人民新報 ・ 第1298号<統合391号(2013年2月15日)
  
                  目次

● 原発・改憲・政治反動の安倍政権と対決し闘おう

● オスプレイ配備撤回! 普天間基地の撤去・県内移設断念!

        沖縄の全市町村長が上京し、政府・米大使館へ申し入れ  4000人をこえる参加者で日比谷野音集会・デモ

● 院内集会「102年後に大逆事件を問う」  第二次再審請求の闘い

● 13けんり春闘がスタート

    渡辺治さんが講演―安倍政権の成立と新自由主義の新段階

● 九条の会が記者会見  今年が憲法闘争の正念場

● 映 評  /  「東京家族」

● KODAMA / ヤマトがどうするかだ

● 複眼単眼  /  安倍首相の所信表明演説を読んで






原発・改憲・政治反動の安倍政権と対決し闘おう

 安倍内閣が発足し、一月二八日から通常国会が始まった。安倍は、七月の参院選での勝利を目指して、それまでは経済の活性化を目玉にしながら、露骨な本音は封印しての政策運営で行こうとしているなどとマスコミは報じている。そうしながらもすでに安倍の集団的自衛権の行使と改憲、対アジア緊張激化の方針は隠しようもなくなっている。政治反動と戦争準備という危険な安倍内閣は六月下旬までの通常国会を使ってさまざまな政策を打ち出してくるだろう。これからの半年は日本の政治の未来にとってまさに正念場となることはあきらかであり、国会の内外の力を合わせて大きな反撃の運動を作り出していこう。

 国会開会日の二八日、参議院議員会館で、5・3憲法集会実行委員会主催による「STOP 9条破壊と改憲の道 憲法を守る院内集会」が開かれた。集会では、「集団的自衛権の行使は『戦争する国』への道!」「国家安全保障基本法反対!」「九六条改憲から九条改憲への企て反対!」「原発なくせ!再稼働反対。」「領土問題は平和的話し合いで解決を!」「オスプレイ出て行け。基地なくせ!」「教育を破壊する安倍『教育再生』反対!」「消費税増税、社会保障改悪許さない、雇用守れ!」「 国民の声が届く選挙制度を、比例定数削減反対!」などの多くのサブスローガンが掲げられた。それはこれからの闘いの課題を提起するものであった。
 はじめに主催者を代表して高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)があいさつ。安倍首相は右派的な主張をしている。所信表明演説でもそれを正面から打ち出す表現となっている。こういう人が首相なのだ。憲法をいかす大きな共同の輪をつくりだして対決していこう。
 ゲストとして、俵義文さん(子どもと教科書全国ネット21事務局長)、宇都宮健児さん(前日本弁護士連合会会長)、川崎哲さん(九条世界会議実行委員会事務局長)が発言した。
 つづいて政党代表からのあいさつ。
 共産党を代表して市田忠義書記局長。安倍内閣は明文改憲を言っているが、その前にも、集団的自衛権の行使容認という解釈改憲・実質改憲を進めようとしている。そのための懇談会を開き、訪米の手土産にしようという。侵略戦争などの歴史認識の見直しで、不正不義の戦争という規定を覆そうとしている。参院選では安倍自民党を絶対に惨敗させ政治の反動化を阻止していこう。
 社民党を代表して福島みずほ党首。自民党は危険な改憲草案を出している。安倍は憲法を変えることをライフワークだといい、任期中にも実現すると言っている。それだけではない。維新の会の石原・橋下などは徴兵制さえ言い出している。いまは憲法の最大の危機という情勢になっている。今日の院内集会から憲法をいかす、改憲を許さない運動を本格的に進めていこう。
 集会には、共産党、社民党、社会大衆党などから多くの国会議員が参加し発言した。沖縄県民大会実行委員会の上京行動にあわせて行動している沖縄大学の学生有志の闘う決意や5・3憲法集会実行委員会の構成団体からの発言がつづいた。集会には憲法問題に取り組んでいるという高校生からの発言もあり、会場からの拍手で迎えられた。
 
 多くの人々と力をあわせて、安倍内閣の反動攻撃に対決して断固として闘い抜こう。


オスプレイ配備撤回! 普天間基地の撤去・県内移設断念!

