人民新報 ・ 第1297号<統合390号>(2013年1月15日)
目次
● 「戦争のできる国」への道を阻止しよう 暴走する安倍政権と対決する広範な戦線の構築を!
● 空想的・ペテン的なアベノミクス 日本経済崩壊へのシナリオ
● 春闘をめぐる動き ― 経団連と連合
● 全労協春闘討論集会 復興連帯春闘、「脱原発社会」の実現、大幅賃上げなど要求を勝ちとろう
● 集会「戦後国家(象徴天皇制)とはなにか」
● さようなら原発1000万人アクション 3月「つながろうフクシマ!さようなら原発大行動」をアピール
● 映評 「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」
● せんりゅう
● 複眼単眼 / 安倍、石原、橋下らの改憲発言備忘録
「戦争のできる国」への道を阻止しよう
暴走する安倍政権と対決する広範な戦線の構築を!
自民党の不安定な勝利
安倍政権が成立した。戦後最悪の政権である。総選挙での自民党の勝利は、民主党政権のあいつぐ裏切りへの反発、当面する経済上の不安、人為的に扇動されたナショナリズム、小選挙区制、政党の乱立、そして多数の棄権票という状況で生じた。だが、自民党は比例で二一九万票も減らし、安倍自身、選挙直後の記者会見で述べたように「自民党に信任が戻って来たということではなく、民主党政権による三年間の間違った政治主導による政治の混乱と停滞に終止符を打つべく、国民の判断だった」「まだまだ自由民主党に対しても厳しい視線は注がれ続けている」と述べている。安倍は新内閣を「危機突破内閣」と名づけたが、まさに日本が直面する内外の状況は危機的なものである。それを安倍はもっとも右派的反動的な政策で「突破」しようとしている。外交・防衛問題でその危険性は際立っている。だが、これは、日本をもう一歩破局に導くものでしかない。
日米同盟こそ至上
安倍はなにを考えているのか。昨年一二月三〇日に産経新聞のインタビューにおいて、右派メディアという気安さも合ってか安倍は次のようにその政策を語った。「日本の外交・安全保障の基盤は日米同盟だ。同盟関係は信頼の上にこそ成り立つ。民主党政権によって信頼が失われ、日本は今、多くの国々から侮られている。日米同盟の信頼が回復したことを内外に示すことで、アジア地域も安定した方向に向かっていく。そういう意味を込めて訪米したい」、「米軍普天間飛行場の移設先は沖縄県名護市辺野古という方向で進めていく。『われわれは責任を果たしていく』とオバマ大統領に申し上げたい」。
安倍は、集団的自衛権の行使で、アメリカの軍事戦略を世界的に担うことを確約し、アメリカに追随して、その軍事力を背景にして、対アジア強硬策を展開していくという。「日本は今、多くの国々から侮られている」というが、それは基本的には日本が侵略戦争の反省・戦後責任を果たしてこなかったことに起因する。従軍慰安婦問題でも責任を認めようとしない。尖閣諸島(釣魚島)問題では、外交交渉による平和解決を拒否し、軍備を増強するとともにフィリピンなどと連携して対中国包囲網をつくる方針だ。当該の海・空域では両軍の武力衝突の可能性が高まっている。戦争に反対し、阻止していかなければならない。
参院選での九六条改憲派
安倍自民党の目的は、「国防軍」を創設して、日本を「戦争のできる国」にすることだ。そのためには九条改憲が必要だが、当面、七月参院選において、まず九六条改憲で国会議席の二分の一で改憲の発議ができるようにし、自民党、日本維新の会、みんなの党などが三分の二議席の確保することである。自民党の「憲法改正草案」では、衆参「各議院の総議員の過半数の賛成で国会が議決」し、「特別の国民投票において、その過半数の賛成」で承認するとしている。夏の参院選の意義はいよいよ重大である。
解釈改憲による九条破壊
だが、現行憲法の下でも集団的自衛権の行使によって「戦争のできる国」へ「飛躍」させることを狙っている。集団的自衛権の行使については、アーミテージ報告などでもわかるようにアメリカ側からの強い要求がある。そのために「国家安全保障基本法」を成立させようというのだ。安倍は、前内閣当時の集団的自衛権の一部行使(四型―@公海上の米艦防護、A米国向けの可能性のあるミサイルの迎撃、BPKOなどで他国軍が攻撃されたときの駆け付け警護、C海外での後方支援活動の拡大)の限定の枠を外すとしている。国内的にも戦争体制作りがすすむことになる。こうしたことは、究極の解釈改憲であり、憲法第9条は破壊される。そして「国家安全保障基本法」の成立は、東アジアにおける緊張・対立はかつて無く激化する。
国際連帯で平和の実現を
われわれは、集団的自衛権の行使=「戦争のできる国」阻止のために、多くの人びとと協力して大きな運動を作り上げていかなければならない。憲法九条の精神を生かして、東アジアの緊張を解決し、平和と友好の地域を実現しなければならない。
