人民新報 ・ 第1308号<統合401号(2013年12月15日)
  
                  目次

● 安倍内閣打倒に向けて闘いを強めよう

● 脱原発を実現し、自然エネルギー中心の社会を  さようなら原発・署名830万超

● 安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション  労働者派遣制度の規制緩和反対で申し入れ

● 過労死・過労自殺はあってはならない  過労死防止基本法制定実行委が院内集会

● これでいいのか?!TPP 12・8大行動  米国のごり押し・意見対立で交渉の年内妥結は頓挫

● 福島原発告訴団が検察審査会へ第二次申立  原発事故を起こした責任者を告訴

● ハタ・ウタの義務化を許さない!  「国旗・国歌」尊重・義務化に反対する院内集会

● KODAMA  /  お隣さんってムカつくね

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  秘密保護法に反対する民衆運動の画期的な高揚

● 冬季カンパの訴え






安倍内閣打倒に向けて闘いを強めよう

     
特定秘密保護法の廃止へ  集団的自衛権容認を許すな

 安倍内閣は、国家安全保障会議設置(日本版NSC)法につづいて特定秘密保護法を強引に成立させた。秘密保護法案への反対は市民、労働者、学者・文化人だけでなくマスコミを含めて日を追ってひろがり、参院段階では野党のほとんどが反対・棄権にまわるという事態となった。一二月四日、平日の昼にもかかわらず秘密保護法廃案を求める国会包囲ヒューマンチェーンには六〇〇〇人、また一二月六日の日比谷野外音楽堂での大集会には一万五〇〇〇人という多数が参加した。継続審議にでもなれば確実に廃案になっていただろう。
 特定秘密保護法は拙速に作られた欠陥法律であり、政府の側もこれから欺瞞的な手口を弄しながら補修作業をおこなわざるを得ないし、そのたびに人びとの目に触れることになる。秘密保護法をめぐる闘いは新しい段階に入って継続しているのだ。国会で成立した法案は国会で廃止することができるのであり、ただちにこの法律の廃止を求める活動を始めなければならない。
 臨時国会が終わる時点で実施された共同通信社の全国緊急電話世論調査によると、特定秘密保護法について、「このまま施行する」との答えはわずかに九・四%だったのに対して、次の通常国会以降に「修正する」との回答が五四・一%、「廃止する」が二八・二%となった。じつに八割以上が批判しているという結果だ。安倍内閣の支持率も昨年末の第二次安倍内閣発足以来、初めて五〇%を割った。安倍の反動攻撃が民衆の怒りを噴出させたのだ。 
にもかかわらず安倍内閣はいっそう危険な方向へ歩みをはやめている。自民党の石破幹事長は秘密保護法に関連して、報道機関が特定秘密を報じることについて「報道によって我が国の安全が危機に瀕するなら、何らかの方法で抑制されるべきだろう」などと述べ、デモをテロとする暴言につづいて、またも安倍政権の本音を自己暴露した。
 一二月一二日、自民党安全保障関係部会が、「国家安全保障戦略」、新防衛大綱と中期防衛力整備計画を了承した(一七日に閣議決定の予定)。国家安全保障戦略は日本版NSCの発足によって策定されたものだが、外交・防衛の中長期的な基本方針となるもので、安倍は国家安保戦略を新しい防衛大綱と合わせて「今後のわが国の安全保障のありようを決定する歴史的な文書になる」といっている。そこでは、核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠だとし、依然として核兵器に固執している。また武器輸出三原則等の在り方について見直す。「力による現状変更の試み」に対しては毅然として対応するという。そして「愛国心」までも盛り込む方針だ。
新防衛大綱では、一九九五年以来明記されてきた「節度ある防衛力を整備する」との表記を削除して、「統合機動防衛力」が明記されることになり、積極的な軍事姿勢への転換があきらかとなり、離島侵攻に対する水陸両用作戦能力の強化、弾道ミサイルへの対処能力向上などが盛り込まれる。
来年には集団的自衛権行使の容認、国家安全保障法制定、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直しが予定されるが、すでにその他にもさまざまな動きが出ている。これまで三回も廃案に追い込まれた「共謀罪」創設を柱とする組織犯罪処罰法改正案を通常国会に提出する。そして安倍自身年内の靖国神社参拝をあきらめてはいない。
 安倍政権の一連の政治反動と近隣諸国との緊張をあおる行動は、きわめて危険な事態をもたらす。いま「戦争をする国」として悲惨な結果となる瀬戸際にまで近づきつつある。
 一二月六日の日比谷大集会は「今日、ここに集った私たちは、安倍政権から自由と民主主義を取り戻す運動に立ち上がります。共同、連帯の輪をさらに広げ、特定秘密保護法案の廃案と安倍政権の打倒に向かって、今日、ここから出発することを宣言」した。
 これまでの運動の大きな成果を基礎に、さらに大きく統一行動の輪を広げ安倍内閣打倒のために闘おう。


