人民新報 ・ 第1345号<統合438号(2017年1月15日)
  
                  目次

● 時代は大激変期を迎えた

          総がかり・野党共闘で安倍政治を打ち壊そう

● 沖縄県知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを巡る裁判

          最高裁の不当な棄却決定を糾弾する

● 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合のシンポジウム

          衆議院選挙をどうする ――立憲主義4党の共闘と市民の力を合わせて勝利を勝ちとろう

● 東京弁護士会主催「男女共同参画シンポ」

          切羽詰った状況から生まれた「女性の活躍」政策

● 安倍真珠湾訪問への批判

          内外の学者・ジャーナリストなどが公開質問状

● KODAMA  /  安倍の道は行き止まりだ!

● 複眼単眼  /  安倍晋三らの「真珠湾史観」の危うさ






時代は大激変期を迎えた

      総がかり・野党共闘で安倍政治を打ち壊そう


 安倍晋三首相は年頭で抱負を語り、「今年は憲法施行から70年にあたる」ことを強調した。改憲という言葉そのものはないものの改憲に取り組む姿勢を明らかにし、両院の憲法審査会での改憲案づくりを加速させようとしている。戦争法の具体化で戦争する国づくりをすすめ、明文改憲も同時に進めようというのだ。また、安倍政治の推進のために、公明党だけでなく、維新、それに加えて連合幹部を通じて民進党にウイングを伸ばしながら、安倍与党化を進めようとしている。そうした構図で衆院選挙を闘おうという腹積もりだ。
 安倍暴走政治を阻止するのは、戦争法廃止、憲法改悪阻止の各地各界各層の総がかりの運動の拡大強化であり、それを背景にした野党共闘の強化である。
 1月7日、新宿駅西口で、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」のよびかけで、「つながり、変える リスペクトの政治へ」をかかげて「ともに闘う 2017 ファーストアクション」が開かれ、2500人が参加した。民進党の安住淳代表代行、共産党の志位和夫委員長、自由党の青木愛副代表、社民党の福島瑞穂副党首があいさつし、手をつないで、野党共闘強化をアピールした。
 衆議院議員の任期は2018年12月までだ。年内にも衆院解散・総選挙はあるだろう。毎日新聞の試算(14年衆院選の結果に基づく試算)によると、民進、共産、自由、社民の4野党が候補者を一本化した場合には「計58の小選挙区で与党の現職を逆転する可能性」があるとしている。その試算では、野党4党が勝利するとされるのは、北海道ブロック5、東北9、北関東8、南関東4、東京8、北陸信越6、東海5、近畿6、中国1、四国1、九州5で、与党は「3分の2」を大きく割り込んで議席を大幅に減らすことも予想される。しかし、いまだに多くの選挙区で候補予定者が競合している。現時点で「すみ分け」は秋田3区、福島5区、神奈川12区、長野4区、愛知4区、香川1区、熊本1区の7選挙区にとどまる。
 市民連合は、昨年の参院選の結果を受けての「今後の市民連合の活動方針について」(2016年7月26日)で「私たち市民連合としては、ひきつづき全国各地の市民運動と連携しつつ、来るべき衆議院選挙における小選挙区での野党共闘の取り組みを後押しするとともに、個人の尊厳を擁護する政治をいっそう具体化していくために立憲野党との政策協議を積みかさねていきたいと考えています。私たちの代表を一人でも多く衆議院に送り込むために、主権者たる市民の皆さんの粘り強い政治参加を呼びかけます」と確認した。分断を阻止して野党共闘強化がなされれば、安倍政治に甚大な打撃を与えることは明らかである。

