人民新報 ・ 第1325号<統合418号(2015年5月15日)
  
                  目次

● 戦争法案=改憲絶対阻止

     憲法集会大成功をうけ、安倍を追詰める運動を大きく広げよう

● 5・3憲法集会に3万人が結集

     総がかり行動の呼びかけの成果

● 改憲派のうごき  /  何言ってるの舞の海!

● エクゼンプションでミスリードは許されない

     労働弁護団が「成果に応じた賃金制度」報道を批判

● 安倍が辺野古強行をオバマに誓約

     各地から沖縄の闘いへ合流しよう

● 秘密法保護法 廃止へ!
 
     12・6を忘れない国会前行動

● 日比谷メーデー

● マイナンバー法 10月施行 来年1月運用開始

     国民監視強化と情報ダダ漏れの危険

● 狂 歌

● 複眼単眼  /  一点共同のこと






 戦争法案=改憲絶対阻止

     憲法集会大成功をうけ、安倍を追詰める運動を大きく広げよう


戦争法案国会提出へ

 自民・公明両党は安保法制の関連法案を五月一四日に閣議決定し国会に提出する。そして、かれらは急いで特別委員会を設置して、次の週の審議入りを狙っている。
 新法である「国際平和支援法」と、自衛隊法など一〇の法律の改正を一括した「平和安全法制整備法」となる。「国際平和支援法」は外国軍隊への後方支援のための海外派兵恒久法である。
 後方支援は戦争の重要な構成部分であり、武器弾薬、燃料、医薬品、食料などの後方支援(兵站、ロジスティクス)なくして前線での戦闘はあり得ない。アメリカの戦争に「世界のどこでも」「いつでも」ただちに参戦するのが「国際戦争支援法」だ。もう一つの法案も日本を破滅に導く「戦争危険法」そのものだ。
 「平和」「安全」などの言葉で、その真実の性質を隠したもので、安倍政権の常習手段の姑息な「ことばのマジック」の法案名だ。

昔は「事変」、今「事態」

 集団的自衛権の行使では「存立危機事態」(わが国と密接な関係にある他国への武力攻撃により、わが国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態)では、自衛隊が防衛出動する。「重要影響事態」(日本の平和と安全に重要な影響を与える事態)の場合には、アメリカ軍などへの後方支援には地理的な制約がない、とする。かつての戦争は宣戦布告なき「事変」という名で戦われた。今回は「事態」という名で戦争に入っていく。
 国際戦争支援法案では、日本の安全に直接影響がないものの、国連決議に沿って軍事行動する他国軍への自衛隊の支援を随時可能にするというものだ。

 戦争法制を夏までの成立させる―こう安倍は訪米時にオバマに誓約した。そのため六月二四日までの国会の会期を大幅に延長させ、なんとしても成立させようとしている。国会軽視、民意無視のきわみだが、それは政権側が、法案の真の姿が広く知られ、反対の声が大きくなるのを怖れていることにほかならない。

世論は戦争反対

 だが、世論の動向は、安倍政権のもくろみとは合致しない。改憲についての世論調査は昨年二〇一四年から反対の声が大きくなってきていることがその表れだ。安倍政権による集団的自衛権の憲法解釈変更や戦争法制整備など「戦争する国」づくりに対して世論が敏感に反応した結果である。直近のJNN(TBS)調査(五月九・一〇日 定期調査)によると、「集団的自衛権行使のための安保法制について?―安倍政権は集団的自衛権の行使を可能にするための安全保障関連の法案を、今の国会に提出し、成立させる方針です。あなたはこうした方針に賛成ですか、反対ですか」の質問に対して、賛成三五%、反対五〇%、答えない・わからない一五%だった。同じくガイドライン改定には、賛成三六%、反対四六%となっている。
 世論は安倍政権の戦争政策が明らかになるほど批判を強める。そのために安倍は、マスコミへの統制の強化、秘密保護法の施行、そして言葉のマジックを続けて出してきているのである。

連続闘争の時期へ

 五月中旬から戦争立法成立阻止の連続した闘いの時期に突入する。戦争に反対するすべての人びと・運動が協働して、戦争法制に反対する強大な運動同行動をつくりだそう。5・3憲法集会は大成功を収めた。総がかり行動は着実に広がっている。
 沖縄では辺野古新基地建設阻止で文字通りオール沖縄で闘っている。
 沖縄の人びとに学び、沖縄方式を広げていかなければならない。

 協力の輪をかつてないほどに広げて総がかり闘争陣形を各地につくりだそう!
 安倍政権の戦争法制定を断固として粉砕しよう!


