人民新報 ・ 第1324号<統合417号>(2015年4月15日)
目次
● 安倍の戦争法案=改憲阻止! 沖縄と連帯し総がかり態勢で反撃しよう
● フクシマを忘れない!さようなら原発大講演会 川内原発再稼働反対!
● 期間雇用社員など均等待遇実現、正社員化など要求して
3・16 郵政ユニオン全国24拠点でストライキ
● 4・9 けんり春闘中央総行動
● 沖縄の怒りが噴出している 翁長県知事は辺野古基地断固拒否の回答 沖縄の闘いの支援の輪を広げよう
● 監視社会をもたらす盗聴法改悪
● KODAMA / 映画「ジョン・ラーべ」
● 狂 歌
● 複眼単眼 / 「わが軍」発言首相が「戦争法案」呼称をとがめた怪
安倍の戦争法案=改憲阻止!
沖縄と連帯し総がかり態勢で反撃しよう
今年度予算案が成立し、後半国会では安全保障法制が最大の焦点となり、戦後の日本国憲法体制に対する安倍内閣との攻防の時期へ突入する。安全保障法制法案は五月中旬にも提出される見通しで、政府・与党は会期を延長してでも今国会で成立させる構えだ。昨年七月の閣議決定は集団的自衛権行使を容認する日本政治の大転換となったにもかかわらず国会での審議を経ていないし、今回も、自民・公明が数の力を背景に、国会論議も不十分なままで強行成立させようとしている。そのため六月二四日までの通常国会を八月一〇日頃まで延長させるなどということが今から語られているような異常事態となっている。
安保法制の前提となる日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定作業が推し進められている。連休中の安倍訪米の前に、日米安全保障協議委員会(外務・防衛「2+2」閣僚会合)で、日米安保ガイドラインの再改定が行われる。これは、日米間の政策合意にすぎない。だから、その内容は憲法と現行法の範囲のものでなければならないものだ。しかし、実際には憲法すら否定するものとなろうとしている。
四月八日、来日中のカーター米国防長官は中谷元・防衛相との会談で、ガイドラインの月内改定に向け作業を急ぐこと、新指針は「アジア太平洋地域だけでなく、それ以外の地域にも安定をもたらすと表明した。これでアメリカのグローバルな戦争に自衛隊を動員し、金ばかりでなく血の提供が求められる道が開かれることになる。環太平洋経済連携協定(TPP)についても「軍事力は究極的には経済力が基盤だ」「米国や多くの同盟国、パートナー国の経済力が強化され、絆がさらに深くなる」と述べた。辺野古新基地建設を急ぐこと、また宇宙・サイバー空間での防衛協力を求めた。 そして、会談で、両防衛相は「東シナ海などにおける力を背景とした現状変更の試み」に反対することで一致した。
しかし、安倍内閣と自民党、それに追随する公明党の思惑通りに日本を「戦争する国」にする暴走に対する抵抗の力は着実に広がってきている。
オール沖縄の運動は、安倍政権の基地強化・戦争政策に対して大きく立ちはだかっている。沖縄の闘いは全国に大きな激励となっている。
この間、集団的自衛権行使に反対する運動をはじめ、戦争、貧困、原発、差別など各地・各層での闘い・運動を共同させ、総がかりで闘う体制づくりは大きく前進した。また、国会内でも反対勢力が形成されようとしている。こうした思いを大合流させて、「平和といのちと人権を!〜戦争・原発・貧困・差別を許さない〜5・3憲法集会」の大成功が勝ち取られなければならない。
そしてこの成功をステップとして、安倍政権による「戦争・原発・貧困・差別」の憲法破壊の政治に反対し、これとたたかう連携を打ち固めて、五月連休明け以降の連続した闘いをおしすすめていかなければならない。
国際的に、とりわけ近隣アジア諸国は、安倍政権の侵略・植民地支配否定のあまりの極右ぶりに批判を強めている。東アジアの民衆の連帯をふかめて、安倍政権の暴走政治に反対していこう。
安保法制国会において安倍政権に対する闘いを強め広げて、「戦争する国」づくり、改憲策動を粉砕しよう。
フクシマを忘れない!さようなら原発大講演会
川内原発再稼働反対!
