人民新報 ・ 第1335号<統合428号>(2016年3月15日)
目次
● 総がかり・野党共闘強化で戦争法廃止・安倍内閣打倒へ
● はじめて稼働中の原発を運転停止させた歴史的決定
● 基地をつくるな!辺野古につくるな! 28000人で辺野古埋立て2・21首都圏アクション国会大包囲
● 郵政リストラを許さず、労働運動の発展をめざす全国共同会議が非正規労働者の正社員化と均等待遇を求め郵政本社前集会・院内集会
● 「謝れ」「償え」「保障せよ」 ひだんれん「福島原発事故事故から5年―被害者を切り捨てるな!全国集会」
● 戦争法廃止と朝鮮半島の平和を求める日韓連帯集会
● 「マイナス金利」=終局に近づくアベノミクス 1、「マイナス金利」の異常性
● 時事狂歌
● 複眼単眼 / 安倍の改憲画策と野党共闘
総がかり・野党共闘強化で戦争法廃止・安倍内閣打倒へ
戦争法廃止・安倍政権打倒へむけての運動が着実に前進している。2月19日、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」による19の日行動は各地で取り組まれ、国会議員会館周辺には七八〇〇人が参加した。
同日には、民主党、共産党、維新の党、社民党、生活の党と山本太郎と仲間たちの野党5党の党首会談が開かれ、@安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。A安倍政権の打倒を目指す。B国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む。C国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う、ことを確認し、「5野党の幹事長・書記局長は、これらの確認事項の目的を達成するために、早急に協議し、その具体化を進める」とした。そして、5党は共同して戦争法廃止法案(10本の法改定からなる「平和安全法制整備法」と、「国際平和支援法」からなる2法を廃止)を国会に提出した。衆院北海道5区補選でも共同が成立した。参院一人区でも調整が進んでいる。戦争法廃止、参院選での野党共闘強化の陣形づくりがスタートした。
2月26日には「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」と「総がかり行動実行委員会」共催の「野党共闘で戦争法廃止へ!集会」が開かれ、民主党の小川敏夫参議院議員、共産党の小池晃参議院議員、維新の党の初鹿明博衆議院議員、社民党の又市征治参議院議員から戦争法廃止にむけた運動の強化と参院選での勝利にむけた決意が語られた。
昨年夏以来の「野党共闘で安倍政権と対決しよう」という大きな広がりを見せた声の具体化がはじまった。しかしここまでくるには様々な障害を克服する努力がなされたことを忘れてはならない。今後も紆余曲折を経ながらの共同・総がかり態勢づくりがおこなわれていく。
安倍内閣は、戦争法、辺野古新基地建設、原発再稼働などに反対する持続的な民衆運動、そしてそれを背景にする野党共闘の実現という対抗勢力の形成ばかりではなく、さまざまな困難に次々と直面している。現職大臣のスキャンダル続出、経済的な失速―株価の低迷とアベノミクスの破たんの兆し、オリンピック・パラリンピック事業での迷走、外交関係でも東アジア近隣諸国との関係、「従軍慰安婦」などをめぐる日本政府への国際的批判、またTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が国会審議に入ることによって、安倍政治と人びとの利害の矛盾が明らかになる。
2015安保闘争の大きな成果を引き継いで、安倍内閣を追い詰め打倒しよう。
はじめて稼働中の原発を運転停止させた歴史的決定
3月9日、大津地裁は、原発立地の福井県に隣接する滋賀県住民が起こした仮処分申請に対して、関西電力高浜原発3・4号機の運転差し止め決定をおこなった。「(高浜発電所3号機及び同4号機)が耐震性能に欠け、津波による電源喪失等を原因として周囲に放射性物質汚染を惹起する危険性を有する旨主張して、人格権に基づく妨害予防請求権に基づき、本件各原発を仮に運転してはならないとの仮処分を申し立てた事案」であり、この命令によって、相次ぐトラブルによって停止中の4号機に加え、3号機も運転を停止した。
今回の決定は、稼働中の原発がはじめて運転停止命令を出されたこと、それも立地自治体以外の住民の申請によるものであったという画期的なものであった。
福井から原発を止める裁判の会(中嶌哲演代表)は「仮処分決定に関する声明」で、「司法の良心が原発の再稼動を現実に差し止めました」と評価し、「私たちは、大飯原発3・4号機、高浜原発1・2・3・4号機をはじめとする福井の原発、そして、全国、全世界の原発を止め、そして廃炉にする闘いを更に力強く進めていきたいと思います。関西電力は直ちに高浜3・4号機を停止し、大津地裁仮処分決定に対する異議を取り下げよ!全国の仲間の皆さん、この大津地裁での勝利をばねに、高浜原発再稼動の息の根を止め、さらに全国の原発の再稼動阻止、そして廃炉を勝ちとっていくために連携を強め、共に闘かっていきましょう!」とアピールしている。
しかし安倍内閣は「原発推進」政策をごり押ししてきている。脱原発の声を一層広げ、安倍内閣を追い詰めていこう。
基地をつくるな!辺野古につくるな!
28000人で辺野古埋立て2・21首都圏アクション国会大包囲
基地建設工事は一時中断!
