人民新報 ・ 第1316号<統合409号(2014年8月15日)
  
                  目次

● 靖国参拝は『平和の維持』に逆行する  8・9 ヤスクニ・キャンドル行動デモ

● 辺野古新基地建設絶対阻止 海底ボーリング調査をただちに止めろ  キャンプシュワブ・ゲート前の道路不法占拠を止めろ

● 戦争をする国のための安倍カラーの防衛白書

● 改正労働契約法二〇条訴訟への支援の輪を拡大しよう

● ピースサイクル2014  反戦平和、核廃絶、改憲阻止をかかげて全国を疾走

            長野ピースサイクル

            静岡ピースサイクル

            埼玉ピースサイクル

            四国ピースサイクル


● 川内原発の再稼働を許すな!

● 東京検察審査会が東電元役員「起訴相当」の決定

● 連歌は面白い ―解釈改憲のレトリック―

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  デモの「文化」の変容の進行






靖国参拝は『平和の維持』に逆行する

      
戦死者に対する真の『不戦の誓い』とは何か 『平和の維持』に不可欠の行動とは何か

        
 8・9 ヤスクニ・キャンドル行動デモ

 安倍政権は集団的自衛権行使の容認・軍事力を強化する戦争への準備を加速させる政策を推しすすめている。安倍の精神的な基盤は、ヤスクニ思想で、かつての侵略戦争を美化するものであり、再び大東亜共栄圏・アジアの覇者・政治軍事大国になりがろうという妄想である。
 安倍は、侵略戦争を認めた村山首相談話の見直しを公言していた。内外の圧力の前に当面それは引っ込めたが、内心はまったく変わっていない。昨年一二月二六日、現職総理として靖国神社参拝を強行し、その時の談話で「国のために戦い、尊い命を犠牲にされた御英霊に対して、哀悼の誠を捧げる」ためだと述べた。これらのことは、近隣諸国との緊張をかつてなく高めている。現在の日本の危険な動向の根底に戦争神社=ヤスクニがあるのだ。

 今年の「平和の灯を! ヤスクニの闇へ キャンドル行動」は八月九日に行われ、五〇〇人が参加した。「靖国参拝は『平和の維持』に必要か?―世界から見るヤスクニ―」と題された今年の行動は、「安倍首相の言う『不戦の誓い』『平和の維持』のための靖国参拝を韓国、沖縄、台湾のみならず、ドイツ、アメリカがどう見ているかを明らかにし、その欺瞞と虚妄を確認する場」として、また「戦死者に対する真の『不戦の誓い』とは何か、『平和の維持』に不可欠の行動とは何かを確認」するために行われた。

開会のあいさつで李錫兌弁護士(イ・ソクテ、靖国反対共同行動韓国委員会共同代表)は次のように述べた。今年のキャンドル行動は、過去のいつよりも一層平和の重要性とその意味を教えてくれています。安倍政権は、七月一日、内閣の決議を通じて、集団的自衛権行使を容認しました。これは、従来の「戦争を放棄し、交戦権を認めない」とした、日本国憲法9条の解釈上、許されなかったことを日本政府が公式的に崩したものです。このような状況であるだけに、私たちはヤスクニの閣が、さらに深くなる可能性があることを体感せざるを得ません。この間、キャンドル・デモには、いつも騒がしい招かざる客がありました。彼らは行事が始まる前から行事の場所の周囲に集まってきて、騒ぎ立ててキャンドル行動が始まると、再び両側の行進の周辺であらゆる大声を上げました。平和のなかで両手にキャンドル持ち、「ヤスクニ反対!」を連呼しながら行進する市民に対する彼らの威勢は、外見上には警察の制止がなければ十分に威嚇的です。集団的自衛権に間する憲法的制約が解除された今日、彼らはまた、間違いなく現れ、一層大きい声で叫び、キャンドル・デモに支障をきたすも知れません。しかし、私たちは恐れません。彼らもまた、ヤスクニの闇の一部です。私たちのキャンドルがヤスクニの聞を明かすように、市民は平和なキャンドル・デモを通して、彼らの荒い胸に、平和というのは何かを刻んであげるでしょう。靖国神社へ向かう日本政府や国会の参拝客の頻繁になった足音が、もっと大きく聞こえるようです。しかし、ヤスクニの聞が深くなれば深くなるほど、私たちはもっと平和のキャンドルを高くあげなければなりません。周辺が暗いほど、キャンドルはより明るく光るように、私たちは国家権力の真の主人である市民のひとりとして、戦争に反対する行進を止めてはいけません。