脱原発を実現し、自然エネルギー中心の社会を

              
さようなら原発・署名830万超

 二〇一一年三月の東京電力福島第一発電所の事故は、日本全国に、そして全世界に原子力発電の危険性と被害の恐ろしさをしめした。原水爆のみならず原発も禁止しなければならない。原発への依存や原発との共存は絶対にありえないこと、原発の新設はもちろん再稼働の阻止、そして廃炉へむけての動きが直ちに始められなければならない。現在、各地各層さまざまな人びとが原発社会からの脱却を求めて運動している。
 二〇一一年六月から始まった「脱原発を実現し、自然エネルギー中心の社会を求める全国署名」(さようなら原発一〇〇〇万人署名)は、八三〇万筆をこえた(一二月二日の集計発表では、八三八万二九三六筆)。

 一一月二六日に、「さようなら原発一千万署名市民の会」は院内集会をひらき、これまでの運動を振り返り、これからの運動の方向・課題などを確認した。
 その後、呼び掛け人の大江健三郎さんや鎌田慧さん、落合恵子さんや賛同人の佐高信さんなどは、これまでに集まった署名の一部を、国会内で参議院(輿石東副議長)、衆議院(赤松広隆副議長)に直接手渡した。しかし、安倍首相あての署名は官邸側が受け取りを拒否するという態度に出たため(安倍政権の原発推進強硬姿勢のあらわれである)、官邸前で抗議の声をあげ、署名は内閣府に提出した。

 一八時半からは日比谷野外音楽堂で集会。当日は、衆院での特定秘密保護法案の強行可決と言う緊迫した情勢で多くの人びとが国会周辺での抗議行動をおこなっているという状況の中で、市民団体や労働組合の一三〇〇人が参加した。
 女優の木内みどりさんが司会を勤め、はじめに鎌田慧さん(ルポライター)が署名提出の報告をおこなった。八三〇万を大きく超えるこれほどの多くの人が原発に反対の意思表示をしたのはとてもすばらしいことだ。原発と特定秘密保護法案は、その本質において軌を一にする共通の問題であり、原発再稼働反対・秘密保護法粉砕の気持ちで頑張ろう。
 脱原発福島県民会議の千葉親子さんが福島からの訴え。
 第一原発から約一〇〇キロの会津に住んでいるが、ここにも放射能は間違いなく降り注いでいる。山菜やきのこには規制がかかり、沢の水は飲めず、捕れた魚もたべるなとの規制で食べることが出来ない。汚染水の問題など放射能の垂れ流しが続き、燃料棒の取り出しがはじまった。県民は、常に緊張を強いられている。放射能は不条理で差別的で理不尽で世代間不公平で日常生活を根底から覆している。原発事故はまったく収束していない。事故そのものがいまもある。今でも福島は汚染の中で病み苦しんでいる。それなのに、原発事故で死んだ人はいない、甲状腺がんの発生も原発事故による影響ではない、目標値も一ミリシーベルト以下にする、と言う。安倍首相は、事故はコントロールされている、汚染水は完全にブロックしている、とまで言っている。冗談もやすみやすみ言えと、叫びたい気持ちだ。被災者は、再稼働反対、原発の即ゼロ実現、被害者への償いを求めている。子どもたちを守れないで、何を秘密保護法で守ろうと言うのか。しかし福島は決してあきらめない。安心安全を勝ち取るまでは絶対にあきらめない。
 リレートークでは大江健三郎さん、落合恵子さん、澤地久枝さん、佐高信さん、辛淑玉さんがそれぞれの思いを述べた。
 集会や署名運動に寄せられたメッセージが朗読されて集会が終わった。

