人民新報 ・ 第1315号<統合408号(2014年7月15日)
  
                  目次

● 戦争反対! 九条壊すな!  安倍はやめろ! いますぐやめろ!

            集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回せよ

● オキナワ・ピースサイクル 2014  より軍事化され、戦争政策の最前線にされる沖縄の現実と闘い

● JAL解雇撤回闘争の勝利へむけて  東京高裁不当判決を糾弾し、闘う体制の一層の強化を

● 沖縄の選択と闘いの現状

● 憲法学者などの組織「立憲デモクラシーの会」  声明、講演会などで、安倍解釈改憲に抗議

● 秘密保護法廃止法案を共同提出!   強権的国家支配を絶対にゆるさない

● 労働者の団結・総行動の力ですべての争議の勝利へ  6・17東京総行動

● 川内原発の再稼働を阻止するぞ

● KODAMA / 雨の中の川内再稼働反対

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼 / 「閣議決定」反対闘争が到達した高地






戦争反対! 九条壊すな!  安倍はやめろ! いますぐやめろ!

           
 集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回せよ

 七月一日、安倍内閣はついに集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行した。安倍らの右翼軍国主義潮流は、国の内外に広がるおおきな反対を押し切り憲法九条を否定し海外派兵による「戦争をする国」へと大きく舵を切った。それも九六条先行改憲による明文改憲でさえなく、閣議決定というこの政権の特徴である姑息な手段―閣議決定によってである。自民党はまさに麻生副総理のいうごとく「ナチス的手法」で憲法骨抜き・破壊政治を進めているのである。その自民党を支え、「平和の党」の看板を自ら外すようになっているのが、政権の甘い汁にしがみついている公明党だった。
 安倍は、時間が遅れれば遅れるほど、安保防衛政策とそれを遂行するための強権的な国家支配体制の構築の危険な本質が知れ渡るだけでなく、たのみのアベノミクスなるものの破たんによる支持率の低下による政権運営の困難さを恐れているのである。
 安倍は、閣議決定による集団的自衛権行使容認にたいする批判の声のたかまりを前に、関連諸法案改正を今年秋の臨時国会での論議をさけ、来年の通常国会へと先送りする。
しかし、安倍は、ひんぱんに諸外国をめぐり、中国を包囲し対決準備をすすめる「価値観外交」「地球儀を俯瞰する外交」に余念がない。こうした日本政府の「集団的自衛権」だのみの外交政策によって、中国、韓国との緊張関係を格段にすすめただけでなく、台湾、ロシアなどとの関係も急速に悪化させている。関連諸法の改悪や軍事力強化による「戦争をする国」づくりのテンポ以上に、安倍は実際的に軍事衝突をもたらす暴走政策をとっているのであり、「積極的平和主義」とは積極的参戦主義、積極的挑発主義ということになっている。
 アメリカの要求する集団的自衛権行使容認とは、かつてのアーミテージ報告でも明らかなように、アメリカの世界的覇権のための軍事力行使の一部補てんのためであり、湾岸戦争、イラク戦争などへの自衛隊の派兵要求であったが、それは現在も変わっていない。米国の利益のために、地球の裏がわでも日本人も血をながせ、死ねということ以外ではないのだ。

 安倍内閣の暴挙に対して全国各地でさまざまな反対運動が繰り広げられた。「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」や「戦争させない一〇〇〇人委員会」などの呼びかけで共同行動が取り組まれ、首相官邸・国会前では「与党合意」の六月三〇日、「閣議決定」の七月一日は、早朝から深夜まで多くの人びとの「あべを倒せ」の怒りの集会がつづいた。若者の参加がめだった。閣議決定、国会終了以降も「閣議決定」撤回と閉会中審査に反対する国会包囲動をはじめ各種の行動が取り組まれている。

 七月五日、九条の会は「アピール・集団的自衛権行使容認の閣議決定に抗議し、いまこそ主権者の声を 全国の草の根から」を発した。それは、秋の臨時国会の冒頭となる一〇月を全国統一行動月間に指定し、地域、各層のすべての九条の会が行動にとりくむよう呼びかけた。

 解釈改憲の閣議決定を撤回させ、一連の戦争関連法制の改定をさせない状況作りのたたかいが、秋の臨時国会の最大の課題である。国会内外の運動をひろげ、安倍内閣を包囲し、世論の多数を獲得し、戦争と破滅の道へ暴走する安倍内閣を打倒するために奮闘しよう。