 いよいよ1月20日に米・トランプ政権が発足する。多くの識者は世界の不安定をもたらす要因の第一位にトランプの内外政策を置いている。だが、トランプという「変な」男がアメリカ大統領になったというそのことがすでに累積されてきた世界の各種矛盾が解き放たれる激変期に突入していることの表れである。第二次大戦以来、とりわけソ連の自滅的崩壊からのアメリカの一極世界支配体制が動揺し、世界的な関与・世界の警察官の役割を果たせなくなったことにより、トランプのアメリカ第一主義は出てきている。アメリカ国内の産業空洞化や巨大な貧富の格差の進行に対する不満を、反ウォール街・排外主義などの欺瞞的なスローガンによるポピュリズムで取り込んだのがトランプであった。それに当選にはヒラリー・クリントン追い落としのロシアの側面からの援助があったともいわれる。
 しかし、トランプ新政権によって、トランプに投票した層の期待が実現されるわけではない。トランプ新政権の閣僚人事は、ビジネス界、極右の軍・諜報関係者、そして親族などによって構成される。予想される閣僚は次のような連中だ。副大統領のマイク・ペンス(インディアナ州知事)は宗教右派。国務省長官のレックス・ティラーソン(エクソン・モービルのCEO)の会社は気候変動問題で訴訟が起こっている。財務省長官のスティーブン・ムニューチンはゴールドマン・サックス出身。国防省長官のジェイムズ・マティス(退役大将)はイラク戦争での行為から「狂犬」と呼ばれている。司法長官のジェフ・セッションズ(アラバマ州上院議員)は、人種差別主義者だ。商務長官のアンドリュー・パズダーはファストフード・チェーン店の経営者で、最低賃金一五ドルに反対する。環境保護局長官のスコット・プルイットは石炭産業を守る気候変動否定論者。国土安全保障長官のジョン・ケリー(海兵隊退役軍人)は、グアンタナモ収容所を管理していた。国家安全保障顧問のマイケル・フィンは、イラクやアフガニスタンで戦時諜報活動を指揮した。そのほかの閣僚・顧問などもいずれも差別主義者、気候変動否定論者である。
 政権発足を前に1月11日、トランプは記者会見を行った。ロシア情報機関のハッキングについては認めた。だが、トランプの個人情報をつかんでいることについて強く否定したが、メディアとの対立激化した。しかしロシアとは関係改善をおこなっていくという。「史上最多の雇用生み出す大統領になる」として、フォードがメキシコへの工場の移転計画を撤回したのにつづいて、GMなどもそれに続くのを期待すると述べた。「ロシアをはじめ、中国などほかの国々はアメリカを最大限、経済的に利用してきた。中国にいたっては南シナ海に巨大な要塞も作っている。だが、ロシアや中国、日本、メキシコなどすべての国が、今後は、これまでのアメリカのどの政権に対してよりもはるかに大きな敬意を払うことになるだろう」とした。またオバマケアは廃止する。
 現在、新閣僚人事の承認のための議会公聴会が開かれている。しかし、反対意見は強い。
 また閣僚の政治姿勢に加えて、トランプ自身が経営から身を引かず大統領職に専念する気のないことや身内の閣僚登用なども問題視されている。
 会見では、トランプ相場として期待されていた財政と減税政策に触れなかったため経済界は失望した。
 世界の激変を加速させるトランプ政権は世界各地に強い影響を及ぼすだろう。新しい時代にどのように対処していくのかが問われていて、各国の政府、政治潮流が政策を模索している。
 だが安倍政権のそれはもっとも稚拙かつ危険なものである。安倍は12日からフィリピン、オーストラリア、インドネシア、ベトナムの4か国を訪問する。狙いは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の発効、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉妥結など自由貿易を推進し、また南シナ海の情勢などで「法の支配や航行の自由の重要性」などを確認し、米中関係の緊張に悪のりして、その先兵を演じることによって米政権のご機嫌を伺い、中国包囲網を形成したいということだ。

 総がかり行動を前進させ、市民と野党の共闘を強めよう!
 安倍内閣を打倒しよう!


沖縄県知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを巡る裁判

       
 最高裁の不当な棄却決定を糾弾する

 12月20日、最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、翁長雄志沖縄県知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを巡り、国が県を相手に提起した不作為の違法確認訴訟で、不当な棄却を決定した。決定の言い渡しは、「主文、本件上告を棄却する」とたった数秒のことだった。最高裁は、知事の弁論も開かず沖縄の主張をまったく聞くことなくこの決定を行った。これに対して傍聴者は一斉に抗議の声を上げた。最高裁の周辺では沖縄の闘いに連帯する人びとが結集してシュプレヒコールをあげた。

 衆議院議員会館で報告集会が開かれ、当日の傍聴などの行動を行った人びとを始め多くの人が参加した。
 弁護団からの報告につづいて、島ぐるみ会議共同代表の高里鈴代さんが発言。裁判を見て聞いた証人としてこの決定には怒りが燃え上がっている。安倍政権は、主権回復の日で沖縄を切り捨てていることを告白している。沖縄を米軍支配に引き渡した日だ。1995年、三人の米兵が女子小学生を集団強姦した。沖縄の怒りは全島に広がり、それに対処しようとしたのが日米政府によるSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意で、沖縄の基地負担を言うものだったが、実際には辺野古に新基地を建設し、オスプレイを配備し、北部訓練場を強化するものだ。日本政府は沖縄の声を日米同盟強化の手段に使ったのだ。しかし沖縄はこの20年間、一貫して軍事基地強化に反対し拒否してきた。今日の最高裁の決定は沖縄の生存権を否定するものだ。ワシントンも決定を喜んでいる。戦争のために強大な基地をつくる―これが日米政府のねらいだが、司法がお墨付きを与えるという暴挙が行われた。12月13日、恐れていたことが現実のものとなった。オスプレイが墜落、大破したのだ。オスプレイ墜落にみられるように、基地被害は基地とその周辺だけではない。オスプレイはあちこちに飛んでいる。沖縄だけでなく、どこも非常に危険であることが立証された。最高裁決定が終わりではない。これからも共に歩んで闘いを強めよう。
 報告集会では、赤嶺政賢衆議院議員(共産党)、伊波洋一参議院議員(沖縄の風)がともに運動を前進させていこうと決意表明を行った。