東日本大震災と東電福島第一原発事故から四年。政府の宣伝とは裏腹に復旧・復興の道は遠い。とりわけ事故原発の状況は依然として危険な状態にあり、収束の見通しはまったく立っていない。汚染水や除染、がれき処理もすすんでいないのに、原発事故被災者への補償、公的支援、賠償などの切り捨ての動きが強まっている。二〇二〇年の東京オリンピック招致の際の「汚染水は完全にコントロールされている」という安倍首相のデマ発言を正当化するために政府はマスコミなどの原発事故被害状況の公表を押さえつけるという事態に至っている。
三月一五日で、すべての原発が停止してから一年半になったが、国内の電力供給には何の影響もない。原発はいらないことが証明済みで、事実上の脱原発が実現されている。にもかかわらず、安倍政権と電力会社は原発再稼働を強行しようとしている。
いま各地でさまざまな再稼働反対の運動が行われている。
三月二八日には、「さようなら原発」一千万署名市民の会の主催で、「フクシマを忘れない! さようなら原発大講演会」(東京・新宿文化会館)が開かれ、一三〇〇人が参加した。
はじめに呼びかけ人の鎌田慧さんあいさつ。川内原発や高浜原発を再稼働させようという動きが強まっている。これをどう阻止していくのか。そのためにフクシマがどうなっているかについての講演会をひらいた。汚染水がたまりつづけ、いつ海に捨てようかという切羽詰まった段階にまで来た。安倍の収束宣言のウソはあきらかになった。そして六〇〇〇〜七〇〇〇人の労働者がきわめて劣悪な条件の下で働かされている。安倍政権は、五つの原発を廃炉にする代わりに新たな再稼働行おうという作戦だ。わたしたちは再稼働を認めない。止める政治決着が必要だ。国会行動を強めるとともに、5・3集会に総結集して大成功させよう。
佐藤和良さん(いわき市議、福島原発告訴団副団長)は、現地の厳しい状況を詳しく報告した。政府などがいまやっているのは、帰還させるためのだけの交通回復だ。原発事故は法的にも終わっていない。なぜなら非常事態宣言が撤回されていないからだ。子どもたちの甲状腺ガンはこれから本格的にでてくる。汚染水はダダ漏れだ。収束事業の労働者は二次下請け、三次下請けと重層的なものになっており、専門家もいない。その結果、労災・死亡事故が多くなってきている。事故収束のためには廃炉庁をつくって、公務員化し、全力で取り組んでいかなければ、いつまでたってもだめだ。政府は被災者を分断させるため賠償金の差別などさまざまなことをやってきている。こうしたやり方にも、私たちは「東北の鬼」になってたちはだかる。「あきれはてても、あきらめない!」ことだ。つないだ手を離さないでください。
呼びかけ人の大江健三郎さんのお話、澤地久枝さんからのメッセージの紹介があり、京都大学原子炉実験所の今中哲二さんは、事故直後からの被災地区での実態調査など原発事故の検証にもとづき、原発事故の責任を追及していくことの重要性について述べた。
呼びかけ人の落合恵子さんが、「安倍政権の民主主義に対するテロリズムにノーと言い続けよう」とのべ、最後に参加者全員が、「原発NO」「再稼働反対」の声を上げた。
期間雇用社員など均等待遇実現、正社員化など要求して
3・16 郵政ユニオン全国24拠点でストライキ
郵政産業労働者ユニオンの春闘は、期間雇用社員など非正規雇用労働者の大幅賃上げと手当支給および休日付与などの均等待遇実現、正社員化、人員削減をやめ正社員の大幅増員、賃金・一時金の引き上げなどの要求をかかげて闘われた。
しかし会社側の回答は、均等待遇要求には応じられない、正社員要求の応募要件は現行の要件が適正なものと考えている、とし、また正社員については、定期昇給の完全実施、一時金は別途回答、賃金引き上げは困難、手当の改善には応じられない、などというものだった。だが、要求は内部留保の一部をとり崩すだけで十分応じられるはずである。郵政ユニオンは一三日、会社に要求に応じる回答を強く求め、ストを通告した。
三月一六日、郵政ユニオンは、早朝より全国二四の職場でストライキに突入し、同時にスト突入職場やその他の職場においてビラ配布や集会を開催した。
東京では玉川局(世田谷区)の前に、早朝からスト突入の支部組合員を囲んで、郵政ユニオン組合員や支援の労働者、地域の市民が参加し、スト突入集会が開かれた。
午前一一時からは、霞が関の郵政本社前集会が開かれ一八〇名が参加した。郵政ユニオン日巻直映委員長は、春闘の勝利に向けてストを打ち抜いた、これからも交渉を強力に進めて要求の実をかちとるために頑張ろうとあいさつ。全労連の井上久事務局長、全労協の金澤壽議長があいさつし、労契法二〇条裁判をともに闘っている東京東部労組メトロコマース支部からは、四月一日にストライキを打つ抜く決意とそれへの支援を呼びかけられた。