         沖縄の全市町村長が上京し、政府・米大使館へ申し入れ

               4000人をこえる参加者で日比谷野音集会・デモ


オール沖縄の声

 沖縄県民の総意は、米軍海兵隊の欠陥の新型輸送機オスプレイ配備反対であり、辺野古新基地建設反対であり、基地負担・被害の拒否であり、昨年いらい、オール沖縄の体制で基地問題に取り組んでいる。
 しかし、復活した安倍内閣は日米軍事同盟強化のために沖縄にいっそう大きな犠牲を押し付けようとしている。
 沖縄の人びとはこうした事態に、沖縄県民大会実行委員会の四一の全市町村長(代理を含む)、全市町村議会議長、市町村会議員など一四〇名ほどのかつない大型の要請団が上京し、政府にたいして「オスプレイ配備撤回」「普天間基地の撤去・県内移設断念」を政府に求める行動を起こした。

沖縄からの訴え

 一月二七日、日比谷野外音楽堂で「NO OSPREY 東京集会」が開かれ四〇〇〇人が結集した。集会には沖縄からの上京要請団、沖縄県人会、市民団体、労働組合の人びと、そして沖縄関係の国会議員も参加した。
 集会では、はじめに喜納昌春・県議会議長が発言し、政府のオスプレイ強行配備は沖縄県民の総意を無視するものであり、全国でもオスプレイの飛行訓練で多くの自治体が危険な状況になる、と述べた。市長会会長の翁長雄志那覇市長は、基地をはさんで保守革新が対立するのではなくオール沖縄で基地の整理縮小を訴えていくと述べた。
 町村会会長の城間俊安南風町長は、日本国民は、沖縄の怒り痛みを知ってほしいと訴えた。そして市町村代表からの発言がつづいた。
参加者の拍手で安倍首相に対する「建白書」(別掲)が確認され、集会後には東京駅までの銀座パレードで、オスプレイ撤去、普天間閉鎖・辺野古新基地反対などをアピールした。コースの途中には右翼集団が「オスプレイで尖閣を守れ」などと叫んで妨害活動、汚い野次を浴びせかけたりしていた。
 上京要請団は集会後と翌二八日にわたって、安倍首相、岸田外相、小野寺防衛相、山本沖縄・北方担当相、そしてアメリカ大使館に建白書を手渡した。上京団の要請行動は二八日の午後に終了し、議員会館で記者会見をおこなった。
 また在京の市民団体、労組などは、この日の早朝から議員会館前で、上京団が国会を離れるまで長時間にわたって、上京団の行動を支援する集会を開いた。

安倍の訪沖の目論見

 二月二日、安倍晋三首相は沖縄県を就任後初めて訪問し、仲井真弘多知事と会談をおこなった。今月後半に予定されている訪米を前にしての行動だが、仲井真知事は移設問題について「県民は、なるべく県外へという強い願いがある。願いに沿うような形で解決していただけるとありがたい」と述べ、県外移設を要求した。なんとしても辺野古に米軍の新鋭基地をつくることを沖縄に認めさせてそれをオバマへの手土産にしたい安倍だが、それをストレートに言い出す状況には無く、沖縄振興予算は「沖縄のほぼ要求通り」の三〇〇〇億円超を計上しての大盤振る舞いでなんとか軟化を引き出そうという意図は明白だった。会談後の記者会見で安倍は、「知事と私の個人的な信頼関係はつくることができた」などと言っているが、オール沖縄での新基地建設反対という構図の中では仲井真も簡単には動きは取れない。

 安倍は新年度予算案で防衛費を一一年ぶりに増額し、また防衛大綱の見直しをおこない、「南西地域の体制強化を含め、自衛隊の対応能力向上にしっかりと取り組む」と言っている。安倍は、アメリカのアジア回帰の路線に乗って、日米軍事同盟を強化し、反中国の包囲網を形成して、政治・軍事大国として覇権を確立しようとしている。安倍の政策はアジアでの緊張を高めている。それは沖縄を中国との戦争にそなえて最前線の軍事要塞にしようということであり、かつての戦争のときと同様の「本土防衛のための捨石」という位置づけだ。こうして沖縄の人びとと安倍内閣はかつてない対決状況に入る段階となった。
 安倍政権の戦争政策に反対し、アジア・太平洋地域の平和な環境を実現しよう。