5・3憲法集会に3万人が結集

   総がかり行動の呼びかけの成果


 五月三日は憲法記念日。いま安倍政権の改憲・戦争準備の危険な暴走に全国各地で反対の声が大きくなっている。
 こうしたきわめて重要な時期に安倍政権の政策に反撃する総がかりの行動が呼び掛けられ、さまざまな運動の大きな合流と闘う力量の拡大が着実に進んでいる。

 この日、首都圏では、これまでの二つの憲法集会が一本化して、横浜みなとみらいの臨海パークで「平和といのちと人権を!5・3憲法集会〜戦争・原発・貧困・差別を許さない〜」が開かれ、憲法集会には初参加という家族連れなどが参加し三万人が公園を埋め尽くす大きな成功をおさめた。
 集会の前段の「集会へ行こうよパレード」は二〇〇〇人が参加して行われた。

 集会では、作家の雨宮処凛さん、作家の大江健三郎さん、作家の澤地久枝さん、憲法学者の樋口陽一さん、精神科医の香山リカさん、作家の落合恵子さんの六人のよびかけ人が発言。
 大江健三郎さん――安倍政権のやりかたはウソに満ちている。憲法が集団的自衛権など軍事力の行使を禁じてきた。それを安倍は米国議会で日本は米国の戦争のたよりなる役割を果たすと演説した。世界のいたるところで、米国に対する攻撃にともに戦うと約束したのだ。いましっかりとした意思をもって憲法の原則を守り抜こう。私のような老人がこうした大集会であいさつするのは最後かもしれない。悔いを残さないためにも憲法を守る運動を大きくしていかなければならない。
 樋口陽一さん――憲法のエッセンスを言い表した友人が先ごろ亡くなった。菅原文太だ。かれは政治で二つの重要なことは、ウソをつかないこと、人の命と暮らしを大事にすることだといい、沖縄、原発でもはっきりした姿勢を貫いた。いま自民党は、「日本を取り戻す」とか言って、憲法を書き換えようとしている。天賦人権がいかんというのだ。人類普遍の原理を変えさせては絶対にならない。
 政党からは、民主党の長妻昭代表代行(衆議院議員)、共産党の志位和夫委員長(衆議院議員)、社民党の吉田忠智党首(参議院議員)、生活の党と山本太郎となかまたちの主濱了副代表(参議院議員)があいさつした。民主党や生活の党はこの集会とは憲法についての考えは全く同じではないが、安倍政権の進める改憲については反対だと意見表明した。

 沖縄からのアピールは、基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表の高里鈴代さん―今日もキャンプ・シュワブ前では座り込み、海上ではカヌーで抗議行動が行われている。安倍首相はアメリカで辺野古新基地建設強行を約束してきたが、絶対に認められない。沖縄の日本への復帰とは、平和憲法への復帰という願いからだった。しかし、日米の核・基地密約はあたかも憲法がないような状況を沖縄にもたらした。いま沖縄は、オール・オキナワで基地と差別に闘い続けている。憲法を生かすには辺野古をやめさせるしかない。
 つづいて日本国際ボランティアセンターなど一一団体の代表がリレートークをおこなった。
 
 なお、後日、会場でのカンパは一〇〇〇万円をはるかに超えたと報告された。

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5・3憲法集会のアピール

   私たちは、「平和」と「いのちの尊厳」を基本に、日本国憲法を守り、生かします
   集団的自衛権の行使に反対し、戦争のためのすべての法制度に反対します
   脱原発社会を求めます
   平等な社会を希求し、貧困・格差の是正を求めます
   人権を守り、差別を許さず、多文化共生の社会を求めます

   私たちは、これらの実現に向けて、全力でとりくみます
   いま、憲法は戦後最大の危機にあります
   全国に、そして全の国々に、連帯の輪を広げて、ともにがんばりましょう


改憲派のうごき

    何言ってるの舞の海!


