人民新報 ・ 第1352号<統合445号(2017年8月15日)
  
                  目次

● 朝鮮危機に乗じて戦争体制強める安倍内閣を倒そう

                トランプの先制攻撃策動阻止! 

● 8・12  翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない―首都圏行動

● 最低賃金大幅引き上げキャンペーン

                時給1500円をめざして   いますぐどこでも時給1000円に!

● 「日の丸・君が代」教育、「刷り込み・洗脳」教育に反対

                「日の丸・君が代」問題等全国学習交流集会

● 「あべ政治を終わらせよう」の決意を込めて   2017ピースサイクル

                長野ピースサイクル

                静岡ピースサイクル

                埼玉ピースサイクル

                四国ピースサイクル

● 平和なくして男女平等なし、男女平等なくして平和なし

                シンポジウム「安全保障法制とジェンダー」 

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  改憲反対の民意の前に不安におののく安倍首相





朝鮮危機に乗じて戦争体制強める安倍内閣を倒そう

              
  トランプの先制攻撃策動阻止! 

 内外ともに極めて困難な立場に陥ってもトランプ米大統領の暴走はとどまることを知らない。8月8日には「(北朝鮮に対し)世界が見たことがないような炎と怒りに直面する」と恫喝した。トランプは、その直前の1日にグラム上院議員(共和党)に北朝鮮との「戦争」も辞さないと語ったが、「戦争が起きるなら向こうでやる。大勢が死ぬが、米国ではなく向こう側で死ぬ」と話している。戦争では多くの死傷者が出るが、そんなことはアメリカ本国さえ助かれば後はどうでもよいという態度だ。米国務省などは火消しに躍起だ。トランプは就任直後、シリアとアフガニスタンに一方的に攻撃を仕掛けた。北朝鮮に対しても同様の「戦果」を上げようとしているのだが、北朝鮮はシリア、アフガニスタンと違い、武力反撃により韓国、日本、米国に対して甚大な被害をもたらすことができる。米軍はこれまで幾度も北朝鮮に対する先制軍事攻撃を画策してきたが、いずれの場合も、その被害のあまりの大きさを想定せざるを得なくなり断念してきた。しかし、トランプは韓国や日本で多数が死者が出ると知りながら北朝鮮への「予防攻撃」を考えているというのである。アメリカにとって日米同盟が、決して日本の安全を守るものではなく、アメリカの利益のためにあるということがはっきりした。歴代の日本政府の詭弁が明らかになったのである。その安倍政権によって戦争法による集団的自衛権の行使―自衛隊が海外で闘うことという危険が迫っている。

 8月21日から、韓国で米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」が始まる。これは、指揮所演習であるが、内容は対北核施設・基地攻撃のシミュレーションが主体となっている。同時に、米軍は原子力空母2隻を海上に展開させるとしている。北朝鮮側は、米韓合同軍事演習を「公然たる宣戦布告だ」として、昨年と同じく最高の警戒レベル「特別警戒勤務1号」を発令するだろう。

 今、朝鮮半島の危機はかつてないほど増大しているが、そもそもその原因は、朝鮮戦争が続いていることにある。1953年に結ばれた休戦協定のまま北緯38度線付近の休戦時の前線が軍事境界線として残ったまま平和条約が結ばれることなく、いまだに韓国・米国と北朝鮮は戦争状態であるのである。こうした状況に、北朝鮮は、核兵器・ミサイル開発の理由として、アメリカの北朝鮮への侵略・体制転換に対する防衛措置だと主張してきた。とりわけ、イラクのフセイン政権、リビアのカダフィ政権がアメリカ主導の西側勢力の軍事攻撃によって崩壊させられて以降、フセイン、カダフィらは核兵器による抑止力を持たないがゆえに政権崩壊にいたったとして、核兵器・ミサイル開発に拍車をかけている。どの国家はいずれも体制維持を第一にする。とりわけ米国による体制崩壊策動を感じている北朝鮮指導部は核兵器・ミサイルに依拠することによってのみ事態は解決するという軍事優先主義に立っており、北朝鮮が一方的にトランプの要求をのむことは難しい。
 朝鮮半島情勢の危機と緊張状態と克服するためには、なによりも米朝の直接交渉が必要である。六者協議に参加しているそれ以外の関係国は、主役にはなり得ず、米朝直接交渉の条件を作れるだけである。

 日米関係の今日的段階としてのトランプ・安倍同盟とういう最悪のコンビによって、東アジアの情勢は平和をのぞむ大多数の人びとの願いにとは全く逆の危険な道を歩みつつある。現在、安倍政権がなにより先にすべきことは、米国政府に、絶対に戦争させてはいけないと断固として要求することだ。にもかかわらず、安倍の考えは全く別のものだ。安倍政権は北朝鮮脅威論のトーンを強めながら自らの政権維持・強化をもくろんでいる。7月下旬の安倍・トランプ電話会談では、対北朝鮮で「さらなる行動を取って行かねばならない、との認識で完全に一致した」としている。内閣改造で防衛相に再任された小野寺五典は、敵基地攻撃能力を保有すべきだというのが持論だが、これは先制攻撃論の一種である。その小野寺は、8月10日、米軍基地のあるグアムが攻撃された場合、「存立危機事態」にあたりうるとして、集団的自衛権を行使できる、すなわち自衛隊の参戦の可能性を示唆したのである。すでに航空自衛隊戦闘機はグアムから飛来したB1B戦略爆撃機と九州周辺で共同訓練を実施している。