郵政産業ユニオン須藤和広書記長がストライキの全国の状況について報告した。
郵政本社にむけてシュプレヒコールをおこなった。
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ストライキ宣言
本日、私たち郵政ユニオンは、15春闘要求の実現をめざして早朝より全国24の職場でストライキに突入した。また、その他の職場においても早朝ビラ配布行動や局前集会を開催し、ストライキへの連帯行動を展開している。
労働者の賃金は、2014年3月からプラスに転じているが、上昇分は1%にもとどいていない。一方、8%への消費税の増税や円安による物価の上昇は3%を超え、実質賃金は17ヶ月連続でマイナスである。また、中小零細企業や非正規雇用労働者の賃金引き上げが据え置かれ、貧困と格差は拡大の一途をたどっている。
その一方で、企業の内部留保は、2013年度末には509.2兆円にも達している。15春闘は、大企業の内部留保をはきださせ、すべての労働者、とりわけ中小零細で働く仲間や非正規雇用労働者の賃金を引き上げ貧困と格差の是正をめざすたたかいである。
郵政ユニオンは、2月13日に@賃金・一時金の引き上げ、A均等待遇実現、B正社員登用の拡大、C大幅増員の実現をめざし、春闘要求書を各社に提出し本社交渉を全力で展開してきた。また、春闘第一波の大衆行動を3月2日に設定し、「正社員化と均等待遇を求める要請署名」の提出、本社前集会、院内集会を取り組んできた。集会は200名を超える仲間が結集し圧倒的な成功を勝ち取った。提出した署名は28、426筆、2010年からこれまで日本郵政に提出した署名数は累計で173、899筆となった。
3月13日、会社は回答を行ってきたが、「経営環境が厳しい」「株式上場を早期に実現することが不可欠であり一層の経営努力を行っていく必要がある」として、期間雇用社員の処遇改善については@賃金・一時金の引き上げは「別途回答」。A均等待遇要求については「応じられない」。正社員の処遇改善については、@定期昇給の完全実施、A一時金は「別途回答」、B基本給の引き上げは「困難」、C手当の改善は応じられない。大幅増員要求については、新規採用者数の増や期間雇用社員等の正社員登用に継続して取り組む、との回答にとどまっている。これに対して、組合から「回答は我々の要求から大きな隔たりがあり受け入れることはできない」「6000億円の増資や膨大な内部留保を活用すれば我々の要求に応えられるはずである」とさらなる回答を強く迫った。本日のストライキは、我々の要求に応えようとしない会社に抗議の意志を示すとともに、さらなる回答の引き出しを求めるたたかいである。日本郵政グループ各社は、企業としての社会的責任を自覚し、すべての社員の生活状況の厳しさを受け止め、すべての郵政労働者の賃金の引き上げ、非正規社員の正社員登用の拡大、均等待遇要求に応えるべきである。
私たち郵政ユニオンは、本日のストライキを成功させ、組織の団結をいっそう固め、15春闘要求の前進をめざして最後までたたかい抜くことを宣言する。
2015年3月16日
郵政ユニオン中央闘争委員会
4・9 けんり春闘中央総行動
「中小・下請け・非正規労働者の賃上げを実現させよう!――生涯を低賃金・派遣労働に縛り付け、長時間労働・過労死を拡大する労働法制改悪は許されない!」
四月九日、けんり春闘実行委員会は、「中小・下請け・非正規労働者の賃上げを実現させよう!――生涯を低賃金・派遣労働に縛り付け、長時間労働・過労死を拡大する労働法制改悪は許されない!」と中央総行動を展開した。経団連、厚生労働省への抗議・申し入れ、郵政本社・首都高速道路株式会社にむけた行動、そして午後六時からは新橋・交通ビルで、総決起集会が開催された。
上村時彦全水道・東水労委員長の主催者代表あいさつにつづいて、全国一般労働組合全国協議会の平賀雄次郎中央執行委員長が一日の行動の報告をおこなった。今日の行動は、非正規・中小・すべての労働者の賃上げ・労働条件の改善、過労死促進法など労働法制改悪を許さない運動をみんなで作っていくということだ。今日の行動にはのべ一〇〇〇人が参加した。
つづいて、北関東ネットワーク、宮城全労協、大阪ユニオンネット、国労、JAL原告団、全統一から決意の発言がつづいた。
一日の行動の最後のデモは新橋駅前、有楽町駅前を通って東京駅周辺の鍛冶橋交差点まで貫徹した。
沖縄の怒りが噴出している
翁長県知事は辺野古基地断固拒否の回答