オキナワ・ピースサイクル 2014

    
より軍事化され、戦争政策の最前線にされる沖縄の現実と闘い

 六月二一日(土)〜二四日(火)にかけて、沖縄ピースサイクルが取り組まれた。安倍政権が進める集団的自衛権の行使、憲法破壊の攻撃が強まる中で、大阪、広島、大分、長崎などから集まった参加者は、沖縄本島を自転車で回り、二五回目となる沖縄ピースサイクルで反戦の訴えを繰り広げた。

 六月二一日は、北部・ヤンバルへ。東村・高江では、北部訓練場の返還をとしながら新たなヘリパットの建設が進められ、七年にわたり地域住民が座り込みで反対行動を続けている。国が反対派住民を通行妨害禁止で訴えた「高江SLAPP訴訟」で最高裁は、上告を棄却、被告・伊佐さんの敗訴となった。SLAPP訴訟とは、Strategic Lawsuit Against Public Participationの略、国や企業が、個人を訴えることによって運動を抑圧しようとする裁判のことで、反原発運動や様々な場面で訴訟が起こされ問題となっている。昨年、特定秘密法が強行可決されたこともふくめ、高江で起こっている運動に対する弾圧は、日本全国に影響を及ぼす問題と、座り込んでいた方々は強く訴えられた。
 防衛省は座り込みを迂回して、山中を何十キロも移動する手段を使ってヘリパット一個を建設。二つ目のヘリパット建設を阻止するため、座り込みが続けられている。
 夜、名護市議会議員の具志堅徹さん、東恩納琢磨さんと<ゆんたく>。辺野古に基地をつくらせない闘いについて語り合った。九六年のSACO合意、九七年名護住民投票からの闘いを振り返り、九月七日の名護市議選、そして一一月一六日の沖縄知事選が大きな山場となることは間違いない。

 二二日は、辺野古テント村から自転車走行開始。宜野座村、金武町、うるま市、東海岸にわたり、恩納村、読谷村と自転車を走らせた。カデナ基地、沖縄市までの走行。

 二三日は、本島南部にある糸満市・魂魄の塔まで自転車を走らせた。6・23国際反戦沖縄集会に参加。自衛隊の強化が進む与那国島の反基地運動からの発言も行われた。

 二四日は、フリージャーナリストで元沖縄タイムス論説委員の屋良朝博さんとフィールドワーク。読谷村、嘉手納基地、普天間基地などを見て回った。オスプレイが飛び回り、爆音を巻き散らす現状が繰り広げられる、屋良さんいわく「沖縄基地のほとんどが海兵隊で、海兵隊が必要かどうか検証する必要がある」「海兵隊の移動には、佐世保に配備されているボノム・リシャールを使うことになり、沖縄の地理的に必然性はない」。在沖米軍の在り方を固定的にとらえず、返還させる視点を示された。

 その後の二五日、二六日は自衛隊の強化が目論まれる宮古島を訪問した。民間機の訓練空港としてある下地島空港だが、JAL、ANAともに撤退し、地元では自衛隊誘致の動きも起こっている。宮古島との間に強靭な伊良部大橋がつけられること、伊良部大橋に近い広大な土地が「ホテル経営」のためと売却されたが放置されたままの状態となっており、陸上自衛隊基地建設の可能性が指摘されている。
今回に先駆けて、四月に沖縄ピースサイクルは、石垣島、与那国島を訪問。石垣島では、陸上自衛隊配備の可能性があるといわれている牧場やサッカー競技場、与那国島ではレーダ基地建設予定地などを訪れた。「中国の脅威」を口実に先島諸島では、自衛隊の強化・拡大が着実に進められている。与那国島では有権者一〇〇〇人のところに隊員、家族合わせて二〇〇人の自衛隊が来る予定であり、自衛隊の島になってしまう、と住民を二分する事態となっている。
「自衛隊に期待する」との声もあるのは事実だ。ただ、軍事面ではなく、「医療搬送」や「災害救助」が圧倒的だ。「中国が攻めてくるなんて誰も思っていない」というのが国境の島の声だった。

 集団的自衛権行使を容認し、軍事路線を突き進み、原発再稼働、海外輸出を進める安倍政権に対して、今こそ反戦、反核の闘いを強めなければならない。そのような思いをさらに強め、二〇一四ピースサイクルのスタートとしての沖縄ピースサイクルは無事終了した。