 集会後にデモに出発して、人びとにアピールした。


安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション

         労働者派遣制度の規制緩和反対で申し入れ


 一一月二一日、参院議員会館で、安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクションの院内集会が開かれた。
 マスコミ文化情報労組会議(MIC)の高鶴淳二事務局長が開会のあいさつ。安倍内閣は企業が世界一動きやすい社会を作るといっているが、これは労働者にとってはまったく生きにくい日々の環境をつくりだすということだ。新自由主義政策による格差拡大社会は二〇〇九年の政権交代をもたらした。自民党政権が復活してかつてより酷い状況がつくられている。また秘密保護法や教育への介入、原発再稼働、TPPなどが進められているが、これらは憲法と民主主義の破壊だ。雇用破壊も一連の流れだ。より多くの仲間とともに闘いをつよめていこう。
 つづいて、全労連の井上事務局次長が情勢報告と方針の提起をおこなった。
 安倍政権は国家戦略特区域関連法案を国会に提出し、衆院内閣委員会での審議がはじまった。世論と運動の成果で同法案には「解雇特区」「残業代ゼロ特区」等の「雇用特区」は盛り込まれなかったが、新規企業やグローバル企業などに労働法制の抜け穴を指南することになる「雇用労働相談センター」の設置と、有期労働契約の五年上限の抜け穴づくりが盛り込まれており、批判を強める必要がある。産業競争力会議等では依然として「特区」による労働法制のなし崩し的な規制破壊をねらった策動が続いており、産業競争力強化法案に盛り込まれている「企業実証特例制度(雇用特区)」への批判とあわせて、とりくみをいっそう強化する必要がある。この間の短期日の国会審議を通じても、ファンド等を用いて産業・企業の「新陳代謝」を強引に推進すること、そのため、「労働移動支援型」への転換ということで、労働者や中小企業、地域経済の大規模なリストラがねらわれていることが明らかになっている。労働者派遣法をめぐっては、労政審労働力需給制度部会に「これまでの議論の整理」(案)が配布されたが、労使双方からさまざまな意見が出され、真っ向対立という状況になっている。安倍政権は、「常用代替防止」原則の放棄をせまり、労牧畜での年内取りまとめを強引に推し進めようとしており、批判をいっそう強める必要がある。雇用共同アクションとしても、本日、田村厚労相、鎌田耕一労政審議会労働力需給制度部会長あて、「労働者派遣制度の『規制緩和』に強く反対する意見」(別掲)を提出する。
 いま、労働界のみならず法曹界、市民団体からも安倍政権の雇用破壊攻撃に対する批判が強まっている。とくに、日弁連が一二月一三日に「労働法制の規制緩和と貧困問題を考える市民大集会」を開催することを決定した。この大集会を大成功させ、共同した運動を徹底して強めていきたい。
 集会では職場からの報告があり、最後に、全労協の遠藤一郎常任幹事が、雇用共同アクションの運動の輪をひろげ全国各地から闘いをまき起こそうとまとめの発言をおこなった。

「労働者派遣制度の『規制緩和』に強く反対する意見」

 1.「常用代替防止」の大原則を堅持し、労働者派遣は「臨時的・一時的な業務」に限定すること
 規制改革会議の本年六月の答申や一〇月の労政審に対する意見は、「常用代替防止」原則を放棄し、「乱用防止」という原則に改めることを求めており、現行制度の根幹を揺るがすものとして強く批判されねばならない。もし、このような「改正」が強行されれば、労働者派遣が一般的な働き方となってしまいかねず、いつでも切れる安上がりの「雇用の調整弁」として、製造現場のラインや店舗の店員、営業などの現場で次々と派遣労働者に置き換えられることになる。
 「乱用防止」が原則となれば早晩、警備や港湾、医療業なども労働者派遣が自由化されることが強く懸念される。そもそも労働者派遣は職安法第四四条が禁止する労働者供給事業(人入れ稼業)の例外として一定の制限のもとに容認されているにすぎないのだから、それを一般化することは許されない。あくまで「常用代替防止」原則を外すというのなら、職安法四四条に違反するものとして、労働者派遣はもはや禁止されるべきである。一方、本年八月の在り方研究会の報告書は、「常用代替防止」原則を一応維持するとし、期間の定めのない雇用か否かで区分しているが、これもまた認めることはできない。労働者派遣の実態をみれば、派遣元と派遣先の彼我の差はあまりにも大きいのである。派遣切り等の実例からも、期間の定めがある雇用か否か(無期雇用か有期雇用)で実態に大きな差はなく、派遣先との契約が終了すれば同様に切られているのが実態である。この点て、同報告書が「常用代替防止は、派遣先の常用労働者を保護する考え方であり、派遣労働者の保護や雇用の安定と必ずしも両立しない面がある」としている点は根本的に誤っている。常時ある仕事なら労働者派遣ではなく、直接雇用とすべきなのであって、雇用の安定をめざし、派遣労働者の直接雇用への道を拡大することこそ必要である。
 2.日雇派遣禁止など昨年の法改正を白紙に戻すことは許されない(略)
 3.派遣労働者などの参加のもとで、実態と声を踏まえた論議を尽くすよう求める(略)


