人民新報 ・ 第1329号<統合422号(2015年9月15日)
  
                  目次

● 戦争法案を絶対に廃案へ!  安倍政権を追いつめ、打倒しよう

● 生涯派遣と格差拡大・貧困化をもたらす改悪・労働者派遣法

● 8・30戦争法案を廃案へ!アベ政治を許さないおおさか大集会  25000人が「戦争法案反対! 

● 全争議の解決なくして株式上場の資格なし   日本郵政の株式上場に異議あり!  郵政労働者ユニオンが全国行動

● 辺野古に基地はつくらせない  翁長沖縄県知事は埋立承認の取り消しの方向  院内集会「ストップ埋立 守ろう辺野古・大浦湾」

● マイナンバーの危険性は明らか  共通番号制度の中止を求める!

● えん罪防止を口実にした警察・検察の権力拡大  盗聴法・刑訴法改悪法案を廃案へ

● 書籍紹介  /  澤地久枝 (著) 「14歳〈フォーティーン〉 満州開拓村からの帰還」

● KODAMA  /  ヘイトスピーチ=差別の娯楽化とそれに抗するもの

● 時事狂歌






戦争法案を絶対に廃案へ!

      
 安倍政権を追いつめ、打倒しよう

 8月30日、「戦争をさせない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」(戦争をさせない1000人委員会、解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会、戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター)による「戦争法案廃案! 安倍政権退陣!国会10万人・全国100万人大行動」が文字通り「総がかり」で取り組まれた。国会周辺には12万人が大結集し、国会を取り囲み、霞が関、日比谷一帯も参加者でいっぱいとなった。国会正門前車道も人であふれるようにまでなった。
 国会周辺行動に呼応する行動は全国四七都道府県一三〇〇か所以上で取り組まれた。
 雨の中の国会正門前集会には民主党の岡田克也代表、共産党の志位和夫委員長、社民党の吉田忠智党首、生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎共同代表がそろい、戦争法案に反対する決意を表明した。また宗教者、学者、SEALDsなどの学生や青年、ママの会などのからのアピールがつづいた。この状況は国内外のマスコミでも大きく報道され、「戦争する国」づくりに暴走する安倍内閣に大打撃を与えた。これに対し、安倍、警察、右派マスコミなどは行動の大成功の意義を極力低めようと姑息な手法を使った。警察は集会の結集人数を大幅に少なく発表したが、それは、当日の最寄りの地下鉄駅の乗降客数の無視、また警察調査は一部のエリアだけのものであることがあきらかになった。
 その後も、総がかり行動実行委員会は、定例の木曜国会前行動に加えて、8日には東京・新宿駅西口で「戦争法案廃案!安倍政権退陣!大街頭宣伝」、9日の日比谷野外音楽堂で5500人集会など連続的な闘いを展開している。 
 安倍の戦争法案は、紛れもない憲法違反の法案である。そもそも安倍らは、「戦争する国」づくり=米軍の世界支配戦略に積極的に加担し、アメリカの戦争に参戦国化することにより自らの政治軍事大国化を図るためには、九条をはじめとする日本国憲法を「改正」しなければならないと主張してきた。それが2012年の自民党「日本国憲法改正草案」だったはずだ。しかし、世論の反発が強いと見るや改憲しやすいとみて96条改正から手を付けようとした。それも危ないとなるや、究極のだましのテクニックとして今回の集団的自衛権行使の閣議決定、それをテコにした戦争法案のもくろみがある。無理なものに無理を重ねるから、答弁・説明が支離滅裂になる。
 こうして立憲主義に反する安倍内閣の暴走はかつてない広い層からの痛烈な批判をあびることとなった。憲法学者から歴代の内閣法制局長官、そして最高裁判事も批判を始めた。「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反と言わざるを得ない」とする山口繁元長官や元判事、そして現職の最高裁判所山本庸幸判事(元内閣法制局長官)までも、解釈変更による集団的自衛権行使の容認は、「私自身は難しいと思っている」と述べている。自民党の高村正彦副総裁は「憲法の番人は最高裁判所であり、憲法学者ではない」と主張してきたが、その最高裁判事たちも違憲と指摘しているのだ。安倍政権与党が国会で多数の議席を占めているとはいえ、立憲主義を破壊することは決して許されない。
 戦争法案は「説明」をすればするほど、それは支離滅裂なものとなり、法案審議が参院にきてますますそれが際立ってきている。参院安保法制特別委員会では政府答弁の混乱などで100回を超えて審議が中断するという前代未聞のことがおこっている。とくに所管大臣である中谷元防衛大臣がひどい。
 戦争法案の今の国会で成立させることに賛成より反対は大きく上回っているし、また、時事通信が4〜7日に実施した世論調査によると、安倍内閣の支持率も38・5%で、前月比1・2ポイント減となった。戦争法案、そして沖縄・辺野古基地建設などの問題が響いているのだ。
 自民党内からも参院での強行採決の方針だけでなく、もう一度衆院に戻して三分の二の賛成で可決という「60日ルール」の可能性なども言われているが、安倍はなんとしても今国会中での成立を強行するとしている。それが、オバマ米大統領に誓ったことの実現であるし、もし法案不成立の時には安倍内閣は崩壊に追い込まれるからだ。
 だが、安倍の戦争法案の早期成立という当初のもくろみは破産し、9月27日の会期末までの日程が迫って来ている。
 国会周辺をはじめ全国で様々な行動が強化され広がっている。 

 いま、闘いは最大の山場を迎えている。全力で、戦争法案廃案!安倍内閣打倒!


