人民新報 ・ 第1299号<統合392号(2013年3月15日)
  
                  目次

● 安倍内閣の原発再稼働政策を許すな  脱原発運動の更なる前進を

● オスプレイの低空飛行訓練反対  辺野古新基地建設に向けた公有水面埋め立て承認申請を許すな

● STOP TPP   安倍政権の交渉参加強行阻止!

● 郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議 
 
         13春闘勝利! 非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇を求める本社前要請行動

● 3・2日韓民衆連帯集会  緊迫化する朝鮮半島情勢  平和協定の実現を

● すべての争議の解決に向けて東京総行動  経団連へも申し入れ

● 集団的自衛権の行使を断固阻止しよう!

● 『相手をやっつける』から『相手の動きに応じ、自分に最適な道を選択する』考えへ

● 反紀元節闘争

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼 / 「憲法発議要件考」考






 安倍内閣の原発再稼働政策を許すな

          
脱原発運動の更なる前進を

 東日本大震災巨大津波原発事故から二年がたった。安倍内閣の国土強靭化政策なるものは一部ゼネコンへの公共投資ばら撒き、巨大資本へのてこ入れにすぎず、被災者・被災地にたいする満足な支援はおこなわれていない。東電福島第一原発は依然として危険な状態にある。にもかかわらず政府・電力会社は原発の再稼働をねらって動き始めた。円安・株高などでの一部経済指標の好転で商業マスコミは浮かれきっているが、政治、経済、外交のさまざまな分野で矛盾は激化しており、原発など安倍内閣の諸政策は日本社会を破滅に導くものである。

 三月九日、東京・明治公園で「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」(「さようなら原発一千万署名市民の会」主催)が開かれた。第一部では、脱原発を闘う各地・各団体や各地からのリレートークが行われた。福島県葛尾村から避難している人、国際環境NGO、原子力資料情報室、官邸前の毎週金曜日デモ、日本消費者連盟、祝島(山口県)島民のメッセージ、そして、東海原発(茨城)、浜岡原発(静岡)、六カ所村再処理工場(青森)、泊原発(北海道)の運動から政府・電力会社は絶対に許せない、原発を直ちに止めようと発言がつづいた。また福島県双葉町の井戸川克隆・前町長も発言した。第二部は、はじめに、二度とこうした悲惨な事故は起こさせない、脱原発社会を実現しようという決意をこめて全員で黙とうを行った。呼びかけ人の鎌田慧さん、大江健三郎さん、落合恵子さん、澤地久枝さんが、それぞれ原発再稼働、推進を止めるために大きな力で運動を巻き起こしていこうと述べた。作家の広瀬隆さんは、原発事故の実態を明らかにして政府の対応を批判した。韓国ゲストの「核なき世界のための共同行動」のチェ・ヨル代表は世界の人々のための脱原発運動を起こしていこうと訴えた。集会にはイギリス、フランスなど各国の脱原発運動団体などからのメッセージが寄せられた。集会を終わって、市民団体と労働組合の二つのコースに分かれて、脱原発と政府の責任の追及などシュプレヒコールをあげてパレードをおこなった。

 翌日の一〇日には、さようなら原発一〇〇〇万人アクション、首都圏反原発連合、脱原発世界会議、原発をなくす全国連絡会、経産省前テントひろば、再稼働反対!全国アクションなどによる行動が取り組まれた。日比谷公園での集会(「東日本大震災復興と原発ゼロの実現めざす東京集会」)や「原発ゼロ☆大行動」など国会周辺で、多くの人が結集して政府に対する抗議行動を展開した。

 一一日には、大井町きゅりあんホールで「つながろうフクシマ!さよなら原発講演会」(「さようなら原発一千万署名市民の会」主催)が開かれた。鎌田慧さんは、フクシマに連帯してフランス、ドイツなど各地で大規模なデモがおこなわれていることを報告し、安倍内閣はとにかく経済だということで原発を再稼働させようとしているが、なによりも生命が大事だということを世界に発信していきたいと述べた。内橋克人さんは、新しい原発安全神話が作られようとしているが、未来の世代の生存条件をまもるためにも敵を明らかにして運動を進めていこうと述べた。澤地久枝さんは、国と電力会社は早く事故のことを忘れさせようとしているが、ただちに原発を止めよう、新しく作るなどとんでもないと述べた。つづく作曲家の坂本龍一さんと若い世代の音楽家との対談では、脱原発を広くアピールしていくことなどについて話し合われた。福島大学の清水修二さんは、原発事故被災地の厳しい状況について報告した。大江健三郎さんは、原発を造って動かす人には倫理性というものが欠如している、しかし原発に反対する私たちはその行動で日本人が尊敬されるようにならなければならない、と述べた。政府事故調の一員でもある九州大学の吉岡斉教授は、そうした会議の中でも柔軟な行動で原発に反対する行動をおこなっていると報告した。

 原発事故から二年、脱原発の運動を全国でもりあげ、国のエネルギー政策の転換を実現しよう。


オスプレイの低空飛行訓練反対

     
辺野古新基地建設に向けた公有水面埋め立て承認申請を許すな

 米軍と日本政府は沖縄県普天間基地に配備されている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの国内での訓練を強行した。