安倍の欺瞞的「和解」姿勢
安倍政権の沖縄・辺野古新基地建設ごり押し政策は沖縄県民の大きな反発を生み出した。
13年12月、それまでの公約を反故にし県民の心を踏みにじった当時の沖縄県知事・仲井真弘多が名護市辺野古の埋め立てを承認した。
しかし、14年12月には、オールオキナワによる新基地NO!の声は翁長雄志沖縄県知事を誕生させた。こうして県政も断固阻止の立場を鮮明にし、15年10月、翁長知事が埋め立て承認を取り消した。
しかし政府は代執行手続きへの着手を閣議了解、国交相が承認取り消しの効力を止めると決定し、防衛省が辺野古埋め立ての本体工事に着手し、11月には国交相が翁長知事を高裁に提訴するまでの暴挙をつづけた。国と県は三つの訴訟を争っているが、今年1月、福岡高裁那覇支部は和解案を提示し、3月4日、安倍首相は、「和解」案を受け入れるともに辺野古での工事を中止するとして、国と沖縄県の「和解」が成立した。
辺野古現地での阻止闘争による工事の大幅な遅れ、裁判でも敗訴の可能性が高まり、安倍政権は追い詰められた。それが今回の「和解」へ政府が向かった要因だ。だが、安倍政権は「辺野古唯一」を断念したわけではない。「和解」は、国政選挙を前にした内閣支持率低下の阻止と反対運動の分断をねらったいつもの欺瞞的な世論工作に他ならず、強制代執行という手段をとらないでさまざまな手段・口実で工事を続行することは明らかだ。
「和解」条項は国に県側との「円満解決」に向けた協議をすることも盛りこまれており、国と県の協議という過程が始まるが、安倍政権はそれが始まる前にすでにその本性を明らかにした。「和解」の話の直後から安倍は「辺野古移設が唯一の選択肢という考え方に変わりはない」と述べている。
3月7日には石井啓一国交相が翁長知事による埋め立て承認取り消し処分の是正を指示する文書を県に発送した。文書は県に対し埋め立て承認取り消し処分の取り消しを求めているものだ。国は「和解」にむけた協議をすることなど一切なしに、わずか3日後に是正指示を出したのである。これが安倍政権の「和解」なるものだった。
当然にも沖縄側は態度を硬化させ「あらゆる手法を用いて辺野古新基地は造らせないという方針に変わりはない」として、工事の設計変更申請などの面で対抗していくとしている。
民意を踏みにじり強権政治を推し進める安倍政権にたいしては全面対決、新基地絶対阻止の闘いの強化以外にない。
首都圏アクション国会包囲
安倍政権の辺野古新基地建設工事は、警視庁機動隊を動員するなど反対運動を暴力的に弾圧を強化する中で強行されてきた。
キャンプシュワブ辺野古現地では、絶対に屈しない身を投げ出しての熾烈な闘いが続けられている。そして本土においても沖縄の不屈の闘いに呼応する闘いが拡大している。
2月21日には「『止めよう! 辺野古埋立て』国会包囲実行委員会」と「戦争させない・9条壊すな!
総がかり行動実行委員会」の共催による国会包囲闘争が闘われ、28000人が結集した。国会周辺は辺野古の海のあらわすシンボルカラーの青で埋め尽くされた。
この日は全国14か所で辺野古埋め立て反対の抗議の集会が持たれた。
国会前集会では、はじめに「『止めよう!辺野古埋立て』国会包囲実行委」の野平晋作さんと「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委」の鎌田慧さんの主催者あいさつ。つづいて、稲嶺進さん(名護市長・オール沖縄会議共同代表)、安次富浩さん(ヘリ基地反対協議会・共同代表)が現地闘争からの訴えを行った。衆院沖縄4選挙区からは赤嶺政賢さん(共産党)、照屋寛徳さん(社民党)、玉城デニーさん(生活の党と山本太郎と仲間たち)、仲里利信さん(無所属)が参加し、保守革新を超えた沖縄の声―辺野古基地を「断念させること、参院選勝利で安倍政権を追い込むこと、全国をむすんだ運動を強化しよう、と力強い決意表明があった。民主党、共産党、社民党など野党の代表、フォーラム・平和・人権、全労協、安保破棄中央実行委などの発言がつづいた。土砂運搬を止める闘いを行っている愛媛の阿部悦子さんは、闘いが瀬戸内をはじめ各地に広がっていることを報告した。
国会大包囲の首都圏アクションは成功した。
新基地阻止へ辺野古現地の闘いを支援・共闘の輪を広めよう。
郵政リストラを許さず、労働運動の発展をめざす全国共同会議が
非正規労働者の正社員化と均等待遇を求め郵政本社前集会・院内集会
非正規正社員化要求署名
郵政グループ各社には約42万人が働いているが、そのうち46%が非正規雇用の労働者だ。同じ業務、同じ責任をおわされているのにもかかわらず、非正規労働者の格差は年収賃金では正社員の約三分の一であり、休暇やその他の福利面でも格差は著しい。
こうしたまったく理不尽な格差の是正は一刻も遅らせてはならない。政府も格差是正、同一労働同一賃金を言わざるを得ないところにきている。
昨年11月郵政は株式は上場されたが、郵政民営化法でも日本郵政の政府による株式保有義務は三分の一超となっているし、西室泰三社長が「今後3年から長くて5年で50%程度まで売却したい」というように現在も政府が90%近くを持つ最大の株主であり、政府が同一労働同一賃金を言うのなら非正規労働者の格差是正はまず郵政から始めるべきであり、その条件も充分備えているのである。