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オスプレイ撤回・東京行動 建白書

  二〇一三年一月二八日

内閣総理大臣安倍晋三殿

 われわれは二〇一二年九月九日、日米両政府による垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの強行配備に対し、怒りを込めて抗議し、その撤回を求めるため一〇万余の県民が結集して「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」を開催した。
 にもかかわらず、日米両政府は、沖縄県民の総意を踏みにじり、県民大会からわずかひと月もたたない一〇月一日、オスプレイを強行配備した。
 沖縄は米軍基地の存在ゆえに幾多の基地被害を被り、一九七二年の復帰後だけでも、米軍人の刑法犯罪件数が六千件近くに上る。
 沖縄県民は、米軍による事件・事故、騒音被害が後を絶たない状況であることを機会あるごとに申し上げ、政府も熟知しているはずである。
 特に米軍普天間基地は市街地の真ん中に居座り続け、県民の生命・財産を脅かしている世界一危険な飛行場であり、日米両政府もそのことを認識しているはずである。
 このような危険な飛行場に、開発段階から事故を繰り返し、多数に上る死者を出している危険なオスプレイを配備することは、沖縄県民に対する「差別」以外何物でもない。現に米本国やハワイにおいては、騒音に対する住民への考慮などにより訓練が中止されている。
 沖縄ではすでに、配備された一〇月から一一月の二カ月間の県・市町村による監視において三〇〇件超の安全確保違反が目視されている。日米合意は早くも破綻していると言わざるを得ない。
 その上、普天間基地に今年七月までに米軍計画による残り一二機の配備を行い、さらには一四年から一六年にかけて米空軍嘉手納基地に特殊作戦用離着陸輸送機CV22オスプレイの配備が明らかになった。言語道断である。
 オスプレイが沖縄に配備された昨年は、いみじくも祖国日本に復帰して四〇年目という節目の年であった。古来琉球から息づく歴史、文化を継承しつつも、また私たちは日本の一員としてこの国の発展を共に願っても来た。
 この復帰四〇年目の沖縄で、米軍はいまだ占領地でもあるかのごとく傍若無人に振る舞っている。国民主権国家日本のあり方が問われている。

 安倍晋三内閣総理大臣殿。

 沖縄の実情を今一度見つめていただきたい。沖縄県民総意の米軍基地からの「負担軽減」を実行していただきたい。
 以下、オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会実行委員会、沖縄県議会、沖縄県市町村関係四団体、市町村、市町村議会の連名において建白書を提出する。

 一、オスプレイの配備を直ちに撤回すること。及び今年七月までに配備されるとしている一二機の配備を中止すること。また嘉手納基地への特殊作戦用垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの配備計画を直ちに撤回すること
 二、米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること


院内集会「102年後に大逆事件を問う」
  
           第二次再審請求の闘い


 一月二四日、参議院議員会館で、院内集会「一〇二年後に大逆事件を問う」が開かれた。明治政府が天皇ら皇族への危害を企てたとして社会主義者に大逆罪を適用し、一九一一年一月一八日に死刑二四名、有期刑二名の判決がで、即座に一月二四日に幸徳秋水ら一一名(翌二五日に管野スガ)が処刑された。二〇一一年のこの日に「大逆事件百年後の意味―院内集会」が開催された。今回で三年目だ。
 はじめに福島みずほ参議院議員が開会の挨拶。
 山泉進明治大学大学院教授は大逆事件の意味を考えると題して発言。大逆事件の起こった当時、社会主義運動は二つの流れがあった。片山潜らの議会主義と幸徳秋水らの直接行動主義だ。しかし両者は事件の後すぐに、統一して合同慰霊祭をおこなった。しかし官憲が許さず茶話会という形式だった。大逆事件の真相は長く隠されたままだったが、一九六〇年に後に高知市長になった社会党の参議院議員の坂本昭さんなどによって復権の動きが起こり、「大逆事件の真実をあきらかにする会」を中心に、再審請求などの運動が推進された。大逆事件再審請求がなされたのが一九六一年一月十八目、それから今年で五二年になる。再審の手続きは、「再審請求についての審理」と「再審の審判」との二段階においておこなわれる。そして、前者において再審の「開始」が決定されてはじめて、裁判のやり直し(再審)がおこなわれるという仕組みになっている。さきの再審請求においては、一九六五年十二月東京高裁において請求棄却の「決定」がなされ、再審にはいたらなかった。棄却決定を不服として最高裁判所に特別抗告をおこなったものの、最終的には一九六七年七月大法廷において抗告が棄却された。それから四五年が経った。いま、大阪弁護士会の金子武嗣弁護士が中心になって「大逆事件再審検討会」の活動が始まっている。再審請求の要点は、有罪と判断された判決を覆えすにたる新証拠の発見であり、その新証拠についての「新規性」と「明白性」を証明することである。「第二次再審請求」への壁は、まだまだ厚いが、これからが闘いだ。
 田原牧さん(東京新聞記者)が「不逞の復権」と題して、朴烈・文子事件について述べ、伊藤塾塾長の伊藤真さんが自民党改憲案、国家安全保障基本法案の問題点について講演した。