 三月六日、米軍普天間飛行場に配備されている海兵隊のオスプレイ三機が岩国基地(山口県)を拠点に和歌山県から四国上空に設定した「オレンジルート」と呼ばれる経路での低空飛行訓練を開始した。沖縄県内でもオスプレイが激しい訓練をつづけている。山口県では反対派住民による岩国基地周辺で抗議活動が展開され、関係自治体は監視態勢を強化するなどしている。オスプレイは墜落の危険性の高い飛行機であり、いつ大事故が起こすかもしれないものだ。米本土では住民の反対により訓練ができないものを日本で頻繁に繰り返そうとしている。これまでに日本での米軍機の墜落事件は二五〇件以上にのぼり、一九五九年には一七人もの死者をだした沖縄県宮森小学校での米軍機墜落事件が起こっている。日米政府はとんでもない犯罪行為を開始した。

 三月四日、防衛省正門前の毎月の防衛省抗議行動(主催・辺野古への基地建設を許さない実行委員会)がおこなわれた。辺野古での新基地建設をめぐって、政府は沖縄県に三月中にも建設のための「公有水面埋め立て承認申請」を提出しようとしているという状況で多くの人が駆けつけた。この日は全国一般東京労組など春闘行動の一環として労組の参加もあった。

 毎月集会に引き続いて、反安保実行委員会のよびかけによる「オスプレイの低空飛行訓練を許すな! 沖縄配備を止めろ! 3・4緊急防衛省行動」がおこなわれた。反安保実行委員会、NO!AWACSの会浜松、不戦へのネットワーク、関西共同行動、入れるな核艦船!飛ばすな核攻撃機!ピースリンク広島・呉・岩国などから政府に対しての申し入れがおこなわれた。
 ピースリンク広島・呉・岩国の安倍首相、岸田外相、小野寺防衛相にあてた「オスプレイの低空飛行訓練の中止と配備撤回を求める」は「オスプレイの配備にあたって昨年九月一九日に『日米合意』を発表しましたが、試験飛行初日の市街地上空の飛行も確認され、配備後二か月間の沖縄県の目視調査でも五一七件中、三一八件が合意違反の飛行が確認されています。国民生活を守ることは政府として最も大切なことのはずです。責任を持った対応を強く求めます。以上より、日本政府が、国民の視点に立ち、オスプレイを初めとする米軍機による低空飛行訓練の中止、及びオスプレイの配備撤回を米政府に求めるよう強く要請するものです」と要求した。


STOP TPP
  
         
安倍政権の交渉参加強行阻止!

 安倍政権は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加へむけて走り出した。自民党は総選挙では、@「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対、A自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない、B国民皆保険制度を守る、C食の安全安心の基準を守る、D国の主権を損なうようなISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項―自由貿易協定を結んだ国同士において、多国間における企業と政府との賠償を求める紛争の方法を定めた条項)は合意しない、E政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる、としていたが、安倍はそれらを反故にして、二月下旬の日米首脳会談で、TPP交渉参加を表明した。日米の支配層がそれを強引に推し進めようとしているのは、一握りの多国籍企業の利潤追求の手段だからである。TPPは暮らしのあらゆる面に影響する協定だ。いま日本でもアメリカでもTPPに反対する運動が起こっている。

 三月五日午後五時から八時まで、首相官邸前で「STOP TPP! 官邸前アクション緊急拡大行動」が行われ、参加者は一〇〇〇人をこえた。北海道をはじめ全国から農業団体、医師、労働者、市民がそれぞれTPPに反対するリレートークを行い、国会議員もともに闘おうと挨拶した。参加者は「安倍首相と自民党政権は、TPPに関する六項目の公約を守れ!」「有権者への裏切りは絶対に許されません!」「TPP交渉参加は、絶対反対!」「TPPでは、生きられません!」「すべての人たちに、生きる権利と希望を!」などの横断幕を掲げ、官邸に対して、抗議のシュプレヒコールをあげた。


郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議

   
13春闘勝利! 非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇を求める本社前要請行動

 三月一日、一一時四五分から、日本郵政本社前で、郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議(郵政産業労働者ユニオン・郵政倉敷労働組合)による「春闘勝利!非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇を求める本社前要請行動」がおこなわれた。昨年七月に郵政産業労働組合と郵政労働者ユニオンの統合による郵政産業労働者ユニオンが結成されてから初めての春闘行動だ。集会前には本社前座り込みがあり、また本社に「郵政に働く非正規労働者の正社員登用と均等待遇を求める要請署名」二万九一三〇筆を手渡した(これまでの総計一二万六五四八筆)。
 集会は、郵政産業労働者ユニオンの須藤和広書記長の司会ではじまり、廣岡元穂委員長が主催者発言で、非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇は十分可能だと強調した。全労連の大黒作治議長、全労協の金澤壽議長、国公労連の宮垣忠委員長が連帯の挨拶。郵政産業ユニオン日巻直映書記次長が、署名などこれまでの活動の報告をおこなった。郵政非正規の仲間からのアピールでは、岡山、兵庫、九州、東京から正規化・均等待遇を求めて闘う決意が表明された。
 ひきつづいて午後二時からは衆議院第二議員会館(多目的ホール)で院内集会が開催された。集会では、岡山、大阪、兵庫、岐阜、東京、高知、栃木、京都、福岡など全国から結集した非正規労働者からの訴えが続いた。集会には国会議員も参加し要求の実現のためにいっしょに闘おうと発言した。