 シンポジウムでは、山田昭次立教大学名誉教授、内田雅敏弁護士、そして、パウル・シュナイスさん(ドイツ)、ダグラス・ラミスさん(アメリカ)からの報告、韓国・太平洋戦争被害者補償推進協議会、平和遺族会から遺族証言が行われ、安倍靖国参拝違憲訴訟、ノー!ハプサ(NO!合祀)第二次訴訟、日本軍「慰安婦」メモリアルデー(八・一四)、戦争をさせない一〇〇〇人委員会など団体アピール、日本と韓国の楽器演奏・歌などがつづいた。
 集会後、靖国神社に向かってのキャンドル・デモで、「ヤスクニノー、戦争反対」をアピールし、街宣車などでの右翼の妨害をはねのけて、行動を貫徹した。



辺野古新基地建設絶対阻止

        海底ボーリング調査をただちに止めろ  キャンプシュワブ・ゲート前の道路不法占拠を止めろ


 安倍政権は強権的に辺野古新基地建設工事をすすめている。沖縄を再び戦争する国の最前線にし、またも大きな犠牲を強ようとしているのだ。
 辺野古新基地建設工事は粘り強い反対運動の前に遅れに遅れてきた。それを安倍は弾圧的な手法をもちいて突破しようというのである。そのために常時立ち入り制限地域をこれまでの沿岸五〇メートルから二〇〇〇キロメートルにした。海底ボーリング調査を密かに行い、キャンプシュワブ基地前には柵を張り巡らせ不法占拠、ゲート前国道には「殺人鉄板」と称される危険な鉄板を敷いたりしている。また新基地は、米軍最新ステルス戦闘機F35の運用を想定しているとか、飛行制限高度をさらに高くするとかの報道がなされているが、日本政府は一切の説明責任から逃げ回っている。
 八月四日、沖縄の闘いに連帯して「辺野古への基地建設を許さない実行委員会」の主催による毎月定例第一月曜日の防衛省正門前抗議行動が行われ一〇〇人を超す人びとが抗議の声を上げた。防衛省に対する抗議行動は各種団体によってさまざまに行われている。
 八月五日には、キャンプシュワブゲート前の防衛局によって不法に占拠されていた歩道が市民によって開放され、翌日には沖縄総合事務局が占用許可の逸脱を認め、防衛局に単管、ブロックの撤去を指示した。
 辺野古新基地建設阻止は安倍の戦争政策に対する決定的な打撃だ。

 海底ボーリング調査をただちにやめよ! 辺野古新基地建設を白紙撤回せよ!  秋の沖縄県知事選に勝利しよう!



戦争をする国のための安倍カラーの防衛白書

 八月五日、閣議で小野寺五典防衛相は「2014年版防衛白書」を報告した。それは安倍政権の危険な本質を全面展開するものとなっている。
 「日本を取り巻く安全保障環境」「日本の安全保障・防衛政策」「日本の防衛のための取組」「防衛力の能力発揮のための基盤」の構成だ。七月一日の閣議での集団的自衛権行使容認を「わが国の平和と安全を一層確かなものにしていくうえで、歴史的な重要性を持つ」とした。まさに歴史的「転換」である。そして、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合は他国に対する武力攻撃でも必要最小限度の実力行使が許されるなどとした新三要件を述べている。また武器輸出を禁じた三原則を武器輸出のための防衛装備移転三原則かえた。
 これらを日本を取り巻く周辺状況が緊迫化していることを理由に押し出しているのだが、緊張状態を激化させているのは安倍政権自身なのである。安倍は日米防衛協力指針(ガイドライン)の年内に改定にむけて、自衛隊の任務拡大、日米軍事一体化を急いでいる。
 安倍白書は、正当性を示すためにことさらに「危機感」をあおっているが、今回の対象の第一は中国であり、朝鮮よりも多くの部分を割いて「分析」をおこなっている。そうしたうえで、「領土や主権、経済権益などをめぐる、純然たる平時でも有事でもない、いわゆるグレーゾーンの事態が増加する傾向にある」と「危機の範囲」を大幅に拡大している。そして、それに対応するために、「統合機動防衛力」の概念を導入し、「水陸機動団」創設による離島防衛、サイバー防衛隊の設置など、新たな防衛理念、防衛体制を作り出そうとしている。
 白書は、地域、多国間安保協力における日本の役割、各国との防衛交流・協力の強化などについて詳述している。これは、安倍の「地球儀を俯瞰する外交」すなわち対中国包囲網の形成、集団的自衛権・軍事力の強大化をもって覇権国家へのしあがろうとする野望を示すものである。今年の防衛白書は、たしかに「歴史的重要性を持つ」ものだ。だが、安倍の打ち上げた新しい構想は、多くの人々の支持を受けていない。このことは多くの世論調査が示している。安倍の政策では、中国、韓国など近隣諸国、安倍のあまりのアメリカ寄りの政策に危惧を抱くロシアなどとの関係はいささかでも改善されるわけがない。集団的自衛権行使容認で、米軍の負担が減ることを歓迎するオバマ政権でさえ、東アジアでの武力衝突は歓迎せず、また従軍慰安婦問題やかつての侵略戦争を美化する安倍の右翼的体質に対しては批判を強めている。
 集団的自衛権反対の闘いを強め広げて、安倍の妄想の表現である防衛白書の観点と政策を歴史的遺物として葬り去ろう。



