人民新報 ・ 第1302号<統合395号(2013年6月15日)
  
                  目次

● 原発推進の安倍政権に打撃を  各地で脱原発の声  参院選で脱原発議席を増やそう

● 国境をこえた共通の思いで、危険なTPPをとめよう!

● 米軍・自衛隊基地撤去 横田基地(東京)にむけ、労組・市民団体による抗議のデモ

● 2013 国会ピースサイクル  防衛省、都教委、東電本社、外務省・内閣府へ申し入れ

● 狭山差別裁判を打ち砕こう  無実を叫び五〇年!  いまこそ再審開始を!

● 首切り自由を許さない!  上部団体の枠を超えて取り組み   全労協、全労連、中立系が霞ヶ関大行動

● 強制配転撤回闘争に完全勝利  郵政産業ユニオン・安芸府中支部

● 九六条改憲反対アピール賛同募集

● 96条先行改正の狙いは、改憲に慣れさせ、9条を変えるため

● 映 評  /  天使の分け前(The Angels' Share)

● KODAMA  /  川柳ってなに?

● 複眼単眼  /  安倍内閣のアキレス腱としての安倍晋三

● 夏季カンパの訴え






原発推進の安倍政権に打撃を

     
各地で脱原発の声  参院選で脱原発議席を増やそう

 安倍自民党は参院選の選挙公約に「原発再稼働」を明記した。原発の輸出も強力に推し進めている。安倍ら原発推進勢力は、福島第一原発爆発事故という未曾有の大惨事の教訓をまったく考慮することもなく原発推進政策で日本と世界を危機に陥れようとしている。こうした原発推進勢力の動きを許さず、多くの人びととの連帯した行動によって封じ込めなければならない。

全国で一斉に脱原発の声

 六月二日、全国で脱原発を求める多くの行動がおこなわれた。東京では「さようなら原発一千万人署名」(芝公園)と「原発をなくす全国連絡会」(明治公園)が、それぞれ集会・デモを行い、東京電力本店前で抗議のシュプレヒコールをあげ、そのあと首都圏反原発連合主催の「反原発☆国会大包囲」に合流した。
 この三団体は共同の記者会見で、政府や財界の原発推進政策に反対し、「原発再稼働を既定のものとする『新規制(安全)基準』の策定及び原発再稼働に真正面から反対し、『原発ゼロ』へ転換を求める運動の力をいまこそ結集し連帯すべき時であるという認識に至り」「全国の運動の結節点として七月の参議院選挙を見据えた六月二日」に「統一ロゴのもと」に三団体が「連帯し共同で」「超巨大同日アクション」として「圧倒的な市民の声をよりはっきりとより強く、目に見える形で政府にたたきつけます」としていた。
 行動は大きな成功をおさめ、脱原発の声を国政に反映させる力となった。来る参院選では脱原発候補の議席獲得・増を実現しよう。

福島原発告訴団の行動

 昨年の三月一六日、福島第一原発事故を引き起こし甚大な被害をもたらした政府・東京電力の責任を問う「福島原発告訴団」が結成され、二月二二日には東京地検への行動をおこなった。
 五月三一日に日比谷公園で、「福島原発事故の厳正な捜査と起訴を求める東京大集会」が開かれた。福島県からのバスを連ねての参加者をはじめ全国各地から一〇〇〇人を超える人びとが集まった。集会では七名の福島県からの参加者が被害者としての思いを語った。
 集会を終え東京地検へ。「福島の叫びを聞け!」「地検は起訴せよ!」と書かれたプラカードを掲げて、地検前で集会をおこない、代表と弁護団が地検に入り、要請書と署名簿(最終署名数は、一〇八、七六三筆)を提出、起訴を求めた。ついで東電に対する要請行動をおこなった。東電側は、後日回答を約束した。
 行動の最後に最後に武藤類子告訴団団長が、力をあわせて思いを実現させていこうと述べた。


 国境をこえた共通の思いで、危険なTPPをとめよう!

 五月三〇日、連合会館で、「TPPに反対する人々の運動」と「TPPを考える国民会議」による国際集会「TPPをとめる!国際シンポジウム─韓米FTA・NAFTAからの警告」が開かれた。
 ニュージーランド・オークランド大学のジェーン・ケルシーさんは、TPPは大企業のための二一世紀をつくるものだと批判。メキシコのマリカルメン・リャマスさん(労働組合活動家)は、NAFTA(北米自由貿易協定)は、労働者の賃金を下げ、失業者を増やすものだと指摘した。韓国の金鐘佑弁護士が、ISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)の危険性を強調し、韓米FTAに反対する国民運動本部の共同代表の朴錫運さんは、米韓FTAは経済協定ではなく、法律体系の米国化だと批判し、権寧勤安東大学教授は、韓米FTAは、食料自給率を低下させるものだと指摘した。TPPに反対する人々の運動共同代表の天明伸浩さんが、グローバリゼーションに反対しようとアピール。
 最後に集会宣言を確認。