 米国の対北攻撃は、当然、韓国や日本の政府の同意が必要とされる。こうした時に、トランプの北朝鮮武力攻撃に反対しないということは、日本政府として戦争の惨劇を受忍するということにほかならない。こんな政権は一日も早く打倒さなければならない。戦争それも最悪の場合は核戦争となる。被害は予想できないほどのものとなる。だが、中国、ロシアをはじめ世界各国の政府も戦争手段ではなく、平和解決を米朝双方に求めている。アメリカ政府も一枚岩ではない。なにより朝鮮半島、東アジアに住む人びと、そしてアメリカを含む世界の人びとが戦争に反対している。ともに戦争を阻止するために闘おう。


8・12  翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない―首都圏行動

 8月12日、那覇市の奥武山公園陸上競技場で「翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない県民大会」(辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議主催)が開かれ、4万5千人が参加した。翁長雄志県知事は、辺野古に新基地を造ることは絶対にできないと決意を述べ、また米海兵隊MV22オスプレイが相次ぐ墜落にもかかわらず、日本政府が飛行再開を容認したことについて、アメリカに追随するものだ鋭く批判した。

 この日には、県民大会に連帯して各地で集会などが開かれた。東京では、東池袋中央公園で「翁長知事を支え、辺野古に新基地を造らせない沖縄県民大会」に呼応する首都圏行動が、実行委員会主催で、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会の協力、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の賛同により開かれた。
 主催者あいさつは、この関東の地から翁長知事を支え、稲嶺進名護市長を支え、辺野古基地を作らせない運動を作っていこうとよびかけた。 つづいて、総がかり行動実行委員会や関東各地の沖縄と結ぶ会からのアピールがあった。
 集会を終わって池袋駅周辺の繁華街でコールを上げ多くの人びとへの呼びかけを行った。


最低賃金大幅引き上げキャンペーン

         時給1500円をめざして   いますぐどこでも時給1000円に!


 7月25日、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は、2017年度の最低賃金(時給)の引き上げ額についての目安をまとめた。

 その前日の7月24日、新橋駅前SL広場で、最低賃金大幅引き上げキャンペーン・アピール行動による「いますぐどこでも時給1000円に!時給1500円をめざして」「全国から引き上げよう最低賃金!なくそう地域間格差!」の街頭宣伝行動が行われた。この行動は、非正規労働者を組織する個人加盟の労働組合や郵政産業労働者ユニオン、全国一般労働組合全国協議会などでつくる実行委員会が主催した。

 宣伝行動終了後、浜松町の神明いきいきプラザで、「全国から引き上げよう最低賃金!なくそう地域間格差!」最低賃金大幅引き上げキャンペーン集会が開かれた。
 キャンペーン事務局の河添誠さんが、秋の闘争にむけての基調報告「長時間労働をなくすためにも最低賃金の大幅引き上げを!全国から地域間格差をなくす大運動を!」を提起した。日本の最低賃金は、「働いても貧困」を容認、肯定する低賃金だ。このような差別的な最低賃金制度でいいのか鋭く告発する必要がある。この低賃金は、長時間労働の温床となっている。低賃金は長時間労働を不可欠にする。低賃金の正社員においては、恒常的に残業代を稼がなければ生活がたちゆかない実態がある。また、正社員でも低賃金の労働者は、残業ではなく、夜に別の仕事をしてようやく生活を支えている労働者も珍しくない。非正規労働者においては、低賃金ゆえのダブルワーク、トリプルワークはまったく珍しくない。こうした、長時間労働の制限のためには、同時に、時間あたりの賃金を大幅に引き上げることが伴わなければならない。「残業代ゼロ」法案をはじめとする長時間労働を野放しにする安倍政権の企みを完全につぶすためには、労働運動は、時間当たりの賃金の引き上げを同時に主張することが必要である。そして、最賃の地域間格差の是正は、もはや一刻の猶予もなく是正されねばならない。地域間格差が大きくなればなるほど、労働者は賃金水準の高い都道府県へ移動しようとする。最賃水準が低い地域では、労働者不足になり、地域での消費も減り地域経済にマイナスの影響をもたらす。最賃を決める中央最低賃金審議会も、ほとんどの地方最低賃金審議会も審議が非公開でおこなわれている。傍聴すらさせない合理的根拠は存在しない。どういった議論の結果として、目安が決定され、最終的な波賀が決定されているのか当事者の低賃金労働者が知ることができないことは不合理きわまりない。審議過程の公開は、公正な最賃決定の大前提である。韓国で最低賃金が大幅に上がることが決まった。現行で時給6470ウォン(約646円)から、2018年1月から時給7530ウォン(約750円)になる。2020年までに1万ウォン(約1000円)をめざすという。この時給750円というのは衝撃である。日本の現行の最賃でみると、時給750円未満が19県も存在する。2018年1月から、ついに韓国の最賃に目本の最賃が抜かれるということである。アメリカでの時給15ドル(約1664円)をめざす運動が成果を上げているが、アメリカやヨーロッパ諸国だけでなく、ついに、韓国にも抜かれてしまったのである。日本の最賃の現状は、国際的に見て、相当に異常な状況であることを再認識して、運動を強化する必要がある。同時に、世界の最賃引き上げの運動の広がりは、私たちにとっての希望でもある。現状を直視しつつ、国際的な連帯も強化しつつ、地域から職場から地方から粘り強いたたかいを組んで行こう。当面の行動としては、中央最低賃金審議会(目安に関する小委員会)に向けたアピール行動、また、地方最賃審議会にむけた行動では、傍聴させろ、意見を聞けなどを要求していく。9月末以降に、全国で「いますぐどこでも時給1000円に!時給1500円をめざして」「全国から引き上げよう最低賃金!なくそう地域間格差!」「1日8時間労働で暮らせる最賃を!」などをスローガンに、労働組合を中心とした幅広い枠組みでの集会の開催をめざす。この秋は、「残業代ゼロ」法案などをめぐる長時間労働問題が大きな運動課題になることが予想されることから、最賃闘争を長時間労働規制緩和反対の闘争と結びつけた大きな闘争とする必要がある。

