人民新報 ・ 第1350号<統合443号(2017年6月15日)
  
                  目次

● 共謀罪法案阻止に全力を  市民と野党の共闘で安倍改憲を阻止しよう

● 止めよう!辺野古埋立て 共謀罪法案は廃案に! 国会大包囲行動

● 宗教者が共謀罪反対の集会  それぞれの信仰の根本に立って改憲反対!

            海渡雄一弁護士の講演 「共謀罪と治安維持法―現代の治安維持法・共謀罪に反対しよう!」

● 津久井やまゆり園事件を考える ― 当事者がより良い人生を築いていくために

● 精神保健法改正法に込められた危険な狙い

● 労働運動と市民運動は「共謀」しよう!

● 労政審同一労働同一賃金部会へ均等待遇アクション21が要望書

● 砂川事件裁判、再審開始決定を!伊達判決記念58周年集会

             記念講演「日米合同委員会―米軍優位の密約機関」

● 危険なMOX燃料原発  さよなら原発1000万人アクションなどが高浜原発再稼働に抗議

● 2017国会ピースサイクル

● 複眼単眼  /  極右勢力の改憲論の起死回生の奇手






共謀罪法案阻止に全力を

           
市民と野党の共闘で安倍改憲を阻止しよう

 6月18日までの国会会期末が迫る中で、参院審議で共謀罪法案のでたらめさが一段と明らかになり、加計学園の獣医学部新設問題のからくりが文科省からの内部告発によって暴露が深まるなど、安倍内閣への抵抗・逆風が強くなり、支持率が下がり続けている。自公与党の乱暴な国会運営、安倍首相の証言拒否、答弁できない大臣に代わってのまるなげ官僚答弁、加えて官房長官の焦りに満ちた個人攻撃など見るに堪えない場面が連日続いている。
 共謀罪法案の法務大臣答弁では、環境保護団体や人権保護団体なども、それが「隠れみの」だとされれば日常的な監視・調査の対象となりうるという。これは衆院審議段階ではまったくなかったものだ。国連特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏は安倍首相にあてた書簡で「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と深刻な懸念を示したが、安倍政権は抗議し、国連の批判を拒否している。
 政府のもくろむ共謀罪法案の成立の日程は大幅にずれ始めた。今後も野党による金田勝年法相の問責決議案や内閣不信任案の提出なども予定される。安倍のあせりも相当なものだ。安倍は国会での答弁ではなく、ラジオ番組で、野党は「不安を広げるための議論を延々としている」といった。不安を広げているのは安倍自身であり、これは国会審議から逃げてのうっぷん晴らし以外の何物でもないだ。
 一方で安倍政治に反対する市民と野党の結束は広がって、国会内外を通じる闘いが強まっている。民進、共産、自由、社民の立憲野党4党は8日に党首会談をひらき、「当面する課題」として、@この間の党首会談の合意を尊重し、実行するために引き続き努力する。A安倍政権の下での憲法9条の改悪に反対する。B「共謀罪」廃案めざし、院の内外で共同して闘う。C加計学園・森友学園疑惑の徹底究明のため全力をつくす、ことをあげ、そして「次期総選挙における野党4党の協力」については、次期総選挙でできる限りの協力を行うために、協議を加速させ、協力して候補者調整を行う、ことを確認した。
 政府・与党は、会期中の共謀罪法案の成立は難しいとして、会期の延長を行う方針だ。安倍はなんとしても、「テロ等準備罪」という名目で共謀罪を新設する組織犯罪処罰法改正案の成立を狙っている。しかし、大幅延長となれば加計学園めぐっての国会での追及がつづき、「官邸の最高レベル」の責任が明らかになり、内閣の倒壊にもつながりかねないとの惧れから小幅なものになりそうだ。
 憲法違反の「共謀罪」法案を今度も廃案にしよう!
 加計・森友疑惑の徹底的に究明しよう!
 安倍内閣を追い詰め退陣に追い込もう!


止めよう!辺野古埋立て 共謀罪法案は廃案に! 国会大包囲行動

 6月10日、「止めよう!辺野古埋立て 共謀罪法案は廃案に! 国会大包囲」の行動に、18000人が参加し、安倍政治に反対する声をあげた。
 主催は、基地の県内移設に反対する県民会議、「止めよう! 辺野古埋立て」国会包囲実行委員会、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会で、共謀罪NO!実行委員会が協賛団体となった。辺野古新基地建設反対の国会包囲行動は今回で5回目。この日は新基地建設を強行に反対して、名護市辺野古など全国各地で呼応してともに闘う集会が開かれた。
 国会包囲実行委の野平晋作さんが主催者あいさつ。安保法制、共謀罪、辺野古新基地建設は安倍政権の戦争する国づくりの一体の政策だ、沖縄のたたかいに連帯して勝つまであきらめない運動を進めていこう。
 オール沖縄会議共同代表の稲嶺進名護市長は、警察による非暴力の市民への暴行で負傷者続出の異常事態が出てきているが、建設を断念させるめで絶対に諦めないとアピールし、ヘリ基地反対協の安次富浩共同代表が阻止に向けて闘い抜く決意を表明した。また辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルや各地で辺野古の新基地建設に反対する運動団体の代表、民進党、共産党、自由党、社民党、参院会派「沖縄の風」の国会議員があいさつした。
 共謀罪NO!実行委員会の海渡雄一弁護士は、沖縄での弾圧は共謀罪を先取りであり、絶対に成立させないと強調した。


宗教者が共謀罪反対の集会

   それぞれの信仰の根本に立って改憲反対!