郵政産業労働者ユニオンと郵政倉敷労働組合で構成する「郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議」は、「郵政に働く非正規労働者の正社員化と均等待遇を求める要請署名」に取り組んできた。その要請事項は以下の6項目だ。@希望する非正規労働者の正社員への採用(登用)を行うこと。また、正社員採用にあたっては採用人数を明らかにし、公正・公平な採用(登用)を行うこと。A(新)一般職への採用(登用)については、応募要件を見直しするとともに選考方法を簡素化し、郵政非正規社員を優先的に採用すること。B有期から無期雇用への転換は、有期期間3年を経過した時点で行うこと。また、すでに3年を経過した非正規労働者は無期雇用とすること。無期雇用へ転換した労働者の労働条件は、正社員水準に改善すること。C非正規労働者の最低時給を1200円とし、生活できる賃金を保障すること。D年次有給休暇、病気休暇、育児・介護休暇、産前・産後休暇、年末始特別休暇、夏期・冬期休暇などの諸休暇について正社員同様の休暇を付与すること。E年末年始勤務手当、早出勤務手当、夜間特別勤務手当、祝日給、夏期・年末手当、住居手当、扶養手当などの諸手当を正社員同様支給すること。
郵政本社前集会
2月29日、郵政本社前で「非正規労働者の正社員化と均等待遇を求める本社前集会」が開かれ、200名が参加した。主催は、郵政関連職場での諸争議の勝利をめざし組合の違いを超え相互支援を進め、また春闘諸行動等を共同してとりくむ個人と団体で構成する「郵政リストラを許さず、労働運動の発展をめざす全国共同会議」。
小田川全労連議長、金澤全労協議長から共闘あいさつにつづいて郵政ユニオンの日巻直映・中央執行委員長が発言。本日、「郵政に働く非正規労働者の正社員化と均等待遇を求める要請署名」2、943筆を本社に提出した。また、国会内超党派の「非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を考える議員連盟」(非正規雇用対策議連)への要請を行った。安倍内閣は格差是正などを柱とする「一億総活躍社会」の実現を掲げている。であればまず郵政から先駆けて均等待遇を進めるべきだろう。
雇止め・解雇裁判に勝利し職場復帰をかちとった千葉中央局の吉村さん、「組立作業廃止」との理由で解雇され解雇無効の完全勝利判決を勝ちとった横浜青葉局の清水さん(会社側は控訴)が報告を行い、東海、近畿、東京、中国から非正規労働者の闘うアピールがつづいた。
郵政倉敷労働組合の川上幸治委員長がまとめを行い、最後に団結ガンバローで終了した。
院内集会での決意表明
午後からは院内で集会。梅田和尊弁護士が、「郵政労契法20条裁判の意義(格差社会の改善を目指して)」と題して講演し、郵政や東京メトロコマースなどをはじめ、各地で格差是正に向けた動きが始まったこと、そして、不合理な格差は禁止されるという法律ができたことを知り、また周りに伝えていくことが大事だと強調した。
ひきつづいて22名の非正規労働者からは報告と決意が語られた。
最後に行動提起が行われ正規社員化・均等待遇をかちとるために闘いを強めることが確認された。
「謝れ」「償え」「保障せよ」
原発被害者団体連絡会「福島原発事故事故から5年―被害者を切り捨てるな!全国集会」
ひだんれんが政府に緊急要請
3月2日、日比谷野外音楽堂で、原発被害者団体連絡会(ひだんれん)は「謝れ」「償え」「保障せよ」をかかげ、国民の命と生活を守るべき立場にある政府と福島県、直接の加害責任者である東京電力に対し、全被害者の悲痛な叫びに耳を傾け、誠実に応えることを要求する「福島原発事故事故から5年―被害者を切り捨てるな!全国集会」を開催した。
はじめにひだんれん共同代表の長谷川健一さんが開会あいさつ。午前中、参議院議員会館で「子ども・被災者支援議員連盟」の総会が開催され、復興庁と環境省から説明があり、議員も参加した。ひだんれんは首相宛の「住宅、区域指定・賠償、子ども・被災者支援に関する緊急要請書」(別掲)を提出した。政府側と交渉をおこなったが、政府側はまったく拒否の姿勢に終始した。ほんとうに被災者をがっかりさせるような酷い対応だった。しかしあきらめてはいない。これからも一段と力をふりしぼって国の無責任な被害者切り捨て政策を許さず運動を強めていこう。
つづいて、ひだんれんの基本要求と緊急要請が読み上げられた。 その後、各地の原告団をはじめ全国からの発言がつづいた。
ひだんれん共同代表の武藤類子さんは次のように述べた。一昨日2月29日東京第5検察審査会の起訴議決に基づいて検察官役の指定弁護士は、勝俣恒久・元会長、武藤栄・元副社長(原子力・立地本部長)、武黒一郎・元副社長(同)を起訴した。起訴してから4年、東電の役員が刑事裁判の被告となった。理不尽な被害を与えた東電、国、自治体のすべてが責任をとるべきだ。これからも闘いはつづいていく。