 つづいて、参加団体の郵政ユニオン、わたらせユニオン、東京労組、全国一般神奈川、東部労組、全国一般全国協、青年ユニオン新潟、ユニオン三重からの活動報告が行われた。


「日の丸・君が代」教育、「刷り込み・洗脳」教育に反対

         「日の丸・君が代」問題等全国学習交流集会


 7月23日、日比谷図書館文化会館地下ホールで、第7回「日の丸・君が代」問題等全国学習交流集会が開かれた。
 はじめに実行委員会からの開会挨拶。安倍政治の暴走を支えるのは教育「改革」だ。ここでは、これまでの教員に対する強制から、今、子どもたちに対する洗脳が行われている。幼児期からの愛国心の刷り込みなど決して許してはならない。
 記念講演は、高島伸欣さん(琉球大学名誉教授)が、「蘇る『教育勅語体制』と『日の丸・君が代』強制を迎え撃つ〜洗脳教育を教材にし、無力化と反転攻勢の力量育成をめざす〜」と題して行った。18歳選挙権が施行されたが、教育の場での主権者教育はない。とくに憲法16条にある「請願権」についてきちんと教えることがなされなければならない。請願権は「何人」にもあり、外国人にもあるということだ。そして、学生・児童にも、使われている教科書についても批判的に見ることができるようになり、誤りのない教科書を使用するように、正しい内容を教えるように、学校などに「請願」する権利があるということだ。
 つづいて、東京、大阪、千葉、神奈川、埼玉、宮城、新潟、愛知、兵庫、福岡、佐賀などから闘いの報告が行われ、また医療や幼児教育などの運動からも報告が行われた。
 集会を終わって、デモに出発し、途中で右翼の嫌がらせがもあったが、安倍政権の教育改悪反対、安倍内閣退陣などをアピールした。

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日の丸・君が代』問題等全国学習交流集会」アピール(要旨)


 2017年6月15日早朝、「共謀罪法案」が、与党の法を無視した手法で強行採決された。本来、法案は十分な委員会審議を経て本会議で議論が交わされ採決されるものである。
   ・・(中略)・・
 こうした国家主義的な政権運営を支える政策として教育が大きく変えられようとしている。安倍政権は教育勅語や銃剣道などの導入により戦前回帰ともいえる「教育」を推し進めると共に、幼児段階から「日の丸・君が代」教育を進めるなどし、新学習指導要領では「道徳教育」を基調にした「刷り込み」「洗脳」の教育が前面に出されている。
 このような「刷り込み」「洗脳」の教育は、オリンピック教育においてより先導的に表れており、「国威発揚」と「奉仕」の教育が具体的な教育政策として進められようとしている。他方で、「戦争法」を支える人材づくりとして教育現場への自衛隊の浸透が顕著である。リクルート活動だけでなく、「愛国心」「国防意識」の教育が「防災教育」の名を借りて進められるなど、子どもたちに向けた国家主義的な教育は既に無視できない状況にまで来ている。
 また、「日の丸・君が代」強制に始まる教員統制と管理は、教育の自由と人間としての内心の自由をも奪う判決となって表れており、「教員の検定制度」ともいうべき教育免許法の改悪が企図されるなどその動向は戦前教育制度に限りなく近くなろうとしている。
 わたしたちは以上のような違憲・違法な政治手法を許さないと共に教育の自由を守り子どもたちをまもるために闘うことをここに宣言する。