空想的・ペテン的なアベノミクス
日本経済崩壊へのシナリオ
安倍政権は、民主党政権が掲げた「二〇三〇年代の原発稼働ゼロ」の政策を見直すとしたが、安倍首相は昨年末のテレビ出演で、「新たにつくっていく原発は事故を起こした(東京電力福島)第一原発のものとは全然違う。国民的な理解を得ながら新規につくっていくことになるだろうと思う」と述べた。絶対に事故を起こさない原発、安全な原発とでも言いたいのだろう。だが、そうした原子力安全神話こそが福島原発事故で破産したのであり、「大丈夫」「今度は大丈夫」「今度こそ大丈夫」といい続けて、やっぱり事故が起き、大惨事を引き起こしてしまうのだ。危険なものは危険でしかない。いま右派マスコミが書きなぐっている、核大国であり無数のミサイルで武装した中国との戦争が起きても自衛隊は簡単にかつ圧倒的に勝利するなどいうのとおなじ夢想でしかない。
同様の空想的な発想によるマジックといえるものが、安倍政権がもっとも目玉商品として売り出そうとしている経済政策、いわゆるアベノミクスである。安倍は、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「成長戦略」の三本の矢で、「二%の物価上昇率目標(インフレターゲット)」、「円高是正」「デフレ脱却」を図るとしている。
いま個人消費、企業の設備投資の低迷がつづき、物価水準があがらないデフレとなっている。デフレこそ諸悪の根源であり、これを克服するために、人為的にインフレをつくりだす。そのために、日本銀行が大胆な金融緩和をおこなう。インフレになれば現金価値が下がる。個人は早く物を買っておこうとして消費が増える。企業も債務が減るから投資のために金を借り入れる。円安になり輸出も増える。こうしたいいこと尽くめの絵を安倍は描く。
だがこれまで日銀の超低金利政策、量的緩和政策で、市場に大量のカネを注ぎ込んできたて、民間金融機関は使いきれない資金が大量に余っている。個人・企業ともに貸し出し先が見つからない状況がつづいている。需要がない、それが実体経済の実情だ。人びとは、不安定な雇用、賃金の低下、崩壊する医療年金制度などへの不安があり、その備えのために、気持ちは消費には向かわない。多くの企業は投資先が定まらない。
一方で、巨額の財政出動だ。安倍内閣は年明けに「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定したが、その内容は、国や自治体などを合わせた事業費が二〇・二兆円となった。このうち今年度補正予算案で一〇・三兆円を支出するとしている。これで、六〇万人の雇用をつくり、国内総生産(GDP)を二%程度押し上げるとしている。リーマン・ショック後の補正に次ぐ大型の景気対策だ。これは、参院選対策でもある。
安倍自民党は「政権公約」で「国土強靭化」計画をうちだし、一〇年間に二〇〇兆円を投じ、ダム、高速道路、整備新幹線など大規模な公共事業を再開する。そのために必要な資金を建設国債の発行で賄い、これをすべて日銀に買わせるつもりだ。当然、建設国債発行で国の借金が巨大なものに膨れ上がる。しかし、これで経済が回復すれば、税収も増えるというのがアベノミクスだ。その論理は、風が吹けば桶屋が儲かる式の論法に過ぎない。実際には、以前の自民党時代の「バラマキ」政策の繰り返しであり、効果は限られている。しかしその政策実行過程で、小泉構造改革の時以上のいっそうの規制緩和政策で、雇用・賃金の状況は悪化し、社会的格差の拡大・貧困化が深刻化するのは必至だ。そして、財政赤字の蓄積で、ヨーロッパの国々が陥っている事態が近づいている。
春闘をめぐる動き ― 経団連と連合
一二月二〇日、経団連は、二〇一三年春闘の経営側の指針となる「経営労働政策委員会報告」の最終案を承認(一月下旬に発表)した。ベースアップについては「協議する余地なし」、定期昇給についても「時期の延期や凍結について協議せざるを得ない場合もあり得る。聖域にすべきでない」とする厳しいものとなっている。
同日の連合中央委員会は、民主党政権崩壊の影響で極めて低調な雰囲気の中で進められた。その春闘方針では「賃上げや労働条件改善のために(給与総額の)一%の配分を求める」ことを中心に、企業規模別賃金格差是正などに取り組むとした。連合は「マクロ的に一九九七年をピークに低下する賃金の復元・底上げをはかることを重視し、賃上げによる消費拡大・内需拡大をはかりデフレからの早期脱却を目指さなければならない。特に賃金における『格差是正』の実効性を高めるために、個別賃金をより重視して取り組みを進めることで、ミニマム水準のキープ・目指すべき賃金水準の追求・賃金水準開示を通じて個別賃金水準の社会的追求を高めていく」としているが、実態はどうか。主力である自動車総連は一月一〇日の中央委員会で、ベアの統一要求見送りを決定した(四年連続)。これは他業界の労組にも影響を与える。古賀会長は、「人件費の削減で利益をあげる、現場でがんばり生産性があがっても総額人件費は増やさないという配分の歪みこそが、日本社会全体の成長の足を引っ張っている」とあいさつで述べたが、こうした日本の構造・労資関係を作り上げて、いまなお支えているのが連合主流派の姿である。