山城博治さんらを救え!の声を広げよう 安倍政権は沖縄の反対運動を押しつぶす暴挙を繰り返している。とりわけ反対運動の指導的役割を果たしている山城博治・沖縄平和運動センター議長にたいする権力に憎しみは尋常ではなく、昨年10月17日、米軍北部訓練場のオスプレイ訓練用ヘリパッド建設に対する抗議行動中、逮捕した。沖縄県警は山城さんをたち7名を次々と公務執行妨害、傷害容疑、威力業務妨害などの容疑で逮捕し、そして、山城さんたち3名はいまなお不当に長期勾留されている。山城さんは、そのうえ接見禁止の状態に置かれている。この不当な逮捕・長期拘留し対して、さまざまな運動が取り組まれている。沖縄を中心に「山城博治さんたちの早期釈放を求める会」(共同代表・山内徳信、崎原盛秀、伊波義安、仲宗根勇、新川秀清、東門美津子)の那覇地方裁判所所長あての「山城博治さんたちの早期釈放を求める」署名が行われている。
 「山城博治さんらを救え!」キャンペーン(鎌田慧、澤地久枝、佐高信、落合恵子、小山内美江子)は、那覇地方裁判所と那覇地方検察庁あての「山城博治さんらの釈放を求める要請書」(別掲)署名活動を展開中だ。
 山城博治さんたちを権力の檻から取り戻そう!
 沖縄の軍事基地撤去、日本政府の沖縄差別・迫害を許すな!

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山城博治さんらの釈放を求める要請書

 私たちは、沖縄辺野古の新基地建設と高江のオスプレイパッド建設に反対する人々に対する政府のすさまじい弾圧に深い憂慮の意を表明し、逮捕・勾留されている山城博治さんらの釈放を強く求める者です。
 沖縄辺野古の新基地建設と高江のオスプレイパッド建設に沖縄の県民の多くが反対をしています。沖縄の基地負担軽減では全くなく、新たな基地を作り、基地機能を強化するものでしかないこと、また、貴重なふるさとの自然を守りたい、平穏な生活を守りたいという気持ちから、非暴力の座り込みが続けられています。こうした中、反対運動を続ける沖縄平和運動センター議長である山城博治さんたちがこじつけとも思われる理由で逮捕され、次々と罪名が切り替わり、長期の勾留が続いています。現場で行動を指揮する山城博治さんに対する勾留は、2016年12月25日で、70日にも及んでいます。山城博治さんは、10月17日、ヘリパッド建設予定地周辺の森の中におかれた有刺鉄線を切断したとして器物損壊罪で逮捕されましたが、那覇簡裁は20日にいったん勾留請求を却下しました。すると、警察は、同じ20日に、9月25日に公務執行妨害と傷害を行ったとの容疑で再逮捕しました。勾留を続けるために再逮捕したのです。11月11日には、山城さんは、公務執行妨害と傷害の罪で起訴されました。しかし、起訴の翌日の琉球新報は、山城さんは、「現場で市民の行動が過熱化したり、個別に動いたりすることを抑制し」「勝手に機動隊員らと衝突したりしないように繰り返し呼びかけていた」と報じています。さらに、山城さんが2015年4月に闘病生活に入り、辺野古のキャンプシュワブゲート前の抗議行動に参加できなくなった後の県警関係者の話として、「暴走傾向の人を抑える重しとして山城さんは重要だった」と話していたと報じています。現場で、警察官が傷害を負った事実が仮にあるとしても、それを山城さんの責任とすることは筋違いです。
 さらに、11月29日には、今度は、山城さんは威力業務妨害罪で逮捕されました。この逮捕の容疑は、10ヶ月前の、1月28日から30日にかけて、ゲート前にブロックを積み、工事車両の通行を妨げたというものです。なぜ、10ヶ月も前に行われた抗議行動について、いま、逮捕勾留なのでしょうか。警察は、その場にいて、見ていたにもかかわらず、何の行動も起こしていませんでした。
 山城博治さん他運動関係者らに対する逮捕、勾留は、高江のオスプレイパッド建設、辺野古の新基地建設を強行するために、その反対運動をつぶすために行われているものです。沖縄の人々の、基地とヘリパッド建設反対のやむにやまれぬ行動に対して、これを力でねじ伏せるような一連の検挙は、不当な弾圧であり、決して許されてはなりません。
私たちは、山城博治さんたちの早期釈放を求めます。保釈が認められるべきです。同じ被疑事実で逮捕された他の人たちの何人かは、起訴されず釈放されています。罪証隠滅の恐れなどないことは明らかです。もちろん逃亡の恐れもありません。勾留を続ける法的な理由がありません。
 とりわけ山城博治さんの健康状態が心配です。山城博治さんは、2015年に大病を患い、病み上がりの状態です。今も、白血球値が下がり、病院に通院し、治療を受けなければならない状態です。勾留理由開示公判で山城さんを見た、市民からも、山城さんの健康を危惧する声が上がっています。健康を害していることが、明らかな状態のもとで、長期の勾留が続けられています。さらに、山城博治さんのみ接見禁止がついていて、市民が面会に行くこともできず、弁護士としか会えない状態が続いています。山城博治さんの健康を害し、生命の危険すらもたらしかねない長期勾留は、人道上も決して許されることではありません。山城博治さんたちの一刻も早い釈放を求めます。

      記

 1、山城博治さんほか沖縄辺野古の新基地建設と高江のオスプレイパッド建設に反対する活動に関連して勾留されている人々の保釈または勾留執行停止を強く求めます。
 2、山城博治さんに対する接見禁止措置を直ちに解除することを求めます。