2017年7月23日


「あべ政治を終わらせよう」の決意を込めて

              2017ピースサイクル

長野ピースサイクル

 2017夏の長野ピースサイクルは7月22日(土)に長野県松代(大本営予定地下壕跡付近)を出発して、23日(日)新潟県柏崎市(東電柏崎刈羽原発)まで約150kmを延べ13名(7歳〜78歳)が、「まもろう9条」「なくそう原発」の旗を付けた自転車で走った。また、伴走車には「憲法9条を日本から世界へ」「全ての核をなくそう」のスローガンを掲げた。
 27年目の長野ピースサイクルの夏の実走は、安倍政権の悪政のもとで、テロ等準備罪(共謀罪)法が強行採決され、辺野古新基地建設も理不尽に強行され、柏崎刈羽原発の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査が進められるなど、課題の多く忙しい中で準備しての実施となった。
 22日は薄曇りながら朝から暑い中、始めて参加する小学2年生、中学1年生とお母さんの3名を含む13名が松代から出発した。ここ出発地の松代は、27年前の1回目の長野ピースサイクルの出発点でもあり、73年前の戦争の記憶のなかで、日本による戦争加害の原点として、ヒロシマ、ナガサキ、オキナワなど戦争被害の地とつながっていく場所である。
 長野ピースサイクル史上で最年少参加者の子供用自転車の走りを間に挟んで、そのペースを見ながらの出発である。大人の何十倍もペタルを回転させなければ大人たちと一緒に走ることが出来ない子供用の自転車を必死で漕いでいる少学2年生の姿はそれだけで、参加者全員の連帯感と思いやりを醸し出す。そして、この子供たちに絶対平和な世界を引継がなければという想いを抱かせる。
 そんな子供にとって、安全な道路を限定しつつ出来るだけ自転車走行が出来る様に援助しながら移動する。中学生はさすがに力強い。負けじと70代も含む大人も必死だ。
 20kmほど走って、毎年立ち寄っている須坂市の長野ソフトエネルギー資料室へ。ここでは、今年も歓迎を受け、美味しいスイカなどをいただきながら、久々の再会と脱原発への意思を確認しあいピースメッセージとカンパも頂いた。
 その後長野ならではの急な坂道へ突入する。昼には飯綱町九条の会のメンバーの歓迎を受けて、さらに急な坂道を登り切った。いつもより少し曇りがちで比較的楽な気持ちで上れたようであるが、いつものことながら、この坂を登り切った参加者の顔は長野ピースサイクルならではの達成感があふれている。ここから県境を越えると一気に下り坂となる、途中で日帰りのなかまを送り出しつつ、山間の温泉宿泊施設への急な昇りをかみしめながら、みんなが元気に到着した。
 この日の到着は少し予定より遅れたが、ゆったりと温泉にも入り、夕食もすこし豪華な宴会料理だ。生ビールが美味しい。夜の交流会では、翌日柏崎刈羽原発で行う東京電力への要請行動で渡す要請書の内容をみんなで確認し合い、5月の信州沖縄塾主催の辺野古座り込みツアーの記録報告も行って、認識を共有しあい学びあった。酔うほどに、これまでのピースサイクルの話やら、あべ政治についての怒りやら、日本の将来への話など盛り上がった。
 23日は前日とは一転雨降りで始まった。なまじの雨ではない。雨さえなければサイクリングには快適な温度だが、出発時点でも天候は回復しない。しばらく様子を見たが回復の兆しなし。初参加の親子は大事を取ってここから車で帰ることになった。途中で、天候の回復状況を見ながら走ることにして、車で柏崎に向って出発した。総勢8名となる。昼食の時間になって少し天候は回復したが、道路は水たまりが出来て自転車が走れる状態にならない。なかなか、自転車走行に移れない。自転車が走れずに柏崎刈羽原発まで行くのはこの27年間のピースサイクルで始めてだ。ここで、ピースサイクル新潟のメンバーと合流し一年ぶりの再会だが、やはり新潟のメンバーも雨で走行不能だったらしい。
 合流後、東京電力に対して要請行動を行った。要請はこちらの到着時間が早かった事もあったが、東電側は一般客の来ない奥の駐車場へ全員を誘導して要請行動に対応し、今年も参加者を建物の中に入れてくれなかった。今年の要請は原発の再稼働の停止と原発からの撤退を迫るもので、柏崎刈羽原発の立地場所の地盤の問題点を具体的に指摘し、かつ福島の現状に触れている。広報担当が対応したが、要請に対しての回答はいつもと変わりなく、こちらの質問に的確な回答が出来ない。「再稼働」は福島原発の処理のためという言い方がされた。参加者は怒りの声をぶつけたが、「上層部に伝えます」でしかなかった。しばしの抗議をし、次の行動に移り近くの地層の状況を見学したあと長野へと戻った。
 こうして、今年の長野ピースサイクルの夏の実走は終了したが、長野県内の自治体や市民からの広島市長、長崎市長、沖縄県知事に宛てたピースメッセージを携えて走った。参加者は若干不完全燃焼気味の感想が多かったが、新参加者は来年こそはもっと準備をして走りたいと意欲を見せていた。ここしばらく新しい参加者がなかった長野ピースサイクルにやっと新しい風が吹き始めたかも知れない。そして、最初の頃、学生として参加した面々が再び参加する兆しも少し見えている。
 あと3年で30周年となるが、実行委員会はこれから秋には活動報告集作成や秋のホリディピースサイクル、その他「あべ政治を終わらせるための行動」や様々な集会・企画へも参加をしながら、「平和への想いをつない静岡ピースサイクル 7月24日、ピースサイクル浜松・神奈川ピース・浜岡原発を考える静岡ネットワーク・人権平和浜松の仲間11人は、中部電力浜岡原子力発電所で、原発の社員3人と意見交換・話し合いを1時間15分行った。浜岡原発は、2011年3月に起きた東日本大震災以降、全ての原子炉3号機〜5号機(すでに1号機と2号機は廃炉が決定)が停止して6年が経過しているが、今後も再稼働を許さず廃炉に向けた活動を強めていく。