集会アピール

 労働者の賃金低下と非正規化に歯止めがかからない。労働者の平均賃金は、一九九七年をピークに年収で約七〇万も減り、非正規雇用が労働者の三人に一人、若者と女性では二人に一人にまで広がり、年収二〇〇万以下で働く労働者は一〇〇〇万人をこえている。
 一方、大企業の内部留保は、この一〇年間で一〇〇兆円も積み増しし二六七兆円にも達している。今日のデフレ不況の元凶は、労働者の賃金低下と異常な内部留保の溜め込みである。今日のデフレ状況を脱却するためには大企業の内部留保をはき出させ、正社員のベースアップ、非正社員の時給引き上げ、正社員との均等待遇、そして正社員化の拡大で正社員が当たり前の社会を実現せねばならない。さきごろ政府首脳が相次いで財界に賃上げを要請する事態が起きている。これに対して財界は「業績改善」が先であり、改善分は一時金で反映すると返答したと報じられているが、そのなれ合いぶりにあらためて怒りを感じずにはおれない。しかし、「賃上げでデフレ脱却」という声は、大手マスコミ紙の社説に掲載されるなど社会的な支持が急速に広がっている。私たちは、生活保護の削減攻撃に対する反貧困の運動やTPP交渉参加反対、また原発再稼働や沖縄新基地建設反対、そして憲法改悪に反対する広範な国民のたたかいと結びつき社会的連帯を強めながら一三春闘を断固たたかい抜くものである。

 日本郵政各社では、二〇一〇年八四三八名、二〇一二年一〇五八名の正社員登用を私たちの要求によって実現した。しかし、日本郵政各社は、JP労組の要求を利用し、「正社員登用は月給制のみとし時給制や短時間社員からの登用は、当面見合わせる」としている。その結果、希望する非正規社員の正社員への門戸を著しく狭ばめようとしている。日本郵政斉藤前社長が「非正規社員が希望がもてる登用にすることは経営の責任」と国会で答弁したが、これを放棄しようとすることを私たちは断じて許さない。改正郵政民営化法の附帯決議には、「郵政三事業において、サービスの公共性にふさわしい企業モラル及び雇用モラルが遵守されるよう努めること」と明記されており、私たちは、決議のとおり公共性にふさわしい企業の社会的責任として非正規社員の処遇改善と正社員化の拡大を強く要求する。
 日本郵政グループの溜め込み利益は、トヨタ自動車やNTTグループに匹敵する一〇兆円を超える巨額なものとなっている。また、三月末決算でも純利益が四六〇〇億円を超えるなど会社は、私たちの要求に応える経営体力を十分持っている。会社は、私たちの要求に応えるべきである。

 本日、全国から集約した正社員化の拡大と均等待遇署名を日本郵政に提出した。本社前集会もかつてなく多くの仲間が結集した。この力をさらに大きな力に変え13春闘の勝利をめざしたたかうことを宣言する。

 2013年3月1日

    春闘勝利!非正規雇用労者の正社員化と均等待遇を求める本社前要請行動参加者一同


3・2日韓民衆連帯集会

     
 緊迫化する朝鮮半島情勢  平和協定の実現を

 三月二日、文京区民センターで、「3・1朝鮮独立運動九四周年 安倍・朴政権の登場と私たち 3・2日韓民衆連帯集会」が開かれた。

 はじめに、日韓民衆連帯全国ネットワークの共同代表の渡辺健樹さんが主催者を代表してあいさつ。今年の七月で朝鮮戦争の停戦から六〇年になる。しかし、いまだに撃ち方止めの状態であり、平和協定が求められている。こうした時期にいま朝鮮半島はきわめて緊張した状況にある。米朝の対話による休戦状態から平和協定締結にむけて世論を高めていかなければならない。そして再来年の二〇一五年は日韓基本条約の締結から五〇年の節目にあたる。日韓の民衆が連帯を強めて平和の取り組みを強めていくことが求められている