 集会アピール

 今日二〇一三年五月三〇日、私たちはこの場に寄り合い、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が人びとの日々の営みに何をもたらすのか、をめぐって話し合いました。メキシコ、韓国、ニュージーランドからのゲストに、日本のコメ作り百姓が加わっての話し合いを通して、私たちはTPPの本質を分かち合うことができました。
 NAFTA(北米自由貿易協定)、韓米FTA(韓国米国間自由貿易協定)、TPPと続く新自由主義に基づくグローバリゼーションは、その地に住み、働く大多数の人びとの生存の条件を破壊し、「平和におだやかに生きる権利」を奪います。そこでの主役は、巨大化し、地球規模で動きまわる多国籍資本です。日本企業も他ではありません。
 そして、日本政府はいま、そのTPP交渉参加を決定しました。
 今日の寄り合いで私たちが得ることができたもっとも大事なことは、「生きる権利」の破壊は国境を越え、圧倒的多数の人びとの上に襲いかかるということです。そうだとすると、TPPに象徴される新自由主義に基づくグローバリゼーションに対抗する運動も、地域に根差しそして国境を越えてつながる大きな渦をつくりださなければなりません。
このことを今日の寄り合いで得た共通の思いとして分かち合いたいと思います。TPPに対抗し、国家を超え、国境をまたぐ人びとの運動の大きな渦をつくりだすために動き出しましょう。


米軍・自衛隊基地撤去をかかげ

   
横田基地(東京)にむけ、労組・市民団体による抗議のデモ

 日本本土でも六つ以上のコースによる米軍オスプレイの訓練がはじまった。深夜の低空飛行訓練が、学校・保育園・病院の上空で繰り返されることになる。オール沖縄でのオスプレイ配備・訓練反対、普天間基地即時撤去、辺野古新基地建設反対に呼応し各地での反基地闘争がひろがりはじめた。 東京都にも多摩地域に福生市や瑞穂町などにまたがる広大な横田基地(在日米軍司令部、航空自衛隊航空総隊司令部など)がある。
 
 六月九日、東京全労協、三多摩合同労働組合、全労協全国一般東京労組などの労組や三多摩ピースサイクルなどの市民団体の呼びかけで、米軍横田基地反対集会・デモが闘われた。
 福生公園での集会につづいて、横田基地への抗議・申し入れ行動に出発した。
 在日米軍司令官(在日米空軍司令官)サルバトーレ・A・アンジェラ中将に対して以下の八項目の要求をおこなった。  @米軍横田基地を撤去し、在日米軍は全面撤退すること。A日米両軍の共同軍事訓練は、すべて中止すること。Bオスプレイの沖縄配備と飛行訓練を全面的に中止し、撤去すること。C沖縄普天間基地を即時閉鎖・返還し、辺野古への新基地建設を中止すること。D横田基地でのパラシュート降下訓練、軍事物資の宙吊り訓練を一切行わないこと。Eすべての夜間飛行をただちに中止すること。F基地周辺での米軍兵士・関係者の犯罪を防止し、容疑者は日本側に引き渡すこと。G航空自衛隊を統合した日米共同防空ミサイル作戦司令部の運用を中止すること。


2013 国会ピースサイクル

      
防衛省、都教委、東電本社、外務省・内閣府へ申し入れ

 五月二四日、ピースサイクル2013全国ネットワーク主催で「原発の再稼働ストップ 沖縄基地NO!」をかかげ、首都圏を中心に九州、中国地方、信越地方からの参加者によって
国会ピースサイクル・要請行動がおこなわれた。
 午前八時半、市ヶ谷駅近くの公園で出発集会。防衛省からはじめ、東京都教育委員会、東京電力本社、外務省・内閣府への申し入れ・抗議行動をおこない、途中、都内を自転車でのアピールをおこなった。
 安倍晋三首相へは、「原発、沖縄、歴史問題への被害者・当事者の声に耳を傾け、速やかな対話・謝罪・補償と現行憲法を尊重し、平和で安全な社会」の実現を求めるとともに、@原発の再稼動をやめ、原発の輸出は絶対にしないこと。A核燃料サイクル政策を抜本的に見直し、早期に再生可能な自然エネルギー政策に転換すること。B原発震災によって被った全ての被災者へ、東電が速やかな補償をするよう政府は責任を持つこと。放射能汚染による子どもの健康被害に対して、長期にわたる検診―調査体制をつくること。C放射能に汚染された瓦礫の拡散を止め、現地で処理をして放射性物質の含まれた灰はすべて東電に送るよう政府は指導すること。D沖縄・普天間基地の無条件返還を実現し、辺野古への移設を撤回すること。E日米両軍の一体化行動と、米軍再編による全国の軍事基地の強化を見直すこと。Fオスプレイの沖縄配備、国内訓練、自衛隊への配備の検討を中止すること。G「慰安婦」問題は性奴隷制問題として、黒人奴隷制、黒人差別、ナチス・ドイツの民族抹殺政策、アフリカでの女性集団レイプ、民族浄化政策等と並ぶ国際的犯罪であり、今世紀最大の歴史的人権犯罪です。謝罪と補償を速やかに解決するため『戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法案』を制定すること」を要請した。


狭山差別裁判を打ち砕こう

    
 無実を叫び五〇年!  いまこそ再審開始を!