 安倍政権改憲の動きに連動して改憲派の活動も活発化してきている。五月三日、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」と民間憲法臨調の公開憲法フォーラム「憲法改正、待ったなし!」が、砂防会館で開かれた。古屋圭司(衆議院憲法審査会幹事・自民党)、礒崎陽輔(自民党憲法改正推進本部事務局長)、松原仁(民主党、元国務大臣・拉致問題担当)、柿沢未途(維新の党政調会長)、中山恭子(次世代の党参議院会長)、森本勝也(日本青年会議所副会頭)、舞の海秀平(大相撲解説者)、櫻井よしこ氏(民間憲法臨調代表、美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表)、西修(駒澤大学名誉教授、民間憲法臨調運営委員長)などが、九条の会の運動などに対抗して憲法改正に向けた「草の根」運動を強めることを訴えた。
 その中で、舞の海は、「相手はしたたかな戦略で来るかもしれないのに、日本人力士は真っ向勝負で来ると信じてぶつかっていく傾向にある。これは憲法前文の『諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』ということに関係がある。『諸国民の信義』を疑わなければ勝てない。憲法改正を一緒に考え、世界の中で真の勇者だといわれる国になってほしい」などと怪気炎をあげた。
 また、これまでの取り組みで、二七府県の議会で改憲の意見書が採択され秋までに三五議会に増やし、一一月には一万人規模の集会を開くこと、来春までに一〇〇〇万人の賛同者を獲得することなどが呼び掛けられた。


 エクゼンプションでミスリードは許されない

     労働弁護団が「成果に応じた賃金制度」報道を批判


 経済界の強い要求に安倍内閣は労働法制の改悪にむけての動きを強めている。とりわけ労働時間法制では、抜本的な新しい労働時間制度の創設を求める声が大きくなっている。経団連は、昨年の春闘対策白書「経営労働政策委員会報告」で「働き方そのものの変化に対応した時間管理を行うには、法律で画一的に律するのではなく、労使自治を重視した労働時間法制に見直すべきである」「高度な裁量をもって働く一部事務職や研究職等を対象に、健康確保措置を強化し、労働時間・深夜労働の規制の適用を除外する制度を創設すべきである」と提起した。
 昨年三月の労働政策審議会で、使用者側委員の三浦惺日本電信電話会長はいっそうはっきりと述べている。「裁量性の高い労働者が主体的に生き生きと働いていくためには、十分な健康確保措置を前提に労働時間等の規定を外すような見直しも必要だと考えています。先ほど規制改革会議あるいは産業競争力会議の話が出ましたけれども、規制改革会議からは適用除外制度の新設について提案されており、この提案をベースに労働政策審議会の労働条件分科会で議論を深めていく、進めていくということも検討に値するのではないかと、我々としては考えております。厚労省としても、ぜひ、こうした制度の実現に向けて取り組みをお願いしたいと思います」。
 こうしたものにもとづいて政府は、今年の四月三日、労働基準法等の改正法案を閣議決定し国会に上程した。労働時間ではなく仕事の成果に応じて賃金を決める新たな労働制度「高度プロフェッショナル制度」(ホワイトカラーエグゼンプション)の導入が柱だと政府は説明し、マスコミもそう報じている。
 しかし、「実際は『時間ではなく成果に応じて賃金を決める制度』ではないこと」―日本労働弁護団は批判している。「エグゼンプションを『成果に応じた賃金制度』と喧伝することに抗議する声明」(二〇一五年四月一六日)は指摘する。
 「日本労働弁護団は、エグゼンプションについて『時間ではなく成果で評価される働き方』であるとの誤った喧伝を続ける政府の姿勢に強く抗議するとともに、報道機関に対して、制度内容の正確な報道を行うよう、強く要望する」として、「この法律案は、『時間ではなく成果に応じて賃金を決める制度』など何一つ含んでいない。制度が新たに設けられた労基法第41条の2は、『労働時間等に関する規定の適用除外』との表題が付され、その名のとおり、制度内容も労働時間規制の適用除外が設けられているだけである。使用者に対して何らかの成果型賃金を義務付ける規定もなければ、それを促すような規定すら含まれていない。法律案に先立ち労政審でまとめられた『今後の労働時間法制等の在り方について(報告)』では、『特定高度専門業務・成果型労働制』との表題が付されていたが、法律案ではもはやその文言さえも消えている。当弁護団は、この制度を『時間ではなく成果に応じて賃金を決める制度』と評価することが完全な誤導である旨、労働政策審議会での審議段階から繰り返し意見を述べ、制度内容の正しい理解を説明してきた。現時点でも、政府がこのような誤った説明を繰り返し、国民の間に間違った理解を広げていることに、強く抗議」した。
 この制度には「成果に応じて賃金を決める制度」は含まれておらず、この制度によって成果給が導入されるわけではないからで、「成果が適切に評価されて、賃金が上がる」ことにはならないし、その保障もないのだ。また、使用者から命じられる業務を拒否する権利はないから、この制度により時間規制の適用除外となった対象労働者は、無定量な残業命令を拒否することはできなくなる。
 声明の「新たな労働時間制度は、単なるエグゼンプションにすぎず、成果型賃金制度とは全く無関係なのである」という批判は政府・マスコミの欺瞞を鋭くつくものとなっている。