沖縄の闘いの支援の輪を広げよう
衝撃を受ける政府
辺野古新基地建設反対は全沖縄的な声となり、翁長雄志沖縄県知事が誕生した。しかし政府・沖縄防衛局は、建設着工に向けた海底調査と称しコンクリートブロックで埋め立て予定区域外の珊瑚礁を損傷しなどしている。
三月二三日、翁長雄志沖縄県知事は、岩礁破砕許可条件にある「公益上の事由」に基づいて工事の中止を命じた。これに対し、日本政府とくにこの問題の責任者である菅義偉官房長官は「この期に及んで」「粛々と(工事は)進行させる」などと無視する姿勢をとった。
だが、実際には安倍政権は沖縄の態度に大きな衝撃を受けており、これまで拒否してきた知事との会談を行わざるを得なくなった。
四月五日の会談の席上、知事は「新基地建設は絶対にすることができない」ときっぱりと拒否の回答を行った。そして菅長官は、知事の「上から目線」批判を受けて、今後は、「粛々と」なる言葉は使わないと言わざるをえなくなった。
辺野古基金の創設
四月九日には、地元経済人らが那覇市で記者会見し、辺野古新基地建設に反対するための「辺野古基金」の創設を発表し、全国に支援を訴えた。
共同代表は、宮城篤実氏(前嘉手納町長)、呉屋守将氏(建設会社などを運営する「金秀グループ」会長)、平良朝敬氏(かりゆしグループの最高経営責任者)、長浜徳松(沖縄ハム総合食品「オキハム」会長)、佐藤優氏(元外務省主任分析官)、俳優の故菅原文太さんの妻文子さんの六人。基金は辺野古反対の声を国内や米国の新聞に意見広告を掲載することなどを目的とする。基金の共同代表の一人の呉屋氏は、「米国政府に直接、訴えて、日本政府を動かす」と述べた。「金秀グループ」は経常利益の一%相当を基金にあてるという。記者会見には基金の相談役に就任する翁長県知事も同席した。
●問い合わせは、基金事務局の金秀本社=電098(868)6611。
工事即時中止の緊急署名
沖縄の闘いへの支援が広がっている。四月一日、辺野古の新基地建設に反対する学者らのグループが、参院議員会館で記者会見し、緊急声明(次ページに掲載)を発表した。席上、小森陽一東京大学教授は闘いを続けている市民と連帯しなければならない、支援の輪を大きく広げていこう、と訴えた。
声明は政府に提出されたが、追加の賛同署名も呼びかけられている。第一次締め切りが四月二〇日、第二次締め切り 五月二〇日だ。
●辺野古埋立工事の即時中止を要請する緊急署名事務局 http://henoko-nobase.jimdo.com/
緊急声明・「辺野古米軍基地建設に向けた埋立工事の即時中止を要請する!」
私たちは、沖縄での辺野古米軍基地建設をめぐる問題に、重大な関心を寄せてきました。沖縄県民の意思は、もはや明確です。昨年二〇一四年一月の名護市長選挙では、同米軍基地建設反対を公約する稲嶺進氏が再選、一一月の県知事選では、同じく建設反対を明言する翁長雄志氏が、一〇万票もの大差で、現職の仲井真弘多氏を破り、一二月に行われた総選挙では、小選挙区すべてで建設反対候補が勝利しました。思想・信条を超え、また政治的・党派的違いを超えた「オール沖縄」で、辺野古米軍基地建設には、「NO」という県民の強い意思が示されたのです。
にもかかわらず、安倍政権は、仲井真前知事が二〇一三年暮れ、公約を翻して行った公有水面埋め立て承認を盾に、強引に埋め立て工事を進めています。こうした政府の行為は、沖縄県民の意思を侮辱し、日本の民主主義と地方自治の根幹を破壊する暴挙です。
新知事は、「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」(以下「第三者委員会」)を設置することを決め、仲井真弘多前知事が行った公有水面埋立承認手続に法律的な瑕疵がなかったかどうか、検証を始めました。つまり、埋立承認、あるいはその根拠となった環境アセスメントの正統性が崩れる可能性があるということにほかなりません。まともな民主主義国の政府であれば、少なくともこの検証期間中、埋立工事を中断するのが当然です。
翁長県知事は三月二三日、新たな決断を下しました。ボーリング調査を含むすべての作業を停止するよう、沖縄防衛局に指示したのです。この指示に従わない場合、辺野古沿岸の岩礁破砕許可を取り消すことを視野に入れたものです。
このまま強引に工事を進めれば、沖縄県民との深刻な衝突や将来にわたる本土への不信の醸成が懸念されるだけでなく、日本という国に対する、内外からの信用が地に堕ちることになるでしょう。
私たちは、翁長新知事の基地移設拒否の立場を支持し、今回の知事の作業中止指示と岩礁破砕許可取り消しについても、全面的な支持を表明するものです。私たちは、次の諸点について強く要請します。