 つづいて浅井基文さん(前広島平和研究所所長)が「朝鮮半島情勢と日朝関係―安倍・右翼改憲政権と私たちの課題」と題して講演。
 朝鮮の核開発の脅威が問題とされているが、そうしたことになっているのはアメリカの朝鮮敵視政策があるからであり、また人工衛星打ち上げロケットもミサイルだとしているが、宇宙開発はそれぞれの国の固有の権利であり、それを禁止するのはおかしい。まして他の国のロケットは何の問題にもしないのだからあきらかなダブルスタンダードだ。こうした「常識」を認めてはならない。
 朝鮮半島情勢の打開についてだが、この間、関係国すべてにおいて政権交代があった。
 朝鮮の金正恩政権は、政権交代期を乗り切り政権の安定性をしめし、またロケット打ち上げや核実験実施の事前通告など政策の可視性・推測可能性が高まり、また民生重視姿勢が強まった。一方で、「先軍政治」のくびきがあり、国内経済情勢や中国の対朝鮮政策の先行き不透明さなどの不確定要素もある。注目しておかなければならないのは、アメリカの出方しだいでは三回目の核実験は避けられた可能性があったということだ。 韓国の朴槿恵政権は、李明博前政権の対朝強硬政策、金大中・盧武鉉両政権の太陽政策に対して、新たな「第三の道」を模索している可能性がある。アメリカも中国も積極的に朴槿恵にたいするアプローチをおこなっているが、韓国の中国傾斜は顕著なものとなっている。アメリカは緊密な米日韓関係の構築を求めているが、領土問題や歴史認識に関する韓国国内の対日批判感情が強まり、日韓関係は微妙なものになってきている。中国の習近平体制は朝鮮重視姿勢を強めた。最初の重要な外交活動として朝鮮へ党代表団を派遣した。しかし核ミサイル問題を契機とする対朝強硬論・感情も台頭している。中国はなんとしても東アジアでの戦争を避けようとしているが、いまのところ六者協議の再開の展望もなく、突破口を見出せていない。
 オバマ第二期政権は、ケリー国務長官やヘーゲル国防長官の登場で対朝政策に変化を持ち込む可能性はあるがまだはっきりしない。だがアメリカの朝鮮政策はイラン政策とは違う。イランは中東の地域大国であるが、朝鮮はそうした位置づけをされていない。またイランから核兵器などがテロリストに渡る可能性が危惧されているが、朝鮮はそうでない。
 日本の位置について言えば、いま経済大国だが政治小国である影の薄いいずれの国からも相手にされない存在となっている。硬直的に拉致問題のみにこだわり、まったく戦略的アプローチができない。その原因としては、朝鮮半島情勢に対する国民的無関心があり、伝統的かつ牢固とした朝鮮蔑視、領土問題に関する頑迷な立場、感情的右翼小児病的な対朝敵対姿勢があり、安倍政権は「朝鮮脅威論」を利用する軍事大国化への策動を強めている。六者協議には一貫した消極姿勢、合意プロセスの障害、原油提供義務の不履行など妨害的な役割を果たしている。
 日韓関係については、毎日新聞と朝鮮日報が九九年以降五回実施した日韓合同調査をみてみたい。そこからは韓国人より日本人の対韓感情の揺れの大きさが目立つ。それについて毎日新聞の記者は次のようなコメントをしている。「調査結果をみる限り、比較的固まった対日観がある韓国人に対し、日本人の対韓意識は時々の出来事に左右されやすい。今後の韓国の出方によっては、親しみを『感じない』が『感じる』を逆転する可能性もある」。日韓は「すれ違い」の時代に入ったといえる。
 安倍政権の対朝鮮政策は硬直した強硬姿勢を続けており、対朝制裁強化を目ざして米韓との協調・協力している。だが、日本政府のアメリカへの「テロ支援国家」再指定申し入れにはオバマ政権は回答してこない。また韓国の新政権も対日姿勢は慎重なものだ。
 朝鮮側は、平壌宣言に基づく日朝国交正常化実現による国交正常化を早期に実現することを基本政策としているが、日本政府の政策に期待はない。

 チェ・ウナさん(韓国進歩連帯統一局長)は、「朴槿恵保守新政権登場と韓国民衆の闘い」について報告。朴槿恵は選挙戦の最中には、均衡(バランンス)をキーワードとして強調した。
 韓米、韓中、そして南北も関係を改善すると言っていた。しかし、オバマ政権のアジア回帰戦略は米中関係を難しいものにしている。韓米中心となって結局は韓中は対話はするが実効性の無いものとなるだろう。口ではバランンスを言うが、実は李明博政権と同じ韓米軍事同盟強化路線以外の何者でもない。李明博政権は北の政権の崩壊を狙っていたが、朴槿恵は今までの南北共同宣言の尊重や人道支援の回復などのポーズをとっている。しかし、一方で、北の核問題が解決してからの政治的軍事的な緊張緩和を言っており、緊張緩和のために政治を何とかしていくのではなく、その逆なのである。
 私たち進歩連帯は、新政権は前政権となんら変わっていないと評価している。米朝の緊張は激化しているが、対話によって解決が必要であり、平和構築の闘いが求められている。

 ハンチュンモク韓国進歩連帯共同代表は、朝鮮戦争停戦六〇年を平和元年にすることにむけて、今年七月、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの主要都市で平和大行進、韓国では全国主要都市を巡回し、さまざまな集会、音楽会、パレードなどをおこなう、国際平和討論会を開き、国際平和宣言を発するなどの行動を提起した。

