくとワイダ作品に頻繁に登場する女優クリスティナ・ヤンダの夫はワイダ作品のカメラマンで映画製作上の盟友ともいうべき存在だったのだ。三番目の部分、この作品についてのワイダ演出風景(いまはやりのメイキング映像―撮影風景といって言いだろう)。
 こういった作品構成が成功しているのか。好きかそうでないか。その評価はあとで述べることとする。原作「菖蒲」はイヴァンシュキェビッチの小説でワイダ作品では「白樺の林」(70)、他の監督では「尼僧ヨアンナ」(60)が映画化されている。
 映画作品としての「菖蒲」は大変複雑な構成になっているので、原作の内容を少し紹介する。ポーランドの小さな町に住む医師と妻のマルタは第二次世界大戦中のワルシャワ蜂起で二人の息子をなくしてしまった。その後年齢を重ね、重い病にかかった妻に夫は本当のことを告げることができないでいた。マルタのことを心配してワルシャワから女友達がやってきた。その友達はマルタをつれて川辺のカフェに連れ出した。そこで、マルタは美しい少年ボグシを見かけ、過ぎ去った若き日々を思い出して心をときめかせる。その後再びボグシにあったマルタは、この地域の祭りに欠かせない菖蒲を水の中から取ってきてもらうように懇願する。だがそこで事故は起こった。今までのワイダの作品の主なものは観てきたつもりだったが、今回の作品はどうしても乗れない。もちろんワイダが作り出す映画がすべて素晴らしいものであるとは思わないが、何か肩透かしを食らったような気持ちになる。ワイダの作品だから観るのだという逆転現象が起こってしまっているような気がする。そしてこの作品はやはり推薦する気にはなれない。気を取り直してアイジェイ・ワイダの業績とポーランドの歴史をふり返ってみよう。
 「地下水道」(56)、「灰とダイヤモンド」(58)は第二次世界大戦中の対独レジスタンスの戦いを描いた珠玉の作品であり、「灰とダイヤモンド」においては反スターリニズムの萌芽さえ見てとれた。一九八〇年前後のワレサ委員長率いる自主労組「連帯」の闘いと連動した「大理石の男」、「鉄の男」などの作品は世界に広がっていった。ヤルゼルスキ大統領の戒厳令公布などでワイダも一時幽閉された。そして、第二次世界大戦中に多くのポーランド人将校がソ連領内カチンに連行され虐殺されたカチンの森事件も〇七年に「カチンの森」として映画化された。この頃にはワイダ監督に映画製作上の政治的な制約はなくなっていたはずだが、「カチンの森」で政治的な意義付けができる作品はもう撮り終えたのだろう。最も「白樺の林」「ヴィルコの娘たち」のように原作に基づいた文芸映画もワイダの得意とするところだった。
 私は日本の映画監督でワイダと同じような姿勢の映画監督を知っている。(スケールは小さいが)熊井啓である。「帝銀事件・死刑囚」「下山事件」「地の群れ」(井上光晴原作)など現代史に密接に関連する作品群のほかに、「忍ぶ川」「お吟さま」「千利休」など文芸映画路線の映画も多く作っている。作家はさまざまな顔・側面を持っているという証しでもあるのでしょうか。
 私は四〜五年前にポーランド人留学生に会ったことがある。わたしは彼女にありったけのワイダについての知識を語った。すると彼女は「あなたはワイダ以外のポーランドの映画監督を知らないのですか」と逆に聞かれた。当然のことながら私はこう答えざるを得なかった。「いや、まったく知りません」。その程度の知識なのである。ポーランドの歴史について知っているようでほとんど何も知らなかった。恥いるばかりだった。秀作「早春」を撮ったイエジー・スコリモフスキーはポーランド人だったか。イエジー・カワレロウィッツは何人だったか実にあやふやです。アンジェイ・ワイダは紛れもなくポーランドを代表する映画監督であり、ポーランドの現代史に直接コミットしてきた芸術家である。しかしワイダも八六歳、そろそろ作品的にもフェイド・アウトしていってしまうのだろうか。 (東幸成)