静岡ピースサイクル


 7月25日には、浜松市への要請行動を約1時間程行った。要請の内容は、「中部電力浜岡原子力発電所の全機廃炉を要請すること」「浜松基地への美保からの教育隊の移転に、反対の意思を表示すること」「航空自衛隊浜松基地の撤去を国に対して要請すること」「AWACSとPAC3の廃棄を市民とともに訴えること」などを申入れた。つづいて、航空自衛隊浜松基地では「浜松基地の縮小・撤去をすすめること」「AWACS、PAC3を撤去すること」「夜間飛行を中止すること」「浜松基地への美保からの教育隊の移転を中止すること」を要請した。7月26日、陸上自衛隊豊川駐屯地で、愛知ピースの仲間と要請行動を行った。

埼玉ピースサイクル

 6月21日(水)に、ミニピースで埼玉県庁、さいたま市役所、川越市役所の3か所へ要請行動を行った。当日は豪雨がくるというので中止するかどうか判断に迷うところだったが、午前中の様子見で集合することになった。
 埼玉県庁で午前9時10分より職員の出迎えにより、要請書の読み上げを行い、この後埼玉ピースネットへの県知事のメッセージを広聴広報課長より代読を受けた。
 さいたま市役所では9時40分より庁舎入口で要請を行った。市民課職員との会話で市はスポーツなどのイベントに力を入れているというが、市民からはムダ使いとの批判も出ている、と話を向けると、賛否両論あるようだと話を濁していた。丁度、雨も降りだして来たので市を後にした。午後からは川越市役所に要請行動を予定していたが雨も本降りになったので電車移動で行うことになった。
 
 7月12日には本ピースが熊谷、深谷、北本コースの3コースで行われた。この日は快晴で34度の猛暑に見舞われた。各コースとも最終地点は丸木美術館で、4時前に合流し交流会を持ち、5時前には解散となった。
 北本コースでは今年もスタンディングの人たちの参加があり、また、雨の中ミニピースにも参加があった。北本市役所では市民課に出迎えてもらい、要請行動行った。市職員との会話で、前夜、桶川上空に不明の飛行物体が現れるといった報道があったとの話題になったが、結局、その正体は発光ダイオードをつけたスカイダイビングということで、当事者は警察から注意を受けたそうだ。警察といえば北本市に到着時に一人の老人男性が近くの小学校に立ち入った理由で、警察官7人もが取り囲み名前を尋問しており、その人は「言わないよ。なにも悪いことはやってないんだから」と30分位のやりとりがあり、そのあとパトカーに乗せられた。普通はこの程度のことなら2人位の出動なのに共謀罪施行後はこのような出動態勢をとっているのではないかという疑いを持った。

 今年も事故もなく終了しまた、スタンディングの人たちはブログを持っているので、それにピースサイクルの紹介や活動の報告が掲載された。

四国ピースサイクル

 8月2日、四国ピースサイクルは北九州市を出発、航空自衛隊築城航空基地(福岡県築上町)前に到着した。ここでは、1989年4月2日に、基地を囲い込んでの「F15配備反対、人間の鎖」集会が、2800名の参加で開かれて以来、毎月2日に座り込みが行われて、その339回目の集会に合流した。当日も戦闘機の離発着が何度も繰り返されていた。
 昼からは、自転車は一路、大分県中津市にむかう。1986年4月26日にチェルノブイリ原発事故がおこったが、中津市では、その年から「平和の鐘まつり」が開催されてきて、今年の32回目のまつりに参加してきた。
 翌3日は、別府港からフェリーで、四国愛媛県の八幡浜港にわたり、それから自転車で、四国電力伊方原子力発電所を目指した。伊方原発ゲート前では、世紀をまたいで原発反対運動を継続・継承された方々とともに、「伊方原発の早期廃炉を求めます」の要請書を手渡し、四国ピースサイクルとしての30回目の抗議活動を行った。
 4日は、松山市にむけて自転車を走らせ、市電駅前で「伊方原発に反対します」のビラを配り街頭宣伝活動をおこなった。そして、フェリーで呉港へ。
 5日には、大阪ピースサイクルと合流し、広島市の原爆ドームへと向かった。ドーム前では、到着集会が開かれ、各地での取り組み報告や決意表明がなされ、盛大なうちに散会となった。


平和なくして男女平等なし、男女平等なくして平和なし

      
  シンポジウム「安全保障法制とジェンダー」 ( 共催:ジェンダー法学会、安保法制違憲訴訟・女の会 )