安倍が辺野古強行をオバマに誓約

     各地から沖縄の闘いへ合流しよう


防衛協力指針の再改定

 四月二七日、日米両政府は外務防衛閣僚会議(2プラス2)で、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定に合意した。それは、「平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和及び安全を確保するため、また、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう日米両国間の安全保障及び防衛協力は、次の事項を強調する」として「切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応」「日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果」「政府一体となっての同盟としての取り組み」「地域の及び他のパートナー並びに国際機関との協力」「日米同盟のグローバルな性質」をあげ、「日米両政府は、日米同盟を継続的に強化する。各政府は、その国家安全保障政策に基づき、各自の防衛態勢を維持する。日本は『国家安全保障戦略』及び『防衛計画の大綱』に基づき防衛力を保持する。米国は引き続き、その核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じ、日本に対して拡大抑止を提供する。米国はまた、引き続き、アジア太平洋地域において即応態勢にある戦力を前方展開するとともに、それらの戦力を迅速に増強する能力を維持する」とした。

 安倍・自公政権は、昨年七月に集団的自衛権行使容認の閣議決定を行い、そのための戦争諸法案をこの通常国会で強行成立させようとして、五月中旬に法案を提出する。
 その法案がまだ出ず、国会論議が始まってもいないのに、安倍内閣は内容先取りのガイドラインの再改定を米側と合意した。
 そして連休中の安倍訪米では、戦争法制の成立をオバマに誓うということまでやっている。これは、憲法違反であり、本来なら安保条約そのものの再改定を要するものだ。
 安倍政権は、アメリカの侵略的な軍事戦略に従い世界のいたるところで尖兵となることによって、その見返りに対中国戦争における米軍の介入を期待している。

オールオキナワからの反撃

 オバマ政権のアジア回帰路線では、中国の海上進出の阻止が日本の役割であり、沖縄の米軍基地機能強化と自衛隊による支援、そして新たに南シナ海への自衛隊の進出ももくろまれている。

 基地NO!を掲げて圧勝した翁長県知事の誕生、総選挙(選挙区)での基地反対派の全勝という沖縄の民意はいっそう鮮明となった。
 にももかかわらず、ガイドライン再改定にさいしての共同文書では、米軍普天間基地の固定化回避のためには辺野古への「移設」が「唯一の解決策」と明記し、安倍政権は辺野古基地建設に向けての動きを活発化させている。

 全国紙による四月の世論調査では、名護市辺野古への移設を進める政府の姿勢を「評価しない」とする声が多数を占めた。辺野古反対の声は沖縄県内だけでなく全国に広がっている。

  五月二四日には、大規模な国会包囲ヒューマンチェーンが予定されている。同実行委員会は四月二六日、渋谷・みやした公園で、一〇〇〇人が参加して「沖縄・辺野古に基地はいらない!渋谷サウンドパレード」を行い、にぎやかにパレードをおこなった。
 国会包囲ヒューマンチェーンには、沖縄の民意にこたえる一万人以上の人の大結集を実現しなければならない。

 沖縄・辺野古に基地はいらない!
 国会包囲を成功させよう!


秘密法保護法 廃止へ!
 
