人民新報 ・ 第1310号<統合403号(2014年2月15日)
  
                  目次

● 第186回通常国会はじまる  安倍政権の右翼反動政策と断固闘いぬこう

● 都知事選   宇都宮健児さん 安倍政権の暴走との対決を訴え善戦

● 過労死防止基本法  制定にむけて国会での過程始まる

● 「琉球新報」「沖縄タイムス」が英文社説  民意の代弁者・沖縄マスコミ

● 名護市長選大勝利! 稲嶺進市長再選 名護市民は新基地建設反対を選択

● 秘密保護法を絶対に廃止にするぞ!  全国をネットワークして、広範な廃止運動

● 報道の自由度  日本の民主主義度はどれくらい?

● 「日の丸・君が代」強制反対! 教育の国家支配と闘おう!  都教委包囲首都圏ネットの主催で決起集会

● 実教出版社『高校日本史』排除は不当だ!

● KODAMA  /  驚愕の安倍人脈

● せ ん り ゅ う 

● 複眼単眼  /  ノーサイドの精神に学べるか






第186回通常国会はじまる

      安倍政権の右翼反動政策と断固闘いぬこう

             
集団的自衛権行使容認阻止  特定秘密保護法廃止へ

 第一八六通常国会が一月二四日からはじまった。会期は六月二二日までの一五〇日間だが、施政方針演説に見られるように、安倍政権は集団的自衛権の行使に向けた改憲策動をはじめ、消費税増税と社会保障のきりすて、規制緩和と復興法人税の減税、TPP推進、民主党政権時代の「ゼロ」戦略さえ廃止して原発再稼働、教育の反動的改革、辺野古米軍新基地建設の強行とオスプレイの本土訓練などの財界とアメリカの利益のために多くの労働者、勤労民衆に犠牲を強いる危険な政策を推し進めようとしている。
 
 国会開会日には恒例となった5・3憲法集会実行委員会の主催による「日本を戦争する国にするな!院内集会」が開かれ、当日の特定秘密保護法廃止国会包囲行動に参加した人たちなど大勢が参加した。はじめに主催を代表して高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)があいさつ。安倍政権の暴走は、昨年末の靖国神社の参拝にもみられるように、近隣諸国との対立をつくりだし、集団的自衛権の行使の解禁で日本を戦争する国にしようとしている。今は新たな戦前だ。安倍内閣と対決するさまざまな闘いを結びつけ大きなうねりを創り出していこう。
 共産党を代表して穀田恵二衆議院議員(党国会対策委員長)、社民党を代表して照屋寛徳衆議院議員(党国会対策委員長)があいさつした。
 集会では、半田滋さん(東京新聞論説兼編集委員)が集団的自衛権の問題について講演し、これからの運動の理論的な武装をおこなった。
 アメリカとともに戦争する国にすることが、安倍内閣の狙いである。そのために国家安全保障会議(日本版NSC)」設置法、特定秘密保護法がある。
 しかし、安倍政権のもくろみは広範な人びとの反対を引き起こした。とくに、暗黒社会をもたらす特定秘密保護法にたいする反対・廃止運動はひろく各界各層に浸透し、拡大している。
 この通常国会をめぐる闘いは、これからの日本がどうなるのかを問うきわめて重大な意義をもつものであり、力をあわせて闘いぬこう。
 絶対に、日本を戦争する国にしてはならない


