人民新報 ・ 第1348号<統合441号(2017年4月15日)
  
                  目次

● 東アジアに戦火をもたらすな   外交的平和的手段で紛争の解決を

● 現代の治安維持法  共謀罪をつぶせ!

● 格差是正をかかげて 郵政ユニオンが春闘スト

● 「森友学園」広がり続ける疑惑の連鎖

● いのちを守れ!  フクシマを忘れない  さようなら原発  代々木での全国集会に11000人

● 市民連合と立憲4野党が合意   衆議院議員選挙での共通した政策で一致

● メトロコマース労契法20条裁判   不当判決を弾劾し勝利まで闘おう

● 書 評   「日本近現代史入門」−黒い人脈と金脈−  一つの説として広瀬隆を読む

● 日本労働弁護団が「共謀罪」創設に反対する声明を発表

● 川  柳  & 狂 歌

● 複眼単眼  /  大規模災害時の国会議員の任期延長は「お試し改憲」の極地






東アジアに戦火をもたらすな  
外交的平和的手段で紛争の解決を

           
安倍政権の戦争策動をゆるすな 共謀罪法案粉砕 辺野古基地建設阻止

 北朝鮮に対する先制攻撃をふくむかつてない規模の米韓合同軍事演習、北朝鮮のミサイル発射実験、そして米トランプ政権の対北軍事攻撃の脅し、それに便乗する安倍政権のうごきなどによって、東アジア情勢は緊張している。
 米原子力空母カールビンソンを中心とする空母打撃群が北上しつつあり、予断を許さない状況だ。ひとたび戦端がひらかれれば、きわめて大きな犠牲の発生は必至である。いまこそ、外交的平和的な手段で戦争の危機を回避し、対立の解消にむけての流れを作り出していかなければならない。
 しかし、安倍政権はこの機に乗じて危険な賭けに出ている。米軍によるシリアへの誘導弾攻撃を支持して、日本を中東の紛争対立関係にあえて連結させた。また、海上自衛隊が朝鮮半島へ向かう米空母との訓練を検討している。対北経済制裁だけでなく、軍事面でも日米の共同作戦に打って出ようというのである。これははっきりとした参戦国化である。
 森友問題、南スーダンPKO日報問題などで困難な立場に追い込まれた安倍政権は、東アジア地域での軍事緊張を拡大させ、共謀罪創設などの懸案をいっきに片付けようとしているのである。
 朝鮮半島の厳しい対決状況の根本には、1950年代の朝鮮戦争がいまだに休戦状態にあることにある。戦争がいまだに終結していない。休戦協定を平和協定にすること、そのために敵対関係の解消にむけた関係諸国の真剣な取り組みが求められているのである。6カ国協議とりわけ米朝協議の進展こそがカギである。米国は中国に責任を丸投げしないで、自らのやるべきことを自覚すべきである。朝鮮半島の危機を克服する最大の役割を果たすべきなのはトランプ政権である。
ここにきて、ティラーソン米国務長官は、朝鮮側が全ての核実験を止めてはじめて朝鮮とのさらなる対話を検討する、また、米国の目標は朝鮮半島の非核化であり、決して政権交代ではないと述べたが、対話と協議を通じて、平和的方法で朝鮮半島の非核化を実現し、朝鮮半島の平和と安定を維持することが周辺各国の人々のもとめるところである。対話による外交努力こそが求められているのであり、われわれは、安倍政権の対立の火に油を注ぐような行動に断固として反対して闘わなければならない。


現代の治安維持法  共謀罪をつぶせ!

 4月6日、安倍内閣は、「テロ等準備罪」などと看板を付け替えて、共謀罪法案の衆議院本会議での審議入りを強行した。日比谷野外音楽堂で開かれた「STOP共謀罪! 話し合うことが罪になる 共謀罪法案の廃案を求める 4・6 大集会」(共謀罪NO!実行委員会、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)には会場に入りきれない3700人が結集して、怒りの声を上げた。主催者を代表して、共謀罪NO!実行委員会の海渡雄一弁護士が、現代の治安維持法である共謀罪を絶対に阻止しようとあいさつ。国会からは民進党の有田芳生議員、共産党の田村智子議員、社民党の福島みずほ議員、自由党の山本太郎議員、沖縄の風の伊波洋一議員が参加し、国会の内外で力を合わせて共謀罪に反対し、安倍内閣を退陣に追い込もうと述べた。
 ノンフィクション作家で日本ペンクラブ専務理事の吉岡忍さん―一般人は対象にしないと言いながら治安維持法は政府に反対意見を持つ活動すべてを弾圧するものとなったが、共謀罪もそうしたものであり、憲法に反する。
 沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの青木初子さん―沖縄で不当逮捕・長期拘留された山城博治さんたちへの弾圧は共謀罪の先取りだ。
 立憲デモクラシーの会の山口二郎さん―安倍のやりかたは、いろいろなことに 「かこつけ」ながらの政治で、共謀罪もオリンピックにかこつけて、良識を持つ市民を弾圧するためのものだ。
 刑法学者で京都大学教授の高山佳奈子さん―性犯罪を厳罰化する刑法改正案を後回しにして、共謀罪の処罰範囲無限定の共謀罪を強行成立させようとしている。
 安全保障関連法に反対する学者の会発起人で学習院大学教授の佐藤学さん―教育勅語は1948年に衆参両院で憲法と全く相容れないと排除と失効を決議しているのに安倍は閣議決定でなんとかしようとしているが、教育の森友化は絶対に許さない。
 総がかり行動実行委員会の福山真劫さんは、これからの行動について提起した。
 集会を終わって参加者は、国会請願デモへ。衆参の議員面会所前で立憲野党4党の国会議員たちとともに共謀罪廃案に向けて闘いを強めるシュプレヒコールをあげた。

