人民新報 ・ 第1333号<統合426号>(2016年1月15日)
目次
● 持続的な非暴力抵抗闘争の成果を継承し
力をあわせて戦争への道=安倍政治を終わらせよう
● 年明け早々から闘いが高揚
総がかり行動の国会開会日集会に3800人、市民連合の街頭宣伝行動に5000人が参加し、戦争法廃止!、安倍内閣退陣!をアピール
● 北朝鮮は核政策を放棄し、アメリカは米朝直接交渉を開始せよ
六カ国協議再開での平和的解決を!
● 日本の原発輸出反対 日印原子力協定阻止
● 福井地裁の高浜原発運転差し止め仮処分取り消し決定を糾弾する
● けんり春闘発足総会 時代の転換期における生活と平和を守る闘いを進めよう
● 労働者使い捨て企業の増加・権利意識の低下 高校教育現場での労働教育が必要
● 秘密保護法廃止へ 全国で「6の日行動」
内閣法制局へ申し入れ
● マイナンバーは危険・いらない 制度の廃止へ!
● 年 頭 狂 歌
● 複眼単眼 / 新生の「市民連合」を成功させることは歴史的な課題
持続的な非暴力抵抗闘争の成果を継承し
力をあわせて戦争への道=安倍政治を終わらせよう
安倍自公政権による戦争法の強行採決は、憲法9条を実質的に破壊する許しがたい暴挙であった。
しかし、それは同時に安倍政権の暴走=「戦争する国」づくり政策に反対する運動に多くの人びとが立ち上がった2015年安保闘争をうみだすものとなった。その闘いの特徴は、過去のいきさつやそれぞれの運動・団体の小異を残しながら安倍政治反対という共通の目的に向けてかつてない統一した行動が勝ち取られたこと、そして敗北感にも焦りからの突出のようなことにも陥らずに持続的な非暴力抵抗闘争が全国的かつ各界・各層に広がったということであった。
今年2016年にけるわれわれの任務は、昨年までの闘いの経験を教訓化して闘いをこれまで以上に強化・拡大し、安倍暴走政治を終わらせるために奮闘することである。
1月11日、安倍首相は夏の参院選について、自民・公明両党で過半数を確保し、そして、おおさか維新の会など改憲派の政党の当選により、改正の発議に必要な3分の2の議席の確保を目指すと述べた。一昨年7月の集団的自衛権の行使容認の閣議決定、昨年の戦争法強行成立につづいて、明文改憲についても前面に出してきたのである。安倍ら改憲派は、戦争法廃止の世論の広がりでこれまでの政策が覆される可能性に恐怖し、解釈改憲策動による戦争する国づくりでは安心できずにいる。どうしても、憲法条文そのもの改悪が必要だとし、ゆくゆくは自民党憲法改正草案のような強権主義・軍国主義体制を目指そうというのが狙いだ。
いま民主主義・立憲主義に基礎づけられた憲法体制をめぐる激烈な激突の局面に入った。すべての人に、戦後の長期的な持続か、それとも新らたな戦前・戦中へという悲惨な道かという歴史的分岐の前にいかなる態度をとるのかが問われている。
戦争法廃止をめざす闘いは、沖縄・辺野古最新鋭基地建設に反対する闘い、原発再稼働・原発輸出反対、秘密保護法廃止、消費税増税、TPP(環太平洋連携協定)問題、生活できる賃金要求、労働法制改悪反対、社会保障の充実などの多くの課題と結びついて安倍政権を追い詰めていかなければならない。すでに、政権が頼みとするアベノミクスもデマに満ちた掛け声が大きくなるに比例して、破たんの色を鮮明にしてきている。その極めつけがトリクルダウン「理論」である。それは、富裕層が富めば、その富が貧しい者にも浸透するというもので、小泉内閣など新自由主義政策の目玉となっていた。やがては「アベノミクスの恩恵がもたらされる」―この幻想で自民党は人びとの支持を確保してきた。しかし、ここにきて、新自由主義政策の中心的理論家で元総務相の竹中平蔵までもが「滴り落ちてくるなんてないですよ。あり得ないですよ」と言い出している状況にまで来た。この春闘で、安倍や経団連などは企業たいし賃上げ要請などを行っている。しかし、昨年の基本給部分に対しての昇給額(ベースアップ)から、「年収全体」に後退している。すでにトヨタ労組などはベア要求を去年の半分にダウンさせるなどの動きとなってきている。
当面する大きな課題は、戦争法廃止に向けての世論を大きく盛り上げていくことである。年末年始の時期においても「戦争法の廃止を求める2000万統一署名」への取り組みを軸に、さまざまな行動が各地で積極的に展開されている。
そして、5・3憲法大集会の成功など大衆的な運動の広がりによる強烈な社会的アピールの実現など、戦争法廃止、安倍内閣退陣の声を大きくするための共同の行動が展開されている。
3月下旬には戦争法制が施行される。野党は統一して廃止法案を提出して闘うべきであり、野党共闘をもう一歩進めなくてはならない。