13けんり春闘がスタート

    
渡辺治さんが講演―安倍政権の成立と新自由主義の新段階

 一月二四日、全水道会館で「13けんり春闘全国実行委員会」発足総会が開かれた。
 
 はじめに、けんり春闘共同代表の伊藤彰信・全港湾委員長が挨拶。ふたたび安倍自公政権が成立し、軍事大国化、政治の反動化、原発再稼働の政策を強行しようとしている。経済政策ではいわゆるアベノミクスなるものでデフレから脱却するといっているが、輪転機で紙幣をすりまくり、それがマネーゲームを引き起こす。そして産業の空洞化が進み、賃金は上がらず、非正規労働者が増え、労働条件・生活条件は悪化するだけだ。われわれは、この春闘で、こうした安倍政権、経営に断固反撃する闘いをつくっていかなければならない。
 つづいて中岡基明事務局長が議案を提起。一昨日、経団連は、「活力ある未来に向けて〜労使一体とたって危機に立ち向かう〜」と題する二〇一三年版の「経営労働政策委員会報告」を発表した。そこでは、円高の是正、経済連携の推進、法人税軽減、社会保障制度改革、エネルギー・環境政策の転換、労働規制の見直し、原発再稼働、TPP参加などを要求しているが、労働関係では、労働法制の見直しとともに、最低賃金問題を取り上げたが、生活保護給付額の引き下げに連動した最賃の引き下げを要求している。また、相も変わらぬ総額人件費の抑制を掲げてベース・アップを全面的に拒否し、同時に定期昇給見直しなどを強調した。連合の大手組合は経団連のこうした動きに呼応して早々と闘いをやめている。けんり春闘は闘いの目標に、@非正規労働者、女性労働者、移住労働者の均等待遇実現、A弱者切り捨ての新自由主義、規制緩和攻撃との闘い、B貧困・格差社会に反対し、生活できる大幅賃上げの獲得、C最低賃金の大幅引き上げと公契約法の制定、仕事の確保(被災地との連帯)、セーフティネットの拡充、生活保護給付引き下げ反対!、D長時間労働の規制…過労死、過密労働による精神疾患、サービス残業の撲滅、E改正労働契約法と均等待遇、F公共サービスの破壊反対!公務員労働者に労働三権を!、G安倍政権のオスプレイ沖縄強行配備、憲法改正一国防軍、集団的自衛権行使容認、消費税引き上げ、TPP参加反対!、をかかげて闘いぬく。
 組織体制、ストライキ闘争、三月の脱原発闘争など今後のスケジュールを含む事務局長提案は拍手で確認された。

 特別報告はである垣沼陽輔共同代表(大阪ユニオンネット代表)が大阪の闘いの報告を行った。大阪では、大飯原発再稼働に反対する行動で一一名の逮捕者が出た。春闘では、この弾圧に反撃するとともに橋下大阪市政の公務員攻撃と闘っていく。

 第二部の春闘勝利・学習会では、渡辺治・一橋大学名誉教授が講演した(以下に講演要旨)。


安倍自公政権の成立と新自由主義政治の新段階    渡辺治

自民党の大勝とは


 昨年の総選挙では自民党が大勝したといわれている。そして新たな政治段階へ突入した。
 しかし、まず自民党の勝利の要因についてみてみなければならない。その第一はなによりも民主党の歴史的大敗ということだ。
 比例では自民党の得票率、得票数は伸びていないのに、議席は圧勝(自民党・二九四議席)だ。だが比例選挙では二七・六%の得票率で〇九年総選挙から一ポイント増えただけだ。自民大勝の最大の原因は小選挙区制のもとでの民主党の激減だった。では民主党はなぜ激減したのか。〇九年に、小泉などの自民党の新自由主義・構造改革が矛盾をおこし、民主党がそれに反対するように路線を転換し「国民の生活が第一」をかかげた結果、政権交代が実現した。政権交代当初の鳩山政権は新自由主義・日米軍事同盟強化から脱却しようとしたが、財界とアメリカの圧力で変節した。そして、まず民主党の構造改革反対に期待した層が離反し、つづいて都市部の構造改革期待層も離反することになった。
 第二には、自民党が新自由主義漸進路線へ転換したことだ。けれども先に見たように自民党票は増えなかったのは、構造改革政治に対する地方の衰退への反発や大都市部の開発型政治への反発は続いたからだ。しかし、自民票は減りもしなかった。それは、新自由主義構造改革による不況の克服を掲げ、大型金融緩和に加え、財政出動―一大型補正予算などで景気回復を訴えたからだ。しかし、自民党は大勝したといっても政治力は増していない。総選挙では、TPP、原発、消費税引き上げなどすべてを争点からはずしてあいまいにして勝ったからだ。

保守連合時代へ

 現在、保守二大政党制は劣化し崩壊しようとしている。自公政権回帰で、二大政党制が維持されているという議論は間違いだ。民主党と自民党の合計得票率は〇九年の時は六九・一%だったが、それが四三・六%となった。保守二大政党制は機能麻痺の状態で、いまは保守連合政治の体制への移行のときである。その保守連合の時代では、保守二大政党の単独政権では構造改革・軍事大国化は強行できないので、課題毎に、安倍政権は、維新の会、みんなの党、民主党を使い分けることになる。そのなかで、日本維新の会をみると、自民でもない、民主でもない「第三極」期待によって伸びたわけだが、支配階級が維新の会に期待するのは、保守二大政党の地盤沈下が保守の枠に止まるようすること、そして対立軸を大きく右にずらすことだ。維新の会は、最低賃金制廃止、公務員の身分保障廃止、議員定数の三割五割削減などを主張している。

