人民新報 ・ 第1340号<統合433号(2016年8月15日)
  
                  目次

● 高江ヘリパッド、辺野古新基地建設強行を許すな!

           沖縄と全国の力を合わせて闘い抜こう

● 伊方原発再稼働阻止!

           原発ゲート前で700名が怒りの抗議行動

● 改憲・戦争シフトの安部改造内閣と対決しよう

● 最低賃金1500円を いますぐどこでも1000円に

           最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会の渋谷行動

● 2016 ピースサイクル  夏の実走

           反戦・反核・反改憲を訴えて全国を結ぶ

● 辺野古新基地建設断念を求める全国交流集会

           各地の仲間と連携を強める

● 時 事 狂 歌

● 複眼単眼  /  安倍改造内閣と戦争・改憲





高江ヘリパッド、辺野古新基地建設強行を許すな!

         
沖縄と全国の力を合わせて闘い抜こう

 安倍政権の在沖縄米軍基地強化に向けての暴走は加速している。参院選沖縄選挙区では現職大臣を10万票を越える大差で基地反対派が勝利した。これが沖縄の民意だ。しかし、安倍政権は参院選直後から全国から機動隊を動員して、反対する人びとの行動を圧殺し、工事を強行している。
 7月22日には、国は辺野古沖の埋め立て申請承認を取り消した翁長雄志知事が国の指示従わないのは違法であるとして、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)に訴訟を起こした。すでに代執行訴訟で裁判所は、沖縄県と政府に「双方ともに反省」を促すとともに、「沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意し、米国に協力を求めるべきだ」と「和解」を提起している。和解条項には訴訟の判決が確定するまで米軍普天間飛行場の返還、辺野古の埋め立ての問題を「円満解決」するために協議を行うと記されている。にもかかわらず、安倍政権は一方的に対決姿勢をあらわにした。
 8月5日は、国による沖縄県違法確認訴訟の第1回口頭弁論日だ。確認訴訟で沖縄県は「充実した審理」を求め、8人の証人尋問(稲嶺進名護市長や環境問題、安全保障の専門家)を申請していたが、裁判所は翁長知事への本人尋問を認めただけだった。
 この日、那覇市の福岡高裁那覇支部前の城岳公園には「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」が呼びかけた集会に約1500人の市民らが集まり、沖縄県民の意思を伝えようとする翁長知事に声援をおくるものとなった。
 翁長知事の意見陳述は協議によらず訴訟に至ったことについて原告の国を批判し、「自国の政府にここまで一方的に虐げられる地域が沖縄県以外にあるのか。47都道府県の一つにすぎない沖縄県を政府が総力を挙げてねじ伏せようとしている」と訴えた。だが裁判所の態度は8月19日結審、9月16日判決予定という、県の求める「充実審理」を拒否する不当なものだった。
 福岡高裁那覇支部で判決日時が決まったことを受けて、稲田朋美防衛相は「裁判を進めながら沖縄県と粘り強い話し合いを続け、理解を得られるよう取り組みたい」と述べたが、判決言い渡しまでに、和解条項にある県との協議を行うかについて明言しなかった。

 沖縄の人びとの怒りはいっそうもえあがり、現地で連日の阻止行動が繰り広げられている。全国各地でも呼応する闘いがとりくまれている。

 東京では8月5日に、新宿アルタ前のリレートーク・デモで「辺野古・高江の基地建設強行許すな」「沖縄への弾圧やめろ」を訴えた。

 8日には、防衛省正門前に300人を越える人びとが結集し、抗議集会を開き、申し入れを行った。沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックは、稲田防衛相あてに「高江の着陸帯建設工事は断念せよ」と申し入れ、多数の警察機動隊を動員して米海兵隊北部訓練場ゲートから工事用資材や作業員を乗せた車両を基地内に導入し、抗議する住民らに対して機動隊が殴る、蹴る、首筋をつかんで引き回すなど、多数のけが人発生や救急搬送などの異常な事態を非難し、
また辺野古埋立て承認取り消しをめぐる訴訟を沖縄県に対して起こし、埋立てに関する知事の裁量権抹殺、米軍キャンプ・シュワブ陸上部分の工事も「辺野古の『和解』・中止とは関係ない」と強行しようとしていることに強く抗議し、@東村高江の着陸帯工事は断念せよ。A辺野古埋立て承認の取消を認めよ。B辺野古基地建設の一環であるキャンプ・シュワブ陸上部分の工事を中止せよ。の三点を強く求めた。

 安倍内閣は、「世界一危険な基地」である普天間基地の移設には辺野古に新基地を建設することが唯一の解決だと言い続けている。「沖縄の基地負担軽減」の空約束の裏で進行しているのは、安倍政権が在沖縄米軍基地を存続・機能強化させ、米軍の世界戦略の中にみずから積極的に組み込まれようとしている姿である。

 沖縄の辺野古基地反対、高江ヘリパッド反対の声は、県知事選をはじめ衆院選、県議選、そして参院選でまったく明らかである。そして翁長知事が、県民の声を代弁して行動していることも明白だ。そして、この沖縄の声、沖縄の闘いは全国に闘いと共感の輪を広げている。
 辺野古新基地建設阻止、高江ヘリパッド建設阻止に向けて闘いを強めよう。


伊方原発再稼働阻止!