生涯派遣と格差拡大・貧困化をもたらす改悪・労働者派遣法

 労働者派遣法改悪案は、広がる反対の声を圧殺して、九月九日参議院本会議で、自民・公明両党と次世代の党、新党改革などの賛成(民主党、共産党、維新の党、社民党、生活の党などが反対)で可決された。参議院で9月1日の施行日を9月30日に修正するなどの法案修正が加えられたため、衆議院に送り返され、与党は11日に衆院本会議で採択・成立を強行した。

 政府・与党は、派遣社員として働く人、派遣先企業、人材派遣業界の三者にとってメリットがある改正だなどと主張しているが、なにより派遣労働者自身からの批判と不安の声が大きい。一方で、人材派遣業からの強力な要望がその実質をものがたっている。
 労働者派遣法改悪案は、専門26業務の枠が取り払われ、一律に派遣期間は3年間とされるなど期間制限をなくし、どこでも、いつまでも、派遣先企業が派遣労働者を使い続けることを可能にするものであり、無期限に使い続けることができるようになる。
 3年の派遣期間規定によって、派遣先・派遣元会社が必要がないと考える派遣労働者に対して、合法的に雇い止めを通告できるようになる。また派遣先・派遣元会社が続けて仕事をさせたい派遣労働者は、部署を変えるだけで使い続けることができるというのだ。
 なにより安い賃金、劣悪な労働条件、解雇のしやすさなどによって、派遣労働者が増加させられ、そして今回の一段の法改悪による非正規雇用労働者の激増は、その分だけ資本のコスト削減、儲けの増加につながる。
 大企業の利益追求のための安倍内閣による労働者派遣法改悪案は、生涯派遣の容認、いっそう深刻な格差拡大と貧困化をもたらすものであり、断じて許すことはできない。
 そして安倍と大企業は、派遣法の改悪に続いて、過労死促進の労働時間法制の改悪、そして争議の金銭解決の導入などをもくろんでいるのだ。

 8月25日には、衆議院議員会館で、真夏の緊急院内集会「派遣法・労基法改悪をみんなの声で廃案に」が開かれた。主催は、日本労働弁護団、派遣労働ネットワーク、ブラック企業対策プロジェクト、返せ★生活時間プロジェクト、過労死弁護団全国連絡会議。
 はじめに労働弁護団の鵜飼良昭会長が労働弁護団の派遣法「改正」案の廃案を求める意見書(8月1日)など弁護団としての立場を紹介し、速やかな廃案を実現しようとあいさつした。
 棗一郎弁護士は、戦争法案反対の闘いと結合して戦派遣法改悪反対の運動をもりあげていこうと述べた。
 各参加団体からの報告と決意表明がつづき、国会議員は国会の内外で共に闘おうとあいさつ。そして「手をつないでアピール!」などで、廃案に向けての運動の前進を確認した。

 この間、全労連、全労協、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)など幅広い労働組合や諸団体でつくる「安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション」(雇用共同アクション)は派遣法廃案を求めて闘ってきた。連合も労働法制改悪反対の動きをはじめた。この共同行動の経験は大きい。
 労働者、労働組合の力を大きく合流させて、雇用の安定と労働時間短縮など労働者の命と生活を守るための規制強化など真の労働法制改正の実現のために闘っていこう。


8・30戦争法案を廃案へ!アベ政治を許さないおおさか大集会

      
 25000人が「戦争法案反対! 

 時折降りだす雨も集会開催時にはあがり、扇町公園は25000人の市民で埋め尽くされた。この集会は、大阪で初めての「総がかかり」の陣形でとりくみ、実現できた画期的な集会である。司会は、サドルとシールズ・関西で活動する若者二人が行った。最初に呼びかけ人あいさつとして大阪大学・木戸衛一さんと2人の阪大生が登壇した。政党からは民主党・辻元清美衆議院議員、共産党・辰巳コータロー参議院議員、社民党・又市征冶参議院議員があいさつを述べた。
 続いて、ゲストスピーチとして創価学会会員の女性が紹介されスピーチを行った。女性は、「公明党は、支援者の理解が進んでいないといっているが、私たちは理解したからこそ反対するのです。恩師の教えを今こそ実践する時が来ているのだと思っています。みなさんも、回りにいる創価学会の人らにめちゃ、ええやんか、みんなで力を合わせて戦争法案反対の声上げようと言ってほしい」と語り会場から大きな拍手が沸き起こった。
 デモの第一陣がスタートする中、集会は継続し、笑福亭竹林さんなど呼びかけ人のあいさつ、そして大阪憲法会議、戦争させない大阪1000人委員会から団体あいさつが行われた。デモは、大阪市内を3つのコースに分かれ、元気に「アベはやめろ!戦争法廃案!」をコールした。(大阪Y)