そして、参院選では、自民、公明など改憲=戦争潮流の勢力を少数派に追い込まなければならない。
昨年末に結成された「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は多くの人びとの声を代弁するものであり、参院野党共闘の形成に重大な役割を果たすであろう。市民連合は、「参議院選挙における1人区(32選挙区)すべてにおいて、野党が協議・調整によって候補者を1人に絞りこむこと」を要請している。すでに熊本などいくつかの選挙区では成果が出始めているが、今後、こうした協議・調整を急速に進めることが求められている。
闘いの基本的な構図・構造はすでに形成されている。
全国の心ある人びとは大きく団結して、戦争法廃止、安倍内閣退陣を勝ち取るために奮闘しよう。
年明け早々から闘いが高揚
総がかり行動の国会開会日集会に3800人、市民連合の街頭宣伝行動に5000人が参加し、戦争法廃止!、安倍内閣退陣!をアピール
「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」は、国会開会日の1月4日、正午から衆議院第2議員会館前での「戦争法廃止!安倍内閣退陣!国会開会日総がかり行動」をよびかけ、3800人参加した。戦争法強行への人びとの怒りに対して自民党議員は「餅を食ったら忘れる」というふざけた発言をしたが、この結集がなによりの事実をもった反撃だ。
集会では、戦争法案廃止をともに闘った野党から、共産党書記局長の山下芳生参議院議員、社民党副党首の福島瑞穂参議院議員、民主党の幹事長代理の参議院議員、維新の党国会対策委員長代理の初鹿明博衆議院議員があいさつした。
つづいて総がかり行動の三団体からの発言に移り、はじめに、戦争をさせない1000人委員会の清水雅彦さん。選挙では安倍自民党は安保は隠して経済で支持を集めた。多くの有権者が騙された。ごまかされる方も問題で、これからはそうしてはならない。2000万署名は人びとが政権に騙されないためにも大事なことで、集会やデモに来られない人にも意義がある。
戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センターの小田川義和さん。安倍政権はいろいろな問題があるにもかかわらず臨時国会を開かなかった。外遊の日程などを口実に論戦から逃げたといわれてもしょうがない。現在、戦争法をめぐって世論は拮抗している状態だ。反対の世論を高めていかなければならない。「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」も結成された。参院選での野党協力で勝利も可能だ。2000万署名で、政治を変える条件を作り出していこう。
解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会の高田健さん。年明け早々から、署名などの行動が始まっている。それは今年は大変な年だとみんな思っているからだ。戦争法が通ったらからといって、わたしたちは南スーダン、中東などで自衛隊が戦争に踏み出すようにしてはならない。安倍内閣は沖縄の闘いで一時休戦を申し入れた。南スーダン派遣も参院選の後などというようになった。闘いの成果によるものだ。戦争法発動を阻止することは可能だ。産経新聞のアンケートでも2000万もの人びとが戦争法反対の行動に参加したかったということだった。総がかり行動実行委員会、市民連合、多くの人びとと力をあわせて闘いぬこう。
連帯あいさつは、止めよう!辺野古埋立て国会包囲実行委員会、日弁連憲法問題対策本部、秘密保護法廃止実行委員会、安保法制違憲訴訟の会から行われた。
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)は、1月5日、新宿駅西口で5000人が参加して初の大街頭宣伝を行った。戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の三団体の代表や小林節慶應義塾大学名誉教授、瀧本知加さん(安保関連法に反対するパパママの会・熊本)、吉田忠智社会民主党党首、香山リカさん(精神科医)、蓮舫民主党代表代行、内田樹神戸女学院大学名誉教授、志位和夫共産党委員長、中野晃一上智大学教授、本間信和さん(SEALs)、想田和弘さん(映画作家)、初鹿明博維新の党国会対策委員長代理、佐藤学学習院大学教授(安保関連法に反対する学者の会)など幅広い人びとがアピールをつづけ、多くの人びとに訴えた。
北朝鮮は核政策を放棄し、アメリカは米朝直接交渉を開始せよ
六カ国協議再開での平和的解決を!