        
原発ゲート前で700名が怒りの抗議行動

  7月24日、四国電力伊方原発3号機の再稼働に反対する全国集会が伊方町現地で開催され、地元愛媛県内や鹿児島・福島・福井など全国から700名が集まった。
 伊方3号機は7月26日に再稼働を予定していたが、1次冷却水を循環させるポンプの不具合を起こし、その後、四国電力は8月12日への延期を発表した。
 全国集会は13時半より原発を見下ろす国道沿いで始まり、主催者の「八幡浜・原発から子供を守る女の会」代表は、「こんなに沢山の方が伊方まで来てくれたのは初めてで、一過性に終わらず、原発が終わるまで続いてほしい」と訴えた。
 ルポライターの鎌田慧氏は、「原発に大義はない、脱原発を成し遂げよう」と発言し、ストップ川内原発!3・11鹿児島実行委員会よりのアピール、沖縄平和運動センター議長山城博治氏からのメッセージが紹介され、最後に「地元住民は建設当初から原発に賛成した覚えは一度もない、再稼働に理解を示した覚えも、同意した覚えもない」などの集会決議を読み上げ採択して全国集会一部を終了して、伊方原発ゲート前に移動した。
 真下に見える原発だが、そこに通じる道路を愛媛県警は原則一般車両通行禁止にしており、前後を白バイに挟まれた送迎バスと歩いて移動した。
 ゲート前に近づくにつれ、歩道しか歩くことが出来ないように規制を行い、100名を超す警察官を配置した異常な警戒態勢が敷かれた。
 ゲート前集会は鉄柵と警察官に立ちふさがれたが、各地からの参加者は、シュプレヒコールや怒りや不安を訴え、再稼働絶対反対、廃炉を目指して粘り強く闘おうと、歌や力強いアピールを行い2時間程の抗議集会を貫徹した。


改憲・戦争シフトの安部改造内閣と対決しよう

 8月3日、安倍改造内閣が発足した。9閣僚が内閣にとどまるなど、戦争法とアベノミクス・貧困化と格差拡大を推進してきた政権の基本的なところに変化はなく、自民党役員人事と合わせて、暴走政治をいっそう加速させ、改憲を強行する布陣だ。
 副総理・財務相の麻生太郎、官房長官の菅義偉、外相の岸田文雄、総務相の高市早苗、厚労相の塩崎恭久、1億総活躍担当相(「働き方担当」兼務)の加藤勝信などが留任した。悪名高い日本会議が大多数を占める。
 なかでも新内閣の特徴を象徴的に表し、海外が最も注目しているのが、防衛相になった稲田朋美だ。安倍と歴史認識、改憲など右翼的信条を共有し、安倍が自らの後継者に育てようとして、要職を経験させてきた稲田は当然にも国の内外から危険視されている。そもそも、日本の戦争犯罪についての稲田の発言を聞いた安倍が、選挙に出ることを勧めたのだった。
 改憲、南京虐殺は「虚構」、慰安婦問題、A級戦犯の戦争責任否定、靖国神社参拝、沖縄軍命強制集団自決、辺野古新基地建設、夫婦別姓否定、TPP、なかでも日本核武装論はきわだった主張だ。そして、「在日特権を許さない市民の会」や「国家社会主義日本労働者党」など排外主義右翼との親密な関係も有名である。欧米では「ナショナリスト」「タカ派」「保守強硬派」とメディアが紹介し、韓国や中国など近隣アジア諸国では、「極右」「超右翼」などと報じている。
 安倍内閣は、今年3月に戦争法を施行し、稲田防衛相による戦争法具体化の体制を強めようとしている。南スーダンでの自衛隊の「駆け付け警護」、米軍への「戦闘地域」での支援などがもくろまれ、すでに航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)による破壊措置命令を常時発令としている。
 今、東アジアの情勢は緊迫してきているが、閣僚の靖国参拝、なかでも防衛相のそれは緊張関係激化の火に油を注ぐものとなろう。稲田はいわゆる「レギュラー参拝者」であり、その行動が注目されている。
 そして自民党は、選挙時にはほとんど憲法問題を前に出さなかったにもかかわらず、予想通り選挙後は改憲策動を推し進めてきている。7月参院選で、「改憲派」が三分の二以上の議席を占め、衆参両院で改正の発議に必要な数を確保したという状況で、安倍政権は、国会の憲法審査会で、自民党改憲案を基礎にした改憲案づくりの審議を本格化させようとしている。二階俊博幹事長、細田博之総務会長、茂木敏充政調会長の体制は改憲推進シフトである。 だが、改憲を必要とする喫緊の課題があるわけでもなく、改憲が世論の大多数を占めているわけでもない。野党第一党の民進党も改憲に反対であり、「改憲派」もどこを改正するかについて一致していない。
 公明党やおおさか維新の会は九条改正は当面必要ないという。
 
 現在、人々の暮らしをはじめ日本の社会の抱える課題は多種多様であり深刻な段階にあり、安倍政権の政策の行き詰まりが各所に見られるようになった。
 第3次安倍再改造内閣に対して、ひきつづき総がかり、野党共闘で闘い抜こう。