反対党派はなぜ伸びない

 その理由はいくつかあるが、制度的な要因としては、小選挙区制の弊害がある。また、さよなら原発集会、官邸前集会、反TPPの大きな取り組みがあったが、その運動の力が政治変革にまで行かなかったことがある。そして、新自由主義・軍事大国化に対抗する政治の道が国民に見えなかった。だが、新たな運動が政治を変える三つの萌芽を見て取ることができる。被災三県では共産党が前進した。沖縄では保守二大政党と革新連合が桔抗する状況ができ革新が前進した。民主党は、社民、共産党より下だった。そして、宇都宮さんで闘った都知事選では、都民の前にはっきりした対決の争点を提起することができた。

安倍政権の漸進路線

 安倍政権は、消費税増税、社会保障構造改革を強行する課題を持っているが、当面は新自由主義政策を強行するのではなく漸進路線をとっている。それは、景気回復を実現して参院選で勝利することであり、とくに参院選前の時期に景気回復で消費税引き上げ実行の前提をつくること、そして構造改革で痛んだ地方自民党支持基盤を再建することだ。しかし実際に起こることとしては、人びとの暮らしは打撃を受けることになる。公共事業への財政出動やればやるほど、消費税、社会保障費抑制となる。消費税引き上げは一〇%に止まらなくなる。自己責任、共助優先原則で公的責任は回避され、医療、介護、年金など公的保険範囲は縮小され、国民皆保険原則は改変され保険料未納者の切り捨て、皆保険主義の否定へということになる。生活保護基準は引き下げられる。原発再稼働、TPP交渉参加、日米同盟強化・集団的自衛権容認が強行されることになる。

労働運動の課題

 いま新自由主義に終止符を打つ新たな運動が台頭している。それは、九条の会、脱原発、反TPPの大衆運動の昂揚だ。九条の会の運動では、九条改悪反対の一点で良心的な保守の人々とも共同し、地域に根付いた運動ができていることだ。一地域を単位にいろいろな課題に取り組んで成果をあげている。また、首長の会もできた。さよなら原発での集会や官邸前抗議行動、TPP反対運動などに現れた社会運動の新しい特徴に注目したい。都知事選では新しい政治をめざす共同の試みができた。市民運動に擁立された宇都宮候補の政策―四つの柱(反貧困、脱原発、教育の自由、憲法の生きる東京)を社民、共産、未来の各党が支持し、市民運動と政党、労働組合が政治を変える共闘をつくりだした。
 これから、安倍政権の新自由主義政治の大攻勢に対して、原発再稼働、消費税引き上げ、TPP、集団的自衛権立法を阻む大衆運動を展開しなければならず、さまざまな一点共闘から国民連合ヘ発展させていかなければならない。そのちょうつがいとなる役割を労働組合運動が果たすべきだろう。また社会保障費削減、企業リストラなど新自由主義大攻勢に反対し国内市場の拡大を求める大運動が必要である。そして新自由主義・軍事同盟強化に終止符を打つ福祉国家型政治の対抗構想を打ち立てることである。


九条の会が記者会見

     今年が憲法闘争の正念場


 一月二八日、参議院議員会館で「九条の会記者会見」が開かれた。昨年末の総選挙の結果、衆議院で改憲派が多数を占めるようになり、ふたたび登場した安倍内閣は今年夏の参院選で勝利して両院で与党多数とし、野党の一部も巻き込んで憲法九六条を変えて国会の過半数で改憲ができるようにすることを突破口に九条を改悪するという狙いだ。今年はまさに改憲阻止の闘いの重要な年となる。

 二〇〇四年に発足し、改憲策動に反対する中心的な役割をはたしてきた九条の会は、こうした重大な情勢を正念場ととらえ、この記者会見で、九条の会の各よびかけ人からのメッセージと当面の活動計画・集会などを発表した。

 小森陽一事務局長は、憲法をめぐる情勢は重大な局面を迎えており、全国で七五〇〇を超える地域、各界各層の九条の会の活動を一斉に活性化させ、改憲を許さない運動を作り上げていくと述べた。

 よびかけからのメッセージ

 「根本的なところを確かめるために」(大江健三郎)
 「九条の会」の大切な呼びかけの同志を、私らは次つぎに亡くして来ました。かれらの名とかれらを記憶し続ける人々の名を、生き残っている私らが思い出し続けましょう。それが具体的に「九条の会」の市民たちの大きい集まりで、共通の声として分け持たれ、かかげられることを、私らの今年の新方針としたい、と私は思い、その方向で働きます。そして更に、まったく新しい市民たちの全国規模での大きい動きを、もうすでに老年の呼びかけ人のひとりとして、なによりも祈念します。しっかり続けましょう。