全争議の解決なくして株式上場の資格なし

  
 日本郵政の株式上場に異議あり!  郵政労働者ユニオンが全国行動

 日本郵政株式会社は、昨年12月に「日本郵政グループ3社の株式上場について」を発表し、今年の3月31日には東京証券取引所に自社及び金融子会社2社の3社同時上場の予備申請を行い、東証は9月10日に株式上場を正式に承認し、11月4日に売り出されることとなった。それは、「史上最大級の上場」といえるものになる。
 しかし、日本郵政グループの収益の大半は金融子会社2社が占めているのであり、その金融子会社も同時に上場することによって郵政のユニバーサルサービスはどうなるのか、また郵政労働者の雇用・労働条件への影響はどうなるのかが明らかになっていない。

 郵政産業労働者ユニオンは、東証の宮原幸一郎社長に対して「日本郵政グループの株式上場にあたっての要請書」(六月二二日)を申し入れた。そこでは、@「日本郵政グループの中核的子会社である金融2社の上場は、金融ユニバーサルサービスの確保の観点からも投資家保護の観点からも認めない」こと、A「株式上場にあたっては企業のコーポレートガバナンスが適切に整備・機能しているかが問われ」として、「日本郵政グループ会社においては、@パワハラ・セクハラ事件A非正規雇用労働者の解雇事件、B正社員と非正社員との待遇差別是正裁判、C不当労働行為事件など裁判や労働委員会の場で30件を超える争いが続い」ていることから「こうした点からも株式上場申請を認めない」ことを求めた

 八月二七日、郵政ユニオンは 「郵政の株式上場に異議あり!」の全国統一行動を展開した。一一時半からは郵政本社前行動が開始された。
 はじめに日巻直映委員長が主催者あいさつ。株式上場を前に、ユニバーサルサービスの大幅な後退、郵便配達日の縮小、過疎地の個別配達の見直し、また三種郵便料金などの値上げという議論が進められている。そのしわ寄せは一方的だ。また郵政は最大の非正規雇用企業であり、また労働問題のコンプライアンスでも問題が非常に大きい。現在郵政の職場では多くの不当労働行為などが蔓延している。ユニバーサルサービス破壊に反対するとともに、争議の解決にいっそう力をいれ勝利解決を実現しなければならない。
 つづいて、中村知明書記長が、上場問題の報告・提起をおこなった。
 郵政の株式上場で郵便、金融のユニバーサルサービスが将来にわたり維持される保証はどこにもない。株式上場にあたってはその審査基準として、経営の継続性・収益性だけではなく、事業の健全性や内部管理体制(ガバナンス)も厳しく審査されることになるが、今、日本郵政グループ各社では、多くの労働争議がたかわれている。さらに社員構成における非正規雇用率も約5割で、正社員と非正規社員との待遇の格差も広がっている。勤務時間も有名無実化し、サービス労働が蔓延し、パワハラ・セクハラ事件も後を絶たない。今年初めに日本郵政グループで実施した「第2回社員満足度調査」で今回上場予定のゆうちょ銀行は不満足が53・1%と過半数を超える結果となった。社員の半数以上が「不満足」と回答する会社に上場の資格はあるのか。私たちは改めて会社に株式上場するならばすべての郵政争議を解決することを求めるとともに、上場基準を満たす経営の健全性も強く求める。郵政事業・郵便局は、国民共有財産であり、改正郵政民営化法の参議院附帯決議は、「これらの株式が国民全体の財産であることに鑑み、その処分に当たっては、ユニバーサルサービスの確保に配慮する」といっている。株式上場は金融と通信のユニバーサルサービスの後退をもたらすことは明らかであり、郵政ユニオンは日本郵政の株式上場に反対し、そのための郵政内外のとりくみをさらに推し進めていく。
 集会では、全労協金澤壽議長、全労連根本隆副議長などからの連帯あいさつ、郵政各争議団の決意表明、そして戦争法案反対行動のアピール、最後に今後の行動提起が行われた。


郵政での裁判・労働委員会事案
     @郵政・労働契約法20条裁判
     A非正規社員の65歳解雇無効裁判
     Bさいたま新都心郵便局過労自死裁判
     C神奈川県 青葉郵便局雇い止め・解雇撤回裁判
     D東京都 銀座郵便局再雇用拒否撤回裁判
     E日本郵便本社・解雇撤回裁判
     F千葉中央郵便局雇い止め・解雇撤回裁判
     G広島県 福山郵便局セクハラ・パワハラ裁判
     H北海道?空知郵便局労災認定却下撤回裁判
     I北海道滝川局不当労働行為(労働委員会に訴え出た案件)
     J北海道 苫小牧局不当労働行為(同)
     K埼玉県?越谷郵便局不当労働行為(同)
     Lゆうちょ銀行エキスパート社員解雇裁判
     M日本郵便輸送不当労働行為(同)


