人民新報 ・ 第1344号<統合437号(2016年12月15日)
  
                  目次

● 自衛隊のPKO新任務撤回 南スーダンからの即時撤退 戦争法廃止


           総がかり行動・野党共闘の強化で 安倍内閣を退陣に追い込もう

● 高江、辺野古の基地建設阻止へ広がる反対運動

● 安保法制違憲訴訟裁判(国家賠償請求訴訟)第2回口頭弁論

● 「実現しよう時給1500円! 最低賃金大幅引き上げキャンペーン」まとめ集会

● 17けんり春闘実行委が発足

● KODAMA

    追悼!刈谷稔さん!

    怒りの表現・批評と批判

● 12・8開戦の日―アジアからの危惧の声を聴き考えるシンポジウム」

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  「日本には抵抗の文化がない」か

● 冬季カンパの訴え






自衛隊のPKO新任務撤回 南スーダンからの即時撤退 戦争法廃止


        総がかり行動・野党共闘の強化で 安倍内閣を退陣に追い込もう

 12月12日、自衛隊の南スーダンでのPKOで「駆け付け警護」「宿営地共同防護」など新任務が可能になった。自衛隊の部隊はほぼ半年ごとに交代し、現在、陸上自衛隊第9師団(青森県)を中心に11次隊(田中仁朗1等陸佐・約350人)が派遣されている。自衛隊員は、ついに人を殺し、また殺されるという状況に追い込まれることになった。
 日本は憲法にもとづく平和の国であり、世界の人びとと友好的に共存・共生してきたこれまでの歩みを自ら否定し、海外での戦争・紛争に積極的に介入していこうという誤った政策は昨年9月19日に強行成立させられた憲法違反の戦争法に基づくものだ。安倍政権は歴史に重大な汚点しるした。安倍首相らは、中国を封じ込め、アメリカの世界支配・軍事戦略展開を支え、そのことによってアメリカ一極支配の中で発言権の拡大―政治・軍事大国化の野望を実現しようとしている。しかし、その構想は、米次期トランプ政権のTPPからの離脱、東アジアでの力関係の変化などによって実現性は怪しくなってきている。安倍構想は、世界の流れに沿っていないばかりか、それに逆行するものとなっていることが日増しに明らかになって来ている。
 現在、南スーダンは、大統領派の政府軍と元副大統領を支持する反政府勢力の対立が深刻化し、首都ジュバでさえ大規模な武力衝突が発生している。その結果、兵士以外の多数の市民が死傷している。しかし、日本政府は、自衛隊が活動する前提となるPKO参加5原則(@紛争当事者の間で停戦合意が成立していることA国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していることB当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守することC上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができることD武器の使用は、要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能)は維持されていると強弁している。稲田朋美防衛相は、心配はしていない、銃撃戦が長時間続くような場合には、撤収する可能性もあると述べているが、南スーダンのような緊迫した情勢では5原則は幻想に過ぎない。
 このままでは将来に禍根を残す事態となるのは必至だ。新任務付与の撤回、自衛隊の速やかな撤退、そして戦争法の廃止を闘い取らなければならない。日本は非軍事・平和外交による国際紛争の解決に努力しなければならない。戦争に向かって突き進む安倍内閣を打倒しよう。


高江、辺野古の基地建設阻止へ広がる反対運動

 沖縄の大多数の人びとは、軍事基地強化に反対だ。このことは最近の各種の選挙結果が証明している。だが、安倍政権は、沖縄の民意を完全に無視し、反対運動を暴力的に弾圧して、軍事基地強化を推し進めている。この暴挙に怒りの声が広がっている。
 沖縄県の翁長知事は米軍新基地建設のための名護市辺野古沖の埋め立ての承認を取り消したが、国は裁判を起こし、ことし9月、福岡高等裁判所那覇支部は、政府の意をくんで「普天間基地の騒音被害を取り除くには辺野古沖に移設するしかなく、埋め立てを承認した前の知事の判断に不合理な点はない」と不当な判決を出し、これに沖縄県が上告し、最高裁判所に闘いの場は移った。しかし、最高裁は下級審判断を変更する際に必要な弁論を開こうとしていない。

 12月10日、「高江オスプレイ・パット、辺野古新基地の建設を許さない!東京集会―最高裁は沖縄の民意に応える判決を―」(日比谷野外音楽堂)が、基地の県内移設に反対する県民会議、「止めよう!辺野古埋め立て」国会包囲実行委員会、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の共催で開かれ、3900名が参加し、「辺野古・高江新基地ノー」と書かれたプラカードをかかげた。
 共催の3団体は「沖縄県民の民意尊重と基地の押しつけに反対する全国統一署名」に取り組んでいる。それは、安倍首相と衆参両院議長に「名護市辺野古への新基地建設をやめること」「全国各地へのオスプレイの配備に反対し、とりわけ東村、国頭村にまたがる北部訓練場でのオスプレイ・パッドの建設工事を直ちにやめること」「危険な普天間飛行場はただちに閉鎖し、すみやかな返還を実現すること」「沖縄駐留の米海兵隊を撤退させること」「 不平等な日米地位協定を抜本的に改定すること」を求めるものである。
 集会では共催の3団体の代表からのあいさつを受け、そこでは日本政府の沖縄への差別、高江での全国から動員された機動隊による弾圧で負傷者、逮捕者が続出している現状が報告され、さらなる全国からの支援・結集が訴えられた。
 民進党、共産党、社民党、沖縄の風の各政党からあいさつ、成蹊大学の武田真一郎教授、評論家の佐高信さん、第9次横田基地公害訴訟原告団、木更津のオスプレイ来るな・いらない住民の会からの発言があった。

 集会のあとは銀座デモで、アピールした。


安保法制違憲訴訟裁判(国家賠償請求訴訟)第2回口頭弁論

     
 裁判に必ず勝つぞ!