 最後に、沖縄一坪反戦地主会・関東ブロック、許すな!憲法改悪・市民連絡会、VAWW RAC(「戦争と女性への暴力」リサーチアクション)、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会からのアピールがおこなわれた。


すべての争議の解決に向けて東京総行動

                 
経団連へも申し入れ

二月一五日、第一五二回東京総行動(けんり総行動実行委員会)が闘われた。けんり春闘全国実行委員会は、全国労働組合連絡協議会(全労協)加盟労組をはじめ、全造船関東地協、全日本港湾労働組合、全日本建設運輸連帯労組、民間中小労組懇談会、おおさかユニオンネットなど純中立組合、中小企業で働く労働者で組織され、労働者の生活向上を願って活動を行なっている。
 午前八時四五分に日本郵政本社前で、六五歳雇い止め解雇(郵政非正規社員の「定年制」無効裁判を支える会)抗議行動からスタート、つづいて今回から総行動に参加するJAL不当解雇撤回原告団とともにJAL本社に不当解雇の撤回を求める行動、つづいて東京都庁(解雇・東京都学校ユニオン、田畑先生の再雇用拒否の真相を究明する会、東京労組文京七中分会、学園再建・全国一般干代田学園労組)、東芝(解雇 全造船関東地協・ユニオンヨコス力、「稲葉さんの裁判(有期雇用問題)を支援する会」)、ニチアス(団交拒否・アスベスト被害補償 全造船機械ニチアス・関連企業退職者分会、全造船機械労働組合アスベスト関連産業分会)、トヨタ東京本社(解雇・団交拒否 全造船関東地協・フィリピントヨタ労働組合、フィリピントヨタ労組を支援する会)、昼には厚生労働省(薬害救済 カルテのないC型肝炎訴訟原告団、C型肝炎患者をサポートする会)、NTT持株会社(解雇・NTT木下職業病闘争支援共開会、東京労組NTT関連合同分会)、三井不動産(アスベスト被害・不当労働行為 東京労組日本エタニットパイプ分会)、総務省(解雇 反リストラ産経労)、ヤンマー東京支社(解雇 びわ湖ユニオン)、新日鉄本社(戦後補償 日本製鉄元徴用工裁判を支援する会)への行動をおこなった。
 午後四時からは、けんり春闘経団連要請行動。けんり春闘実行委員会は、経団連は「企業の社会的責任を自覚し、『企業第一・利益第一』という姿勢を転換して、『貧困・格差社会』の解消に尽力することが求められています」として、以下のような申し入れをおこなった。@東京電力に福島第一原発事故の責任を取り、自主避雑考を含む全ての被災者に十分な補償を行うよう指導すること。A総額人件費抑制策を改め、「賃金引き上げ」、「雇用の維持・拡大」とに充てること。B派遣・契約社員等非正規労働者を正社員に転換を図るよう指導すること。C有期労働者の五年雇い止めを行わないこと。D改正労契法二〇条を周知し、有期を理由とした処遇差別を是正するよう指導すること。E偽装請負、違法派遣、サービス残業、名ばかり管理職、違法「見なし労働」の根絶を指導すること。F加盟企業で働く全ての労働者(非正規、派遣を含む)を社会保険に加入させること。G有期労働契約は臨時的・一時的業務、および例外的業務に限ること。H下請け企業に対する不当な単価切り下げ、納期の強要を行わないよう指導すること。I原発事故の復旧に携わる労働者、並びに放射能汚染物の処理に関わる労働者の安全・健康維特に最大の注意を尽くすよう傘下企業を指導すること。J原発に依存するエネルギー施策を改めること。また、日本社会を破壊するTPPへの参加方針を取りやめること。
 だが、経団連は今回も何人ものガードマンを配置して要請団を阻止し、行動に妨害を加えたが、こうした暴挙を参加者はシュプレヒコールをあげて糾弾した。
 夕方には、日本教育会館で脱原発社会をめざす労働者実行委員会による「福島とつながる労働者集会―原発NO! 憲法YES!」が開かれた。ルポライターの鎌田慧さんが講演し、福島県平和フォーラム代表、警戒区域で除染作業を行った労働者からの報告があり、最後に三月の脱原発行動を成功させようと団結ガンバロウをおこなった。


集団的自衛権の行使を断固阻止しよう!