都知事選 

 宇都宮健児さん 安倍政権の暴走との対決を訴え善戦


                稲嶺名護市長からも応援メッセージ

 東京都知事選は二月九日に投開票された。主要四候補者の得票数は、舛添要一・二一一万二千票、宇都宮健児・九八万二千票、細川護熙・九五万六千票、田母神俊雄・六一万八千票だった。自民・公明また連合東京の支持とそれらの組織票で舛添当選となった。宇都宮・細川両氏の票を合わせればそれが脱原発票といえる。だが、今回の選挙の最大の焦点は原発問題ではなかったし、候補者一本化の主張も一方的なものであり、政策演説会もキャンセルされ、両者はさまざまな政策とくに新自由主義的なものに対する態度は大きく違っていた。
 宇都宮さんは、安倍政権の暴走をストップさせ、憲法を守り、東京からアジアに平和を発信し、世界一働きやすく暮らしやすい希望のまち東京の実現、原発のない社会と経済、教育現場への押し付けのない、いじめのない、子どもたちが生き生き学べる学校づくりなどの政策をかかげ、脱原発陣営の分裂や低投票率にもかかわらず前回都知事選(一二年一二月)の九六八、九六〇票から支持者を拡大した。ボランティア運動員の献身的な努力などによって、宇都宮さんの政策が各層に浸透していった成果であろう。
 選挙結果を受けて、「希望のまち東京をつくる会 宇都宮けんじ選挙対策事務所」は開票当日の夜に「宇都宮健児都知事選挙を闘って」を発表したが、そこでは、支持者に対する感謝の意を表するとともに「今回の選挙は、原発の再稼働を止め、原発ゼロを実現できるか、安倍政権による秘密保護法制定、集団的自衛権行使、憲法改正へとひた走る危険な日本の進路を止められるか、文字どおり日本の行き先のかかった歴史的な選挙でした。宇都宮けんじは、沖縄名護の市長選で勝利した稲嶺さん、福島原発事故の被害や大島の土石流災害を受けた当事者の方がたをはじめとして、多くの市民から熱烈に支持されました。宇都宮けんじの、社会的に困難な状況にある人たちへのやさしい視線、社会を見る時の確かな識見、改革に取り組む時に市民と共に運動を作りながら進む民主的な手法、そして権力と渡り合い、課題を実現させる時の粘り強さと力強さは、確実に有権者の心を捉え、大きなうねりを作り出し、選挙演説を聞いた人々が投票するだけでなく、次々に運動員となってくださいました。まさに、この市民選挙は、このような感動的な出会いと協同の機会を作りだし、選挙そのものがひとつの社会運動となっていったのです。…この選挙を通じて行われた広範な都民との対話によって培われた絆を大切に、私たちが訴えたひとつひとつの政策の実現のために、この選対に集った者たちが、それぞれ明日からの活動を続けていきたいと思います」と「選挙そのものがひとつの社会運動となっていった」ことを確認し、今後の運動を進めていこうと呼びかけている。
 舛添は福祉の充実など「東京の魅力を高めて世界一の都市にする」と公約して新都知事になった。これを監視し、安倍政権と連動して都民をないがしろにする政策と対決していかなければならない。また脱原発運動などで生じた内部矛盾を一日も早く克服し、再稼働阻止の運動をいっそう大きく発展させなければならない。
 安倍政権の暴走は止まるところをしらない。さまざまな運動を合流させ、戦争する体制作りを断固として阻止しよう。


過労死防止基本法

      
 制定にむけて国会での過程始まる

 ブラック企業問題がいまの日本を象徴しているが、長時間過密労働など労働条件は急速に悪化し、過労死が大きな社会問題となっている。いかにして過労死防止していくのかが問われている。
 二月四日、衆議院第一議員会館地下大会議室で、「ストップ!過労死 過労死防止基本法制定実行委員会」(呼びかけ団体は全国過労死を考える家族の会・過労死弁護団全国連絡会議)の主催、「過労死防止基本法」制定をめざす超党派議員連盟の後援で院内集会「『過労死防止基本法』の制定を実現するつどい」が開かれ、議員のあいさつ、遺族の訴えがおこなわれた。

 同日に、民主、維新、みんな、共産、生活、社民の六党は衆院事務総長室を訪れ、共同で議員立法「過労死等防止基本法案」を手渡した。自民党も、経団連などの関係団体からのヒアリング・取りまとめを行う。そして公明党や議連とも調整する。今後は、与野党で合意したうえで、新たな法案を野党案と差し替えて、厚生労働委員会審議をとばして、委員長提案による採択を予定し、早ければ三月にも法案は成立するとも言われている。
 過労死防止施策を総合的に推進するため本法案では、@過労死防止に関する国、地方公共団体等の責務A政府が過労死等防止基本計画を策定することB厚生労働省に過労死等防止推進協議会を設置することが柱だ。

 過労死・過労自殺を許さない社会を実現しよう。


「琉球新報」「沖縄タイムス」が英文社説

          
 民意の代弁者・沖縄マスコミ

 キャロライン・ケネディ駐日米国大使の沖縄訪問に合わせて、沖縄県の有力紙「琉球新報」「沖縄タイムス」は、それぞれ二月一一付朝刊に、名護市辺野古の米軍新基地建設に反対する英文の社説を掲載した。ケネディ大使に呼びかけるものだ。
 「琉球新報」の社説は、「戦後六八年間、米国は沖縄住民にとって民主主義の教師であり、反面教師でもありました」として、「戦後初期に伊江島や伊佐浜で抵抗する住民を『銃剣とブルドーザー(重機)』を使って排除し、強制的に土地を奪い基地建設を進めたのも、同じ米国です。これはハーグ陸戦条約(戦時国際法)四六条が禁ずる私有財産の没収に当たるのではないでしょうか」と問い、「最近、あなたは短文投稿サイトのツイッターで『米国政府はイルカの追い込み漁に反対』と発信されましたね。…あなたは『イルカが殺される追い込み漁の非人道性』について懸念を表明されました。逆にお尋ねしますが、ジュゴンの餌場である辺野古の海を埋め、生息を脅かすことは非人道的ではないですか」と迫り、「ケネディ大使、父親譲りの使命感で、米軍が住民の安全を脅かしている沖縄の軍事的植民地状態に終止符を打ち、新しい琉米友好の扉を開いてください。今回の沖縄訪問を、辺野古移設断念と普天間撤去への大きな転機とするよう強く求めます」といっている。両紙は、オバマ米大統領が来日した際(二〇〇九年一一月)にも英文社説をだしている。
 沖縄の人びとをマスコミが代弁する。沖縄の人びとの怒りと闘いの広がりを示すものだ。


