人民新報 ・ 第1359号<統合452号(2018年3月15日)
  
                  目次

● 安倍内閣打倒へ!  森友疑惑徹底追及   対話による東アジアの平和実現

● 18春闘勝利!郵政に働く非正規社員の均等待遇と正社員化を求めて

                   郵政全国共同会議が春闘第一波行動

● 郵政非正規社員労契法20条裁判・西日本判決

                   扶養手当など認めさせる

● 日本政府は国連の人権勧告の実施を!

                   国際社会は日本の秘密保護法と表現の自由、共謀罪法をどう見ているのか

● 職場のハラスメントをなくせ! ハラスメントを包括的に定義し、立法化を


                   日本労働弁護団の「職場のいじめ・嫌がらせを防止する法律」要綱(第1次試案)

● 米朝戦争を煽る安倍政権  東アジア民衆の連帯した反戦行動を

● 袴田巌さんの再審を  検察は即時抗告を取り下げろ

● 2・16けんり総行動  すべての争議解決をめざし団結して闘おう

● 都教委10・23通達撤回!   「日の丸・君が代強制反対」の闘いを広げていこう

● 米朝戦争をさせない! 東アジアに非核・平和の大きな輪をつくり出そう

                   戦争させない・9粂壊すな!総がかり行動実行委員会が集会

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  戦争反対、北東アジアの平和をめざす日韓の市民運動






森友疑惑徹底追及

        安倍内閣打倒へ!

                 対話による東アジアの平和実現

対話・平和の流れの加速を

 朝鮮半島をめぐる緊張した情勢が大きく緩和する動きが出てきた。ピョンチャン・オリンピックに際しての南北朝鮮当局者の対話はこれまでの局面を大きく変えた。4月には南北首脳会談が板門店で開催されることになった。
 そして、3月8日にはトランプ米大統領が、金正恩朝鮮労働党委員長と5月までに会談する意向を表明した。韓国大統領特使の報告のなかで、金委員長の非核化と核・ミサイル実験の自制の姿勢について説明を受けたためという。
 いずれにしても核戦争を含めた東アジアの破局的事態から脱出のための一歩がふみだされた。この喜ぶべき状況を生かすために周辺諸国はいっそうの努力をしなければならない。
 しかし東アジアに緊張を高め、それを軍拡と改憲の口実にしようとする日本政府は、依然としてこの情勢変化を否定的に評価し、逆流を作り出そうとしている。 しかし安倍晋三首相は、トランプとの電話「協議」でこの事態に対応せざるをえなくなった。安倍によると、トランプとの話では、「北朝鮮の変化は日米韓、国際社会が高度な圧力をかけ続けてきた成果だ」として「核・ミサイルの完全検証可能かつ不可逆的な形での放棄に向けて北朝鮮が具体的な行動をとるまで、最大限の圧力をかけていく。この日米の確固たる立場は決して揺らぐことはない。日米はこれまでも、そしてこれからも100%ともにある。その点でも大統領と一致した。予算成立後、4月中にも訪米し、日米首脳会談を行いたい。そのことでも合意した」という。「100%ともにある」関係であるはずの安倍は、トランプにはしごを外された無様な姿を示すことになった。トランプの「アメリカ・ファースト」政策はつねにこうしたことを結果するのだ。振り返って見れば1971年、安倍の叔父の佐藤栄作が首相だったとき、米国の先兵として、反中国政策に奔走していたのに、当時のニクソン米大統領は、日本の頭越しに、米中国交関係の正常化に向けた声明を出したのだった。かのニクソン・ショックと同様のトランプ・ショックとなるかもしれない。大恥をかいた格好の安倍だが、トランプの「アメリカ・ファースト」に「ミー・ツー」と従わざるを得ない立場に自ら進んでおいたのは自業自得だ。
 だが、米朝関係の前途には今後いくつもの曲折がある。安倍だけでなく、米政権内のタカ派、北朝鮮における軍事優先主義、その他の要因、また偶発的な事件の発生によって進み始めた事態が、中断される可能性が低いとは言えない。
 それだからこそ、北朝鮮の核開発と米国の北朝鮮敵視・転覆政策をやめさせ、そして現在まで休戦状態のままで継続している朝鮮戦争をはっきりと終結させるために平和条約を締結するための交渉を本格的に開始させなければならない。日本も日朝国交正常化のために積極的に動き出さなければならない。日本は、朝鮮半島の核問題をめぐる六者協議、そして「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立すること」を目指したピョンヤン宣言(2002年9月)の当事国でもあり、率先して、朝鮮危機の解決に向けて力をつくす義務を負っている。日本のさまざまな運動は、東アジアの民衆とともに、反戦・平和のうねりをつくりだしていこう。