JAL解雇撤回闘争の勝利へむけて

      
東京高裁不当判決を糾弾し、闘う体制の一層の強化を

 六月二六日、目黒区中小企業センターホールで、「東京高裁不当判決を糾弾する!決起集会〜裁判ルールを逸脱した判決を乗り越え、早期職場復帰を勝ち取ろう」(主催・JAL不当解雇撤回国民支援共闘)が開かれた。

 支援共闘共同代表の全労連議長の大黒作治議長の開会挨拶につづいて、上條貞夫弁護団長が「高裁判決の不正と弱点―追撃の権利闘争の焦点」と題して報告。
 高裁では徹底的な反撃・追及がおこなわれ、@解雇の時点で会社の人員削減目標は超過達成され解雇の必要はなかったこと、A更生手続きの開始から解雇までの労使関係の推移の中に「信義則違反・不当労働行為」が連鎖・集中し、そこから解雇の違法性が浮き彫りになったこと、という決定的な事実が解明された。しかし、高裁判決はこちら側の証明には疑問がある、人員削減目標の人数は確定的なものではない、などとして、不当にも解雇を有効とした。「管財人に委ねられた合理的な経営判断」による解雇だから正当だという判断基調によるものだ。判決は管財人の主張にまったくそったものであり、判決の根拠を管財人の上におくということであり、裁判所自らが訴訟手続きのルールを破って会社を勝たせるという極めて異常な事態だというしかない。要するに判決はこちらの追及から逃げたのである。私たちは、最高裁に上告し「公正な審理を尽くして高裁判決を破棄すること」を求めて闘う。安倍内閣の雇用破壊、憲法破壊に反対する運動と結合して闘い、運動の勝利に向けた展望を広げていかなければならない。

 国民支援共闘会議津恵正三事務局長により、運動方針が提起された。今後の運動については、@世論と共同の力で最高裁での逆転勝利判決をつかみ取る、A不当解雇を撤回させ、解雇された一六五名の早期職場復帰を勝ち取ること、の二点を基本に据え、国民支援共闘会議の総力を結集した運動を進める。そのため、大量宣伝、学者・文化人のアピールなど市民も含めた圧倒的な国民世論の形成をめざし、とりわけ、労働者・労働組合の中で、闘争支持・支援の世論拡大が目に見える運動を全国的な展開するとともに、団体・個人による要請署名など、不当判決の取り消しが圧倒的な国民の声であることを具体的に見える形で最高裁に届ける運動を推進する。そして、ILO勧告、安全確保とベテラン要員の必要性、新規採用など日本航空の動き等をもとに、国土交通省、厚生労働省に自主解決への働きかけを求める要請、政党・国会議員への要請を強め、解決に向けた政治的動きを作り出す。また同時に、労働条件の改善、航空の安全確保、解雇撤回・被解雇者の職場復帰めざすとともに組織の拡大強化を目指している日航内の闘いを支援し、連携を強化し、日航の内と外から、自主解決の決断を迫る運動を展開する。裁判闘争への取り組みとともに、日航を包囲し解決を迫る闘いを強化する。定例の日航本社前宣伝・要請行動、日航関連三争議(JAL不当解雇、契約制CA雇止め事件、日東整争議)共同行動を継続し、また航空労働者が実施してきた各空港における宣伝行動を継続・強化する。
  「全国の各地の仲間・各団体に呼び掛け」として、@判決内容と問題点の理解を広げ、運動方針浸透を図るためのオルグ活動への協力。A各団体・地域・職場等において、判決内容と問題点の理解を広げるために判決報告集会や解雇撤回に向けた決起集会、学習会等の開催。B各団体の大会や総会、幹事会や執行委員会などにおいて高裁判決の不当判決を糾弾し、取り消しを求める決議や意見吾(または最高裁宛要請書)を確認し最高裁に提出する運動。C国民支援共闘作成のチラシを活用し工夫を凝らした宣伝活動の展開。組織配布や独自の宣伝行動を実施する。チラシや支える会のJAL不当解雇撤回ニュース等を活用し、各団体の機関誌紙等に記事を掲載する。D財政面での支援を強化するため、支える会への会員拡大を強めること、などの要請がなされた。

 つづいて日航キャビンクルーユニオンの古川麻子委員長と日航乗員組合の田二見真一委員長が決意表明を行い、MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)、国労、婦団連、支える会、全水道東水道からともに闘うという発言があった。