辺野古に基地はつくらせない  翁長沖縄県知事は埋立承認の取り消しの方向

                 院内集会「ストップ埋立 守ろう辺野古・大浦湾」


 二〇一三 年一二月二七日、沖縄県前知事の仲井眞弘多は、政府に丸め込まれ、金に目がくらんで、「普天間基地の移設先は少なくとも県外・国外」というみずからの公約を反故にし、沖縄防衛局の辺野古埋立申請を承認した。仲井眞の裏切りへの県民の怒りは、二〇一四年一一月一六日の知事選で、「辺野古新基地建設を許さない」を公約とした翁長雄志那覇市長が、現職の仲井眞を一〇万票もの大差で破って当選したことにあらわれた。
 そして、仲井眞の民意を踏みにじっての辺野古埋め立て承認に対し、翁長県政の「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」(二〇一五年一月二六日発足)は、七月一六日、辺野古承認に「瑕疵(かし)あり」の報告を翁長県知事に提出した。これをうけて翁長知事は九月にも取り消しの態度を表明するとみられている。普天間基地即時撤去・辺野古新基地建設阻止の闘いはまた一歩重要な前進をかちとった。

 八月二六日、参議院議員会館で「ストップ埋立 守ろう辺野古・大浦湾 沖縄県第三者委員会・桜井国俊沖縄大学名誉教授を迎えて」が開かれた。
 第一部は、「辺野古・高江を守ろう!NGOネットワーク」の設立集会。これは、辺野古・大浦湾と高江における新たな基地建設に反対し生物多様性を守りながら 持続可能な開発が行われることを目指すNGOの緩やかなネットワークで、FoEJapan(エフ・オー・イー・ジャパン)、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン、ラムサール・ネットワーク日本、ピースボートなど一四団体によって構成されている。設立趣意書では「私たちは辺野古・大浦湾と高江における新たな基地建設に強く反対し、既存の米軍基地が返還され、豊かな自然を世界自然遺産に登録して、生物多様性を守りながら持続可能な開発が行われることを目指す」としている。

 第二部は、第三者委員会の委員を務めた沖縄大学名誉教授の桜井国俊さん(沖縄環境ネットワーク世話人)が「海は誰のものか―辺野古埋め立て承認の問題点」と題して記念講演を行った。
 第三者委員会は「埋め立て承認手続きに関し、法律的な瑕疵を検証すること」であり、大浦湾・辺野古海域の埋立ての是非を判断することとではない。公有水面埋立法という大正一〇年の法律だ。ここでは、国が埋立を行おうとするときには、知事の承認を得なければならない。また、昭和四八年の改正で、環境への配慮が入った。これが埋め立て承認申請に先行する環境評価書とそれに対する知事意見が判断の基準になる。
 第三者委員会の報告書は、検証結果は「以上に検討したとおり,本件公有水面埋立出願は,以下のように公有水面埋立法の要件を充たしておらず,これを承認した本件埋立承認手続には法律的瑕疵がある」とした。それは、第一に、@本件埋立対象地についての「埋立ての必要性」については合理的な疑いがあること、A審査において「普天間飛行場移設の必要性」から直ちに本件埋立対象地(辺野古地区)での埋立ての「必要性」があるとした点に審査の欠落があること、Bその審査の実態においても審査が不十分であることなどから、本件埋立承認出願が「埋立ての必要性」の要件を充足していると判断することはできず、法的に瑕疵があると考えられる。
 第二に「国土利用上適正且合理的ナルコト」との要件についても、本件埋立により得られる利益と本件埋立により生ずる不利益を比較衡量して、総合的に判断した場合、「国土利用上適正且合理的ナルコト」とは言えず、法的に瑕疵がある。
 第三に、公用水面埋立法第4条第1項第2号については,@知事意見や環境生活部長意見に十分に対応しておらず、A環境保全図書の記載は定量的評価ではなく生態系の評価が不十分であること、B具体性がなく、明らかな誤りの記載がある等様々な問題があること等からして、その環境保全措置は,「問題の現況及び影響を的確に把握」したとは言い難く、「これに対する措置が適正に講じられている」とも言い難い。さらに、その程度が「十分」とも認め難いものであり、「其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」の要件を充足していないものであり法的に瑕疵がある。
 第四に、本件埋立承認出願が「法律ニ基ク計画ニ違背」するか否かについて、十分な審査を行わずに「適」と判断した可能性が高く、「生物多様性国家戦略 2012―2020」及び「生物多様性おきなわ戦略」については、その内容面において法第4条第1項第3号に違反している可能性が高く、さらに、琉球諸島沿岸海岸保全基本計画については、同計画の手続を履践していない点において、結果的に同第3号に違反しており法的に瑕疵があると考えられる。
 ジュゴンが棲む辺野古・大浦湾は生物多様性のホットスポットだ。沖縄県が二〇一〇年に公表した「沖縄21世紀ビジョン」、その施策を展開していくための二〇一二年に策定された基本計画では「沖縄の豊かな生物多様性の保全」が示されている。海は沖縄県民すべてのものであり、決して国のものではない。知事は県民の海良好な管理を信託されているのである。地方分権時代の知事は、県民から海の良好な管理を信託された自治体の長として、自主的・自律的な埋立行政を行わなければならない。県民の共有財産である貴重な海面の埋め立てが許容されるのは、県民全体の利益と直結し、かつ環境保全上問題がない、あくまで「例外的」な場合に限られるのである。
●沖縄県「第三者委員会検証結果報告書等の公開について」http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/henoko/houkokusho.html