KODAMA

       反原発ハンスト


 それぞれの家へ入れられる「電気ご使用料のお知らせ」をじっくり見てみよう。電気料の中で再生エネルギーの発電賦課金(太陽光などの自然エネルギーを促進するために使われる)が、いくらかは書かれている。しかし、電源開発促進税や使用済み核燃料再処理等引当金が上乗せされていることは記されていない。再エネコストを消費者に印象付ける一方、原発促進のための税などを負担させていることを知らせまいとする国と電力会社の意図が見える。
 使用済み核燃料の処分の処理の方法は二つある。一つは直接処分、一つは再処理で、前者は埋設処分で危険が伴い一〇万年もかかる。後者はプルサーマル、つまり原発を作って核燃料を使って減らしていくというものだが、これも大いに危険だ。このための資金を集めるために電源開発促進税等使用済み核燃料再処理等引当金が上乗せされた。この七月から月七千円の電気代を払っている家では年間で一、〇四四円の値上げになる(経済産業省の試算による)。電気料金を支払うことによって原発を新しくつくることに協力させられているのだ。電気料金不払い運動も考えておくべきだろう。
 なにかしなければならないといことで、私は一〇月中旬に三日間の「反原発ハンガーストライキ」を行った。盛岡の中心街で、生協の理事長が買ってくれたベニヤでパネルを作り、怖い怖い原発の資料を貼って立て、その前に座り込んだ。パトカーが何台も前を通ったが何も言わない。結構多くの通行人がパネルを見たり話しかけたりしてくれたり、私の知らない情報を教えてくれたりで、それなりの成果はあったと思う。近くの新聞社がインタビューして写真を撮っていった。三日間のハンストで体重が二キほど減ったが、たとえ自分が傷ついても脱原発のためには闘い続けていくべきだと実感した。(R・T)


せ ん り ゅ う

       ――叶――(連句)

  投票しさてと第九を聴きにゆく

  ぜん人類の花叶う声
 
  ミャンマーへ企業支援の声高し

  奴隷的なる賃金求め

  ジハードも焼身も見る大豊豪

  媚びてマスコミ思想を匿す

                     ヽ 史

二〇一二年十二月

 ◎ 叶 … 多くの人が声をあわせる意を示す文字。
多くのものが一本に調子をあわす。また、そのさま。(【漢字源】)