最後に集会宣言が読み上げられ、デモに出発した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
緊急要請書
2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原発の事故による原子力災害は、福島県を中心にした日本全土に測り知れない被害をもたらし、被害はいまも拡大し続けている。飛散した放射性物質に汚染された空、海、川、山、土。根底から破壊された人々の日常生活、命と心と健康、地域社会と文化、自然と生き物たちへの被害は、数十年、数百年、数千年以上にわたって続く。この未曽有の原発災害を引き起こした原因は何か。その責任はどこにあるのか。被害の総体はどれほどのものであるのか。これらの根本問題は、5年を経過したいまも解明されていない。原発サイトでの事故収束、廃炉への道筋は見えず、放射性廃棄物はいたるところに野積みにされたままである。加害者の立場にある日本政府は、原子力発電に依拠する政策を再び推進し、再稼働と輸出を進めながら2017年3月末を目途に被災地の避難指示を解除し、東京電力は賠償を打ち切り、福島県は避難者への住宅無償提供を打ち切るとしている。福島原発事故による原子力災害に蓋をして無かったものとし、被害者を見捨てる「棄民政策」である。私たちは、この原子力災害によって引き起こされたあらゆる被害について、全ての被害者への完全な賠償と原状回復を要求する。それは、生き残った私たちの人間としての尊厳を回復する当然の権利であるだけでなく、無念の生涯を閉じられた多くの人々への弔いであり、「二度と再びこのような惨劇は引き起こさせない」という将来に生きるあらゆる命への責任と誓いである。
「謝れ」「償え」「保障せよ」
私たち原発被害者団体連絡会は、国民の命と生活を守るべき立場にある日本政府に対し、全被害者の悲痛な叫びに耳を傾け、以下の緊急要求に誠実に応えることを要求する。
記
1、住宅無償提供に関して
@福島県が2015年6月15日に発表した「避難指示区域外避難者に対する住宅無償提供2017年3月打ち切り」の方針を撤回し、被害者への完全賠償が完了するか、または新たな法的保障措置が発効するまで従来通り無償提供を継続するよう、福島県に働きかけることA仮設住宅からみなし仮設住宅への転居、生活条件の変化に応じた転居など、住み替えを柔軟に認めることB放射能汚染地域からの新たな避難者への無償提供を再開すること
2、避難指示区域の解除・賠償打ち切りに関して
@政府が2015年6月12日に閣議決定した「福島復興加速化指針・改訂版」で示した居住制限区域と避難指示解除準備区域の「2017年3月までの避難指示解除及び1年後の賠償打ち切り」の方針を撤回することA年間追加被ばく線量が1mSvを下回ったことが科学的に実証され、原発サイトにおける事故再発の危険性が完全に除去されるまでは現行の避難指示を維持し、帰還を強要しないこと
3、「原発事故子ども・被災者支援法」(支援法)に関して
@政府が2015年8月25日に閣議決定した「支援法・基本方針改定」を撤回することA支援法に定める避難・帰還・居住の選択の自由を認め、「被ばくを避けて生きる権利」を保障する施策を早急に確立すること
戦争法廃止と朝鮮半島の平和を求める日韓連帯集会
2月27日、上野区民館で「3・1朝鮮独立運動九七周年 戦争法廃止と朝鮮半島の平和を求める日韓連帯集会」が開かれた。日韓民衆連帯全国ネットワーク、ピースボート、「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW・RAC)、反安保実行委員会、許すな!憲法改悪・市民連絡会、在日韓国民主統一連合などのよびかけによる集会で130人余りが参加した。
はじめに日韓民衆連帯全国ネットワークの渡辺健樹さんが主催者あいさつ。
戦争法は朝鮮半島などアジアでの緊張の高まりなどを口実にあげている。しかし朝鮮半島の危機の根源はいまだに平和条約が結ばれずに、たんなる休戦状態にあることだ。戦争法廃止と朝鮮半島の平和を求めることには深い関係がある。
講師は高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)で「戦争法・憲法改悪の動きとどう闘うか」というテーマで講演した。
この3月末に、戦争法は施行される。まず南スーダンへの自衛隊派遣が言われているが、そこにとどまらない。中東でのISなどとの戦闘も予想されように、日本は「新たな戦前」の時代に入るという容易ならない状況になった。朝鮮半島でも緊張が高まっているが、日本が参加した戦争をどこでもさせないために戦争法廃止、憲法の改悪を阻止する闘いがある。安倍政権はこの夏の参院選で改憲を公約に入れると明言した。いま安倍が狙っているのは緊急事態条項挿入による改憲だ。「専守防衛論」も含めて、外部からの侵略に対して武力で防衛するという議論に私は賛成できない。戦争が起きないような国際環境を外交努力、民間外交などを尽くして、いかに形成するかという課題がある。戦争は自然災害とは異なり人災であり、防ぐことは可能だ。