 二月の日米首脳会談で、安倍首相はオバマ米大統領に対して集団的自衛権の行使容認の検討を始めたと報告した。日本の歴代首相で初めてのことだ。安倍は前の内閣の時に、事前に結論がわかるような「有識者」をあつめて「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」をつくった。しかし、安倍の唐突な退陣の後を引きつぎ懇談会の報告を受けた福田首相は、これを凍結した。福田は「懇談会」の結論が日本周辺の平和と安全に否定的な影響をもたらすと見てそうしたのだ。
 安倍は三月八日、「懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)の会合を復活させた。メンバーは第一次安倍内閣の設置時と同じ。座長の柳井を始め岡崎久彦元タイ大使、葛西敬之JR東海会長、北岡伸一東大教授、坂元一哉阪大教授、佐瀬昌盛拓大教授などでいずれも名うての日米軍事同盟強化のタカ派であり、「集団的自衛権行使容認に向けたもの」であるのは一目瞭然だ。この会合では報告書を改めて安倍首相に提出した。検討項目は@公海における米艦防護、A米国に向かう弾道ミサイルの自衛隊による撃破、BPKO活動等における自衛隊の武器使用、CPKO活動等における他国への後方支援の四類型であった。そして報告書は「四類型についての具体的検討を通じて、憲法解釈を含む以下の提言を行うものである」として、@は「同盟国の信頼関係の維持に不可欠」であり、Aでは、迎撃しなければ「同盟を根幹から揺るがす」として、集団的自衛権の行使を認めるよう求めたものだった。報告書は理由として次のように言う。「憲法第九条が国民を守るための必要最小限度の実力行使、すなわち個別的自衛権しか認められていないというこれまでの政府の解釈は、日本国憲法が制定された終戦直後の時代及び冷戦時代の国際関係及び我が国国内の状況を反映するものであったと考えられる。しかし、このような考え方は、激変した国際情勢及び我が国の国際的地位に照らせばもはや妥当しなくなってきており、むしろ、憲法第九条は、個別的自衛権はもとより、集団的自衛権の行使や国連の集団安全保障への参加を禁ずるものではないと解釈すべきものと考えられる。」
 会合で、安倍は「日本を取り巻く安保環境は大きく変化し、日米同盟の責任は重くなっている。平和と安全を維持するため、日米安保体制の最も効果的な運用を含め何をなすべきか議論してほしい」と述べている。懇談会は、テロやサイバー攻撃などを「新たな脅威」として、四類型の拡大を拡大し、今夏の参院選前にも新たな報告書を提出するとしている。

 二月に大阪で開催された「第一六回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」は、共同声明「『集団的自衛権の行使』は『戦争』です 安倍内閣は憲法の不当な解釈変更をやめ、九条を守れ!」への諸団体・個人の賛同(公表可のみ)を募っている。締め切りは三月末までで、四月はじめに様々な形で国会各会派に届ける。賛同の連絡先は、kenpou@annie.ne.jpまたはFAX03(3221)4668、郵便は東京都千代田区三崎町2―21―6―301市民ネットあて。

共同声明
   「集団的自衛権の行使」は「戦争」です  安倍内閣は憲法の不当な解釈変更をやめ、9条を守れ!

昨年末の衆院選の結果、再登場した安倍内閣は、リベンジとばかりに「集団的自衛権の行使」と「憲法の改悪」をめざし、ひたすら準備を強めています。しかし自民党が多数議席を獲得したとはいえ、民意が九条をはじめとする改憲を支持したのではないことは多くのデータも示すところです。まして、昨年四月に発表された自民党改憲草案の言う「元首天皇を戴き、国防軍で『自衛戦争』をする国」には大多数の人びとが不安を示しています。
 安倍内閣は、改憲の要件を定めた第九六条をまず変更して改憲を容易にしたうえで、9条などをはじめとする平和、人権、国民主権の憲法三原則の破壊に向かおうとしています。私たちはこのような憲法改悪を断じて容認できません。
 しかも安倍内閣は、そうした明文改憲さえも待たないで、領土問題など東アジアの緊張からくる偏狭なナショナリズムを煽りたて、歴代政府が繰り返し確認してきた憲法解釈を変えて、集団的自衛権が行使できるよう企てています。それをお手盛りの諮問機関による「答申」で飾り立て、国家安全保障基本法なるものを制定することで、その合法化を謀っています。
 しかし、安倍内閣がめざす集団的自衛権の行使とは、米国の世界戦略の要求に従い、米国と共に海外で戦争をすることであり、たとえ「基本法」などでごまかしても、憲法第九条の許容するところではありえないのは明白です。「集団的自衛権」を行使することは、九条に真っ向から反して「戦争をする」ことに他なりません。私たちは、このような横暴な憲法解釈による憲法破壊を許しません。
 以上の立場から、私たちは連名をもって、安倍内閣に日本国憲法第九九条が厳粛に規定する憲法尊重擁護義務に従い、不当な憲法の解釈変更や拡大解釈、憲法改悪への動きを中止するよう要求します。

二〇一三年二月一七日

(呼びかけ)第一六回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会実行委員会
 以下、賛同団体、個人の連署。I女性会議大阪/憲法を生かす会/憲法を生かす会東京連絡会/第九条の会ヒロシマ/ピースリンク広島・呉・岩国/ふぇみん大阪/平和を実現するキリスト者ネット/許すな!憲法改悪・市民連絡会