全労協春闘討論集会
復興連帯春闘、「脱原発社会」の実現、大幅賃上げなど要求を勝ちとろう
一二月一五日、東京・交通ビルで、全労協春闘討論集会が開かれた。
全労協の金澤壽議長が主催者挨拶。明日投票の総選挙では、マスコミのアナウンス効果などによって残念ながら自民中心の政権ができそうだ。こうしたなかで電機産業の一〇万人合理化など失業の嵐が吹き荒れている。都知事選でわれわれのおす候補が勝利すれば、東京から日本が変わる。しかし連合東京は石原の後継者である猪瀬を支援している。同時に原発賛成の立場を表明した。連合は来春闘でわずか一%の賃上げを要求しているが、それでさえ大手企業労組は早々と春闘を取りやめている。しかし、嘆いているわけにはいかない。生活のため実力行使が求められている。なんとしても官民の労働者の生活と権利を守るために大幅賃上げを勝ち取らなければならない。同時に来春闘は脱原発社会を実現させる春闘でなければならない。
甲南大学名誉教授の熊沢誠さんが「貧困・格差社会と労働組合の課題」と題して講演をおこなった。明日、労働運動にとって戦後最悪の政権が生まれる。連合は民主党に頼りきって労働運動の果たすべき任務をさぼってきた。労働組合は固有の任務・運動をやらなくてはならない。ヨーロッパでは高い失業率が続いているが、日本では働いているのに貧しいワーキングプアが多い。これには日本が労働・労資関係で世界的に規制がゆるいということがある。労働者は組合に期待していないが、それは企業に従属する組合が多いからだ。必要なのは、企業別組合でない産業別組合、横断した労組の連帯行動などによってつくられる政府、企業から自立した運動である。
休憩の後、中岡基明事務局長から春闘方針が提起された。東北地方では東日本大震災の被害からいよいよ本格的な復興が求められている。春闘はこの復興事業に連帯することとともに、現下の政治的・経済的危機という困難な状況の下で闘われる。私たちには、新自由主義による「利益第一、株主第一」優先で労働者を使い捨てにする総額人件費抑制攻撃を続ける経団連と経営者に真っ向から対決する闘いが求められている。競争社会から共生社会へと転換し、誰でもどこでも人間らしく働き、生活できる社会の実現のために闘うことが求められている。権利を譲らない、差別を許さない闘いを正規―非正規、男女差別・国籍差別を許さず労働者の大きな団結で闘っていく。「職場に団結を・地域に共闘を」作り、官民の共闘、労働者の国際的連携を強めて闘いを拡げていこう。春闘は未組織の労働者と繋がることが出来る大きな機会である。一人でも多くの労働者に労働組合への参加を呼び掛ける活動を強めていこう。全労協の春闘ではスローガンに掲げたさまざまな課題に取り組んでいく。賃上げ・労働条件の改善の闘いでは、金労協は労働者が人間らしい生活を取り戻すために、資本・経営に大幅賃上げを求めて闘っていく。賃金引き上げの要求基準では、日額一七、四〇〇円、時給一〇〇円の引き上げ。月額給一七〇、〇〇〇円以上、一、二〇〇円/時へ最低保障を要求して闘う。労働契約法二〇条を活用して、通勤、慶弔手当、休暇などの均等待遇を獲得する。生活できる最低賃金へ引き上げる。貧困・格差社会に反対し、非正規労働者の権利確立・均等待遇を実現させる。地域共闘で公契約条例の制定を実現する。長時間労働禁止、未払い残業の撲滅などディーセントフークを実現する。政府に対して労働者のための政策を求め、経団連には総人件費抑制策の撤回、原発再稼働を許さない闘いつくり出していく。地域段階で春闘共闘や公契約実現共闘などを形成し、共同行動を追求する。
JAL闘争原告団の闘争報告につづいて、都労連、国労、全国一般全国協、全統一、郵政産業労働者ユニオン、N関労、大阪全労協、東北全労協からの決意表明がおこなわれた。
全労協の13春闘スローガン
◎ 13復興連帯春闘に勝利しよう! 「脱原発社会」の実現に全力をあげよう!
◎ 権利を譲らず、差別を許さず、人間らしく生活できる大幅賃上げを勝ち取ろう!
◎ 貧困・格差社会に反対し、非正規労働者の権利確立、均等待遇を実現しよう!
◎ 消費税増税阻止! 大飯原発即時停止! TPP参加反対!
◎ 沖縄・普天間基地即時返還―辺野古新基地建設反対! オスプレイ配備阻止!
憲法改悪反対! 排外主義を煽り、集団的自衛権容認反対!
◎ 非正規労働者、未組織労働者の組合加入を実現し、闘う春闘の大きな拡がりを作りだそう!