過労死・過労自殺はあってはならない

     
過労死防止基本法制定実行委が院内集会

 一一月一九日、衆議院議員会館で、院内集会「『過労死防止基本法』の制定を実現する集い 一日も早い成立を!」(主催・過労死防止基本法制定実行委員会)が開かれた。
 実行委員会が求める過労死防止基本法は、過労死をなくすために、国・自治体・事業主の責務を明確にするとともに、国は過労死に関する調査・研究を行い総合的な対策を行うことを骨子とし、過労死を予防するための基本計画の策定や調査研究、支援策などからなる。これまで実行委員会が法案のたたき台を提起し、超党派の「過労死等防止基本法の制定を目指す議員連盟」(国会議員一二二人が参加)などによる法案の検討作業が進められてきた。

 集会では、実行委員会委員長の森岡孝二関西大学教授が、命を大切にするふつうの人間として働けることを願うと開会のあいさつ。
 実行委員会事務局長の岩城穣事務局長が委員会としての活動について、ストップ!過労死一〇〇万人署名が現在、約五二万人となっていること、全国の三八自治体で法制定を求める意見書が採択されていることなどを報告した。
 議連代表世話人の馳浩衆院議員(自民党)は、法案は過労死があってはならないという防止措置が大事だ、早期の立法化に取り組んで行きたいと述べた。
 全国過労死を考える家族の会代表の寺西笑子さんは、ようやく国が命の問題を正面に持ってきた気がするが、法律を制定しただけでは過労死は止まらない。国が政策を変えるまで歩み続けると述べた。

 一二月三日、過労死防止議連総会は臨時国会に法案を提出することを決定。臨時国会には間に合わなかったが、修正を加えた法案を超党派で通常国会に提出すると見られる。

 なお現在、検討されている過労死防止基本法(案)では、第一条総則(目的)で「この法律は、近年、我が国において労働者の過重な業務による疲労の蓄積や業務に起因する極度の心理的負荷等によって脳・心臓疾患や精神障害を発症して生ずる労働災害である過労死が多発していること、また、まじめで誠実な働き盛りの労働者が過労死で命を落としていくことは遺された家族にとっても、その労働者を雇用する企業及び事業所にとっても大きな損失であることにかんがみ、過労死の防止に関する基本理念を定め、国及び地方公共団体並びに事業主等の責務を明らかにするとともに、過労死対策の基本となる事項を定めることにより、過労死防止対策を総合的に推進し、あわせて過労死のおそれがある労働者とその親族等に対する支援の充実を図り、もって仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的とする」とし、第二条(定義)で「この法律において『過労死』とは、過重労働によって心身の健康を損ねた結果生じる、脳・心臓疾患等の発症による死亡並びに精神障害等の発症による自殺をいう。第三条(基本理念)で「過労死は、あってはならない。過労死防止対策は、過重労働が過労死を招くことにかんがみ、過重労働が労働者の心身に与える影響や、ワーク・ライフ・バランスに関する調査研究も踏まえて実施されなければならない。過労死防止対策は、国、地方公共団体、事業主団体、事業主、医療機関、過労死防止等に関する活動を行う民間の団体その他関係する者の相互の密接な連携の下に実施されなければならない」としている。(以下・略)

「過労死防止基本法」制定実行委員会が求めていること
 「過労死」が国際語「karoshi]となってから20年以上が過ぎました。しかし、過労死はなくなるどころか、過労死・過労自殺(自死)寸前となりながらも働き続けざるを得ない人々が大勢います。
厳しい企業間競争と世界的な不景気の中、「過労死・過労自殺」をなくすためには、個人や家族、個別企業の努力では限界があります。
 そこで、私たちは、下記のような内容の過労死をなくすための法律(過労死防止基本法)の制定を求める運動に取り組むことにしました。
 1 過労死はあってはならないことを、国が宣言すること
 2 過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にすること
 3 国は、過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行うこと