 12月2日、安保法制違憲訴訟裁判(国家賠償請求訴訟)第2回口頭弁論が、東京地裁103号法廷で開かれた。裁判の始まる前には、裁判所前で宣伝活動を行った。
 法廷では、原告代理人の意見陳述、原告意見陳述が行われた。

 閉廷後は、記者会見、ついで報告集会が参議院議員会館で行われた。

 院内集会では、はじめに伊藤真弁護士が開会の発言。
 この裁判は三つの権利すなわち平和的生存権、人格権及び憲法改正・決定権が侵害され、精神的に傷ついたのでその損害を賠償してほしいという裁判だ。今日、訴訟代理人の弁護士3人と原告3人は平和的生存権の侵害について具体的な弁論をおこなった。
 代理人の古川健三弁護士――国は被害が漠然としたもので裁判の対象とならないなどと主張している。だが、南スーダンで予想される事態は無視できない。原告は真剣に弁論を行った。そして、裁判は当面来年の6月までということになり国側の早期の終了という意図を阻止して続けられることになったが、これからも多くの傍聴者で裁判所を監視してもらいたい。
 黒岩哲彦弁護士――裁判所の見解を変えさせることが大事だが、運動を強め広げていけば、これは絶対にできる。判例の変更は可能だ。
 杉浦ひとみ弁護士――裁判でのこれまでの経験からこの安保法制の被害を訴えることが裁判官の心を動かすことができる。
 
 原告の本望隆司さん(タンカーや鉱石船で資源を運搬する船舶に乗船)の弁論。イラン・イラク戦争の際にベルシャ湾内を航行する船舶を攻撃すると両国が言いだした。日本船も対象になるということで、大変な問題になった。この時、タンカー攻撃を避けて日本の石油輸送を守ることができたのは、憲法9条のおかげだった。日本がいずれの国にも武力で加担しない中立国であるとの認識が国際的に確立していたからだ。ところが、政府が憲法9条の精神を捨て去り、海外での武力の行使が可能になる集団的自衛権を閣議決定してから、わが海運業界にもその影響が現れている。イラン・イラク戦争の当時、憲法9条のもと日本は戦力を保持しない平和国家であると国際的に認知されていたが、その国際的認知は崩れ去り戦争やテロに巻き込まれる可能性が増大したと言わざるを得ない。船舶が攻撃される危険性に恐怖を感じる。
 原告の牟田満子さん(長崎に原爆が落とされたとき9歳)の弁論。8月9日、帰ってみると、家は屋根瓦が飛んで、見上げると空が見える状態だった。浦上へ行った母と妹は、帰ってこなかった。父は原爆の翌年亡くなった。私は、戦争さえなかったら、原爆さえなかったらと何度も思った。また、被爆者だということでの差別があった。今、戦争が起こって核兵器が使われたら、何十万、何百万人という方が亡くなり、多くの方が被爆する。絶対にあの悲劇は繰り返して欲しくない。
 原告の安海和重さん(キリスト教会の牧師)の弁論。憲法違反の安保法制は「平和をつくる者たれ!」というイエス・キリストの教えに反している。武力による威嚇・偽りの抑止力は、真の平和ではない。戦争しようとする国は、必ず言論や思想を統制するということは歴史が教えている。平和憲法の力は海外の方がより強く感じられ、日本のパスポートは世界最強と言われる。犠牲者が出てからでは遅い。宗教者として、牧師として、安保法制の違憲性が証明され、廃止されることを願いつつこれからも声を上げていく。

 福田護弁護士は、南スーダン派遣の自衛隊員が「駆けつけ警護」や「宿営地共同防御」など武器使用で殺し殺されるという状況が生まれる可能性が高くなるなかでの今後の運動の取り組みについて提起した。


「実現しよう時給1500円!職場から地域から 〜 最低賃金大幅引き上げキャンペーン」まとめ集会

        最低賃金をめぐる労働運動の潮流を超えたキャンペーンが実現


 非正規労働者は全労働者の40%、年収200万円以下労働者が1200万人という状況にある。非正規労働者の賃金の引き上げは緊急の課題である。そのためには、非正規労働者自身が労働組合に加入して闘うことはもちろんだが、労働組合が非正規労働者の賃金の大幅引き上げを正面から掲げて運動を展開することが是非とも必要である。

 11月23日、渋谷勤労福祉会館で、「実現しよう時給1500円!職場から地域から〜最低賃金大幅引き上げキャンペーンまとめ集会」が開かれた。
 労働組合が草の根でつながっての最低賃金大幅引き上げキャンペーンは、「フツーに働いて、まともに暮らせる社会」の実現にむけて「最低賃金時給1500円をめざして―いますぐどこでも1000円に」と共通スローガンとし、今年2月にスタートし、「キャンペーンは、当面、2016年10月末までの期間とする」として、各地で各種の運動を展開してきた。東京・JR新宿駅東口前でのアピール行動をはじめ、4月15日にはアメリカの最低賃金時給15ドルをめざす運動などの呼びかけで「ファストフード労働者の国際連帯行動」として東京・渋谷センター街でアピール行動、5月17日には「いますぐどこでも最低賃金時給1000円に!時給1500円をめざして」院内集会を開催(民進党、共産党、社民党、生活の党の国会議員と全労連議長、全労協議長からのあいさつ)などを行ってきた。