日本政府は、海底ボーリング調査を含む、辺野古埋立にかかわるすべての行為をただちに中断すべきである。政府が埋立の根拠とする仲井真前知事の「埋立承認」は、すでに沖縄県民によって拒否されている。
この間、日本政府は、沖縄の総意を代表する翁長新知事との面会さえ拒絶しているが、これは、日本国憲法が保障している地方自治と民主主義の精神を否定するものである。民意の尊重が、民主主義の原点である。日本政府は、翁長新知事による面会要請を誠実に受け入れ、本件に関する真摯な協議に応じるべきだ。
日本政府には、自ら掲げる「地方創生」のスローガンを実践し、沖縄県に基地問題解決と自立経済建設についての実権を移譲するよう、要請する。
環境大臣には、今回の辺野古米軍基地建設に向けての埋立事業に関する環境影響評価書(辺野古アセス評価書)の内容に対して、環境保全上の見地から適切な意見を述べるべき責任がある。とくに辺野古地域・沿岸地域は、沖縄島の環境保全指針で「自然環境の厳正なる保護を図る区域」(ランクT)とされ、ジュゴンをはじめ絶滅の恐れがある多様な生物種が生息する貴重な海域である。今回の埋立工事等による自然形状の人為的な変更や破壊によって不可逆的で取り返しのつかない絶対的損失がもたらされる恐れがきわめて高い。環境大臣には、世界遺産の候補にもなっている誇るべき沖縄の美しい海域を保全する重大な責務を果たすよう、ここに強く要請する。
沖縄県民の辺野古新基地建設拒否の意思の背景には、日本全体の〇・六%に過ぎない沖縄に、七四%もの米軍基地が押し付けられている現状への不満、憤りがある。日本国民には、この構造的差別ともいえる現状を直視し、日本の安全保障の問題は、その負担も含めて、日本全体で考えていくべきことを要請する。
二〇一五年四月一日
浅岡美恵(弁護士)
淡路剛久(立教大学名誉教授)
礒野弥生(東京経済大学教授)
内橋克人(評論家)
遠藤誠治(成蹊大学教授)
大江健三郎(作家)
加茂利男(立命館大学教授)
川瀬光義(京都府立大学教授)
古関彰一(独協大学名誉教授)
小森陽一(東京大学教授)
斎藤純一(早稲田大学教授)
高橋哲哉(東京大学教授)
千葉 眞(国際基督教大学教授)
寺西俊一(一橋大学特任教授)
中野晃一(上智大学教授)
西川 潤(早稲田大学名誉教授)
西谷 修(立教大学教授)
原科幸彦(東京工業大学名誉教授・千葉商大教授)
前田哲男(評論家)
間宮陽介(京都大学名誉教授)
宮本憲一(大阪市大・滋賀大学名誉教授)
和田春樹(東京大学名誉教授)
監視社会をもたらす盗聴法改悪
全事件・全過程で録音・録画を実現せよ
全事件の全証拠を開せよ
三月一三日、安倍内閣は通信傍受の拡大を柱とする刑事訴訟法などの改正法案を閣議決定した。これは、昨年九月一八日の法制審議会が法務大臣に答申した「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果」に基づくもので、これまでの通信傍受法の対象犯罪が暴力団関連犯罪の@銃器犯罪、A薬物犯罪、B集団密航、C組織的殺人の四類型に限定されていたものを、傷害、詐欺、恐喝、窃盗などを含む一般犯罪にまで大幅に拡大することを提言している。また通信傍受法が抑制的に運用される歯止めとなっていた通信事業者の常時立会制度も撤廃されるとしている。法案では、警察と検察が逮捕した容疑者の取り調べを最初から最後まで録音・録画するよう義務づけるが、その対象は殺人や強盗致死などの裁判員裁判対象事件と、検察の特捜部などが扱うなどの事件だけである。そして、司法取引の導入で、取引で自分に有利なことを得るために他人の「犯罪」について虚偽供述をし、新たな冤罪を生む恐れをうむ。
こうした盗聴社会・えん罪・密告社会の到来を許さない運動をいっそう強めていかなければならない。
三月二〇日、文京区民センターで、「密告・盗聴反対!なくせ冤罪集会」が開かれ、多くの人が参加した。集会共同スローガンは、@取調べの可視化(録音・録画)を全事件・全過程で実現しよう。A証拠は真実を明らかにするための公共財産。全事件の全証拠を開示する制度を作ろう。B盗聴法の大改悪に反対しよう。C冤罪を拡大する日本型司法取引(密告奨励)制度の新設に反対しよう。D冤罪を生まない刑事司法の改革を実現しよう、というものだった。