                  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

資 料 
 
       戦争法と一体の共謀罪を四度目の廃案に

 安倍首相は、世論の反対でこれまで三度も廃案に追い込まれた共謀罪法案を、「テロ等準備罪」と名前を変えて制定しようとしています。これは、「テロ対策」のためといえば、テロを嫌う世論は沈黙し、共謀罪を制定できると考えているからにほかなりません。
 安倍政権は今国会の最重要法案と位置づけ、すでに3月21日、同法案の閣議決定をおこない、4月上旬には国会での審議入りに踏み込もうとしています。
 今年は憲法施行70年です。安倍政権が2015年に強行成立させた戦争法は、この憲法の下、戦争で殺し殺されることがなかった日本のあり方から大きく転換させようとするものです。安倍政権が企てる「戦争のできる国づくり」には、国内における治安維持、すなわち言論や運動の抑圧が不可欠であり、共謀罪はまさに戦争法と一体のものです。
 私たちは、この稀代の悪法を絶対に許さず、四度目の廃案に追い込みましょう。

■話し合うことが罪になる共謀罪

 共謀罪は、法律に違反する行為を実際に行わなくとも、話し合い、「合意」すれば罪とする、思想・言論・意見交換を取り締まる法律です。これは、人は実際に法律に違反する行為を行わなければ処罰できないとする近代刑法の原則を踏みにじるものです。
 また、「共謀」を犯罪として立証するために、電話やメール、SNSでのやりとりなどのような一般的な市民生活に対する日常的監視活動が、広範囲に進められる危険性があります。これは警察による人権侵害の横行を招くものであり、到底許されるものではありません。
 2003年に国会に提出された共謀罪法案が三度廃案に追い込まれた最大の理由は、「話しあうことが罪になる」ものであり、すなわち戦後の日本の憲法、刑訴法体系を根本から否定するものであったからです。戦後、私たち市民は日本国憲法のもとで、思想・言論・表現の自由という空気を呼吸し、自由に考え、ものを言い、生きてきました。共謀罪は、市民に自由に呼吸をするなという宣言に等しいものです。それは、まさに戦前・戦中に民衆の声を圧殺した治安維持法を、現代に甦らせるものにほかなりません。

■普通の団体が「組織的犯罪集団」にされる

 安倍政権は、今回の法案は過去に廃案になった共謀罪とは異なり、対象を「テロリズム集団」、「組織的犯罪集団」に限定したから、普通の団体に適用されることはないとしています。これは本当でしょうか。普通の団体が「テロリズム集団」、「組織的犯罪集団」とされたら、その団体は社会的に存続できなくなるでしょう。しかし、共謀罪法案には、この「テロリズム集団」、「組織的犯罪集団」の定義がなく、その認定は捜査機関の判断でできるようになっています。共謀罪は、普通の市民団体、労働組合、会社などが、一度法律に違反する行為を話し合い「合意」すれば「テロリズム集団」、「組織的犯罪集団」にされてしまい、その「合意」も捜査機関が判断するという、危険極まりない悪法です。
 戦争に反対し、人権と民主主義を求めるすべての人びとは協力し、全国各地で集会、デモ、署名、街頭宣伝など多彩な行動を起こし、世論を変えるために奮闘しましょう。憲法の保障する思想・言論・表現の自由を刑罰で奪い、結社の自由を否定する共謀罪、戦争法と一体の共謀罪を、総がかりで廃案に追い込みましょう。

