人民新報 ・ 第1301号<統合394号>(2013年5月15日)
目次
● 安倍改憲・反動内閣と対決しよう 姑息な先行的96条改憲への批判が拡大
● 憲法破壊の危機に抗して、超党派の「立憲フォーラム」設立
● 安倍政権の教育政策にNOを! 平和と人権の教育を!
ネットワークがスタート
● 子や孫を守りたい! 島根原発3号機、提訴へ
● 〜今、私たちに何ができるのか 『小出裕章講演会in釧路』
● 沖縄はじめ各地で「主権回復の日」に反対する行動
● 安倍「教育改革」批判 〜第二次提言のねらい〜
● オスプレイ配備撤回へ 全国集会
● アベノミクスとは「通貨のジェット噴射」だ
● 日比谷メーデー 労働者の生活と権利、平和と民 主主義のために団結して闘おう
● せ ん り ゅ う
● 複眼単眼 / 安倍首相の96条改憲論のまやかし
安倍改憲・反動内閣と対決しよう
姑息な先行的96条改憲への批判が拡大
安倍内閣は憲法改悪の策動を強めている。安倍は、集団的自衛権の行使を可能にする国家安全保障基本法の制定をもくろむなど解釈改憲をすすめると同時に、自民党改憲案を明文化しようとしている。そして、その反動的・好戦的な内容を前面化して公然と改憲を問うのではなくまず改憲要件を緩和させるなどという姑息な手段で関門を突破しようとしている。そのために、維新の会などと連携し、排外主義分子を動員して対外的に緊張をあおり、軍備増強・ナショナリズムの気運をつくりだし、夏の参院選で改憲勢力を三分の二以上にして九六条改憲を発議し、国民投票に持ち込もうというのだ。こうした策動を断固として阻止しなければならない。安倍政権もその反動的な路線・行動から近隣アジア諸国のみならず、米国からも批判されるなど、安倍は前政権末期と同じような窮地に追いやられようとしている。
この事態に全国各地・各階層の九条の会をはじめ改憲反対のさまざまな動きが活性化し、広がりをみせている。改憲阻止、安倍内閣を追い詰める闘いを強めていこう。
五月三日の憲法記念日、東京では、三五〇〇人が参加し、日比谷公会堂で「5・3憲法集会2013」が開かれた。
主催者を代表して高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)が安倍政権の九六条改憲を突破口とする攻撃に、アジアの人々とも連帯しながら闘っていこうとあいさつ。つづいて環境ジャーナリストのアイリーン・美緒子・スミスさんと前沖縄弁護士会会長の加藤裕さんがスピーチ。
日本共産党の志位和夫委員長。改憲派は自ら三つの矛盾を作り出した。第一には、改憲をやりやすくする96条改定は憲法を普通の法律と同じようなものとしてしまうもので、第二に自民党改憲案そのものが「国防軍」創設、基本的人権否定であること、第三に安倍政権の侵略戦争と植民地支配を肯定・美化する歴史逆行で、これらのことが多くの人びとの不安と批判を巻き起こしている。こうした矛盾と弱点をつく大きな運動を作っていこう。
社会民主党の福島瑞穂党首。安倍首相は改憲を言い、石原、橋下などは徴兵制さえ叫んでいる。自民党改憲案は憲法が権力者を規制するという立憲主義を否定し、基本的人権を認めず国民をさまざまな義務で縛り、戦争のできる国にしようというものだ。力をあわせて改憲攻撃に断固反対しよう。
集会は決議「生かそう憲法 輝け9条 あらゆる憲法改悪を許さず、今こそ平和といのちを尊重する社会へ」を採択した。
集会後の銀座パレードで、改憲反対をアピールした。
憲法破壊の危機に抗して、超党派の「立憲フォーラム」設立
四月二五日、衆議院議員会館で「立憲フォーラム」の設立総会が開かれ、賛同する国会議員をはじめ憲法改悪に反対する市民団体などから多くの人が参加した。
安倍自民党は昨年、憲法改定案を出したが、そこには国防軍創設や天皇元首化、さまざまな国民の義務の新設などの項目が並ぶ。とくに今年夏の参院選に争点に、まず改憲発議要件のハードルを下げるという九六条改正をもくろむなどの策動に対するかつてない危機意識の広がりがこの「立憲フォーラム」の設立となった(二面に「立憲フォーラム設立趣旨書」を掲載)。立憲主義をまもる超党派の議員連盟である。
はじめに民主党の近藤昭一衆議院議員が経過報告。辻元清美衆議院議員が規約、役員体制になどについて提案し確認された。代表に近藤昭一衆院議員、副代表に阿部知子衆院議員、水岡俊一参院議員、吉田忠智参院議員、幹事長に辻元清美衆院議員、事務局長に江崎孝参院議員、事務局次長に那谷屋正義参院議員などが役員体制である。
記念講演では、藤井裕久・民主党顧問、武村正義元・元さきがけ代表がおこなった。
立憲フォーラム設立趣旨書