海外著名人の声明・辺野古問題  「世界は見ている」

― アメリカの映画監督オリバー・ストーンや言語学者のノーム・チョムスキー、元米国政府高官のモートン・H・ハルペリン(沖縄返還に関する米政府の交渉担当者)など海外の知識人七四人が、「世界は見ている」という緊急声明を発表した。 ―

 普天間基地移設を名目にした辺野古新基地建設に反対する声明で、沖縄の闘いを支持する声は世界に広がっていることを示すものだ 沖縄の人々は20年間にわたり名護市・大浦湾の辺野古に計画されている海兵隊新基地に対し圧倒的な反対の姿勢を明らかにしてきた。我々が2014年1月に出した新基地建設反対声明以来、地元の反対は拡大し強化された。何千、何万の人々が集会に集まり、繰り返し沖縄や日本本土の関係省庁の庁舎前で抗議行動を行った。辺野古漁港での座り込みテントは12年目に入る。建設予定地に続くゲートでの座り込みはすでに400日以上続いており、1月以降は24時間態勢を取ってきた。抗議する人々は非暴力の市民的不服従運動を行ってきており、湾内ではシーカヤックを使い陸上では自らの体でトラックを阻止するなどして、建設のプロセスを物理的に妨げてきている。機動隊や海上保安庁の人員は抗議運動をする人を襲い、深刻な負傷をもたらした。県内の世論調査では80%が新基地に反対している。一方、日米政府は沖縄の人々の意思を妨害する決意について譲らない姿勢のままでいる。

 島で構成される県である沖縄は、国の0・6%の面積で1%の人口を抱えるが、日本にある米軍基地の74%をすでに負担している。この負担はすでに県外に比べ500倍近いものである。沖縄はこのことをあからさまな構造的差別と見ている。

 東京とワシントンの日米政府高官たちは、海兵隊普天間飛行場を宜野湾市から撤去し、辺野古に新基地を造ることが騒音被害や人口密集地での墜落の危険性を軽減すると主張している。しかし宜野湾市の人々を含む沖縄の人々は、これらの問題を沖縄の一つの地からもう一つの地に移動させることが「解決策」だとは考えていないことを明確に表明している。さらに、この航空基地を建設することは美しくも壊れやすい大浦湾の環境を破壊する。大浦湾は、日本で残存するもっとも健全なサンゴの海であり、保護対象となっている海洋ほ乳類ジュゴンや他の魚類や植物の棲息(せいそく)地でもある。

 2014年11月、沖縄の人々は基地建設阻止の立場をとる翁長雄志氏を大差で知事として選んだ。何年も新基地に反対すると約束してきた後、突然埋め立て申請を承認した現職の仲井真弘多知事を破っての当選であった。仲井真氏は東京からの重圧に屈服し、自らの選挙公約に直接違反し有権者を裏切った。

 繰り返し「あらゆる権限を駆使」して基地を阻止する意向を述べてきた翁長知事は、埋め立て承認取り消しを視野に、承認に法的瑕疵(かし)があるかないか、またあるとしたらどのような瑕疵なのか特定するために環境、法律の専門家のチーム「第三者委員会」を任命した。

 7月にこの委員会が出した報告書は、仲井真前知事による埋め立て承認は「環境保全及び災害防止に付き十分配慮」しておらず、「国土利用上適切且つ合理的」という基準に適合しないことにより、日本の公有水面埋立法に反すると結論づけた。これは常識とも合致している−深刻な環境破壊を起こさずにトラック350万台分もの土砂をサンゴの園に投げ込むことが可能であるといった主張が明らかにおかしいということを理解するのに専門知識は必要ない。翁長知事は今、日本政府に基地建設を進めることを許してきた埋め立て承認を取り消すための証拠を手にしている。

 日本政府は一カ月の建設工事中断を発表するという形で対応し、県との協議に入った。しかし沖縄の人々やその代表者たちにとってもう一つの平手打ちを食らわせるかの如く、政府は「協議」の結果にかかわらず基地建設のための作業をその後続けると断言している。

 翁長知事は自らの権限においてこれを阻止する鍵を握る。第三者委員会報告書の裏付けを得て、仲井真前知事の埋め立て承認を取り消す権限である。このような行動を取られることに対する日本政府の恐れが、工事中断と、大きな経済振興計画を約束し翁長知事に反対をやめさせることを狙った協議に入る動機づけとなったのであろう。しかしこのような買収の試みは沖縄の人々にとっての侮辱である。