名護市長選大勝利! 稲嶺進市長再選

       
名護市民は新基地建設反対を選択

           
沖縄に連帯し全国で反基地・反戦の闘いを展開しよう


 一月一九日、名護市民は、市長選において、基地推進派に大差をつけて稲嶺進市長を再選し「辺野古に米軍の新基地をつくらせない」という断固たる意思を日本政府、そして米政府に叩きつけた。名護市民は住民投票(一九九七年)と市長選挙でも新基地建設反対の立場をあきらかにしてきたが、今回の市長選は新基地建設問題を最大の争点にしたものであり、この基地NOの決意表明の意義はさらに大きい。日米両政府は、この「民意」を重く受け止めなければならない。
 しかし自民党は、県外移設を公約にして当選した自民党沖縄県選出国会議員、仲井眞弘多沖縄県知事をムチとアメで屈服させ、名護市長選でも推進派勝利のために全力挙げた。しかし結果はかれらの惨敗となったのである。
 沖縄の闘いは巨大な成果をかちとった。
 だが、政府・自民党は、この選挙の結果を認めようとはせず、強引な巻き返し・基地建設着工の暴挙に出てきている。菅官房長官は「淡々と進めたい」といい、小野寺防衛相は「名護市という地方の選挙だ。沖縄県の了承に基づき、工事を進めたい」と、その態度は強硬である。
 闘いは新しい段階に入った。

 一月二九日、名護市長選での勝利を受けて、東京の全電通労働会館ホールで「沖縄を再び戦場にするな 辺野古の海の埋め立てを許さない 辺野古新基地建設反対集会」(フォーラム平和・人権・環境、辺野古への基地建設を許さない実行委員会)が開かれた。
 はじめに福山真劫平和フォーラム代表が主催者を代表あいさつ。
 安次富浩さん(海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会共同代表)は、辺野古の地図を映しだしながら、辺野古基地が普天間の代替・移設などではなく、最新鋭基地として建設されようとしていることを報告した。
 山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)は、中国との外交チャンネルを一切遮断して対立をあおり、戦争をしようとしている安倍内閣の危険な政策を批判しながら沖縄の闘いの現状報告をおこなった。政府は沖縄をかつての沖縄戦のように、玉砕の島にしようとしている。辺野古の基地は滑走路が二本あり、それが弾薬庫、接岸バース、そしてキャンプ・シュワブや北部訓練場と連携しての最新鋭の巨大な基地機能をもつものとなるのである。強大な米軍基地がつくられて、そこから日中戦争が始まろうとする。これを許してはならない。尖閣の問題は外交問題として、領土問題があることを認めて、日中双方が話し合ってその上でどうすべきかを考え平和的に解決していくべきだろう。自民党の石破幹事長は、辺野古に反対なら、普天間を存続・固定化させると脅かしている。とんでもないことだ。稲嶺さんは命をかけて闘った。そして名護市民は基地建設反対を選択した。沖縄県議会は、県知事の辞職要求を決議したが、県議会を支えて、仲井眞知事そして日本政府の悪らつな権力と対決していかなければならない。私たちは、命と暮らしを守り、未来を守るために闘い続ける。沖縄の民主主義が日本の民主主義につながる。一一月に予定されている県知事選挙にも勝利しよう。三年後には衆参同日選挙になるかもしれない政治決戦がある。軍国主義反対する大同団結の反戦、平和の闘いを進めなければならない。

 近藤昭一民主党衆議院議員(沖縄等基地問題議員懇談会代表)、東京外国語大教授の西谷修さん、東京平和運動センターから連帯あいさつがおこなわれた。

 集会決議では「公約違反の仲井眞知事の裏切りに依拠しながら、一方で、地元市民の民意を踏みにじって進める辺野古基地が、沖縄を犠牲にし、沖縄を差別してきた、最も新しい歴史の繰り返しとして、いままた現れています。私達は、断固として安倍政権の戦争政策に反対します。ボーリング工事をはじめ、民意を暴力的に削って進める辺野古沖新基地建設を、全力をかけて阻止します。オスプレイ配備と、全ての飛行訓練をやめさせ、高江のヘリパット建設、自衛隊の沖縄県への配備増強、史実に基づく歴史教科書の改ざん、そして沖縄県全土を植民地的隷属によって進めようとする安倍晋三首相の戦争政策に立ち向かい、たたかうことを決意します」と述べている。

 沖縄の求めるものは、世界一危険な基地とアメリカ高官も認めた普天間基地の即時の撤去であり、移転による代替基地を求めているのではない。日米同盟強化・自衛力増強のための基地負担を移転・分散させるのではない。
 沖縄の闘いに連帯し、名護市長選の勝利の成果につづき全国での反基地・平和の闘いを前進させよう。


秘密保護法を絶対に廃止にするぞ!