 集会では、これまでの取り組みの映像が流された。

 つづいて、郵政産業労働者ユニオン中央本部の中村知明書記長が「郵政ユニオン・最低賃金のとりくみの報告」と題して報告。郵政職場で働く期間雇用社員(非正規労働者)は全社員の約5割であり、ほぼ20万人である。この数は各地に店舗を展開する総合スーパーのイオンに次ぐものだ。期間雇用社員はさまざまな差別待遇を受けている。郵政ユニオンは、その是正のために闘い、今では非正規労働者の組合員ほうが正社員組合員よりも多い比率になってきている。今年の春闘では、全国23の職場で二日間のストライキに突入した。スト参加者はこれまでの最多の85名で、そのうち非正規の組合員が28名だった。非正規の組合員のほうが多いスト職場もあり、文字通りの非正規春闘を実現した。また、四国池本・高知支部などのとりくみとして、支部要求書の提出、局前集会・行動、地域共闘の実現などに加えて、マスコミの取材への取り組みなど宣伝活動を強化して地域への影響をひろげた。
 郵政ユニオンは、郵政に働く非正規労働者の正社員登用と均等待遇を求めて運動してきたが、最低賃金の引き上げの中央本部要求とともに全支部での最賃要求のとりくみの呼びかけをおこなった。この10月1日には、地域別最賃が改定された。これに20円加算(外務)されたものが「郵政最賃」だが、これでは基本給で1000円にも達しない。郵政ユニオンは、時給制契約社員の基本給の引き上げの闘い取り組みで、各支部もそれぞれの郵便局長に対して「要求書」を退出する。それは以下の4項目―@時給制契約社員の基本給を1000円(地域によっては1200円)以上に引き上げること、A地域別最賃に加算する20円を100円に引き上げること、B外務に限定している基本給加算額を内務にも適用すること、Cいわゆる+α部分を積極的に活用し、募集の拡大と雇用の多様化につなげていくこと。
 最賃闘争への取り組みとしては、最賃大幅引き上げキャンペーン実行委員会に参加し、この問題の社会的・地域的なとりくみをともに展開してきた。その中で、労働組合の質的な強化と組合員意識の成長に取り組んできた。また労契法20条裁判の勝利をめざして活動してきた。「非正規差別NO!」の声を上げ続けていこう。

 職場報告は、東京東部労組メトロコマース支部、首都圏青年ユニオン、栃木わたらせユニオン、江戸川ユニオンなどが行った。

 最後に、キャンペーンを代表して河添誠さんが「『最低賃金大幅引き上げキャンペーン』の到達とこれから」について提起した。キャンペーンの到達として確認できる重要な点は、つぎのようなことだ。最低賃金をめぐる労働運動の潮流を超えた初めてのキャンペーンができた。「時給1500円をめざして!いますぐどこでも時給1000円に」というスローガンを確立し、「○○円を上げる」という最賃審議会の枠組みだけを前提にした運勤から、「生活に必要な労働者の要求としての最賃1500円」に切り替えて打ち出したこと。最低賃金闘争を職場の賃上げと結びつける運動の端緒をつくったこと。最低賃金引き上げ闘争を職場でたたかうということがこれまではなかなかイメージできなかったことができるようになってきたこと。「いますぐどこでも時給1000円に。時給1500円をめざす」というスローガンを労働運動内に広げた効果ももち、全労協、連合東京、出版労連なども時給1500円を組織決定した。潮流を超えた運勤特有のさまざまなむつかしさがありながらも、院内集会を4野党の国会議員参加で成功させた。2016年キャンペーンは終了したが、これからの最低賃金大幅引き上げ運動の展望としては、2か月に1回程度の情報交換会の開催していく。来年には4月もしくは5月に国際行動が必ずおこなわれる。2017年キャンペーンについてどうするかは相談しながら、最低賃金大幅引き上げの運動と職場の賃上げ運動をつなげる労働組合の連絡会の結成をめざしたい。


17けんり春闘実行委が発足

    貧困・格差・差別を許さず、働きがいのある人間らしい仕事を、官民連帯・総がかりで実現しよう!


 来春闘にむけて闘いがスタートした。11月21日、全水道会館で「17けんり春闘発足総会・学習集会」が開かれた。

 はじめに松本耕三・共同代表(全港湾中央執行委員長)があいさつ。
 米大統領選ではトランプが当選した。貧困化した白人労働者が多く投票した結果だ。トランプ政権でも労働者の生活がよくなることはないが、労働組合、労働運動が頼りになっていないことを表すものでもある。日本でも同じだ。賃金・権利・雇用で具体的な成果を勝ち取っていくことでこうした危険な状況を逆転させていかなければならない。ひとりひとりがオルグとなって労働者のなかに入っていき、総がかりの態勢で闘おう。