 無実の石川一雄さんが部落差別・偏見によって殺人犯とされた狭山事件発生から五〇年がたった。現在、第三次再審請求の闘いが展開中である。石川さんが不当逮捕され冤罪におとしいれられた五月二三日、東京・日比谷野外音楽堂で、狭山事件の再審を求める市民集会「無実を叫び五〇年!いまこそ再審開始を!」が開催された。
 組坂繁之部落解放同盟中央本部委員長の開会のことば、民主党の福山哲郎参議院議員(党人権政策推進議員連盟事務局長)、社民党の福島瑞穂党首・参議院議員(狭山弁護団)のあいさつがおこなわれた。再審請求人である石川一雄さんは、これまで多くの人びとの支援に支えられて五〇年闘い続けてきたが、これからも無実を勝ちとるまで闘い抜くと元気に決意表明した。中山武敏狭山弁護団主任弁護人と中北龍太郎弁護士狭山弁護団事務局長が、警察のでたらめなやり方を批判し、裁判闘争の状況を報告した。狭山第三次再審の闘いは大きく動いている。この間の三者協議で弁護団が求めた一二九点の証拠が開示された。開示された逮捕当日の上申書と脅迫状の筆跡の違いは一目瞭然だ。石川さんが脅迫状を書いていないとする筆跡鑑定書があらたに五通提出されている。開示された捜査報告書や取調べ録音テープによって石川さんの自白の疑問、捜査の問題も浮びあがった。犯行現場に血痕はなく、証拠物に石川さんの指紋がないことなど、自白に頼った冤罪の構造がつぎつぎ暴かれた。自白通り発見されたとして有罪証拠となった腕時計が被害者のものではないことも専門家の鑑定で明らかになった。証拠開示と科学的鑑定によって石川さんの無実はますます明白になっている。
 鎌田慧さんを聞き手にした「冤罪五〇年の思いを語る」では、鎌田さんが「私も石川さんは同年の七四歳。お互いあんまり先が無い」といえば、石川さんの「私は無罪を勝ち取ってからが第二の人生。長生きするつもり。そんなことをふってもらっても、頷けません」との答えに、会場からは大きな拍手がおこった。そして講談師の神田香織さんが講談「冤罪五〇年 石川一雄の闘い」の一席。足利事件で冤罪・無罪をかちとった菅家利和さんなどから熱い連帯の言葉が続いた。
 集会アピールで「わたしたちは、狭山事件の第三次再審請求で、徹底した証拠開示と事実調べをおこない再審を開始するよう求める。そして、冤罪根絶にむけて、すべての冤罪者や支援者、司法の民主化を求める運動と連帯し、取調べ可視化や証拠開示の法制化を実現する闘いを全力ですすめる。半世紀に及ぶ石川一雄さんの無実の叫びをうけとめ、一日も早い狭山事件の再審を実現しよう!」と確認し、デモに出発した。


首切り自由を許さない!

   
 上部団体の枠を超えて取り組み   全労協、全労連、中立系が霞ヶ関大行動
  

霞ヶ関行動

 五月一五日に東京・霞が関で、けんり総行動実行委員会と東京争議団共闘会議による「首切り自由を許さない!霞が関大行動」が展開された。上部団体の違いを越えて、「解雇を許さない」の一点での共同行動で、七〇〇人をこえる労働者が参加した。
 当日は、参加者一人ひとりが東京地裁・高裁にたいして公正な判決・決定を求めるレッドカードで個人請願をおこなった。
 一二時すぎからは東京地裁・東京高裁前で集会がはじまり、さまざまな労働組合が参加し、昼の行動に合流した国公労連の各単組は裁判所向かいの総務省側に結集した。
 主催者を代表して東京争議団の小関守議長が、安倍内閣の労働法制改悪・「解雇自由」の盛り込みに反対する行動を共同ですすめようとあいさつした。
 全労連の大黒作治議長、全労協の金澤壽議長の連帯あいさつにつづいて、郵政産業ユニオン、東京私教連、全印総連、JMIU日本アイビーエム支部、JMIUいすゞ自動車支部、JAL不当解雇撤回裁判原告団、「東芝・稲葉さんの裁判(有期雇用問題)を支援する会」などが決意を表明した。