     
 12・6を忘れない国会前行動

 悪法・秘密保護法の廃止に向けて闘いは粘り強く続いている。
 連休明けの五月七日、衆院第二議員会館前では、秘密保護法廃止へ!実行委員会による「12・6を忘れない6日行動」が行われ、約五〇名が参加した。
 はじめに高田健さんがあいさつ。安倍政権は、明文改憲の準備と解釈改憲をともにすすめようとしている。この通常国会で戦争法制をなんとか成立させようとしている。戦争法制と秘密保護法は一体のものだ。政権の危険な動きに反対する5・3憲法集会は大きな成功をおさめた。これから改憲、戦争法案反対とともに秘密法廃止の声をいたるところで盛り上げていこう。
 秘密保護法対策弁護団の海渡雄一弁護士が発言。憲法違反の秘密保護法の廃止の意義は広く理解されはじめてている。これは息の長い闘いである。秘密法は国際人権基準からみてあまりにひどいものだ。国連人権理事会・特別報告者(思想・表現の自由)であるデービッド・ケイ氏は、日弁連を表敬訪問した時に、秘密法についてさまざまな危惧があると言っていた。ケイ氏は外務省も訪問した。国連から日本政府への勧告が出される可能性は極めて高い。
 参議院予算委員会で社民党の福島みずほ議員の質問のうち、「戦争法案」「鉄面皮」という発言に対して、削除ないし修正の要求がだされた。さすがにそんなバカなことはできなかったが、これは安倍政権の法案の本質を突いたから与党は躍起になったのだ。安倍政権にはことばのごまかしが多い。これにはあの小林よしのりも「福島のほうが正しい」と言っている。
 イギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説「一九八四年」では、全体主義の情報管理社会のことが描かれているが、そこではデマをふりまく官庁が「戦争は平和なり」「自由は隷従なり」「無知は力なり」などのスローガンを繰り返しているが、まるで安倍内閣のやり方をほうふつとさせるものがある。
 新聞労連の高橋直人中央副執行委員長は次のように述べた。新聞人は、戦後の出発にあたって「戦争のためにペン、カメラを持たない、輪転機を回さない」と誓った。いまこそ、平和のために、ペン、カメラを持ち、輪転機を回そうと思う。
 出版労連、秘密保護法廃止をめざす藤沢の会、マスコミ九条の会、キリスト者平和ネット、国民救援会からの発言があった。
 国会からは、共産党の清水忠史衆院議員、仁比聡平参院議員、社民党の福島みずほ参院議員が、秘密法廃止までともに闘おうとあいさつした。
 最後に国会へ向けて「安倍政権の暴走を止めよう」「知る権利奪う秘密法廃止」「情報の国家独占・隠ぺい法反対」「戦争準備の秘密法反対」「警察国家反対」などのシュプレヒコールをあげた。
 午後からは国会議員要請行動が行われた。


日比谷メーデー安倍政権と闘い

     
平和と民主主義を守ろう

 五月一日、第八六回日比谷メーデーが開かれ七〇〇〇人が参加した。今回のスローガンは「働く者の団結で生活と権利、平和と民主主義を守ろう!―★労働法制の改悪反対!一日8時間労働制の破壊を許さない!★福島を忘れない! 原発の再稼働反対、すべて廃炉へ!★集団的自衛権の行使反対! 戦争国家体制を許すな!」。
 オープニングは日比谷メーデー合唱隊による「座り込めここへ、ここへ座り込め、腕組んで、歌うたい、旗かかげ、ここへ」。辺野古新基地建設に反対してゲート前で歌われる闘いの歌だ。
 主催者を代表して鎌田博一国労東京地本委員長があいさつ。安倍政権下で、改憲、ガイドライン改定、沖縄新基地建設、原発再稼働など日本を戦争する国にする危険な暴走がつづいている。いまわれわれは、平和か、それとも戦争と貧困なのかの分岐点にいる。安倍政権は、経済成長のためには労働規制改革・緩和が必要だとしている。非正規雇用労働者、外国人労働者、とくに女性や若者の貧困化が進んでいる。労働法制の改悪を阻止し、JALをはじめとするすべての争議の勝利を勝ち取ろう。われわれは、平和と民主主義、労働者の権利と生活を守り抜くためにいっそう団結連帯を強めていかなければならない。
 つづいて、武藤弘道都労連委員長の連帯挨拶、福島みずほ社民党参議院議員の来賓あいさつ。
 韓国民主労総と全労連などの中央メーデー実行委員会からの連帯メッセージが紹介された。
 決意表明では、郵政ユニオン二〇条裁判、全国日系ブラジル人ネットワーク、全国一般東京労組フジビ分会、5・3憲法集会実行委員会から訴えが行われた。
 メーデー・アピールを拍手で確認し、ふたつのコースに分かれてデモに出発した。