 つづいて、中岡基明・事務局長(全労協事務局長)が春闘方針案―「貧困・格差・差別を許さない! 働きがいのある人間らしい仕事を!―官民連帯・総がかりで17春闘勝利しよう!」を提起した。
 来春闘を取り巻く情勢だが、アメリカ大統領選挙でのトランプ勝利は、世界を翻弄することになるだろう。日本経済は日銀による大規模金融緩和の影響も薄れ、アベノミクスの失敗は誰の目にも明らかとなった。そして結局は新たな公共事業によるバラマキ政策に頼るばかりとなってきている。そのなかで労働者全体の可処分所得は滅少し格差の拡大は益々深刻なものとなっている。安倍政権は「働き方改革」として長時間労働の規制や同一労働同一賃金の実現などを掲げて参議院選に望み、労働者の分断と取り込みを図ってきた。その一方、経済界の意を受けた「世界で一番企業が活躍できる国」への法改正を進めてきた。実質的に長時間労働・過労死を助長する労働基準法の改悪案を提出し、また「解雇の金銭解決方式」導入の検討が進められている。そして、法改正を迅速にするためとして労働政策審議会の改革に着手し、ILO基準である公労使三者構成による合意形成を破壊するための有識者会議を設置し、早急な法整備に着手することを表明している。安倍政権は昨年9月強行採決した戦争法の具体化を急ぎ、南スーダンPKOで自衛隊に「駆けつけ警護」の任務を命令し、集団的自衛権の発動を行った。今後は明文改憲による9条の破壊に進むことは明らかである。沖縄辺野古新基地建設、高江ヘリパッド建設を全国の機動隊動員で強行しようとしている。また、福島第一原発事故の被害者救済も事故原因の究明も行われないまま、原発の再稼働・海外輸出を進めようとしている。TPP合意の国会で強行批准もそうだ。
 しかし一方で、昨年国会を包囲した戦争法反対の大きなうねりは今なお続いている。7月の参議院選挙では自公与党に改憲を発議できる三分の二議席を与えることとなったが、安倍政権打倒にむけた「野党は共闘」という労働者市民の声は持続・拡大している。総がかり運動はさまざまな大きな成果をあげている。
 来春闘での「私たちの要求」は、なにより非正規労働者の要求を汲みあげて闘うものでなければならない。賃金要求では、「ディーセントワークと生活できる賃金」として、@どこでも誰でも「20万円/月以上、1500円/時以上の最低賃金補償」―法定最低賃金を1500円以上に、今すぐ1000円の保障。A20、000円以上、7‰以上の大幅賃上げ要求(昨年同額)。B時間外労働の法規制(1日2時間、月20時間、年150時間)。C時短・要員増では、インターバル休憩、年休取得の拡大と絡めて要求する。D非正規労働者の処遇改善(最賃闘争、公契約運動、20条裁判等を総合的に連携させ、経団連・自治体への攻勢を強める)。E公共サービス関連民間労働者の集中的賃上げと自治体への申し入れ。F外国人労働者の処遇改善(共生の実現)。G安倍「働き方改革」の監視と同一労働同一賃金、時間外規制の実現要求、である。
 社会的運動としては、@安倍政権打倒にむけての解散・総選挙闘争への取り組み、小選挙区における野党共闘と統一候補の追求。A戦争法廃止!、沖縄新基地建設阻止、脱原発社会の実現、集団的自衛権発動阻止!、南スーダン「駆けつけ警護」反対、自衛隊の海外からの撤退、沖縄・辺野古、高江の現地闘争への派遣・参加、原発再稼働阻止・もんじゅ―核燃サイクルの廃止、武器輸出・原発輸出反対、共謀罪の新設阻止・特定秘密法廃止を!。B労働法制改悪反対、均等待遇実現―労基法改悪(残業代ゼロ法案)廃案、最賃引き上げキャンペーン、解雇の金銭解決制度、労政審解体策動との闘い。C「貧困/格差/差別を許さない総がかり行動」の建設―最賃闘争、反貧困、弁護団、生活保護、介護・保育、移住者に係わる闘いを大きな総行動運動として合流共闘を追求して発展させる。全国一律最低賃金の引き上げと公契約条例の制定。D社会保障切り捨て反対―セーフティーネットの再確立。ETPP合意文書批准阻止、実行を許さない闘い(農漁業、医療・保険 ISD条項など日本社会の破壊を許さない)などの諸課題を闘う。
 春闘では、官民連帯春闘、職場討議を重視し、ストライキを配置して闘う。@公務公共サービス関連民間労働者・非正規労働者の賃上げと確定闘争と連携して、最賃引き上げにともなう自治体関連予算へ波及させる、また確定闘争、職場闘争と連携した各行攻への要請行動の取り組みを行う。A労契法18条(5年契約更新の無期転換)運動、並びに雇い止めの動きに対する闘い。B秋闘の成果、高まりを春の民間非正規労働者賃上げにつなげていく。Cスト権確立とスト配置を背景に交渉の強化、D東京総行動・反原発キャラバンと経団連行動一つにして闘う。
 2月総行動(2月17日)、3月反原発キャラバン、総決起集会とデモを闘い、地域共闘建設、地域春闘、行政交渉を追求し、地域春闘集会やストライキ相互支援体制を強化する。四月後半に中小春闘激励行動を設定する。
 貧困・格差・差別を許さない総がかり行動で、安倍政権の労働者分断と取り込みに対抗し、ウソと欺瞞から解放してトータルな社会運動へ発展させ、労働組合の役割を発揮する。そして、労働者のための労働法制の充実である。総がかりとは、人が人らしく生きて働ける社会の実現ということだ。
 
 次に中岡さんは組織・体制・財政についても提案し、参加者の拍手でけんり春闘方針が決定した。

 特別報告は、藤本泰成さん(平和フォーラム共同代表)と木村辰彦さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック事務局長)がおこない、ともに運動をすすめていく決意を表明した。