これでいいのか?!TPP 12・8大行動

   
 米国のごり押し・意見対立で交渉の年内妥結は頓挫

 環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合はシンガポールで開かれている。自民党は国益を守ると選挙公約などで繰り返してきたが、ここにきて日本は重大な局面に立たされようとしている。
 一二月八日、日比谷公園野外音楽堂で、「これでいいのか? TPP 大行動」が開催され、二七〇〇人が参加した。この集会は、政府が年内妥結をめざしているTPPに対し、交渉からの脱退を求めるもので、TPPに反対する弁護士ネットワーク、TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会、主婦連合会が呼びかけ、農民団体、労働組合、医療関係団体、生協など一六五団体が賛同してひらかれたものだ。
 主婦連の山根香織会長が開会あいさつ。交渉は秘密のまま続けられていて、中身も分からず結論だけ押し付けられる事態になりかねない。年内妥結など絶対に認められない。
 馬場利彦・JA全中参事の来賓あいさつ、日本医師会の横倉義武会長メッセージが紹介され、つづいてマハティール・マレーシア元首相のメッセージが読み上げられた。TPPが自由貿易に関するものでないことは明白であり、その条項を参加各国が順守しなければならない規制された貿易だ。FTAは全て、貿易を自由化するものではなく、実際は貿易に規制を課すものだ。真に自由な国際貿易体制はあり得ない。そのようなものが無くとも、世界の貿易は非常な成長を遂げて来た。TPP含め、まさに所謂自由貿易協定は必要のないものなのだ。
 リレートークでは、長野県中川村の曽我逸郎村長が、TPPは地域づくりの努力台無しとなり、地域の自治を壊すものだと述べた。日本医労連の山田真巳子委員長は、お金もちだけがいい治療が受けられるというようなことを許してはならず、過労死を防ぎ、労働者と医療を守るためにもTPPに反対すると訴えた。
 つづいて、郵政産業労働者ユニオンの須藤和広書記長、神奈川県消団連の丸山善弘事務局長、弁護士ネットワークの伊澤正之弁護士がつぎつぎに起ってTPP反対を訴えた。民主党、共産党、生活の党、社民党からのあいさつ・メッセージがあった。
 集会アピール文(別掲)を採択し、寒風を突いてデモに出発した。

 ■シンガポールでのTPP交渉は、結局、アメリカの横暴な提案に各国が反発して来年に先送りとなった。日本はアメリカに迎合したが、それも拒否されている。

「これでいいのか?!TPP 大行動」アピール
 私たちは、本日、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉の年内妥結に向けたヤマ場の閣僚会合が開かれているさなかに、「これでいいのか?!TPP」の声を集めて、大行動を行いました。
 年内妥結といっても、農林水産品の関税撤廃、知的財産権、国有企業改革、環境などの分野では、いまだ合意の目途さえ立っていないのが現状です。にもかかわらず、年内妥結に固執するアメリカは、わが国が聖域とする重要農産品についても関税の全面的な撤廃を求め、圧力を強めています。また、日米両国は、国の司法・立法・行政権を侵害する恐れが強いISD条項をTPP協定に盛り込むよう提案していると伝えられています。
 しかし、私たちは日本の主権と食の自給を脅かし、食の安全、いのちと健康よりも、大企業の利益を優先させるTPPを、絶対に認めることはできません。そのようなTPP交渉の内容を国民にも国会議員にも開示しないまま、なし崩し的に合意するのは、自民党の選挙公約、衆参農林水産委員会の決議を反政にし、国民との約束を裏切る背信行為であり、決して許されません。
 以上のことから、私たちは日本政府に次のことを要請します。
 一、「初めに妥結ありき」の姿勢ではなく、自民党の選挙公約、衆参農林水産委員会の決議を厳守し、日本の国民主権を守りつつ、交渉参加国の産業や環境、社会制度の多様性を互いに尊重しあう立場で交渉に臨むこと。
 二、日本が聖域とする重要農林水産品や国民皆保険制度、食の安全と暮らしを守るための規制や基準が守れないようなTPP交渉からは毅然と撤退すること。
 私たちは今後も、国民各層と連携してTPPに反対し、日本の主権と国民益を守る運動に取り組むとともに、政治、経済、文化など様々な分野でアジア・太平洋周辺諸国との真の友好を発展させる運動を粘り強く続けていくことを、ここに宣言します。


福島原発告訴団が検察審査会へ第二次申立

        
原発事故を起こした責任者を告訴

 東京電力福島第一原子力発電所の事故により被害を受けた住民たちによる福島原発告訴団は、昨年三月、原発事故を起こし被害を拡大した責任者たち(東京電力の取締役や原子力行政に携わってきた電子力安全・保安院や原子力安全委員会の専門家等三三人)の刑事裁判を求めて、福島地方検察庁へ告訴を行ったが、東京地検(!)への移送となり、九月に東京地検が不起訴とした。
 
 この暴挙にたいして一〇月一六日、告訴団団長の武藤類子さんたち三名が東京検察審査会に申立てを行い、一一月二二日には、福島県からのバス二台、六〇名をはじめ弁護団、支援者などが、東京検察審査会へ、告訴・告発人から寄せられた第二次申立ての委任状(五七三七通)を提出し、受理された。
 
 午後二時半からは、日比谷図書文化館・コンベンションホールで報告集会が開かれた。
 武藤類子団長が、闘いの新たなステージがここ東京で始まること、都民から選ばれる一一人の検察審査員に働きかけるための世論を呼び起こす運動が必要で、そのために告訴団のブックレットをそれぞれの人の地元の図書館にリクエストするとか、また新聞への投書などありとあらゆる方法でやりぬいていこうとアピールした。
 集会では、「検察審査会への取り組みに学ぶ」として、JAL墜落事故について(海渡雄一弁護士)、JR福知山線脱線事故(事故遺族の藤崎光子さん)、そして「検察審査会に向けてやれることはなにか」をテーマに、告訴団より申立書のポイント説明(河合弘之弁護士)、公害裁判について(保田行雄弁護士)の報告がおこなわれた。日航機事故被災者家族の会からはメッセージが寄せられた。