安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合のシンポジウム

      
 衆議院選挙をどうする ――立憲主義4党の共闘と市民の力を合わせて勝利を勝ちとろう

 2015年12月20日に結成された「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は、昨16年夏の参院選で野党共闘の強化を呼びかけ、成果をあげた。今年には衆議院選挙も予定されているが、野党共闘が一層強化されれば、安倍政治に重大な打撃を与え暴走をストップさせることができる。

野党・市民で衆院選勝利へ


 政治連合の結成一周年を記念して、昨年12月21日、東京北区の北とぴあホールでシンポジウム「衆院選挙をどう戦うか? 立憲政治の再生を!」が開かれ、700人が参加した。
 開会あいさつは高田健さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)。政治連合ができてから一年、連日のように大衆的な行動が行われ、参院選に全力をあげてきた。その他にも東京10区などの衆院補選、都知事選などに取り組んできた。そして新潟県知事選では大きな勝利を勝ち取った。政権側からは解散風が強くなったり弱くなったりしている。衆院選では一人区が295あるが、それにどう対応していくかが政治連合の課題である。
 参院選では与党の三分の二阻止という目的は実現できずに敗北したが、野党共闘の力に大きな確信を得ることができた。立憲主義の四野党の共闘と市民が結束して闘えば勝利することが出来るという確信だ。次の衆院選で大きな打撃を与え安倍政権を追い詰めることは可能だ。2017年は年初1月7日の新宿西口での4野党による大演説会を行い、闘いをスタートさせる。

いっそうの野党共闘強化を

 日本共産党の小池晃書記局長(参議院議員)は、16年は立憲主義を基軸にした野党の共通政策と魅力を発揮し、相互支援、相互協力の年となったが、この力を強化して、総選挙での勝利、野党連合政権の実現をめざそう、とあいさつ。
 また民進党の福山哲郎幹事長代理(参議院議員)は、幹事長・書記局長会議などを定期的に開催して参院選などでの経験を生かして野党共闘を強化していきたい、と述べた。

政治の三つ巴構造

 基調講演は、石川健治さん(東京大学教授・憲法学)。
立憲主義という言葉は、戦前のイディオムだ。立憲主義の問題について言うなら明治憲法体制下での「大正政変」について考えたい。大正2(1913)年におこった第三次桂内閣打倒の政変だ。桂内閣は日露戦争に勝利した内閣であったが、軍部の横暴、詔勅による組閣など内閣の有司専制に対する「憲政擁護」をスローガンにした運動で、多くの人が帝国議会を取り囲むような事態となった。立憲政治の曲がり角だったといってよい。しかも、このころはほとんどの人は選挙権をまだもっていない。その結果、立憲政治をどう定義するかということが問題となった。立憲主義は本来民衆のほうに向いたものではなかったが、それが民衆のほうを向くようになり、大正デモクラシーとなっていく。
 立憲主義をどのように定義するか。3つの通説がある。第一に民主主義、または民本主義だ。また国民参政、国民自治という言い方もした。第二には自由主義で、これが立憲主義の本領である。そして第三に責任主義で、これは民主主義と自由主義をつなぐカギだ。政治家が、国民に対して責任を負うという責任主義が、大正期の議員内閣制を実現した。しかしその後、冬の時代が始まる。ここで、立憲主義は、権力者に対して疑いを持つ、非常に執拗な疑いを持つ猜疑の政治となる。これも、1930年代から批判されるようになり、新しく二つの道筋が浮上した。こうして立憲主義=猜疑の政治とともに三つ巴の状態が生まれてきた。まずヒトラー的な独裁主義、権威主義の信頼の政治。これは政治家を信頼し、すべて任せてしまう政治で、戦争中の大政翼賛会などがこれにあたる。それに、天皇へのカルト的信仰を前提とした信仰の政治がでてきた。神勅に基く政治で、これで戦争に入っていった。この流れは、日本会議と言われている人たちが引き継いでいる。
 今日でも、猜疑の政治、信頼の政治、信仰の政治の三つ巴構造は、基本的にあまり変わっていない。信頼の政治は、現在、非常に力をなしているが、それは独裁主義でも権威主義でも、とにかく指導者にすべて任せてしまう。何をやるか分からないが任せておけば良いということで、ステルス性の隠された権威主義の進行というべきだ。これに対して猜疑の政治である立憲政治は、やや押しまくられている。権力者を疑う。それだけでなく、憲法制定権力としてある国民としてのわれわれ自身も疑う、こうした距離感のある政治のあり方が立憲政治だ。
 政治には信頼の要素も、信仰の要素、猜疑の要素も必ずあるが、政治、政治家に対する目線がそのうちの何なのかを考えていかなければならない。いまの安倍さんを信頼しすべてを任せてしまう信頼の政治は、これはもう独裁主義であり、ステルス性の権威主義だ。
 いまは政党連合間の競争の時代だ。特定の政党が他を圧するという状況にはない。そうするとプラットフォームの重要性が非常に大事になってくる。市民連合の初志は三つあり、安保法制の廃止、立憲主義の回復、個人の尊厳だ。第1と第2は廃止、回復で、いわゆるネガティヴなものだが、第3の個人の尊厳は 唯一ポジティヴなもので、このポジティヴなプラットフォームに、どれだけ多くの人が手を繋げるかかが大事な点だ。自民党のロウトル(老頭児)政治家は個人の尊厳なんてとんでもない、つぶせというのが本音だ。しかし自民党の中にも個人の尊厳へのコミットメントする人びといる。
 市民連合の綱領の中でこれから力を持ってくるのが、個人の尊厳だと思う。自由、責任、尊厳の三つの関係だが、まず自由とは何であるか。とにかく放っておいてもらいたいという消極的自由観か、それとも責任を伴う自由観かがあり、このどちらを取るかが、重要な論点だ。例えば今問題になっているカジノ法だ。トバクの自由はあるのか。憲法第十三条は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」を引いてのトバクの自由の主張がある。憲法の幸福追求権と称して、賭博を解禁しても良いという発想だ。ただし 「公共の福祉に反しない限り」というのがついており、現在は、賭博する自由が公共の福祉の観点から制約されて、社会的法益に対する罪が刑法で規定されカジノを置けない。また人間の尊厳、責任というものが内側から自由を支配していて、だから最初から賭博の自由はないという考え方がある。殺人の自由について考えると、問題の所在がよく分かる。これも公共の福祉に反するから禁止だという考えと最初から人を殺す自由はないんだという自由観だ。市民連合はどちらの自由なのか問われている。
 次に責任。立憲政治の要は責任主義だ。憲法の前文には、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」とあり、これは責任主義の表れだ。議会がやりたい放題ではなくて、むしろ逆に国民に対して重い責任が発生することだ。また66条の3項では「内閣は、国会に対して責任を負う」とある。政治家たちの責任は、まずは説明責任で、選挙の公約を責任を取って実行し、議院で審議を尽くさなければならない。また第97条には「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」とあり、現在の国民が、過去の国民と将来の国民に対して責任を持っているということだ。過去の責任とは、たとえば戦争で亡くなった人に対してである。また選挙は権利であるが、それは公務であり、未来の国民への責任でもある。
そして、尊厳である。尊厳というのは、もともとは高い身分に限られた身分的な概念であった。しかしユダヤ人がいわば虫けらかゴミのように処分されたホロコーストという経験の反省は、人間に尊厳のない者はいない、人間の尊厳という思想が生まれた。第2次大戦後の人権は、どんな人であっても、尊厳のない人はいない。どんな人であっても尊厳を持たなければいけない。人びとの個々の生活、生命を大事にしなければいけないという考えだ。いま人びとの尊厳が傷つけられてはいないか。例えばヘイト・スピーチ。沖縄では、尊厳を否定された形で権力の行使を受けている。そして原発再稼働の問題は将来の人びとの生存そのものにかかわっている。ただ単に安全に生きるということだけではなくて、尊厳ある生を生きるということが求められなくてはならない。市民連合は、これを大事にしていかなければならない。自由、責任、尊厳を様々な活動の中でそれらが十分にいかされるのでなければならない。市民連合のプラットフォームを活かし、それを良く説明していくことが最低限の前提であると思う。