 参加労組からは、全水道・東京水道労組、国鉄労働組合、郵政ユニオン、全統一労組、東京労組フジビ分会が報告をおこなった。

 講演は、「下流老人」の著書などで現代社会の問題を鋭く提起している藤田孝典さん(NPO法人ほっとプラス代表理事)が「貧困・格差・差別と切り結ぶ賃金引き上げ―労働組合への提言」と題しておこなった。
 日本国憲法第25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」としているが、現状は悲惨なものとなっている。日本の国民の相対的貧困率は16・1%で、これはOECD加盟国34か国中6番目に高い数値だ。所得にすると単身世帯122万円、2人世帯170万円、3人世帯220万円、4人世帯245万円未満が貧困ラインだが、それに達していない世帯が多い。
 こうした貧困や格差が広がる要因には、@生活困窮者を支援する「防貧政策」の不足、A社会保障制度の不十分さ、B現金給付や現物給付策の不足、C政治家や官僚の認識不足、D社会保障財源の不足というウソ、E貧困を生み出す社会構造、雇用システムがある。どれも日本に当てはまる。
 今年、「保育園落ちた、日本死ね」という社会現象がひろく知られたが、女性のブログでの小さなつぶやきからはじまったこの「事件」は、女性の社会進出を未だに阻む家事労働、結婚・出産での女性のマミートラック現象、復職できない女性たちが非正規雇用と貧困におちいり、低年金時代で夫婦共働きが求められる時代となったことを表現したものだった。
 いま大切なのは、社会問題を他人事ではなく自分事として考えることだ。特別な他者や怠惰な誰かではなく、自分や身近な人として見る視点が必要だということだ。あるいは将来の自分の姿として映す想像性ということでもある。
 だが、一方で自分たちの生活も大変だから他者への思いやりにも限界があるという現実がある。
 市民の多くが将来、どこかで貧困になる。とくに低年金の増加や無年金受給額が生活保護基準に満たない状態が予想される。現役時代に40年間働き年金保険料を払うとして、平均年収が456万円でも、国民年金と厚生年金をあわせて月額約16・5万円ぐらいになると予想され、さらに低下する可能性も大きい。
 いま子どもの貧困は、厚生労働省の調査では、平成24年に16・3%で過去最悪だ。17歳以下の子どもの6人に1人、300万人あまりが貧困状態にある。国民の平均的な所得の半分を「貧困ライン」と呼び、その子どもたちが6人に1人だ。
 とくに、母子家庭などひとり親世帯の子どもは深刻だ。その相対的貧困率は54・6%で、ひとり親世帯2人に1人の子は貧困にある。ひとり親世帯の収入は、母子家庭の母自身の平均年収は223万円(うち就労収入は181万円)、父自身の平均年収は380万円(うち就労収入は360万円)で、生活保護を受給している母子世帯及び父子世帯は ともに約1割で、多くの世帯が生活保護の要保護世帯に該当している。
 子どもの貧困の背景にあるのは、@離婚などによるひとり親世帯の増加。A企業が正社員を減らし、賃金の低い非正規労働者を増やしてきたこと。Bとくに女性の貧困と子どもの貧困がセットであり、貧困率を押し上げていること。それにC「それは家庭の問題である」という家族原理主義の存在などである。
 下流老人に陥る下流老人予備軍と貧困世代を救うことが急務だ。「日本社会から強いられた貧困に直面しでいる」「貧困であることを一生涯宿命づけられた」若者世代がいる。15歳〜39歳を想定すると、その人数は約3600万人だ。現代の若者たちは一過性の困難に直面しているばかりではなく、その後も続く生活の様々な困難さや貧困を抱え続けてしまっている世代であると指摘したい。彼らは自力ではもはや避けようがない。日本社会から強いられた貧困に直面している日本史上でも類を見ない特異な世代である。若者の死因のトップは自殺だ。5つのよくある「若者論」として、労働万能説(働けば収入を得られる)、家族扶養説(家族が助けてくれている)、青年健康説(元気で健康である)、時代比較説(昔はもっと大変だった)、努力至上主義説(若いうちは努力をするべきで、それは一時的な苦労だ)というのがあるが、これらはすべて間違っている。若者の現実がわからないという悲劇がここにある。なされるべきは若者を新たに社会福祉対象者とすることであり、現在のシステムを大幅に変えていかなければならない。社会福祉は高齢者・児童・障害者などに偏向し、それら対象者以外のニーズを捕捉できない仕組みになっていて、若者は社会福祉対象や支援対象から除外されている。北欧などヨーロッパでは、教育や住宅など給付の対象になっている。日本でも社会保障給付による再分配が必要である。
 こうした日本社会を作り出したものは、医療や介護、住宅や教育、保育や生活支援などに税を投入してこなかったこと、貯金を促して自分たちや家族で支え合うことが推奨され社会保障は大きな役割を果たしてこなかったこと、「古き良き日本の家族システムの崩壊」、そして、企業の福利厚生などの削減などがある。
 いまこそ、社会保障を充実させる声をあげるべきだ。
そのためには、どうしても「税」の問題を正面から取り上げなければならない。提案したいのは、ぜひとも税金を引き上げる議論を行うべきだということだ。
 日本は恒常的な社会保障財源の不足にある。それは、人間相互不信や政府への信頼不足が租税抵抗としてあるわけだが、税の負担なく社会保障の受益はあり得ない。応能負担で低所得から高所得者まですべての市民が負担して、応分の公正な受益を行うべきだ。貧困世代・下流老人を生むのは、社会である。
 ソーシャルアクションを続けることで「暮らしにくさ」は変えられる。
 そのために労働組合は役割を果たしてほしい。