 「総選挙の結果にかんがみてのアピール」(奥平康弘)
 「九条の会」のわれわれは、あらゆる政治力を駆使して、来る七月の参院選挙に当たっては、「三分の二以上の崖」を熟せないようするために頑張るほかないのだ。ぼくにはそのためにどうすればいいのか示唆する能力はない。むしろ、全国各地において、各種各様にまたがって、歴史上かつて例を見ない質量の「九条の会」を誕生させ、独特な活動を繰広げて来ている諸賢ではないか。頭を働かせ、智慧をしぼり、身体を動かし、経験を注用して、思い思いの選挙運動を展り広げていただきたい。かつてなかったような選挙成果をもたらしていただきたい。

 「希望はどこに?」(澤地久枝)
 この国の政治は狂っている、だから投票にはゆかないと言うなかれ。その気持はわかるが、四割近くの人が棄権し、憲法史上最低の投票率になったことをわたしは恥じる。全国に九条を守ろうという市民のつながりが生れ、それは反原発の流れにかさなった。選挙結果にふりまわされず、新しい市民社会に希望をつないでゆきたい。

 「九条の会の働きどき」(鶴見俊輔)
 今度の選挙結果を見ると、九条の会の働きは、これまで以上に大切になると思います。現在、私にできることは少ないかもしれません。しかし、まだ私たちの内に(そして私たちの未来に)希望が残っているとするならば、私はそれにひとつの石を置こうと思います。


 祖父と孫のDNA しかし歴然たる時代の差

 安倍晋三は、元首相の岸信介の孫だ。いわゆる血統論はとらないが、安倍自身がその後を忠実に追っている。岸の経歴を振り返ってみよう。
 対アジアとりわけ中国との関係、アメリカとの関係、そして戦争の問題についてみてみる。

 一九三六年に岸は、満州国国務院実業部総務司長として中国にわたり、総務庁次長に就任、植民地支配の中心的役割を果たす。戦後には、中華人民共和国と敵対し(国交回復前)、五八年の長崎国旗事件でそれまでの交流を途絶させた。 

 アメリカとの関係では、A級戦犯容疑者として逮捕されたが、東條英機らの絞首刑翌日の一九四八年一二月二四日に釈放、アメリカの対日支配の支柱となった。戦争との関係では、一九四一東條内閣に商工大臣として入閣し、戦争遂行を担った。見てくると、岸と安部はアジアと敵対し、アメリカに追従していることがよく似ている。村山談話、河野談話の見直しなどで戦争犯罪を認めようとせず、靖国神社参拝を強行する姿勢は変わらないなど、かつての日本軍国主義イデオロギーをかたくなに守り続けていることも同様だ。そして、このままで行けば、かつてナチス・ドイツとの同盟を背景に(今度は米)戦争を始めることまでも祖父を継承するかもしれない。
 しかし、かつてと違うのは、アジアにおける力関係の差・国際環境の変化である。戦争により人びとに多大な惨禍をこうむらせながら、最後には敗北するようになりそうなのは、この祖父と孫はやはりそっくりだといえようか。  (H)


映 評

    
 「東京家族」 

             2013 146分

   監督 山田洋次
   出演   平山周吉……橋爪功     平山とみこ……吉行和子
      長男 平山幸一……西村雅彦 平山文子……夏川結衣
      長女 金井滋子……中嶋朋子 金井庫造……林家正蔵
      次男 平山昌次……妻夫木聡 間宮紀子……蒼井優