いま求められているのは、2000万署名を中心に、南スーダンPKOの駆けつけ警護や南シナ海での武力衝突、朝鮮半島での危機事態など戦争法の廃止と発動阻止の運動を強め、参院選で野党共闘の勝利を実現することであり、沖縄の闘い、原発再稼働反対や労働法制の改悪反対の運動などと結びつけて、憲法を改悪しようとしている安倍政権に反対する大きな運動のうねりを作り上げていくことである。戦争法廃止、立憲主義の復権を課題にした運動、そして選挙協力の成否は市民運動の高揚にかかっている。参院選での野党共同の勝利は安倍内閣に痛撃を与え、衆議院選挙がらみで安倍政権の退陣は現実のものとなりうるし、戦争法廃止への道を開くことになる。憲法改悪に反対する運動は、日本国憲法という課題の特性として、一国的な運動になりがちだが、日本の平和憲法の破壊に反対する課題は、日本国憲法前文が示しているように、決して一国的な課題ではなく、世界の、東アジアとりわけお隣の韓国・朝鮮半島の民衆との連帯なしに成功しない。
韓国ゲストのイ・チャンボク(李昌馥)さん(6・15南北共同宣言実践南側委員会常任代表議長)が「韓日民衆の連帯強化で、東アジアの平和を実現しよう!」と題して報告した。 私はちょうど20年前に、韓国の民主主義民族統一全国連合の常任議長として、この集会に参加した。この20年を思い返してみると、問題の解決はおろか、さらに複雑になってきている。現実に目を向けると、朝鮮半島南北の関係は、緊張と危機が最高レベルに達し、韓国の人たちは不安におののいている。昨年末の韓日外相会議では「慰安婦問題の合意」を発表した。しかし、当事者である元慰安婦の人たちや関連市民団体は無効を主張し、反発を強めている。日本の教科書の歪曲や、独島問題も解決していない。慰安婦問題では、日本軍が若い女性を強制的に連行し性奴隷と貶めたことについて、政府レベルでの真の謝罪は一言もない。被害当事者の意思が反映されない拙速な合意というものは、全くの無効だ。
私たちは本質的な問題に目をむけるべきで、それは東アジア問題解決のキーポイントとなる朝鮮半島の平和と安定だ。朝鮮半島で南北、米朝の衝突を阻止し、様々な問題の解決のためには、南北当局間の対話を続けて行かなければならない。現在、朝鮮半島の危機は最悪の状況に向かっているが、朝鮮半島の平和と安定にむけて根本的な対策を提示することが必要であり、1953年7月の停戦協定を破棄し、新たに平和協定を締結すること以外にない。平和協定が締結されれば、北の核問題も自ずと解決する道が開かれて行く。私たちは、平和協定締結運動を繰り広げるため国の内外で緊密な連携を進めて行こうと思っている。日本の平和のために闘う市民社会運動団体にも共同で進めることを提案したい。
朝鮮半島危機の根源は南北分断だが、分断の原因から日本も自由になり得ない。今年2月17日、中国の王毅外相は朝鮮半島核問題の解決と平和協定締結を並行して進めようとする提案を行った。まだ関連国の反応は見えず、非常に慎重な様子をみせているのも事実だ。今世紀の特徴は、重要な懸案事項がグローバル化していく傾向にあるということだが、一国の問題がその国の問題だけで終わるのではなく、世界的な問題となっています。朝鮮半島の問題も国際的な関心と努力によって解決し、東アジアの平和に結び付けて行かねばならない。この問題の迅速な解決と実践の過程には、韓日、ひいては東アジアの民衆が主体的な勢力として立ち上がるべきで、今回のシンポジウムには大きな意義がある。朝鮮半島の平和協定締結、東アジアの平和実現のため、韓日連帯をさらに強め、国際連帯を拡げる契機となることを希望したい。
韓国では今年の3月から4月にかけての韓米日軍事演習に反対する運動を計画し、停戦協定の7月27日から解放記念日の8月15日まで、朝鮮半島平和と統一のための様々な大衆運動を進める予定であり、また朝鮮半島の平和協定締結のための国際大会も開催しようと思っている。韓日民衆の固い連帯で、朝鮮半島の安定、東アジアの平和を作って行きこう。
特別報告としては、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの青木初子さんの「辺野古新基地建設反対」、中原道子さん(VAWW・RAC共同代表)の「日本軍『慰安婦』問題の真の解決を」、森本孝子さん(『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会)の「朝鮮学校に『高校無償化』の適用を!」があり、最後に集会アピール(別掲)が参加者全員で確認された。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3・1朝鮮独立運動97周年戦争法の廃止と朝鮮半島の平和を求める2・27日韓連帯集会アピール
今年の3月1日は、日本の植民地支配からの独立を求め朝鮮半島全土で人びとが立ち上がった3・1独立運動の97周年を迎えます。私たちにとっては、歴史を直視しながら、朝鮮半島やアジアの人びととの平和な関係をいかに築くのかを問い直す日でもあります。
朝鮮半島を再び戦場にするな!