最低賃金1500円を いますぐどこでも1000円に

       
最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会の渋谷行動

 7月28日、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会は、塩崎恭久厚労相に、2016年度の地域別最低賃金を全国平均の時給で24円引き上げるよう求める目安を答申した。
 これから各地の審議会が都道府県ごとの引き上げ額を正式に決める。新たな最低賃金は10月から適用される。
 答申通りに引き上げると全国平均は822円となるが、これでは年収200万円にもならず、まともな生活ができるわけはなく、まったく低賃金構造が改善されるようなものではない。
 憲法25条は「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とし、また労働基準法第1条は「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない」と規定している。現状は、たとえば最賃が一番高い東京の場合でも、年間2000時間(1日8時間、週5日)働いても年収は180万円ほどにしかならない。これは憲法違反の状態にあるということであり、一刻も早く是正するのは当然である。

 こうした最賃制の現状に対して、下町ユニオン、首都圏青年ユニオン、全国一般労働組合東京南部が軸となって、最低賃金の引き上げや非正規労働者の賃上げ、労働組合への加入などを訴える「最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会」が結成され、共通スローガンとして「最低賃金1500円をめざして。いますぐどこでも1000円に」を掲げて活動してきた。
 最低賃金1000円となれば、1000円×40時間×52週=208万円(月収で17万3300円)となる。最低賃金が1500円になれば、フルタイムで働けば2080時間となるが、労働時間が政府の推奨するように1800時間だとしても次のようになる。1500円×1800時間=270万円(月収で22万5000円)となる。
 
 8月5日、「最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会」は、中央審議会の目安額では納得できない、目安答申から地方最賃、そして秋の賃金闘争へと、非正規・正規が一緒になってたたかう決意を固める「8・5最賃大幅引き上げアクション@渋谷」の行動を展開した。
 まず渋谷駅の渋谷ハチ公前広場で、「最低賃金あげろ新聞」号外を配布しながら、「時給1500円は当たり前!」「地方審議会は大幅引き上げ決定を!」「全国一律最賃制で地域を救え!」などを訴えた。

 次の行動の渋谷勤労福祉会館で開かれた決起集会では、「最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会」事務局の河添誠さんがこれまでの経過報告。非正規雇用の拡大によって最低賃金ギリギリの生活の労働者が増え、また労組とも接点を持てずに長時間労働を強いられる低賃金労働者が増えている。キャンペーン委員会は労働組合がナショナルセンターや潮流を超えて「最低賃金大幅引き上げ」を求めるキャンペーンで、未組織の非正規労働者とつながることによって「最低賃金を大幅に引き上げよう」「生活できる賃金を」という要求を社会的にもり上げていくものだ。安倍政権は最賃を上げるなどと言っているが、あれはマスコミ向けのまやかしだ。実際の中央審議会の目安を見ればそれがわかる。またメディアは最賃は政府があげるものだなどと報じるが、労組が運動で勝ち取っていくものだ。これまでの取り組みとしては、2月17日には新宿駅頭でのアピール行動、4月15日には、アメリカの最賃15ドルをめざす運動が呼びかけている「ファストフード労働者の国際連帯行動」として渋谷センター街で訴えを行った。マクドナルドの前ではシュプレヒコールと低賃金労働者からの訴えが行われた。5月17日には院内集会を開き、4野党国会議員と全労連議長、全労協議長、労働弁護団事務局長からの挨拶を受けながら「野党共闘で最低賃金大幅引き上げの実現を」のアピールを行った。そして今日の取り組みである。また10月に新たな最賃が実施されるようになったらそのチェックの行動を取り組んでいきたい。
 各地からの報告では、はじめに岐阜一般労組の甄凱(けんかい)さんが、外国人技能実習生の過酷な労働実態について発言。賃金は最低賃金以上にはなっていない。縫製現場ではそれ以下のところがある。いま人手不足の状態で、日本の80〜90歳台のおばあちゃんも最賃にならないような賃金で働いている。
 郵政産業ユニオン組合員で「労働契約法20条裁判」原告の浅川喜義さんは、正社員と同じ仕事をしているのにもかかわらず、賃金、休暇などさまざまな差別待遇を受けていること、それへの反撃の闘いを報告した。
 江戸川ユニオンの小畑精武さんの報告。最賃は、労働者の生計費、労働者の賃金、通常の事業の賃金の支払い能力を総合的に勘案して決めるとされているが、企業の支払い能力の比重が大きい。日本では労働者は高卒単身者が基準だが、ILOなどでは労働者とその家族の生計費が基準だ。
 つづいて全労連最賃担当、全国一般神奈川、首都圏青年ユニオン、栃木わたらせユニオンからの報告が行われた。