労働弁護団主催の集会

 五月一五日の午後六時半からは連合会館大集会室で、日本労働弁護団主催の「解雇規制の緩和に反対する集会」が開かれた。
 日本労働弁護団の鵜良昭会長が主催者あいさつ。日本は労働法制の規制が強くそのために企業競争力が弱いなどのデマがまかりとおっている。政府や経営側は労働力の流動化のため「限定正社員」の導入などによってより解雇がしやすい状況を作ろうとしているが、労働者の側はディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を広く訴えていかなければならない。
 水口洋介労働弁護団幹事長は、規制改革会議の雇用ワーキンググループが、解雇をしやすくするため労働規制を緩和する提言案を用意しているが、これを許さない大きな運動を共同して作っていこうと述べた。 
 つづいて大阪市立大学根本到教授が「解雇規制の緩和について」と題して講演。政府の産業競争力会議や規制改革会議などが提言しているのは、成熟産業から成長産業への労働力移動を促進するため、「解雇ルールの明確化」ということで、違法となった解雇について、労働者が同意していなくとも、使用者が一定の金銭を支払うことで職場復帰をさせなくてもよいという「金銭解決制度」と、当該勤務地が喪失した場合の整理解雇の有効性を立法化する勤務地限定の正社員などの「多様な正社員モデル」の導入を求めるものだ。
 現在、期間の定めのない労働契約に対する使用者の解雇については、労働契約法第一六条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という「解雇権濫用法理」と整理解雇法理(経営上の理由による解雇で、@人員削減の必要性、A解雇回避努力義務、B被解雇者選定の合理性、C労働組合等との協議の四つの基準で判断)があるが、判例で確立しているだけ立法化されていない。また世界的な解雇規制を見れば、日本は三〇か国中、強い方から二四番目であり、規制が決して強いとはいえない。
 成長産業への労働移動を促進するのであれば、成長産業の創出などを進め、失業保護を徹底すべきである。解雇規制を緩和して、労働者を労働市場に投げ出すのは妥当ではない。解雇ルールの明確化を図りたいのであれば、整理解雇法理を立法上明示すべきである。解雇の金銭解決は、現行法上も可能であるが、新たな制度を創設すれば、「金さえ払えば解雇できる」といった風潮が広まるおそれがある。「多様な正社員」も、立法化またはモデル化をすれば、司法判断の制約になる。
 労働側としてはどうすべきだろうか。「解雇規制の緩和」に関する立法化やそれに類似する指針化に反対すべきである。なぜなら整理解雇法理に基づく司法判断を制約することになるからだ。
 解雇規制は、その国の労働法の根幹である。人事制度に関係するだけでなく、その国の労働法全体のあり方や経済規制のありかたにも関係する。日本の解雇規制は、緩和することよりも、よりいっそう制度を充実させる必要がある。たとえば、整理解雇法理を立法化することや、集団的な解雇に関する規制ルールの創設などが望まれる。

枠を超えたとりくみ

 労働組合からは、新聞労連、全港湾、JMIU本部、東京東部労組、全国ユニオン、連合非正規センターからの発言がおこなわれた。全労連や全労協、中立の枠を超えた参加があったこと、連合本部のこうした集会への正式参加は珍しく、労働法制の改悪に対する広範な取り組みとなった。


強制配転撤回闘争に完全勝利  勝利判決確定! 追撃緩めず損害賠償請求提訴 
  
                
郵政産業ユニオン・安芸府中支部
  

組合役員を狙い撃ちにした組合つぶしの不当労働行為
  
 去る五月一〇日、日本郵政は原告本人に対して、上告しないことを伝え、四年一ヶ月に渡って闘ってきた「強制配転撤回裁判」は原職復帰という完全勝利が確定しました。
 これまで、郵便局の「強制配転撤回」の争いでの完全勝利は皆無に等しくこの快挙は瞬く間に全国の郵政職場に衝撃を発しました。
 降り返れば、郵政ユニオン安芸府中支部は、労働戦線再編の中、中国地方ではいち早く当時の全逓から決別し、一九九〇年四月二一日に広島東支部と共に郵政広島労働組合として苦難の船出をしました。少数組合でありましたが、常に職場改善・非正規労働者の労働条件改善を取り組んでいく中で支持を拡大して行きました。
 二〇〇三年からは時間外労働の三六協定締結の職場代表選に立候補し続けて二〇0六年には一旦は過半数代表者に選出されましたが、卑劣にも会社は一方的にやり直しを行い、JP労組と一体で再選を妨害した結果、三名差の僅差で破れました。
 しかし危機感を持った会社は直後の四月一日、支部長を広島中央局への強制配転を強行して来ました。
 会社の不当な行為は絶対に許せないと、直ちに広島地裁と中労委への平行申し立てを行いました。
 二年余りに及ぶ審理で中労委より和解が出され、二〇〇九年四月一日、支部長は安芸府中局へ原職復帰となりました。
 しかし、会社は中労委の和解内容を無にして、今度は復帰当日にこの間支部の中心で頑張ってきていた書記長を広島東局へ強制配転しました。
 これはまさしく「不当労働行為」そのものであります。
 会社の郵政ユニオン潰し攻撃には「受けてたつ」の決意で再び第三者機関での闘いは開始されました。
 県労働委員会に「不当労働行為救済」申し立てを行いました。一年半の審理で二〇一一年一月、県労委から命令書が出され、命令は「原職復帰」「不当労働行為であると認定」「謝罪文の交付」という組合側勝利の命令でした。
 会社は直ちに取り消しを求めて広島地裁に提訴し、たが、二〇一二年九月、広島地裁は、県労委に続いて組合側の勝利判決を出しました。しかし、会社は性懲りも無く広島高裁へ控訴を行い、抵抗を試みました。
   引き延ばしのみに終始する会社は、まともな証言すら出来ず、本年四月二六日、広島高裁は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする」との組合側勝利の判決を言い渡したのです。
 ここに私たちは、七年に及んだ支部長・書記長強制配転撤回闘争は原職復帰という完全勝利を勝ち取りました。
 少数組合ではありますが、常に職場労働者のことを考えた活動が信頼を獲得し、さらに日常の徹底した点検活動が勝利を引き寄せました。
 郵政産業ユニオンは、広島高裁勝利判決が出された当日、会社のこの間の不当労働行為攻撃に対して、二度と再びこのような行為を行わせないと「損害賠償請求」を広島地裁に提訴を行いました。闘いは続きますが、再び皆さんに勝利を報告できることと確信しています。  (広島発)