集会「戦後国家(象徴天皇制)とはなにか」
戦後日米関係の形成と安倍新政権
一二月二三日、日本キリスト教会館で、反天皇制運動連絡会の主催による集会「戦後国家(象徴天皇制)の正体」が開かれ、三人の講師が発言した。
戦後国家の三つの原理
はじめに、武藤一羊さん(ピープルズ・プラン研究所)
総選挙で自民党や維新の会などが戦後日本国家は作り変えねばと訴えた。右翼の方が戦後国家を対象化し、切り込んできた。総選挙の結果の分析はいろいろあるが、「国の形を変える」、「戦後レジームからの脱却」という安倍自民党の政策がこれからはじまるということである。
彼らはどうしようとしているのか。自民党の政権公約は完全に内向き、自己中心的で、いわば自分のヘソしか見えていないという姿だ。
しかし、世界中が大激動している。オバマ政権は成長著しいアジアに回帰するということで、ここでも大きな激変が始まっている。しかし、日本では、日米同盟がすべてで、世界の状況がまったくわかっていない。
自民党も含めて右派勢力などは、南京大虐殺はなかった、従軍慰安婦は金のための売春婦だったと言い、そして自虐史観を克服するとして歴史の見直しをおこなおうとしている。マスコミの大部分もこうした論調を流している。そして、右派的な観点からの記述による国定教科書をつくろうというのが安倍政権だ。
その結果は、中国、韓国だけでなく、アメリカとの関係もどうなるかわからなくなってしまっている。
安倍の言っている国のかたちを変えるとは憲法を変えるということだ。自民党の政権公約はまったく右翼そのものの政策がならんでいるが、この四月に出された自民党の「日本国憲法改正草案」を見れば、かれらがめざす国とはいかなるものかがはっきりする。
その憲法草案の前文は、日本国憲法の前文を全部削除したうえで、次のようにしてある。「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴いただく国家」であり「我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する」、「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」。
今の憲法の前文には「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とある。この二つを比較すれば、自民党草案が、現憲法の国民主権を除いて、「天皇を戴いただく国家」とし、また「政府の行為」による戦争の惨禍ということが、自民党草案では、戦争が自然災害のように記述されていて、誰が戦争を起こしたのかをまったく不問にふしている。戦争への責任・反省などはまったく無い。
自民党草案では主権者は国家となるが、自民党憲法草案は単に九条を変えるというだけでなく、立憲主義の全面的な放棄である。これはまったく世界の常識から切断されたものだ。
敗戦・占領下で、日本の支配層は進んでアメリカの支配と結びついて戦後をスタートさせた。戦前は戦争を自前でやったが、戦後ではそれができない。アメリカの支配体制を使って自己に有利な行動をしてきた。しかし一方でこの軍事主権の放棄で日本は大きな「得」をした。それは日本が侵略したアジアと侵略戦争問題で決着をしないできたことである。
こうして戦後日本国家は、三つの相矛盾する原理を折衷した国家となった。
第一にはアメリカの原理、これは冷戦の原理といってもいい。
第二には日本国憲法の平和主義だ。これは天皇条項は別だが憲法が基本的人権の尊重など普遍的原理に立脚していることをあらわしている。なにより、原水禁運動、六〇年安保などさまざまな日本の民衆の運動によって内部化されたものだ。
そして、第三が安倍の主張するようなもの、大日本帝国継承の原理だ。この原理は、戦後の過程では、公然とは主張できないものだったが、慰安婦問題、教科書問題などの形で一貫して続いてきたものだ。だが、この帝国継承原理は、第二の憲法原理と対立するだけでなく、第一のアメリカ原理ともおおいに矛盾することでもあった。しかし村山首相談話や従軍慰安婦・戦後補償問題などを契機に、新しい教科書をつくる会が歴史をアメリカを経由しないで書くなど、一九九五年ころから右翼の運動が表面化してきた。自民党の「歴史・検討委員会」の考えは右翼そのものだ。しかしこの原理は第一次安倍政権では国際的な制約で出せなくなった。これをもう一度出してこようとしている。大変なことだが、しかし、内外の状況から見て、また非常に脆弱だともいえる。必要なのは、われわれの側からの「国のかたちのビジョン」を、脱原発、沖縄の闘い、TPPなどの運動の広がりを背景につくっていくことであり、そのためにどう戦線を形成していくか、これが今後の課題だ。
虚偽の対抗軸の設定
つづいて、佐藤泉さん(青山学院大学教員)
総選挙の結果は衝撃的なものだった。
人民を代表する「代表者、議員団」を意味する「REPRESENTATION」という言葉には、表象、再現、上演などの意味もあるが、問題はそのリプリゼンテーションがリプリゼントされるものを忠実に再現するわけではないということだ。議会制度下における議席数が、民意を忠実に再現しているわけではないのであり、政治の世界とメディアの世界とを問わず表象が、一人歩きする。