 客乗原告・内田妙子団長、乗員原告・山口宏弥団長の決意表明、全労協金澤壽議長の閉会挨拶の後、最後に全員で「東京高裁の裁判ルールを逸脱した不当判決を乗り越え、早期職場復帰を実現するために、団結ガンバロー」を三唱して、新たな闘争の段階に取り組む意思一致をかちとった。
 JALを追い詰め、闘いに勝利し、職場復帰を実現しよう。


沖縄の選択と闘いの現状

 今オキナワは決戦期を迎え、雌雄を決する攻防の重要局面に入りつつある。
 それはせんじ詰めれば、辺野古新基地・自衛隊配備を認めるか否か、目先の金と生活のために再び事大主義に舞い戻るか否か、の対決軸を全国に鮮明にした。
 この攻防は長い歴史を背景に持つのだが、世界とヤマトが変化してきたように、沖縄もまた昔日の姿・状況ではない。明・清の冊封時代から薩摩・ヤマトとの両属=隷属関係を経て、その終局の姿として捨て石=沖縄戦に引きずり込まれ、軍人より多くの民間人が命を奪われた。米日両政府によって「捨て石の歴史」を再び強いられんとしている今日、オキナワは「自決権」に覚醒した。ここより新たな琉球史が始まるのだ。
 終わらない占領。一九四五年、七二年、それ以降も。今日まで一貫して米日両政府によって軍事植民地とされたままの沖縄。安保の吹き溜まりとして、基地押しつけのためにする「抑止力」「地政学」の理由付け。これすなわち着々と安保最前線の標的の島にするための口実と、ウチナー民衆は見抜いている。なお一部に買弁資本を後ろ盾とするジンゲバと裏切りが派生しようが、屈従の歴史を繰り返さない決意をもはや固めた。
 しかしだからといって、ヤマト運動からの過大な期待は迷惑だ。その理由は第一に、自己決定権を手にすべく琉球の独立を目標に据えて、その目的意識をシャベルに草の根からウチナー世論を再耕起する以外に、いかなる勝利もないからだ。そしてこの意識的勢力が今直ちに影響力・決定力を有しているわけではないからだ。第二に、ヤマト内部に起因する理由だ。先の「沖縄・福島共同首長アンケート調査」に如実に示されたが、原発再稼働には沖縄も含めて大半の両県首長たちが反対を表明した。しかし次に「沖縄の基地問題」を設問としたとき、福島の首長からは無理解な回答が大半を占めるという度し難い結果。ここに困難が横たわる。「沖縄は基地と観光で経済が成り立っている」と今なお考えるヤマト世論と同質の無知を見る。基地は爆音・環境破壊・事故・犯罪等の原因であるにとどまらず、「打ち出の小槌」どころか経済発展の阻害要因ですらある。
その事実を知るがゆえに、「普天間の県外移設」にどこも手を上げないではないか。
 「離島奪還・南西諸島自衛隊配備」を大義名分に掲げて、四月与那国、五月奄美、六月宮古、七月辺野古と、連続した攻勢がかけられている。空港を拡張してまで那覇基地の空自を倍増し、水陸機動団なる自衛隊版海兵隊の新設も既定方針とされ、ますます東シナ海は緊張を高め一触即発の危機が深まっている。なりふり構わぬ「現ナマ攻勢」が選挙のたびにヤマト政府・自民党から仕掛けられ、石垣・沖縄市長選は買収された。
 これらに抗して、それぞれの離島部で反対闘争に点火し、七月から辺野古現地闘争、九月名護市議選をはじめとする統一地方選、一一月県知事選と、これまた反撃戦の焦点も連続する。仲井真県知事の「埋め立て承認」を最大限に活用して、オキナワを見えなくし、ゴミを押し付けておいて、反対闘争を封殺して、辺野古阻止の民意を無視し圧殺する。こんな醜悪な魂胆との体を張った闘いが始まる。安倍の反動攻勢を止める闘いでもある。
 共に全国から辺野古阻止・安倍政権打倒の火柱を上げよう!  (I)