いま、時代は大きな転換期に入っており、新しい世界の協調・共生関係の構築が求められています。そうしたなかで、日本はどういう立ち位置をとるのかが問われています。先の大戦での日本国民の死者は軍人から市民まで多大な数にのぼり、世界もおびただしい犠牲者を出しました。戦後の日本は、その反省に立ち大日本帝国憲法を改正し、その体制を民主主義へと移行させました。
私たちは「人権の保障を宣言し、権力分立を原理とする統治機構を定めた憲法」を基礎にすえた立憲主義の立場をいま一度確認すべきだと考えます。
憲法とはそもそもどのようなものであるのか、戦後、現憲法がどのような役割を果たしてきたのか、はたして現憲法に追加されるべきことはあるのか、現在語られている九六条を抜き出して憲法を「改正」するということの意味するものは何か、といったことを闊達に論議し、立法府の構成員たる議員としての責任を果たしたいと、ここに立憲フォーラムを立ち上げるものです。 既に明らかにされた自民党の憲法改正案は天皇を元首とし、自衛隊を国防軍にかえ、基本的人権を制限できるように「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」にすりかえるなど、戦後日本社会の規範・枠組みを根本から変える内容となっています。憲法は政府を縛るのではなく、国民を拘束するものだという考え方は主権在民という立憲主義の原則を根本的に否定するものです。
日本維新の会は綱領で「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法を大幅に改定」との立場を明らかにしています。
これらの動きは、憲法改正の是非の立場をこえて、立憲主義そのものの危機であると考えます。
私たちはこうしたさまざまな動向に平和・人権・環境を重視する立場から国会や言論の場で検証と同時に提言を行うために、立憲フォーラムに、是非多くの議員の皆さんの参加をお願いいたします。
二〇一三年四月一八日
立憲フォーラム呼びかけ人 阿部知子、江崎孝、大河原雅子、近藤昭一、篠原孝、武内則男、
辻元清美、那谷屋正義、松野信夫、水岡俊一、吉川元、吉田忠智
安倍政権の教育政策にNOを! 平和と人権の教育を!
ネットワークがスタート
四月二六日、文京区民センターで、「安倍政権教育政策NO 平和と人権の教育を!
ネットワーク」のスタート集会が開かれた。このネットワークは、宇都宮健児さん(前日弁連会長)、小森陽一さん(東大教授)、西野瑠美子さん(ジャーナリスト)などの呼びかけによるもので、学校に自由の風を!ネットワーク、子どもと教科書全国ネット、「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会などが参加している。
開会あいさつにつづいて、呼びかけ人で作家の井出孫六さんの「安倍政権は戦後六八年積み重ねられてきた社会的仕組みをすべて組み替えようとしている。その中心に憲法改悪がすえられており、ワイマール憲法を覆したヒトラーを想起させる」というメッセージが紹介された。
俵義文さんが、「安倍政権の『教育再生』の危険なねらい」と題して報告。自民党はこの間、とりわけ野党時代に急速に右翼政党として純化した。安倍政権の四つの重点政策のひとつが教育だ。自民党は野党時代の昨年一〇月下旬に、安倍総裁の直属機関として「教育再生実行本部」を発足させた。本部長は下村博文で、現在は文部科学大臣となっている。それには五つの分科会(@基本政策、Aいじめ問題対策、B教科書検定・採択改革、C大学教育の強化、D教育委員会制度改革)があった。そして一一月にはその「中間まとめ」を発表した。それを一二月の総選挙で、自民党の重点政策、政権公約に反映させ、安倍内閣成立直後の一月には党の第一回教育再生実行本部会合を開き、つづいて首相官邸に「教育再生実行会議」を設置し、それが第一次提言(いじめ問題)、第二次提言(教育委員会のありかた)を出した。実行会議の開催時間は一回一時間程度で、「いじめ」は二時間、「教育委員会」は三時間でまとめたことになる。基本は、自民党の「教育再生実行本部」の「中間まとめ」ですでに決まっており、それを内閣の方針とするだけのものだ。
こうした安倍政権の教育政策にたいする私たちの闘いは、二〇〇五年から〇六年にかけて前の安倍政権が強行した教育基本法改悪反対を上回る大きな運動とならなければならない。そのためには、まず安倍政権の教育内容を広く知らせる取り組みが必要とされる。わかりやすい各種のパンフレットを発行し、それを広めていかなければならない。そして、今日スタートした「安倍政権教育政策NO 平和と人権の教育を!