今回の総選挙ではとくにそれがはなはだしかった。小選挙区制の下でのメディアによる「二大政党」の表象づくりだ。民主党も自民党も両方とも保守でダメ、こうして民主・自民対維新・みんなという構図が描き出された。だが、それらはともに新自由主義であり、日米同盟強化、ナショナリズム強化という基本では同じだ。こうして、虚偽の表象・対立軸の政治が作り出された。カレーライスかライスカレーかの選択肢しか与えられなくなったのだった。
この場合に注意しなければならないのは、そのことによって、なにが表象されなくなり、認識の土俵外に落下するかということだ。
こうして原発問題などがみごとに争点から抜け落ちる選挙となったことが、自民党圧勝の背景にある。
同様のことが戦後日本のことを考える上で起こった。敗戦についてのリベラル派と保守派の評論家による論争がそれだ。「無条件」降伏派は、戦前国家からの切断を強調する。こうして、戦争の最高責任者の地位にあった天皇が、戦後も継続在位したこと、そのために曖昧にされた戦争責任が戦後を規定し続けてきたことが隠蔽された。一方の「国体護持」有条件派は、戦前・戦後のナショナルアイデンティティの連続性を強調し、占領軍と昭和天皇の利害の一致により天皇が免責されたこと、そのうえに戦後天皇制が成立したことを隠蔽した。こうして、「革新」対「保守」、「護憲民主主義」対「戦前志向ナショナリズム」という対立構造が描き出された。このことによって反米左派の伝統が不可視化され、同時に、支配層の買弁化も不可視化され、保守支配層があたかも真面目に「愛国」的であったかのごとき表象が作り出されたのである。
しかし、いま事態はあきらかになりつつある。昨年三月以降の脱原発世論の高まり、沖縄の辺野古新基地建設反対、オスプレイ配備反対の運動があり、また日本と韓国や中国との間でおこった領土紛争とそれに関連しての日米安保の適用範囲について、TPPなどについてさまざまな論議がおこっている。たとえば、脱原発だが、この間のかつてない大規模大衆運動で、当時の民主党政権は「二〇三〇年代原発ゼロ」を言わざるをえなくなった。そして、沖縄全島をあげての反基地の声は誰も無視できなくなっている。
そうした情勢で、第三次のアーミテージ報告書が、なんと八月一五日にだされた。そこで原発推進、日米軍事同盟強化、自衛隊の増強など対日要求が提出された。この内容を見れば、重要な政策課題に対す抵抗運動のことごとく、その先に「アメリカの影」が姿をあらわす。こうした運動がアメリカを可視化させた。
来る年の目標は高まった大衆運動の力を重要な資産として、これから何ができるかを考えることだ。
米国の対日支配の分析
最後に天野恵一さん(反天皇制運動連絡会)
三年まえの政権交代で自民党が大敗して民主党政権に代わった。鳩山民主党はアメリカと対等の関係をつくるといい、東アジア共同体を主張した。小沢は中国もうでまでした。しかし、そうした新しい試みは今回の総選挙でものの見事に粉砕された。この結果、原子力ムラは復活し、それだけでなく戦前・戦中と同じような非合理主義的な暴走、自滅的暴走に日本民衆が巻きこまれることになった。事態は深刻だ。
日本とアメリカとの関係だが、アメリカ占領軍は、アキヒトの誕生日である一二月二三日にA級戦犯を処刑した。アキヒトは毎年自分の誕生日にこのことを思い出さずにはいられない。アメリカの占領とは何だったのか。かつてのナショナリズムは死んでいるが、生きているように偽装している。天皇が生きているからだ。だが、アメリカとの関係は福島第一原発事故でもっと見えやすくなった。アメリカが公然と日本の原子力推進を求め、原発からの撤退を許さない構造、そして、トモダチ作戦での日米軍事一体化の状況も公然化した。
アメリカと日本のこうした関係は敗戦・占領下に作り出された。アメリカのダレス兄弟が戦後日本の設計の中心だった。兄の国務長官を務めたジョン・フォスター・ダレスとアメリカ中央情報局(CIA)長官を務めたアレン・ダレスだ。
そうした対日支配計画の中心グループがジャパン・ロビーといわれるもので、日米開戦時の在日アメリカ大使だったジョセフ・グルーは、日本の財界・支配層に強力な関係を持っていた。グルーなどは、天皇制を存続させる、財閥解体の実行はさせないなどの政策で日本の旧支配体制の基礎を残した。そして戦犯として巣鴨拘置所(スガモプリズン)にいた岸信介などをつかって、戦後の日米関係、戦後日本を形成したのだった。
戦前と戦後の国家の断続性の問題についていろいろな理解がある。戦後すぐに憲法学者の宮沢俊義は、八月革命説を発表した。ポツダム宣言受諾により、主権の所在が天皇から国民に移行したというのだ。
しかしアメリカの問題をどう考えるかが、戦後国家を考える上で一番の問題であり、アメリカによって作られた国家のナショナリズムとはいかなるものなのか、それをどうするということだ。
さようなら原発1000万人アクション