 第三者委員会による検証は、仲井真知事による埋め立て承認は法的瑕疵がある−要するに違法であるとの結論を出した。これが意味することは、翁長知事はこれを取り消す法的義務があるということである。第三者委員会が結論を出した直後にこのような取り消しがあると期待されていたが、多くの沖縄の人にとって驚きであったのは、翁長知事は第三者委報告を受けてのいかなる判断も一カ月間先延ばしにしたことだ。

 翁長知事が埋め立て承認取り消しをしないようなことがあったら、それは違法なプロジェクトに加担するということになる。もちろん翁長知事はそれを分かっているはずであり、決定的な行動に出ないことが沖縄社会に爆発を引き起こすであろうことも分かっているはずだ。

 沖縄の人々は、知事が無条件で妥協や取引も全く伴わない埋め立て承認取り消しを行うことを求め、期待していることを明白にしている。

 我々は沖縄の人々のこの要望を支持する。

 世界は見ている。


マイナンバーの危険性は明らか

     共通番号制度の中止を求める!


 共通番号(マイナンバー)通知のスタートが10月に迫っている。
 住民登録のあるすべての日本人と外国人に個人番号が、そして納税義務のあるあらゆる団体に法人番号が通知される。
 二〇一三年五月二四日、共通番号法(正式名称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」)案及び関連法案が参議院で通過・成立した。
 だが、この法案は、税と社会保障の不公平を是正することを口実にしているが、実際には、住民票コードと異なり、警察や公安機関が利用できる番号であり、市民に対する管理や監視の日常化と精緻化である。
 共通番号法は、特定秘密保護法、そして盗聴法の改悪、共謀罪の新設といった安倍政権が整備をすすめる治安立法の一環であり、集団的自衛権行使容認と戦争法制・日米軍事同盟強化と一体のものである。
 そして、今後、政府は共通番号法の「利用」範囲はますます拡大しようとしているのである。
 ところが年金機構の個人データの大量流失をはじめとして、また長野県上田市は庁内LANが標的型攻撃を受け、総務省の指示によりLGWAN(総合行政ネットワーク)や住基ネットの接続まで遮断する事態の発生など深刻な情報漏れ・盗難が起きており、今後も情報漏えい続出が予想されているのである。
 ここにきてようやくその危険性に対する認識は広がってきた。

 共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会(略称:共通番号いらないネット)は全国のさまざまな共通番号反対運動の緩やかにネットワーク(二〇一五年二月二〇日結成)である。
 共通番号いらないネットは、8月28〜29日に、@番号利用拡大法案の廃案、A番号法の10月施行延期、B共通番号・カードの廃止をめざすことを目的に、「共通番号もカードもいらない! 全国交流会」を開いた。

 全国交流会の一日目の八月二八日には、参議院議員会館で院内集会が開かれた。 共通番号による情報連携の思想とは、利便性の名の下に本人同意を得ることなくデータマッチングを効率的に進めていこうとするものだ。情報提供について本人に拒否権はなく、人権を脅かす重大な問題が発生することがわかっていても自治体は個人情報を提供する義務を課せられる。自己情報コントロール権を侵害し、地方自治を否定する共通番号制度を受け容れることはできないこと、政府は産業競争?会議において、マイナンバー活用新法を次期通常国会に上程しようとしていることを明らかにしており、これまでの税・社会保障・災害対策という枠組みをはずれ、戸籍、保険証、医療など全戸拡大路線に突き進もうとしている。戦争法案に隠れて、番号利用拡大法案をこっそりと成立させようとする安倍政権の手法を絶対に許さず、拡大法案の参議院可決に強く抗議し、今後予想されるさらなる拡大に対峙して共通番号廃止まで粘り強く運動を継続していく。
 また、これからの行動として、10月3日に「ストップ!10月番号通知(オクトーバー・アクション)全国集会&デモ」の開催、12月にも大きな行動に取り組むなどが提起されている。
 二日目の二九日の全国交流討論集会では、今後の運動の在り方などについて討議した。

 ●九月三日、共通番号(マイナンバー)の利用範囲を広げる改正マイナンバー法は衆議院本会議で可決・成立した。これに対し共通番号いらないネットは「声明・共通番号(マイナンバー)利用拡大法案の成立に抗議する!」(別掲)を発表した。

声明・共通番号(マイナンバー)利用拡大法案の成立に抗議する!