 8月5日、明治大学リバティタワー・ホールで、シンポ「安全保障法制とジェンダー」(共催・ジェンダー法学会、安保法制違憲訴訟・女の会)が開かれた。
シンポジウムの呼びかけは、「軍隊と戦争こそ、女性に対する差別や暴力を増長させ、男女平等を阻むものです。私たち、シンポジウムでは、『平和なくして男女平等なし、男女平等なくして平和なし』との視点から、安全保障法制問題など今後の課題を検討します」としている。
 主催者を代表して角田由紀子弁護士が開会あいさつ。安全保障法制違憲訴訟・女の会は、昨年8月に女性たちだけでジェンダーの視点から安全保障法制の違憲性を問い、国に損害賠償を求めて提訴した。戦争では女性、子どもは真っ先に犠牲にされる。ジェンダーの視点から安保法制に反対していく運動を進めていきたい。

 プログラムでは5人からの報告があった。
 はじめに中野麻美弁護士が「女性たちは安全保障法制の何を問題にして訴訟を提起したのか」と題して報告。平和なくして人権はない、軍事は家父長制の起源となったものであり、戦後武力紛争はなかったかもしれないが女性たちはDV・性暴力に苦しめられており、女性たちの戦争は終わらない。戦争は世代を超えて日常の中にあるといえる。安保法制の違憲性を鋭く暴露し、廃止していかなければならない。

 若尾典子佛教大学教授は「2015安保関連法とジェンダー」の報告をおこなった。安保法制は、米軍の展開をより有効・効果的なものにするためのものであり、それが「シームレスな平時の日米連携」であり、「抑止力」の担い手としての自衛隊であり、海外派兵だ。