2017年4月3日

      戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会


格差是正をかかげて 郵政ユニオンが春闘スト

             20条裁判で「風穴」をあけよう

 郵政産業労働者ユニオンは、2017春闘要求として、「正社員、短時間社員、月給契約社員の賃金20000円の引き上げ」、「再雇用社員の基本給25000円の引き上げ」、「時給制契約社員の時間給200円の引上げ」、「希望する非正規社員すべての正社員化」「正社員の大幅増員で労働条件の改善を」「36協定における特別条項の廃止」などを掲げて、郵政グループ各社に提出し(2月21日)、これまで7回の交渉を重ねてきた。しかし3月16日の会社回答では、ベア、時給引き上げはゼロ回答だった。2年連続のゼロ回答だ。ユニオン側は強く再検討を求めたが、会社の回答に変更はなく交渉は決裂した。
 郵政ユニオンは3月23日、全国13拠点(盛岡中央、上尾、練馬、新東京、浜松東、京都西、新大阪、神戸中央、灘、広島東、土佐山田、福岡中央、北九州中央)、25職場でストライキに突入した。
 東京では午前の練馬局、午後には新東京局がストにはいった。午前7時45分からの練馬局前スト突入集会には、ストに突入する仲間をはじめ支援・共闘の労組など100名をこす労働者が参加して、闘いの声をあげた。
 午前11時からは日本郵政本社前でストライキ決起集会が行われ、一五〇人が参加した。はじめに郵政労働者ユニオンの日巻直映委員長があいさつ。連帯のあいさつは全労連の小田川義和議長、全労協の金澤壽議長が行った。全国一般東京東部労組の須田須光照書記長は、当日の午後、メトロコマース支部の労契法二〇条裁判の判決が出ることを紹介し、これからもともに闘っていこうとあいさつした。
 郵政ユニオンの中村知明書記長がストライキ報告をおこない、さいたま支部、練馬支部、新東京支部からの決意表明があり、団結頑張ろうで集会を終わった。

 郵政ストが今後の労働運動に与える意義について、郵政ユニオン中央闘争委員会の「3・23ストライキ宣言」は、次のように強調している。「今春闘で会社側は『期間雇用社員の更なるモチベーションアップ』を理由に、夏期一時金に特別加算の上積み、正社員登用における応募要件の緩和と初任給算定方法の改善等、非正規社員の処遇改善に一定の前進ある回答をしてきた。これは17春闘をとりまく『働き方改革』を意識したものではあるが、非正規社員の均等待遇と正社員化を求める郵政ユニオンの粘り強いたたかいによってもたらされたものでもあり、ユニオンのたたかいが、『風穴を開けた』のである。今後、応募要件の緩和に見合う登用数の拡大をかちとっていかなければならない。格差の是正を求める休暇、手当等の均等待遇要求はほぼゼロ回答であった。だからこそ、労契法20条裁判の出番である。20条裁判の勝利によって、正規、非正規の不合理な格差に『風穴を開ける」ことができる。郵政ユニオンは今日、判決のメトロコマースをはじめ、20条裁判をたたかうすべての仲間たちと連帯し、日本社会から非正規差別をなくしていく。昨年、半日以上のストライキはわずか39件。うち1件は郵政ユニオンである。毎年の全国統一ストライキは、私たちの春闘の歴史そのものであり、そのたたかいは全国の労働者の連帯によって作られてきた歴史でもある。ストライキの力に自信と誇りを持ち、17春闘要求の前進をめざして最後までたたかい披くことをここに宣言する」。


「森友学園」広がり続ける疑惑の連鎖

  右翼学園と安倍夫妻の関係は明白
                    安倍首相は責任を取って退陣しろ

    

 カルト右翼学園・森友学園にまつわる疑惑の究明を求める声が広がっている。
だが、安倍政権は森友学園問題の早期もみ消しに躍起になっている。安倍首相とそのとりまきの右派集団の本質と金銭にまつわるおぞましい実態が暴露されてしまうからだ。すでに安倍は「何か私が関わってるかのような話が出ていますが、妻や私が関わってたら私は総理大臣をやめますよ」と国会で大見得を切ってしまっている。これは取り消すことのできない重大発言だ。

 毎週木曜日には、戦争させない・憲法九条壊すな!総がかり行動実行委員会による「森友疑惑徹底究明・安倍内閣は退陣せよ 緊急行動」が行われている。
 3月30日の「森友疑惑徹底究明!安倍内閣は退陣せよ!国会前行動」では、森友疑惑の端緒を開いた豊中市議・木村真さんが発言。塚本幼稚園の異様でおぞましい教育を知っていたが、よりによって私たちの街にその瑞穂の国小学院ができるとわかって我慢できなかった。文書の非公開の行政訴訟をおこしたがそれが問題の発端となった。100万円問題について国会で籠池さんは話したが、昭恵さんは公開の場で話をしていない。安倍首相がかかわっているのははっきりしている、責任をとれ、安倍やめろの声をあげつづけ皆さんと一緒にやっていきたい。