『相手をやっつける』から『相手の動きに応じ、自分に最適な道を選択する』考えへ

 朝鮮半島、日中間をはじめ東アジアでは政治的軍事的対立が激化し、関係諸国の今後の政策いかんによっては戦争という事態になりかねない。なんとしてもこうした悲惨な結果を避けなければならない。いまこそ真の政治主導での平和解決が求められている。そのためには既存の考え方からの大胆な転換が必要だ。孫崎享氏の『日本人のための戦略的思考入門―日米同盟を超えて 』(祥伝社新書)は、戦略とは「人や組織に死活的に重要なことをどう処理するか」と考える学問である、とした上で、自らの戦略論がこれまでのものと違うことを強調する。「私は、これまで『相手より優位に立つ』『相手をやっつける』戦略は必ずしも自国の利益につながるわけではないという漠然とした考えを持ちながら、体系化できなかった。そうした中で『ゲームの理論』に出会った。そして、『相手より優位に立つ』や『相手をやっつける』という考えでなく、『相手の動きに応じ、自分に最適な道を選択する』という考えで臨むことが、自らに最大の利益をもたらすことを確信した」。
 そして「読者に対して、ただ一つこれだけは読んでほしい」として、フランスの軍人戦略家ボーフルの『戦略入門』(一九六三年)をあげる。しかし「訳は防衛研修所にあるらしい。残念ながら国会図書館にもない」ということで、生人目章防衛大学校教授著『戦略的意思決定』(朝倉書店)のボーフルの戦略論から引用する。
「彼(ボーフル)も同じように、戦略の本質は、意思の対立から生じる紛争を解決するために力を用いる、弁証法的な術であるとした。闘争を続けることの無益さ、精神的損失の大きさなどを相手に悟らせることができるのならば、対立は決着すると考えた。そして、相手に押し付けたいとすることを相手が受け入れるのに十分なレベルで、相手に対して精神的崩壊を与えることが重要であるとした。このことから、軍事的手段だけでなく、非軍事的な手段(政治的、経済的、心理的、あるいは思想的な手段)の中から、その時々の状況に応じて最適なものを選び、それらをうまく結びつけることで、心理的な効果を最大限にあげることを、戦略の要諦とした」。そして孫崎氏は「私は、ボーフルの言を、さらに拡大解釈したい。『闘争を続けることの無益さ、精神的な損失の大きさなど』を『相手(国)に悟らせること』だけでなく、実は『自分(の国)に悟らせる』、これが極めて重要だ」という。
 そして、つぎに「ボーフルの論を補足する上でシェリング(「ゲームの理論的分析を通じて紛争と協調への理解を深めた」功績でノーベル経済学賞を受賞)の考え方」を紹介する。「紛争をごく自然なものととらえ、紛争当事者が『勝利』を追求しあうことをイメージするからといって、戦略の理論は当事者の利益がつねに対立しているとみなすわけではない。紛争当事者の利益には共通性も存在するからである。実際、この研究分野(戦略)の学問的豊かさは、対立と相互依存が国際関係において併存しているという事実から生み出される。当事者双方の利益が完全に対立しあう純粋な紛争など滅多にあるものではない。戦争でさえ、完全な根絶を目的とするもの以外、純粋な紛争とはいえない。(中略)『勝利』という概念は、敵対する者との関係ではなく、自分自身がもつ価値体系との関係で意味をもつ。このような『勝利』は、交渉や相互譲歩、さらにはお互いに不利益となる行動を回避することによって実現できる。(中略)相互に被害をこうむる戦争を回避する可能性、被害の程度を最小化するかたちで戦争を遂行する可能性、そして戦争をすることでなく、戦争をするという脅しによって相手の行動をコントロールする可能性、こうしたものがわずかでも存在するならば、紛争の要素とともに相互譲歩の可能性が重要で劇的な役割を演じることになる」(『紛争の戦略―ゲーム理論のエッセンス』勁草書房)。
 勝者と敗者の「ゼロサム」の結果ではなく、相互に有利な(とそれぞれが考える)いわゆるウインウインの状況をもたらすことだ。しかし、戦争に利益をみる集団が存在し、それがマスコミの無責任なナショナリズム扇動によって世論が形成され、緊張状態の激化がもたらされる。こうした事態を変えることが必要だ。孫崎氏が「重要なのは相手との関係ではない。自分の価値体系との関係である。自分の価値全体の中で争点をどう位置づけるべきか、それを考えた時、紛争の回避が実は利益をもたらすことがわかる。これを理解することによって、戦略に新たな世界が広がる。」と言っているように、自己の価値体系―日本がどういう政治方向、近隣関係を構想するか問われている。 (H)


反紀元節闘争

 二月一一日、反「紀元節」行動実行委員会による「安倍改憲政権を許すな! 反『紀元節』行動」が闘われた。
 日本キリスト教会館での集会では、安倍政権の憲法改悪、オスプレイ配備、原発政策、警察弾圧と右翼勢力などについて四人の報告。
 最後に「二・一一集会宣言」を採択した。「反天皇制運動の課題としては、本日の行動を始めとして、四・二九の反『昭和の日』、八・一五の反靖国・全国戦没者追悼式の取り組みと続き、秋の東京国体=『スボーツ祭東京二〇一三』に反対する行動に取り組んでいかねばならない。そしてこの全体を、日米安保と自衛隊強化、そしてそれを突破口とした改憲への動きの中で強まるナショナリズム・排外主義、総じて安倍改憲政権の政治方向との対決として、進めていかなければならない。さまざまな運動を担っている人びととともにその闘いを開始していくことを、ここに宣言する」。
 集会終了後、右翼の妨害をはねのけてデモを貫徹した。