複眼単眼

    
都知事選が実現した統一候補の画期的な意義

 今回の東京都知事選挙で市民派統一候補の擁立が実現した。
 十二月十六日投開票の東京都知事選挙に前日弁連会長の宇都宮けんじさんが立候補表明を行い、多くの人々の期待と支持を得て全力で闘っている。対立候補は石原前知事後継の猪瀬副知事(自民、公明、石原日本維新新党など推薦)や、松沢前神奈川県知事らだ。
 この選挙は市民運動(宇都宮けんじさんとともに人にやさしい東京をつくる会)が擁立した候補者を社民党、共産党、日本未来の党、生活者ネット、新社会党、緑の党、ほかの政党やさまざまな団体が支持して共同でたたかう新しい形の選挙を生み出しつつある。東京都知事選挙では一九八三年の以来、三〇年ぶりに実現した統一候補を擁した画期的な選挙となる。
 東京では、とりわけ、先頃一年余で四期目の任期を無責任にも投げ出して、国政の新党の結成をめざすことになった石原慎太郎都知事の一三年半の歴史は、都民にとって「惨憺たる歴史」であった。今回、その歴史を変えようと、市民運動といくつかの政党が共同して、石原後継候補と一〇〇〇万人有権者の支持を激しく争っている。
 十一月六日、「人にやさしい都政をつくる会」の記者会見で発表された四〇氏による声明は、一三年半にわたる石原都政を批判し、「いま、東京都知事を変えることは、日本の右傾化を阻止する力になる」と指摘した。そして、基本的な政治的方向性を「第1は、日本国憲法を尊重し、平和と人権、自治、民主主義、男女の平等、福祉・環境を大切にする都知事である。第2は、脱原発政策を確実に進める都知事である。第3は、石原都政によってメチャメチャにされた教育に民主主義を取り戻し、教師に自信と自律性を、教室に学ぶ喜びと意欲を回復させる都知事である。第4は、人々を追い詰め、生きにくくさせ、つながりを奪い、引きこもらせ、あらゆる文化から排除させる、貧困・格差と闘う都知事である」と「4つの柱」を明確にした。
 その後「人にやさしい東京をつくる会」(名称変更)は都知事候補に宇都宮けんじさんの擁立を決め、宇都宮さんは九日、記者会見で立候補の意志を明らかにし、以下の「東京を変える4つの柱」の実現をめざすことを表明した。
 (1)誰もが人らしく、自分らしく生きられるまち、東京をつくります。
 (2)原発のない社会へ――東京から脱原発を進めます。
 (3)子どもたちのための教育を再建します。
 (4)憲法のいきる東京をめざします。
 そして、「4期つづいた石原都政のもとで、都政には課題が山積しています。
 オリンピック招致、築地移転問題、新銀行東京、尖閣諸島買収で集めた寄付金の処理など、前知事が突然、放り出してしまった課題は、『強いリーダーシップ』という名のもと、都民の声に耳を傾けない強引な施策によって引き起こされてきました。東京は変えられます。誰かが変えるのではなく、私たち自身の手で、変えることができます。それが今度の都知事選挙なのではないでしょうか」と述べた。
 ひたすら憲法を敵視し、人権と民主主義を破壊し続けてきた十三年余の石原都政のもとで、人々の間に累積した不満と批判が、このような都知事候補と共通の政策を生み出したのだ。これは東京の、日本の民主主義の歴史に残る快挙になった。
 この闘いは自覚した市民自身による、さまざまな違いを乗り越えつつ統一した運動であり、民主主義実現の闘いだ。様々な難しい問題はあるが、このたたかいの帰趨は今後の日本での運動に重大な影響を与えることになるにちがいない。(T)


 冬季カンパの訴え

    労働者社会主義同盟中央委員会

 野田民主党政権は、二〇〇九年総選挙の政権公約のほとんどを反故にし、増税、社会保障の切捨て、TPP参加、改憲、辺野古新基地建設の強行などの政策を進め、政権交代に期待をかけた多くの人びとの期待を裏切りました。それは当然にも、内閣支持率を急速に低下させ、野田政権は解散・総選挙に追い込まれました。日本政治は急速な右傾化の波に押し流されようとしています。現在、総選挙・東京都知事選が闘われていますが、この勝敗の結果は、日本の将来と人びとの生活に重大な影響をもたらすものになります。

 わたしたちは、民主党、自民党、維新の会などの反動勢力が国会で多数を占め、日本の政治を戦争と軍国主義の道へと転落させ、社会的格差をいっそう拡大させ貧困層を激増させる政策が押し進められる状況を断固として、阻止しなければなりません。憲法の基本的人権の尊重・主権在民・平和主義(戦争の放棄)の原則に立つ勢力の議席をまもりぬかなければなりません。

 いま、わが国の抱える諸問題は、長年にわたる自民党政治が蓄積してきたものです。政権交代はそれにたいする人びとの不満・拒否が実現したものでしたが、民主党政権は、アメリカと財界の圧力に屈し、旧い政治を再現させ、日本社会の困難な状況をいっそう深刻なものにしました。保守・反動勢力は、過激な右傾・新自由主義の政策を競い合い、そのことであたかも直面する課題が解決するかのような幻想を振りまいています。しかし、対米従属、資本のための政治という基本路線を抜本的に転換することなくして政治的、経済的、社会的な矛盾は解決するどころかますます厳しいものになっていくことは間違いありません。

 いまこそ、反戦・平和・憲法改悪阻止の闘い、労働運動の前進が切実に求められています。そして、労働者・人民の団結した力を強め、その政治勢力化と再編・統合にむけて一段と奮闘するべきときです。
 ここに、闘いの着実な前進のために冬季カンパをお願いし、あわせて機関紙「人民新報」の購読を訴えるものです。

二〇一二年冬