 今回の検察審査会申立の対象者は、勝俣恒久取締役会長をはじめ当時の東京電力の原子力担当役員の次の六名とした。
 @勝俣恒久(東京電力株式会社取締役会長)、A鼓紀男(同 取締役副社長 福島原子力被災者支援対策本部長兼原子力・立地本部副本部長)、B小森明生(同 常務取締役 原子力・立地本部本部長兼福島第一安定化センター所長)、C武藤栄(同 前・取締役副社長 原子力・立地本部長)、D武黒一郎(同 元・取締役副社長 原子力・立地本部長)、E榎本聡明(同 元・取締役副社長 原子力本部長)。

 六名に限定し他をはずした理由などについて、河合弘之弁護士、保田行雄弁護士海渡雄一弁護士の「検察審査会申立の対象者を東京電力の原子力担当役員六名に限定した理由について」は次のように説明している。@東京電力のなかでは、原子力関係の対策の意思決定は原子力担当役員の手に委ねられていた。他の役員には清水社長も含め、予見可能性はあったかもしれないが、適切な対策を講ずることは困難だったと判断し、六名に審査の対象者を限定した。A保安院、原子力安全委員会の関係者については、組織としての責任はあると考えるが、東京電力の津波対策を担当していた担当者とその行動については、現時点でも明らかにできていない。告訴の対象としていた組織のトップは、東京電力の津波対策について認識があったとする証拠は得られていない。個人責任を問うていく、刑事訴訟の当事者として適切な被疑者を特定するに至っていない。そこで、組織としての保安院、原子力安全委員会を免責するわけではないが、審査の対象からは除くこととした。B文部科学省と山下ら健康管理アドバイザーには、深刻な高線量地域を隠蔽し、事実に反する低線量被曝宣伝によって、多くの住民に不必要な被曝を余儀なくさせた。検察庁は甲状腺ガンについて因果関係は認めていないが、否定もしていない。過失の点で不起訴という判断を決め、因果関係については不明という立場である。現在発症している甲状腺ガンやその他の疾病について、今後、放射線に起因することが確認され、関係者の中から告訴人が名乗り出た場合には、彼らの行為は明らかに業務上過失致死傷に該当し、あらたな闘いは十分可能である。今後、県民健康管理調査と甲状腺ガン等について、情報をフォローし、適切な時期に適切な対応を行うことを留保しつつ、今回は争点を単純化し、東電役員の起訴相当の決定をとることを最優先の獲得目標とし、審査の対象から外した。

 今度こそ、原発事故を起こし被害を拡大した責任者たちに責任を取らせよう。そして原発再稼働阻止、脱原発へのうねりを高めていこう。


ハタ・ウタの義務化を許さない!