第二部での発言から

 第二部のシンポジウムは、山口二郎さん(法政大学)をコーディネーターに、山田厚史さん(ジャーナリスト)、大沢真理さん(東京大学)、諏訪原健さん(大学院生)で行われた。
 山田厚史さん―米大統領選でのトランプ当選にみられるような「平気でうそをつく」政治の時代が本格化したようだ。メディアが「うそを言っている」という批判をしなくなっている。そして踏み込んだ質問をしていない。メディアの状況も厳しい。紙離れで、広告が集まらず、経営状態が悪化し、それが腰がふらつく、筆が鈍るという事態を生んでいる。しかし、いい記事を書こうとしている記者もいる。十把一絡げのメディア批判ではなく、そういう時は評価してほしい。私も安倍に名誉棄損で訴えられている。
 大沢真理さん―アベノミクスは格差・貧困を深刻化した。雇用・賃金・景気回復はみんな嘘だ。自民党のスローガンは、「景気回復、この道だけはダメ」「アベゴミノミクス」とするべきだ。
 諏訪原健さん―SEALsは解散したが、政治を変えるために何とかしなければと考えながら活動してきた。いま大学院で学んでいるが、学生の生活は非常に厳しいものになっている。こうした状況を変えるためには、一人一人が政治と正面から向き合わなければならない。選挙の候補者も私たち自身がつくっていこう。
 山口二郎さん―参院選では一人区で11人が当選するという成果があった。野党共闘に力があることを示せれば、無党派層の支持が広がる。まず野党共闘を固め、無党派層の六〜七割、そして自民党支持層からも二割を獲得する闘いができれば勝利できる。


東京弁護士会主催「男女共同参画シンポ」

    
 切羽詰った状況から生まれた「女性の活躍」政策

 一月六日、弁護士会館講堂で、東京弁護士会主催の「男女共同参画シンポ」が開かれた。
 東京弁護士会は、男女共同参画をさらに推進するため新たに設定した課題をも盛り込んだ第二次基本計画を策定し、これを記念してシンポジウムを開催した。

 東京弁護士会の小林元治会長は開会あいさつで、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律が施行されたが、日本の女性活躍は世界的に見て100位にも達せず極めて低い、東京弁護士会も女性会員の活躍のためのアクションプランをつくり、着実に実践していきたい、と述べた。