KODAMA

  追悼!刈谷稔さん! ―刈谷稔さんを偲ぶ会開催される!―

 11月19日、田中機械を会場に刈谷稔さんを偲ぶ会が開催された。会場には電通合同労組、全国金属労組田中機会支部、関西共同行動、関西三里塚闘争に連帯する会など刈谷さんの人生に関わった人々の姿があった。7月22日に悪性リンパ腫で69歳の若さで他界された刈谷さんは電通での労働運動、三里塚闘争、田中機械での労働運動などに参加された。関西の重要な労働現場を文字通り《社会運動の中を駆け抜けていった》と言えるような人生であった。
 私たちは建党協の時代にいろんな方々の協力の下に『今、労働を問い直す』というシリーズでの企画を持った。その第8回の報告を刈谷稔さんにお願いしその生き方と労働に対する向き合い方を知ることができた(以下はその時の報告をまとめたものである)。
 刈谷さんは主に電電公社と田中機械で働いてこられ、その間に三里塚闘争で不当逮捕されたために電電公社に解雇され、これと闘ってきた。高校を卒業するとサッカーをやっていた関係でこれを社会人として続けるために電電近畿に入社した。当時まだ電話の敷設が貴重な時代でその窓口事務をやったり、電話料金を窓口で受け取る仕事をされていた。
そして68年の3月には全電通労組の執行委員になり、段々組合活動に活発に取り組む様になっていった。このころ社会的に活発になってきた平和、反戦闘争にも地域で参加し、分会でも物置同然になっていた組合事務所を活発に使うようになっている。当時、みんなが大きい局へ移りたいという志向があった中で、当局はむしろやかましい組合員をとばすという形で配転していたようで刈谷さんは岸和田局に配転になっている。そこは組合活動も活発で共産党員も多かったが、かれらは党の64年春闘でのスト反対の四・八声明で組合からの権利停止処分をかけられていた時期であった。このころ、電話局では一般的に電報関係に活動家が多く、大衆行動が活発で就業時間食い込み集会が多かった。こうした中で刈谷さん達は女性の生理休暇の問題や権利問題を取り上げていった。そして職制の組合活動への締め付け、介入が激しくなり、それまで役選に当選していたのが落とされるようになっていった。
 71年ごろからは大阪南支部で職場反戦が結成され、青年部の役員をとることを追求した。また、全国の全電通の交流の中で初めて三里塚や立川基地を訪問している。さらに地域の関西新空港の問題や部落問題にも職場で議論し始めていた。
 75年には在日朝鮮人の青年への電電公社による就職差別が起き、刈谷さん達は西宮西の教師達と協同してこの問題に取り組んでいった。このように職場や地域、社会の問題と広範に取り組んでいる時に78年の3・26三里塚闘争で逮捕され、解雇されたのであった。この中で長期の勾留攻撃と闘い、また解雇攻撃と闘うことになった。電通労働者の支援を受けながら闘い、また『労働情報』誌の配布をしたり、この事務局が田中機械支部にあった関係で応援労働として田中機械で働き始めることにもなった。働くといっても溶接の基礎訓練で半年かかったほど田中機械の労働者は仕事には厳しく昔ながらの技術と労働者性が生きているといった所だったのである。
 この簡、刈谷さんは和歌山の両親と祖母の元へ病気の父と祖母を励ますために帰り、遠距離を通勤したのであった。こうして刈谷さん本人の病気で1年ほど休んだ後、また田中機械で働きながら港合同の日常活動に参加していった。
 刈谷さんからは、田中機械が自主生産で仲間の労働者から仕事をまわしてもらったり、その後は運動と繋がった生産をやるために合併浄化槽の生産を研究、開発した経過についても説明していただいた。また争議解決に伴って定年後も働けた労働者のこととか、年金受給資格に満たなかった労働者を争議中であれば年数を満たすために解決したこととか、あるいは温泉掘削も生産現場を守るために温泉があれば土地の剥奪がされにくいとか、初めて聞くこともあり、興味深く傾聴した。
「仕事があると楽になる」という話しは労働者にとっての労働の意味の核心に迫っているという気がした。また一番微妙な路線問題については「見方の違い」があるということ、また「職場の労働者が何を考えているかを考えなければならない」という言葉が印象的であった。
 私にとっては同じ3・26三里塚闘争の被告であった友人の葬式で刈谷さんが「もう会うことはないやろう」と言われたのが最後の言葉となった。その時は距離を置くということかなと思ったものだがひょっとしたら病気との関連での発言だったのかなと思う……合掌。  (K・K記)

 怒りの表現・批評と批判

 『怒り』(監督・李相日)という映画を観に行った。だが、何をもって「怒り」とするのがわからず、血だらけのシーンが続くのを観終って後にトイレで嘔吐してしまった。若い非正規労働者の待遇の悪さへの怒り、沖縄で米兵にレイプされた少女の怒り、今の社会への怒りを主張したかったのだったろう。『シン・ゴジラ』(監督・庵野秀明、樋口真嗣)を観た時も、なんで今あんなに醜い怪獣が日本に現れなければならないのか、と頭を抱え込んでしまった。 「SEALs」の奥田愛基さんが、運動の「キッカケは東日本大震災と福島第一原発事故だった」という言葉を聞いて、少しわかったような気がした。二つの映画の背景にもそれがあった。「生まれた時から格差社会。絶望しきっているから何かやらなければ」という言葉もあった。「SEALs」は解散してしまったが、この思いは大きく広がった。戦争法と自分の関係を自分の言葉で話す、それぞれが得意な仕方で自己表現する、日本でと同様に世界中で若い世代が動き出しているようだ。私は石川啄木の『時代閉塞の状況』を思い出した―「時代に没頭していては時代を批評することができない。私の文学に求むるところは批評である。」  (R・T)