瀬戸内海の小島に住む平山夫妻は、東京で暮らす子どもたちに会うために上京する。最初のうちは大歓迎をうけるが、それぞれの生活で忙しい子どもたちは、両親の面倒を見ることができなくなる。お金を出し合い、横浜の高級ホテルに何日も滞在してもらうことにするがホテルでの生活が満ちたりすぎて一泊しただけで戻ってきてしまう。行く場所がなくなって困ってしまう両親だが、父は旧友に会いに行き、医者に止められていた酒を飲んで酔つぶれてしまう。母は不安定な仕事をしている次男を心配して彼のアパートを訪ねる。そこで次男と交際していた紀子に出会い、その人柄の優しさに触れ、遅くまで三人で話し合う。次男の暮らしぶりや、将来設計に大変満足して、長男の家に帰ってきた母親だが、突然病に倒れ、帰らぬ人になってしまう。家族会議の結果、葬儀は母の住み慣れた故郷でとり行うことになり、みんなで瀬戸内海の小島を訪れる。そこは温暖で静かなたたずまいのある場所だった。葬儀も終わり長男長女夫妻は、忙しく帰ってしまい、周吉と昌次とその恋人だけが取り残されてしまう。紀子は一人残された周吉の面倒をかいがいしく行った。その姿に、口かずが少なく頑固な周吉は心を和ませ、昌次との結婚を許し、明日の生活に希望を託そうとした。
 「東京家族」は、山田洋次が松竹で映画を監督することになって五〇年目の作品だそうだ。今や世界的に名作と称されるようになった小津安二郎の「東京物語」(53)からは六〇年の歳月が流れた。小津は撮影所のスタジオに穴を掘り、そこにカメラを据えて、きわめてローアングルから撮影した。またカメラも固定してあまり動かさなかった。そこには、演出上の大きな狙いがあったのだろう。比較して「東京家族」は二〇一二年五月の物語である。それは2011・3・11の大震災を経験した日本人の意識の変化も画面に織り込もうとしたのであろう。
 「東京家族」はほとんどスタジオ内のセットで撮影されたそうだ。そうだとすれば、いくつかの演出上の疑問がわく。東京の郊外で開業医をやっている長男は四人家族だが、両親二人が来ればたいへん狭苦しく感じてしまう。東京は土地の価格が高いところとはいえ、開業医ともなればもう少し広い家に住んでいるだろう。
 父が旧友を訪ねて居酒屋でくだまくシーン、この店も狭い。旧友が訪ねてくればもう少しゆったりした店へ行くだろう。両シーンの密室感が濃厚な人と人とのぶつかりあいの場なのか、ちょっと感覚的に違うのではないかと思ってしまう。
酒場で酔いつぶれながら、周吉がこう言う。「この国はどこで間違ってしまったんじゃろか」。物質的には豊かにはなったけど、人と人の間で、何か寂寞感が漂っているようすを言いあてた、いいセリフだ。「東京家族」は現代の設定なので新幹線で両親は上京し、品川駅に降りたつ。登場人物は普通に携帯電話を使用する。ただ主人公の名前、設定は六〇年前の「東京物語」とほぼ同じなので、相当な齟齬を感じてしまう。古いうつわに新しいものをむりやりはめ込んだような感覚といっていいだろうか。新しいものと古いものとが渾然としすぎているのだ。「東京物語」では次男は戦死しており、その妻(原節子)が上京してきた両親の面倒をかいがいしくみていた。原節子の存在感、美しさはたとえようがなかった。「東京家族」では昌次と紀子は、3・11以降の福島の被災地でボランティア活動を通じて知り合ったという設定だ。蒼井優の演技もまだまだ発展途上だと感じた次第。原節子と比較するのもかわいそうか。次男は舞台美術設営という仕事をしているのだが、山田監督はなぜかフリーターという設定にしている。画面上から推察するとどう見てもフリーターではなく、フリーランス(フリー)の就業形態の感じがする。フリーランスというのは、こういった業界では普通の形態であり、山田監督やスタッフはそのあたりの理解が足りないように感じた。「東京家族」に登場する家族では長男が開業医、長女が美容院経営、次男は舞台美術関連の仕事で、長女の夫のみサラリーマンのようだ。ほとんどの登場人物が自由業・自営業に従事していて、サラリーマン(勤労所得者)は登場しない。なぜなのだろうか。サラリーマンだと映画になった場合、会社が主体になって、面白みに欠けるのかなぁ。
 両親が上京してくる、「東京物語」の時代は一〇時間以上はかかっただろう。「東京家族」の時代では四、五時間でこられてしまう。かつては親が上京してくるということはたいへんだったに違いない。現代では簡単に行き来ができてしまう。時間が短縮された割には心のつながりが希薄になってしまっている感じがするのだ。
東京と地方の生活のリズム感の違い、両親を大切に思っても日々の生活の忙しさに振り回されてしまうのは、地方出身者なら誰でも感じることだろう。かく言う私も瀬戸内海周辺に育ち、大学進学を機に東京へ出て、それからずっと住み着いている。ただ故郷とはかなり頻繁に行き来していたので、そんなに距離感を感じていなかった。確かに親の上京時に振り回されることもあったが、それはこちらが、高齢の親に時間を合わせればいいだけのことだと思うが。「東京家族」は山田監督が映画界の大先輩の小津安二郎にささげた感謝の映画だと思う。「東京家族」はさまざまな視点から観られていい映画だと思う。
なお「東京物語」は世界の映画監督が選んだもっともすぐれた映画の第一位になったそうだ。ちなみに第二位は「二〇〇一年宇宙の旅」(スタンリー・キューブリック)、第三位は「市民ケーン」(オーソン・ウェルズ)だ。「東京家族」で妻役の吉行和子がいい味の演技をしているのだが、残念ながら「東京物語」におよんでいないのだ。また、3・11以降の世相の反映というものもあまり感じられなかった。 (東幸成)