しかし昨年、日本の敗戦70年の節目の年に、安倍政権は広範な人々の反対の声を無視し「戦争法」を強行成立させ、日本を再び戦争のできる国へと大きく変容させました。中国・朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の「脅威」をことさら煽り立てながら、米軍とともに世界の至る所で戦争に参加することが可能となったのです。沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設の強行もこれと一つの問題です。
とくに朝鮮半島では、米韓連合軍による大規模軍事演習が絶え間なく繰り返され、昨年には、ピョンヤン制圧を含む新たな対朝鮮先制攻撃戦略「5015作戦計画」も策定されています。
これに集団的自衛権行使容認、改定された日米防衛協力指針(ガイドライン)、そして戦争法成立後の自衛隊が関わってくることは火を見るより明らかです。
米日韓軍事同盟を優先した日韓政府間「慰安婦」合意
昨年12月28日の日韓外相会談は、日本軍「慰安婦」問題の合意に至りました。日本政府がお詫びを述べ、韓国政府が設立する基金に10億円を拠出する−などとなっていますが被害当事者抜きのあいまいな内容である上、「最終的かつ不可逆的解決」として韓国側が問題を蒸し返さないことや日本大使館前の「少女像」撤去を働きかけるなどの前提条件付きで、問題を真摯に解決しようとするものではありません。
このような合意を急いだ背景には、同盟国・日韓の対立を自国の戦略にとって不利としてきた米国の圧力が存在しています。これにより、米国が求め日韓の対立で先送りされてきた自衛隊と韓国軍の間の「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」締結など米日韓軍事協力の動きを加速させようとしています。
私たちは、このような米日韓軍事同盟の危険な動きに強く反対します。
戦争法廃止!朝鮮半島の平和協定求める国際世論を!
この中で、1月6日、朝鮮政府は自ら「自衛処置」とする「水爆実験」を実施しました。さらに2月7日のロケット打ち上げを「事実上の弾道ミサイル」と称して、にわかに「制裁」論議が高まっています。すでに米日韓は独自「制裁」に踏み込みました。さらに3月以降「かつてない」と言われる米韓連合軍の大規模軍事演習が強行されようとしています。
朝鮮半島の平和のために今何よりも求められているのは、「制裁」や軍事的圧力ではなく、63年にも及ぶ「撃ち方やめ」に過ぎない休戦協定状態を終結させ平和協定に転換させることです。これこそが朝鮮半島の核問題解決への近道でもあるのです。これを拒み続けてきたものこそ自らの軍事プレゼンス維持を続けたい米国政府です。今こそ米国政府に、朝鮮との対話と平和協定締結を要求する国際的な共同行動を作り出していくことが必要です。
私たちは、あらためて全国の仲間たちに呼びかけます
昨年、日本民衆は国会包囲をはじめとして全国各地で戦争法に反対する大きなうねりを作り出してきました。このうねりを戦争法廃止・辺野古新基地建設阻止・安倍政権退陣へさらに大きなうねりにしていきましょう。そして、これと一つながりの問題として朝鮮半島の休戦状態の終結と平和協定締結のための闘いを広げていきましょう。野党共闘を促進し、参議院選で改憲発議可能な三分の二の議席確保を画策する安倍政権与党と補完勢力を惨敗に追い込みましょう。
「マイナス金利」=終局に近づくアベノミクス
1、「マイナス金利」の異常性
1月29日、日銀の黒田総裁はマイナス金利政策の導入を決めた。資本主義は利潤の獲得こそその原動力である。これまでは経済対策として金利を下げても景気にプラス効果を持つ下限はゼロまでと考えられてきた。銀行が日銀に準備預金をすると貸出した側が金利を支払うというのは本来あり得ない転倒した事態だ。金利がマイナスになれば金融機関の利益が減少し企業や家計に負担を転嫁する可能性が高く、「理屈上は景気刺激的な効用はなく景気抑制的に作用する」(河野龍太郎BNPパリバ証券経済調査部長ロイター2/16)負の作用があるにもかかわらず導入した狙いは、昨年12月のFRBの金利引き上げに伴う中国など新興国経済の動揺による円高と株式市場の下落を防ぐための「円安誘導」にある。マイナス金利は金融緩和が実体経済にほとんど効果がなく有効な手段が尽きてしまった結果でもある。3/9付日経経済教室で加藤出東短リサーチ社長は「日銀がマイナス金利を決定してから1ヶ月余が経過したが、日銀への批判はいまだにすさまじい。筆者は海外を含め主要中央銀行の金融政策を長く見てきたがこれほどの激しい反発は今まで記憶がない」と述べている。これは昨年夏の憲法学者が一斉に「集団的自衛権の行使容認は違憲」とする動きの高まりと極めて類似した表れであり、安倍政権と経済界の中枢に近い位置から反アベノミクスの論陣を張るエコノミストが出てきた影響は大きい。
2、アベノミクスの深刻な現状