 かつての治安維持法の対象は、共産主義・社会主義運動ばかりでなく、宗教弾圧にも拡大された。現代の治安維持法である共謀罪の新設に反対して宗教者は、各地で対運動を繰り広げている。

 5月31日、仏教、キリスト教、神道などさまざまな信仰を持つ人々が一堂に会して、日本教育会館・大会議室で「『共謀罪』反対・憲法改悪阻止をめざす宗教者・信者全国集会」が開かれた。
 呼びかけ人を代表して、小橋孝一・日本キリスト教協議会議長があいさつ。宗教者・信者は、宗教の違いをこえてというより、それぞれの信仰の根本に立ってここに集い、ともに共謀罪反対、憲法改悪に反対の声をあげている。
 つづいて、民進党(近藤昭一党副代表)、共産党(井上哲士党参議院国会対策委員長)、社民党(福島みずほ党副代表)が、国会の内外を結んで共謀罪廃案にむけて闘おうとあいさつ。
 全国集会協賛団体の戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の高田健さんは、共謀罪をめぐる世論の潮目が変わってきている、廃案まではあと一押しだ、全力で闘おうと述べた。
 基調講演は海渡雄一弁護士(日弁達共謀罪法案対策本部副本部長)が、「共謀罪と治安維持法」と題して行った(別掲)。
 呼びかけ団体を代表して、大倉一美・カトリック東京正義と平和委員会担当司祭、荒川庸生・日本宗教者平和協議会理事長、平良愛香・平和を実現するキリスト者ネット事務局代表、吉田吉夫・日本キリスト者平和の会代表委員が、共謀罪反対の思いを語った。

 また集会には創価学会員有志の元本部職員の野口裕介さん、小平秀一さん、滝川清志さんが、創価学会旗(八葉蓮華入り三色旗)をもって参加して発言した。
 野口さん―自民党に付き従う公明党の支持母体である創価学会は、初代牧口(常三郎)会長を死に至らしめた治安維持法の平成版である共謀罪を今国会で可決成立させようとしている。今、日本は国家主義・軍国主義の方向に進み始めている。その一翼を公明党・創価学会が担うというおかしな事態となっている。かつての治安維持法は、戦争に反対する声を押しつぶす悪法であった。同様に共謀罪も政府の安保法制や戦争反対の運動を弾圧するものと思える。いったい公明党・学会本部はどうしてしまったのか。私は10年にわたって学会本部職員をしてきたが、本部の体質をまざまざと体験してきた。学会本部の変節がいまの事態をもたらした。池田(大作)名誉会長が2010年6月に脳梗塞で倒れて以降、原田(稔)現会長らの執行部は、それまでの学会の平和と人権の闘争とは真逆の行動をとり続けている。とくに2014年7月の集団的自衛権の行使容認の閣議決定とその翌日に学会本部が「公明党が憲法9条の平和主義を堅持するために努力したことを理解しています」と公明党を擁護する声明を出したことは、学会本部が平和の旗を降ろしてしまったことのターニングポイントだと思えてならない。武力による平和などというものは完全ないかさまだ。しかし創価のおしえはそうではないのだ。対話の精神こそ創価学会の精神だ。原田会長よ、目をさませ。さもなくば即刻退陣せよ。心ある学会の皆さん、いまこそ学会本部に対して立ち上がるときである。信教の自由、思想・信条の自由を守るために立ち上がられたみなさま、共謀罪法案を断固阻止していこう。
 小平さん―いま創価学会は、絶対平和主義・人間主義の方向とは反対の方向に向かっている。池田名誉会長が脳梗塞で倒れて表舞台にでられず、判断が出来ないのに、現執行部は、池田名誉会長がしゃべったかのような報道をしていまの方向を推し進めている。これが創価学会の実情だ。学会員の人たちには目を覚ましてもらいたい。世界平和を目指す創価学会に戻したい、そういう気持ちで私たちは活動している。
 滝川さん―昨年、私たち3名は「実名告発 創価学会」という本を出版した。実体験を通して、根拠を持って、創価学会本部が創価学会をおかしくしているということを書いた。学会本部は学会委員にこの本を読むな、ネットも見るなと行っている。わたしたちは最後まであきらめることなく闘い続けていきます。

 最後に、集会参加者の大きな拍手で確認されたアピールで次のように宣言した。
「―(前略)わたしたち宗教者・信者は、@自己の信じる信仰によって、このような恐怖と萎縮の社会を拒絶する。Aその先にある政府の行為による戦争と「戦争する国」を拒絶する。Bこの拒絶を明らかにすることによって、わたしたち宗教者・信者が再び壮絶な宗教弾圧に遭遇することを拒絶する。今日、わたしたち宗教者・信者は、この3つの拒絶を表明し、そのために共に『共謀罪』の成立阻止に向け、すべての人々と一点共同を進め、祈りを行動に移していくことをここに宣言する。―」