 海妻径子岩手大学准教授は「日本における女性保守政治家の軍事強硬主義とジェンダーの変容」と題して報告をおこなった。
 この問題を研究するために、『諸君!』『正論』など保守系論壇誌を反吐を吐きそうな気持で読み続けるという大変な経験をすることになってしまった。2015年の安全保障関連法案は4人もの女性大臣(高市早苗、上川陽子、山谷えり子、有村治子)を含む安部内閣によって閣議決定された。このような軍事主義的・対外強硬主義的政策を推進する女性政治家が生み出される構造とはどのようなものだったのかについて述べたい。いわゆる五五年体制崩壊まで、改憲・再武装論を展開する政党は、主に自由民主党および民社党だった。敗戦直後の衆院での自民党女性議員は、紅露みつ、近藤鶴代、最上英子などで、公職追放を受けた男性近親者の代わりに出馬した者が多い。しかし彼女たちが改憲・再武装論のイデオローグとして、一般向けの商業雑誌で執筆を展開した形跡は、確認できなかった。改憲・再武装に関心を寄せる女性保守系議員は六〇年安保以前から既に存在したが、活躍領域は引揚者への福祉や母子保護などの領域に限られ、公職追放を受けた男性保守政治家の代理としての女性近親者が、たまたま改憲・再武装に関心を持っていたのであり、改憲・再武装への関心の有無で彼女たちの候補者擁立が決定されたのではなかった。「ベルリンの壁」が崩壊した89年の選挙に至るまで、改憲・再武装への関心の有無が自民党女性候補者の擁立に関連しない状況は続いたといえる。60年代末〜70年代初頭には『諸君!』『正論』などの一般向けの保守系論壇誌が創刊されたが、執筆回数の多い女性は、政治家ではない上坂冬子や曽野綾子などだった。
 しかし90年代、政界再編の中で新人候補が擁立される機会が増加し、その結果保守系政党においても、新鮮な印象を与える戦後生まれの女性候補者の起用が進んだ。1990年〜2007年に初当選した女性多選議員の中で、一般向け商業誌での軍事主義的・排外主義的およびフェミニズム・バッシング的な記事の執筆が確認できた者としては、片山さっき、山谷えり子、西川京子、永岡桂子、稲田朋美、有村治子、高市早苗、小池百合子の8名で、これらの女性政治家は、その主張の特徴から@ネオリベ排外主義系、A道徳保守・歴史修正主義系、B覇権主義系の3系統に大別できる。
 ネオリベ排外主義系は、ネオリベラリズム(新自由主義)政策の推進を根本の動機とし、それが排外主義と結びついた主張で、片山さつきなどがこれに該当する。片山は2005年のいわゆる郵政選挙で「刺客候補」として擁立され当選するが、主な関心は、金融資本主義化であった。その後の郵政造反議員の自民党復党、小泉構造改革後も銃いた景気低迷、そして格差社会化への関心が高まる中で、自らの主張をセーフティネット概念の読み替えを伴っての福祉・行政サービスの削減・民営化論へとシフトさせる。職業訓練期間中の給付が生活保護給付を上回るようにすべきとするなどセーフティネット概念を読み替え、そのセーフティネットの財源がフリーライダー(ただ乗りする人)によって使いつくされていると主張し、生活困窮者は生活保護受給の前にまず家族内で扶養されるべきと「家族の絆」を称揚し、一方で、本来、在日韓国人など外国人は生活保護を受けられないはずといい、「つけあがる韓国」への弱腰外交を批判し、「日本人の美徳を失わせる現行憲法」の改正を主張するようになった。
 道徳保守・歴史修正主義系とは、「家族の絆」や「家庭教育の強化」を根本の動機とし、それが道徳規範の担保機関としての国家を称揚するという国家主義へと結びついた主張だ。山谷えり子、西川京子などが該当する。また、日本国家を本質的に道徳的なものとして捉えようとすることに根本動機があり、いわゆる「従軍慰安婦」問題や戦争責任をめぐる教科書記述問題など、日本国家の道徳性を否定する歴史認識を非愛国的として批判し、道徳国家の軽視を家庭道徳の軽視と同一視し、「家庭教育の強化」を訴えるに至る主張で、稲田朋美などがこれに当たる。
 覇権主義系とは、国際秩序における日本国家のプレゼンスの維持拡大を根本の動機とし、そのためには海外派兵を可能にする改憲あるいは安保法制の整備が必要であると考えて、法整備の機運を醸成する共闘者として、歴史修止主義や宗教右翼の勢力とも結びつくという主張だ。高市早苗、小池百合子らがこれに該当する。
 『正論』が経団連から資金提供を受けて創刊されたことは知られているが、米国の軍事的・経済的覇権の変化、言いかえれば、米国の対ソ・対中政策の推移と、それが国際秩序における日本国家のプレゼンスに、ひいては日本財界に、どのような影響を与えるかが、保守系論壇誌の創刊時よりの主要な関心だった。冷戦終結とは、米国が第三世界のうち自国の優先度の低いところから軍隊を撤退させていく中、いかに日本がそれらの地滅での資源・利権および政治的影響力を確保し続けられるかが課題となる事態、とりわけ九〇年代後半以降、中国が自由主義経済への移行に成功し米中関係が接近すると、東アジアにおける日本のプレゼンス低下への保守系論壇の危機感は強まった。具体的には@中国の大国化を警戒して、米国における「中国封じ込め」派とのパイプを強め、彼らの要求する日本の軍備負担を金銭面のみならず武力面でも担うこと、A韓国と北朝鮮との接近を、朝鮮半島全域が中国の影響下に入ることとみなし、それを阻止するため北朝鮮の国際関係における孤立化をはること、BNATO諸国が撤退し代わりに中国が進出しつつある地域であるアフリカ、東南アジアなどへのPKO派兵等が可能になる体制を整え、「中国封じ込め」をはかること、等が主張されていく。
 以上のような保守系論壇誌での対外強硬論は、90年代半ばまではほぼ男性の外交評論家や政治学・国際関係論の大学教員が議論するものだった。すなわちあからさまな対外強硬論は「ブレイン」が論じ、仮に彼らの主張に治った政策をおこなう政治家でも、自らが論壇誌に執筆し物議を醸すことは避けるという一種の分業関係が成立していた。この保守系論壇誌での「ブレイン」のポジションに女性として初めでくい込んだのが櫻井よしこであり、女性政治家として初めて「物議を醸すことを恐れず、対外強硬論を自ら展開する政治家」との自己演出を選んだのが、高市早苗、小池百合子だった。
 保守系の言説空間において、冷戦終結後の状況において、日米同盟強化と韓国軍事政権支持という「親米親韓」から米・韓の中国接近への反発としての「反米反韓」へと保守系論壇の主流がシフトすると、歴史修正主義的・宗教右翼的な言説が増加し、性別役割規範強化の言説も増加して、性別役割規範を遵守者としての「主婦」、および彼女たちの代弁者としての道徳保守系女性保守政治家の執筆に道が開かれる。他方で韓国と北朝鮮の接近への警戒感が増加して、北朝鮮バッシング、およびポスト冷戦の国際秩序を論じることのできる新たな「国際通」執筆者へのニーズが高まり、それが覇権主義系の女性保守政治家の執筆につながったのだった
 道徳保守・歴史修正主義系の女性政治家の支持者には、近年注目を集める在特会など、いわゆる「ネトウヨ」言説に共感する都市新住民女性たちも考えられる。ただし現時点では、このような「ネトウヨ」都市新住民女性には、自分たちの間から女性政治家を安定的に多選させるだけの集票力はない。しかし、今後、「ネトウヨ」都市新住民から擁立された女性政治家が多選していくかどうかには注視しなければならない。

 「ジェンダーに基づく暴力の視点から考える安全保障法制」と題して、清末愛砂室蘭工業大学准教授が報告。安倍内閣の政策は、社会の軍事化の促進であり、そのための海外での武力行使が可能な自衛隊への変化だ。それは、人を殺す攻撃的な兵士を求める社会である。そのなかで、軍事主義と男性支配イデオロギーの浸透、家族主義の台頭が強められる。この社会は、つねに軍事攻撃下に置かれる社会となり、そこでは自衛隊による軍事攻撃と治安維持活動が日常化される。対象となった地域に住む人々の「生」を脅かすようになるのは当然視され、ジェンダー化された各種の人権侵害・暴力・差別が生まれる。自衛隊員による暴力とその影響、それが、その地域の男性支配イデオロギーと結びつき、重層的な構造が作られてしまう。安保法制が生み出すジェンダーに基づく直接的・間接的な暴力としては次のようなものがあげられるだろう。男性支配に基づく軍隊秩序、自衛隊における女性の活用の促進―「女性の活躍推進」の名の下で「男性並み」に働くことが期待される女性自衛官(人を殺すことを求められる女性自衛官)、また「女性らしさ」を求める自衛隊(広報戦略・ソフトパワー)だ。そして、自衛隊員が派兵先で地元の民衆に対してふるう暴力がある。武力攻撃による精神的な恐怖心、避難民・難民化、インフラの破壊、貧困、妊娠中・育児中の女性への影響、児童・幼児婚の促進、教育、難民キャンプでの不安定な生活による影響、家族内の暴力、夫を失った女性の生活難等数えきれない問題がおこる。家宅捜索等の治安維持活動中や軍事作戦中に起きる性暴力、捕虜となった民兵を含む敵兵やその協力者に対する性暴力を含む拷問、拘束された女性に対する社会的スティグマなどだ。また自衛隊内でのジェンダーにもとづく暴力があげられる。
 最後に戦闘行為への参加が自衛官に与える影響がある。戦闘ストレスがもたらすPTSD(心的外傷性ストレス症障害)やその家族への影響などだ。
 自衛隊による武力行使が、派遺先の人身の「生」に大きな負の影響を与えることを決して許してはならない。