せ ん り ゅ う

      ―連句―

  年度末道路あちこち穴だらけ

  三本目だが矢は折れている

  甘いあまい千兆円を舐めるやつ

  経済界はギャンブル世界

  欲しいのさ用心棒さ自由がさ
 
  国民忘れ道穴だらけ

                    ヽ 史


複眼単眼

      
「憲法発議要件考」考

 これは三月一日から五回にわたって、「読売新聞」が連載した記事のタイトルからとったものだ。同紙は四日には「憲法九六条 改正要件緩和が政治を変える」という社説まで掲載した。
 記事の全体を紹介するまでもないので、ちなみに連載の五回分の見出しを列挙してみよう。
 改正「世界では当たり前」〜独、毎年のように〜古い方から十四番目@ 「拘禁服」着続ける日本〜保革対立 タブー化招く〜米独は国民投票なしA 湾岸危機議論の転機〜国際貢献テーマに〜世論調査、賛成が増加B 六〇年間の「不作為」解消〜国民投票法成立「次の一歩」、九六条改正〜三分の二で国民に提案C 「改正」対応割れる民主〜党分裂の引き金に?〜夏の参院選、三分の二焦点D 
 これを見れば読売の言いたいことはほぼわかる。
 〜時代の変化に伴い、憲法と現実の乖離が目立っている。制定以来、一度も改正されていない日本国憲法は世界的に見ても希有な存在だ。「日本維新の会の橋下共同代表が『中身の議論も大切だが、国民に改正案の是非も問うことができない状態を放置していいのか』と主張するのはもっともだ。憲法改正を困難にしてきた九六
条の改正要件を緩和すべき時である」(前出社説)〜
 でたらめもほどほどにしてもらいたい。
 憲法改正を五六回行ったといわれるドイツは三分の二条項は日本国憲法と同じで、国民投票規定がないだけだ。なのに、三分の二条項が悪いのなら、ドイツではなぜ五六回も改憲が「発議」されているのか。要は三分の二が問題なのではない。憲法の議論のなかで国会の与野党大多数の成熟した議論がなされたからに他ならない。米国は日本国憲法の改正条項よりもより厳しい。両院の三分の二に加えて、全州の四分の三の賛成が必要とされている。九六条の「三分の二」条項が問題のカギではないことが示されている。
 問題は改憲発議の中身と議論の成熟度なのだ。橋下は「中身の議論も大切だが」などといって、中身を軽んじて、国会の多数派が改正案の是非を問えるようにするなどというが、まさに改憲派の苦しい論理矛盾だ。
 中身の議論を軽視して国会の多数派が改憲を発議すれば、憲法は政府の都合のいいように変えられてしまう。まさに立憲主義はこれを回避しようとしているのだ。
 読売は「憲法と現実の乖離」などというが、これまで改憲派は国会議席の多数を駆使して、様々に解釈改憲の立法をすすめることで、改憲の「現実」を作ってきた。それこそが問題なのだ。「乖離」するような解釈をごり押ししてきたのだから、「乖離」するのは当たり前だ。それを改憲の口実にするのはまさに本末転倒というものだ。
 一方、市民運動の一部にも、『大事なことはみんなで決めよう』などというスローガンを掲げる人がいるが、発議を容易にしても国民投票があるとばかりの議論は、あまりにもナイーブにすぎる。かつてドイツのヒトラーが国民投票をファシズムに利用したように、国民投票は万能ではない。独裁権力が国会の過半数で発議して、例えば偏狭なナショナリズムなどの特別の政治的な空気を醸成することに成功すれば、国民投票は少数派の基本的人権の弾圧に利用される「プレビシット」と呼ばれる危険に陥ることすらありうる。昨今の領土問題で、まざまざとその危険性を感じさせられるではないか。
 日本国憲法がこうした危険をも想定して、権力者の暴走にタガをはめていることは正当であり、民主主義と人権を守り抜く固い決意の表現なのだ。
 安倍首相ら改憲派のめざすところは、故意にこの点をゆがめ、自民党改憲草案がめざす「天皇を元首に戴いて、国家緊急権で人権を抑圧しながら、国防軍で戦争をする国」にむかって、まず九六条改憲で、有権者に改憲慣れをさせることに狙いがある。第一次安倍内閣では、究極のターゲットである第九条改憲に向かって急ぎすぎたという反省が、安倍首相にはある。そこで今回は段階を追って、九六条から改憲をすすめようとしているのだ。
 しかし、維新の会の橋下徹共同代表は「(この通常国会に)憲法九六条の改正案は恐らく維新の会とみんなの党が共同で出していくかと思うが、そのときに、民主党の中は(意見が)分かれるのではないか」と語り、読売と同様に民主党の分裂を促した(二月二一日記者会見で)。
 安倍や橋下はこうやって読売新聞に応援されながら改憲の道を走る。 (T)