ネットワーク」は、こうした運動を連携して強化していくために活動していきたい。
つづくリレートークではさまざまな人が発言、安倍政権の危険な教育政策に反対していこうとアピールした。
子や孫を守りたい!
島根原発3号機、提訴へ
「中国電力・島根原子力発電所3号機の運転をやめさせる訴訟の会」は、四月二四日、国に対する「原子炉の設置許可を求める無効確認を求める行政訴訟」と、中国電力に対する「運転差し止めを求める民事訴訟」を松江地裁に提訴をした。
昨年九月頃から始まった準備期間を経て集まった原告は、北は北海道から南は沖縄県にいたる四二八人で、うち三分の一の原告は、原発から三〇キロ圏域を抱える島根、鳥取両県以外の一八都道府県からの参加者だ。これに加えてサポーターの支援も、全国各地から約一五〇名余りと四団体が参加をするという、大きな原告団となった。
弁護団も島根、鳥取両県の弁護士三五人に加えて、福島原発事故を機に結成された全国の弁護士ネットワーク「脱原発弁護団全国連絡会」からも若手の弁護士を中心に多数の参加を得て、代理人の総勢は九三名にもなり、これまた大弁護団が結成された。
この日、松江市の教育会館で行われた結成総会には、八〇名余りの原告団、サポーター、弁護団、報道関係者が詰めかけた。
事務局から、経過報告と規約の確認、役員体制と紹介、財政報告などが行われた。
その後、原告団を代表して挨拶に立った、井口隆史原告団長と新田ひとみ訴訟の会共同代表は「1・2号機では悔いを残した。子や孫にこれ以上の禍根を残さないためにも、3号機は絶対に動かしてはならない」「未来にむけて核のゴミを先送りし続ける無責任な原発と、地球上の生命は共存できません」と、訴訟にかける熱い思いを語った。
弁護団長となった妻波俊一郎弁護士は三二六ページにも及ぶ訴状の要点を説明したうえで、「立証責任をめぐる司法判断という難題もあるが、共に頑張りましょう」と出席した七人の弁護団を代表して決意を述べた。
総会を成功裡に終えた参加者は、そぼ降る雨にもめげず、訴状と委任状、プラカードを先頭に松江地裁まで元気に行進し、大きな拍手が沸き起こる中で無事に提訴の手続きを終えた。
丁度この日の午前中に、広島高裁松江支部で行われた島根原発1・2号機の運転差し止めを求める民事訴訟での原告(一四〇人)が、ほぼ中国地方に限られた住民であったが、訴訟から一四年を経過した今日、3・11福島原発事故が3号機訴訟の原告・弁護団の形成に与えた影響は大きい。それは原発の持つさまざまな課題・問題が決して、立地県周辺住民だけに押し込められたものではないことをも物語っている。
一方、原発立地市長選で四月に再選を果たし、安堵の顔を浮かべた松浦正敬松江市長は、3号機の稼働について聞かれると、「新基準をクリアすれば認める」と稼働にむけては口も滑らかになってきている。
現在、福島原発事故以降に起こした訴訟は一七件に上っているという。
全国で反原発・脱原発を闘う皆さんに思いを馳せながら、共に頑張りたいと思う。
尚、訴状などは会のホームページ
(http://sayonara.daynight.jp/shimanegenpatsu/3goro/)で閲覧することができるので参照されたい。
島根原子力発電所3号機運転差止等請求訴状(要旨)
第1 請求の趣旨
1 経済産業大臣が被告中国電力株式会社に対して,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26
条第1 項の規定に基づき,2005(平成17)年4
月26 日付けでなした,原子炉設置変更許可処分が無効であることを確認する
2 経済産業大臣は,被告中国電力株式会社に対し,同社島根原子力発電所3
号機について,その使用の非開始を命ぜよ
3 被告中国電力株式会社は,同社島根原子力発電所3号機を運転してはならない