1月6日、朝鮮民主主義人民共和国は「水爆実験を実施」と発表した。2006年から4度目の核実験であり、朝鮮半島と北東アジアの緊張をさらに高めるものとなった。これに対して各国から大きな批判が起こった。
これまでアメリカは朝鮮戦争以降の状況を単なる「停戦」状態のままにとどめ、北朝鮮に対して敵視政策・政権転覆政策をつづけてきた。
一方、北朝鮮政府はアメリカの軍事的脅威への最も有効な手段として核武装の道を歩むとしている。だが、今回の核実験のような行為は、国際社会の多くの人びとが求めるものとは逆行するものであり、絶対に許されるものではない。
朝鮮半島の戦争の瀬戸際のような危機的事態の解決はもっとも緊急の課題である。
にもかかわらず米軍は核爆弾搭載可能なB52戦略爆撃機の威圧的な飛行で緊張をあおったり、また安倍政権はこれを絶好の口実に軍備増強に走っている。しかし今求められているのは朝鮮半島の非核化であり、同地域の緊張の緩和である。この目的を実現する方法は戦争、武力という手段ではなく、平和的な話し合いによる解決しかない。
そのためには、なにより2008年以来中断している朝、韓、米、日、中、ロによる6カ国協議を早急に再開させ、この協議の枠組で懸案事項を解決するという、これまで確認されてきた路線を再び始動させることである。現在、6カ国協議参加国のうち北朝鮮を除く5カ国は、国連安保理決議による北朝鮮への制裁強化や6カ国協議再開などについて協議を続けている。
北朝鮮は核政策を放棄し、アメリカは北朝鮮との国交正常化にむけて米朝直接交渉を開始しなければならない。
また中国や日本などの各国にも建設的な努力を行うことが求められている。そうすること以外に米朝関係の正常化、そして朝鮮半島の非核化、北東アジアの平和・安定維持というこの地域の人びとが求めている局面をもたらすことはできない。
日本の原発輸出反対
日印原子力協定阻止
安倍政権の原子力政策は、原発推進だけではなく、将来的な核武装の道へと通じるものである。
またこの政策は日本にとどまることなく海外への展開も実行されている。
12月12日、訪印した安倍晋三首相はインドのモディ首相と原子力協定の締結に原則合意した。締結すれば、日本の原発輸出を可能にすることになる。インドとの締結交渉に入ったのは2010年で、当時は民主党政権時代だった。福島原発事故で一時中断した。しかし、安倍政権は原発輸出を成長戦略の柱に位置付け交渉が再開された。
現在日本と二国間協定が締結され発効しているのはアメリカをはじめ14か国だが、インドとの協定は、初めての核拡散防止条約(NPT)非加盟国との締結という見逃せない特徴がある。NPTは、アメリカ合衆国、ロシア、イギリス、フランス、中華人民共和国の5か国以外の核兵器の保有を禁止する条約であり、核大国優位の体制でもある。インド、パキスタン、イスラエル、南スーダンが未加盟国であり、朝鮮民主主義人民共和国が脱退国だ。
安倍首相は共同記者発表で「日本による協力を平和目的に限定する内容を確保した」と述べているが、その具体的保障は全くない。
安倍政権は対中包囲網形成を外交の基本としており、日本とインドとの原子力協定提携には、安保連携での強化が背景にある。経済的な利益のみならず、軍事的関係強化の一環としても原子力協定の締結があり、この面に注目しなければならない。
広島と長崎へ原爆が投下された被爆国日本は、福島第一原発の過酷事故でも核の悲惨さを世界に示す国となった。その日本には国ととして従来よりいっそう核兵器廃絶、原発なき社会の実現という姿勢を鮮明にし、国際的にもその実現に努力していく責務がある。今回の安倍政権の行動は、核なき世界の実現という多くの人びとの声をまったく無視するもの以外の何ものでもない。
安倍政権の原子力政策に対する危惧は急速に広がった。その結果、安倍政権は、日印原子力協定についての国会論戦が夏の参議院選挙に悪影響をもたらすのを恐れて、今国会への提出を見送ることにした。だが、これで日印原子力協定問題が終わったわけではない。
日印原子力協定阻止!インドへの原発輸出反対!の運動を強めていこう。
福井地裁の高浜原発運転差し止め仮処分取り消し決定を糾弾する
原発再稼働阻止・脱原発社会の実現を
原発の危険性は2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の大事故によって証明され、原発再稼働反対、エネルギー政策の転換、脱原発社会の実現を求める声は大きく広がった。2015年4月14日には、福井地裁(樋口英明裁判長)は、関西電力高浜原発3・4号機の運転差止めを命じる仮処分命令を発令した。それは原子力規制委員会が高浜原発3・4号機について設置変更許可を出したが、地裁は「新規制基準は緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない」とするもので、再稼働は停止された。