 集会を終わって、平和行進に出発した。

海渡雄一弁護士の講演
     
  「共謀罪と治安維持法―現代の治安維持法・共謀罪に反対しよう!」

 治安維持法とは、国体の変革と私有財産制度を否定することを目的とする結社を取り締まるためとして1925年に制定された法律で、この二つの目的で結社を組織し、事情を知ってこれに加入する行為をこのときには10年以下の刑を科すとしたもので、治安維持法は、天皇制と私有財産制を守ることを保護法益とした。この三年前に、過激社会運動取締法案という法案が提案され、帝国議会と新聞などの反対で廃案となっていたが、政府は、治安維持法案について「私有財産制度を否認する」は過激社会運動取締法案の「社会の根本組織の変革」よりはるかに狭く、「国体若ハ政体ヲ変革シ」は同法案の「安寧秩序棄乱」よりはるかに狭いと説明していた。また、すべての犯罪は「目的罪」であるから、警察の権限濫用は大幅に抑えることができると説明され、内務省幹部は法の成立後も、善良な社会運動を取り締まる意図はない、思想を処罰する意図はないなどと説明した。いまの政府の共謀罪に関する説明の仕方とそっくりだ。
 しかしすぐに法適用は拡大していく。治安維持法の適用は、「国体概念」の肥大化を招いた。当初、日本共産党と周辺団体に適用されていたのが、共産主義運動の弾圧が完了しても、その適用は止まらないどころか拡大していった。
 1935年には、教派神道系の教団である大本教に治安維持法が適用された。共産主義とは全く関係のないが、教義の中に天皇制と矛盾する部分があることから「国体変革」結社と見なされた。しかし1942年には大本教事件で治安維持法に関する無罪判決がされたが、この判決は報道されなかった。この違法捜査を指揮した内務省の唐沢俊樹警保局長は、戦後には自民党の国会議員となり、岸内閣で法務大臣を務めた。
 1937年には、日本無産党、全評、労農派のマルクス主義者など合法的無産勢力に対する弾圧の人民戦線事件が起きた。天理本道事件、燈台社事件などと適用範囲が拡がり、創価学会初代会長の牧口常三郎が治安維持法違反で検挙され、獄死している。1942年の横浜事件は慰安旅行の記念写真をもとに共産党の再建準備会議を開いたとでっち上げられ、約60人が逮捕され、その半数が有罪となり、ひどい拷問が繰り返され4人が獄死した。
 1939〜40年には、国家総動員計画を立案していた企両院の国家公務員にまで、「官庁人民戦線」を作ろうとしたという砂上楼閣のような事件をでっち上げている。治安維持法は、権力内闘争の道具にまで使われた。なおこの事件では、当時商工次官だった岸信介も事件の責任をとって次官を辞任していた(直後に復活)。
 治安維持法の適用拡大の画期をなしたのは、天皇機関説事件と大本教事件が起こされた1935年だ。このころには共産党と関連組織に対する弾圧がほぼ完了していた。天皇機関説事件は、極右憲法学者蓑田胸喜は、当時起こった赤化判事事件を取り上げ、このような事件がおきるのは、帝国大学の司法官養成教育が赤化教授によって担われていることが原因だとして、東京帝国大学名誉教授で憲法学者の美濃部達吉など四人を元凶である批判した。その年の貴族院本会議では、菊池武夫議員(陸軍中将・在郷軍人議員)が、美濃部達吉議員の天皇機関説を国体に背く学説であるとし、美濃部を「学匪」「謀叛人」と非難し、極右と在郷軍人会の動きが強まり、美濃部は不敬罪で唐沢俊樹警保局長によって刑事告発され、不起訴となるも貴族院議員辞任へ追い込まれた。
 特高警察は、治安維持法の適用対象を、共産党の周辺の外郭団体から、宗教団体への拡大を図った。大本教事件は、宗教団体に対する初適用事例だった。そして、不敬罪と治安維持法違反ということで京都府の綾部と亀岡にあった大本教の施設を、約500人の警官隊が襲い、987人が検挙され、激しい拷問で16人が死亡したといわれる。 
 その後も、宗教弾圧が続いた。1936年の新興仏教青年同盟への弾圧、1938年の天理本道事件、1939年には燈台社事件と、さまざまな宗教団体が治安維持法による弾圧の対象となった。治安維持法は、天皇制=国家神道を奉ずる者以外の宗教は認めない法と化したのである。制定当初は「共産主義」を指す言葉と理解されていた「国体変革」は、天皇制と矛盾する思想・宗教を広く適用対象にするようになっていき、神道系、キリスト教系教団へと適用を広げ、太平洋戦争期には、仏教教団にまで適用が及ぶようになった。その典型が創価学会の例である。創価学会の初代会長の牧口常三郎氏は、教育者であったが、1930年に「創価教育学会」(創価学会の前身)を創立し、教育改革、仏法に基づく生活革新運動へと展開した。当時、政府は、仏教宗派に対しても、各宗派の統合の方針が打ち出していた。宗門は軍部の要求に屈したが、牧口は軍部政府の宗教政策に膝を屈することなく、仏法の正法正義を貫くように主張した。1943年に牧口は治安維持法違反と不敬罪の容疑で警察に連行され、1944年、獄中で逝去した。
 牧口は国家政策の何に抵抗したか。「内務省特高月報 昭和18年7月分」によると、「会長牧口を中心とする関係者等の思想信仰には幾多不逞不穏のものありて、予てより警視庁、福岡県特高課に於いて内偵中の処、牧口会長は信者等に対して『天皇も凡夫だ。』(天皇凡夫説)『克く忠になどとは天皇自ら言はるべものではない。教育勅語から削除すべきだ。』(教育勅語批判)『法華経、日蓮を誹謗すれば必ず罰が当たる』(法罰論)『伊勢神宮など拝む必要はない』(国家神道批判)など不逞教説を流布せる」、とある。
 今、公明党と創価学会は、自民党と一緒になって、安倍暴走政治、共謀罪の新設に向かっているが、学会のこうした歴史をぜひとも思い起こしてほしいものだ。
 治安維持法も共謀罪も、団体を規制するための刑事法であるという点で基本的に同じような構造の法律だ。準備段階の行為を捉えて刑事規制をしようとしている点では、共謀罪と治安維持法には重大な共通点がある。処罰範囲が拡大され、不明確になり、拡大適用すれば、体制に抵抗する団体に対する一網打尽的弾圧を可能にする手段となりうる点も共通している。共謀罪は、処罰時期の前倒しそのものだが、治安維持法における目的遂行罪、団体結成準備罪なども、処罰可能時期を早めるものだった。政府の説明も、あらたに提出された法案と2003年の法案との関係が、治安維持法(1925年)と過激社会運動取締法案(1922年)の関係になぞらえられている。共謀罪法案は、「平成の治安維持法」と呼ぶことのできる広汎性と強い濫用の危険性が潜在している。
 安倍政権は非道なことを続けている。こんなことは絶対に認めないと人びとが示さなければならない。最後まであきらめずに反対の運動を広げていくことが大事だ。多くの人びとの力を合わせてなんとしても廃案にしなくてはならない。