2016 ピースサイクル  夏の実走

              反戦・反核・反改憲を訴えて全国を結ぶ


沖縄ピースサイクル

 2016沖縄ピース(伴走車3台、10人の参加者)が6月20日から23日の4日間行われた。那覇空港に到着した一行は高江に向け、出発した。高江では現地闘争の人たちと交流を行った。東村高江に新設されたヘリパッドで午後10時以降に離着陸を繰り返す訓練が激化し、睡眠不足で学校を欠席する児童が出ているとして東村が沖縄防衛局に抗議をしている時期でもあった。現在、安倍政権は各地から機動隊を結集させて弾圧を強めているが、かつての「沖縄戦決戦」で各地から軍隊を集め、米軍と戦闘した態勢と同じことを沖縄民衆に今行っていることは全く許せないことだ。2日目21日は名護を出発し辺野古へ向かった。辺野古は今、沖縄と政府の間で一時和解、中断されているが、現地ではコンテナ車での資材の出入りは続いており、基地警備との小競り合いは絶えない。この後、読谷村の知花民宿へ向けて出発。読谷村は米軍が上陸し沖縄の南北へ進軍した地でもある。3日目22日は早朝から知花さんの案内で近くのシムクガマを見学。チビチリガマにも立ち寄り、自死した女性、子供の遺骨も保存してある。「生きて虜囚の辱めを受けず」と軍隊の戦陣訓を民間人に強要した結果であった。この日は嘉手名基地、普天間基地を見学してKさん宅に宿泊。普天間基地は嘉数高台公園展望台から見渡せる。周りを住宅で取り囲んでおり、駐機していたオスプレイなどが墜落したら大惨事になる距離にある。夜は国際通りから入った路地裏にある飲み屋でお疲れ様会を行った。4日目は本島南部にある糸満市、魂魄(こんぱく)の塔に向かった。6月23日は沖縄では「慰霊の日」で平和を祈念する県民の休日となっている。ここで第33回国際反戦集会へ参加した。海勢頭豊さん、きむ・ぎがんさんらの歌や高江からのフラダンス、子どもむけの紙芝居、金城実さんのヌンチャクがわりに下駄でする型踊りや辺野古土砂搬出反対全国協議会・共同代表の阿部悦子さんの「戦争に使う土砂は一粒もない」の訴えがあった。司会は玉城愛さん(名桜大4年生、シールズ琉球)が行った。玉城さんは19日の6万5千人が結集した「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾!被害者を追悼し沖縄から海兵隊の撤退を求める県民大会」で「安倍晋三さん。日本本土にお住まいの皆さん。今回の事件の第2の加害者はあなたたちです。しっかり、沖縄に向き合っていただけませんか」と訴えていた。
 同日、平和祈念公園で行われる追悼式典に出席する安倍首相の乗った車に向かって「安倍首相は沖縄から出て行けのコールも行われていた。この後、一行は那覇飛行場に向かい沖縄ピースサイクル行動は終了となった。残留組は翌日、Kさんの案内で、ひめゆり平和祈念資料館の展示見学、平和祈念公園、礎の見学、南風原町立南風原(はえばる)文化センター、山中にある野戦病院跡の見学を終え、那覇空港へ向かい、皆無事に終えて帰路についた。

埼玉ピースサイクル

 今年は天候不順で梅雨は長引き埼玉ピース本実走中は一日雨が降り続きました。7月15日、熊谷、神川、北本の3コースで実施されました。自治体廻りは15箇所と例年より1自治体増えました。
 昨年は浦和コースが都合により取りやめになりましたが、今年はミニピースとして6月17日に、再開を実現出来ました。この日は快晴で、県庁、さいたま市、川越市3自治体をミニピースとして往復40kmを取り組みました。自転車にはピース旗「まもろう9条、なくそう原発」をそれぞれ取り付けていますが、ある自治体に行くとピース旗をみて清掃している労働者が私たちに寄ってきて、今、福島から埼玉に避難してきて働いている。国は帰れると言っているが俺のところはまだ帰れないと言って私たちに訴えていました。
 埼玉ピースの仲間はこの間、戦争法廃止、緊急事態条項の危険、参議院選野党共闘を訴え、駅頭スタンディングの人たちと行動をしてきました。
 今回のミニピース、本ピースにはスタンディングから2人の参加があり、いつにもない盛り上がりがありました。スタンディングのブログにピースへ参加した人が感想やピースサイクルの紹介を載せてもらいました。本ピースでは丸木美術館で交流会をして解散でしたが、熊谷、神川コースの参加者は組合行事があることから、日を改めて交流会を開くことで無事に埼玉ピースを終えました。