しかし、あくまで原発推進の道を強行しようとする安倍政権、電力会社、原発関連企業などの原子力村勢力は必死の巻き返しに出てきた。そして、12月24日、福井地裁(林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官)は高浜原発の運転差し止め仮処分命令を取り消す決定を行った。そこでは、新規制基準が「緊急時対策所の基準地震動に対する耐震安全性を確保するための手段については『免震機能等により』と規定されており」として、「等」を強調することで、規制委員会よりもさらに緩い判断を示したのであり、新規制基準はまったく意味を持たなくされている。それだけでなく、基準地震動・耐震安全性の判断についても後退している。また争点の一つだった原子力施設への攻撃に対する対策についても、「重要な情報システムについては外部からのアクセスを遮断する設計とすることでサイバーテロへの対策を講じているのであるから、侵入者によるテロ行為やサイバーテロ等への対策についても合理性が認められるというべきである」とするなど、「原子力規制委員会の判断の合理性」を一方的におしだすきわめて不当なものだ。
脱原発弁護団全国連絡会の「大飯・高浜原発差止仮処分弁護団福井地裁高浜原発異議決定を受けての声明」は、「高浜原発3、4号機が再稼働して重大事故を起こした場合、その責任の重要部分は再稼働を許した3人の裁判官にあるということになります。しかし、私たちは、このような不当決定に負けることはありません。なぜなら、理論的正当性も世論も私たちの側にあるからです。福島原発事故のような事故を二度と招いてはならない、豊かな国土とそこに根を下ろした生活を奪われたくない、子ども達の未来を守りたいという国民・市民の思いを遂げ、ひいては失われた司法に対する信頼を再び取り戻すため、最後まで闘い抜くことをお約束します」とし、「甦らなかった司法」を糾弾し、今後の闘いへの決意を語っている。
再稼働に向けての動きは強まってきている。だが、これでは日本社会の破壊される危険がいっそう強まるということだ。
3月26日には、東京・代々木公園で「原発のない未来へ!全国第集会―つながろうフクシマ まもろういのち」(さようなら反原発1000万人アクション実行委員会)が、3月23日〜27日にかけて、「核と被ばくをなくす
世界社会フォーラム2016(東京・福島)」が開かれる。
地域住民、地元自治体、そして全国で再稼働反対の声をつないで、脱原発の声を大きく上げていこう。
けんり春闘発足総会
時代の転換期における生活と平和を守る闘いを進めよう
12月12日、新橋・交通ビル・ホールで、「16けんり春闘全国実行委員会発足総会・学習集会」が開かれた。
春闘方針を確認
はじめに代表あいさつで、金澤壽・共同代表(全労協議長)は、今年の春闘は、生活できる賃金の獲得、人間らしく働けるディーセントワークの実現、そして戦争法制、労働法制など国の形がどうなるかがかかった重大な課題があり、意思統一をして闘い抜こうと述べた。
けんり春闘の中岡基明事務局長(全労協事務局長)が春闘方針案(「時代の転換に立ち向かい、生活と平和を守る16春闘勝利!=非正規労働者の賃上げを実現させよう!=」)を提起した。
安倍政権は与党の国会内で過半数を占める議席を背景にして戦争法を強行成立させたが、それに反対する闘いは大きく昂揚した。若者から母親まで、総がかり運動として発展した。民主主義を破壊し、戦争する国へと進む中、労働者市民が新たな大衆運動として政府・財界の独断専横を押しとどめ、民主主義と労働者の闘いの礎を築くことができるのかが問われる。あるいは政府に取り込まれていくのか。16春闘はその試金石になる。16春闘は、まず、すべての労働者が賃金引き上げを確保でき、人間らしく生活できるために全力をあげよう。そして、安倍政権の平和破壊、民主主義の破壊に対決し安倍政権を打倒する闘い、沖縄の人々と連帯して辺野古新基地建設を阻止する闘いに勝利することが求められている。けんり春闘の課題は以下の通りだ(別掲)。こうした要求を掲げて、職場討論・職場集会を重視し、ストライキを配置して闘う。非正規労働者の諸要求をかかげ正規―非正規労働者の共同闘争で闘う。公務員―民間労働者、ナショナルセンターの枠を超えて闘う。労働組合の連帯で地域共闘を建設して闘う。そして、各地に16けんり春闘を組織し、地方・地域段階で共闘会議を組織し春闘集会や公契約運動を追求しよう。同時に、2000万署名や総がかり行動運動を各地で創り出そう。また、対経団連闘争を重視し、総額人件費抑制・成果主義賃金攻撃と闘い、中小零細企業イジメを止めさせ、中小零細企業労働者、非正規労働者の賃上げを求めていく。原発・武器輸出、法人税引き下げに反対していこう。
今後のスケジュールとしては、1月の通常国会開催日など戦争法廃止総がかり行動の一連の取り組みの成功を目指す。2月の東京総行動・経団連抗議行動では全ての争議の勝利にむけて闘う、2月下旬には、労働相談集中週間をもうけ、3月には、ストライキにとりくむなど賃上げ実現のために闘う。また、脱原発闘争、外国人労働者のためのけんり総行動、総がかり行動に取り組む。4月には春闘総行動・デモで、内閣、経団連、電力会社にむけての行動を闘う。4月末には、中小・未解決組合支援の行動を組む。