津久井やまゆり園事件を考える

       
 ― 当事者がより良い人生を築いていくために

 昨2016年7月26日、津久井やまゆり園(神奈川県相模原市)で、19人が殺され、23人が負傷(他に職員の3人が負傷)した重度の知的ハンディがある人たちの生存を否定する事件がおこった。

 5月28日に、「津久井やまゆり園事件を考える相模原集会」が開かれ、約150人が献花し、論議を行った。集会への参加の呼びかけは「津久井やまゆり園のような事件が起こらないための解決は、重度の知的ハンディがある人たちがあたりまえに地域生活が行えるような社会になることです。日本で実現してきた自立生活は世界的な潮流でもあります」として、それぞれの立場を尊重しつつ「何より当事者がより良い人生を築いていくために、どのような生活のあり方が良いのかを考え続けることで、解決が見出さるだろうと私たちは期待しています」としている。
 献花、黙祷のあと、鈴木治郎(神奈川障害者運動団体連絡協議会事務局長)が開会挨拶。今回事件は障害者問題の様々な課題を明らかにした。行政も含めてこれまでのようなあり方でよいのかが問われている。
 つづいて、堀利和NPO法人共同連代表(元参議院議員)が、やまゆり事件を契機に精神福祉法の改悪が進められようとしている。厚労相は措置入院ありかた検討委をつくるという。それは措置入院での警察による観察強化を目指すものだ。これに反対していかなければならない、と述べた。
 講演では、岡部耕典さん(早稲田大学教授)が「息子の自立生活を実現して」と題して、知的障害と自閉症がある息子の自立を訪問介護で進めていると語った。尾野剛志さん(津久井やまゆり園家族会・前会長)は「傷つけられた息子と明日に向かう」と題して、施設も地域との交流はあり、施設の必要性について語った。
 「やまゆり園事件をみんなで考える」をテーマに、西定春さん(社会福祉法人すばる福祉会幹事長)は、何より当事者中心で考えるべきだと述べ、津久井やまゆり園事件を考える集会呼びかけ人による黒岩祐治神奈川県知事への「津久井やまゆり園の建替えに関する提言書」について報告した。そこでは、@津久井やまゆり園の建替えを取りやめ、跡地を知的ハンディがある人たちと、地域住民が、共にあることができる施設整備を基本とすることA津久井やまゆり園に在籍の人たちに対して、地域生活移行のためのトレーニングを実施、地域生活の体験を行ったうえ、今後の生活に向けての意向調査を行うことB津久井やまゆり園入所者家族に対して、現在の障害福祉サービスの制度を説明し、制度は理念として、地域生活の確立を目指していることを説明し理解を得る努力をすること、大規模施設でなくとも、安心した生活の確立が可能であることを説明し、地域生活の見学会を持つこと。また、地域生活を実践している人や支援している人の学習会を持つことC敷地の半分程度を公園としてだれもが集える場とし、その一角に19人の慰霊碑を建立し、永世にわたって追悼を行うことができ、関係者の反省の場ともすることD残りの敷地の中に公営住宅を建設し、その住宅にはすべてのハンディがある人の地域生活が営める家を含めることE知的及び精神の人たちのグループホームをいくつか設置し、複数の事業者による運営がなされること。また高齢者のグループホームや保育所も整備し、地域福祉の総合的なモデルとすること。これ全体を一つの事業者に管理させるのではなく、複数の事業者に委託することFハンディがある人の日中活動を支援する拠点を設置し、グループホームの入居者のみならず、地域のハンディがある人や高齢者への支援の拠点としてあることG公民館等を設置し、ハンディがある人と住民の共生スペースとし、インクルーシブな文化の拠点とし、だれでも利用できるものにすること―を県の施策に取り入れるように求めた。

 参加者による討論にうつり、各地で運動に取り組んでいる人からの意見、地元相模原市など自治体関係者からも発言があった。


精神保健法改正法に込められた危険な狙い

 精神保健法改正法案は5月16日、参院本会議で可決、衆議院に送られた。
 今年1月の第193国会施政方針演説で安倍首相は、「昨年7月、障害者施設で何の罪もない多くの方々の命が奪われました。決してあってはならない事件であり、断じて許せません。精神保健福祉法を改正し、措置入院患者に対して退院後も支援を継続する仕組みを設けるなど、再発防止対策をしっかりと講じてまいります」と述べたが、その相模原事件を法案「改正」の根拠・理由とした改正法案もまた人権無視の安倍政治の一環としてある。改正法案は、措置入院者に対する退院後の支援という名の下に、実際には監視を強化し、差別を助長するものだ。事件と措置入院者との因果関係を無理やりに結びつけて、治安対策を色濃くしたものだ。
 その重大な点は―措置入院患者の退院時とその後の対応については、自殺のおそれや応急の救護などを口実に代表者会議と精神障害者支援地域協議会(個別調整会議)の参加者に警察が関与すること、そして、個別支援計画の作成にあたっては条文上家族や本人の参加が認められておらず、作成された支援計画が本人に交付されるということ、である。
 精神病患者に対して必要なのは、本人の意思の最大限尊重であり、それに基づいた医療、福祉、就労、生活などの総合支援でなければならない。


労働運動と市民運動は「共謀」しよう!