改正労働契約法二〇条訴訟への支援の輪を拡大しよう

 非正規雇用労働者への差別を撤廃せよ 改正労働契約法のポイントは、@有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換、A雇止め法理の法定化、B期間の定めのあることによる不合理な労働条件の禁止とされるが、有期労働法制について戦後最大の改正であり、有期雇用労働者の格差是正の闘いの画期的な武器となるものである。だが、民主党政権下で行われた改正、とくに「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」した第二〇条について、経済界と自民党は骨抜きにするため執拗な攻撃をかけてきている。この法律条項を生かせるかどうかはここ数年の闘いの帰趨如何にかかっている。すでに労働契約法二〇条を活用した全国一般東京東部労組メトロコマース支部と郵政産業労働者ユニオンの訴訟が開始されている。 

 八月二日、労働運動研究討論集会実行委員会(労運研)主催の研究会「労働契約法二〇条訴訟―内容の理解と活用を考える―」が開かれた。

 はじめに東京東部労組書記長の須田光照さんが報告。東京メトロの一〇〇%子会社である株式会社メトロコマースが直営する店舗の販売員は正社員、契約社員A、契約社員Bの三種の雇用形態だが、同じ仕事をしているにもかかわらず労働条件に大きな格差がある。契約社員Bは三ヵ月、六ヵ月、一年の有期雇用契約を反復更新してきたが、賃金は時給制であり、正社員に支給される各種手当てもなく、賞与もわずかであり、退職金は支払われない。月の手取りは一三万円台だ。契約社員Bは東部労組メトロコマース支部を結成し、忌引き休暇・食事補助券・社員親睦会・ホテル割引・社内報配布・労災上乗せ補償など格差是正と、売店に丸イスの配備や毎年一〇円ずつの時給アップなどの待遇改善をもとめた。昨年三月一八日に初めてのストライキに入り、契約社員Bへの六ヵ月の雇用延長勝ち取った。そして、組合員三人で労働契約法二〇条違反について非正規への賃金差別撤廃裁判をスタートさせた。雇用契約、労働時間、賃金での格差是正とこれまでの賃金相当額、慰謝料など損害賠償を要求して闘っている。

 つづいて、郵政産業労働者ユニオン中央執行委員の倉林浩さんの報告。昨年二〇一三年四月一日段階の日本郵便(株)における社員構成は、期間雇用社員は合計一八万三〇〇名(時給制契約社員一六万七六〇〇名、月給制契約社員一万一二〇〇名、エキスパート社員一四〇〇名)、正社員二〇万六〇一名で、非正規雇用率は四七・三%だ。正社員と期間雇用社員の格差はきわめて大きい。参議院厚生労働委員会での政府側答弁では、「平成二十四年度の正社員の平均給与はグループ平均で六百六万円、期間雇用社員はグループ平均で約二百二十七万円」となっている。基本給以外手当の格差が大きい。外務業務手当、郵便外務精通手当、郵便内務精通手当、年末年始勤務手当、早出勤務手当、夜間特別勤務手当、祝日給、夏期・年末手当、住居手当、扶養手当などは期間雇用社員にはないかあってもきわめてわずかだ。その他、病気休暇・休職(私傷病)、夏期・冬期休暇でもその差は大きい。二〇条裁判では、現在原告一二人で、社員給与規定・就業規則が適用される労働契約上の地位にあることの確認とこれまでの損害賠償(公序良俗違反)を求めて闘っている。郵政労働者ユニオンとしては、差別の是正と働きがいのある労働(ディーセントワーク)の実現をめざす、日本社会の貧困と格差をなくす、正規と非正規の連帯をつくる、郵政ユニオンの組織的強化と拡大をなしとげることを掲げて運動している。

 最後に棗一郎弁護士が「労働契約法二〇条を活用して格差を解消しよう!」と題して講演。これまでは、有期労働者から、「正社員と同じ仕事をしているのに、賃金は半分、賞与もないのは不平等ではないのか」と相談されても、法律的に有効な対応策がなく、どうしようもなかったのが、ようやく正社員との労働条件の格差是正を求める法的根拠ができたのである。労働側が待ちに待った立法であり、有期労働者の処遇向上に大きな期待が寄せられている。連合東京から聞いたところによると、調査に回答した傘下組織のうち、約六五%の労働組合が「有期労働契約者の労働条件を点検し、必要な是正を行っている」と回答し、約一二%の組合が「労使協議中である」と答えている。「通勤手当、食堂やロッカーの利用などの福利厚生は同一である」と答えた組合は九割以上に上る。慶弔休暇などの休日・休暇制度や賞与についても、相当な成果を上げている。労契法二〇条が制定・施行されたことにより、また、それ以前からも、正規・非正規労働者の格差是正に取り組んでいる労働組合が多くなっていくだろう。今後も、労契法二〇条を使ってますます有期労働者の待遇改善が進んでいくことが大いに期待される。