 「6の日」行動、廃止請願署名など全国をネットワークして、広範な廃止運動がおこなわれている

 昨年末の特定秘密保護法の強引な可決・成立に反対し、廃止を求める運動が全国でくりひろげられている。

 一月二四日の通常国会の開催日に、「『秘密保護法』廃止へ!実行委員会」の呼びかけで、三〇〇〇人のヒューマンチェーンで国会を包囲した。この日の昼過ぎから人びとが続々と国会周辺に結集し、思い思いのプラカードなどをかかげて、秘密保護法の廃止を求めた。午後一時半、ヒューマンチェーンがつながった。当日は、名古屋での三〇〇〇人デモをはじめ、北海道、岩手、宮城、山形、神奈川、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、京都、大阪、和歌山、岡山、広島、福岡、熊本、大分、宮崎などでも一斉に行動がおこなわれた。

 つづいての院内集会には四五〇人が参加したが、会場に入れない人も多かった。日本弁護士会の佐野善房副会長は、政府のいう諮問機関などでは危険性は払拭できない、秘密法は廃止すべきだ、と述べた。また、日弁連秘密保全法制対策本部副本部長の海渡雄一弁護士、出版労連の大谷充委員長、新聞労連の米倉外昭副委員、また愛知、大阪、神奈川、長野からの発言がつづいた。
最後に実行委員会の高田健さんが、「6の日」行動、勉強会、そして秘密保護法廃止を求める請願署名などの今後の運動について提起をおこなった。

 この日には、「『秘密保護法』廃止へ!実行委員会」と「秘密保全法に反対する愛知の会」の呼びかけで、「秘密法に反対する全国ネットワーク」が結成され、記者会見がおこなわれた。「全国ネットワーク」は、各地の団体がともに「ノウハウの共有、情報交換、一斉行動などを行う」ことを目的に作られ、二二都道府県・三二団体が参加し、その後も参加段団体が増えている。そして法律が強行採決・成立した一二月六日を忘れないとして、毎月六日に一斉行動が呼びかけられ、これは法をロック(鍵をかける)するロックアクションと呼ばれる。

 二月六日は、「6の日行動」。国会前行動と院内集会が取り組まれ、約三〇〇人が参加した。
 院内集会では一月の超党派による衆議院「欧米各国情報機関に対する議会監視等実情調査」(ドイツ・イギリス・アメリカ)について報告された。特定秘密法の国会でのチェック機関などについての調査だが、視察団に参加した宮本岳志議員(共産党)は、日本版CIAをつくろうとしている安倍政権の危険な動向を批判した。

 日弁連は秘密保護法の廃止に取り組んでいるが、強力な布陣の形成にむけて一〇〇〇人を目標に参加する弁護士を募っている。三月にも「秘密保護法対策弁護団」が結成される。活動としては、研究会開催や問題提起、同法違反事件の弁護とそのための検討会、外部への意見表明などがあげられている。
 秘密保護法廃止へ、運動を強めよう。


報道の自由度

     
日本の民主主義度はどれくらい?

 二月一二日に、フランス・パリに本部がある国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」が、報道の自由度に関するランキングを公表した。世界一八〇カ国・地域を対象にしたものだ。なんと日本の報道の自由度のランキングは五九位だ。
 日本は二〇〇九年が一七位、二〇一〇年が一一位、二〇一一年が二二位だった。昨年発表のもの(二〇一二年)では、原発事故の情報公開が不十分だったことなどが理由で、五三位に急落した。

 そして今回の下落の理由はいわずと知れた昨年末成立の特定秘密保護法だ。
 このことで「調査報道、公共の利益、情報源の秘匿が全て犠牲になる」とされている。

 安倍の「戦後レジーム」からの脱却、戦争体制づくりでいよいよ息苦しい世の中になりそうだ。だから、かつてない秘密法廃止の運動ももりあがるのだ。


「日の丸・君が代」強制反対! 教育の国家支配と闘おう!

    
 卒入学式を前に都教委包囲首都圏ネットの主催で決起集会

 卒業式を前にした二月二日、「『日の丸・君が代』強制反対! 教育の国家支配と闘おう! 総決起集会」(都教委の暴走をとめよう!都教委包囲首都圏ネットの主催)が、東京しごとセンター地下講堂で開かれ、一三〇名が参加した。