2013年4月、アベノミクスの具体策として日銀は「異次元の量的質的金融緩和(QQE)」によって「2%インフレ目標を2年以内に達成」しデフレ脱却を図るとした。しかし3年を過ぎた現在、その成果はどうなったのか。日銀は金利を押し下げるため当初年間50兆円国債買い入れを効果が乏しいとして14年10月には30兆円増やし年間80兆円とした。日銀の国債保有額は340兆円を超え国内総生産(GDP)との対比では、導入時は3割弱だったが、足元で6割に達した。2割前後の欧米中央銀行に比べて突出している。ジャブジャブの金融緩和の真の狙いは「円安」にあった。一ドル=90円台から120円台まで円安は輸出企業の大幅な為替差益による利益の拡大と株高を実現した。しかしその副作用はあまりにも大きい。15年10〜12月のGDPは改定値でも年率▲1・1%のマイナス成長となりGDPの6割を占める個人消費は0・9減と落ち込んでいる。日本の家計は相当厳しい状況に追い込まれており、消費を増やす余力がなくなっているのが現実である。二人以上の世帯の実質消費支出は21ヶ月連続の前月割れとなっており、家計の中の食料品支出の割合であるエンゲル係数は2013年までは25%を超える月はほとんどなかったが昨年5月以降は毎月25%を超え12月は27・8%となった。この大きな要因は8%への消費税UPと実質賃金の減少である。2月8日の厚労省の発表では一般労働者の実質賃金は前年比0・6%減少し12年から4年連続のマイナスとなった。
3、世界的経済悪化に直面するアベノミクス
この間アベノミクスが破綻しなかった大きな要因は、08年以降、リーマンショックの救済策として欧米諸国と中国が一斉に異常な金融緩和をとったことがある。アベノミクス=QQEの円安政策は製品輸出を増大させ自国だけ利益を得ようとするため、通貨安競争生み出し、1930年代の世界恐慌の要因ともなった「近隣窮乏化政策」と同類のものとして世界的に厳しい批判を受けても不思議ではなかった。しかしアメリカは金利の引き上げを開始し、円安を容認してきた国際的環境は一変した。新興国から先進国に資金が逆流する動きが強まり日本が円安政策を推し進めることは困難を増している。2月中国・上海でのG20では為替相場に関して「競争的な切り下げを回避する」ことを確認した。その中でユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長は日本の円安政策について「他が追随し、競争的な切り下げとなるリスクは非常に大きい」と警告した。アメリカ大統領選の有力候補の共和党トランプ氏は「アメリカは、日本から雇用を取り戻さなければならない」とし民主党クリントン氏は為替操作を行う日本を「長きにわたる犯罪者(culprit)」と言っている。アメリカとEUは、為替市場で政府が直接的に介入することには明確に反対だ。現に日本の財務省が円高阻止の市場介入を行ったのは2011年冬が最後である。海外の批判を逃れる手段としてQQEに頼ってきたが、年初からの円高に対抗するためマイナス金利を採用したが、国際的批判を浴びる事態を招いている。
4、第2次大戦末期に重なる「この道しかない」アベノミクス
「是非やれと言われれば、初めの半年や1年はずいぶん暴れてご覧にいれます。しかし2年、3年なってはまったく確信は持てません」(「マイナス金利」徳勝礼子著 東洋経済新報社)と開戦当初、山本五十六連合艦隊司令長官は近衛首相に述べていた。同様に黒田日銀総裁も「2年程度」という短期決戦・奇襲戦法を採ったが、まったく実現せず自ら愚策としていた「戦力の遂次投入」に陥っている。これまでの失敗を認めない黒田総裁は、サプライズ効果を重視し、1月の国会で「具体的に考えていない」と否定した直後にマイナス金利導入を行うなど「大本営発表」の「転進」同様の手法をとったが、市場は株の大幅下落・円高の進行で応じた。旧日本軍と政府の指導層に、敗北という選択肢はなかった。戦局が悪化しても現実を直視せず「生還を許さない作戦」=「特攻」「玉砕」を「この方法しかない」として異様な「霊的突撃」(「日本の軍隊」岩波新書 飯塚浩二著)を大々的に続けた。歴史のアナロジー(類似)ともいえるアベノミクスによる日銀のQQEには出口戦略がなく「片道突撃」「特攻出撃」とまで言われている(「日本銀行」翁邦雄京大公共政策大学院教授著 ちくま新書)。アベノミクスの失敗は単に政策を変えることでは終わらない。この間政府債務残高はGDP比で250%となったが、日銀のよる大量国債買い取りによる金利引き下げ=金融抑圧によって足元の金利は0・3%以下で推移し毎年の利払い費は10兆円規模ですんでいる。経済成長が望めず国債返済に対する疑念が市場に生まれた途端、金利は急上昇する。金利が仮に2%なれば政府歳入の50兆円に匹敵する利払い費となり財政破綻は免れ得ない。金利上昇を止めるには日銀は際限なく国債を買い続けるしか道はない。アベノミクスに「敗北」を認める選択肢はない。
5、アベノミクスの行方