3月「つながろうフクシマ!さようなら原発大行動」をアピール
一月一〇日、アルカディア市ヶ谷で、「『さようなら原発』一千万署名
市民の会」(さようなら原発一〇〇〇万人アクション呼びかけ人)の記者会見が開かれ、原発再稼働を容認し、新増設に対しても積極的に推進していく安倍新政権に対する意見の発表と福島原発事故二年にあたる三月の「つながろうフクシマ!さようなら原発代大行動」についてのアピールが行われた。
鎌田慧さん。野田政権は大飯の再稼働を強行したが、脱原発の大きな声を受けて、あいまいだが二〇三〇年代の原発ゼロを言わざるを得なくなった。総選挙では原発問題が争点からはずされ、安倍政権ができ、さらなる規制緩和と原発推進を打ち出している。いま本気で運動を進めていくべきときである。
大江健三郎さん。年明け早々、新聞に経団連の米倉会長と安倍首相が笑顔で握手している写真を見た。この人たちはあたかも原発事故が無かったかのようにふるまっている。これが今の自分たちの国の姿かと一瞬落ち込んだが、原子力をゼロにするという大勢の日本人がいる。こちらこそがいまの日本人の姿だ。
澤地久枝さん。総選挙の結果にはガッカリしたが、加藤周一さんが言っていた「最後まで希望を捨てないものには絶望はない」という言葉を思い出した。原発をやめる、かくあるべきだという理想に一歩でも近づきたい。
落合恵子さん。原発事故からまだ二年しかたっていないのに、わたしたちはまるで事故など無かったかのようなまやかしの中にいる。現在は過去の結果だ。現在に未来をつくっていかなければならない。
さようなら原発一〇〇〇万人アクションは、東日本大震災・福島第一原発事故から二年となる三月一一日にかかる三日間を「つながろうフクシマ!さようなら原発大行動」として、首都圏では集会や講演会を開催し、全国にも同時行動を呼びかけている。首都圏では、三月九日(土)に明治公園で「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」を開く。一一日(月)には、品川区立総合区民会館「きゅりあん」で、「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」が開かれ、呼びかけ人の内橋克人さん、大江健三郎さん、落合恵子さん、坂本龍一さん、澤地久枝さん、そして吉岡斉さん(九州大学教授・副学長)などが講演する。福島では三月二三日(土)に地元主催の集会(福島市・あづま総合体育館)が開かれる。
三月九日大集会への アピール
わたしたちは、福島原発事故以来、原発社会からの脱却をもとめる全国のひとたちとともに、署名運動と数度にわたる集会やデモを開催して参りました。しかし、すでに福島の子どもたちに、甲状腺の異常が発見されるなど、環境と人間にとって影響があらわれはじめています。
それでもなお、野田政権は大飯原発を再稼働させて世論を憤激させ、抗議行動を拡大させ、脱原発の世論に火をつけました。この世論に押されて、野田政権もようやく「脱原発」の方針を掲げるようになりました。
が、ときすでに遅く人心は野田政権を離れ、解散選挙に追い込まれた結果、原発問題になんの決着もつけないまま、新政権と交代しました。
安倍新政権は、憲法改悪、国防軍の創設、集団的自衛権の行使などを標榜するばかりでなく、原発の維持・再稼働にこだわり、新規増設にさえ含みを持たせています。
しかし、わずか四割ほどの得票によって七割の議席を得るにいたった新政権は、自らの勝利を、自分たちへの信任、いわんや原発維持政策への承認と勘違いしてはなりません。有権者の期待を裏切った旧政権にたいする不信と不満が生んだこの選挙結果に慢心せず、世論が圧倒的に脱原発を支持していることを肝に銘じるべきです。
わたしたちは、福島の大惨事の反省もなく、被災した人びとを放棄して再稼働に急ぐ暴政を認めることはできません。活断層だらけの日本列島で、原発を増設・稼働させようとする自殺行為は、さらに許すことはできません。
したがって、わたしたちはつぎの政策を要求し、三月九日に明治公園に集結して民意を示すことを呼びかけます。
一、原発は速やかに廃炉作業に入る。
二、原発の新増設は認めない。
三、再処理工場、高速増殖炉(もんじゆ)の運転を認めない。
四、再生可能エネルギーの普及・開発を最大限に促進する。
五、廃炉の過程における原発立地自治体への経済的支援を政策化する。
「『さようなら原発』一千万署名市民の会」呼びかけ人 ― 内橋克人 大江健三郎 落合恵子 鎌田慧 坂本龍一 澤地久枝 瀬戸内寂聴 辻井喬 鶴見俊輔
映 評 「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」
2011 119分
監督 若松孝二
出演 三島由紀夫(平岡公威…… 井浦新(ARATA)
森田必勝…… 満島真之介
平岡瑤子…… 寺島しのぶ