4 訴訟費用は,被告らの負担とする
との判決を求める。
第2 請求の原因
後記目次以下,第1章ないし第10章のとおり。
第3 証拠方法
追って提出する。
添付書類
1 資格証明1通
1 訴訟委任状856通(428名×2通)
〜今、私たちに何ができるのか 『小出裕章講演会in釧路』
GW最終日の悪天候の中、約600人が参加
五月六日、脱原発ネット釧路の主催する講演会が釧路において開催された。
講師には、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんを招き、会場には市民の他、隣接する根室や十勝方面などから約六〇〇人が訪れた。
主催者の挨拶に続き、『子どもたちに原発は残せない!』と題して、小出さんが講演を行った。
前段、人間は両親から受け継いだ遺伝子情報(DNA)を、細胞分裂を繰り返しながら正確に複製することで命を維持していることなどを詳しく解説し、「巨大な破壊力を持つ放射線が、そうした生命維持に欠かせない遺伝子を簡単に切断してしまう」と、その危険性に言及した。
また、「被曝のリスクは低量に至るまで存在し、これ以下は安全であるという『しきい値』はない」という被曝に関する学問の到達点を紹介し、政府や御用学者の振りまく「低線量であれば安全」だとする新たな「安全神話」を批判した。
そして、原子力を選択したことに責任のない子どもたちを被曝させないという願いを達成するためにも、政府・東電は食品の汚染状況を徹底的に調査して公表すべきだと力説した。
また、「被曝労働の下請け化」「過疎地域の原発立地化」「核廃棄物の後世へのツケ回し」という、原発のもつ差別構造にも触れ、その問題点を明らかにした。
最後に小出さんは、かつての戦争責任を例に、「原発事故を機に、皆さんは騙されていたと思うかも知れないが、騙されていたとしても、無罪ではない」と、自分も含めて原発を結果的に容認してきた責任を厳しく指摘し、原発の廃絶に向け、意識と社会構造の変革を強く訴えて、二時間に及ぶ講演を終了した。
沖縄はじめ各地で「主権回復の日」に反対する行動
安倍政権は、アメリカの軍事占領を合法化し、沖縄を米軍支配下に切り捨てたサンフランシスコ平和条約発効の日を「主権回復の日」といちづけ、政府による式典を強行した。沖縄ではこの式典に合わせて、「政府式典に抗議する『屈辱の日』沖縄大会」が開かれ一万人を超える人びとが参加し抗議の声をあげた。採択された大会決議は宣言する―「県知事、県議会、四一市町村の長と県議会議長の県民総意の反対を押し切って、昨年、普天間基地に欠陥機オスプレイが強行配備された。さらなる追加配備、嘉手納基地への配備計画の浮上、辺野古新基地建設手続きの強行など、県民総意を否定するこの国のありようは果たして民主主義といえるのか。国民主権国家としての日本の在り方が問われている。この現状の中、沖縄が切り捨てられた『屈辱の日』に、『主権回復の日』としての政府式典を開催することは、沖縄県民の心を踏みにじり、再び、沖縄切り捨てを行なうものであり、到底許されるものではない。よって、われわれ沖縄県民は政府式典に『がってぃんならん』との憤りをもって強く抗議する」(「がってぃんならん」とは「合点がいかない」「承知しない」ということ)。
東京でも、日比谷図書館ホルで、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック主催の「『主権回復の日』記念式典抗議集会」が開かれた。元沖縄青年同盟の本村紀夫さん、沖縄大学名誉教授の新崎盛暉さん、ヘリ基地反対協議会共同代表の安次富浩さんなどが発言した。集会を終わってのデモには四〇〇人が参加し、式典に抗議し、沖縄基地の撤去を叫んだ。
午後には、反安保実行委員会による「誤った戦後国家のスタート『「主権回復の日」を今こそ問う!