憲法学者などの組織「立憲デモクラシーの会」

       
声明、講演会などで、安倍解釈改憲に抗議 

 「立憲デモクラシーの会」は、「決められる政治を希求する世論の中で、安倍政権は国会の『ねじれ』状態を解消したのち、憲法と民主政治の基本原理を改変することに着手した。特定秘密保護法の制定はその序曲であった。我々は、戦後民主主義の中で育ち、自由を享受してきた者として、安倍政権の企てを明確に否定し、これを阻止するために声を上げ、運動をしなければならないと確信する。それこそが、後の世代に対する我々の責務である(設立趣旨)」として、共同代表に奥平康弘東京大学名誉教授(憲法学)、山口二郎法政大学教授(政治学)、そして憲法学(法学)関係、政治学関係そして経済学や人文科学系の専門家が結集して結成された(四月一八日)。
 
 七月四日には、学習院大学で、講演会「集団的自衛権を問う 立憲主義と安全保障の観点から」が開かれ多くの人が参加した。
 三谷太一郎東京大学名誉教授(日本学士院会員、安保法制懇の北岡伸一座長代理の大学院時代の指導教官)が、「なぜ日本に立憲主義が導入されたのか…その歴史的起源についての考察」と題して基調講演をおこなった。日本では、江戸時代から権力分立制の伝統があり、それが議会制の観念として浮上してきた。それが日本的なやり方だが、一九三〇年代、日本ではデモクラシーの危機によりその代替イデオロギーとしての立憲主義が浮上し、立憲主義とデモクラシーの分離、デモクラシーなき立憲主義としての立憲的独裁の概念が登場した。やがて立憲主義はデモクラシーとの結びつきをたち、天皇機関説事件以降、さらに日本化してその普遍的意味を失うまでになった。
 つづいて軍事評論家の前田哲男さんは、集団的自衛権行使が閣議決定された七月一日は自衛隊創立記念日だったと前置きして、講演をはじめた。一九五四年の「防衛二法」が採択されたとき、参院は「海外出動はこれを行わない」という付帯決議をあげ、初代防衛庁長官の木村篤太郎は「自衛隊はわが国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣という目的は持っていないのであります」と決議尊重を約束した。安倍内閣は自衛隊の「健軍の本義」を破壊したのだ。種々のアンケート調査では、国民の望む自衛隊とは、災害派遣、次に国の安全の確保で、これは一九六五年の調査開始以降変化はない。
 世論はそうなのになぜ今のような事態になったかといえば、外圧があったからだ。アーミテージ報告などで集団的自衛権容認の勧告があり、「イランがホルムズ海峡を封鎖すれば直ちに掃海艇の派遣を」などと要求されていた。それにたいして、安倍首相は、二〇〇七年一月当時すでに、集団的自衛権行使について検討するとし、四月に安保法制懇を設置し「四類型」の検討に入った。その後着々と既成事実を積み重ねてきた。米空母護衛やB52護衛は日常茶飯事となっていた。
 安倍内閣の限定容認や新三原則、集団的安全保障などは、かつての「居留民保護」と「生命線論」のよみがえりだ。
 今後の闘いとしては、かつての警察予備隊違憲訴訟(一九五二年)のような集団的自衛権違憲訴訟が考えられる。また。自衛官を原告とする「服務宣誓」とりけし、慰謝料請求訴訟がある。また、内閣法制局の「意地」にも期待したい。

 講演会では、日弁連憲法問題対策本部の山岸良太・本部長代行が連帯のあいさつを行った。

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安倍内閣の解釈改憲への抗議声明(要旨)   

 安倍内閣が七月一日、閣議決定によって憲法九条の政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能にする方針を示したことは、憲法の枠内における政治という立憲主義を根底から否定する行為である。これは、一内閣が独断で事実上の憲法改正を行おうとするに等しく、国民主権と民主政治に対する根本的な挑戦でもある。

 私たちは先に、以下のような論点を示した。

 1 解釈改憲は憲法に基づく政治という近代国家の立憲主義を否定する。
 2 首相が示した集団的自衛権を必要とする事例等は、軍事常識上ありえない「机上の空論」であり、強硬策がかえって危険を高めることを無視している。
 3 「必要最小限度」の集団的自衛権の行使は不可能である。
 4 東アジアで求められているのは、緊張の緩和である。

 このたびの閣議決定は、以上の論点に照らし、とうてい容認できず、ここに強く抗議する。

 A 暴走する政府は民主政治を破壊する(略)
 B 集団的自衛権行使は違憲であり、安全保障にも寄与しない(略)
 C 政府解釈による自衛権の拡大は立憲主義を破壊する(略)

 立憲デモクラシーの会は、憲法改正によらず政府解釈の恣意的な変更をもって集団的自衛権の行使を可能とする今回の閣議決定に反対し、今秋の臨時国会における関連法案の審議過程など、あらゆる機会をとらえて立憲主義に基づいた民主政治への速やかな復帰を求めていく。

  二〇一四年七月四日

                 立憲デモクラシーの会


秘密保護法廃止法案を共同提出!