いのちを守れ!  フクシマを忘れない  さようなら原発

              
 代々木での全国集会に11000人

 3月20日、東京・代々木公園で「いのちを守れ! フクシマを忘れない さようなら原発全国集会」が開かれ、11000名が参加した。
 主催者を代表して、評論家の落合恵子さんがあいさつ。福島第一原発事故から6年、春分の日に墓参りにも行けないような状況を国策で作り出したのに、補償打ち切りなど問題山積だ。事故を起こした人たちに最後まで責任をとらせよう。生きる権利を奪っておいてなにが民主主義だ。絶対に沈黙の春にしてはならない。森友問題も許せない。共謀罪も許せない。南スーダン自衛隊派遣も許せない。こんな不条理な社会を絶対に子や孫たちに残せない。人々は涙を流している。もう権力者の政治におさらばしよう。
 避難の共同センター事務局長・瀬戸大作さんが福島からの避難者の厳しい状況について報告。福島では、8万人近い被災者がいまでも避難生活を余儀なくされている。自分や子どもを被ばくから守りたい。その一心で見知らぬ土地で過ごしてきた避難者は追い詰められる。避難者は孤立している。住まいがない。お金がない。帰えるにしても病院がない。避難者をこれ以上、孤立化させてはいけないという思いを仲間たちと共有して避難の協同センターを設立させた。センターの相談ダイヤルや相談会などに寄せられる避難者一人ひとりの悩みに耳を傾け、必要な支援をしてくれる連携団体と共に問題解決に向けた取り組みを進めていきたい。
 福島県双葉郡から川崎市に避難している松本徳子さんは、「被災者のくせに」といういじめをたびたび経験している、そしていつもふるさと双葉に変える夢を見ている、だからどの原発の再稼働にも強く反対し続けている、と語った。
 被ばく労働者の「あらかぶ」さん(家族へのいじめなどについて配慮して仮名を使っている)―福島の人たちを助けたいという一心で原発事故の収束のための除染作業についたが、ずさんな労務管理となっていない放射能汚染対策で大量の放射能を浴びて白血病になるという被曝労働被害を受けた(東電は「あらかぶさん」の労災を認めたものの補償も謝罪もしていない。「あらかぶさん」は裁判闘争を決意し闘っている)。
 弁護士の河合弘之さんは、反原発の新作映画について紹介するとともに、子どもたちの甲状腺がんがひろがっていること、それを隠そうとし、原発再稼働を強行する政府を鋭く批判した。
 全港湾など労組青年部によるフクシマ連帯キャラバン隊が登壇して報告、つづいて、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)の武藤類子さん、日印原子力協定国会承認反対キャンペーンの福永正明さん、総がかり行動実行委員会の福山真劫さん、元静岡県湖西市長の三上元さんがアピールした。鎌田慧さんの閉会のあいさつ、そして、二つのコースに分かれてデモに出発した。

 3月18日には、「2017年原発のない福島を県民大集会」(福島県郡山市の開成山陸上競技場)が開かれ5700人が結集した。実行委員長の角田政志・県平和フォーラム代表は、集会の前日に群馬県前橋地方裁判所が原発事故について国と東京電力の責任を認めた全国初の判決についてふれ、福島に原発はいらない、ただちに福島第2原発を廃炉にすべきだと述べた。


市民連合と立憲4野党が合意

       衆議院議員選挙での共通した政策で一致


 4月5日、民進党、共産党、自由党、社民党の野党4党の幹事長・書記局長は、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)のメンバーとの院内での意見交換会で、衆議院議員選挙での共通した政策でたたかうことで一致した。市民連合の提案した「市民連合が実現を目指す政策」を受けて野党4党がまとめた「『市民連合が実現を目指す政策』に関する4党の考え方」を確認した。
 また「市民連合からの野党4党への要請」(4月5日)は、「政策実現までの道筋やスピードについては各党間、および政党と市民連合との間で差異はありますが、現段階で作る共通認識は、野党と市民の共闘を進める際の道しるべとなるべきものであり、総選挙の際に政権交代を迫るための政策の手前の、基本的な方向性を示すもので十分だと考えます」、また「市民連合は、目前の重大事である森友学園疑惑の究明、共謀罪に対する反対運動の展開についても野党と市民の共闘を広げ、人間本位の民主政治、立憲政治を取り戻すために、4野党とともに努力したいと決意を新たにしています」としている。
(次ページに「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」)