私は、若松孝二の映画に今まであまり興味がなかった。観る機会もほとんどなかった。別の言葉でいえば、あえて観ることを避けてきたと言った方が正確なのかもしれない。六〇年代、若松作品(「壁の中の秘事」)がベルリン映画祭に出品され、そのピンク映画的内容から国辱物だと物議をかもしたものだ。最近では寺島しのぶの熱演で話題になった「キャタピラー」を撮っている。
先日、若松孝二は交通事故に遭い、その数日後に死亡した。この機会に若松作品に少し向き合ってみようかという気持ちになった。それがこの作品である。
最も私は、三島由紀夫という人物にもほとんど興味を持っていなかったということも付け加えておこう。三島はイメージ的に小柄な作家だった。身体的なコンプレックスを持っていた三島はボディービルで身体を鍛え、肉体作りのために仲間と自衛隊に体験入隊をする。それは身体を鍛えるという目的以外に自衛隊を天皇の軍隊に変えるための人脈づくりの一環として考えていたのではないかと想像できる。そして、自衛隊とは別に私的な軍隊を「日学同」(日本学生同盟)の右翼学生を中心に結成した。それが「楯の会」だ。しかし「楯の会」の制服を著名なファッションデザイナーに制作させたが、それは背の高くない三島でもそれなりにみばえするように、今でいうコスプレの類としか考えられない趣味の悪いものになっていた。こんなものはまったく実戦的ではないだろう。こういうコスチュームを身につけることであたかも天皇の軍隊の一員になったと考えていたなら、その精神性の幼さに唖然とさせられてしまう。この映画の中の三島は実物(当然のことながら本人を直接見たことはない)と違って少し長身で痩躯のやさ男なので、どうしてもこれが三島かと思ってしまう。
三島役の井浦新という役者について私は知識がないのだが、彼は「連合赤軍 浅間山荘の道程」にも出演していて、三島役起用は監督の指名だったそうだ。なぜ若松は実際とはかなり違うであろう三島像をこの映画にえがき出そうとしたのか疑問に思う。画面から狂気がまったく感じとれないのだ。この作品はかなりな低予算でとられたことが画面から読み取れる。独立プロでは仕方のない所なのだが、至る所に実際のニュース映像が挿入される―例、浅沼稲次郎社会党委員長刺殺事件(一九六〇年)、国際反戦デー新宿騒乱事件(一九六八年)。そのニュースフィルムと新たに作られた映像がうまく噛み合っているかというと、どうもしっくりこない。ニュースフィルムの部分のインパクトが強すぎるので、この映画をますます作りものっぽくさせてしまっているのである。そのことが最も際立ったのが、この作品のクライマックスともいえる部分(三島たちが自衛隊の総監室に乱入して総監を人質にした後、バルコニーで演説をする部分)で、三島の演説と、すぐそばに待機する森田たちのアップはうつしだされるのだが、突然招集をかけられバルコニー下で演説を聞かされる集団としての自衛隊員の姿はまったく写しだされない。ヤジだけが声高く聞こえる。このあたりががく然とさせられるところだ。確かに多くの自衛隊員をえがくことは財政面も含めて難しいところなのだろうが、もう少し別の方法は考えられなかったのか。
また自衛隊に向かう車の中で誰ともなく「唐獅子牡丹」を歌い始めるとやがてそれは合唱になる。まるでやくざの道行だ。その歌いっぷりはかなり調子外れてヘタなので思わず笑わせられる。これも演出されたものだろうか。
いったい三島は何を目指したのか。確かに川端康成が先にノーベル文学賞を受賞してしまっているので、文学の分野での野心をなくしてしまったのか。本当に天皇に忠誠を誓う軍隊の出現を目指していたのか、今となってはわからない。
しかし、三島たちが簡単に自衛隊に体験入隊を許され、制服組の高級幹部たちと一定の交流ができていて、三島の思想、考え方に少なからずシンパシーを感じていた隊員がいたということにおいて、当時、シビリアンコントロールがうまく機能していたのか甚だ疑問なのである。
超タカ派の安倍政権が誕生してしまったこの時期に、三島由紀夫についての映画を見ることになるのは、単なる偶然なのだが、三島の夢想した自衛隊の天皇の軍隊への改変、国防軍の創出、憲法改正、核武装などこの政権のもとでは現実のものとなってしまう危機感というか恐怖のようなものを感じてしまう。
この映画は、先にも言ったが、三島について狂気はまったく感じられないが、森田必勝をはじめとする学生メンバーちからは意欲的に国のかたちを変えようという狂気を感じ取れた。そういった部分は思想的に真逆でもよくできているシーンだと思う。しかし、三島の罪は重い。若い学生たちを巻き込み死なせ、罪を抱えさせてしまったということにおいて許しがたいと思う。一人で勝手に死んでくれればよかったのだ。私が三島文学で嫌いなのはなぜ文体を旧かなづかいにしなければいけないのかという点だ。読みにくくてしょうがない。必然性はないと思うのだが。
若松監督は本人の弁で言うと、右翼でも左翼でもないそうで、「群れない」「頼らない」「ブレない」「褒められない」という四つの言葉が彼の処世訓だとのこと。その判断は読者諸氏に任せよう。