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 改正労働契約法
  (期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
 第二十条  有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。


ピースサイクル2014  反戦平和、核廃絶、改憲阻止をかかげて全国を疾走


「まもろう9条」「なくそう原発」の旗を信濃路になびかせて  長野ピースサイクル

 長野ピースサイクル実の2014夏のピースサイクルは七月二六日(土)に長野県松代(大本営予定地下壕跡付近)を出発して、七月二七日新潟県柏崎市(東電柏崎刈羽原発)までの二日間を延べ一八名(二三歳〜七三歳)が、約一五〇kmを「まもろう9条」「なくそう原発」の旗を付けた自転車で走った。
 二四年目の長野ピースサイクルの夏の実走は、安倍政権の集団的自衛権行使容認の解釈改憲強行、川内原発の運転再開容認、沖縄辺野古の基地建設強行開始、オスプレイ訓練全国展開など課題の多い中での実施となった。
 七月二六日は快晴、朝からこの夏最高気温を感じさせる暑さの中、一七名が松代から出発した。出発地の松代は、二四年前の一回目の長野ピースサイクルの出発点であり、七〇年前の戦争の歴史への記憶を蘇らせる原点として、私たちの意識の中でヒロシマ、ナガサキ、オキナワ(戦争被害の地)とつながっていく場所(戦争加害の原点)である。
 途中、毎年立ち寄っている須坂市の長野ソフトエネルギー資料室では、今年もまたメンバーと交流し、美味しいスイカなどをいただきながら、脱原発と集団的自衛権容認反対への意思を確認しあった。
 その後予想通りの久々の暑さの中、長野ならではの急な坂道へ突入。昼には飯綱町九条の会のメンバーの歓迎を受けて、さらに急な坂道を「なくそう原発」「まもろう9条」の旗(ピースサイクル全国ネット統一)をなびかせ、全員が登り切った。いつものことながら、この坂を登り切った参加者の顔はピースサイクルならではの達成感があふれていたが、この二〜三年雨か曇りで比較的楽な気持ちで上れた急坂に少し疲れの目立つメンバーも。それでも元気に予定通り宿泊施設へ到着した。
 今年は、新井の温泉施設の宿泊が取れたので、ゆったりと風呂も入り、夕食もすこし豪華な宴会料理となった。夜の夕食を兼ねた交流会では、翌日柏崎刈羽原発で行う東京電力への要請行動で渡す要請書の内容をみんなで確認し合い、沖縄タイムスの社説記事を参考に「オスプレイ訓練の佐賀空港展開」が沖縄の負担軽減にならないことを学びあった。食事の後は「日本の空は今も占領下」というビデオを通して、日本に於ける米軍の実態、政府の対応の実態を学習しあった。
 七月二七日は前日の猛暑から一転雨降りで始まった。気温も二四度と低い。雨さえなければサイクリングには快適な温度。出発時点では小降りになり、天候は徐々に回復して風はやや追い風となった。順調な走りだが何故かパンクする自転車が続出。途中から帰ったメンバーがいたので総勢一三名が柏崎刈羽原発めざして田園地帯をひたすら走り、昼頃には海の近い国道八号線へ。途中休憩地点では、車に付けていた「憲法9条の心を日本から世界へ」を見て、少し強面の運転手さんが「頑張って下さい」と声をかけてくれた。昼食をするはずの食堂が移転をして無くなっている(試走の時は確かにあった)というハプニングもあったが、インターネット検索で近くに食堂を探して昼食は無事に終了。食堂の主人から「がんばって」との激励を受けた。
自転車は元気に柏崎刈羽原発手前の急な坂を登り切って、三時少し前頃には柏崎刈羽原発へ到着した。先に到着していたピースサイクル新潟2014のメンバーと合流し、一年ぶりの再会。
ここで、東京電力に対して要請行動を行った。東電側は一般客の来ない奥の駐車場へ全員を誘導し、要請行動に対応したが、今年も参加者を建物の中に入れてくれなかった。今年は要請行動以外に柏崎現地で原発の再稼働に反対して闘っている方から現地状況の説明を受けた。
 こうして、今年の長野ピースサイクルの夏の実走は終了したが、長野県内の自治体(一二)や市民(三八)からの広島市長、長崎市長、沖縄県知事に宛てたピースメッセージを携えて走った。代表が八月六日の広島へ向い全国の仲間と合流することにしている。長野ピースサイクルは前記三箇所へのピースメッセージの他に自由に宛先を記入するものを付けているが、今年の宛先の中には「安倍首相」が圧倒的に多く、抗議や退陣を求める内容となっていた。
実行委員会はこれから秋には活動報告集作成や秋のホリディピースサイクル、その他様々な集会や企画への参加を通して、平和への思いを込めた活動を続けていく。―「平和への想いをつないで」(寄稿・長野ピースサイクル実行委員)