──沖縄・安保・天皇制の視点から』が開かれ、新崎盛暉さんが講演した。
安倍「教育改革」批判 〜第二次提言のねらい〜
政府の「教育再生実行会議」は、去る四月一五日に第二次提言(教育委員会制度等の在り方)について安倍首相に提言した。
その大きなポイントは、「地方教育行政の権限と責任を明確にするため」として、自治体の首長が任免する教育長を、教育行政の責任者として、権限と責任を一元化し、教育事務を行うよう見直した点にある。首長は任命権と同時に罷免権ももち、議会が教育長の資質、
能力をチェックするとしている。
事実上、首長(行政)による教育への関与が大幅に強化される方向にシフトしているのである。つまり、首長の意向を汲んだ教育長がすべてを決定していくことが可能になるという姿が浮かび上がってくる。
「教育長が教育の基本方針や教育内容に関わる事項を決定する際には、教育委員会で審議すること」としているが、教育委委員会の審議内容が教育長の意思決定にどの程度の影響力をもつのかなどについては何ら具体的に盛り込まれず、今後の文部科学相の諮問機関である「中央教育審議会」の審議に先送り、丸投げされた。教育委員会に対して一定の権限が付与されなければ、そのチェック機能を果たすことは、はなはだ困難であるといわざるを得ない。教育委員会は、首長―教育長の圧力に対して修正も加えられず、実質的に単なる諮問機関として形骸化されていく可能性が高い。
一方、「地方公共団体の教育行政が法令の規定に違反したり」する場合には、最終的に「国が、是正・改善の指示等を行えるようにする」と、国のチェック機能(介入)についてはしっかり明記しているのである。
そもそも、現行の教育委員会制度は、戦前、教育が政治によって支配され、天皇制と侵略戦争のための動員装置としての役割を担わされたことの反省から「政治的中立性の保持」のために、首長(政治)から独立した行政委員会として、合議制(首長の任命する原則五人の地域の有識者らで構成し、教育長は教育委員会から任命される)を一貫して維持してきたのである。
滋賀県大津市で中学生がいじめで自殺した問題や、大阪市立高校で体罰を受けて自殺した問題などで、教育委員会の責任が曖昧であったり、対応が迅速性に欠けるという批判があり、大阪においては教育委員会を廃止しようとする動きがでてきている。政治(首長)が教育を直接的に支配する動きとして、今回の提言と同様、警戒していく必要がある。
今回の提言が実施されれば、首長が変わるたびに教育方針が変わり、教育政策の継続性、一貫性が保たれず、教育現場に大きな混乱を招く恐れが出てくる。また、教育行政や学校運営について、地域住民が議論し参画する機会が失われ、さらに教育行政が住民から見えにくいものになっていくであろう。
そして、大きな問題となるのが、教科書採択である。
現行の教科書採択制度では、各採択地区において、教科書採択協議会の答申を受けて各教育委員会が決定することになっているが(実は、この方法でも、現場の教員の声は十分に反映されているとはいえない)、今後、教育長が採択権をもち、教育委員会の審議や同意も不要ということになれば、首長が自分の考えに近い教育長を任命することで、意に沿った教科書を容易に採択できるようになるのである。
今後の提言では教科書検定制度改悪も提言してくることが予想されるが、今回の提言では、自ら改悪した教育基本法の精神が生かされていないと歯ぎしりする安倍首相の意向を受けた、「国家のための教育体制」を地方まで貫徹させるための教育委員会制度改悪であることを見抜かなければならない。(一教育労働者)
(本紙前号の、高杉謙二「『教育再生実行会議』第一次提言から見た安倍『教育改革』の目指すもの!」参照)
オスプレイ配備撤回へ 全国集会
四月一三〜一四日、東京で「オスプレイ配備撤回・米軍基地問題を考える全国集会」(平和フォーラム、全国基地爆音訴訟原告団連絡会議、日米軍事再編・基地強化と闘う全国連絡会、オスプレイの沖縄配備に反対する首都圏ネットワークの四団体で共催)が開催された。
平和フォーラムの藤本泰成事務局長の主催者あいさつにつづいて、松元剛さん(「琉球新報」報道本部長)が「オスプレイ配備をめぐる沖縄」と題して講演。オスプレイの強行配備、「主権回復の日」など日本政府のあまりにも沖縄を無視したやりかたオール・オキナワで怒りが広がっている。沖縄では差別ということが基地問題などでキーワードになっている。
つづいて、 NPO法人ピースデポ代表の湯浅一郎さん、オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会実行委の玉城義和・事務局長(沖縄県議会議員)、
非核市民宣言運動ヨコスカの新倉裕史さんなどからの報告がおこなわれた。
翌日には、「オスプレイ配備反対運動の展開」「低空飛行訓練と沖縄の実態」「日米地位協定とオスプレイ全国展開」「爆音問題と米軍基地再編」の四つの分科会が開かれた。
アベノミクスとは「通貨のジェット噴射」だ
安倍政権が再登場して以来、七月の参議院選挙までは「安全運転」と称して「デフレからの脱却」を目標とするアベノミクス打ち出したが、大幅な円安と株高を煽り国内外で注目を集めている。この数ヶ月の「ねこだまし的成功」に傲慢になった安倍政権はその本質である「戦争のできる」国家建設の実現を急速に政治日程化させている。
アベノミクスとは「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」からなる「三本の矢」を掲げているが、それがなにをもたらすものかを検討することは安倍改憲政権の脆弱性を認識する上で重要と考える。
@「大胆な金融緩和」とは?