      労働法制の改悪と共謀罪の創設に反対する連帯集会


 安倍政権は、財界の要求に従って長時間労働、首切り自由の法制度を作ろうとしている。そして、共謀罪法案は安倍政治に反対するすべてを対象に事前検挙でおどしつけようとしているもので、市民運動と共に労働運動の圧殺を狙うものだ。
 こうした現在の民主主義の危機に対し、さまざまな運動、人びとが一体となって打ち返していかなければならない。
 5月24日、労働運動と市民運動は「共謀」しよう!を合言葉に、日比谷野外音楽堂で、「労働法制の改悪と共謀罪の創設に反対する連帯集会」が開かれ、2500名の労働者・市民が参加した。
 当日掲げられたスローガンは、「共謀罪、絶対反対!」「解雇の金銭解決、長時間労働を助長しかねない高度プロフェッショナル制度、新企画業務型裁量労働制の導入を許すな!」「真の同一労働同一賃金を目指せ!」。主催は、労働組合や弁護士、市民団体でつくる「労働運動と市民運動の連帯を目指す1日実行委員会」で、協力は戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会だった。
情勢報告は、共謀罪について海渡双葉弁護士、労働法制について棗一郎弁護士が行った。
 政党から民進党の逢坂誠二衆院議員、共産党の山添拓参院議員、社民党の福島瑞穂参院議員があいさつし、自由党の小沢一郎代表のメッセージが紹介された。作家の雨宮処凛さん、過労死等考える家族会の寺西笑子さん、総がかり行動実行委員会の高田健さん、雇用共同アクションの伊藤圭一さん、平和フォーラムの福山真劫さん、エキタスの古賀勇人さんがあいさつ。
 採択された集会アピールは、「市民運動と労働運動が手を取り合って連帯し、国民的運動と世論の力で今の国会と政治状況を変えていきましょう」と呼びかけている。
 集会終了後、銀座を通り東京駅までのデモ行進を行い、「共謀罪」は廃案に!労働法制改悪反対!安倍内閣退陣!などとコールをあげた。


労政審同一労働同一賃金部会へ均等待遇アクション21が要望書

 労働政策審議会の同一労働同一賃金部会が動き出し、論議が続いている。この部会は、労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会の3分科会にまたがるものだ。
 経団連は、「わが国の賃金制度は多様であり、職務給を前提とする欧州型同一労働同一賃金の導入は困難」だとして「現行法(労働契約法、パート法)の基本的な考え方を維持すべき」との考え方で、それぞれの企業が評価する「日本型同一労働同一賃金」を目指すべきとしている。
 自民党雇用問題調査会同一労働同一賃金問題検証プロジェクトチームの「『非正規雇用の待遇改善』のための『同一労働同一賃金』」でも、「企業横断的ではなく、同一企業内の『同一労働同一賃金』を基本とする」とし、具体策として「ガイドラインの策定」「包括的な法整備」「最賃の引上げ」が必要であるとしながら「なお、日本と欧州諸国では、大きな慣行の違いが存在する。(日本は欧州諸国に比べ労働関係の裁判が少なく、また、産業別労働組合の労働協約による企業横断的な賃金相場の形成がない)」「欧州諸国の法制を模倣しただけでは、我が国における問題の真の解決につながらないことに留意すべきである」という。これでは、同一労働同一賃金は名ばかりでの差別待遇が続くことになる

 均等待遇アクション21は、パ ー ト・ 非常勤差別に反対し、「どんな働き方でも均等待遇を」「同一価値労働に同一賃金を」「間接性差別禁止を法律に」「均等法を男女雇用平等法に」「有期雇用にも均等待遇を」などの実現を目指して活動を行ってきている。
 均等待遇アクション21は、5月22日に、厚生労働大臣と労政審同一労働同一賃金部会委員に対して「『同一労働同一賃金』など非正規雇用の処遇改善に関する要望書」を提出し、次の諸点の実現を要求した。@契約=雇用区分の壁を超えた賃金の公正な確保が、今回の法改革の基本的な趣旨であることを明確にすること。A雇用区分の違いを理由とする不合理な格差・取扱いを禁止すること。B合理性の判断枠組みを適正化すること。C使用者が、格差の原因についての説明義務のみならず主張立証責任を負うようにすること。D無効とされた契約部分を補充し、是正された賃金を請求できる権利を定めること。E迅速かつ適正に不合理な賃金格差を解消する紛争解決手続きを確立すること。F派遣労働者の均等均衡処遇の実現にむけてILO181号条約(民間職業仲介事業所条約)を踏まえて以下を実現すること―常用型と登録型の区別による賃金構成や決定内容、仕事がないときの賃金補償、一時金・退職金の違いや格差の是正。派遣先社員との格差の是正。