疑惑に大揺れの内閣

 安倍は、9条を中心に改憲の早期実現を狙っている。だが、ここにきて、安倍の悪政のほころびがめだってきた。
 経済界の強い要求による「世界で一番企業が活躍しやすい国」政策、これは労働者をいっそう搾取するための法制・体制づくりだ。しかし、その柱となる「裁量労働制」「高度プロフェッショナル制度」も法案の基礎となる統計資料が欺瞞的に作られたものであることが明らかになり、一歩後退した。森友学園問題の財務省資料改ざん問題に絡んで、佐川国税庁長官の辞任、担当役人の「自殺」があり、日々、新たな事実が暴露されている。ここでは与党内からも政府への批判が高まってきた。

安倍内閣を攻めたてよう

 いま安倍内閣は、内外ともに非常に困難な局面を迎えようとしている。 安倍9条改憲阻止の闘いの前進に、有利な条件が生まれている。改憲手続法の根本的な欠陥についても注目されはじめた。改憲手続法の抜本的再検討なしに、国民投票が行われることを許してはならない。そして、いま、3000万署名(「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」)が全国各地で力強く展開されているが、これらを軸に全国的な改憲阻止の世論を起こそう。
 安倍内閣を追い詰め、打倒するために奮闘しよう。


18春闘勝利!郵政に働く非正規社員の均等待遇と正社員化を求めて

                   
 郵政全国共同会議が春闘第一波行動

 3月5日、「郵政リストラに反対し、労働運動の発展をめざす全国共同会議」が今春闘第一波全国統一行動として、「18春闘勝利!郵政に働く非正規社員の均等待遇と正社員化を求める」日本郵政本社前集会を開き、組合員や共闘など200名が結集した。
 集会では、郵政ユニオン日巻直映委員長が春闘勝利向けて全国で闘いを進めていこうと主催者発言。つづいて小田川義和全労連議長、金澤壽全労協議長がともに闘おうとあいさつ。
 労働契約法20条西日本裁判の原告のくぬぎ恵之さんが勝利報告。地位確認の棄却については残念だったが、手当を認めさせることができた。非正規社員は、けがをしても有給休暇をつかって休みを取らざるを得ないし、嫌がらせをしばしば受けたりする。メンタルで長期に休まざるを得ない人もいる。このような労働条件の中で職場をやめっていった仲間も多い。民営化して以降、非正規にとっていいことは何もない。非正規でも正規と仕事への誇り、やりがいはおなじだ。2014年に提訴して闘ってきた。判決は100点ではないが、いっていの風穴を開けることができて、うれしい思いだ。会社には格差是正に向けて動き出すよう勇気ある決断を求める。勝利するまで闘う。
 郵政非正規社員の「定年制」無効裁判原告の丹羽良子さんの発言、そして非正規雇用社員の訴えとして、郵政ユニオンの東京、近畿、関東、東海の各地本から行われた。
 日本郵政本社に対するシュプレヒコールを叩きつけ、集会アピールを確認した。 アピールは「私たちは労契法20条裁判において、組織を超え、正規・非正規の隔たりなく、職場労働者に呼び掛け運動を進めてきた。郵政に限らず、いま全国で働く非正規労働者は2千万人を超えるに至った。そして彼らの格差と貧困の拡大に対する怨瑳の声は、大きな流れとなって世論を動かし、政府も『働き方改革実行計画』において『同一労働同一賃金』など非正規雇用の処遇改善を言わざるを得なくなっている。この大きな流れをさらに確実なものとするために、私たちは、控訴審においてさらに大きな勝利を勝ち取ろう。そして職場で、地域で共同を広げ、非正規労働者の均等待遇と正社員化実現への道を進もう。私たちは今日、この場に集い、日本郵政グループ各社に対し、事業のかけがえのない財産である非正規社員の労働条件の抜本的な改善を求める。そしてこの18春闘において、すべての産業における全国の仲間と連帯し、格差是正と反貧困の流れを、もっともっと大きなうねりにしていくことを決意する」と呼びかけている。
 最後に郵政倉敷労働組合の川上幸治委員長が閉会の挨拶をおこなった。

 本社前集会の後、衆議院第二議員会館で院内集会が行われ、全国から集まった非正規労働者が怒りの発言がつづき、また65歳非正規雇止め裁判、西日本20条裁判について弁護団からの報告が行われた。