 基調講演は、元厚生労働事務次官の村木厚子さん(伊藤忠商事株式会社社外取締役)。
 歴代総理は誰も女性の活躍を言ってきたが、安倍首相は、頼みもしないのに、女性の活躍、女性の活躍と言い続けている。しかし、これは、切羽詰まった状況から政策が出てきている。生かされていない力をどう生かすか。いま出生率が下がり、働く人が少なくなって、女性、高齢者、障がい者、そして外国人が必要になってきているからだ。こういうことをはっきり言えるようになったことが役人をやめてよかったことだ。
 戦後直後の第一次ベビーブームの団塊の世代、そして1971年〜74年のその子どもたちの第二次ベビーブームがおきたが、三番目の山はなかった。そして、2005年からは死亡率が出生率を上回り我が国は人口減少の局面に入った。人口推計によれば2060年に生まれる子供の数は現在に約五割、高齢化率は現在の約2倍、生産年齢人口(15〜64歳)も現在に二分の一近くに急速に減少する。
 少子高齢化、人口減少が現実化し深刻な問題となっている。これから起こる大きな問題は社会保障給付費ののびをどうするかだ。年金、医療の一人当たりの社会保障給付費はこれからも急激にのびていく。一般会計歳出は増えていくが、一方で一般会計税収は伸びない。赤字分は次世代の若い層に借金するということになっている。これを何とかするには、出し方をこれまでと違う形で圧縮するとともに、年金財政を支える人を増やすしかない。ここで政府の言う女性の活躍が出てくるのである。しかし日本の女性の労働力比率は極めて低い。その要因は日本の女性の就業には、結婚、出産で退職し、子育てなどが終わってから再度就職するといういわゆるM字カーブが顕著だからだ。また、北欧など女性の社会進出が進んでいる国ほど合計特殊出生率も高い傾向にあるが、日本はそうではないということがある。
 各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数というのがあるが、これは、経済参画、政治参画、教育、健康という指標を使う。2015年に日本は145国中101だったが、昨年は144国中111となった。日本でも少しは改善しているという感じもあるが、なぜそうなるかといえば、外はもっと良くなりつつあるからだ。
 女性活躍推進では、政府の基本方針策定、それうけて地方公共団体も推進計画を作るとされている。しかしこれは努力義務に過ぎない。そして企業も事業主行動計画等で@自社の女性の活躍にかんする状況の把握、A状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届け出・公表、B女性の活躍に関する情報公表などをおこなう。これは300人以上の企業は義務、それ以下の中小企業は努力義務とされている。
 これからの日本の雇用政策は、多様性(ダイバーシティー)、公平公正ということが大事で、「仕事を通じた一人一人の成長と社会全体の成長の好循環」を目指すべきだろう。

 つづいてのパネルディスカッションでは、はじめに経済同友会終身幹事の北城恪太郎・日本アイ・ビー・エム株式会社相談役が「これからの男女共同参画社会のあり方を考える」と題して、成長率の低下、膨大な長期債務残高の存在、人口減少社会の到来という状況では、経済活性化の必要性があり、そのためには女性の活躍などのダイバーシティーによるイノベーションの推進が求められていると経済界が求める男女共同参画社会の展望を語った。
 元朝日新聞記者の竹信三恵子和光大学教授は、女性の活躍の基礎として女性の安心がなければならないと強調した。女性の活躍には貧困・暴力の防止が前提だ。安心がないと活躍ができない。女性への暴力とは、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメント、DVなどだ。女性の雇用の終了の原因の多くがセクハラ、マタハラであり、貧困の原因にはDVが多い。都道府県労働局の男女雇用均等室に寄せられる相談の半数がセクハラだ。活躍を阻むものは、家事労働ハラスメント(家事を担う働き手、家事的職業の極端な軽視)だ。それに一日の労働時間規制の弱さ、不要な転勤による間接差別があり、仕事に対する恣意的でない職務評価の不在だ。女性管理職を増やすのに必要なのは、家事・育児を担う働き手を標準とすること、1日8時間労働を取り戻す、そして法定労働時間で家計が成り立つ産業政策の確立だ。それに、トップ女性と同時に意思決定にかかわる中間層の女性の増加が必要で、「あらゆる意思決定層に3割以上」「女性登用は3人以上同時に」ということだ。今後は女性国会議員そしてマスメディアの女性比率を増やしていくことだ。育休制度や女性管理職の登用など狭義の女性活躍策だけでなく、長時間労働、根性主義、成果第一主義、極端なリストラなどをなくしていく広義の規範が求められているといえる。