マイナンバー法 10月施行 来年1月運用開始

      
国民監視強化と情報ダダ漏れの危険

 個人を識別する共通番号「マイナンバー」を割り当てる国民総背番号制度のためのマイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)は、今年二〇一五年一〇月に法施行で国民への番号割り当てを行い、来年二〇一六年一月に運用を開始する。国民総背番号制である共通番号制は、「個人番号」と「法人番号」からなる。このうち「個人番号」を「マイナンバー」(私の背番号)と呼ぶ。
 安倍政権は、国民生活を支える社会的基盤として、社会保障・税番号制度を導入し、行政効率の向上をあげるといっている。預貯金口座への付番が、ペイオフ対策や社会保障の資力調査のためなどとも言っている。しかし、「小さく産んで大きく育てる」のが官僚たちの常套手段だ。
 この制度は、一人ひとりを管理しさまざまな情報を組み込む非常に危険な国民管理制度である。
 だが、ほとんどの人はこの制度のことを知らない。この「知らない」状況のうちになんとか導入させてしまおうというのが安倍の狙いだ。
 まだ、制度は施行されていない。にもかかわら、個人情報保護法の改正法案、番号法の改正法案及びこれらの関連法案が通常国会に提出された。
 個人情報保護法改正法案では、パーソナルデータの利活用に向けた、適切な規律の下での個人情報等の有用性確保と個人情報の保護の強化等を盛り込んでいる。 番号法改正法案では、個人番号(マイナンバー)の利用範囲について金融分野、医療分野等への拡充を図っている。
 政府は大企業の強い要請をうけて、前のめりの姿勢だ。

 改正案が衆院内閣委員会で審議が始まった五月八日、衆議院第二議員会会館で、「共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会(共通番号いらないネット)」の主催による「これでいいの?番号制度 共通番号いらないネット 院内集会第2弾」が開かれた。
 はじめに、ネットの会員による衆院内閣委員会の審議傍聴の報告、つづいて共産党の池内さおり衆議院議員、社民党の福島みずほ参議院議員のあいさつが行われた。衆院内閣委員会の審議は、早ければ一五日に採決が行われ、衆院本会議での採決、参院に送られるという緊迫した状況が報告された。

 石村耕治白鴎大学教授(PIJ―プライバシー・インターナショナル・ジャパン代表)が「不安/危ない共通番号 事業者に負担、ダダ漏れ必至」と題して講演した。
 世界的にみると、番号制モデル(方式)は三つに分けることができる。セパレート・モデル(方式)は、運転免許、パスポートといったように分野別に異なる番号を限定利用する方式で、ドイツや現在の日本がそうだ。Aセクトラル・モデル(方式)は、第三者機関を介在させて秘匿の汎用番号で紐つけするかたちで分野別限定番号を生成・付番し、各分野で利用する方式で、オーストリアなどがそうした方式だ。Bフラット・モデル(方式)は、一般に公開(見える化)されたかたちで共通番号を官民幅広い分野へ汎用する方式で、ハッカーやなりすまし犯罪などが予想され危ない危険な方式だ。アメリカ、スウェーデンや韓国などがこの方式だが、アメリカでは、「負の遺産」と化し、徐々にセクトラル・モデルに移行してきているが実情だ。ところがわが国が採用する共通番号制は、時代遅れとされるフラット・モデルである。
 これまでの住民基本台帳ネットでは、「非公開の住民票コード」は、原則として本人と関係行政機関だけが知ることのできるシステムだった。これが、「公開の共通番号」では、本人と関係行政機関等以外の第三者も容易に知ることができる性格の番号となる。たとえば税務事務では、本人の番号が企業・取引先に番号を提示したり、法定調書へ番号を記載して、課税庁へ提出され、名寄せ・照合などが行われる。この仲介の民のところで漏えいする危険が大きく、番号の悪用・漏えいによる「なりすまし」の可能性は大きい。我が国は人口が一億二六〇〇万人、法人企業四二一万社うち小規模法人企業は九割弱、個人事業者が二四三万だ。企業従業員数四〇一三万人うち小規模企業の従業者数は約四分の一だ。これらすべてが情報の乱用統制を扱えるのか。日々の仕事で手いっぱいなのが実情であり、情報のダダ漏れは必至といえる。
 パスワードを頻繁に変える時代に生涯不変の見える共通番号・マイナンバーを一生涯にわたり国民に汎用させるのは今世紀最大の愚策であり、明らかに時代遅れでもある。こうした時代の要請を直視しようとしない政治姿勢は、大きな不幸をうむことにつながる。安全神話が説かれていた原発は、いまや国民のマインドコントロールが解け、想定外ではすまされない実情にある。ましてや共通番号にいたっては、導入する前からその欠陥が明らかなのである。本来リコールすべき構想であるのに、これをすすめるのは愚策である。
 また「社会保障と税の一体改革」はどこかに吹っ飛び、国民総背番号制の導入だけが決まったことも解せない。
 政府は共通番号を段階的に番号の利用範囲を広げていくとしている。しかし、導入段階「限られた行政分野+関連民間分野」、三年後の第二段階「あらゆる行政分野+関連民間分野」、第三段階「民間の自由な利用」と広げて行けば行くほど、この番号は極めて危険な成りすまし犯罪ツールと化すことは目に見えている。
 もう一つの問題は公定の個人番号ICカードの導入である。顔写真入りの見える個人番号・マイナンバーが記された個人番号IC カードをあちらこちらに提示してサービスを受ける仕組みは、成りすまし犯罪の大量発生につながるおそれがある。時代錯誤の人権を蝕み、成りすまし犯罪ツールにもなる共通番号や個人ICカードの廃止、分野別番号の仕組みへの転換に向けての運動が求められている。