KODAMA

     ヤマトがどうするかだ


 一月二七日の沖縄から上京団を迎えての日比谷縄集会では、琉球新報、沖縄タイムスは特別版を配布していた。琉球新報は、沖縄現代史家の新崎盛暉さんのインタビューが載っていた。現在の状況、運動も含めヤマトが問われている。
 「今、沖縄では新聞の社説から投書欄まで、『構造的(沖縄)差別』とか『差別』という言葉で埋め尽くされている。本来なら差別されている側は差別とは言いたくない。それを皆が言い出した。そしてひとたび言い出すと、それを是正するまでは後には引けなくなる。この言葉を使い始めた以上、もう後には引けないという宣言なんだ。だからヤマトがどうするか。このときヤマトというのは日本の政府、それを支えている国民世論やマスメディア。そういうものの在り方もそこで問われてくる」。そして見出しは「差別是正への転換点―ヤマトの自覚促す運動」だ。沖縄の人々の気持ちが伝わってくる。この気持ちをみんなにつたえたい。 (M)


 せ ん り ゅ う

              ― 連句 ―

     梅蕾や時を語らう山川忌

    平和的生存権めぐり

    外国へ武をだすなかれ人の息

    幼へかたる憲法のみち

    解釈は自公独裁えてがつて

    あかん改憲難波へ馳せる

                    ゝ  史

二〇一三年二月十五日

  ◎ 山川暁夫命日二月十二日(二〇〇〇年)。最晩年の論説でグローバル化の進む国際社会に於いて、現憲法の意義を「平和的生存権」の思想に核心があると説いている。


複眼単眼

       
安倍首相の所信表明演説を読んで

 安倍晋三首相は一月二八日、通常国会冒頭に比較的短めの「所信表明演説」を行った。全体に空疎で、中身のない演説だったが、それでもよく読めば右派国家主義者の安倍晋三の特徴は随所に出ているものとなった。
 冒頭で、第一次安倍内閣の失敗を取り繕うために、かつて「病のために大きな政治的挫折を経験した人間」と自己を評価し、「過去の反省を教訓」として、「丁寧な対話」を誓った。これでは失敗の原因が「丁寧でなかったこと」にあること、要するに「戦後レジームの転換」などで焦って暴走したことにあったことを告白したものではないか。まさに彼の「病」はその失敗の結果であって、原因ではなかった。
 そこでちまたに流布されているのは、安倍自身も語っているのだが、前回の轍を踏まないように、参院選で勝利するまでは慎重に運転していくという説だ。これはそうではない。百歩譲って、安倍自身が主観的にそう考えているにしても、安倍の頭脳構造の特質と、安倍政権を支える取り巻き、及び自民党の体質が容易にそうはさせないのだ。実際に経済政策でも、安保防衛政策でも、その危険な兆候は随所に現れている。
 演説のはじめの方で、安倍は再登場に高揚したのか、「国家国民のために再びわが身を捧げんとする私の決意は、深き憂国の念にあります」などと右翼丸出しの表現で強調している。今回の所信表明演説では「国家」という言葉と「危機」という言葉が何度もでてくるのが特徴だ。国家の危機=憂国の中身は、安倍によれば「復興の危機」「外交・安全保障の危機」「教育の危機」だ。
 そこで「アベノミクス」などと称する鳴り物いりで、「経済再生政策パッケージ」を並べる。同志社大の浜教授によればそれは「人からコンクリートへ」「地方から中央へ」「福祉から防衛へ」の時代逆行にすぎない。安倍も認めるように緊急経済対策などの「財政出動をいつまでも続けるわけにはいきません」、この無理の後には巨大な付けがくる。はや安倍はその影におびえている。
 何よりも重視するとした日米同盟の強化では、安倍が演説で触れた二月下旬の訪米には黄色信号が灯った。安倍が意気込んで訪米の手土産にしようとした「集団的自衛権の行使」への米国の支持は、オバマ大統領が、この時期、中国を刺激しすぎると躊躇している。所信表明で強調した「世界全体を俯瞰して、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった、基本的価値に立脚し、戦略的な外交を展開」という立場、いわゆる価値観外交論は、「第二次大戦の結果の変更」につながる歴史修正主義の危険があるとして、ニューヨークタイムスや同市議会など欧米の世論は警鐘をならしている。この立場からの安倍の「強い日本」や米豪印日の「ダイヤモンド安保」論も各国は必ずしも同調していない。安保・防衛問題でも、すでに安倍の「空回り」の様相が浮かんできている。
 このように見てくると、今回の安倍の所信表明演説が空疎に聞こえるのは、決して根拠のないものではない。第二次安倍内閣は果たしていつまで続くだろうか。はや前途には暗雲が立ちこめている。 (T)