       「国旗・国歌」尊重・義務化に反対する院内集会


 一二月五日、参議院議員会館で、「国旗国歌」尊重義務化に反対する院内集会が開かれた。
 「良心表現の自由を!」声を上げる市民の会の渡辺厚子さんがあいさつ。自民党政権の改憲の動きの中では、天皇の元首化とともに、ハタ・ウタの義務化が規定される。こうした時期に国会で集会をひらき反対の意思を持つものがいることをしめすことが必要だとおもい、この集会を開いた。民主主義の崩壊をくいとめよう。
 憲法を生かす会の筑紫建彦さんが「改憲をめざす安倍政権の動き」と題して報告。安倍政権のこの間の動きを見ていると毒を食らわば皿までというような調子だ。立法改憲、実体改憲、解釈改憲を重ねる手法で、明文改憲の外堀を埋め、国家・統治者の下で、自由・人権・民主主義・平和・共生などは有名無実化されようとしている。「自民党改憲草案」はその綱領文書だが、この臨時国会で国家安全保障会議の設置と秘密保護法制定に暴走し、来年の通常国会では集団的自衛権の行使容認を狙っている。すでに集団的自衛権については、これまでのいわゆる「四類型」に限らず、「地球の裏側」、「宇宙」まで無限定に拡大するとしている。そして、「国家安全保障基本法案」を用意しているが、これはとんでもないものだ。それには次のような条文が並んでいる。「国は、教育、科学技術、建設、運輸、通信その他内政の各分野において、安全保障上必要な配慮を払わなければならない」、「国は、…秘密が適切に保護されるよう、法律上、制度上必要な措置を講ずる」、「地方自治体は、国その他の機関と協力し、安全保障に必要な措置を実施する責務を負う」、「国民は、国の安全保障施策に協力する」などとし、「我が国が自衛権を行使する場合は、我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した事態」と米軍との共同の軍事行動が規定されている。そのためには教育の国家統制の強化が必要だ。前の安倍政権のときに教育基本法が改悪され、教科書の検定・採択制度への統制が強化されている。私たちは、あらゆる分野で進む自由と人権への侵害、生命と生活の破壊に対抗するたたかいの相互理解と協力を強め、国際的なネットワークとも結んだ運動をすすめていかなければならない。
 つづいて、沢藤統一郎弁護士が「立憲主義と自民党改憲草案第三条」について報告。市民革命を経て、近代憲法が生まれたが、近代憲法の骨格は、個人の尊厳を至高の価値とする基本的人権の尊重ということと、この価値を侵すことのないよう国家機構を整備することの二点だ。国家や集団ではなく、個人にこそ価値の源泉があるという個人主義と国家の干渉から国民の自由は保護されねばならないという自由主義の二つを政治原理の基調として、主権者すなわち憲法制定権力としての国民が、国民の基本権を擁護する目的で、国家の権力を制約すべく国家に対する命令の体系としての憲法を制定するという法原理が立憲主義である。当然に、日本国憲法も近代憲法の正統の系譜に連なっている。憲法が最も関心をもつテーマは、国民と国家との関係であり、その関係の内容は、国家が国民の人権を最大限擁護し、国民に奉仕すべきとするものだ。あくまで主は国民であり、国家は従の地位にしかないのだ。現行憲法においては、国民からの国家ないしはこれを司る公務員に対する命令の体系という構造が貫かれているが、自民党の「日本国憲法改正草案」は、国民に対する憲法遵守義務を課する点で、近代憲法の立憲主義を逸脱し、憲法が憲法でなくなる事態をもたらす。改憲草案第三条の国旗国歌条項もそのことと軌を一にする。「二項」は「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」としているが、これは憲法の基本原則に反する規定である。国旗国歌とは国家の象徴であり、国旗国歌=国家の等価関係が成り立つのであり、国旗国歌の尊重義務は、国民に対して国家を尊重すべき義務を設定するものである。これは、立憲主義の構造からの主従の逆転であり、憲法価値の倒錯であり、政治的には、国家主義・ファシズムの思想と言ってよい。国旗国歌法は、尊重義務を設けていないので違憲の問題が起きないが、その政治的効果は甚大であった。これからみても自民党改憲草案実現の影響には恐るべきものがある。
 鵜飼哲一橋大学教授は「国家が教育と調教を区別できなくなるとき」をテーマに報告。国旗国歌法制定の時には、政府は「強制はしない」という約束を国会でおこなった。しかしそれとは真逆の現実がある。自民党改憲案では、憲法による国旗国歌の尊重の義務づけがおこなわれることになる。法的強制の公然化が教育の場から全公共空間へひろがる。この国では「日の丸・君が代」を刷り込まれてひとははじめて「国民」に、したがって「人間」となる。ゆえに「日の丸・君が代」教育は「人格否定」ではなく、かえって「人格形成」であるということだ。この国の観点では子どもは動物であり、「日の丸・君が代」による調教の対象とされる。自民党憲法による義務づけの論理はここに潜在的に先取りされているが、全公共空間が適用領域とされることで、「非国民」排除の本質があらわになったのである。 
 また佐野通夫さん(「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会)が、「愛国主義・差別排外主義がすすむ教育」、松田順一さん(国際人権活動日本委員会)が、「ジュネーブ報告(自由権規約委員会・NGOミーティングについて)」の報告をおこない、最後に田中宏一橋大学名誉教授からの発言があった。


KODAMA

   
お隣さんってムカつくね

 作家の室井佑月さんが「週刊朝日」にコラムを連載しているが、毎回が面白い。「一二月二〇日」号には、最近の上海旅行でのことを書いている。「お隣さんってムカつくね」の心理がいかにつくられていくかだ。今回のもなかなか鋭い。
 ―上海ではマスクをしている人は一人もいなかった。PM2・5で大変なことになっているんじゃないのか? ニュースでは、マスクをしている中国人の群れが何度もしつこく流れていた。
 「中国は広いから上海は大丈夫なの?」あたしがそう訊ねると、「それより日本の放射能汚染は、すっごいことになってるんでしょ。大丈夫ですか?」と逆に訊ねられた。
 あたしたちはお互いに顔を見合わせゲラゲラ笑った。
 国内では、お隣の国の問題をデフォルメしニュースでバンバン流す。これって国内の不満ガス抜きの常套手段だ。「お隣さんってムカつくね」、そういう気持ちで家族(同じ国の人)は結束すると信じられているらしく。そういえば、原発事故が起こってからかも、ニュースで盛んにPM2・5について騒いでいるの。おかしくね? PM2・5はいきなりすごいことになったわけじゃないのに。―