長野ピースサイクル

 二六年目の長野ピースサイクルの夏の実走は、戦争法反対の闘いや安倍政権に立ち向かう参議院選挙に続く行動として取り組まれた。
 長野ピースサイクルの2016夏のピースサイクルは七月二三日(土)に長野県松代にある戦争加害の策源地・大本営予定地下壕跡付近から出発して、七月二四日(日)新潟県柏崎市の東京電力柏崎刈羽原子力発電所までの約一五〇kmを二日間で自転車を走らせた。今回は延べ一二名とこれまでで1番少人数だが、「まもろう9条」「なくそう原発」の旗を掲げて力強く走った。伴走の車には「あべ政治を許さない」「戦争法廃止」「辺野古新基地反対」などのステッカーを貼りつけて走った。
 七月二三日は快晴、朝からこの夏最高気温を感じさせる暑さの中を松代から出発した。出発地の松代は、二六年前の一回目の長野ピースサイクルの出発点であり、七一年前の日本の戦争に深く関わる歴史の記憶の原点として意識し、私たちの平和に対する思いをヒロシマ、ナガサキ、オキナワへつなげようと位置づけた場所である。毎年十一月、この場所では「マツシロのつどい」も開かれる。
 出発してまもなく、毎年立ち寄っている須坂市の長野ソフトエネルギー資料室では、今年もまた美味しいスイカなどで歓迎を受けながら、脱原発と戦争法反対などの意思を確認しあい、二十六年間の思い出話なども交えて、資料室のメンバーと交流を深めた。
 その後は最高の暑さの中、長野ならではの急な坂道へ突入した。昼には飯綱町九条の会のメンバーの歓迎を受けて一休み。午後はさらに急な坂道を登る。風車の付いた「なくそう原発」「まもろう9条」の旗(ピースサイクル全国ネット統一)をなびかせ、全員が登り切った。この坂を登り切った参加者の顔はやはり長野ピースサイクルならではの達成感があふれていた。最高の気温の中でも今年は以外とみんな元気だった。新潟県に入ると下り坂が多くなるがそれでも起伏は激しい。最後の力をふり絞って山の麓にある温泉付きの宿泊施設へ到着した。
 新井の温泉施設の宿泊では、所長も歓迎してくれた。「9条を世界へ」のスローガンを見て、「私もこれですから、頑張って下さい」と声をかけてくれた。温泉にも入り、夕食もすこし豪華な宴会料理で盛り上がる。夕食の前には、翌日柏崎刈羽原発で行う東京電力への要請行動の要請書の内容をみんなで確認し合った。
 七月二四日も全くの晴天。気温もぐんぐんと上がる。このところ雨にたたられることが多かったが、今回は気配もない。それでも、少人数のせいか順調に進む。何故かパンクする自転車もない。途中から帰ったメンバーもいて総勢六名が三時少し前頃には柏崎刈羽原発へ到着した。ピースサイクル新潟2016のメンバーの到着を待った。
 ここで、東京電力に対して要請行動を行ったが、東電側は一般客の来ない奥の駐車場へ全員を誘導し、要請行動に対応した。何故か昨年とは打って変わった対応で部屋も用意し低姿勢である。対応者は昨年と同じなのに薄気味が悪い。昨年は、車から流していた音楽さえ、手前で止めるように要請されたことを思うとこの変化は?である。東電の担当者は私たちの再稼働反対、原子力発電からの撤退要請には答えず、「社員教育の徹底」ばかりを強調していた。新潟県内での再稼働に向けた「安全対応の宣伝」も含めて、低姿勢で対応して「印象を和らげる」姿勢が見え見えであった。今後も私たちは東電が福島事故の教訓を活かし、被災者に誠意を尽くして対応すること、「世界一の安全基準」が安全では無いこと、福島の廃炉を安全迅速に行なうこと、原子力発電からの撤退を求めて要請行動を終えた。
 今年の長野ピースサイクルの夏の実走は終了したが、今年も長野県内の自治体や市民からの広島市長、長崎市長、沖縄県知事に宛てたピースメッセージを携えて走った。ピースメッセージは八月六日の広島、八月九日長崎に全国の仲間によって届けられる。沖縄県知事へのメッセージは郵送となるが、辺野古・高江の闘いの先頭に立って闘う翁長知事への激励が多く含まれている。自由に相手を決められる部分には安倍首相への抗議も多く書かれている。
 実行委員会はこれから活動報告集作成や秋のホリディピースサイクル、様々な集会や企画への参加、独自の企画を通して、平和への思いを込めた活動を続けていく。

 ピースサイクル新潟実行委員会・長野ピースサイクル実行委員会の広瀬直己・東京電力株式会社社長、設楽親東京電力柏崎刈羽原子力発電所所長あての申入書
  (前略) 東電には、数兆円の国民の税金が投入されています。被害者の方々の気持ちを逆なでするような広報や自分勝手の安全対策をやめ、被害者の方々の状態に配慮した、被災された方々の生活の復旧と健康の回復・保護の為に、力を尽くすべきです。コスト第一主義で自企業や「原子力ムラ」に利益するソフトやハード面での「操作」を優先することはやめて下さい。そして、汚染水の海への垂れ流し状態を食い止め、早急に不安の元凶であるデブリを最も環境に影響が及ばない方法で処分をし、廃炉への道を歩んで下さい。これらのことがあなたたちの最も重要な仕事であり、責任です。
私たち人類は、すでに福島原発事故の悲惨さをみているのです。あなた方はそのことを忘れ去ったのでしょうか。福島原発事故の原因企業として、いまだ反省が出来ない東京電力の原子力発電所の再稼働などありえません。 「柏崎刈羽原発の再稼働計画を取り下げ、原子力発電から撤退してください !」2016年7月24日