マイナス金利政策はマイナス幅が拡大すると地方経済の疲弊で優良な貸出先が乏しく国債運用に頼っている地方の中小金融機関の破たんに繋がる。一般の預金へのマイナス金利適用は、先行するデンマークの住宅バブルやスイスの「タンス預金」の増大のように悪影響が大きく困難だ。安倍政権が取りうる手段はG20で容認された「財政出動を伴った景気刺激策」となる可能性が高い。しかし政府支出の拡大は累積債務の一層の膨張を意味し金利高騰の極めて高いリスクがある。安倍政権は今年7月の参議選において、安保法制を廃止し立憲主義の回復を求める野党共闘が形成され始めていることを警戒している。安倍首相の野望である「改憲」の実現のためには何としても選挙前の経済悪化は避ける必要がある。このままでは年初の株の大幅安と円高により1〜3月のGPIF(年金積立金管理運用独立法人)の期間評価損は昨年7〜9月の約▲8兆円を上回る▲10兆円近くになるとの試算もありその決算の公表は選挙直前の6月となっている。安倍首相は14年6月に「損になることをするわけがないじゃないですか、大切な年金をお預かりして運用しているんですから」言っていたが、3/15には年金運用損が出た場合の国会での質問に対し「想定の利益が出なければ、当然年金払いに影響する。…給付で調整するしかない」と開き直っている。これを避ける方法は3月末にかけて公的資金の総投入による株の買い上げと4月以降の「緊急経済対策」=覚せい剤的財政出動である。一方では財政規律弛緩による金利上昇が起こる可能性が高いので来年4月の消費増税に対しては参議選前まで「曖昧戦略」をとると考えられるが安倍首相の優先順位は経済よりも「改憲」であり衆参同時選挙の可能性は否定できない。だがこうした弥縫策の行きつく先は、非連続的な債務調整(ハイパーインフレと大増税)でしかない。 (関 孝一)
時事狂歌
片よった政策だらけ擬議するを
デンパとめたしかた寄り大臣
がぶり寄る勝手わがままアベせいじ
市民の声でウッチャられ
二〇一六年三月
ヽ 史
複眼単眼
安倍の改憲画策と野党共闘
安倍晋三首相が三月二日の参議院予算委員会で、野党議員の質問に答えて「在任中に(憲法改正を)成し遂げたい」「自民党は立党当初から党是として憲法改正を掲げている。党総裁として目指したい」と発言した。
この首相の改憲問題での踏み込んだ発言は、「想定問答に入ってなかった」(官邸筋)“アドリブ”答弁だったといわれる。安倍晋三の尋常ならざる「覚悟」が込められている。ここで語った「任期」とは「自民党総裁」としての発言であることから、自民党総裁任期中の二〇一八年九月までということだ。あと二年余だ。
周知のように、憲法第九十六条一項には「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とす」とある。
安倍政権の与党は現在、衆議院では改憲発議に必要な三分の二を持っているが、参議院では不足している。安倍首相が改憲発議をするためには、まず参議院で総議員の三分の二議席を保有しなければならない。
要するにあと二年以内に参議院で三分の二を獲得するということで、そのための参院選は今回の七月の一回しかない。安倍発言の意味するところは、今回の参院選で発議要件を満たす議席(一六二議席)を獲得するということだ。与党と与党の改憲派衛星政党の非改選議席が八五+αだから、あと七四〜七七議席が必要だ。要するに安倍の改憲に反対する野党が四七〜四五議席を獲得すれば、改憲発議が不可能になるのだ。
前回の参院選のように野党がバラバラで闘うなら、この数字は容易ではないが、今回は野党共闘が成立しつつある。これは十分に可能な数字だ。そのためにこそ、あの九月以来、市民連合をはじめとする運動圏は「野党共闘」を叫び続け、力を尽くしてきた。非改選の三三議席に加えて、野党が四七議席以上を確保すれば、安倍政権与党は参議院で改憲発議ができなくなる。
この発言で、安倍は野党共同に対する「背水の陣」を敷いたつもりだろう。だからこそ、なりふり構わないタレント候補の担ぎ出しや、辺野古の裁判の「和解」受け入れという奇手を使い、さらに衆参ダブル選挙という「禁じ手」も使おうとしている。
安倍政権が権力の座から繰り出す方策は油断がならない。にも関わらず、これは私たちのチャンスだ。二〇一五年安保闘争で市民は戦争法に反対し、安倍政権打倒を掲げてきた。これを実現する好機が来ている。
第一次安倍政権の崩壊の経験を思い浮かべよう。
二〇〇七年九月、安倍首相は第一六八国会の所信表明演説を行なったが、その二日後、代表質問の直前に緊急記者会見を開いて、異例の退陣を表明した。後日、過度のストレスによる潰瘍性大腸炎の悪化が原因で、即刻入院したことが明らかにされた。この安倍晋三の政権投げ出しの理由はさまざまに語られたが、現実には病気が根本原因ではなく、安倍が語ってきた「憲法改正」をはじめとする施策が実現困難になったからだ。
この二月一九日の野党五党党首会談で確認された戦争法廃止法案の共同提出と国政選挙での野党共同は、安倍政権を追いつめる上で、画期的な橋頭堡を構築した。
いま、必要なことは獲得したこの条件をフルに使ってたたかい、参院選で勝利し、安倍政権に第一次政権崩壊の二の舞を演じさせることだ。 (T)