せ ん り ゅ う

       デモに負けテロだ機密だいしば節

                              ヽ 史


複眼単眼

      
秘密保護法に反対する民衆運動の画期的な高揚

 運動の側にはなかなか問題が一般に浸透しにくいと嘆く声もあったが、秘密保護法に反対する運動は一〇月後半からは急速に燃え広がった。
 東京では一〇月二九日には秘密保護法に反対する国会請願デモ(主催・平和フォーラム)が数千人の規模で行われた。
 一〇月中旬、盗聴法に反対してきたグループや憲法関連の市民運動によって、「『何が秘密?それは秘密』法(秘密保護法案)に反対するネットワーク」(略称・秘密法反対ネット)が結成されたことを契機に、この市民運動の努力で、十一月二一日に一日共闘形態で大規模な秘密法反対集会を開こうとの呼びかけと準備が始まった。
 十一・二一実行委員会には秘密法反対ネットを中心に新聞労連、平和フォーラム、五・三憲法集会実行委員会、秘密法に反対する学者・研究者連絡会などが「呼びかけ五団体」として結集し、これを軸に様々な市民団体やグループが参加して、「STOP!秘密保護法十一・二一実行委員会」を名乗ることになった。
 この実行委員会で特徴的なことは労働組合では、新聞労連など中立系組合と平和フォーラムなどを媒介にして連合系労組や、五・三実行委員会などに加わっている全労協、全労連などが参加し、共同したことだ。そしてこれを弁護士の強制加盟団体である日本弁護士連合会が「後援」するという決定をしたことだ。
 この幅広い仕組みの運動に呼応して全国各地で集会などの行動が行われた。
 二一日の日比谷野外音楽堂の集会は野音が満員になり、会場封鎖するほどで、参加者は会場外にあふれる九〇〇〇人に上った。
 その後、この実行委員会は討議を経て、一日共闘から臨時国会会期中の秘密保護法に反対する共同行動(秘密保護法廃案へ!実行委員会)に再編され、さらに十二月一日に開催された日本弁護士連合会による新宿西口の街頭演説会を「廃案へ実行委員会」が「後援」するという画期的なことも起こった。
 国会の緊迫を反映して、この実行委員会は連続的に、一二・一国会キャンドル行動(一五〇〇人)、一二・四国会包囲ヒューマンチェーン(六〇〇〇人)、一二・五国会前集会(昼、夜)と多彩な形態で継続され、参院本会議の強行採決を前にした日比谷野外音楽堂の集会(日弁連が後援)には、前回を大きく上回る一五〇〇〇人が参加し、その後、国会を包囲した。
 一方、この間、学者や研究者、芸術家、文化人、報道界、宗教者など多くの著名人の団体も、連日、次々に反対を表明した。これらの動きを主要メディアが連日のように報道した。ツイッター、ブログなどインターネット・メディアも運動の伝播に大きく貢献した。
 国会の周辺は連日、抗議の人波が絶えることがなかった。このような政治運動の高揚は本当に久方ぶりのことであった。国会周辺に限定して言えば「六〇年安保以降、特定の法律反対の反対運動でこれほど盛り上がったことはないと思われる」(海渡雄一弁護士)という評価もあながち言い過ぎではないと思われる。
 こうした院外の情勢を反映して、衆議院段階では議席の数に任せて強行突破した安倍政権は、参議院段階では動揺し、秘密法の監視機関の設置などの弥縫策を相次いで打ち出したり、五日には本会議強行採決を断念したりした。安倍政権は会期末の六日ギリギリの場面で二日間の国会延長策を担保にして、参院本会議で強行採決にでた。
 十二月一〇日の報道では共同通信の世論調査で、内閣支持率が一〇ポイント以上急落し、四七%になったとある。法律への反対は六〇%だった。
第二次安倍政権の終わりの始まりである。(T)


冬季カンパの訴え

 安倍政権は、改憲と戦争への道への政策を強引に進めていますが秘密保護法のごりおしで支持率も急激に下がりました。来年には消費税増税、経済の息切れなどが、格差差拡大・貧困化の厳しい状況をいっそう過酷なものとすることになります。
 安倍政権を打ち倒し、日本とアジアで戦争が起こるのをとどめるために、反戦・平和・憲法改悪阻止の闘いを労働運動の前進と両輪として前進させましょう。ここに、闘いの着実な前進のためにカンパをお願いし、あわせて機関紙「人民新報」の購読を訴えるものです。

                                労働者社会主義同盟