 本日共通番号(マイナンバー)利用拡大法案は衆議院本会議にて可決され、成立した。私たちは 万感の怒りをもってこれに抗議する! そもそも番号法が施行されていないにもかかわらず利用範囲を拡大することは、施行後3年間の状況により利用拡大を検討するという法律制定時の国会答弁に反し、共通番号(マイナンバー)制度のリスクを一層高めるものである。
 6月初旬にいったん成立しかかった拡大法案は日本年金機構の年金データ大量流出問題の生起により、8月下旬まで3か月近くも店晒しとなった。8月21日に厚労省の第三者委員会が「検証報告書」を発表したことを受けてさも共通番号(マイナンバー)制度の危険性が払拭されたとでも言わんばかりに、たった1日の審議をもって参議院内閣委員会は採決してしまった。その際、自民、公明、民主、日本を元気にする会、次世代の党委員が共同で15項目からなる附帯決議を提案した。
そこには、「12 個人番号カードの公的個人認証機能の利用時における本人確認方法について、 生体認証の導入を含め、より安全かつ簡易な方法を検討すること。」という信じられない内容が盛り込まれた。 私たちは安易な生体認証利用に強く反対する。私たちは強調したい。
 「検証報告書」は共通番号制度の安全性を担保するものでは全くない、ということを。3か月の空白期間は市民の忘却を期待した時間稼ぎでしかなかったことを。
 そして私たちは今回の利用範囲の拡大はこれにとどまらず、2020年のオリンピックイヤーをターゲットイヤーとして次から次へとさらなる拡大を政府が企図していることを知っている。いわゆる「骨太方針」や「日本再興戦略」など閣議決定されたものの中に利用拡大が巧妙に入れ込まれ ている。さらに戸籍事務、旅券事務、自動車登録事務、医療、介護、健康情報管理などの他にオリンピック会場への入場確認に個人番号カードを利用しようとしている。これはまさにテロ対策だ。
 ここまで来るともはや税・社会保障番号という説明を反故にするものだ。
 一方、市民に対する認知度は依然低く、役所の準備は遅れ、企業における準備は多くが未だ手つかずだ。年金情報流出によって多くの市民が共通番号(マイナンバー)制度の危険性を知った。私たちはこうした状況を受けて、10月5日からの番号通知、来年1月からの個人番号カード交付という日程を延期して、制度そのものの見直しを求めてきた。情報流出の危険性も払拭されず、準備もままならない現状での実施の強行は、共通番号(マイナンバー)制度への賛否を超えて、絶対に許されるものではない。
 私たちは実施延期と制度の抜本的見直しを求めて10月3日に大規模な屋外集会・デモを開催する。もし番号通知・カード交付を強行するのであれば、私たちは多くの市民に対してさまざまな抵抗や拒否を呼びかけていきたい。通知カードの受領拒否、個人番号カードの申請拒否、番号記入・本人確認書類提示の拒否、番号の変更要求、国・自治体への抗議や延期・中止要求などさまざまなバリエーションの中からできる抵抗運動をチョイスしてもらいたい。さらに新たに行われようとしている法人や学校を単位とした個人番号カードの取りまとめ申請について反対運動を強めてきたい。個人番号カードの申請はあくまで個人の任意な行為であり、団体が取りまとめるべき筋合いのものではなく、任意性を侵害する危険性が高いからである。
 私たちは政府に警告する。市民の理解がないまま共通番号(マイナンバー)制度を強行すれば、市民の抵抗を受けて頓挫した住基ネットの二の舞いになることを。私たちは利用拡大法案の成立にひるむことなく、共通番号制度の中止をめざして反対運動を継続していく。

2015年9月3日

共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会(略称:共通番号いらないネット)


えん罪防止を口実にした警察・検察の権力拡大

    
  盗聴法・刑訴法改悪法案を廃案へ

 九月四日、自民党は、警察と検察による取り調べの録音・録画(可視化)の義務付けや司法取引の導入などを柱とする刑事訴訟法などの改正案について、今国会での成立を見送るとした。ひとまず成立は延期された。

 この改正案は八月五日、自民、公明、民主、維新四党から衆議院法務委員会に盗聴法・刑事訴訟法改悪案の修正案が提出されその四党の賛成で十分な審議もないうちに可決した。
 参議院段階では、ここでは法務委員会で民主党がヘイトスピーチ(憎悪表現)という人種差別的な街宣活動を規制する法案を先に扱うよう主張し審議入りできないままできた。
 今回の法改正で目指されたのは冤罪防止のための抜本的な改革であったはずだ。それが、安倍内閣の出してきた法案ではまったくそれに逆行する司法取引の導入、盗聴捜査対象の大幅拡大などであり、警察・検察の権力拡大以外の何物でもない。
 盗聴法改悪法(犯罪捜査のための通信傍受に関する法律)改正案では、@対象犯罪を組織的殺人、薬物犯罪、銃器犯罪などの四つの犯罪の種類から窃盗や逮捕監禁、詐欺などまで対象犯罪を大幅に拡大する、A通信事業者の施設で第三者の立会いのもとに行われていた盗聴を警察の施設で立ち会いなしにできるようにする、Bいままでは現に行われている通話を盗聴するリアル盗聴だけだったものを、一時的に保存しておいて後で聞くことができるようにする、など盗聴対象の拡大、チェックの縮小などが著しいものとなっている。
 戦争法制、特定秘密保護法、マイナンバー法などと一体なった「戦争する国」づくりの一環だ。