発足集会は春闘方針の提起を全員で確認し、けんり春闘は正式に発足した。
つづいての特別報告では、平和フォーラムの藤本泰成事務局長が戦争法廃止にむけて2000万統一署名を達成しようと訴え、沖縄・一坪反戦地主関東ブロックの大仲尊共同代表は、辺野古新基地を絶対に阻止するためにともに闘おうとアピールした。
日本社会と労働組合の役割
第二部の学習集会では、労働ジャーナリストの鹿田勝一さんが、「曲がり角に立つ日本社会(戦争と格差社会)と労働組合」と題して講演した。
いままさに戦後70年という年に異常事態がおきている。「生きる土台」が崩されていく事態に直面させられているのだ。これまでの取材から、春闘が変質し賃金も労働条件も低位平準化しているのを実感する。また雇用も2008年末の「年越し派遣村」に象徴される雇用破壊、社会的にも3・11大震災・原発事故、平和の面でも2015戦争法成立は立憲主義、9条を破壊し戦争国家へとふみだすものだ。いま労働運動が問われている。経済的・社会的・政治的な地位向上にむけて総反撃しなければならない時期が来ている。現在の最大争点は憲法違反の戦争法廃止のたたかいということだ。働くことと反戦平和のたたかいは結びついている。安倍首相の狙う自民の改憲草案は国防軍、治安出動、それは同時に労働運動の圧殺など人びとの権利の禁止ということだ。太平洋戦争中の労働運動は、戦時労働統制下にあり、それに対する労働運動の検挙・弾圧と不屈の闘いがあった。戦時下、組合解散の1940年後でも日立亀戸争議などストはなくならなかった。それが日本労働運動の誇りであったし、敗戦直後の燎原の火のような組合結成の広がりとして実現された。しかし、今回のたたかいについて、後世から見て「組合の姿が見えない」ということになるのではないだろうか。60安保闘争以来の高揚だが、60安保では組合は三波のゼネストで闘い、条約成立後の6・22ストには600万人が参加し、33万人が国会をデモで取り巻いた。そして、ついに6月23日には岸首相が退陣した。今回、連合は立ち遅れ、一方で「総がかり行動委員会」は5月の憲法横浜集会に3万人、そして8月30日には12万人が国会を包囲し、同時に全国で1000ヵ所で集会などが開かれたが、ストは少数にとどまった。そして安倍政権は続き悪政を強行している。しかし、学生、学者、弁護士、市民団体など各界各層の多様な新しい運動が起こったことに注目すべきだろう。労働組合・労働運動としては信頼の再構築・復権と社会的アピールをしていかなければならない。労働運動と社会運動の結合が求められている。労組としてヒト、モノ、カネの最大組織という特徴を生かし前進していかなければならない。平和こそは労働運動の礎なのだ。全労協の先駆性として上げられるのは脱原発統一戦線の呼びかけだ。1%のための政治の安倍政権の打倒を一番早く2013年の大会で決定した。今後、一点共闘から総がかり共闘へということが基本だ。グローバル経済の下、日本の反戦平和、権利擁護の闘いは国際連帯につながる。「企業が世界一活動しやすい国」は「労働者の権利が世界一破壊される国」である。戦争国家阻止に総反撃の統一戦線形成の時代を実現しなければならない。
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けんり春闘の「16春闘の課題」
○ディーセントワークの実現と人間らしく生活できる賃金
@労働者の生活と権利を守り拡げる闘い
どこでも誰でも「月20万円以上、時給1、500円以上の最低賃金保障を」
最低賃金保障として時給1500円以上の実現を求めていく。
企業内最賃の見直しも進めていく。
全国一律最賃引き上げ闘争と、公契約制定運動を重視して闘っていこう。
すでにアメリカでは最賃15ドルに向けて法令化が進んでいる。ファストフード産業などの賃上げを求める国際共同行動に積極的に参加していこう。
A賃上げ目標:20、000円以上、7%以上、時給150円upと設定して闘う。
B時間外労働の法規制:1日2時間、月20時間、年150時間を求め、長時間労働の禁止、サービス残業の撲滅を実現していこう。
生活(8時間)と労働(8時間)と睡眠(8時間)のワークライフバランスを実現しよう。
C労働時間短縮:必要な人員配置、インターバル休暇の導入を求め、また、自由な有給休暇の取得を求めていこう。
D労契法20条活用と権利拡大:非正規労働者の処遇改善に向けて労働法規の完全遵守、違法行為・ブラック企業の告発闘争を強めていこう。
E非正規労働者の春闘:雇い止めを阻止し、非正規労働者の賃上げ闘争への参加を獲得していこう。
FJAL解雇撤回闘争等、全ての争議に全力をあげ、勝利しよう。
○労働法制改悪(労働時間制度の破壊、解雇自由)との闘い
@残業代ゼロ・過労死促進法(労基法改悪)阻止に向けた闘いを強化していこう。
A解雇自由法(解雇の金銭解決法案)制定に反対していこう。
B低賃金・無権利攻撃との闘い:最賃闘争を公契約闘争と一体に追求していこう。
「貧困と格差」拡大、非正規労働の拡大、限定正社員の阻止へ
C外国人技能実習制度改悪反対、戦略特区による労働法制破壊を許さない闘いを!