                  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2017年4月5日

『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方

 四年間続いた安倍政権の下、我が国の立憲主義、民主主義は大きく脅かされている。アベノミクスは日本経済の持続的成長をもたらすことなく、格差を助長してきた。
 民進党、日本共産党、自由党、社会民主党の野党四党は、昨年の参議院選挙にあたり、@安保法制を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回、立憲主義を回復する、Aアベノミクスによる国民生活破壊、格差と貧困を是正する、BTPPや沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない、C安倍政権の下での憲法改悪に反対する、との内容を共有・確認し、また、昨年6月7日に市民連合から提出された『野党4党の政策に対する市民連合の要望書』を受け止め、さらには昨年の通常国会で、介護、保育、雇用、被災者支援、男女平等、LGBT(性的マイノリティー)差別解消をはじめとした15本の議員立法を共通の政策として共同提案し、全力で戦った。
 野党四党は、これらの到達点、さらに早期の衆院解散・総選挙は十分にあり得るという前提のうえに立って、できる限りの協力を進めることで合意している。今般、『市民連合が実現を目指す政策』についても、その現状認識及び基本理念を十分共有できると確認した。
 今こそ、安保法制を廃止し、立憲主義を回復するとともに、個人の尊厳と基本的人権の保障を進めることが求められている。自由民主党の憲法改正草案のように立憲主義と平和主義を脅かす憲法改正は認められない。アベノミクスからの転換を進め、すべての人間に尊厳ある生活を確保するための社会経済政策を実現すべきである。
 今後も、安倍政権の打倒を目指して政策面や国会活動における四党間の協力を進めていく。

 四年間続いた安倍政権の下、我が国の立憲主義、民主主義は危機に直面している。アベノミクスは日本経済の持続的成長をもたらすことなく、格差拡大を助長し、人口減少を放置してきた。
 民進、共産、自由、社民の四党は、早期の衆院解散総選挙は十分にあり得るという前提に立って、できる限りの協力を進めることで合意している。そのうえで、市民連合が実現を目指す政策について四党政策実務者による協議を進めた結果、以下のような考え方を共有することを私たちは確認した。

1、国民生活の安定と「分厚い中間層」の復活に向け、社会経済政策を転換する
 (1)子育て・教育・若者
 〇就学前教育から大学まで、すべての教育について原則無償化をめざす。
 〇保育施設の拡充、保育士の賃金引き上げ等を通じて待機児童をなくす。
 〇安倍政権が放置してきた子育て・教育への投資を劇的に拡大することにより、教育の機会平等と質の向上、持続的成長の実現、雇用の創出、女性の社会進出、人口減少対策等を後押しする。
 (2)雇用・働き方
〇残業代ゼロ法案の成立を阻止するとともに、インターバル規制を含む長時間労働規制法を早期に成立させる。
〇同一価値労働同一賃金の実現など非正規労働者に対する待遇の差別を禁止する。
 〇最低賃金の大幅引き上げなど、賃金・労働条件を改善する。
 (3)社会保障等
 〇国民皆保険制度を維持し、年金の最低保障機能を強化する。
 〇介護労働者の賃金など待遇を改善するなど、介護の充実を進める。
 〇働き方や性別等に中立的かつ公正な社会保障制度、税制を確立する。
 (4)女性・ジェンダー
 〇選択的夫婦別姓を実現する。
 〇政治分野で候補者割り当てクオータを導入する。
 〇包括的な性暴力の禁止に向け、性暴力被害者支援法を制定する。
 〇LGBTに対する差別解消施策を盛り込んだ法律を制定する。
 (5)地域活性化
 〇霞ヶ関目線で効果の上がらない地方創生を掲げ、カジノによる地域振興に迷走する安倍政権と対峙し、地方の自主性を尊重した公正な地域活性化を進める。
 〇農家に対する所得補償制度を法制化する。

2、原発ゼロを目指し、エネルギー政策を抜本的に転換する
 (1)原発ゼロを目指す
 3・11を原点として新しい日本のエネルギー政策を構想する。
 (2)省エネルギーの徹底
 断熱の徹底、廃熱の有効利用等をすすめ、世界一の省エネ社会を実現する。
 (3)再生可能エネルギーの飛躍的増強
 太陽光発電や風力発電への支援、ソーラーシェアリングの大幅拡大等を進める。
 (4)地球温暖化対策の推進
国際社会に通用する中長期数値目標を設定し、地球環境・生態系の保全を進めるとともに新産業と雇用の創出につなげる。
 
3、立憲主義を守り抜き、平和を創造する
 (1)立憲主義と平和主義を脅かす憲法改悪の阻止
自民党の憲法改正草案は、立憲主義に反し、基本的人権の尊重や国民主権、そして平和主義という基本的価値を脅かすものであり、これを基礎とした改定、特に平和主義を破壊する憲法9条の改悪を阻止する。
 (2)2015年安保法制の白紙化
 安倍政権下で強行された安全保障法制は立憲主義と平和主義を揺るがすものであり、その白紙撤回を求める。
 (3)戦略的なアジア太平洋外交の推進
 同盟国である米国を含め、近隣諸国、関係国との対話を促進し、地域における信頼醸成に努める。
 (4)沖縄の基地負担の軽減
 沖縄の民意を踏みにじって基地建設を強引に進める政府の姿勢は、容認できない。沖縄県民の思いを尊重しながら基地負担の軽減を進める。
 (5)情報公開の推進と報道の自由の回復
 安倍政権下で後退した情報公開と報道の自由は、民主政治の基盤であり、危機感を持ってその推進、回復に取り組む。