九六条改憲反対アピール賛同募集

 沖縄県憲法普及協議会、女9条の会北海道、憲法を生かす会、市民憲法調査会、市民自治を創る会、第九条の会ヒロシマ、とめよう改憲!おおさかネットワーク、不戦へのネットワーク、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会のよびかけで「立憲主義を破壊し、『戦争する国』への道を暴走する九六条改憲に反対する共同アピール」が出された。
 アピールは、九六条改憲は「単なる憲法改正の手続き条項の変更ではなく、日本国憲法の背骨である立憲主義=国家権力制限規範としての憲法の破壊」で「国会議員の過半数ということは、時の与党がたやすく達成できる数であり、たまたまその時に勢力のある政党の思いのままに改憲の発議ができること」であり、「先には、憲法第9条の改憲により集団的自衛権の行使と『国防軍』で戦争をする国をめざし、天皇を「元首」に戴いて基本的人権を否定するという『自民党改憲草案』の実現があることは明白」で「憲法を党利党略でもてあそぶものであり、立憲主義に真っ向から反するもの」だとして「私たちは、安倍首相と自民党など改憲派による、立憲主義を破壊する九六条改憲、『戦争する国』への暴走に強く反対します」と広く全国からの賛同を募集している。

 連絡先は、FAX03(3221)2558、メールkenpou@annie.ne.jp


96条先行改正の狙いは、改憲に慣れさせ、9条を変えるため

      
立憲主義を破壊し、憲法改悪を容易にする96条改憲に反対する院内集会

 安倍内閣は姑息な九六条先行改憲論で突破口を切り開こうとしている。いま、こうした動きに対する批判が広がり始めている。改憲阻止運動の陣形を拡大して安倍らの右翼改憲派の策動を封じ込めよう。

 五月二一日、参院議員会館で「立憲主義を破壊し、憲法改悪を容易にする九六条改憲に反対する院内集会」(2013年5・3憲法集会実行委員会の主催)が開かれた。

 日本体育大学准教授(憲法学)の清水雅彦さんが「憲法九六条改正論の問題と狙い」と題して講演した。
 憲法とは国家権力を制限する規範である。だから普通の法律とは違って憲法の保障(憲法内的保障)がある。それは、@憲法の最高法規性の宣言を九八条で「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」とし、それを八一条「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と違憲審査制で担保する。第九九条で「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と公務員に憲法尊重擁護義務を課す。また三権分立の原則があげられる。そして、第九六条で「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」とし簡単に改正できないように硬性憲法として位置づけている。
 このように九六条では、憲法を変えるためには、まず「国会による発議」で「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」が必要であり、そして「国民投票における過半数の賛成」という国民による承認がなければならないとする。
 しかも憲法改正には限界がある。その根拠は、人類普遍の原理(前文一段)、基本的人権の永久不可侵性(一一条、九七条)の規定であり、基本原理(国民主権、基本的人権の尊重、平和主義)である。そのために改正手続を厳しいものにしているのだ。
 改憲派、たとえば二〇一二年四月の自民党「日本国憲法改正草案」では「国会による発議」を各議院の総議員の「三分の二以上」から「過半数の賛成」に改正しようとしている。自民党の「日本国憲法改正草案 Q&A」では「世界的に見ても、改正しにくい憲法」「国民に提案される前の国会での手続を余りに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会が狭められることになり、かえって主権者である国民の意思を反映しないことになってしまう」としている。今年の三月には、民主党、日本維新の会、みんなの党の有志議員によって九六条改正に向けた勉強会「憲法九六条研究会」の初会合がひらかれ、「三党で九六条改正の発議ができるように活動していく」といっている。
 日本国憲法を諸外国の憲法と比較してみよう。アメリカでは「各議院の三分の二以上の賛成、四分の三以上の州議会の承認」となっていて、戦後六回改正している。フランスでは「各議院の過半数の賛成、国民投票か政府提出なら両院合同会議の五分の三以上の賛成」としており戦後二七回の改正だ。イタリアは「各議院の過半数の賛成、三ヶ月以上経過後に各議院の三分の二以上の賛成」(要求があれば国民投票)で戦後一六回改正。カナダは「各議院の過半数の賛成、三分の二以上の州議会の承認」で戦後一九回改正だ。韓国は、「国会の三分の二以上の賛成、国民投票(有権者の過半数の投票かつ投票総数の過半数の賛成)で戦後九回改正している。このように、日本が特別に改正手続のハードルが高いわけではない。
 自民党はこれまで産廃施設、ダム、原発など自治体における住民投票に否定的だったのである。国民の意思反映といっても憲法の改正における国民投票は国会の発議に対する賛成か反対の表明だけだ。そもそも衆議院の小選挙区は民意を忠実に反映しておらず、高裁による違憲判決も相次いでいるのであり、改憲派の国民の意思反映論はいかがわしいものだ。
 また憲法第五六条「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」と成立の要件を定めたうえで、その二項で「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる」と規定している。「特別の定のある場合」とは、改憲発議だけでなく、議院における議員の資格争訟(五五条)、議院の会議における秘密会の開催(五七条一項)、議院における議員の除名(五八条二項)、法律案の参議院否決後の衆議院での再議決(五九条二項)、いずれも「出席議員の三分の二以上の多数による議決」となる。国会でもつねに出席議員の過半数の賛成で議決されるわけではないのだ。
 九六条改憲論の狙いは、憲法改正に慣れさせる、憲法改正を簡単にすることで、九条改憲とさらなる憲法全面改正へむかうためのものだ。