D改悪派遣法:39項目の付帯決議がついた。労働契約申し込みみなし制度の要件が狭まったとは云え追求が可能です。派遣労働者の権利拡大につなげていこう。
E安定雇用:無期・直接雇用、均等待遇を実現する法整備を求めていく。
F雇用共同アクションと連携して労働法制改悪反対の大きなうねりを作っていこう。
○社会的課題・戦争と生活破壊の安倍政権を打倒しよう。
@戦争法廃止!沖縄辺野古新基地建設阻止!脱原発社会を実現しよう。
総がかり運動と連携し、2000万人署名を達成しよう。
沖縄辺野古新基地建設阻止:現地闘争の参加、全国各地で行動を大きく起こそう。
武器輸出・原発輸出反対!:政府、財界・経団連へ抗議を強めよう。
C消費税10%引き上げ、年金・生活保護の改悪に反対していこう。
社会保障切り捨て反対!セ一フティーネットの再確立を求めていく。
D公共サービスの破壊、行革攻撃との闘い:公共サービスの民営化に反対し、誰でもどこでも公平・平等なサービスの提供を受ける権利の遵守を求めでいく。公務員労働者の成果給導入、賃金切り下げ、人員削減への攻撃と闘っていこう。
E脱原発運動:3月脱原発キャラバン(平和フオーラムとの連携)を成功させよう。
GTPP参加反対:多国籍企業による日本の自立的経済を破壊、医療保険制度、農漁業破壊、自然・食の安全・安心社会の破壊を阻止しよう。
H参議院選挙勝利:2016年7月の参議院選挙を野党共闘で勝利させよう。
投票率を上げる運動や落選運動など様々な闘いと連携して選挙戦に勝利しよう。
労働者使い捨て企業の増加・権利意識の低下
高校教育現場での労働教育が必要
いま非正規労働者の増加など人びとの労働と生活をめぐる状況はますます厳しいものとなってきている。とりわけ若者を使い捨てにする企業の増加のなかでさまざまな深刻な事件が起きている。企業の労働法無視、また労働者の側も労働者としての権利を行使できていない。こうしたことを防ぐ一つの重要なものが学校現場で労働教育である。
12月23日、明治大学駿河台キャンパス・グローバルフロントで、労働教育研究会の実践交流集会「労働教育の実践を進めよう―若者たちの未来のために」が開かれた。「労働教育研究会」は、教員、労働行政に携わる職員、労働組合・NPO関係者や弁護士、研究者、労働者、市民による「学校現場で、今いかなる労働教育が必要か、どうすれば効果的な労働教育を実践することができるか」を研究交流し、必要な教育プログラムや教材の制作、教員や講師の啓発や研修を進めることを目的にしている。
はじめに高須裕彦さん(一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センター)が主催者報告と問題提起。労働者教育の実践は、若者・高校生のリアルから出発することが必要だ。生徒たちはアルバイト(非正規労働者)として働き、職場で協働することを学び、同時に大人たち(正社員や年長フリーター、パート労働者)の働き方を知る、これは働き方を考えるチャンスである。今後、正社員として就職できても、長時間労働や様々なトラブルが待ち受けていること、そして仲間と協働して働きやすい職場をどうやって作るかなどについてだ。
労働教育とは、働くときの知識に関する教育であり、それは労働法教育、ワークルール教育、労働関係法制度をめぐる教育などであり、労働者の権利教育だ。権利の行使や権利侵害に気づくために法的な権利を知っておく必要がある。しかし、知識だけでは問題を解決できない。権利行使もできない。労働基準監督官に申告して指導させるのも一つの方法だが、何より職場の仲間と協働して問題を解決して働きやすい職場を作ることだ。ではそうする力をどうやって培うのか。さまざまな調査を見て分かるように、権利の認知度は急減している。また協働で問題を解決する意識の低下は著しい。職場で問題があっても静観が増えている。
だが、大学や社会の中では労働教育を学ぶ機会がほとんどない。だから、高校での労働教育が重要なのである。就職組も進学組にも必要だ。学校の中で、進路ガイダンスなどで総合学習するだけでなく、現代社会、政治経済、歴史、保健、家庭など各教科での連携が必要だ。学校内だけでなく、学校の外からのインパクトも欠かせない。労働組合やNGOのスタッフ、弁護士、社労士、労働行政職員、研究者などによる外部連携・出前事業などが考えられる。だが、外部の専門家は労働現場や労働法を知っているが、高校生たちの現実を知らない。高校生に適した教育に疎い。相互の交流・連携が必要だ。
つづいて、神奈川高校生のアルバイト実態調査報告、都立高校定時制生徒の就労状況と労働教育、学校教育における「労働教育」に関する調査報告、労働相談から見える労働教育の必要性、が現場からの報告として行われた。
秘密保護法廃止へ
全国で「6の日行動」 内閣法制局へ申し入れ
一月六日、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会の「12・6を忘れない6日行動」が全国各地で取り組まれた。
東京では参議院議員会館前で毎月定例の抗議行動が行われ、市民団体、労働組合や国会議員など、一〇〇名を超える人が参加して、秘密法の廃止、戦争する国への安倍政権の暴走を批判する声をあげた。
安倍内閣は、2014年7月に憲法解釈を根底的に変える集団的自衛権行使容認の閣議決定をおこなった。内閣法制局は、法案や法制についての審査・調査等を行う機関であり、集団的自衛権行使問題の解釈変更についても責任をもっている。昨年6月の参議院外交防衛委員会では横畠裕介長官が、「法制局内で議論した」と答弁したが、その議論の過程を証明する文書が保存されていない。公文書管理法第4条は「行政機関の職員は、経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない」としている。憲法解釈にかかわる文書を保存していない内閣法制局の行為はまったく違法で決して許せないものだ。
秘密法廃止へ!実行委員会は、声明「憲法解釈変更による集団的自衛権行使のための閣議決定案文の審査に際し、内閣法制局が審査過程の記録を残さなかったことに対して抗議する」をだした。それは、「憲法解釈変更による集団的自衛権行使に際して、意見をまとめる過程の記録を公文書として残さなかった内閣法制局の対応が、公文書管理法に違反すると判断せざるを得ない。『法の番人』と呼ばれ、長年にわたって政府の行政における法的判断を担ってきた内閣法制局が、自ら法律を破り、またそのことを正当化する姿勢を、断じて容認することはできない。さらに、安倍内閣が、このような内閣法制局の姿勢を正し、法に則った国務を行わせることを怠るのであれば、それは憲法73条に反することになり、安倍首相の責任は重大だと言わざるを得ない。このような内閣法制局および国務を総理する立場にある安倍首相に対し、私たち『秘密保護法』廃止へ!実行委員会は、強く抗議する」としている。同実行委員会は、声明をもって内閣法制局に抗議・申し入れを行った。
マイナンバーは危険・いらない
制度の廃止へ!