「12・8開戦の日、今の日本にもう黙っていられない! ―アジアからの危惧の声を聴き考える緊急集会―シンポジウム」

    マレーシアから「第二次世界大戦歴史研究会」が参加し、日本侵略軍の罪行とマラヤでの抗日闘争を報告


 安倍首相はこの12月にハワイ真珠湾を訪問し政権末期のオバマ大統領と会談し、これで太平洋戦争に決着をつけるといっている。
 だが、1941年12月8日、日本海軍航空部隊がハワイ真珠湾を奇襲攻撃する一時間も前に、日本陸軍はマレー半島のコタバルに上陸している。太平洋戦争はまずアジア侵略として始まったのだった。このことは、日本の歴史教科書にも明記されるようになっている。例えば、山川出版の「詳説日本史」では「日本陸軍が英領マレー半島に奇襲上陸し、日本海軍がハワイ真珠湾を奇襲攻撃した」とあり、また「東南アジアの占領地域では、現地の文化や生活様式を無視して、日本語学習や天皇崇拝・神社参拝を強要し、タイとビルマをむすぶ泰緬鉄道の建設、土木作業などや鉱山労働強制動員も行われた。ことにシンガポールやマレーシアでは、日本軍が多数の中国系住民(華僑)を反日活動の容疑で虐殺するという事件も発生した。その結果、日本は仏印・フィリピンをはじめ各地で組織的な抗日運動に直面することになった」と記述されている。

 12月8日、衆議院議員会館で「12・8開戦の日、今の日本にもう黙っていられない!―アジアからの危惧の声を聴き考える緊急集会―シンポジウム」が開かれた(主催・「村山首相談話の会」)。

 集会には、伊波洋一参議院議員(沖縄の風)、糸数慶子参議院議員(沖縄の風)、服部良一元衆議院議員が参加して連帯あいさつを行った。

 特別報告は田中宏・一橋大学名誉教授の「中国人戦争犠牲者らへのビザ発給拒否・集会妨害は憲法違反!政府・外務省の権力乱用は許されない」。
 昨年11月、東京で開催されたシンポジウム「戦争法の廃止を求め 侵略と植民地支配の歴史を直視し アジアに平和をつくる集い」に参加予定だった日本軍731部隊の細菌戦の被害者遺族および関係者12人に、日本政府が査証(ビザ)を発給しなかった。これは憲法21条が保証する「集会の自由」を侵害するもので、今年3月には、日本人原告3人、中国人原告3人が国家賠償を求めて東京地裁に損害賠償訴訟を起した。ぜひともより多くの人々の裁判闘争への支援をお願いしたい。

 集会には、マレーシアから華人団体の「第二次世界大戦歴史研究会」が参加して報告をおこなった。同「研究会」の前身は「マレーシア日本占領期殉難同胞追悼実行委員会」で、高嶋伸欣・琉球大学名誉教授らが始めた現地での住民犠牲者追悼行事を地元側から支援した。95年からは追悼式を主宰し、「戦争展」やシンポジウム、さらには各種文献・資料の刊行も行っている。

 シンポジウムは、高嶋伸欣教授をコーデイネーターとしてはじまった。

 第二次世界大戦歴史研究会会長の翁清玉さんは「日本が犯したマラヤ侵略の罪」について報告。3年8か月の日本占領期マラヤの人々とくに華人は悲惨な目にあわされた。抗日分子・共産党員容疑などで多くの人が殺され、5000万ドルもの強制「献金」を強いられた。村山首相談話が出された1995年、マレーシアの華人民間団体・中華大會堂(約四千団体による組織)のヌ・テクホン会長が第二次世界大戦時の戦争犯罪への謝罪と損害補償(金額は195億日本円)を求めた。いま、私たちは日本政府に、公式の謝罪、強制「献金」の返還、そして当時日本軍が発行した「軍票」の賠償を要求して運動している。

 第二次世界大戦歴史研究会事務局長の陳松青さんは「マラヤ第二次世界大戦歴史研究会の成立と活動」について報告。研究会は1995年に作られ、研究と毎年の追悼集会を開いている。8・15追悼式には、英国大使館なども参加し、日本大使館からは書記官が出席し献花を行っている。現在の活動はマラヤの戦争だけでなく世界の反ファシスト戦争とりわけ中国の抗日戦争との関連を強調して行われている。また世界の動き、とくに日本の右翼の動向を注視している。「憲法9条にノーベル平和賞を」の取組みにたいして、歴史研究会は第一回「アジア平和賞」を贈った。

 中華大會堂事務局長の陳亜才さんは、「第二次大戦期における日本軍のマラヤ侵略―歴史の記憶と再考」で、マラヤにおける抗日運動について、またマラヤにおける歴史教育と教科書について報告した。
 マラヤの抗日勢力は、第一にマラヤ人民抗日軍、それを支援するマラヤ抗日同盟会だった。イギリスも抗日部隊を作った。また国家軍というのもあった。抗日活動は、マレー半島だけでなくボルネオ島、サラワク島にも広がった。シンガポールには、陳嘉庚(タン・カーキー)たちの南洋華僑籌賑祖国難民総会が活動していた。
 中華大會堂の活動には華僑抗日戦殉職戦没同胞記念碑の建設もある。
 マレーシアの教科書は、マレー語のもの(国立中高教科書)と中国語のもの(独立中高教科書)がある。ともに侵略戦争や虐殺・略奪の問題についての記述は多い。歴史を鑑として、誤りを繰り返さないためだ。