 浜岡原発の即時廃炉! 原発輸出反対! 静岡ピースサイクル


 七月二四日、ピースサイクル静岡ネットワークは、二年前から全面的に停止している浜岡原発へ、神奈川や地域の仲間とともに申入れを行い、原発社員との意見交換の場を設け四五分間にわたって中電の見解を質した。意見交換の議題は、@活断層について、A津波対策の防波壁について、B避難対策についてなどであった。いずれも、東海地震を想定しての喫緊の課題であり、参加者は真剣に中電の見解を求めた。現在、安倍政権は、原発輸出で金儲けをするためだけの理由で、川内原発を無理やり再稼働させようとしている。全国どこの原発の再稼働も許さず、廃炉にむけてがんばろー  (静岡・M)

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浜岡原発の廃炉を求める申入れ書

   中部電力株式会社社長 水野明久 様

    一、中部電力は、本年二月一四日、規制庁に対して浜岡原発四号機の「適合審査」申請を行い、再稼働へむけて動き出しているが、東海地震に耐えられない浜岡原発は絶対に再稼働しないこと。

    二、中部電力は、浜岡原発が三年以上停止になっていても、電力不足は全く生じない事実を広く市民に知らせること。

    三、中部電力は、浜岡原発を直ちに無条件に廃炉にすること。

           ピースサイクル神奈川  人権平和・浜松  ピースサイクル浜松

    二〇一四年七月二四日


「憲法改悪阻止」「核兵器廃絶」を求めて  埼玉ピースサイクル

 梅雨明け近い七月一六日、埼玉ピースは今年も熊谷、神川、浦和、北本の四コースで行われた。この日は気温が急上昇し、三四度を上回る蒸し暑さに見舞われた、自転車走行者の中には軽い熱中症に罹る人もいたが大事には至らなかった。
 当日は埼玉県庁を始め、一四箇所を訪問した。そして各自治体には次のような要請書を出した。
 ……原発事故から三年以上経過した今日、原発事故の「風化」のはじまりを指摘する声があります。しかし、この痛ましい「原発事故」は決して「風化」させてはなりませんし、私たちは「風化」させない運動を継続していく決意です。一方、戦後レジームからの脱却を掲げ「戦争のできる国作り」へ暴走する安倍政権は、数の力を盾に、特定秘密保護法の強行可決、武器輸出三原則や防衛大綱の見直しなどをなし崩し的に行い、集団的自衛権の行使容認を閣議決定しようとするなど、名実ともに憲法「改正」を実行し、人権を制限し、国家に重きを置く体制に変えようとしています。そうした状況下、私たちは、「戦争反対」「憲法改悪阻止」を掲げ運動を継続して参ります。また、世界に目をむければ、地球温暖化やシリア、ウクライナなどで今なお続けられている「戦争」や「内紛」など、私たちを取り巻く情勢は深刻な状況となっています。このような状況下ではありますが、私たちピースサイクル埼玉ネットは「反戦」「平和」などを訴え自転車でキャラバン行動を行います。…
 このほかの要請項目としては、@「平和を願う宣言」に対する予算措置をすること、A核兵器廃絶を政府に要請を行うこと、B広島、長崎の原爆投下日には犠牲者を追悼し、戦争を風化させない取り組みを行うこと、などを提出した。
 この要請に対し、各自治体とも回答、メッセージをピースサイクル埼玉ネットに寄せられた。ある自治体のメッセージでは、広島、長崎が原子爆弾による悲惨な被害を受け六九年を迎える今日、一層の核兵器廃絶と平和の確立を強く訴える必要があり、「平和を考える月間」行動にも取り組んでいる様子が伝えられていました。 
 埼玉ネットの各コースとも丸木美術館に集まり、ビールで乾杯して小一時間交流会を開き。このあと散会となりました。 (A)