砂川事件裁判、再審開始決定を!伊達判決記念58周年集会

             記念講演「日米合同委員会―米軍優位の密約機関」

 1950年代後半、米軍立川基地の拡張に反対して、労働者、農民、学生の激しい闘いが展開された。1957年7月8日、農地の強制使用ための測量に抗議して、地元の砂川基地拡張反対同盟を支援する労働者・学生が基地の中に立ち入ったとして、その2ヵ月後に、日米安保条約に基づく刑事特別法違反の容疑で23名を逮捕し、うち7名が起訴された。1959年3月30日、東京地裁・伊達秋雄裁判長は、駐留米軍を特別に保護する刑事特別法は憲法違反であり、米軍基地に立入ったことは罪にならないとして被告全員に無罪判決を言い渡した(「伊達判決」)。日米両政府にとって衝撃的なこの判決をくつがえすために前代未聞の陰謀が繰り広げられた。政府は高裁を跳び越える異例の跳躍上告によって最高栽に持ち込んだが、政府の意向に従った最高裁田中耕太郎長官は自ら裁判長を務め東京地裁判決を破棄して差し戻しとした。だが、さすがに刑事特別法を合憲だということはできず、「違憲なりや否やの法的判断は、司法裁判所の審査には原則としてなじまない」と逃げたのだった。この判決の直後に日米安保条約の改定調印が行われた。
 だが、日米安保体制の強化につながったこの砂川事件最高裁判決の事実が明らかになる時が来た。2008年アメリカの公文書館で田中最高裁長官や藤山愛一郎外務大臣などが、マッカーサー二世駐日米大使と裁判情報を交換していた文書が見つかり、信じられないような真実が明らかになった。最高裁判決はやはり「公平」なものではなく、日米政府合作による不当きわまりないものだった。
 事件の元被告人や遺族たちは、伊達判決を生かす会をたちあげ(2009年6月)、東京地裁に、「砂川事件最高裁判決は憲法に違反した無効な裁判で、刑事訴訟法に基づき免訴とすべきである」と再審請求(訴訟)を東京地裁に起こした(2014年6月)。2016年3月東京地裁(田邉三保子裁判長)は、最高裁長官との会見や裁判秘密の漏えいを米本国に報告した駐日大使の公文書を新証拠と認めながらも、田中長官の言動が「不公正な裁判をした」という「証拠はない」として請求棄却した。請求人たちは、3月11日に東京高裁に即時抗告した。

 6月4日、文京区民センターで「砂川事件裁判、再審開始決定を!伊達判決記念58周年集会―『駐留米軍は違憲』ではないのか?」が開かれた。
 集会では、生かす会共同代表・事務局長の吉沢弘久さんが「再審請求提出から高裁審理に至るまで」と題して経過報告。つづいて、常任弁護団代表の吉永満夫弁護士が、再審請求の解説と法的手続きについて述べた。請求人で会共同代表の土屋源太郎さんが決意表明をおこなった。
 賛同団体から、沖縄一坪反戦地主会関東ブロック、横田基地もいらない市民交流集会実行委員会から挨拶が行われた。