四国ピースサイクル

 28年目の四国ピースサイクルは8月3日、八幡浜港で合流した呉・広島・大分ピースサイクルの団で始まりました。
 灼熱の炎天下の中、伊方原発に続く長い上り坂を伴走車から流れるアピールを背にして汗だくになりながらペダルをこぎました。
 伊方原発は四国西部の佐田岬半島の付け根にあり、岬側には5000人が住み、北側の伊予灘には半島に並行して国内最大規模の活断層(中央構造線断層帯)が走り、過酷事故を起こすような地震が起こり、道路や港が壊れる事態になれば孤立し、その場合の屋内退避する放射線防護施設の収容人員は1000人以下にとどまっています。4月の熊本・大分地震後には不安が大きくなっています。
 原発ゲート前に到着すると、地元で50年来反対運動を続ける方たちに迎えられ、四国電力に対して要請行動を行いました。 
 今回は再稼働を前にして愛媛県警の警備が物々しくゲート前でのスピーカー禁止などの警告が出された。門前に出てきた四国電力伊方原発の担当者は、ピースサイクルからの「伊方原発再稼働反対要請書」を受け取ると「責任をもって上に上げます」とだけ回答して引きさがりました。
 警察の介入がありましたが、怒りのシュプレヒコールと大分ピースサイクルによる歌をうたい無事に要請行動を終えました。
 夜は、再稼働が近いとの情報が流れる緊迫した中、地元で闘われている方と今後の運動についての交流を行いました。
 4日は、八幡浜市からの海岸線を松山市に向けて自転車でアピールしながら走行し松山からはフェリーで呉に向かいました。
 呉では、大阪ピースサイクルと合流して5日には19台となった自転車隊で無事に原爆ドームに到着しました。


辺野古新基地建設断念を求める全国交流集会

             
各地の仲間と連携を強める

 7月31日に「辺野古新基地建設断念を求める全国交流集会」(主 催・止めよう!辺野古埋立て国会包囲実行委員会)が開かれた。午前中には、分科会(第1分科会―職場・地域からの闘いの報告と交流、第2分科会―どの故郷にも戦争に使う土砂は一粒もない、第3分科会―地方自治・私たちの街から沖縄に繋がる、第4分科会―環境破壊を許さない)が全電通会館と連合会館がおこなわれ、午後からは、全体集会が全電通会館ホールで開かれた。

 全体集会では「高江ヘリパッド建設の工事再開7・22の闘い」の映像が上映され、はじめに沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの木村辰彦さんが基調提起をおこなった。沖縄の女性殺害事件は基地があるゆえに起こった。県民の怒りと悲しみは限界を超え65000人が結集して6月19日の県民大会が開かれ、海兵隊の撤退、全基地撤去を決意し、県民の闘いは新たな段階に入った。集会には犠牲者遺族から、「全基地撤去」「辺野古新基地建設に反対」は県民が一つになれば、可能だと思っていますというメッセージが届けられた。6月の県議選では翁長与党が前進し、7月の参議院選挙では現職大臣に伊波洋一さんは10万票差で圧勝した。辺野古新基地建設反対、米軍基地撤去の揺るがぬ沖縄の強固な民意を示したものだ。しかし、日本政府は、7月22日に、日本政府・国土交通省は、辺野古埋め立て承認取り消しの是正指示に翁長知事が従わないのは違法だとして違法確認訴訟を起こした。さらに日本政府は高江のヘリパッド建設でも参院選投開票日翌日早朝にすぐさま工事を再開させ、全国から数百の機動隊を投入して機動隊の暴力で住民の反対の声を押しつぶそうとしている。力ずくで県民の民意を押しつぶし、基地建設を強行する沖縄差別政策は絶対に許せない。私たちは、昨年の1月、5月、9月、本年2月と4回の国会包囲行動を行ってきた。とりわけ今年の2月は、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」との共催で、辺野古新基地建設反対と戦争法案反対の闘いを一体のものとして包囲行動を取り組み、当日は全国11ヵ所での同時行動を開催した。
 今日の全国交流集会は、環境問題、地方議会、土砂搬出などで辺野古新基地建設を許さない闘いを作ってきた各地の仲間が結集し、相互の連携と結びつきをより深めて、国会包囲実行委員会をより強化していくことを確認したい。そして戦争をする国づくりへの動きを止める核心的闘いが辺野古新基地建設を許さない闘いであること強く訴えていくこと、沖縄と全国の力を一つにして、辺野古新基地建設阻止、そして高江ヘリパッド建設阻止に向けて全力をあげて闘っていくことを決意したい。