基調報告は、小池振一郎弁護士(日弁連刑事拘禁制度改革実現本部副本部長)が「法制審答申をどうみるか〜取調べの録音録画、日本型司法取引、盗聴法大改悪など」と題して行った。足利事件、布川事件、氷見事件、志布志事件、東電OL事件などえん罪事件が続出し、とりわけ検事の証拠摸造にまで発展した郵便不正事件が契機となって、二〇一〇年一〇月に「検察のありかた検討会議」が設置された。そこでは、「『密室』における追及的な取調べと供述調書に過度に依存した捜査・公判を続けることは、もはや、時代の流れと乖離したもの」(二〇一一年三月提言)とされ、刑事司法制度の改革が強く求められた。「検察のありかた検討会議」提言を受けて、二〇一一年六月に法制審・新時代の刑事司法制度特別部会が設置され「近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み…取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直し」などについて諮問された。調べの在り方にメスを入れ、いかに取調べを規制(適正化)するかが、最大のテーマで、郵便不正事件の被害者である村木厚子さん(事件当時・厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長)、映画「それでもボクはやってない」の周防正行監督などが参加し、取調べに依存して膨大な供述調書を積み上げてきた従来のやり方の転換を追った。また、国際人権自由権規約委員会、拷問禁止委員会などからの日本政府への勧告が続いた。そして、昨年九月に答申がだされたのである。
「取調べの可視化」については、全面可視化か部分可視化かが大きな争点だ。録音録画が視聴覚に訴える力は大きい。だが、実態は、たとえば裁判員・裁判官にたいして捜査側に都合のいいところ(自白する場面)だけ部分可視化されていて、自白強要の場面は可視化されていない。そうとわかっていても、録音録画に接すれば心証形成にかなり影響されるのであり、一部可視化は不十分どころか、かえってえん罪を生む場合がある。だから取調べの在り方にメスを入れるためには、取調べの開始から終了までの全過程可視化(録音録画)すなわち取調べの全面可視化を行わなければならない。
だが法案では、逮捕・勾留中の被疑者の取調べの録音録画(可視化)を義務付ける制度があるが、全面義務付けではない。対象が限定され、全事件の二パーセント程度の裁判員裁判対象事件、検察官独自捜査事件(年一〇〇件程度)とされ、身体拘束以前の被疑者取調べ(任意取調べ)や参考人取調は対象外だ。
警察と検察双方の取調べ全過程の録音録画を「原則義務化」とするが、例外事由がきわめて多い。たとえば「被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき」とか「被疑者の言動」によらなくても「被疑者、親族を困惑させる行為がなされる恐れ」がある時が、それで、いずれも、取調官の「認めるとき」とされる。
日本型司法取引では、捜査・公判協力型協議・合意制度が導入される。文書偽造、証拠隠滅など被疑者・被告人の「特定犯罪」に限定されるが、被疑者・被告人が他人の「特定犯罪」についての知識を有する場合は、自らの「特定犯罪」との関連性がなくてよい、とされる。これは、検察官が被疑者・被告人との間で、取調べや公判証言で他人の犯罪事実に関する真実の供述、証言を約束することと引換えに、不起訴、略式命令に軽減などを約束する制度で、弁護人の同意が必要だが、警察も関与できる。ここには、自らが有利な取扱いを受けるために他人を罪に陥れるという危険が存在する。すでに最高裁は、「不起訴の利益を提示して得た自白は、任意性に疑いあり」(昭和四一年七月一日)という判決を出している。司法取引が制度化され、合法化されると任意性が希薄になる。今でも、事実上の取引があるが、どう公然化(透明化)すればいいのかが問題となっている。司法取引が合法化されれば、不起訴などになるという確実な保証が得られるようになるので、他人について捜査官の期待に沿う供述をしようというインセンティブがより強く働くようになり、えん罪が格段に増えることになる。一旦合意すると、撤回できない圧力(虚偽供述罪)がはたらく。そして、取引に対する違和感が薄れて、事実上の取引も増えることになる。
このような事態になれば、弁護人は困惑する。なぜなら弁護人は当初は全面証拠開示もなされないから、何が真相か分らない。弁護人は依頼者の利益のために取引に応じざるを得なくなり、怪しいと思っても、不本意ながらえん罪に加担することになるかもしれない。そうすれば虚偽供述罪の共犯にもなり、弁護人は双方からの懲戒請求、損害賠償といったリスクを負うことになる。
また証人に刑事責任を免除する約束で証言を強制することは、黙秘権の剥奪、裁判所のチェック排除となり、問題がある。そして、証人保護プログラムと司法取引、刑事免責が連動して、デッチ上げが増える恐れがある。