 神奈川県保険医協会事務局主幹の知念哲さんは、医療の市場化・産業化による「社会保障個人会計」制の導入とマイナンバー制の関係についての問題点について報告した。
 共通番号制度を考える世田谷の会の原田富弘さんは、世田谷区行政への申し入れなどの活動について報告した。
 最後に共通番号いらないネットから、当面の行動についての提起が行われた。

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声明・共通番号の利用拡大をめざす番号法改正に反対する


 私たちは共通番号(マイナンバー)制度に対し、国家による管理・監視の強化と基本的人権の侵害、個人情報の大量漏えいや成りすまし被害の発生、医療・社会保障の選別的な利用抑制と負担の強化、住民自治と自己情報コントロール権の侵害などの危険を指摘し反対する全国の市民・議員・研究者・医師・弁護士などをネットワークし、共通番号の廃止をめざして、2015年2月20日、共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会(略称:共通番号いらないネット)を結成した。
 私たちは、政府が3月10日に国会へ提出した、番号利用を拡大する改正案に反対し撤回を求める。

1 番号制度実施前にもかかわらず利用拡大する欺瞞的姿勢に抗議し、撤回を求める
 番号法が審議された2013年第183国会では、政府は預貯金への付番に慎重な答弁を繰り返していた。また番号法附則第6条の法律施行後3年を目途とした利用拡大規定についても、3年間の施行の状況をみて知見を集めて検討を加え必要があると認めるときには拡大すると答弁していた。施行もされないうちに利用拡大を提案することは、国会答弁を否定するものである。

2 実施準備が遅れているなかでの利用拡大に反対し、実施の延期を求める
 共通番号制度実施を前にして準備の遅れがあらわになっている。国は未だに利用事務の省令も整備できていない。そのため自治体の準備も遅れ、民間事業者の多くは準備すらはじめていない。 番号制度を7割が知らないという内閣府の調査結果を受けて政府はあわててPRを始めたが、「実施に間に合うのか」「このまま実施したら漏えいなどが発生するのではないか」「こんな制度だとは知らなかった」などの声が広がっている。実施の延期と制度の見直しが必要な中でさらなる利用拡大は許されない。

3 不公平の拡大、個人番号の悪用、監視の強化につながる預貯金への付番に反対する
 政府はペイオフ対策や社会保障の資力調査と税務調査のために、預貯金口座に個人番号を付番し国が預金情報を把握できるようにすると説明している。当面、新規口座開設に限定し任意で個人番号の告知を求めるとしているが、いずれ告知を義務化しようとしている。
 しかし既存の口座すべてへの付番は不可能であり、把握しやすいところからの徴税の強化や、不公平な資産調査・税務調査になる危険性が指摘されている。また預金口座への付番は個人番号の民間での流通を拡大し個人番号の悪用や漏えいの危険を増大させるとともに、国家による個人生活の監視をもたらす。

4 保護措置が未整備のまま医療分野でのうやむやな利用拡大に反対する
 プライバシー侵害への不安が強い医療・健康情報は、番号法制定時点では利用事務から外し、医療分野についての個人情報保護措置を整備した上で利用を検討することになっていたが、未だに保護措置も利用の内容も仕組みも決まっていない。特定健診データは医療プライバシー情報であり、医療分野の個人情報保護措置を整備しないままうやむやに利用拡大することは許されない。

5 税と社会保障での利用から逸脱する利用範囲の拡大に反対する
 番号制度は当面、税・社会保障・災害対策の分野に利用を限定すると説明して番号法は成立したが、今回この利用分野とは言えない中所得者向け特定優良賃貸住宅の管理にもうやむやに利用拡大しようとしている。さらに条例事務によりうやむやに自治体から利用拡大をはかろうとしているが、自治体は国の準備の遅れで利用開始に向けた準備を間に合わせることさえ苦慮しており、利用拡大を求めるべきではない。