          
強権的国家支配を絶対にゆるさない

 稀代の悪法=特定秘密保護法の廃止に向けての闘いがひとつ進んだ。通常国会の会期末をまえに、ついに六月一六日、参議院に、共産党、社民党、無所属の山本太郎、糸数慶子議員が「秘密保護法」廃止法案を共同提出した。「特定秘密の保護に関する法律は、廃止する」この一条だけの法案だ。しかしそのもつ意味は大きい。 秘密保護法は、法案の段階からマスコミも含めて大きな反対があり、国会は怒りに渦に何度も取り囲まれた。昨年一二月六日に強行採択されてからも反対の声はひろがり、同法の廃止を求める決議をおこなった地方議会は百をこえた。秘密法反対全国ネットには各地で反対運動をたたかう六〇もの団体が参加している。秘密保護法対策弁護団には三〇〇人以上が参加している。
 「秘密保護法」廃止へ!実行委員会は、六月一六日、「今回、国会法の改定案が審議される複雑な国会状況の中で、秘密保護法廃止の法案が国会に提出できたことを歓迎します。廃止法案の提案のために、努力された関係国会議員の皆さんに心から感謝します。また、次の国会においては、今回の提案には加わらなかった民主党や生活の党の皆さんをはじめとして、より多くの国会議員の皆さんの賛同を得て廃止法案の提案が実現するように、今後も努力を継続していきます」との声明を発表した。
 
 六月二〇日、国会に「特定秘密」の追認機関となる「情報監視審査会」を作る国会法改定案は参院議員運営委員会で極めて短時間かつ参考人質疑すら省いて強行採決され、午後九時過ぎの本会議で可決成立させられた(自公与党、みんなが賛成、維新、結いが棄権、民主、共産、社民、生活などが反対)。

 六月二〇日には、「秘密保護法あくまで廃止へ!院内集会」(「秘密保護法」廃止へ!実行委員会)がひらかれた。

 実行委員会の海渡雄一弁護士は、「通常国会における秘密保護法廃止の闘いの到達点と今後の課題」について報告した。法案成立の直後から、廃止の旗を掲げ、廃止を内容とする法案を幅広い政党、国会議員の合意に基づいて早期に国会に提案されることを求めて、署名運動を取り組んできた。私たちは「秘密保護法」に反対したすべての政党、国会議員が一致して「秘密保護法」廃止の法案を国会に提案するよう求めてきた。秘密保護法の廃止を求める各種署名は、すでに四〇万筆に達している。国会初日の包囲行動、「6の日」行動などに取り組んできた。全国に広がる秘密保護法廃止運動の全国ネットを結成し、また地方自治体レベルでの決議にも取り組んできた。
 そして、参議院に秘密保護法廃止法案を提案することができた。秘密保護法廃止の法案が国会に提出できたことを歓迎する。廃止法案の提案のために、努力された関係国会議員の皆さんに心から感謝する。民主党と生活の党が提案に加わらなかったことは、将来の課題を残したが、次の国会では、廃止法案の提案会派、賛同議員を増やす努力を取り組もう。
 五月三〇日、自民党と公明党は衆参両院にそれぞれ常設の「情報監視審査会」を置く国会法改正案を衆院に提出した。六月一〇日には民主党、日本維新の会、結いの党の野党三党が対案となる国会法改正法案を提出した。しかし衆院において与党案が可決され、参議院に送られた。今回の国会法改正案はそのためのものとされる。与野党で大きな議論になっているのは新設される「情報監視審査会」の位置づけである。自公案ではあくまで「行政の特定秘密保護に関する制度の運用を監視するための組織」として改正案を出しているが、この点についての私の考えは次のとおりだ。欧米では国会では情報機関の活動を監督している。秘密指定の適否の監督をしているわけではない。秘密指定の適否を国会が監督することにはスタッフも不足しており、大きな困難がある。アメリカでは議会内の秘密裁判所は、NSAの盗聴システムの共犯者となっていた。よほど、制度的な安全装置を作らなければ、国会が情報機関に巻き込まれてしまう。立法府の根本にかかわる重大事である。こんなに性急に議論するのでなく、もっと時間をかけてきちんとした討議をして欲しい。
 しかしスノーデン氏の暴露にみられるように、内部告発がなければなにもわからないということだ。秘密保護法は廃止しなければならない。