そうしないためにも、証拠開示が必要なのだ。証拠は国民の共有財産であり、全面証拠開示が求められている。法案はリスト開示(交付)についていっているが、これは検察官(警察ではない)が保管する証拠の「標目」などを記載した一覧表のことで、一覧表の記載事項は供述録取書などの文書の標目、作成年月日、供述者の氏名だけであり、文書の要旨も記載されないものだ。これではまったく内容の識別ができない。そのうえ例外規定があり「犯罪の捜査に支障を生ずるおそれ」があるとき等は一覧表に記載しなくてよいとされている。シビアな事件では当局の裁量に委ねる例外規定が活用されることになるだろう。
証拠開示も重要性が広く知られるようになったのは、二〇一四年三月二七日の静岡地裁決定だ。これは強盗殺人放火事件、およびその裁判で死刑が確定していた袴田巖さんの再審で、証拠開示され、その結果、袴田さんの無実が明らかになり、死刑及び拘置の執行が停止された。袴田事件は、代用監獄における長時間・長期間の自白強要、証拠隠し、検察官上訴問題など、日本の刑事司法の根本的欠陥と後進性が集約されている。しかし、法制審特別部会では、袴田事件の示した教訓を審議に生かす姿勢が全く見られなかったし、法制審でも再審における証拠開示は先送りされ、えん罪をなくそうという発想・指向が見られなかった。
現行の盗聴法は、一九九九年に組織犯罪処罰法と一体で成立し、二〇〇〇年に施行された。現行法の通信傍受(盗聴)対象は、薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の四類型に限定され、立会人を常時立会わせなければならない。また一分半聞いて該当性を確認し、三〇分後に再チェックするスポット傍受チェックであり、「通信傍受室」は東京の一箇所のみだ。これまで、毎年一〇件程度で、あまり活用されていなかった実績だ。だが、最近は数十件に増えており、昨年は二六件で、ほとんどが薬物犯罪だった。今回の法案では、窃盗、詐欺、恐喝、強盗、殺人、傷害、逮捕・監禁、略取・誘拐、児童ポルノなど対象が拡大され、個人的な犯罪も対象になる。
組織犯罪処罰法では、「団体」とは「共同の目的を有する多人数の継続的結合体」であって、「組織」とは「指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体」により「反復して行われるもの」と限定されている。以上の「団体の活動(団体の意思決定に基づく行為)として」その犯罪「行為を実行するための(上記)祖織により行われたとき」(組織的殺人等)とされていたのが、法案では、「組織犯罪」の枠組みが取り払われ、「数人の共謀」、「役割の分担」、「人の結合体」ということでよいとされ、「数人の共謀」これは二人でもOKということであり、「役割の分担」も複数犯であれば通常「役割の分担」があるとされ、「人の結合体」も抽象的なものとなる。こうして、法案では、複数犯なら、組織犯罪でなくても、電話もメールも盗聴できることになる。また、通信事業者職員の立会いをなくすとなれば、警察施設で盗聴できるようになり、警察での傍受では立会人が居ないので、複製可能となる。地元警察で傍受できるようにもなる。これは、令状主義を大きく逸脱するものであり、憲法の通信の秘密、プライバシーの権利を侵害するものだ。この証拠(別件傍受も含む)によって堂々と立件することができるし、証拠として使用しなくても、「公然化する」ことによってプレッシヤーをかけることもできる。別件捜索、逮捕への道が開かれ、捜査の範囲が大幅に拡大する。日本には警察をチェックする機関がないのであり、日本の警察にこれだけの広大な捜査権限を与えていいか。このような恐れについては法制審ではまともに審議されていない。今秋にも国会上程されるといわれる共謀罪と結びつけば、その証拠収集のために盗聴法大改悪がフルに機能することになる。
法制審の本来の目的は「取調の規制」を実現することだ。徹底的に取調べることによって真相解明する場合と、えん罪を生む場合の二つの側面がある。周防監督の痴漢えん罪映画『それでもボクはやってない』冒頭の字幕に「一〇人の真犯人を逃すとも、一人の無辜(ムコ)を罰するなかれ」とあるが、真犯人をのがすことよりも、えん罪を生むことの方がはるかに問題であるという考え方が重要だ。取調べは規制すべきである―これが近代刑事司法の基本原則だ。
冤罪防止と捜査権限の拡大は水と油の関係だ。盗聴法改悪については、全国の大多数の弁護士も、法案に否定的だ。毒をもった法案であり、一本で一括採決となれば、すべてに反対するしかない。