 講演の最初は、ジャーナリストの高野孟さんが「辺野古をめぐる米日中の軍事的駆け引きの虚実」と題して話した。
 右派マスコミや安倍政権は「中国が尖閣を手始めに島伝いに日本を侵略してくる」と言っているが、それは本当か。尖閣諸島については両国が領有権を主張しているが、2012年9月の民主党野田政権による尖閣「国有化」直後から中国公船の領海進入は激増(最
大月28隻)した。だが、1年後の13年10月から月3回、1回標準3隻、たまに2隻だったり4隻だったりとなっている。海上保安庁のホームページは「尖閣諸島周辺海域における中国公船等の動向と我が国の対処」で中国公船の月別の「領海侵入・接続水域侵入」隻数を載せている。それを見ると、今年の領海侵入は、1月が3回(2+2+4=8隻)、2月が2回(2+3=5隻)、3月が3回(3+3+3=9隻)、4月が3回(3+3+3=9隻)、5月が3回(3+4+4=11隻)、6月が3回(3+3+3=9隻)となっている。それらはいずれも日本の海上保安庁に当たる中国海警局の船で、この海域の担当は海警局北海分局で、中国海監第一支隊(青島)、第二支隊(天津)、第三支隊(大連)が支隊ごとに来ている。そしてこれらの行動は日本側に事前連絡してきているルーティン化したものとなっていて、これは尖閣問題が事実上棚上げの状態になっていることを意味している。
 また、13年11月には中国が尖閣を範囲に含む「防空識別圈」設定を発表した。安倍は「(尖閣を)あたかも中国の領空であるかに表示しており、全く受け入れられない」と言っている。しかし、領海・領空と識別圈は無関係だ。たとえば韓国の識別圈は平壌までカバーしている。ケリー米国務長官も、中国が民間航空機の航行をも制約するかのように言ったことを非難しただけだった。安倍の無知としか言いようがない。しかも、中国はその3年前から識別圈設定の意図を非公式に日本に提示していたのである。そのことは、毎日新聞(14年1月1日付)が一面トップで報じた。
 つぎに在日米軍司令官は中国をどう見ているかについてふれたい。14年2月、サルバトーレ・アンジェレラ司令官は日本記者クラブでの会見(これはTV中継もされた)で「中国の防衛識別圈をどう思うか?」との問いに「現状を力で変えようとするのは認められない。しかし中国は脅威をもたらす国ではなく我々と地域の安全を共有し、責任の一端を担うことが可能だ」と答え、また、「もし日中が軍事衝突したら米軍は?」という問いに対しては「衝突が発生することを望まない。仮に発生した場合、『救助』が我々の最重要の責任だ。米軍が直接介入したら危険なことになる」。「中国軍が尖開を占領したら米軍は?」には「そのような事態を発生させないことが重要だ。もし発生したら、まずは早期の日米首脳会談を促す。次に自衛隊の能力を信ずる」ということだ。米軍は介入しない、自衛隊で対処すべきだという突き放した態度である。自衛隊「島嶼防衛」戦略というのも笑い話だ。あれは、「北朝鮮が崩壊して武装難民が大挙日本の離島を襲うので陸自を配備」という話からはじまったが、北が崩壊しても難民は日本には来ない。まず船がない。鴨緑江を歩いて渡って中国東北に逃げるに決まっている。それがいつの開にか「中国が尖開に攻めてくる」という話にすり替わって、与那国、石垣、宮古への自衛隊進出、陸自の「海兵隊」化など架空話がどんどん膨らんでいる。自衛隊の失業対策以外のなにものでもない。そして辺野古基地建設を熱望しているのも実は自衛隊だ。米海兵隊がいずれ出て行くことを知っていて、その時に自衛隊が新基地を引き継ぐ魂胆で、勢力拡大の意図は明白だ。
 米中は南シナ海で一触即発の『開戦前夜』だとまで言われている。昨年10月、米イージス艦ラッセン号が南沙海域で「自由航行」作戦を実施したのを日本のスポーツ紙や夕刊紙は「米中開戦前夜!」などと騒ぎ立てた。しかし、ラッセン号はレーダーのスイッチを切り、ヘリを格納庫に入れた「無害航行」様式で中国が管理区域と主張する海域に入った。それで中国海軍も遠くから見守るだけに止めたのだ。その3日後には米海軍作戦部長と中国海軍司令官のテレビ電話会談が開かれた。一週間後には、中国海軍のミサイル駆逐艦など3隻がフロリダ沖で米海軍と合同の通信訓練を実施し、さらに20日後には、米海軍の別のイージス艦ステザム号が上海を友好訪問し中国海軍と合同の海難救助、通信訓練などを実施し、そのうえ乗組員同士が親善バスケットボール試合も行っているのである。
 こうしたことが米中関係にあるのだ。この事実をマスコミは伝えない。
 そして沖縄の米海兵隊が沖縄に駐留する意義はますます大きくなっているというのは本当か?という問題だ。仮に尖閣危機があっても海兵隊の出る幕ではないし、金正恩体制になって核抑止に特化し通常戦力は削減されているので朝鮮半島に北の対南大規模陸上侵攻の可能性はゼロだ。また台湾危機があっても、台北の米人救出以外に仕事はないのだ。海兵隊は特殊作戦、災害救助、難民救済、人権監視も出来るなどとホームページで存在意義をアピールしているが、本質は、大規模戦闘下での「敵前上陸作戦」で、そんな戦争はもう起こらない。オスプレイも輸送撒にすぎず悪天候下での敵前上陸などには使えないのだ。
 そして、中国のミサイル能力の向上により在沖縄の米軍基地は脆弱性が高まっている。まして、沖縄県民の視点からすれば、米軍基地があればこそ沖縄が中国だか北朝鮮だかのミサイル攻撃の対象となり得るのであっで、基地がなければそんなことは起こらないのだ。