 院内集会には、糸数慶子参議院議員(無所属)、福島瑞穂参議院議員(社民党)、井上哲士参議院議員(共産党)、山内徳信参議院議員(社民党)、笠井亮衆議院議員(共産党)、近藤昭一衆議院議員(民主党)、辻元清美衆議院議員(民主党)、吉田忠智参議院議員(社民党)が参加し、あいさつした(発言順)。


映 評

  
天使の分け前(The Angels' Share)

     イギリス・フランス・ベルギー・イタリア合作
     2012  101分 カンヌ国際映画祭審査員賞受賞
   
       監督 ケン・ローチ
       主演 ロビー  …… ポール・ブラニガン
           ハリー  …… ジョン・ヘンショー


 スコットランド、グラスゴーに暮らすロビー、小さい頃からけんか早く傷害事件に明け暮れる日々、そんなロビーにも恋人ができ、もうすぐ子どもが生まれる。恋人の父親はハリーのことを嫌い、五〇〇〇ポンド(約七五万円)を渡すから一人でロンドンに行ってしまえと言いわたされる。ハリーはまた事件を起こした。本来は刑務所に収監されるのだが、父親になる青年に免じて三〇〇時間の社会奉仕活動というかわりの刑を言いわたす。公園の草刈などの清掃活動だ。そこで指導者のハリーに出会う。ハリーはロビーのことを不憫に思い、とっておきのウイスキーを飲ませてやる。そこでロビーは意外な才能に目覚める。ウイスキーのテイスティングをしてその銘柄を言い当てることができたのだ。ハリーはロビーの才能を伸ばしてやろうと思い、ロビーの仲間たちとグラスゴー周辺の古いウイスキーの蒸留所を訪ねる、にわかづくりのスコッチウイスキー愛好家と称して。ロビーは自分たちの近くにありながら目に触れることのできなかった古城などの風景に驚く。
 そこにとんでもない知らせが飛び込んでくる。古い蒸留所から四〇年以上経過した年代物の貴重なウイスキーの樽が発見されたとの、ロビーたちは計画をたてる。その古い樽はマスコミやウイスキー愛好家たちに公開された。ロビーたちはもちろんウイスキー愛好家として、混雑している場所にもぐりこむことに成功した。四人の仲間は樽のある場所の位置関係を細かく記憶した。その夜、ロビーたち四人は蒸留所に侵入して、細いホースを伝わらせて屋外に四本分の貴重なウイスキーを盗み出すことに成功した。そして同じ量のそんなに貴重でない安いウイスキーをかわりに注入する。
 実は彼らが侵入して盗み出す前にその場所にある人物たちがやってきた。その場所の経営者と大金持ちのウイスキー愛好家だった。翌日のオークションの前に裏取引をしようとしたのだが、値が折り合わず商談は成立しなかった。どこにでも悪いやつはいるものだ。おっと盗む方がもっと悪いのだが。
 翌日、はれてオークションは成立し、最高値を提示した人物にその樽は落札された。一一〇万ポンド(約一億六五〇〇万円)
 まんまと貴重なウイスキーをせしめた四人だが、喜びすぎてビンとビンを接触させてガッツポーズを取ろうとして割ってしまう。このあたりが、実にまぬけなところだ。二本分は道路上に流れてしまったので、残りの二本を大事に持って帰る。そのうち一本を愛好家に一〇万ポンド(約二五〇〇万円)で売り、最後の一本は自分たちで飲むのではなく、ハリーにプレゼントしたのだ。泣けてしまう話だ。