 郵政産業労働者ユニオンは、この春闘で、賃金引き上げ(月給制=月額2300円、時給制基本給=1200円、時給制=時間給200円)、一時金(時給制=平均賃金の4・4月、月給制=4・4月、正社員=4・4月)、非正規社員の処遇改善(均等待遇要求=制度・各種手当、正社員化=希望する非正規社員はすべて正社員とすること)、要員不足の解消・大幅増員などを要求して闘いに入った。


郵政非正規社員労契法20条裁判・西日本判決

             扶養手当など認めさせる

    
 2月21日、大阪地裁は、郵政非正規社員の格差是正をもとめる労働契約法二〇条裁判(2014年6月30日提訴、原告8名)で、扶養手当や住居手当、年末年始勤務などの格差を違法と認め、約三百万円の支払いを命じた。この判決では、扶養手当を新たに認めるとともに、年末年始勤務と住居手当は東京地裁判決での六〜八割の支払いから全額支給へ範囲を拡大した。しかし、東京地裁で認めた病気休暇、夏期冬期休暇の休暇については判断を避けたものとなった。郵政産業労働者ユニオンと労働契約法20条郵政西日本裁判原告団の「労働契約法20条郵政西日本裁判判決に当たっての声明」(2月21日)は、「昨年の9月14日東京地裁判決を上回る勝利判決といえ、今回の判決は郵政のみならず、日本の非正規雇用労働者の未来に希望を灯す画期的な判決となった。…今日まで労契法20条を活用した裁判で判決が出されているが、一部の判決を除き立法趣旨や施行通達を全く無視する不当判決が繰り返されてきた。昨年東京地裁の9・14判決は、そういった流れを断ち切り、『格差の壁』をうちやぶるものであった。現在、東京高裁で控訴審がたたかわれており、われわれも引き続いて今回違法判断が認められなかった他の手当等の獲得に向けさらにたたかいを継続していく。また、同時に現在18春闘が闘われている最中でもあり、日本郵便株式会社は、本日の判決を真摯に受け止め非正規社員と正社員との労働条件の格差を是正するために、直ちに団体交渉の席につき交渉を行うことを強く求めるものである」と述べている。


日本政府は国連の人権勧告の実施を!

          国際社会は日本の秘密保護法と表現の自由、共謀罪法をどう見ているのか


 昨年、国連人権理事会が日本政府に218項目の勧告をだし、今月の国連人権理事会会合で日本政府はその勧告を受け入れるか否かの回答を求められている。安倍政権の戦争法と一体の共謀罪、秘密保護法などが人権侵害の疑いで国連特別報告者などからの調査を受けている。共謀罪廃止に向けた運動を一段と強める時だ。

 3月6日、国会前で「共謀罪法廃止!秘密保護法廃止!12・6 4・6を忘れない6日行動」(共謀罪NO!実行委員会、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会の共催)の行動が行われた。
 野党議員の挨拶や市民団体の発言を受け、国会に向けて「共謀罪は絶対廃止」「思想の自由を抑圧するな」「市民監視の法律いらない」「言論封じの共謀罪いらない」「国連の勧告を実施せよ」「公文書管理法改正しよう」「情報公開法改正しよう」などのシュプレヒコールをあげた。