都立高校「改革」の現状

 永井栄俊さん(元都立高校教員)は、「都教委『改革』における新たな段階―教育『改革』の流れと問題点」と題して、教育現場の実情を報告する基調の提起をおこなった。
 都教委「改革」は、一九九七年の新宿高校事件より始まったが、同年「都立高校あり方検討員会」が設置され、翌年にその「報告」が出された。職員会議の補助機関化と企画調整会議そして副校長・主幹等が設置され、この第一段階で、学校の意思決定過程と命令・執行過程を強引に変えた。二〇〇〇年の「人事考課」制度の導入は競争原理と支配を実態化させたが、もう一つの目的は組合つぶしにあった。そして二〇〇三年の「一〇・二三通達」の発出による「日の丸・君が代」の強制は、教育現場に職務命令体制とイデオロギー教育(儀式・道徳教育等)の体制を定着させた。一連の「教育改革」は、学校を祖織としての体制化するものであり「教育は組織である」の指導が管理職によって強調されるようになった。そして二〇一一年の「日の丸・君が代」関連の最高裁判決によって、「職務命令」体制の合憲化が判示された。これを契機に、教育内容への介入・管理・統制が強化され、組織としての教育現場の体制と組織された教育の体制は、戦後教育法体系を大きく変更することになった。
 次の段階は、生徒を対象とする教育内容への介入であった。それは、全ての都立高等学校等の一泊二日の宿泊防災体験の実施、生活指導統一基準の導入、学力スタンダードの導入、教科書への介入と統制の強化などだ。
 こうした教員管理の新政策で、二重処分による制裁や分限要項の改訂(分限処分に昇給ゼロの制裁)など被処分者に対する制裁的扱いが強まっている。また従順な者のみを教員として採用する政策のために、採用前研修などもおこなわれている。新採用一年目の試用期間中の退職者が増大するだけでなく、新採用一年目の分限退職者が増大し、これを不当とする訴訟も増大している。いま教育現場は、パワハラの横行、深夜まで勤務を強いられたりするなかで、USBメモリや答案の紛失が連発するなどモラルが低下するなどブラック企業化している。