メトロコマース労契法20条裁判

       不当判決を弾劾し勝利まで闘おう

 3月23日、東京地裁民事36部(裁判長・吉田徹、裁判官・川淵健司、裁判官・石田明彦)は全国一般東京東部労組メトロコマース支部の訴訟に対して、まったくの不当判決をだした。非正規雇用労働者と正社員の差別・格差は当然だという決して許せない反動判決だ。
この裁判は、東京地下鉄の完全子会社メトロコマースで働く契約社員の女性4人の原告が、労働契約法20条を武器に、仕事がまったく正社員とおなじであるにもかかわらず正社員と賃金・労働条件の差別があることに対して是正を求めた闘いだ(賃金・賞与などで不当な差別があったとして4人で計4560万円の損害賠償を求めた)。この裁判は、郵政労働者ユニオンや連帯ユニオンなどともに労契法20条裁判闘争の中心に位置し、すべての非正規労働者の差別撤廃に向けた先進的な闘いであり、今後の労働者、労働運動に重大な影響を持つものであり、労働者側からも、経営側からも注目を集めていた。
 しかし吉田裁判長は、格差是正を求める原告の請求に対して、残業代の割増率に差をつけていた部分の是正(早出手当の差額分たった4109円だけ)をのぞいて、すべてを棄却した。
 労契法20条は、(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」としている。
 正社員と非正規雇用労働者格差は急速に深刻化していて、「同一労働同一労働」を政府も言い出さざるを得ない時代に、このいわれのない差別処遇に対する是正を求めることは社会の多くの声となっている。
 しかし、地裁判決は、比較対象を、「売店業務に従事する正社員のみならず、広く被告の正社員一般の労働条件」とした。これでは、同一労働の比較から逃げたものといわざるをえない。格差は同じ仕事をしている正社員とでなければ意味がない。そもそも株式会社メトロコマースは、東京地下鉄株式会社の子会社であり、都内のみに事業所がある。正社員の転勤・異動も実態はない。そして売店業務のみに従事する正社員が多数存在する。それにもかかわらず、世間の正社員なるもののモデルを持ち出し、原告らが請求している基本給、住宅手当、賞与、褒賞及び退職金の差額賃金のいずれについても、長期雇用関係を前提とした配置転換のある正社員への福利厚生等を手厚くすることによって、有為な人材の獲得・定着を図ることは、「人事施策上相応の合理性を有する」としたのである。「まず差別の合理性あり」の理由づけだけのまったく欺瞞的な不当判決だった。

 当日、東京地裁前には、裁判開始前から、東部労組をはじめ多くの労働者が結集して集会を開いた。不当判決に怒りのシュプレヒコールがあがり、日比谷図書館コンベンションホールにうつり、「非正規差別を認める不当判決弾劾!「「非正規労働者よ 団結して立ち上がろう!」の横断幕をかかげて、「非正規差別なくせ裁判 判決報告集会」をひらいた。原告団、弁護団、東部労組からは、直ちに控訴し、勝利を勝ち取るまで闘いをつづける決意表明がなされた。集会後には東京地裁正門前で、不当判決と東京地裁吉田裁判長は恥を知れ!と怒りのシュプレヒコールをくり返した。

 東京東部労組執行委員会とメトロコマース支部は「メトロコマース支部非正規差別なくせ裁判の不当判決についての弾劾声明」で、「いったい正社員が有為(能力があること、役に立つこと)で、非正規労働者が有為ではないとだれが決めたのか。会社による差別を追認しただけではなく、裁判官諸君の非正規労働者に対する根深い差別と偏見があると言うほかない。つまりは正社員と非正規労働者はどれだけ長年にわたり同じ仕事をしていたとしても、そもそも制度が違うのだから非正規労働者は劣悪な処遇を甘んじて引き受けろということを言いたいのである。…裁判所の威信は地に落ちた。この判決からは少しでも差別をなくして非正規労働者の尊厳を守っていこうという理想や、低賃金による生活苦を放置してはならないという使命をみじんも感じない。自分が利益をあげるためには非正規労働者の生活など知ったことではないという経営者と身も心も同じレベルに堕している」と批判し、「東部労組とメトロコマース支部はただちに控訴し、非正規労働者への差別をなくすための運動をいっそう拡大していく考えだ。…正義を求める声を押しとどめることはできない。本日の判決を書いた裁判官諸君が後悔する時が必ず来る。東部労組とメトロコマース支部は一日も早くその時が来るよう全力で闘う決意である。ともに闘おう!」と闘いの前進と拡大をアピールしている。