アベノミクスは一九九〇年台から続く長期景気停滞の打破=「デフレからの脱却」を目標としている。デフレ―ションとは物価が持続的に下落していく経済現象であるが、モノが売れないので、モノの価格や賃金が更に下がるという悪循環が続くという負の連鎖が起こり、景気も比例して落ち込むなど、「デフレスパイラル」のメカニズムが働くとされる。
このデフレの主因を通貨の供給量が不足しているとして日銀による二年以内の消費者物価の前年比上昇率二%の実現とマネタリーベース(一二年末実績一三八兆円)を、年間約六〇〜七〇兆円増加させ一三年末二〇〇兆円、一四年末二七〇兆円を目指すという「金融緩和」に踏み込んだ。
これは円の流通量を異常に増加させることであり、大幅な円安と株高が生み出され「景気回復」の幻想が拡大し、危うい安倍内閣を覆い隠す「高支持率」の源泉となっている。
しかしこの「金融緩和」=「通貨供給量の大幅増」は大きな問題を抱えている。一点目は、為替市場において異常な円安を引き起こしGDPの一一・五%を占めるだけの輸出産業に高利潤をもたらす半面、EUや新興国からは日本が輸出を奨励するための公正な通貨安競争であり「通貨のジェット噴射」だと批判されている。
二点目は、円安はインフレに直結し輸入品の大幅な上昇を招き原油・穀物など物価の値上げが生活を圧迫始めていることである。この「異次元の金融緩和」(黒田日銀総裁)で生み出される巨額の資金は実体経済から遊離した株式や不動産・海外投資などの投機とバブルに向かうのは避けられない。それはまた歯止めのきかないインフレとなる可能性が高い。三点目にアベノミクスは、その理論上の原点を一九世紀以来、破綻を繰り返してきた「貨幣数量説」においている。この説は社会に流通している貨幣の総量とその流通速度が物価の水準を決定しているとみなし、現在の日本ではデフレが経済低迷の「原因」であり、通貨の供給量を増やせば解消するとしている。しかしマルクスは「貨幣運動はただ商品流通の表現でしかないのに、逆に商品流通がただ貨幣流通の結果としてのみ現れるのである」(資本論 第一編商品と貨幣一五二P)として古典派経済学が商品流通の支配的形態である貨幣流通を?目前にして、顛倒したその外観にとらわれていることを批判している。
日本やEU・アメリカが今日陥っている経済停滞の大きな原因は「すべての現実の恐慌の究極の根拠は、どこまでも、資本主義的生産の衝動に対比しての、すなわち、あたかもその限界をなすのはただ社会の絶対的な消費能力だけであるかのように生産諸力を発展させようとする衝動に対比しての、大衆の窮乏と消費制限なのである。」(マルクス『資本論』第三部)、という「生産と消費の矛盾」の表出である。そしてその過剰生産を国債の大増発によるケインズ主義的回避の結果が先進国を覆う不況と国家財政破綻の危機なのであって、決して通貨の供給量不足に原因があるわけでない。この二〇年来の事実も「マネーストックと名目GDPの推移」の図のように通貨供給量を増やしてきても経済成長=GDPの増加には結びつかないことを示している。
A「機動的な財政政策」とは?