 監督のケン・ローチはイギリスの労働者階級を描いた作品を多く製作しているが、今回の「天使の分け前」は少し作品のニュアンスが違うようだ。
 イギリスには現在一〇〇万人の若年失業者が存在するらしいが、最初のハリーたちの描き方は、時代の犠牲になっている青年たちの悲劇風なのだが、だんだん痛快な喜劇、ロードムービーに転回してしまっているのがこの映画の真骨頂といってもいいだろう。暗く沈んだスコットランドの風景、イングランドとは違った不毛の大地を想像させられてしまう。そこで生産されるピート(泥炭)がスコッチウイスキーの香を形成しているのは皮肉な現実といえよう。

 一九七〇年頃から九〇年頃のケン・ローチ作品はほとんど日本未公開になっている。監督の作品世界が日本人には理解されないと判断されたのだろうか。
 九五年の「大地と自由」はスペイン内戦に題材にした作品なのだが、市民側に立った視点がよかった。二〇〇六年の「麦の穂をゆらす風」はカンヌ映画祭の最高位の賞であるパルムドール賞を受賞している。「天使の分け前」では階級社会が厳として存在するイギリスにおいてケン・ローチ監督の労働者階級もしくは虐げられた人びとに対する深い愛情が随所に見てとれて、そういった視点が観客にすっと入ってくるのだろう。
 またロビーを演じた役者は映画初出演だそうだが、野生的な目がたいへんいい。粗野だが、実は心やさしいハリー。恋人の父親やハリーたちを見ると犯罪者としてみてしまう警官たち、高価なウイスキーの事前取引を進めようとする欲の張った経営者たち。そういう俗物をきちんと俗物として描いているのがこの作品のいいところなのだ。
 でも四〇年もたったウイスキーの樽にはそんなになみなみとウイスキーは入っていないのだ。なぜかって年に二%ぐらいの割合で蒸発してしまうから。それがこの映画の題名の「天使の分け前」なのだ。題名からしてよくできているね。まさしく天の配剤。四〇年もたつと実は半分以上が蒸発してしまうのだ。
 樽からウイスキーを取り出すときに、木槌でコンコンとたたいて栓を開ける作業、またこの音がいい。そういう手作業を見てウイスキーは作られていくものだという感じがしてくる。
 
 「天使の分け前」を見た誰もが納得し、少し高級なウイスキーをストレートもしくはオン・ザ・ロックで飲んでみたいなと思わせてくれる作品だ。四〇年ほど前、スコッチウイスキーは高かった。ジョニー・ウォーカーの黒ラベルは一本二万円もした。関税と酒税のせいなのだが、現在の価格は二五〇〇円くらい。価格が高いから高級品だと思わされていたのだ。その神話はすでに崩壊しているが。
 なおロビーたちが最高級ウイスキーをつめかえたボトルはスコットランドで人気の炭酸飲料アイアン・ブルーのビンだとのこと。ケン・ローチはこんなディテイルにもこだわっているんだね。(東幸成)


KODAMA

    
川柳ってなに?

 数年前に、本紙にたびたび川柳を載せてもらっているヽ 史(ちょんし)さんに言われてプロレタリア川柳作家の鶴彬(一九〇九年〜一九三八年)のドキュメンタリー映画「鶴彬 こころの軌跡」を観に行った。川柳とは何かの話も伺った。 そこで川柳とは何かについて調べてみた。
 田辺聖子「道頓堀の雨に別れて以来なり〜川柳作家・岸本水府とその時代」(中公文庫)を読んでいる。岸本水府(一八九二年〜一九六五年)は大阪の川柳作家で、鶴彬などに言わせれば、都市小市民的・小ブルジョア的川柳とでも分類すべきなのだろうか。その本に「反戦作家で官憲に虐殺された小林多喜二の名はみな人によく知られているが、同じく反戦川柳作家で、思想犯として検挙され獄死した鶴彬は、多喜二ほど知られていない。川柳という文学ジャンルに、日が当らないためであろうか。啄木に擬せられる早熟の天才なのだが」と高く評価している。
 同じ著者の『古川柳おちぼひろい』のなかで述べている。「古川柳の作者たちは、告発の刃を人間の内部へ向けました。古川柳にみる鋭い人間凝視や客観性を、わたしは興味ふかく思います。それは社会の矛盾をあばき、時代の政治を批判するという外向的発散を越え、人間の内なるものを鋭い歯で噛むのでした。しかし人間を看破することかくも犀利に、人間を嗤うことかくも無惨な、自由闊達な精神の産物がほかありましょうか」。坂本幸四郎「新興川柳運動の光芒」(朝日イブニングニュース社)に詩人の小熊秀雄についての鶴彬の文章があった。「風刺することは、必然、ユウモアを生むことであるし、ウガチやカイギャクを駆使することである。かつて小熊秀雄は『文芸春秋』で、ユウモアと風刺についてつぎのようにのべている。〈獅子文六氏が曾て、現在のような文筆の自由がない時代には風刺文学などやれないから、《苛烈なユーモア》でゆくのだと語っていたが、ユーモアの苛烈なものは風刺以外のものではない〉。〈風刺、ユーモア、滑稽の区別をとやかく言うよりも、これらのものは、すべて風刺ジャンルの文学のなかに包含して一向にさしつかえない〉 この小熊秀雄の風刺的な言葉は、この国の作家詩人たちが、風刺を、遠まわしなあてこすりの意昧にしか理解できずにいること、真の風刺こそ、現代の真実をみごとにえぐりだす、もっとも直截的な方法であることを、胴忘れしている現状にたいして放たれたものである」(昭和十二年四月、評論「風刺的なあまりに風刺的な」より一部要約)
 いま労働運動の世界でも川柳をやる人が増えているらしい。  (H)