  伊方原発再稼働反対!  四国ピースサイクルに参加して

 八月三日(日)午後三時、心配される台風の影響もあり、三台の自転車を伴走車に積み込み、四国電力伊方原子力発電所ゲート前へと急いだ。四国ピースサイクル、大分ピースサイクルのメンバー五名と、現地の八幡浜で原発反対運動を展開している人たち六名とで、「伊方原発を廃炉にせよ」とする申し入れを行ないました。
 私は、二八回開かれている四国ピースサイクルの半分以上に参加をしてきましたが、この間を振り返ると、二八年前に初めて参加をし、伊方原発に自転車で行った時は確か1号機が稼働をしていて、隣で2号機が建設中だったと思います。それから二八年の間には3号機まで建てられてしまいました。
 今でこそ、全部の炉が停止していますが、四電は再稼働のために新規制基準の適合性審査を申請して、住民の安全よりも儲けを優先し、出来るだけ早い運転の再開をしようとしています。
 安全審査はしていないので、安全とは言いません、って何?? 
 それから、今回行ってみて、はじめて気付いたことがあります。伊方原発ゲートの門柱からフェンス全体をカミソリ入りの有刺鉄線で覆っていたことです。さらに、先が鋭く尖った一〇pほどの、手で触ると刺さって切れてしまう刃のようなものを一緒に張り巡らしていたのです。これまでには無かったことです。
 このことについて、総務の担当者を問い詰めると「安全・安心・安定」の為だと言っていましたが、テロ対策という口実は明らかで、原発に反対する者はなにがなんでも受けつけない、拒否するという強い意志を感じました。
 申し入れの最後に「電力供給よりも人の命が大切だ」「大人の責任として、廃炉を決断してほしい」と訴え、シュプレヒコールに怒りをぶつけて終了しました。
 翌四日は自転車と伴走車で街宣をしながら、松山港から呉へ向かいました。呉で大阪ピースサイクルと合流し、翌五日は一〇台の自転車で隊列を組み、一路、広島平和公園で開催されるピースサイクルの到着集会にむけて走りました。
 毎年のことですが、だんだん参加者が減っていき、高齢化の波を感じています。しかし、平和運動の大切さは参加して初めて解かることもあります。労働組合の運動ももちろん大事なことですが、同じように反戦、反核、平和の運動にも力を注ぎ、発展させないといけないと、つくづく思いました。
 来年の戦後七〇年は全国ピースサイクルも三〇年の節目を迎えるそうです。今から、より多くの参加を得られるように取り組んでいこうと思いました。



川内原発の再稼働を許すな!

   規制委の「審査書案」承認を撤回せよ 七月一六日、原子力規制委員会は川内原発再稼働へ向けた「新規制基準適合性審査」の「審査書案」を了承した。原子力規制委を監視する市民の会、反原発かごしまネット、グリーン・アクション、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、国際環境・NGO FoE Japan、福島老朽原発を考える会、玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会は連名で「抗議共同声明」を出した。声明には多くの運動団体から賛同が寄せられている。

 「川内原発の新規制基準適合性審査 原子力規制委員会による審査書案に抗議する共同声明」(要旨)
 本日、原子力規制委員会は、九州電力川内原発の新規制基準適合性審査に関し、合格通知にあたる審査書案を提示した。これに強く抗議する。
 川内原発の新規制基準の適合性審査については、東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえたものにはなっておらず、以下の理由からも、とても合格通知案が出せる状況にはない。
 火山の専門家が、巨大噴火(カルデラ噴火)の予測は難しいと訴える中、政府も、噴火の規模や時期をあらかじめ予測することは困難であることを認めている。火砕流に対しては、事前に核燃料を搬出する必要があ
重大事故時に生じる汚染水が海などへ流出することを防止する対策が全くとられていない
 新規制基準は、重大事故時に、格納容器が破損した場合でも、放射能の拡散を抑制する対策をとるよう要求している。また、東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえるとしているが、現在福島第一原発において深刻な事態を引き起こしている汚染水流出の事実が適合性審査の過程で完全に無視され、川内原発に対しても流出防止対策が要求されていない。
 重大事故時の格納容器破損や水素爆発の可能性について、解析コードの信頼性を確認するためのクロスチェック解析が行われておらず、防止対策が十分でない。
 要援護者の避難計画について、鹿児島県が原発から十キロ以遠について、計画の立案を放棄し、福祉施設や病院に立案と責任を押し付けている状況の中で、全く目途が立っていない。避難弱者を見殺しにするものとなっている。
 こうした状況で、川内原発の再稼働手続きが進むことは許されない。原子力規制委員会は審査書案を撤回すべきである。川内原発を再稼働させてはならない。