 八月二八日、盗聴法廃止ネット(盗聴法に反対する市民連絡会、東京共同法律事務所、日本国民救援会、反住基ネット連絡会、許すな!憲法改悪・市民連絡会)の主催による「憲法違反の盗聴法を許さない! ― 盗聴法・刑訴法改悪法案を廃案へ!」集会が開かれた。
 田島泰彦さん(上智大学教授)が「言論・表現の自由と盗聴法」と題して講演した。通信の秘密の侵害、プライバシーの侵害、表現の自由の侵害、令状主義の侵害など憲法違反のオンパレードとして盗聴がある。そのために組織犯罪による対象犯罪の限定化、通信事業者による立会などが前提とされてきたが、改正案はそれらの限定を解除するものだ。今回の盗聴拡大に続いて、室内盗聴の合法化通信履歴の法的義務付けなどがあり、日本版CIA、NSAの創設によって、犯罪にかかわらない通信の盗聴の可能性もある。こうした中で、将来の盗聴・通信の徹底監視体制への動向を見据えて、今回の法改悪を批判しなければならない。

 また日本ペンクラブ「通信傍受法の改正に反対し廃止を求める」(六月一九日)が、この「改正が、公権力による盗聴社会を招きよせると考える。これは民主主義と基本的人権の尊重を謳う憲法から逸脱するものである」と批判するなど、反対の声が広がっている。


書籍紹介

 
 澤地 久枝 (著) 「14歳〈フォーティーン〉 満州開拓村からの帰還」


                      (集英社新書) 新書

 九条の会の呼びかけ人のひとり、澤地久枝さんが14歳〈フォーティーン〉満州開拓村からの帰還を上梓した。澤地さんは、1930年生まれというから現在85歳。これまで戦争の関する様々な著書を出されているが、自らの体験をつづることはさけてきた。だが、弟の孫が14歳になり、世の中の風潮、戦争とはどういうことが知らせるためにこの本を書いたという。「若いひととの結びつき、体験の語り継ぎが、とても大切だと思う。」と記されている。
 終戦まで満州にいた澤地さんは、「もっと、戦争のために、自分ができることはないのか」毎日そんなことばかり考えて、食事のときは「どんなにひもじくても、三度三度、子ども茶碗一膳しか食べない」決まりを守っていたという。
 だが、栄養不足から伝染病で倒れる子どもも多く、澤地さんと妹も猩紅熱にかかり生死の境をさまよう。戦争は、一人の少女が少女であることさえ許さなかったという。
 敗戦直後、ソ連兵が満州に侵攻してくる。澤地さんは、この本の中でソ連兵にレイプされそうになった話を書かれている。いままで封印してきた自身のつらい体験談である。物置に隠れるがその扉を彼らは力づくで開けようとする。「もう助からない」と思った時、彼らを必至に制止したのは、澤地さんが「非国民」と思い続けていたお母さんだったという。
 澤地さんのお母さんは、「この戦争はまけね」と平気で言うような人であった。ソ連兵らは、去り際に「今夜、この一家を皆殺しにする」と叫んだという。日本人少女の視点で当時の戦時中から戦後の満州での暮らしぶりが詳しく描かれている。一家は、一年間の難民生活をへてようやく船に乗り帰国を果たす。
 多くの著書を執筆され、また、反戦活動に積極的にかかわってこられた澤地さんの原点ともいうべき体験がこの14歳〈フォーティーン〉には記されている。あの戦争とは一体何であったのか、戦争体験者が次々と去っていく中、澤地さんの今回の14歳〈フォーティーン〉は、戦争体験を語り次ぐ貴重な一冊である。ぜひ、多くの人たち、とくに若い人たちに読まれることを期待したい。(矢吹徹)


KODAMA

      
 ヘイトスピーチ=差別の娯楽化とそれに抗するもの

 「日韓条約締結50年とヘイトスピーチ」(九月四日)という集いで、辛淑玉(しんすご)さん(「のりこえネット」共同代表)の話を聞いた。のりこえネット(ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク)は、ヘイトデモやヘイトスピーチ対策などのために生まれた。
 辛さんの話で心に残ったことば――新自由主義によって、命よりカネ、未来より今、という風潮が強まっている。社会が壊れる中で、自己確認は唯一「オレは日本人だ」というしかない人が激増している。そこで偏見→差別→暴力の連鎖がおこる。イデオロギーと暴力の結合で、時の権力にジャマなものを排除する。そうした状況から生まれてくるのが「差別の娯楽化」それがヘイトスピーチだ。
 だが、それを受け入れない動きも同時に作り出している。それが戦争法案やヘイトスピーチに立ち向かっていく若者たちの動きが代表している。日本社会はいま民主主義革命を作り出していこう―耐えながら」。(H)


時 事 狂 歌

     わが友は「積極的平和主義」(ぼうりょくてきもうけしゅぎ)と
            このように読み国会へデモ

     万年の鬼がでてくる再稼働
            桃太郎などいやしませんよ

                               ヽ  史