複眼単眼

   安倍内閣のアキレス腱としての安倍晋三


 安倍内閣のアキレス腱としての安倍晋三。これは小泉政権当時から政権交代までの元内閣官房副長官補で安全保障担当だった柳沢協二氏の表現だが、なかなか言い得て妙である。
 安倍首相の二月の日米首脳会談に象徴的に表れたように、安倍政権の下で日米関係は必ずしもうまくいっていない。それどころか、今回の米中首脳会談をみて安倍晋三の心中は穏やかならざるものがあるに違いない。
 昨年の総選挙で自民党がうたった「日米同盟関係の再建」はそのKYぶりも含めて、成功していない。その要因が「戦後レジームからの脱却」という安倍晋三の政治・思想路線にあるのだから容易なことではない。河野談話・村山談話の見直し、閣僚の大量の靖国参拝、軍隊慰安婦の問題等など、この右翼ナショナリストの政権にはアジア各国のみならず、欧米諸国からも警戒心が強い。安倍がいう戦後レジームは、米国などが嫌うポツダム体制の見直しであるかのように映っても仕方のないところだ。中国はそこを心得てしっかりとくさびを打ってくる。安倍政権が得意げに「自由と民主主義、法の支配」を尊重する国々との連携の強化、価値観外交を標榜するも容易ではないところである。
 加えて、安倍晋三が念願してきた改憲の課題でも、従来に懲りて九六条先行改憲を打ち出し、与野党の野合で実現しようと謀ったが、その思惑は大きく外れ、躓いている。立憲主義の根幹に触れる安倍のこの新しい改憲戦略に対して、これまで九条改憲反対などで闘ってきた諸運動が一斉に反撃したのはもとより、安倍の周辺の改憲勢力の中からも反対や疑問の声が一斉にわき上がってきた。著名な改憲派の学者の小林節慶応大学教授、中西寛京都大学教授、外交評論家の岡本行夫らの「識者」に加えて、自民党の長老の古賀誠などが正面から反対し、憲法調査会の長老だった中山太郎までが疑問の声を上げた結果、その子飼いの船田元・現憲法審査会筆頭幹事なども動揺し始めたのである。与党の公明党も支持母体の創価学会の動向もあり、同調していないし、民主党も九六条先行改憲反対でまとまった。生活の党も同様である。まさに安倍晋三の予想を超えて九六条先行改憲反対の声が噴出した。
 動揺した安倍は「これでは国民投票で勝てない」などとぼやき、公明党に配慮して環境権との抱き合わせ改憲や、九条や基本的人権問題などを除いた改憲要件一部緩和の九六条改憲などと、弥縫策の模索を始めている。
これに対して安倍の周辺からは「九六条はどうした」(産経新聞主張)などの声が出始め、矛盾が激化している。
 まさに安倍晋三が安倍政権のアキレス腱になる様相が表れている。いまこそ追撃の手をゆるめることなく、安倍政権の九六条改憲を許さない闘いを強化することが求められている。(T)


夏季カンパの訴え

 右翼本命政権として登場した安倍内閣は、発足後半年を経るにあたってその危険な本質を鮮明にするとともに、内外政策の行き詰まりの様相を示し始めました。憲法九六条の先行改憲という立憲主義を否定する姑息な策動へは大きな批判が広がり、安倍も強行策に迷う段階になりました。
 極端なナショナリズムの扇動による世論誘導も近隣アジア諸国との緊張をたかめ、その反中国包囲網=「価値観外交」による政治・軍事大国化路線は「外交敗北」として結果するものとなっています。いわゆるアベノミクスは格差を拡大させ、またその「成果」なるものも幻想的なものとなりつつあります。脱原発運動や沖縄の基地反対闘争をなど民衆運動は着実にひろがっています。いまこそ、団結を広げて、労働者・人民の力を強化し、政治変革の流れを加速させましょう。われわれはそのために奮闘する決意です。
 夏季カンパをお願いし、あわせて機関紙「人民新報」の購読を訴えるものです。

 労働者社会主義同盟中央委員会