書 評

    「日本近現代史入門」−黒い人脈と金脈−

            
 一つの説として広瀬隆を読む

 2016年NHK大河ドラマ「真田幸村」の最終回は徳川方が豊臣勢を一掃し政権を確立したこと、それが倒されるには佐久間象山―吉田松陰の登場を待たなければならなかった。それはまだ大分、先のことであった……といった趣旨のナレーションが流れた。好意的に述べられているこの佐久間象山―吉田松陰こそは明治維新とその後のアジア侵略の流れの思想的源流であったことが骨太く描かれているのが本書である。

 広瀬隆氏には原子力発電所のもたらす放射能の影響についての一連の著作がある。特に3・11東北大地震直後の福島原発爆発のもたらした破壊と放射能汚染については著作とともに精力的に原発廃止に向けて活躍されていることは周知の事実である。同時にヨーロッパのロスチャイルド財閥やアメリカの財閥などの金脈と人脈を分析している一連の著作がある。
 これまで部分的には歴史分析や地方史からの角度の異なる提起も様々な人々からなされてきた。いづれにしてもそこに関わる人物の関連性を系統的に示しているものが欲しいと思っていた。私自身の関心はいかにしてアジア侵略に日本が突入していったのか、なぜかくも簡単に戦後も同様の構造を引き継いだのかと言った点にあったがこれに答えているという強い想いを持った。

 明治政府の確立とその中枢を担った長州、薩摩の人脈、江戸後期の商人と明治維新後の産業人、産業の形成と軍閥の形成、これらを繋ぐ閨閥……朝鮮、中国侵略と明治維新の思想文化の流れとそれらを担った人脈が活き活きと描かれている。
とくに「満州国」の確立と軍、財閥、政治家の巧妙な仕掛け、当地にすむ人々からの土地の略奪を開拓と称して大衆動員していった手口。それは国内における反対勢力の排除、思想弾圧と表裏の関係にある。

 このことは戦後のアメリカ支配と戦前の支配勢力の生き残りの関係の中にも根付いている。
 この間、議論されてきた憲法の成立過程も詳細に触れられている。現在、この戦後の歴史を根底から覆すかのような思想、行動がまかり通りつつあるとき近現代史を人物、閨閥を含めてふまえることは非常に重要と思われる。

 著者も「一貫した日本史を一度頭に入れれば折々起こった重大事件の意味を、歴史の中に位置づけることができ、そこに遭遇した己の人生を重ね合わせて、これからを考える指針となる。」と執筆の動機を述べている。著作の中では本流の支配的な、人々の関わりだけでは無く、これに抗して民衆の側から活動した人々についても述べられている。
 読んだ人のそれぞれが広瀬氏の述べられているのに対応して訂正するなり、強調するなり、付加していけばより生産的であるのではと考える。

 例えば私にとっては鹿児島の風土の中で小さい時から空気を吸うように薩摩化された文化とアメリカ化文化の二つの影響を強くすり込まれて育った。地方でも主流の歴史と異なる地方史を開拓されている人と作品も存在している、「横目でみた郷土史」(片岡吾庵堂)、「漂流民.ゴンザ」(田頭壽雄)等によって異なる視点を得ることができた。また広瀬氏の著作の中で戦後の高成長期の都市部への人口の移動が述べられている箇所がある。主に東北からの東京への移動、集中が述べられている。私の自己史にとっても九州を中心として関西、中京地区への人の移動、集中が進んだことを付加しながら読んだ。これは農村部から見ると人減らしであると同時にささやかながら仕送りによる金銭の環流でもあった。
 また「西南の役」と呼ばれた出来事が長年の過酷な支配と戦争への動員として農民一般からみたらどうであっただろうか?
 この「近現代史入門」はなんと言っても面白く刺激的な書である。是非一読されることをお勧めしたい。   (蒲生楠樹)