つづいて、「盗聴法改悪による盗聴法の質的転換とその問題点」と題して、足立昌勝関東学院大学名誉教授が特別講演を行った。足立教授は、現在おこなわれていることは、秘密保護法の施行・共謀罪導入による治安強化対策の推進であり、そのために、捜査手法としての盗聴は、警察にとって最高の捜査手法である。盗聴法の改悪と司法取引の導入には絶対に反対しなくてはならないと強調した。
冤罪リレートークでは、袴田事件、三鷹バス痴漢えん罪事件、志布志事件・踏絵えん罪事件、狭山事件、布川事件えん罪事件の当事者や弁護団、そしてジャーナリストなどからの発言がつづいた。
KODAMA
映画「ジョン・ラーべ」
戦後七〇年で安倍首相は新たな談話を発表し、「植民地支配」「侵略」に対する「痛切な反省」「心からのお詫び」という村山談話を否定しようとしている。しかしこのことは、多くの人びとに歴史を見つめさせることにもなり、内外から安倍の意図を批判する声が上がっている。日本には、歴史修正主義者が否定しようとする「南京大虐殺」など自分の過去としっかりと向き合い、それを基礎として近隣アジア諸国をはじめ世界と向き合う正しい姿勢の確立が求められている。
四月四日、平和フォーラムなどでつくる東アジア市民連帯は、連続集会の一環として映画「ジョン・ラーベ」(二〇〇九年 監督・脚本フロリアン・ガレンベルガー ドイツ・フランス・中国)の上映会&講演会を開催した。この映画の主人公は、一九三七年一二月に日本軍が南京を占領し、大虐殺事件を起こした時に、安全区をつくり民間人の保護活動に尽力した欧米人のリーダーのドイツ人のジョン・ラーベだ。かれは長年中国に住み、シーメンス社の中国支社総責任者であり、ナチ党の南京支部副支部長だった。香川照之、杉本哲太、柄本明、ARATAなど日本人俳優も登場する。 映画はラーベの日記に基づいて作られ、国際的にも高く評価された映画だが、日本では、南京大虐殺はタブー視されるため配給会社がつかず、一般公開されてこなかった。いま、東アジア市民連帯だけでなく、上映運動が取り組まれており、DVDも発売されている。(H)
映画『ジョン・ラーベ―南京のシンドラー―』公式ウェブサイト http://johnrabe.jp
狂 歌
みずほより戦争法と非難あぶ
「我が軍」なぞと煙幕もはり
ヽ史
複眼単眼
「わが軍」発言首相が「戦争法案」呼称をとがめた怪
四月一日の参議院予算委員会で何とも奇妙な騒ぎが発生した。社民党の福島瑞穂議員の質問「四月からの負担増、格差・貧困と戦争法案」に関する安倍首相の対応だ。
福島議員は安倍政権がこの五月にも国会上程しようとしている戦争法制について、次のようになかなか格調高い質問をした。
安倍内閣は、五月十五日、十四本から十八本以上の戦争法案を出すと言われています。集団的自衛権の行使や、それから後方支援という名の下に戦場の隣で武器弾薬を提供する、このことを認めようとしています。
詩を紹介させてください。
「明日戦争がはじまる」 宮尾節子
「まいにち 満員電車に乗って 人を人とも 思わなくなった インターネットの 掲示板のカキコミで 心を心とも 思わなくなった 虐待死や 自殺のひんぱつに 命を命と 思わなくなった じゅんび は ばっちりだ 戦争を戦争と 思わなくなるために いよいよ 明日戦争がはじまる」。
この質問の最後を福島議員は「格差拡大、貧困と戦争はつながっていると思いますが、総理、いかがですか」と締めくくった。
ところが何を血迷ったのか安倍首相は以下のように反論したのだ。
「今も我々が今進めている安保法制について、戦争法案というのは我々もこれは甘受できないですよ。そういう名前を付けて、レッテルを貼って、議論を矮小化していくということは断じて我々も甘受できないと、こんなように考えているわけでありまして、真面目に福島さんも議論をしていただきたいなと、これは本当にそう思うわけでございます」。
そしてこれに呼応して岸宏一予算委員長は「先ほどの福島みずほさんの御発言中、不適切と認められるような言辞があったように思われますので、後刻理事会において速記録を調査の上、適当な処置をとることといたします」としたのだ。
なんということだ。
福島議員は、戦争法制だからそういったまでだ、と抗議した。
だいたいが「わが軍」などと発言した安倍晋三がとがめられることなのか。「軍」の行動に関する法制は「戦争法制」そのものではないか。
福島議員の質問に対する安倍首相の高飛車な物言いと、委員長の「適切な処置」をとるなどという発言は、国会の正常な議論を抑圧するものだ。
まさに戦争の道を物語っているではないか。 (T)