 松本克美立命館大学教授は報告「安全保障法制による影響〜ジェンダーの視点からの損害論」で、安保法制は日本国憲法の基本的原理である武力放棄による平和的生存権の実現を否定しており、平和的生存権の存立基盤とした基本的人権を危殆化するものであり、違憲訴訟の各原告は様々な損害を受けていると裁判訴訟の正当性を根拠づけた。

 大脇雅子弁護士は、「弁護士・参議院議員の経験から語る戦争と安全保障法制」の特別報告をおこなった。


せんりゅう

      折り鶴の反核平和海越えて

      賞味切レかいけん右よくの串団子

      (日野原さん追悼)ひゃくごさい平和を語り非戦を教え

      ドク秘めてアベのお店の売り子かえ

      アベ阻止へ狼煙をあげて暑気払い


   2017年8月

                      ゝ 史


複眼単眼

     
改憲反対の民意の前に不安におののく安倍首相

 安倍晋三がその政治生命である改憲問題でまたうろたえ、大きく動揺した。この人物は自他ともに認める「改憲いのち」であるのに、この間、情けないことに情勢の変化にふりまわされて動揺をかさねている。安倍の方針が二転三転するのだ。それでも改憲はあきらめないというところだけは「一貫している」といえば、そういえるのだが。
 自民党改憲草案→九六条改憲→集団的自衛権の政府解釈の変更(戦争法)→二〇二〇年の九条+自衛隊容認(教育無償化、緊急事態における国会議員の任期延長、参院合区の解消なども含め)、などなどのめまぐるしい動揺の経過は論ずるまでもない。
 そして、今年の五月三日に二〇二〇年改憲を公言した後は、日程をどんどん前倒しし始め、今年八月までに自民党の改憲原案をまとめ、秋の臨時国会に提出とまで言い出したのはつい先頃だ。このテンポでいけば来年通常国会で改憲発議ということになる。
 この当時、安倍内閣の支持率は五割前後だった。安倍はこの支持率を頼りに両院で三分の二を持っている今の内に改憲を断行しようとして、大方の意表を衝く九条維持+自衛隊容認という、従来の自民党改憲草案とは全く別の改憲路線を提示し、強行しようとした。安倍一強と語られた政治状況に対する奢りだ。右派の改憲論者も右ならえした。その方針の実行のために従来から憲法審査会で野党取り込み(協調)路線をとってきた保岡興治・船田元らの自民党改憲推進本部に安倍の直接の子分を配置し、クーデターまがいの人事配置までやった。
 ところが、である。PKO日報問題・共謀罪強行・森友・加計安倍内閣・閣僚や国会議員の相次ぐ不祥事などで、内閣改造に追い込まれた八月三日、組閣発表に続いて安倍は「(改憲は)スケジュールありきではない。私は一石を投じた。あとは党主導ですすめてほしい」と自らが改憲を主導することを放棄したかのような発言をした。頼みの内閣支持率が改造前には二割台まで落ち込み、改造をしても三割台に止まったのだ。
 あれだけ改憲スケジュールを前倒ししてきたのは安倍晋三本人だった。それをいまさら「スケジュールありきではない」といわれた保岡・船田らは、秋の臨時国会に改憲原案を提出するのは見送る方向に軌道修正し始めた。岸田政調会長も「憲法改正は丁寧に議論することが大事で、そのことが国民の理解につながる」などと言う始末だ。公明党の山口代表も「来年の通常国会での改憲発議は困難だ」などと言い始めた。
 一気に改憲ムードが薄まっていくかのようだ。しかし、である。安倍はいつもの手口で「経済優先で原点回帰」(四日・読売新聞社説)という「迂回路線」に若干、軌道修正したに過ぎない。
 安倍が現有の三分の二議席という希有な条件まで放棄して、来年の総裁三選後の新たな改憲の条件確保のための年内解散総選挙に挑んでくるか、それともこのバクチをやめて衆議院任期切れの来年冬までの内に改憲発議をめざすか、安倍もまだ決めきってはいないと思う。
 安倍政権打倒の運動の高揚を通じて安倍改憲を阻止するか、安倍九条改憲阻止の運動の飛躍的な高揚によって安倍政権を打ち倒すか、私たちの前にある道はこの二つではないか。  (T)