日本労働弁護団が「共謀罪」創設に反対する声明を発表

 日本労働弁護団は、3月22日、棗一郎幹事長名で「正当な労働運動を破壊する『共謀罪』創設に反対する声明」を発表した。それは「共謀罪の本質は、犯罪の謀議の段階で処罰しようとするものであり、まさに『思想や内心の自由』を取り締まり、国家権力による思想・言論統制や弾圧に利用される危険が極めて高いものである。日本労働弁護団は、労働者・労働組合の正当な活動を制約するおそれの高い共謀罪の創設に対して、強く反対する。…とりわけ、当弁護団が危惧するのは、この法案が成立した場合に使用者や政府がこれを悪用し、労働組合のあらゆる活動が捜査や弾圧の対象となりうることである。…例えば、労働組合が不当解雇撤回などを求める企業門前での抗議行動を計画してチラシを作成することや労働組合がストライキを計画して組合員への連絡文書を作成すること、労働組合が『ブラック企業』の製造する商品の不買運動を計画して記者会見の資料を作成すること、労働組合が団体交渉で要求を貫き何らかの妥結ができるまで交渉に応じるよう使用者に要求し続けることを組合内部の会議で確認すること、政府の労働法制改悪反対の行動を企画することなど、これらはいずれも正当な労働組合の活動にかかわる行為である。しかし、これらの正当な組合活動についても、ひとたび共謀罪が創設されれば、『組織的な威力業務妨害』『組織的な信用毀損・業務妨害』『組織的な強要・組織的な逮捕監禁』『組織的な恐喝』などの『共謀』および「準備行為」をしたものとでっち上げられて捜査され、組合員が逮捕されたり組合事務所が捜索・差押えされたりする危険がある」とし、「共謀罪は労働者・労働組合の正当な活動に対し国家権力が日常的に介入することを可能にするものであって、憲法で保障された労働基本権を骨抜きにするものである。日本労働弁護団は、憲法で保障された労働者及び労働組合の権利を擁護する立場から、共謀罪の創設に断固として反対する」としている。


川  柳  & 狂 歌

  〜 せんりゅう 〜 

      ∞ 資本の権化 ∞  〜

        神の手?資本の権化トランプ氏

        アベ殿は資本の権化のこまづかひ

        国政は権化のまもりアベの道

        森友でアベ極右がすがほ見せ

  
  〜 狂歌 〜

       グローバル資本の権化たづぬれば
                   くるしみの里栄華の夢よ

2017年4月

                        ゝ 史


複眼単眼


      大規模災害時の国会議員の任期延長は「お試し改憲」の極地


 三月十六日、衆議院憲法審査会では自民党が「国会議員の任期や衆議院の解散に伴う総選挙の期日に関する憲法の規定について、大規模災害などを想定した特例を設けるべきだ」という改憲論を主張した。
 これは従来、自民党の改憲草案が主張してきた緊急事態改憲論で主張されていた緊急事態条項改憲論(国家緊急権導入改憲論)とは大きく異なっている。
 これまで自民党改憲草案が主張してきた緊急事態改憲論は、悪名高いナチスの授権法(全権委任法)につながるものとの批判を浴びてきた。それは、武力攻撃、内乱、大規模自然災害などにおいて、内閣が緊急事態を宣言すれば、自由に「政令」をつくったり、自由に予算を使ったり、自治体への指示を出すことができるというものだ。これで幅広い同意を得ることは至難の業だ。
 改憲を急ぐ自民党は、どこから憲法の破壊に着手するか、その戦術を考え、「災害対応」を理由に、国会議員の任期に絞って改憲を提起すれば、他党や国民の理解を得やすいとの思惑だ。
 十六日の会議では自民党の上川陽子幹事がこの主張を展開し、中谷元幹事が「(この問題では)与野党の憲法観を超えて一致できる点ではないか」と主張、その狙いを吐露した。
 自民党の改憲の狙いの本丸が憲法第九条であることはいうまでもないが、ただちに九条改憲に着手できない現状では、とにもかくにも「お試し」でいいから、明文改憲を実現したいという狙いがあり、「国会議員の任期延長改憲論」はその手始めに選ばれたものだ。
 これにたいして民進党の憲法調査会の責任者の枝野幸男幹事は「この問題は検討に値する。(任期延長には)憲法上の根拠が必要になるのは確かだ」とのべ、一定の評価をしたうえで、しかい「憲法問題で検討すべき事項は複雑かつ広範にあり、単純に結論を出せる問題ではない。国会が自ら任期を延長するのはお手盛りとなりかねない」とのべ、同調しなかった。しかし、同党の細野豪志委員は「(この問題では自分は案を持っている)、例えば一八〇日を上限に任期を延長できる形にすれば、いかなる事態においても立法機関が機能して必要な政策を決定できる」と発言した。細野は近日発売の雑誌「中央公論」で自らの改憲案を発表するといわれている。細野の発言は自民党のねらう議論の土俵に乗ったもので、改憲派を喜ばせた。
 しかし、この議論はペテンである。
 日本国憲法はこのような緊急時への対応を定めており、改憲は必要がない。憲法第四六条は「参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する」とあり、憲法五四条二項は「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる」とある。国会解散時の災害発生など異例のことであるが、それでもなお改憲論者が語るような国会の空白は生じないのである。
議員任期の延長に限って緊急事態条項を導入するとはいえ、一旦、緊急事態条項が組み入れられたなら、それが「解釈」によって議員任期以外の問題に拡張されるおそれがないとはいえないのである。この危険性は、ナチスによるワイマール憲法の破壊の歴史を思い起こすまでもない。緊急事態における議員任期の延長などと称する「お試し改憲」は絶対に許してはならない。 (T)