6 個人情報保護法との一体法案に反対する
 特定個人情報保護委員会の個人情報保護委員会への改組などを除いて、両法案を一体で改正しなければならない理由はない。多くの問題がある番号法の利用拡大は施行後に検討し、別法案で審議すべきである。

 2015年4月23日

   共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会(略称:共通番号いらないネット)


狂 歌

   ぐんこくへ閣議決定粛しゅくとアベ殿さまの将軍きぶん

   米軍の租借地がまゝ七十年こころこほらし辺野古は戦時

                            ヽ 史


複眼単眼

     
一点共同のこと

 〜小林節氏の評価に引きつけて  安倍政権の改憲暴走が極度にすすんでいる下で、共同行動の必要性がさまざまな分野で語られている。この暴走をなんとかしなければならないという声が広がっており、そのためには、現在、さまざまな立場ですすめられている運動が大きく共同して、反撃する必要があるという声だ。これは大事なことだ。
 特に共産党系の運動の中では「一点共同」などという形で強調されている。
 この問題については、多様な方向から真剣に議論されるべき課題が多いが、いま、それを全面的に語る用意がない。そこで、憲法運動との関連で、最近、気がかりな問題を一つに絞って触れておきたい。
 それは著名な憲法学者・慶応大学名誉教授の小林節氏の評価に関連する問題だ。よく知られていることだが、小林氏は自分を「私は紛れもなく『改憲』派であるが、それでいて自称『護憲』的改憲派である」と規定する。
 雑誌「文藝春秋」五月号が、この小林氏と東京都知事の舛添要一氏(自民党の第一次改憲草案のとりまとめ責任者)、国際政治学者の三浦瑠璃氏(徴兵制必要論者)の鼎談を載せ、「自民改憲草案は知能レベルが低すぎる、安倍首相よ、正々堂々と憲法九条を改正せよ、『立憲主義』を知らない、『道徳』と『法』の区別もつかない、そんな議員に国憲を定める資格があるのか」という見出しを付けたが、読めばわかるようにこれはほとんど小林氏の主張するところだ。
 小林氏は鼎談の最後で、「(自民党の憲法改正)第二次草案には問題が山積みですが、九条に限ればおおむね賛成できます。……まずは最優先である第九条に取り組むべきでしょう」と締めくくっているように、明白な憲法九条改憲論者だ。
 にもかかわらず、このところ、「九条の会」の一部も含めて、市民運動の一部では、この小林氏への評価が高く、積極的に講師にまねくところまである。
 小林氏が「おおむね賛成だ」という自民党の第二次憲法改正草案の第九条は有名な「国防軍」保持論で、とんでもない代物だ。
 人々が混乱するのはこの小林氏が「九六条改憲論」に反対しているからだ。彼は安倍らのこのやり方は立憲主義に反しているという立場だ。こういう小林氏を安倍の九六条改憲論がいかに酷いかの例として使うのは結構だが、これで小林氏と一点共同するなどといって、持ち上げるのはどうだろうか。
たしかに小林氏もちょっと狡いところがある。こんなことをいう。
 「この七〇年も戦争を経験していない……これは憲法九条が私たちに暮れた贈り物である。いま、これも破壊しようとしている安倍政権は、愚かである」(九条の会東京連絡会ニュース三七号)。これだけを読むと、小林氏は九条擁護論者かと思ってしまいかねない。場によっていうことをこんな風に言うことを使い分けるのはまともな学者がやることではない。
 「一点共闘」論の危険性はこうしたことに出てくる。筆者も一般的に一点共闘論に反対しないが、問題は社会のどういう矛盾に関する一点共同なのかだ。社会の大きな矛盾で立場を明確に異にするが、他の比較的小さい矛盾で共通するとき、それで共闘することが、大きな矛盾を解決するうえで妨げになるような場合は、慎重に考えた方がいいのである。
 小林氏で言えば、憲法九条という憲法問題で重要な課題で正反対なのに、憲法九六条で一致するから共闘するかどうかの問題だ。そういう場合もあると思うが、ことは慎重に対処したほうがいいと思う。
 実はこうした傾向は小林氏に対してあるだけではない。例えば新右翼の鈴木邦男氏への評価も似ているところがある。このところ、鈴木氏は市民運動のパネリストなどにしばしば引き出され、評価されている。困ったことではある。  (T)