マイナンバー制度への不安が急速に広がり、また予想された通り通知カード配達の遅れや企業での準備不足という状況の中で、一月運用開始が強行された。しかし、共通番号・カードの廃止をめざす運動の側からのこの制度の問題点についての情報発信はまだ十分ではない現状がある。
12月12日、連合会館で、共通番号いらないネット、マイナンバー制度反対連絡会、マイナンバー違憲訴訟東京弁護団などの実行委員会主催で、「マイナンバー制度の廃止を求める集会」が、「延期させよう!1月利用開始」「申請やめよう!個人番号カード」「支援しよう!違憲訴訟」をスローガンにして開催された。この日の開催は、マイナンバー12桁にちなんだものということだ。
はじめに主催者を代表して、白石孝さんが、なんのための共通番号なのか意味がまったく不明であり、それだけでなくやり方も一方的だ、今後いろいろな問題がでてくるだろう、会社での記入請求や取り扱いなどでの対応について労働組合などもどうするのか考えていかなければならない、と述べた。
共通番号違憲訴訟東京弁護団の瀬川宏貴さんが、「マイナンバー違憲訴訟の論理とは」と題して報告。12月1日に全国5カ所で「マイナンバー違憲訴訟」を提訴した。この訴訟は、国(法務大臣)を被告とする民事訴訟だ。制度スタート前の提訴であり、「危険性があるので、差し止めを要求する」という予防訴訟で、制度が始まって、現実被害が発生したら、それを排除せよという請求理由を加えていくものだ。原告が求める判決(請求の趣旨)は、@被告は、原告らにかかる個人番号を収集、保存、利用、提供してはならない。A被告は、保存している原告らの個人番号を削除せよ。B被告は、原告らに対し、各11万円を支払え、というもの。これから情報漏洩やなりすましなどの具体的な利害を立証することができるかどうかが裁判の肝になる。
今後の運動については、個人番号の提示を強制させないようにすることで、制度の定着を許さないことなどが提起された。最後に「集会決議」(別掲)が採択された(12月14日に内閣府・内閣官房、総務省、国税庁・財務省、厚労省の担当者に手交された)。
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マイナンバー制度の廃止を求める12・12集会決議
(前略)
通知カードの片側には、個人番号カード(=マイナンバーカード)の申請書が付いている。政府は個人番号カードを2019年3月には8、700万枚配布するという計画を立てている。それに向けて法人や学校などの一括申請を可能にしたり、職員証や社員証としての利用も推奨している。極め付けなのは、10%消費増税の際の2%戻し税のための個人番号カード利用である。麻生財務相は「マイナンバーカードを持たない者は税の還付が受けられなくて当然だ」という個人番号カードの取得任意性の原則を全く無視した暴論を展開した。2020年東京オリンピックの入場規制への利用も浮上してきている。ワンカード化が進めば進むほど情報漏洩の危険性は格段に高まる。危険な個人番号カードの申請はやめようという合言葉をもっと多くの人々に届けていきたい。
個人番号(=マイナンバー)は住民票コードと違って、税や社会保障の申告や申請の際に記入を求められる。税についても社会保障についても今のところ未記入でも書類は受理され、不利益がない、と政府は説明している。とはいえ、会社や自治体による番号収集が開始され、半強制的な空気が流れていることを耳にする。番号法的にも申請者の番号記入は義務ではないので、書かないで不利益のないよう引き続き注視し続ける必要があるだろう。私たちも番号記入が強制されないよう様々な場面で記入拒否も含めて取り組みを強化していきたい。
12月1日、仙台、新潟、金沢、東京、大阪の全国5か所で一斉に共通番号違憲訴訟が提訴された。この裁判は共通番号制度が憲法で保障されているプライバシー権を侵害するものであることを真っ向から問うものとなるだろう。是非ともこの裁判の意義を広めていき、多くの方々とともに支援していきたい。必ずや共通番号制度廃止への大きな力となっていくと期待を込めて。
最後に私たちは本日の集会の内容を踏まえて、政府に対して以下の事項を要請する。政府は真摯に私たちの要請を受けとめられたい。
1、運用開始に値する準備が不足している状況に鑑みて2016年1月の共通番号制度運用開始を延期すること。
2、個人番号カード(=マイナンバーカード)の所持を強制するような施策を行わないこと。