安倍真珠湾訪問への批判

     内外の学者・ジャーナリストなどが公開質問状


 安倍の真珠湾訪問には多くの疑問と批判が起こった。12月25日には、安斎育郎(立命館大学名誉教授)、前田朗(東京造形大学教授)、中野晃一(上智大学教授)、高橋哲哉(東大教授)やピーター・カズニック(アメリカン大学歴史学教授)、オリバー・ストーン(アカデミー賞受賞映画監督)をはじめ53名の学者・ジャーナリストなどが公開質問状「日本が攻撃したのは真珠湾だけではない」(別掲)を発表した。それは「実際のところ、その日に日本が攻撃した場所は真珠湾だけではありませんでした。その約1時間前には日本陸軍はマレー半島の北東沿岸を攻撃、同日にはアジア太平洋地域の他の幾つかの英米の植民地や基地を攻撃しています。日本は、中国に対する侵略戦争を続行するために不可欠な石油や他の資源を東南アジアに求めてこれらの攻撃を開始した」とし、「あなたは、真珠湾攻撃で亡くなった約2400人の米国人の『慰霊』のために訪問するということです。それなら、中国や、朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争被害者の『慰霊』にも行く予定はありますか」と安倍の欺瞞的な真珠湾訪問を鋭く批判した。

 12月27日、「村山談話を継承し発展させる会」は、「真珠湾で献花をする安倍首相にアジア侵略の『謝罪』を求める声明」を発表し、真珠湾での日米首脳会談は「両首脳はTPP交渉につまずき、国内の諸政策でも厳しい批判の目が向けられている。そうした国政の失策から関心を逸らさせるために、戦争犠牲者の魂や遺族の心情が政治的に利用されるのを、我々は見過ごすわけにはいかない」「今更の米国との『和解』を演出して見せたところで、アジア侵略の事実や認識は消せない」とするとともに、「南京・ハルビン、朝鮮半島などのアジア各地や日本国内では強制連行・強制労働の追悼碑・記念館等が各地に多数存在している。それらへの献花や存命の被害者に謝罪することに今からでも、安倍首相は取り組むべきである。それがどれほど困難であろうと、自己の認識不足を自覚しなないままに『戦後政治の総括』あるいは『歴史戦』を『終わらせる』などと口走った者の責務である。われわれは、安倍首相がこれらの責務を果たすことを強く求める」とした。

 12月28日の午後、村山首相談話の会と市民憲法調査会のよびかけで、千鳥ヶ淵戦没者墓苑において「戦争犠牲者を追悼する緊急集会」をひらき、約50人が参加した。会の共同代表の田中宏一橋大学名誉教授と高島伸欣琉球大学名誉教授が、安倍首相の真珠湾訪問を批判し、つづいて「日本軍国主義の侵略戦争の犠牲となったアジア・太平洋の人びとそして日本軍国主義によって戦場に駆り出され犠牲となった日本の人びと、すべての犠牲者を追悼し、安倍首相の歴史歪曲を糾弾し、アジアの人びととの和解と共生を目ざし、平和を勝ち取る決意」を込めて黙とうし、献花を行った。

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真珠湾訪問にあたっての安倍首相への公開質問状

 2016年12月25日

親愛なる安倍首相
 安倍首相は先日、1941年12月8日(日本時間)に日本海軍が米国の海軍基地を攻撃した際の「犠牲者を慰霊する」目的で、12月末にハワイの真珠湾を訪問する計画を発表しました。
 実際のところ、その日に日本が攻撃した場所は真珠湾だけではありませんでした。その約1時間前には日本陸軍はマレー半島の北東沿岸を攻撃、同日にはアジア太平洋地域の他の幾つかの英米の植民地や基地を攻撃しています。日本は、中国に対する侵略戦争を続行するために不可欠な石油や他の資源を東南アジアに求めてこれらの攻撃を開始したのです。
 米日の開戦の場所をあなたが公式に訪問するのが初めてであることからも、私たちは以下の質問をしたく思います。
 1) あなたは、1994年末に、日本の侵略戦争を反省する国会決議に対抗する目的で結成された「終戦五十周年議員連盟」の事務局長代理を務めていました。その結成趣意書には、日本の200万余の戦没者が「日本の自存自衛とアジアの平和」のために命を捧げたとあります。この連盟の1995年4月13日の運動方針では、終戦50周年を記念する国会決議に謝罪や不戦の誓いを入れることを拒否しています。1995年6月8日の声明では、与党の決議案が「侵略的行為」や「植民地支配」を認めていることから賛成できないと表明しています。安倍首相、あなたは今でもこの戦争についてこのような認識をお持ちですか。
 2) 2013年4月23日の国会答弁では、首相として「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と答弁しています。ということは、あなたは、連合国およびアジア太平洋諸国に対する戦争と、すでに続行していた対中戦争を侵略戦争とは認めないということでしょうか。
 3) あなたは、真珠湾攻撃で亡くなった約2400人の米国人の「慰霊」のために訪問するということです。それなら、中国や、朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争被害者の「慰霊」にも行く予定はありますか。
 首相としてあなたは、憲法9条を再解釈あるいは改定して自衛隊に海外のどこでも戦争ができるようにすることを推進してきました。これがアジア太平洋戦争において日本に被害を受けた国々にどのような合図として映るのか、考えてみてください。


KODAMA

    
 安倍の道は行き止まりだ!