これまで政府は「財政危機」を理由に犠牲を強いる緊縮財政を推し進めてきたが、アベノミクスでは一転して「国土強靭化」を名目に公共事業に一〇年間で二〇〇兆円を注ぎ込むとしている。この財源はすべて大量の国債発行に依存するしかない。
しかし日本の財政状況は名目GDP比で二四五%にも達する巨額の債務残高と単年度の財政赤字が大きく名目GDP比で九%に達する点で先進国中最悪である。(ちなみに債務残高のGDP比はギリシャ一八一% イタリア一二七% スペイン九六%)安倍政権が描く三%の高成長シナリオでも財政収支は二〇二〇年で五〇兆円弱の赤字幅になる。この財政赤字を減少させる規模は『仮に増税のみで対応とした場合、…消費税のさらなる二〇%の引き上げに相当する。また仮に歳出削減のみで対応しようとすれば、「地方交付税および公共事業等のその他歳出の一〇〇%カット」や「社会保障支出の一〇〇%カット」でもなお不足し、国債残高の発散プロセスは止められない。これがわが国の財政運営の現実なのだ。』(エコノミスト誌2013.2.5号)こうした状況下で破綻を免れて入れたのは過去に高利で発行した国債を低利で借り換えることが出来たからであった。
しかしアベノミクスのインフレ目標は、実現に近づくほど物価安定の金利引き上げの必要と正面衝突する。その場合、日銀が国債の大量引き受けを止めて金利上げるため国債を売却する必要があるが、それはでは国債の利払いの数倍に及ぶ増加と金融機関が保有する国債の暴落が避けられなくなる。日銀は最終的には国家財政破綻と金融システム崩壊を守るために、物価安定を投げ捨てて国債の引き受け=ハイパーインフレ政策にかじを切らざるを得なくなる。アベノミクスの終盤は制御不能の「通貨のロケット噴射」まで行き着くことになる。
B「民間投資を喚起する成長戦略」とは?
二〇一二年度の貿易統計速報によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収は八兆一六九九億円の赤字だった。赤字額は、一一年度の四兆四二二〇円を大幅に上回り、過去最大を記録し二年連続で最大更新となった。これは自動車産業の主力工場は海外に移転し、電機産業の多くが経営破綻の危機に陥っている国内の著しい生産の衰退を示すものである。
ソニー・パナソニックなどにおける「追い出し部屋」に象徴される不当な人員整理や派遣労働の拡大など低賃金の非正規労働の大幅増加や「限定正社員」導入を始めとする解雇規制緩和など所得の低下に繋がる政策を推し進めている。「ブラック企業」(劣悪な環境での労働を強いる企業のこと)とも揶揄されているユニクロの柳井正会長兼社長は「世界同一賃金」の導入「年収一億円か百万円に分かれて中間層が減っていく」(朝日新聞2013/4/23付)と賃金の切り下げを公言している。
このような状況の下ではアベノミクスの民間企業の成長や雇用と所得の拡大決して実現出来るものではない。
Cアベノミクスの最大なリスクとは?
安倍政権の本質は九六条改憲を突破口とした国防軍の設置・天皇元首化や「領土ナショナリズム」と「排外主義」を露わにした「軍事大国化」を目指すことにある。
そしてアメリカとの軍事同盟、従属関係を一段と強化しつつ地域の覇権を確立しようとするものである。
安倍はまた「戦後レジームからの脱却」を掲げ東京裁判否定、靖国参拝、従軍慰安婦問題など、かつての日本の侵略を否定することによって戦後体制の根底的破壊=九条改憲を画策している。 参院選で自民党など改憲勢力が三分の二を占めたならば、安倍政権は一挙にその本性を露わにすることを狙っている。
もし仮にそれが実現した場合、韓国・中国などアジア諸国の強烈な反応を招くことは必至である。しかしそうなれば二〇一二年度の日本の輸出総額に占める韓国の割合は七.七% 中国は一八.〇%であり、アジア全体では五四.六%となっている現状では、景気回復を目指す日本にとって強烈な打撃をもたらすことが予想される。
アベノミクスの最大リスクとは、アジア諸国と敵対する安倍政権の本質そのものに他ならない。(関 孝一)
日比谷メーデー
労働者の生活と権利、平和と民 主主義のために団結して闘おう
「東日本大震災の被災者に連帯し、救援・復興に全力をあげよう!」「すべての原発を即時停止し廃炉へ、原発依存のエネルギー政策の転換を!」を掲げた第八四回日比谷メーデーには八〇〇〇名の労働者・市民が参加して開かれた。
主催者挨拶で、鎌田博一・国労東京地本委員長は、安倍政権の円安・株高の状況でますます格差は拡大し、危険な改憲の動きが加速しているが、労働運動はいっそう闘いを強化していかなければならないと述べた。武藤弘道・都労連委員長の連帯挨拶、中西充・東京都産業労働局長と福島みずほ・参議院議員(社民党党首)の来賓挨拶があり、韓国民主労総、中央メーデー実行委、大阪・中之島メーデー実行委からのメッセージが紹介された。