 白藤博行・専修大学教授は「沖縄民衆の怒りと祈りの辺野古訴訟の経過と現段階」と題して講演した。
 四つの分科会報告につづいて、特別報告として、岩国の闘い・新田秀樹さん(ピースリンク広島・呉・岩国世話人)、土砂搬出反対の闘い・阿部悦子さん(「辺野古土砂搬出反対」全国連絡協議会共同代表)が行われた。
 桜井国俊(沖縄大学名誉教授・沖縄環境ネットワーク世話人)は「公有水面埋め立て承認の誤り」で、防衛局が作業を強行する場合の対抗策として、今後の「設計概要変更申請」を一切承認しない、として、@新たな岩礁破砕強化を与えない(今後のコンクリートブロック投入の阻止)A埋め立て部分のサンゴ移植のための「特別採補許可」を出さない。B各種条例のよる規制(土砂規制条例、県土保全条例改正、県生活環境保全条例改正)C文化財調査問題(美謝川集落関連遺跡群、碇石)、大浦崎収容所埋葬遺骨問題、等々を提起した。
 沖縄からの訴えでは、仲村善幸・名護市議会議員(ヘリ基地反対協事務局長)、伊波洋一参議院議員から発言があり、最後に、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの大仲尊さんがまとめと行動提起を行った。


時 事 狂 歌 

 九条が国を育てて七十年
    世界を照らす知恵の泉に

 欲望の民主主義には山姥の
    姿あらはし足掻き舞ひたり

二〇一六年八月

              ヽ  史


複眼単眼

     
安倍改造内閣と戦争・改憲

 現在、参議院選挙につづいておこなわれた東京都知事選挙が終わった直後に、第3次安倍内閣第2次改造内閣が組織されたのを見ている。安倍晋三を頂点にして、自民党の4役に超右翼の古谷圭司が加わり、内閣には「日本会議」の壊憲タカ派・歴史修正主義者として知られる稲田朋実が防衛相として加わった新内閣は、時代が文字どおり「新たな戦前」になっていることをまざまざと示している。なぜなら、安倍晋三の独裁的な教権体制の下で、今後の日本の安保・外交問題の中枢を担う機関としての国家安全保障会議(日本版NSC)の司令塔である4大臣会議は安倍首相、菅官房長官、岸田外相、稲田防衛相によって構成されることになるからである。
 安倍首相は2016年夏の参院選の街頭演説で「改憲問題」に一言も触れずに、結果として改憲派の議席において両院の3分の2をかすめ取った。にもかかわらず首相は、選挙直後の記者会見で「いかにわが党の案(自民党改憲草案)をベースにしながら3分の2を構築していくか。これがまさに政治の技術」(7月11日)だと言い放ったのである。このような文脈で「政治の技術」という用語を使う安倍晋三は、まさに独裁者ではないのかと思う。
 つづいて内閣改造後の8月3日の首相記者会見では憲法問題について、次のように発言した。
「改憲は立党以来のわが党の党是と言っても良い。私は総裁だから実現のために全力を尽くすのは当然で、歴代の自民党がそうだったように、この課題 に挑戦をしていく責務を負っている。自分の任期中に果たしていきたい、こう考えるのは当然のことで、歴代の自民党の総裁もそうであったと思う。そう簡単なことではないのは事実で、政治の現実において一歩一歩進んでいくことが求められている。改憲は普通の法律と異なり、3分の2の賛成で発議する。国会は発議することが役割であり、国民投票によって過半数の賛成を得て決まるので、与党が賛成すればできるものではない。その数を選挙で得たからと言って、改憲が成し遂げられるものではなくて、大切なのは国民投票でその過半を得ることができるかということではないか。まずは具体的にどの条文をどのように変えるかは、国民的な議論の末に収れんしていくと思う。まずは憲法審査会の中で、静かな環境において(議論し)、所属政党にかかわらず、政局のことは考えるべきではないと思う。日本の未来を見据えて議論を深めていって、国民的な議論につながっていくことを期待したい」と。
 安倍晋三首相は2016年年頭からしきりに自分の「任期中の改憲」について触れていた。自民党の総裁は党則で、任期が3年で連続2期までと定められ、現在2期目の安倍総裁の任期は、2018年9月までとなっている。しかし、このところ改憲反対が多数を占める世論の動向からその実現の条件は極めて厳しくなっていた。そこに降って湧いた自民党の谷垣前幹事長の事故を奇貨として、安倍は自民党執行部の中心に従来から「安倍首相任期延長論」を唱えていた二階俊博を据え、党則の変更と中期政権によって明文改憲のための時間稼ぎの体制づくりを断行した。
 二階・新幹事長はこう語った。
「(党内に任期の延長問題を議論する組織を設置したい、そして)「党内の意見をよく聞いて結論を得たいが、政治スケジュールのテンポとしては、ずっと引っ張ってやる問題ではない」と述べ、年内をメドに結論を得たいという考えを述べたのである。
これによって、安倍の任期中の改憲の可能性が現実味を帯びてきた。最高権力者の安倍首相の意志で、明文改憲に着手し、すでに手に入れている両院の総議席の3分の2によって改憲を発議し、国民投票にかけるとすれば、これぞ「立憲主義」の禁じ手、プレビシットそのものに他ならない。 (T)