 集会では、廃止法案を共同提案した共産党、社民党、無所属の議員が発言した。民主党の近藤昭一議員も参加し、秘密保護法の危険性について述べた。


労働者の団結・総行動の力ですべての争議の勝利へ

                       
 6・17東京総行動

 六月一七日、けんり総行動実行委員会による東京総行動は、JAL争議解決をもとめて国土交通省前の抗議・要請集会からはじまった。経営破たんの口実で組合活動家などを狙い撃ち解雇したJAL争議は、経営のやりたい放題の労働者いじめは第二の国鉄闘争とも呼べるものだ。東京高裁は六月上旬、客室乗務員、パイロットに不当判決を出した。ともにJALが更生手続き下であることを理由に整理解雇法理を緩め、解雇自由な社会実現を後押しする不当判決だった。最高裁に上告して闘うが、労働者のJALを追い詰める闘いこそが勝利を実現する。早期の職場復帰・争議解決を要求するシュプレヒコールをあげた。
 そのごの行動は、三井不動産(アスベスト被害 不当労働行為 東京労組日本エタニットパイプ分会)、NTT持株会社(解雇 NTT木下職業病闘争支援共闘会議、東京労組NTT関連合同分会)、三井住友銀行本店(解雇 全統一労働組合井上眼科分会)、新日鉄住金本社(戦後補償 日本製鉄元徴用工裁判を支援する会)、ヤンマー東京支社(解雇 びわ湖ユニオン)、ニチアス本社(団交拒否 アスベスト被害補償 全造船機械ニチアス・関連企業退職者分会、全造船機械労働組合アスベスト関連産業分会)、厚生労働省(C型肝炎患者をサポートする会)、日本郵政(六五歳雇い止め解雇 郵政非正規社員の「定年制」無効裁判を支える会)、東京中小企業投資育成(偽装倒産・解雇 東京労組フジビグループ分会)、総務省(解雇 反リストラ産経労)、三井住友銀行神保町支店(解雇・団交拒否・支配介入 労組ジーケーアイ)、東京都庁(解雇 東京都学校ユニオン 東京労組文京七中分会 学園再建 全国一般千代田学園労組)、最後にトヨタ東京本'社(解雇・団交拒否 全造船関東地協・フィリピントヨタ労働組合 フィリピントヨタ労組を支援する会)で、それぞれのところで、企業、背景資本、監督官庁などにたいしての行動を展開した。


川内原発の再稼働を阻止するぞ

 東電福島第一原発の大惨事、いまだにしゅうそくしていない現実があるにも関わらず安倍政権と原発推進勢力は大きな反対の声を押し切って、九州電力・川内原発の再稼働を強行しようとしている。いま原発が一基も動いていないが電力不足の状況はおこっていない。原発事故の避難計画も未整備である。とくに川内原発は巨大火山帯の中にあり、桜島は活発に活動している。

 六月二八日、東京・明治公園で、首都圏反原発連合・さようなら原発一〇〇〇万人アクション・原発をなくす全国連絡会の主催で、「川内原発を再稼働させるな!さようなら原発首都大行進」が行われ、約五五〇〇人が参加した。
 集会では主催三団体の代表があいさつ。経済評論家の内橋克人さんと作家の中山千夏さんがスピーチ。各地からの報告で、海渡雄一弁護士が福井・大飯原発差し止め訴訟判決が画期的なものであることを強調し、これを今後の裁判に活かしていこうと述べ、小野有五「脱原発原告団全国連絡会」共同代表は全国連絡会として全国連携を取りながらさらに運動を強めていくと述べた。「川内原発増設反対鹿児島県共闘会議」の野呂正和事務局長の現地報告は、九月に鹿児島で大規模な反対集会を開くなど現地での闘いに取り組んでいると決意表明、「原発いらない福島の女たち」の人見やよいさんは、ともにたたえ場かならず勝利できるとアピールした。集会後、参加者は、代々木公園までのデモ行進をおこなった。