しかし、この国の右派と目される文化人、知識人、あるいは政治家もどうしてかくも精神的にひ弱なのだろうか。簡単に死に急ぎすぎる。それが彼らの美学なのか、その代償は余りにも高くつくということを彼ら自身に気づかせねばなるまい。三島という人物は、エエ格好しいで、自己愛が異常に発達し、常に世の中の注目を集めていなければ満足できないという性格なのだろうと、この映画を見終わって考えた次第である。若松がこの映画で目指したものは三島を通して死んでいった、あるいは生き残った「楯の会」のメンバーたちの生きざまだったのではないかと思ってしまう。残念ながらこの映画は安普請の映画だと言っておこう。 (東幸成)
せんりゅう
――連句――
こもをきてたれ人ゐます花の春 芭蕉
妖怪となり友のいきざま ヽ
戦犯の子孫跋扈にいかりもち
成長をいい搾取しまくる
グローバル金融支配貧国を
団結せよ!万国の民
ヽ 史
二〇一三年正月
◎元禄時代、芭蕉が正月を詠んだ句。絢爛たる都の周辺にはこもかむり(乞食)がいます―勝組負組の今日の世相とイメージが重なります。
◎『共産党宣言』の冒頭「ひとつの妖怪がヨーロッパにあらわれている、共産主義の妖怪が。」
『共産党宣言』の末語「万国の労働者団結せよ!」
複眼単眼
安倍、石原、橋下らの改憲発言備忘録
今年は集団的自衛権の行使をはじめ、解釈改憲、明文改憲の両面で、憲法改悪の動きが強まる年だ。改憲派の政治家連中の発言を忘れないための発言録である。 (T)
■安倍晋三は一二月一四日にもネットの番組で「みっともない憲法、はっきり言って」と憲法敵視の姿勢を繰り返している。安倍によれば、日本国憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書いてある。つまり、自分たちの安全を世界に任せますよと言っている。そして「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」(と書いてある)。「自分たちが専制や隷従、圧迫と偏狭をなくそうと考えているわけではない。いじましいんですね。みっともない憲法ですよ、はっきり言って。それは、日本人が作ったんじゃないですからね。そんな憲法を持っている以上、外務省も、自分たちが発言するのを憲法上義務づけられていないんだから、国際社会に任せるんだから、精神がそうなってしまっているんですね。そこから変えていくっていうことが、私は大切だと思う」というのである。
■石破茂・自民党幹事長は十一月二五日 札幌市内の党会合での講演でこう述べた。「(民主党は)国防軍が実にけしからんという話を始めたが、だけど、よく考えてみてください。自衛隊は国際法的には間違いなく、れっきとした軍隊だ。軍隊と警察は何が違うか。国の独立を守るのが軍隊。国民の生命・財産、公の秩序を守るのが警察。明らかに違う組織だ。日本国憲法のもとに、あらゆる法秩序は形成されている。どこを読んでも『自衛隊』というものは出てこない。憲法のどこにも、国の独立を守る組織が書いていない国が、本当の独立国家なのかというのが、この問題の本質だ。なぜ書いていないか。当たり前だ。憲法ができた時、日本は独立していなかった。名称のいかんを問わず、国の独立を守る組織が憲法に書かれるのは当たり前だ。国家として当然のことだ。そのことを、国防軍という名前がけしからんなぞという、言いがかりに近いことを言って、これを争点にしようというのは、健全な考え方では断じてない」と。
■石原慎太郎日本維新の会代表。
自分の国を自分でさげすむ、バカな時代になった。例えば、このところの大学生はわずか六十数年前、日本が米国と戦ったあの戦争があったことを知らない大学生がいっぱいいる。なぜかといったら、近現代史で、この国は戦後の教育で(戦争を)教えない。
憲法。誰が作ってどうやって日本に押しつけたのか。米国がこの国を統治するために四日で作って押しつけた。間違った日本語でつづられている。憲法9条。例えば、横田めぐみさんとか二〇〇人以上の人たちが拉致されて殺されたのに、その証拠があったのに、当時の日本はそれを返せと北朝鮮に強い態度で臨めなかった。9条のおかげで見殺しにした。あんなものがなければ、日本は返さなかったら戦争するぞと、攻めていく姿勢で取り戻せた。(東京都墨田区内での街頭演説で一二月九日)
(選挙後の自民党との連携は)そりゃ当然、是々非々でしょうね。ただ、やっぱり自民党っていうのは、一番大きな政治イシューである憲法を、どこまでどういう風に変えるか。共闘(関係)である公明党が、かなりリラクタント(渋っている)なんじゃないですか。この問題は、やっぱり諸悪の根源。日本を衰弱させて、孤立させた一番大きな要因。国民の意思まで低下させた憲法っていう醜悪な法律ですよ、私から言わせると。(フジテレビの報道番組で一二月九日)
■橋下徹日本維新の会代表代行。
世界では自らの命を落としてでも難題に立ち向かわなければならない事態が多数ある。しかし、日本では、震災直後にあれだけ「頑張ろう日本」「頑張ろう東北」「絆」と叫ばれていたのに、がれき処理になったら一斉に拒絶。全ては憲法9条が原因だと思っています。二月二四日ツイッター
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