東京検察審査会が東電元役員「起訴相当」の決定

 原発事故の責任者に厳正な捜査を!福島第一原発事故はかつてない被害を与え、いまも事故収束はしておらず、被災の人びとの苦しみはますばかりだ。原発事故の責任は当然原発推進派にあるが、東電も政府もなんの責任も取っていない。福島原発告訴団は、責任者を起訴するよう求めた告訴を行ったが、昨年九月に東京地検は不起訴を決定した。告訴団は一〇月に東京電力旧経営陣六人にしぼって東京検察審議会に不起訴不服の申し立てをおこなった。
 そしてこの七月三一日に、東京第五検察審査会は、六人のうち、三人について「起訴相当」、一人について「不起訴不当」、二人人について「不起訴相当」という議決結果を公表した。起訴相当は、勝俣恒久(東電取締役会長)、武藤栄(前取締役副社長原子力・立地本部長)、武黒一郎(元取締役副社長原子力・立地本部長)で、「不起訴不当」は、小森明生(常務取締役、原子力・立地本部副本部長兼福島第一安定化センター所長)だ(いずれも肩書は告訴当時のもの)。
 その理由として、審査会は「原発を扱う事業者として、安全性確保のための対策を取ることが必要である津波として認識することが可能であったと言えれば、津波襲来に関する具体的な予見が可能であったと言うべきである。そして、この予測に応じて必要な対策を施した場合に、事故の結果が回避できたと言えるのであれば、結果回避可能性も認められる」として、予見可能であり、それに対する対策を怠ったというしごく当然な判断を下したのだ。これは、政府の地震調査研究推進本部が「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」(二〇〇二年七月三一日公表)で「マグニチュード八クラスの津波地震が福島県沖を含む日本海溝近辺で今後三〇年以内に発生する可能性が二〇%程度あると予測していた」という科学的評価に基づくものだ。
 以上の四人について、検察庁は再捜査を行い、改めて起訴をするかどうかの判断をする。起訴の可能性が高いが、たとえ検察が不起訴にしても、検察審査会の第二段の審査が行われ、裁判所が指定する弁護士による起訴(強制起訴)が行われることになるだろう。
 議決結果公表の当日、この議決を受けて 福島原発告訴団団長の武藤類子さんは、「福島原発告訴団が申立を行った六人全員ではありませんでしたが、特に重大な責任を問われる三人に起訴相当、一人に不起訴不当の議決が出たことは、妥当な判断をして頂いたものと思っております。一般の東京都民からなる検察審査会が、被害者に寄り添った結論を出してくださったことを感謝いたします。検察庁はこの議決が、原発事故に対する国民の想いであることを理解し、直ちに強制捜査を含めた厳正なる捜査を開始して頂きたいと思います。福島の被害は今も形を変えながら拡大しています。一日も早く、この事故を引き起こした者が責任を取り、被害者が救済されることを願ってやみません。福島原発告訴団は、引き続き、責任追及を求める活動を続けます」という声明を発表した。
 脱原発の運動は大きな成果をつかんだ。
 現在休止中の原発の再稼働阻止、すべての原発を廃炉への運動をさらに強めていこう。



連歌は面白い ―解釈改憲のレトリック―

 連歌論を繙く。驚きあり、日本文芸史の核心だ。井原西鶴の『好色五人女』が五つの実話に取材した五つのドキュメント文芸であることを知り、西鶴が連歌師であることから興味をもった。また川柳が付合わせる文芸として連歌を源流としていること。今日の俳句・短歌となど文芸的なあらゆる表現・技巧の宝庫でもある。連歌の歴史は萬葉集(七五九年)に見留められ千数百年の歩みあり。

 いま憲法九条について解釈改憲の論議がある。この解釈思想・解釈の技術は、てはにをの文法を含め中世の連歌界にて極め盡されている。おそらく解釈とおもいやりのこの思想は日本独特のものであろう。憲法の前文を踏まえた解釈というレトリックは本歌取りの技巧と同じ発想なのだ。
前句を如何様にか解釈・見做すことによって次句を発想し付合わせる文芸で、前句(別人の創作)の次元を越えて新世界へと自分の創作を展開していく連歌の遊びであり芸である。

 一例を示す。
    尾花にきくは猶秋の風             (前句)
    かれがれに誰まつ虫の思ひ草  善阿   (付句)

    『菟玖波集』巻五秋下

 薄の白穂をなびかせる冷々とした秋風を、失意・失恋の感慨にとりなした付合である。きく―松虫、尾花―かれがれ、猶―誰まつ、とそれぞれの詞に照応した寄合……かれがれになった人、その誰をまつのか、松虫の、その思ひと縁語・秀句で……しかも

    道の辺の尾花がもとの思草今更さらに何か思はむ

といふ「萬葉集」巻十の歌をふまえた作(本歌取り)である。(解説は伊地知鉄男著『連歌の世界』<日本歴史叢書>吉川弘文館 昭和四二年)