安倍教育改革のゆくえ

 つづいて高橋哲さん(埼玉大学准教授)が「憲法改正と教育改革のゆくえ」と題して講演した。
 安部政権は、靖国参拝、国旗国歌強制、道徳教育などの復古主義・保守主義の側面があるが、その本体、主軸は「新自由主義」にある。新自由主義とは、渡辺治氏によれば「既存の政治体制下で大企業に課せられた負担や規制を軽減、除去し、資本蓄積の促進、競争力の回復強化をはかり、あわせて不況の克服と経済発展をめざす政治とイデオロギーの総体」をいう。その新自由主義が求める教育改革とは、公教育の縮小とエリート教育への重点投資を目的とし、競争→評価(学カテスト)→賞罰(廃校または処分)を手段とする。
 経済財政諮問会議「経済運営と改革の基本方針について」(二〇一三年六月閣議決定)によれば「世界トップレベルの学力の達成等に向け、英語教育・理数教育・ICT教育・道徳教育・特別支援教育の強化など社会を生き抜く力の養成を行う。意欲と能力に富む若者の留学環境の整備や大学の国際化によるグローバル化等に対応する人材力の強化や高度外国人材の活用、ガバナンスの強化による大学改革とその教育研究基盤の確立を通じた教育研究の活性化など、未来への飛躍を実現する人材の養成を行う。就学支援を行うとともに高校無償化制度の見直しを行う。幼児教育の無償化に向けた取組を財源を確保しながら段階的に進める。その際、少子化の進展も踏まえエビデンス(証拠・根拠)に基づき効果的・効率的に施策を進め、PDCA(計画→実行→評価→改善)を確実に実施する」としているが、キーワードは「生き抜く力」で、競争的環境で「生き抜く力」=エリート選別としての教育をおこなうということだ。
 安倍政権の教育改革のねらいは、@エリートの早期選別と、そのための教育財政の重点投資(新自由主義教育改革の促進)A新自由主義教育改革を実行するための支配体制づくり(統治機構の改革)B新自由主義に伴う社会病理への治安対策としての保守主義・復古主義教育ということである。
 安倍政権が進めようとしている憲法改正の狙いは、二〇一二年四月に決定した自民党「日本国憲法改正草案」に見られる復古主義と支配体制の強化である。そこでの教育の位置づけは、その第二十六条にあるが、その三項は「国は、教育が国の未来を切り拓く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない」として、「国民の権利としての教育」から「国家の道具としての教育」への逆転がある。その「環境整備」とは、新自由主義教育改革を遂行するための「環境」の整備であり、「第二期教育振興基本計画」(二〇一三年六月閣議決定)では、「変化の激しい社会において引き続き成長発展するためには、グローバル化等に対応しつつ新たな社会的・経済的価値を創出することが必要である。そのために個人の多様な個性・能力を最大限伸ばし社会の中で生かすことができる教育環境の整備が必要である」としている。
 安部政権の教育改革案の策定主体は、自民党「教育再生実行本部」、内閣の「教育再生実行会議、文科省・中央教育審議会「教育振興基本計画部会」だが、党の「実行本部」が事実上の政策立案機関であり、ここに第一に注目すべきだろう。
 新自由主義教育改革の展開の軸は、エリートの早期選抜と重点投資ということだ。実行本部「中間取りまとめ」では、「6・3・3・4制」の見直し―「平成の学制大改革」がうちだされている。実行本部「第二次提言」は、「結果の平等主義から脱却し、社会状況や子どもの実態等に応じて、学校制度を多様化・複線化」として、@幼児教育の無償化の実現A6・3・3・4制の見直しと義務教育の充実、ここでは、4―4―4、5―4―3などの新たな学校区分へ移行や小中高一貫教育についての検討、達成度テストの導入、飛び級・高校早期卒業の制度化などが提起され、B後期中等教育等の複線化では、専門高校等を活用した五年一貫職業教育(目標二〇〇校)の検討、普通高校と専門高校の適正比率の検証などが言われる。
 大学改革では、今後一〇年間で世界大学ランキングトップ一〇〇に一〇校以上ランクインさせる、大学入試制度では高校在学中に複数回挑戦できる達成度テストを創設また体験活動の参加に向けた環境整備などだ。
 こうしたことの実現のためには支配体制の形成が必要だということで、教育委員会の諮問機関化と首長による教育長任命が構想される。昨年一二月の中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」では、教育長は首長の「補助機関」、教育委員会は首長の「特別な附属機関」とされ、教育事務の「執行機関」を首長に設定し、教育長の任命および罷免権を首長へ移し、現在の合議体の行政委員会による執行から教育事務の教育長による単独執行へとなる。
 次には、教員統制の強化で、これは新自由主義教育改革を実現する上で不可欠の要素だ。一番の抵抗帯である教師の労働条件・身分保障を破壊することで従属させることだ。自民党の総合政策集にある公務員倫理規定では、組合活動の制限・適正化が強調され、公務員の「政治的中立性」から公務員の「政治的従属」へということが狙われている。
 そのために、メリハリのある教員給与、主幹教諭必置がいわれ、教員給与制度改革をおこなうという。東京都の給与制度改革は、教員評価と給与(昇給)と結びつけて、人事考課の結果によって、昇給を、「最上位(6号給)―上位(5号給)―標準(4号給)―下位(3号給結)」に差別化している。学校組織は、統括校長・校長・副校長・教頭・主幹教諭・主任教諭・教諭に階層化され、「一般教員」内の主幹教諭、主任教諭、教諭の給与の差別化される。たとえば採用一〇年後に主任教諭となった場合の教諭職との生涯給与差額は七七四万円、採用二〇年後に主幹教諭となった場合の教諭織との生涯給与差額は一二九二万円にもなる。昨年末の中教審議答申では「教員フリーエージェント」制度構想がだされているが、これは校長に教員の人事権を与え、教員の身分保障を流動化する仕組みだ。
 教員になる前からも「改革」ははじまる。実行本部「中間まとめ」の教員養成・免許制度改革では、准免許状の導入(一〜二年間のインターンシップを経て適正を判断し本免許状を支給)、「教師塾」の全国化、社会人採用枠を創設し、社会人の採用を全体の一割にする、などだ。
 そして、教科書検定基準改訂で、義務教育学校社会科と高校地歴・公民の「各教科固有の条件」の変更、そこでは少数学説・少数意見が排除され、多数意見すなわち政府見解の記述が義務化される。
 教育振興基本計画(二〇一三年六月閣議決定)では、「『道徳の時間』を要として学校の教育活動全体を通じた道徳教育の質の向上を図り、道徳的な心情、判断力、実践意欲と態度などの道徳性を養うため、『心のノート』をさらに充実させ、全小・中学生に配布するとともに、道徳教育推進教師を中心とした指導体制の充実や教員の指導力の向上への取組、魅力的な教材の開発や活用など、児童生徒の発達段階や学校・地域の実情に即した多様な取組に対する支援を行う。こうした取組みの成果も踏まえつつ、道徳をその特性を踏まえた新たな枠組みにより教科化することについて具体的な検討を行う」としている。
 それに加えて、治安対策としての「いじめ対策」がある。新自由主義教育改革には病理としての「いじめ」があるが、それは競争的環境からのプレッシャーに対する子どもたちの「社会的反乱」である。この社会的反乱に対する治安維持としての「いじめ防止対策」なのである。
 「教師の労働条件は、教師個人の生活条件であると同時に子どもの教育条件である」といわれるが、教育問題は、「教員擁護」の問題ではなく、「子ども・地域」の問題ととらえなければならない。
 安倍教育「改革」に対抗していくためには、脱原発、反TPPや「自衛隊反対」までは一致できなくとも九条改正には反対する多数勢力などとも「ハードルの低い」政治課題での共闘が必要だ。民主教育の理念に完全に同意できなくとも、新自由主義や教育の強制には反対という層を如何に取り込むかが問われているのである。

現場からの声

 つづいて「『君が代』不起立を闘うということ」、「職場はいまどうなっているか」、「君が代」不起立処分・再処分の不当性、「授業してたのに処分」の裁判、大阪から「橋下大阪市政と松井大阪府政 日本維新の会との闘い」など現場からの報告が行われた。
 また、田無工業高校の自衛隊駐屯地宿泊防災訓練について、秘密保護法反対の運動について発言があった。
 行動提起では、「卒業式での正門前チラシ撒き」について提起された。
 最後に集会決議(別掲)が採択された。