3、共通番号(=マイナンバー)記入が求められる申告・申請書類に共通番号の記入がなくても受理し、不利益を与えないことを周知徹底すること。
4、共通番号制度運用の検証が行われていないのに、利用拡大を法制化しないこと。検証作業の中で制度そのものの廃止も含めて抜本的な見直しを行うこと。
年 頭 狂 歌
おめでたう二○一六万筆へ
年始まはりで廃止署名も
国会へわれら初声ひびかせて
アベはヤメローキチをツクルナー
三猿を美徳なりしの愚は自公
差別もみえザル苦悶もきかザル
二〇一六年一月
ヽ 史
複眼単眼
新生の「市民連合」を成功させることは歴史的な課題
今年七月の参議院議員選挙をにらんで、昨年、安倍政権が強行した「戦争法」の廃止とそのための野党の共同を求めて、一二月二〇日、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が発足した。この「市民連合」は二〇一五年安保闘争を連携して闘った五つの団体(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、SEALs(自由と民主主義のための学生緊急行動)、安全保障関連法に反対する学者の会有志、立憲デモクラシーの会、安保関連法に反対するママの会)が、戦争法の廃止を求める二〇〇〇万人統一署名運動を基盤にして結成したもの。
「市民連合」は新年早々、一月五日に東京の新宿駅西口で初めての街頭宣伝をおこない、通行人を除いても五〇〇〇人を超える聴衆が結集した。正午から一時間半の街頭演説会では、市民連合を呼びかけた五団体の代表や、賛同する知識人・文化人などが次々にリレー特をおこなった。多くの市民がプラカードを掲げて弁士に呼応し、また二〇〇〇万人統一署名を呼びかけた。この日、現場で集めた署名は七二七筆にのぼった。
国政選挙を前にして、政党以外の市民団体がこうした大規模な独自の行動を展開するのは一九八九年の「連合の会」(労働組合「連合」を基盤につくられたもの)以来のことで、画期的な試みだ。それだけに、「市民連合」に寄せられる期待は、その実力以上に大きいものがある。発足したばかりの市民連合の前には容易ならざる大きな課題が横たわっている。
一月五日の街頭宣伝でも各弁士によって強調されたのが、政党レベルの野党共闘の進展が遅いことへの批判である。「いまだに野党共闘の枠組みができていない。何をやっているのか」(中野晃一・上智大教授)、「つまらない縄張り争いはやめて、まとまりなさい」(小林節・慶大名誉教授)、「国家神道の安倍自民党と創価学会の公明党が連合しているのに、戦争法反対の野党が連合できない理由はない」(高田健・総がかり行動実)などなど、厳しい意見が表明された。
市民連合はその【理念】として、「立憲主義、民主主義、平和主義の擁護と再生は、誰もが自由で尊厳あるくらしをおくるための前提となるものである。私たち市民連合は、安全保障関連法を廃止、立憲主義を回復し、自由な個人が相互の尊重のうえに持続可能な政治経済社会を構築する政治と政策の実現を志向する、を掲げ、【方針】としては、二〇〇〇万人署名を共通の基礎とし、@安全保障関連法の廃止、A立憲主義の回復(集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を含む)、B個人の尊厳を擁護する政治の実現に向けた野党共闘を要求し、これらの課題についての公約を基準に、参議院選における候補者の推薦と支援をおこなう」ことを掲げている。そして、@格差・貧困の拡大や雇用の不安定化ではなく、公正な分配・再分配や労働条件にもとづく健全で持続可能な経済、A復古的な考えの押しつけを拒み、人権の尊重にもとづいたジェンダー平等や教育の実現、Bマスコミや教育現場などにおける言論の自由の擁護、C沖縄の民意をふみにじる辺野古新基地建設の中止、D脱原発と再生可能エネルギーの振興、などのテーマにおいて政策志向を共有する候補者を重点的に支援していく。〜などの政治方針を確認している。
すでに熊本選挙区などではこの主旨に合致する統一候補が決まったが、その他の選挙区の候補者の擁立・調整はまだ成立していない。
市民連合を中心にした市民運動圏の世論が、野党各党を叱咤激励し、参院選における共同にまですすめることができるかどうか、今後の運動にかかっている。
時代のなかで誕生した「市民連合」の企てを成功させることは、全国の市民運動の極めて重要な課題だ。 (T)