 この例にもみられるように、連歌ではことばに於ける錯覚を楽しみ遊ぶ。こうした面白さを引き継いでいるのが川柳で、読者が言外のイメージを持つ=錯覚を楽しむ。文には書いていないことを真と想起し解釈しおどろき遊ぶのである。
 今日、錯覚の研究がさかんであるけれども、既に中世の連歌はことばの錯覚を追究していたのであった。
 ところで、錯覚研究で、人は自分の記憶こそが真と信じていることを利用して、間違った記憶を国民に与える誤情報効果の政策が知られている。
 七月一日の閣議決定に向けて公明党を利用した議論は、このイメージ操作であった。改訂された文章だってとんでもない解釈の含みを為政者は考えていよう。
 政治はアートの世界なのだろうか。  (ゝ 史)


せ ん り ゅ う

    敗戦で善かったと父のつよき声

    神棚を薪にして飯炊いている

◎ 二才のとき父は赤紙で召集。敗戦後幼い子どもたちに軍隊の反人間性・非道な体験を語りつづけ、七才の僕の手を引いて反戦映画にも…。あの日本の体験を父の怒りを語り反戦を深めていきたい。 (ゝ 史



複眼単眼

    
デモの「文化」の変容の進行

 八月二日午後、東京渋谷で「ファシズム潰せ!怒りのブルドーザーデモ」があって、参加した。デモを呼びかけたのは東京デモクラシーネットワーク。このネットワークに参加しているのは東京デモクラシークルー、怒りのドラムデモ、特定秘密保護法に反対する学生有志の会(SASPL)。この人びとはあの六月三〇日の官邸前の行動に賛同して駆けつけてくれた。二〇一三年の秘密法反対運動のなかで、急浮上してきた流れだ。
 真夏の午後、焼け付くような太陽の下で、主催者によれば若者を中心に、三〇〇〇人の人びとが集まった。
デモの先頭にはブルドーザーが付き、ブルのシャベルには「安倍政権打倒」の文字が大書され、「安倍は止めろ」「憲法守れ」「集団的自衛権反対」などのコールを渋谷の町に響かせた。デモではドラムの音をはじめ、楽器など多様な鳴り物の音が、あちこちで叫ばれる小さなトラメガを使ったコールをリズミカルに主導していた。そういえば、この「マイ・トラメガ」とでも呼べそうな、小さなトラメガ持参のわかものが多いのも特徴だ。隊列のあちこちで勝手にコールのリーダーになって叫んでいる。
 最近の反戦デモの特徴の一つは「ショートコール」だ。従来型の「安倍政権は憲法をまもれェ〜!」などのような長いコールはほとんどきかなくなった。
「センソウ・ハンタイ!」「キュウジョウ・マモレ」「アベハ・ヤメロ」のコールがドラムの音に合わせてリズミカルに叫ばれる。ショートコールの反復は三・一一以降の反原発デモの特徴だ。官邸前では「ゲンパツ・イラナイ」「サイカドウ・ハンタイ」などのコールがくり返される。

 しかし、若い参加者には意外な事かも知れないが、デモのショートコール自体は別に新しいことではない。
六〇年安保でも「アンポ・ハンタイ」「キシヲ・タオセ」のコールが繰り返し叫ばれたし、七〇年アンポの中ではジグザグデモの際のコールは「アンポ・ハンタイ」「トウソウ・ショウリ」だった。沖縄の闘いに呼応して「ビー・ゴー・ニー・テッキョ」などのリズミカルなコールもあった。このリズム感覚はほとんどいまのデモと一緒だ。当時はドラムの音の代わりがホイッスルとザックザックというデモ隊の足音だった。いま、その「ショートコール」の渦巻きが、今日、新しい条件のもとで復活してきた。確かに官邸前の脱原発デモのように、同じ所で二時間もショートコールをやるというのは新しいスタイルかも知れない。
最近のデモのもう一つの特徴は、ブルに見られるようにデモの仕立てが創造的で、参加者が多様な文言のカラフルなプラカードを掲げ、派手な衣装などをまとっていることだ。「ファシズム反対」などという古典的なスローガンもある。これらは二〇〇〇年代冒頭から全国展開されたイラク反戦パレードを彷彿とさせる。ハートマークのシンボルをデザインにしたパレードと称するWORLD PEACE NOWのデモが反戦の課題なのに楽しそうにやられていることを口汚く批判した作家の辺見庸らのようなひねくれた年配者も一部にはいた。この手合いは今日の若もののデモについても文句を言っているのだが。その後、大音響のサウンドデモが登場し、デモの先頭にサウンドカーが登場したりする。
この時代からデモの参加者もプラカードや衣装を出来るだけ目立つような工夫をするのが顕著になった。八月二日のデモもカラフルだった。コールも音も衣装も、あの渋谷の街の中に溶け込んでいる。違和感があまりないのだ。

デモの文化も時代と共に変容する。運動を受け継ぎながら、民衆の新しい抵抗のスタイル、新しいカルチャーが生み出されていく。ここに希望がある。(T)