決意表明は、沖縄平和運動センター、全国一般東京東部労組メトロコマース支部、けんり総行動実行委、APFS労組などからおこなわれた。
採択されたアピールは「今こそ、震災復興、脱原発、格差是正、TPP反対、平和と民主主義を掲げ、すべての労働者市民、そして戦争に反対する全世界の人々と手をつなぎ、ともに闘っていきましょう」と訴えた。
集会を終わって二つのコースに分かれてデモ行進に出発した。
せ ん り ゅ う
瑠 璃
策もなく進化の波に投げ出され
安全神話地鳴りの底で今も尚
核拡散未来が見えぬ野菜切る
美しく咲き終えた椿まっしぐら
維新の会母屋もすっかりのっとられ
カタカタと蓋が我慢の政治寒む
ギャォギャォ―塀一列に猫のデモ
複眼単眼
安倍首相の96条改憲論のまやかし
安倍首相が憲法改正を第九六条から始めると言い出して以来、各方面で、この議論が盛んになってきた。この安倍首相の九六条改憲を阻止することができれば、安倍の改憲全体を打ち砕くことは可能であり、安倍政権を倒すことも可能だ。これをめぐる争いは、急きょ、政治の第一級の問題にせり上がってきた。
安倍首相がいう九六条改憲論はいくつかの点で重大なまやかしがある。
第一は、九六条は日本国憲法の背骨としての立憲主義の思想に関わるものであり、この改憲は単なる改憲手続き条項の改定ではなく、憲法原則の破壊であること。
第二に、改憲派は「世界的に見ても、改正しにくい憲法になっている」(自民党ホームページ憲法改正草案Q&A)と主張するが、これは全くインチキであること。
第三に、安倍首相らの九六条改憲論は、多数派獲得のために「何のための九六条改憲か」という目的を隠した「野合」であること。
第四に、九六条改憲は有権者に「改憲慣れをさせる」ことで自民党の改憲草案に基づいた憲法の全面的破壊に向かうための第一歩であり、全面的な改憲に向けた予行演習であること、等が指摘できる。
今回は特に第二の点に触れておきたい。
日本弁護士連合会が今年三月一四日に発表した「憲法第九六条の発議要件緩和に反対する意見書」はこの点に触れて次のように指摘している。
各国憲法の改正手続について国会図書館がまとめた対比表(「憲法改正手続の類型」硬性憲法としての改正手続に関する基礎的資料(衆憲資第二四号)最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会(二〇〇三年四月三日の参考資料))によると,各国とも,様々な改正手続がとられている。法律と同じ要件で改正できる憲法はきわめて少数で,ほとんどの国が法律制定よりも厳しい憲法改正要件を定めている。
例えば,日本国憲法第九六条と同じように,議会の三分の二以上の議決と必要的国民投票を要求している国としては,ルーマニア,韓国,アルバニア等がある。ベラルーシでは,議会の三分の二以上の議決を二回必要とし,さらに国民投票を要するという制度である。フィリピンでは,議会の四分の三以上の議決と必要的国民投票を要求している。日本国憲法よりもさらに一層厳しい要件である。
国民投票を要しない場合にも,再度の議決が要求されるものや,連邦制で支邦の同意が要求されるものなど,様々な憲法改正手続を定める憲法が存在する。例えば,イタリアでは同一構成の議会が一定期間を据え置いて再度の議決を行い,二回目が三分の二未満のときには国民投票が任意的に行われる。アメリカでは連邦議会の三分の二以上の議決と州による承認が必要とされている。なお,ドイツでは議会の三分の二以上の議決によって憲法が改正され,フランスでは国民投票又は政府提案について議会の議決と両院合同会議による再度の五分の三以上の議決によって憲法が改正される。
このように,世界中には様々な憲法改正規定が存在し,日本国憲法よりも改正要件が厳しい憲法も多数存在する。諸外国の憲法改正規定を根拠として,発議要件の緩和を正当化させることはできない。
(引用了)
こうした厳しい規定があるにもかかわらず、これらの国々では過去幾度も憲法改正がおこなわれているのは事実である。高いハードルを乗り越えるほど多くの有権者が改憲の必要を認めたことになる。
日本では改憲派が九条改憲を一貫して狙っていたため、多くの人びとがこれに同調せず、九条改憲の必要を認めなかったのである。外国の改憲の多くは憲法が税制など通常の法律が定めるような細かい問題まで規定しており、ドイツでは欧州統合に伴う改正などがあり、フランスも同様の問題や大統領選挙制度や任期の短縮などの改革で、国の基本原理に関する改正は制限されている。
憲法の基本原理である第九条の改変が問われた日本の改憲論と、諸外国の改憲では重大な相違がある。自民党の説明はきわめて恣意的なものである。 (T)