 記念講演は、ジャーナリストの吉田敏浩さんが、「日米合同委員会―米軍優位の『密約機関』」をテーマにおこなった。
 オスプレイなど米軍機墜落事故では米軍が現場を封鎖し、日本側は現場検証も乗員への事情聴取もできない。米軍が事故原因の究明は二の次で訓練飛行を再開しても、日本政府は容認するばかりだ。米軍基地周辺の住民による米軍機騒音訴訟では、騒音公害として違法性と損害賠償が認められているが、飛行差し止めは認められない。米軍の活動に日本政府の規制は及ばないから、差し止めはできないというのが裁判所の判断で、日本各地で続く米軍機の危険な低空飛行訓練も野放しにされている。
 こうした状態で、日本は真の独立国・主権国家といえるか。米軍の基地運営・軍事活動に日本の行政権も司法権も及ばないが、そこには「砂川裁判最高裁判決」が大きな影響を及ぼしている。同判決は、駐留米軍には日本の指揮・管理権が及ばないので、憲法9条が禁じる戦力には当たらないとし、さらに日米安保条約のような高度の政治欧を有する問題には裁判所の違憲審査権は事実上及ばないとの見解を示した。それが、米軍機騒音訴訟などで、裁判所が米軍機の飛行差し止め請求を棄却する原因にもなっている。「砂川裁判最高裁判決」は「安保法体系」を「憲法体系」よりも優越させ、米軍の基地運営・軍事活動のフリーハンドの特権を認めることになった。主権在民にもとづく独立国家の根幹である憲法の法体系より、軍事同盟である安保条約の法体系を上位に置いたのである。その背後には、マッカーサー大使らアメリカ政府側から藤山外相などへの秘密の働きかけがあり、米軍駐留は違憲とした「伊達判決」を覆すべく日本政府による最高裁への跳躍上告があった。大使は田中最高裁長官とも密談し、裁判の評議の情報を得ていた。裁判の評議の秘密を漏らしていた田中最高裁長官のもとでの法廷は、憲法が保障する公平な裁判所ではなかった。したがって、砂川事件元被告による再審請求は正当なものである。ところが、東京地裁は不当にも請求を棄却した。東京高裁は速やかに再審請求に応じるべきだ。米軍優位の不平等な日米地位協定が、米軍に事実上の治外法権を与えているのであり、その米軍優位の構造をより強固にする裏の仕組みが、日米合同委員会なのだ。それは、地位協定の解釈や運用に関する協議機関で、その実態は謎につつまれている。日本側代表は外務省北米局長で、代表代理は法務省大臣官房長、農林水産省経営局長、防衛省地方協力局長、外務省北米局参事官、財務省大臣官班審議官。アメリカ側代表は在日米軍司令部副司令官、代表代理は在日アメリカ大使館公使、在日米軍司令部第五部長、在日米陸軍司令部参謀長、在日米空軍司令部副司令官、在日米海軍司令部参謀長、在日米海兵隊基地司令部参謀長となっている。通常の国際協議ではあり得ない文官対軍人の組み合わせだ、アメリカ側は軍事優先で協議にのぞみ、要求を出す。米軍優位の日米地位協定が土台にあり、ほとんどの場合米軍に有利な合意が結ばれる。本会議とその下に施設・財務・調達調整・労務・出入国・通信・周波数・民間航空・刑事裁判管轄権・民事裁判管轄権・環境など分科委員会、建設・港湾・道路橋梁・陸上演習場・海上演習場など部会があり、それらが日米合同委員会と総称される。米軍基地・演習場の場所の決定、基地・演習場のための土地収用、滑走路など各種施設の建設、米軍機に関する航空管制、米軍機の訓練飛行や騒音、墜落事故などの被害者への補償、米軍が使う電波の周波数、米軍関係者の犯罪の捜査や裁判権、基地の環境汚染、基地の日本人従業員の雇用など、さまざまな問題が協議される。
 日米合同委員会は1952年4月28日の対日講和条約、日米安保条約、日米行政協定(現・地位協定)の発効とともに発足した。関係者以外立ち入り禁止の密室での会合で、議事録や合意文書は原則非公開とされる。情報公開法による文書開示請求をしても不開示だ。国会議員にさえも非公開とされる。合意の要旨は一部、外務省や防衛省のホームページなどで公開されるが、それも米軍に有利な内容が削除されていたりしている。
 そのため、日米合同委員会の解明には、法務省や外務省や最高裁などの秘密資料・部外秘資料(法務省刑事局の『秘 合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料』、外務省の『無期限秘 日米地位協定の考え方』、最高裁判所事務総局の『部外秘 日米行政協定に伴う民事及び刑事特別法関係資料』)など、在日米軍の内部文書、アメリカ政府の秘密文書などの調査を通じて、実態を探るしかない。
 日本の主権を侵害し、「憲法体系」を無視して、米軍に特権を認める日米合同委員会の密約については、その数と全貌はわからないが、「密約体系」と呼べるほど大規模なものになっているはずだ。わかっているだけでも、「裁判権放棄密約」(1953年)、「身柄引き渡し密約」(1953年)、「公務証明書密約」(1953年)、「民事裁判権密約」(1952年)、「秘密基地密約」(1953年)、「日本人武装警備員密約」(1952年)、「航空管制委任密約」(1975年)、「航空管制・米軍機優先密約」(1975年)、「富士演習場優先使用権密約」(1968年)、「嘉手納ラプコン移管密約」(2010年)などがある。
 法的根拠がないのに、米軍が占領時代から立憲主義を侵食する闇の核心部ともいえる日米合同委員会だが、しかし、このままでいいはずはない。国会に「日米地位協定委員会」を設置し、国政調査権により日米合同委員会の合意文書や議事録の全面的な情報公開をさせるべきだ。米軍の特権を認める合意・密約も廃棄し、地位協定の解釈と運用を国会の管理下に置き、地位協定の抜本的改定と合同委員会の廃止をすべきだろう。地位協定を改定しても合同委員会の「日米同政府を拘束する」密室の合意システムが残れば、米軍優位の構造は解消されない。真の主権回復と主権在民の実現こそが必要だ。この国が戦後70年あまりにわたってかかえる課題が、日米合同委員会の問題に鋭く映し出されているのである。

 会場から質問・意見が出されて討論し、最後に今後の会の方針が提起された。


危険なMOX燃料原発

     
 さよなら原発1000万人アクションなどが高浜原発再稼働に抗議

 6月6日、関西電力は、5月の高浜原発4号機再稼働に続き、3号機再稼働を強行した。東京電力福島第一原発の事故後の「新規制基準」下で運転する原発は、合わせて5基となった。
 高浜原発3、4号機はMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)によるプルサーマル発電を行う。MOX燃料は、通常のウラン燃料の9倍とも言われ、その料金は電力料金に上乗せされる。消費者にそのツケを回すことは許されない。また、使い終わったMOX燃料の処分についてだが、六カ所再処理工場などリサイクルなどは不可能であることが明らかだ。
 高浜原発の危険性についてはかねてから指摘されており、再稼働反対・廃炉の運動が広がっている。大津地裁は、昨年3月に、福島の原発事故を踏まえた過酷事故対策についての設計思想や外部電源に依拠する緊急時対応、耐震基準策定の問題点があり、津波対策や避難計画にも疑問が残るとして、高浜原発3、4号機について運転差し止めの仮処分を決定し、7月にも関電の異議を退けていた。
 ところが今年3月に大阪高裁は、「安全性が欠如しているとはいえない」と判断して、運転再開を求めて保全抗告していた関電側の訴えを認めたのだった。関西電力やそれを認めた安倍政権の政策の責任は重大である。

 6月6日、国会議員会館前で、さよなら原発1000万人アクション実行委員会の呼びかけによる「高浜原発3号機の再稼働反対!無責任なプルサーマル発電を止めろ!緊急抗議集会」が開かれた。
 主催者を代表して、原水禁国民会議の井上年弘事務局次長があいさつ。福島原発事故の原因も明らかになっていないのに、関西電力は4号機に続いて3号機も再稼働させた。周辺自治体にも不安が広がっている。将来に負の遺産を残すようなこうした暴挙を絶対に認めてはならない。
 福島原発告訴団団長の武藤類子さんは、福島事故は悲惨な状況を作り出した、高浜でとこうしたことが起こってはならない、と訴えた。
 集会参加者は、再稼働反対、安倍内閣の退陣などのシュプレヒコールを上げた。