 教育の国家支配と闘おう! 2・2総決起集会決議

 第二次安倍政権の発足から一年が過ぎた現在、その危険な本性がいよいよもって明らかになってきました。二〇一三年秋の臨時国会では会期末の一二月六日、盛り上がる反対の声をよそに希代の悪法である「特定秘密保護法」の「可決成立」という事態を迎えました。
 戦争をする国家には『秘密』がつきものです。平和をめざす政府は何事も包み隠さず公開するのが原則です。私たちは今、この国の原則が憲法の改悪を待たずして変えられつつあるという現実を直視しなければなりません。

 安倍政権は、軍備拡大、武器輸出の解禁、「国家安全保障戦略」への「愛国心」記載、「集団的自衛権」の解禁へと、「戦争のできる国」どころか「戦争する国」へとひた走っています。その一方で、消費税増税によって収奪した資金を大企業へ平然とバラまき、「成長戦略」と称して、金儲けのためなら何でもありの「経済特区」の創設や無制限無報酬の時間外労働、派遣労働の拡大等々、あらゆる労働者保護規制を無効にしようとしています。福島原発事故の収束も見通しがまったく立たず、被災者を見殺しにして顧みない一方、原発再稼働に血道をあげ、こともあろうに原発の『輸出』に邁進しています。

 国内の矛盾から目をそらし、「戦争をする国に忠実な国民」育成のための「極右」安倍内閣による『教育再生』が次の通常国会で本格化しようとしています。教育委員会制度・教科書・道徳教育・教員免許・教員管理、戦後の民主的な教育制度を根底的に覆そうとしています。
 東京では石原教育行政をそっくり引き継いだ猪瀬前都知事のもとにおいて、都教委の暴走はさらに速度を増してきました。「安倍教育再生」の先取りが休むこと無く進行しています。

『宿泊防災訓練』はついに自衛隊駐屯地での「体験入隊」にまで至りました。教育としての自主性を完全に奪い、企業と国家に奉仕する『規格品』をつくりだす「生活指導統一基準」や「学カスタンダード」、微に入り細にわたる教員管理、現場の疲弊はその極に達しています。これが改悪教育基本法の実体化の現実です。

 そのような危機的な状況のもとにおいて、一〇・二三通達から一一回目の卒入学式のシーズンがやってきます。 私たちは、卒入学式シーズンを前に、このような動きの出発点が二〇〇三年の東京都の一〇・二三通達であることを再確認し、現場の闘いに連帯し、不起立者への一切の処分を許さず、都教委の暴走と安倍《教育再生》に立ちはだかる幅広い運動をつくりだしていこうではありませんか。
 以上決議します。

 明けない夜はない。止まない雨はない。私たちの闘いは、必ずや状況を切り拓いていくであろうことを確信しています。

          2014年2月2日

          2・2総決起集会参加者一同


実教出版社『高校日本史』排除は不当だ!

 「国旗・国歌法をめぐっては、日の丸・君が代がアジアに対する侵略戦争で果たした役割とともに、思想・良心の自由、とりわけ内心の自由をどう保障するかが議論となった。政府はこの法律によって国民に国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものではないことを国会審議で明らかにした。しかし、一部の自治体で公務員への強制の動きがある。」――これは、実教出版社の『高校日本史』の欄外注の記述である。
 二〇一三年度に行われた高等学校教科書採択では、東京都教育委員会は、実教出版『高校日本史』の教科書採択について、同教科書が国旗・国歌法の運用に関しての上記「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記述が「教育委員会の考え方と異なる」ためであるとの見解を示し、不当な介入をおこなった。ほかに神奈川県、大阪府、埼玉県、兵庫県などが同様の対応をおこなっている。
 とくに東京都の場合、すでに二〇一二年度に同教科書を採択しないよう要請し、応じない学校には数回に亙って電話連絡を入れて変更を強制した。そして二〇一三年六月には、「平成二六年度使用都立高等学校(都立中等高等学校の後期課程及び都立特別支援学校の高等部を含む)用教科書についての見解」が「委員の総意の下、議決」され、この「見解」を添付し、六月二七日付で、教育長名の「通知」文(都教委は、実教出版の教科書を「使用することは適切ではないと考える。都教育委員会は、この見解を都立高等学校等に十分周知していく」というもの)を都立学校長宛に発出した。結果、この教科書を採択した都立学校(約二〇〇校)はなかった。

 二月七日、都教委のこうしたこの議決(処分)の取り消しを求めて、六七人の教員、市民が原告となり東京地裁に提訴した。佐藤昭夫弁護士(早稲田大学名誉教授)とともに「実教出版教科書問題に関し、違法不当な東京都教育委員会を訴える会」(都教委を訴える会)の共同代表をつとめる高嶋伸欣琉球大学名誉教授は「すでに、各地では様々な取り組みがされていますが、確信犯的な様相が鮮明な東京都と神奈川県の教育委員会に対しては、法律上の追及が必要な段階にあると、私は考えました。そこで、まずは東京都教育委員会に対して、監査請求を申し立てることで法的な責任追及に着手し、同時に公正取引委員会に対しても、明白な営業妨害を見過ごすべきでない、との申告(告発)をすることにしました」と述べている。