 ひきついでの院内集会では、小川隆太郎弁護士が「日本政府は国連の人権勧告の実施を!国際社会は日本の秘密保護法と表現の自由、共謀罪法をどう見ているのか」について報告した。国連の人権保障メカニズムは、国連憲章第1条の目的で「経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語または宗教による差別なく、すべての者のために人権及び昼参酌頁虫を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成ずること」としている。そして、人権保障を実効化するために、国連憲章に基づく機関として国連人権理事会、条約に基づく機関として国際人権条約の監視機関がある。国連人権理事会は、47カ国により構成される。理事国は、国連総会における秘密投票で、国連加盟国の絶対過半数を得た国から選ばれる。地理的なバランスを考慮して、地域ごとの枠が存在する。理事国の任期は3年。拠点はスイスのジュネーブに置かれている。特別手続として、特定の国家における大規模な人権侵害に対応する手続きと特定の種類の大規模人権害をテーマとして行われる手続の2種類がある。「特別報告者」などの個人または「作業部会」という集団が、人権侵害を調査し、個々のケースや緊急事態に介入する。人権侵害の調査を行うに際して、調査対象となる国をその同意を得て訪問することができるし、特別手続に対する個人等からの通報も可能とされており、そのような通報を受けた場合、通報対象国に対して説明を求めることもある。最高レベルで政府に対して仲裁を求める「緊急行動手続」を実施することができる。これまで日本を訪れた特別報告者は3人で、そのうち、「表現の自由の特別報告者がデイビット・ケイ氏(メディアの独立、秘密保護法)で昨年5月に報告書を提出した。「プライバシーの権利特別報告者」がジョセフ・カナタッチ氏で昨年5月に公開書簡(共謀罪法案)を出している。
 秘密保護法についていえば、国連からの勧告では、自由権規約委員会からの勧告と、デイビット・ケイ氏からの勧告がある。ケイ氏の勧告は、特定秘密保護法について「開示しても国家の安全を損なうことにつながらなければ、情報を秘密指定しないよう引き続き努力し、警戒するよう求める」とともに、「ジャーナリストの報道活動を萎縮しないよう法改正を求める。…ジャーナリストや政府職員以外でも、国家の安全を脅かすことのない公の利益のための情報を開示した者が、処罰を受けずに済むことを保障するよう、政府が法律に例外規定をもうけることを提案する」としている。
昨年の11月14日に国連人権委員会のUPR(普遍的・定期的レビュー)手続きにおける勧告が出て、この3月16日に人権理事会報告が採択されるが、日本政府が、これらの勧告を受け容れるかどうかに国際的な注目が集まっている。当然にも受け容れた勧告は、政府としてのフォローアップが義務づけられることとなる。
 次に共謀罪についての国連からの懸念表明では、カナタチ氏から日本政府宛書簡が送付されている。それは、共謀罪(テロ等準備罪)に関する法案は、「広範な適用がされる可能性があることから、現状で、また他の法律と組み合わせてプライバシーに関する権利およびその他の基本的な国民の自由の行使に影響を及ぼすという深刻な懸念が示されています」として深刻な懸念を表明するもので、国連のウェブページで公表している。しかし、日本政府は国連の疑問に応えず、法案の審議を止めずに、強引に共謀罪法を成立させた。日本政府は、これまで共謀罪法案を制定する根拠として国運越境組織犯罪防止条約の批准のためとしてきた。だが、同じ国連の人権理事会が選任した専門家から、人権高等弁務官事務所を介して、国会審議中の法案について、疑問が提起され、見直しが促されたことは極めて重要である。なお、2019年に第7回政府報告書審査が予定されている。そのための秘密保護法、報道の自由、共謀罪に関してなどの質問事項が政府に提示されている。
 最後に次のことを強調したい。国際人権法は世界中の市民による人権のための闘いを反映した生きた法規範であり、その問題状況、規範の内容は、我々が直面するさまざまな人権課題の解決に大きな示唆を与えてくれるものだ。条約機関と人権理事会と特別報告者の複合的なシステムが有機的に活動しているのであり、その解釈基準、国際人権機関の先例、特別報告者の報告と勧告などには法的な拘束力はないが、有効な政府への働きかけと市民の支持を伴えば、その内容が実現する可能性がある。国際人権法を武器として秘密保護法、表現の自由、共謀罪などのさまざまな人権課題の解決にチャレンジしていくことができるということだ。


職場のハラスメントをなくせ!