2017国会ピースサイクル

           
 防衛省、都教委、東電、外務省、内閣府などへ要請行動

 5月19日、夏の全国のピースサイクルに先がけて国会ピースサイクルが行われた。国会ピース参加者は朝、市ヶ谷駅近くの公園で当日の行動スケジュールを確認し、その後、自転車組と電車移動組と分かれて行動をした。
 「原発の再稼働・輸出ストップ!」「沖縄基地 NO!」「戦争法 NO! 共謀罪 NO!」「日の丸・君が代処分撤回!」「日本軍「慰安婦」戦後補償を!」などのスローガンを掲げ、防衛省、東京都教育委員会、東京電力、外務省、内閣府へ要請行動がされた。
 防衛省門前では安倍総理大臣、稲田防衛大臣あてに米軍新基地建設撤回、日米安保条約の破棄、地位協定の見直し6項目の要請書を読み上げ、高江、辺野古新基地反対、政府は沖縄の民意を聞け、機動隊は弾圧を止めろなどのシュプレヒコールを挙げ抗議した。
 都教育委員会では談話室に於いて、日の丸、君が代を拒否した教職員の処分撤回、教育勅語を道徳教育に使用しないことなどの要請をした。ここで午前の行動を切り上げ、国会前で行われている共謀罪成立阻止の総がかり行動に合流し共に連帯の抗議を行った。
 午後からは東京電力で原発被害者への対応を始めとする5項目にわたって1時間、質疑を交わした。
 外務省は要請人数が制約されたが、「慰安婦」強制連行の事実を認めること、被害者抜きの2015年12月の日韓合意を破棄するなどの要請をした。内閣府では安倍総理大臣あての署名「政府の政策転換を求める」で辺野古新基地建設反対、共謀罪廃案、原発再稼働反対など8項目を求めた。各地からは教育問題、森友、加計問題、放射能ホットスポット、原発避難者への補助延長などを訴えた。
 一日の行動の終わりに総括会議を参議院会館会議室で行った。
 このあと交流会に向かう人と、国会正門前集会に参加する人と別れ行動を終了とした。(A)


複眼単眼

      極右勢力の改憲論の起死回生の奇手


 安倍晋三首相は五月三日、改憲派の集会にビデオメッセージを寄せ、「二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明。改正項目として九条をあげて「一項、二項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」とのべた。同様の主旨は同日の読売新聞朝刊に「首相インタビュー」として掲載された。
 この安倍の改憲発言は従来の彼の改憲発言とは大きく異なっている点が注目される。
 二〇〇六年から〇七年にかけては九条改憲を主張し、その後、二〇一二年には復古主義色濃厚な自民党憲法改正草案が発表され、さらに憲法第九六条に絞った改憲論が主張されたり、従来の内閣による九条の憲法解釈の変更を閣議決定したり、国会議員の任期の問題に特化した国家緊急権抜きの緊急事態条項が主張されたりと、安倍晋三首相の改憲論は大幅なブレをくり返し、二転三転してきた。動揺するのは、安倍首相にとっては、まず「改憲ありき」だからだ。
 今回の九条三項加憲論は両院で改憲発議可能な議席の三分の二を獲得したにもかかわらず、改憲の具体的展望が見えないことからきた、あせりであり、安倍の大幅な改憲路線の転換だ。
三月五日の自民党大会で安倍首相は「憲法施行七〇年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七〇年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。……世界の真ん中で輝く日本を、一総活躍の日本を、そして子どもたちの誰もが夢に向かって頑張ることができる、そういう日本の未来を、共に、ここから、切り拓いていこうではありませんか」と述べた。
 安倍晋三首相は自らの総裁任期を党規約を変更して三年延長できる道を開いた上で、今回の九条加憲論を持ち出したのだ。この一見唐突と見える九条加憲論には伏線がある。安倍政権を支える極右団体「日本会議」の伊藤哲夫政策委員・常任理事は、三項に「但し前項の規定は確立された国際法に基づく自衛ための実力の保持を否定するものではない」と書き込むことを昨年の機関誌「明日への選択」九月号で提案していたのだ。そして「(護憲派に)昨年(二〇一五年)のような大々的な統一戦線を容易には形成させないための積極戦略でもある」とのべている。また日本会議国会議員懇談会(安倍政権の閣僚のうち一五人、衆参二九〇人の国会議員が参加)の二〇一七年度運動方針(三月一五日決定)では、「憲法上に明文の規定を持たない『自衛隊』の存在を、国際法に基づく自衛権を行使する組織について憲法に位置づける」としていた。
 「国際法に基づく自衛権を行使する組織」とは国連憲章五一条による個別的・集団的自衛権を無制限に行使する組織ということだ。憲法第九条の一項、二項に続いてこうした三項が「ただし」として書き込まれれば、二項の戦力不保持、交戦権の否認は意味をなさなくなる。この意味で、安倍の加憲論は壊憲に他ならない。
 念のため付記するが、自民党憲法改正草案のような極右の壊憲案を掲げてきた極右勢力が、九条一、二項を残す加憲という路線に不満を持つに違いないことを安倍は折り込みすみだ。「右翼の安倍が提案すれば右翼は反対しない」というのだ。 (T)