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉が決まった。「核燃料サイクルの確立」という政府の方針は危うくなり、利用目的のないプルトニウムは増え続け、すでに原爆六千発を作れる量がたまっているという。これには国際的に厳しい眼が向けられている。
 しかし、政府は「核燃料サイクル確立」をあきらめていない。「もんじゅ」に替わる「実証炉」建設を進めようとしていて、議論の俎上に上がり始めている。フランスは、「実証炉」を2030年ごろの運転開始を目指す高速炉「ASTRID(アストリッド)」計画として進めている。民間企業が建設のための設計図を研究しており、最近その代表者が来日して技術協力と資金提供を訴えなどしている。日本でも三菱重工業の子会社で20名程が研究に取り組んでいるが、フランス側の資金要求は21兆円を超える莫大なもので当面は応じられないとしてはいる。
 経産省は、福島第一原発事故処理費が当初の11兆円をはるかに上回る21兆円になると発表したばかりだ。しかも、このうち2・4兆円を送電網の使用料「託送料金」に上乗せして使用者に負担させるというのだ。私の住む市の東北電力支社に説明を求めたが、担当者の説明はしどろもどろで、毎月「東北電力ニュース」を郵送してくるくらいだった。2・4兆円を負担させたとしても残りの19兆円余りの資金をどこから捻出するのかのはまったく見当がつかないし、ましてやアストリッド計画の21兆円はどうするつもりなのか。
 六ケ所村をはじめプルトニウムを含む使用済み核燃料の保管プールは全国で72%が埋まっており、これを出した各地の原子力発電所に送り返すという動きも出始めている。
 安倍政権は、TPP参加、原発再稼働、カジノ合法化、防衛産業育成そして核燃料サイクルなどの新自由主義経済的成長をもくろんだ。しかし、憲法改悪、戦争法制などに反対する声の高まりとともに資金の面からも安倍政治は崩れ始めているのだ。  (R・T)


複眼単眼

      安倍晋三らの「真珠湾史観」の危うさ

 12月27日(日本時間28日)、安倍晋三首相はオバマ米国大統領と共に、米国ハワイの真珠湾を訪れ、先の戦争に関する演説をおこなった。しかし、それはあまりにもずさんでご都合主義の歴史認識であり、重大な問題を含んでおり、黙過できない。
 第1に、真珠湾戦争はなぜ勃発したのか。それは1931年に始まった日中戦争(日本の中国東北部=満州侵略戦争)が、中国人民の抵抗闘争で泥沼化し、1937年には全面的な日中戦争(廬溝橋事件)として深入りせざるを得なくなった。この年、南京大虐殺が起こった。米国は日本の中国からの撤兵を強硬に要求した。追いつめられた日本は、米国に対する無謀な戦火の拡大で活路を開こうと、米太平洋軍の基地である真珠湾を奇襲した。1941年12月8日の真珠湾攻撃はそのようなものであり、これは疑いようのない歴史の真実だ。
 第2に、安倍のこの日の演説では、この過程が全く消去され、戦争は真珠湾に始まった日米戦争しか描かれていない。つまり、あの戦争で日本は米国に敗れたというのだ。歴史的経過を見れば明らかなように、日本軍を打ち破った主力軍は中国などアジアの民衆だ。しかし、安倍は米国に負けたのは容認できても、アジアに負けた事実は許容できない、という偏狭なナショナリズムの持ち主だ。この思想は明治のはじめより、アジアに侵略し、それを足場に欧米列強と対抗してきた日本帝国主義に刻印された「アジアの盟主・日本」という思想だ。
 第3に、演説で安倍は真珠湾は「和解の象徴」であり、現在、日米関係が「希望の同盟」になったのは、「寛容の心」がもたらした「和解の力」だと、強調した。これが果たして「不戦の誓い」だといえるのか。戦争を引き起こした罪、侵略戦争に対する反省のない歴史認識は、不戦ではなく、米国の次期トランプ政権との軍事同盟構築を願い、新たな戦争を引き起こしかねない「同盟」だ。オバマはその危険を「オタガイノタメニ」などということで隠蔽した。
 第4に、オバマが演説で述べた「国の品格」とは何か。「日本会議」など安倍の国内の基盤の右翼集団は、侵略戦争の謝罪はわが国の「誇り」を奪うもので、屈辱だと考えている。しかし、誤りは「改めるにはばかる事なかれ」だ。侵略戦争の歴史を謝罪することを屈辱と考える歴史観は、国際社会における「日本の品格」を辱めるものだ。
 今年は憲法施行70周年。戦争の反省と不戦を誓った日本国憲法は戦後70年間、世界の、とりわけ大国の侵略の危険にさらされ続けてきた小国と被抑圧民族の民衆の尊敬を集めて来た。「国の品格」というものがあるとすれば、それは戦後世界に覇を唱えてきた米国のような国にあるのでも、また9条を破壊し、ふたたび戦争ができる国になった安倍の日本にあるのでもない。9条を国の柱に据えた日本国憲法を持つような国にこそある。
 第5に、21世紀の国際社会に於いて、日本がふたたび侵略と戦争を発動する国にならないように、私たちは正しい歴史認識を持ち、歴史修正主義に反対し、侵略戦争を正当化するナショナリズムに反対しなければならない。その発信元の安倍政権を打ち倒し、憲法第9条を破壊から守り、生かし、輝かせるたたかいに勝利することに貢献することこそ、日本の左派の歴史的任務だ。
 12月11日、朝日歌壇に次のような短歌があった。
人を殺さず殺されず来し信頼のわれらの兵士殺すかも知れぬ(天竜市 鴨田希六)  
                                               (T)