KODAMA

     雨の中の川内再稼働反対


 原発再稼働の突破口は九電・川内原発―これが原発推進派のもくろみだ。現在原子力規制委員会での審議がつづいている。当初、七月九日としていた川内原発1、2号機が新規制基準を満たすかどうかの審査結果案提示が、まだ審査が終わらないということで、来週に延びた。委員会の開催は水曜日だから、七月一六日になる可能性が高い。反対運動の強化で無期延期にさせよう。現在、全国で原発はまったく動いていない。この状況でも電力には何の支障も生じていない。川内原発現地の鹿児島県での再稼働反対・阻止の運動がひろがっているという。

 九日は、台風が近づいての雨模様の一日。昼には議員会館前での抗議、夜は代々木公園での集会、渋谷デモで、アピールしたが、本当に原発推進派、そして安倍はこの国を壊す危険な奴らだ。腹の底から怒りがこみ上げてくる。(H)


せ ん り ゅ う

     閣議決定軍事同盟へとわらう奴

     法整備させじと世論に火つけ役

                     ヽ  史


複眼単眼

    
  「閣議決定」反対闘争が到達した高地

 七月一日に安倍内閣が強行した稀代の悪行、集団的自衛権の憲法解釈を変えて、行使を容認する閣議決定は、巨万の民衆の反撃を呼び起こし、それに反対するたたかいは、この国の社会運動史の中でも、ひときわ輝く歴史的な高地に到達した。官邸前には連日、一万人以上の市民が集まって、「戦争反対」「安倍はやめろ」のショート・コールをたたきつけた。このことを記憶にとどめるために、七月三日の「朝日新聞」(このところの同紙の傾向への批判はさておいて)社説を引用しておきたい。この社説はおおいに評価するに値する名文だと思う。

(社説)7・1官邸前 主権者が動き始める
 「戦争反対 生きたい」。黒いペンで手書きした段ボールを持った男子高校生。「憲法壊すな」。体をくの字に折って、おなかから声を出す女子中学生のグループ。プラカードを掲げる若い女性の爪は、ネオンピンクに白の水玉。赤い鉢巻き、組織旗を持った集団の脇で、父親に抱っこされた幼児はぐったりとして。年配の参加者は、もはや立錐(りっすい)の余地もない前方を避け、下流の壁沿いに静かに腰を下ろす。作業着、ネクタイ、金髪、白髪、リュックサック、高級ブランドバッグ。地下鉄の出入り口からどんどん人が吐き出されてくる。
(実に多様な人々が、戦争反対、閣議決定反対の思いを持って集まった。運動の「文化」が一変したと思えるような、カッコイイ小じゃれたわかものたちの群れの登場だ)
 安倍内閣が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をした当日と前夜。首相官邸前で「超緊急抗議」が行われ、それぞれ約1万人(主催者)が集まった。(これは「一〇〇〇人委員会」と「9条壊すな!実行委員会」の共同行動だった。多くの参加者が、主催者に「私たちの意志を表す場をつくってくれて、ありがとう」と言ってきた)
 若い世代が目立つ。「国民なめんな」「戦争させんな」を速いリズムにのせてコールし、年長者を引っ張っているのは大学生のグループ。デモに参加するのは初めて、ツイッターで知った、一人で来た、都外から来たという人も少なくない。主催者側によると「官邸前にはどうやって行けばいいのか」と多くの問い合わせがあったという。
 「NO」と言わなければ「YES」に加担したことになる。戦場に行かされるのがこわい。「頭数」になるぐらいしか、今できることはないから――。多様な思いを胸に集まった人たちが、官邸に向けて声をあげた。
(組織されていない、無名の市民の怒りと不安による行動だ。)
(中略)「首相の言動がどんどん火に油を注いでいる状態です」。抗議の主催者のひとりは言う。二日間で最も多く叫ばれたコールのひとつは、「安倍は辞めろ」だ。官邸前で、これだけの規模で、公然と首相退陣を求める声があがるのは極めて異例のことだろう。
 なるほど。安倍首相はこの国の民主主義を踏みつけにした。しかし、踏まれたら痛いということを主権者は知った。足をどけろと声をあげ始めている。(このまとめは的確だ。声をあげ始めた主権者のたたかいが、さらに今後の戦争立法反対闘争の過程で、七・一以上の高地に達する事ができるかどうか、これからの課題だ)  (T)