 第二次世界大戦歴史研究会副事務局長も陸培春さんは、安倍政権のアジア政策の内実が軍国主義であると批判した。世界中で政治の劣化が進行している。日本の安倍政権のそれは著しい。だが心配なのは国民の思想もともに劣化してしまうことだ。声を上げなければならない。韓国で民衆はそうしている。アジアと日本国内では軍国主義について認識のずれがある。アジアからの日本軍国主義への批判は強い。だが日本の左と言われる人の中には、日本会議の考えもいくつかは認めていいのではないかなどと言う主張があるのは驚きだ。中途半端な立場・態度ではいけない。日本と東南アジアの人々はみんなで知恵を出し合って教科書問題に取り組むなど国際的な連帯を広げていこう。

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12月8日  開戦劈頭の全般情勢

   0215 佗美支隊のコタバル第一次上陸部隊が敵岸に逢着した。

   0320 海軍機動部隊は真珠湾空襲第一撃を開始した。

        『戦史叢書 マレー進攻作戦』(著作者・防衛庁防衛研修所戦史室 発行所・朝雲新聞社)


せんりゅう

    ありし日のカストロ帽が懐かしい

    わがいのち常に勝利を目指してる
  
    ― カストロ逝去 ―

2016年12月

              ゝ 史


複眼単眼

    
 「日本には抵抗の文化がない」か

 11月28日、日本を訪れていたベラルーシのノーベル賞作家、スベトラーナ・アレクシエービッチは、フクイチ(東電福島第一原発)の被災地である福島県を視察した後、「日本社会には、人々が団結する形での『抵抗』という文化がないことだ」と言った。続けて「祖母を亡くし、国を提訴した女性はその例外。同じ訴えが何千件もあれば、人々に対する国の態度も変わったかも知れない。全体主義が長く続いた私の国(旧ソ連)では、人々が社会に対する抵抗の文化を持っていない。日本はなぜなのか」と疑問を呈したという。
 私はスベトラーナの作品を全く読んでいないので、残念ながら、作品などから彼女の真意がどこにあるかを想像する能力がないため、これらの言葉からのみ考えている。
 そして、これを報道したメディアの記事には「『日本社会に人々が団結しての“抵抗”がない』はいい指摘だ。日本は伝統的に『オカミ』に逆らうのをよしとしない風潮がある。右翼も、左翼も、最後は長いものに巻かれる。そうすることが『無難』と判断するのである」などと、同調して持ち上げる論評があるし、ツイッターなどでも彼女の意見に賛同する意見が続出している。
 私はスベトラーナの見解に疑問を持つし、これに同調する国内の意見に同意しない。日本で「抵抗の文化」が強力だとは言わないが、「ない」と言い切ることはどういう意味を持つのか。保守的傾向が強いと言われる現在の福島県で異議を申し立て、脱原発の旗を掲げてたたかっている一群のひとびとがいるし、その人びとは福島の民衆に根ざしている。福島の社会の「文化」というなら、幕末に相次いだ百姓一揆、明治近代にあっての全国有数の自由民権運動の民衆の拠点としてのたたかいがあり、戦後でも松川事件などの大弾圧が権力によって仕組まれざるをえないほどの労働運動の高揚があった。
 スベトラーナは「日本社会には、人々が団結する形での『抵抗』という文化がないことだ」などというが、それはあまりにも無知ではないか。
 一般に「抑圧のあるところに反抗がある」のであり、日本社会も例外ではない。歴史家の一部には日本には「革命の歴史」がないなどと談ずる人もあるが、私は見解を異にする。
こうした史観からは運動からの逃避か、敗北主義、絶望の正当化しか出てこない。
 さまざまに書かれてきた歴史の多くは、社会の支配的勢力によるものであり、その中では民衆の抵抗の歴史が極力過小評価される。スベトラーナの故国の歴史にしても、スターリン支配下のソビエトを否定するのは同意するが、ベラルーシも含めたロシア革命の歴史には果たして抵抗の歴史が全く見いだされないのか。
 日本の歴史においても抵抗の歴史は時代ごとに充ち満ちている。青木虹二の研究によれば江戸期には3700件の百姓一揆が発生したと言われる。ここで歴史的事実をひとつひとつ列挙する余裕はないが、かならずしも「左翼史家」の分類には属さない歴史家の網野善彦や安丸良夫の名を挙げてその研究に共感する立場を表明しておきたい。
 せめてスベトラーナとその同調者の人びとに対しては、「ポツダム宣言」の起草者らにしてもが「日本政府は日本国国民における民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障碍は排除するべきであり、言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されるべきである」と指摘するような歴史認識をもっていたことを知るべきだと思う。ポツダム宣言における「民主主義的傾向の復活」の重視、これはスベトラーナらの指摘とは対極だ。(T)


冬季カンパの訴え

    労働者社会主義同盟中央委員会

 いま安倍政権は内政外政の両面で困難に直面しはじめています。
 アベノミクス・黒田日銀政策は破たんの色を濃くし、また国際情勢の激変の中で、アジア諸国との関係改善のめどが立たず、米国とも難しい関係が予想されます。しかし、安倍はそうした窮状を一層の反動政策の強行で乗り切ろうとしていますが、それは非常に危険な事態をもたらします。
 総がかり行動と野党共闘はおおきな成果を上げています。この路線を強化・拡大して安倍の政治反動と戦争準備政策と対決するおおきな統一した戦線をつくりあげましょう。
 反戦・平和・憲法改悪阻止の闘いと労働運動の前進をかちとり、安倍政権を打ち倒しましょう。闘いの前進のためにカンパと機関紙「人民新報」の購読を訴えます。