KODAMA

  
驚愕の安倍人脈

 前の安倍政権は「おともだち内閣」といわれた。今回もそうだが、とりわけイデオロギー的にかなりの右の人材を政府・党の重要ポストに配置している。
 内閣だけではない。とくにNHKの人事はひどい。それも短時日のうちにその酷さ加減を自己暴露するような連中ばかりなのだからひどすぎる。
 二〇〇一年一月三〇日放送のNHKの番組「戦争をどう裁くか(2)問われる戦時性暴力」に対して、当時の安倍晋三内閣官房副長官、中川昭一経済産業相が事前に介入し、番組の内容が大きく変更された。「女性国際戦犯法廷」が、日本軍による強姦や慰安婦制度が「人道に対する罪」を構成すると認定し、日本国と昭和天皇に責任があるとした部分を全面的にカットさせられ、その一方で、女性国際戦犯法廷」に反対の立場をとる秦郁彦日本大学教授のインタビューを追加するなど大幅に変更された。
 こうした行為は国の内外からおおきな反対の声を巻き起こした。
 NHK会長の任免権をもつ経営委員会は一二人だが、今回の新任の四人はいずれも安倍に非常に近い思想の持ち主だ。長谷川三千子埼玉大学名誉教授、作家の百田尚樹、日本たばこ産業顧問の本田勝彦、海陽中等教育学校長の中島尚正。こうした経営委員会が選んだNHK会長が籾井勝人だ。一月二五日の就任会見で、旧日本軍の慰安婦問題について「どこの国にもあった」「なぜオランダには今も飾り窓があるのか」、また「政府が右と言っているものを、われわれが左と言うわけにはいかない。国際放送にはそういうニュアンスがある」などと述べた。長谷川三千子の男女分業、右翼賛美、百田の田母神の選挙応援演説での「南京大虐殺は無かった」発言などはこれからもつづくだろう。ちなみに、経営委員の報酬は年額で四、九五三、六〇〇円。安倍は、圧力をかけての番組改編から数歩進めて、NHKそれ自体を自身の右翼イデオロギー、政府広報機関に変えようとしているのである。  (H)


せ ん り ゅ う

    議事堂へ老骨の拳も聲叩きつけ

     一月二四日、秘密法廃止へヒューマンチェーンで国会包囲

                                     ヽ 史


複眼単眼

    
 ノーサイドの精神に学べるか

 本誌が出る頃には東京都知事選挙は終わっている。いま、その結果はわからないが、今回の都知事選は一地方自治体の首長選挙としての意義にとどまらないもので、安倍政権の改憲、原発再稼働、民衆生活破壊などの悪政の暴走に異議申し立てする歴史的な意味を持つ選挙となった。
 今回はこの歴史的な課題を正面から掲げる宇都宮候補と、脱原発を主唱する小泉=細川元首相連合の細川候補が、安倍自公政権が推す舛添候補と対立する構図になった。その結果、残念なことだが、とりわけ脱原発運動の周辺で、運動に亀裂が入った。
 「一本化」の話もあった。しかし、もとより細川候補自身には一本化の意志はなかった。周辺の人々が勝手に宇都宮下ろしに走っただけだ。なかにはディミトロフや抗日統一戦線まで引き合いに出す人までいた。
 脱原発の運動の主要な構成部分である「さようなら原発1000万人アクション」の中でも、当初はほとんどが宇都宮支持だったが、細川氏が立候補してから、一部の人々によって、きちんと議論しないままのインフォーマルな組織化が始まった。「ワルシャワ労働歌」の文句じゃあるまいに、「最後のたたかい」「最後のチャンス」などという言葉が飛び交った。「そう言わない宇都宮陣営には危機感が欠如している」という批判も投げつけられた。
 これは不幸なことであった。これは市民運動では禁じ手だ。
 私と同年配、あるいはそれ以上の年齢の人々には言わなければならない。自己の年齢を鏡に映し出して運動を論じるのは傲慢だ。私たちは「後に続く者を信じて闘っている」のだ。あなたにとって「最後のたたかい」でも、民衆にとってはそんなことはない。戦いは永続なのだ。思いこむのは止めた方がいい。
 しかし、これを詳しく論じるには紙面が足りなすぎるので、割愛する。こうした運動の亀裂が生じた責任がどこにあるのか、いま、あえて問うことはしない。 しかし、とりわけ運動のリーダー達や年配者の責任は重大だと思う。
 ラグビーの用語に「ノーサイド」というのがある。試合で死闘を繰り広げても、試合が終わったら互いに仲間だという意味だと聞く。この選挙で生じた亀裂を運動に引きずらないことができるかどうか、ノーサイドの精神を生かせるかどうかが問われている。
 事実、両陣営の選対同士の間では、選挙戦終盤戦には、選挙が終わったら候補者同士で会って、友好関係を確認しようという協定も結ばれた。にもかかわらず、取り巻き同士でいがみ合ったら、シャレにもならないではないか。全てのたたかいで肝心なことは民衆の力だ。ここにこそ全ての基礎がある。(T)