       
 ハラスメントを包括的に定義し、立法化を

 3月2日、参議院議員会館で、いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター、職場のモラル・ハラスメントをなくす会、全国労働安全衛生センター連絡会のよびかけで「職場のハラスメント防止の法制化を!〜誰もがハラスメントを受けずに安心して働ける職場へ〜」が開かれた。
 全国労働安全衛生センター連絡会の古谷杉郎さんが主催者挨拶。職場でのさまざまないじめ・嫌がらせが深刻化している。厚生労働省では「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」が開かれ、対応策が例示されているが、企業側からはガイドラインの制定程度が望ましいという意見だ。しかし、効果的な防止のためには「法制化」は不可欠だ。職場のハラスメント防止法を制定し、誰もがハラスメントを受けずに安心して働ける職場にしていかなければならない。
 厚生労働省からは、上田圭一郎・雇用環境・均等局雇用機会均等課長補佐が報告。職場のいじめ・嫌がらせが増加傾向にある状況を踏まえ、労使、有識者及び政府による検討を行うため、厚生労働省に円卓会議が設置され、ワーキンググループが提言をまとめた。そこでは、「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」とし、職場のパワーハラスメントの6つの行為類型を、@身体的な攻撃(暴行・傷害)、A精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)、B人間関係からの切り離し(隔離・仲間はずし・無視)、C過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制等)、D過小な要求(合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること等)、E個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)とした。そして、「職場のパワーハラスメントをなくすための7つの取組例」として、トップのメッセージ、教育する、ルールを決める、周知する、実態を把握する、相談や解決の場を設置する、再発を防止する、をあげた。この提言において、国や労使の団体にはこの提言を周知し、対策が行われるように支援することを期待する旨が示された。職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた施策として、国民及び労使双方への周知広報(対策導入マニュアル、ポスター、パンフレット等の資料の配布・周知、ポータルサイト「あかるい職場応援団」などを活用した関連情報の周知、メンタルヘルス対策)、労使の具体的な取組の促進(対策導入マニュアルを活用した企業向けセミナーの開催、企業等にパワーハラスメント対策の指導をできる人材の養成)などの取り組みを行っている。
 つづいて、大和田敢太・滋賀大学名誉教授が、「今こそ、ハラスメント規制立法の制定を〜ハラスメント絶滅なくして、『働き方改革』は不可能」と題して講演をおこなった。ハラスメント対策は立法化が世界の常識だ。ハラスメントは、構造的な要因であり、経営的課題であり、社会と政府が対応する必要がある。日本の場合には、セクハラ、パワハラなどさまざまに個別に分断されているが、ハラスメントは重複するものであり、ハラスメントを総体としてとらえ包括的に定義しなければならない。なぜ、日本で立法化が必要なのかといえば、大企業で蔓延しており、個別的事例ではないことはあきらかだ。ハラスメントの定義としては「精神的・肉体的な影響を与える言動(嫌がらせ行為)や措置や業務(長時間労働・過重労働)によって、人格や尊厳を侵害し、労働条件を劣悪化しあるいは労働環境を毀損する目的・効果を有する行為や事実」とすべきだ。そして、意図は不必要で結果重視の観点でなければならない。要件を細分化・厳しくしないこと、現在のハラスメントの事実を被害者が主張することから、加害者・使用者が反証責任を持つようにすべきである。
 過労死はハラスメントによっておこるのであり、防止法の制定は、働き方改革や自殺対策に不可欠である。被害者を援助する社会的合意と制度が必要だ。
 報告のはじめに、日本労働弁護団事務局次長の新村響子弁護士が、できたばかりの日本労働弁護団による「職場のいじめ・嫌がらせを防止する法律」要綱(第1次試案)(別掲)の説明をおこなった。
 つづいて、よこはまシティユニオン、なごやふれあいユニオン、サン・チャレンジ(ステーキのくいしんぼ)パワハラ自死遺族、全統一労組、東京交通労組、パープルユニオン、NPOアカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク、LGBT法連合会、NPO多民族共生人権教育センターなどからの発言があった。

日本労働弁護団の「職場のいじめ・嫌がらせを防止する法律」要綱(第1次試案)

 1(定義)この法律で、「職場のいじめ・嫌がらせ」とは、「業務の適正な範囲を超えて、当該業務に従事する労働者に対し、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を言う。
 2(権利規定)すべての労働者は、職場のいじめ・嫌がらせのない労働環境で働く権利を有する。
 3 (行為禁止規定)事業主、労働者および労働の遂行の際に労働者と接触する者は、職場のいじめ・嫌がらせにあたる以下の行為を行ってはならない。
   @暴行、威圧的態度等の言動(身体的な攻撃)
   A暴言、脅迫、人格・名誉を棄損する言動(精神的な攻撃)
   B無視、切り離し目的の情報不提供等の言動(人間関係からの切り離し)
   C事実上遂行不可能な要求、違法な要求などの言動(過大な要求)
   D仕事を与えないこと、能力・経験に比して程度の低い仕事を命じる等の言動(過小な要求)
   E私的なことへの介入・管理等の言動(個の侵害)
   F セクシュアル・ハラスメント
   G その他職場のいじめ・嫌がらせに該当する行為
 4 (措置義務規定)事業主は、職場のいじめ・嫌がらせにより、その雇用する労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は労働者の就業環境が害されることのないよう、職場のいじめ・嫌がらせを予防し、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。


米朝戦争を煽る安倍政権

        東アジア民衆の連帯した反戦行動を


 2月24日、文京区民センターで、「3・1朝鮮独立運動99周年 止めよう!安倍政権が煽る米朝戦争の危機2・24集会」が開かれた。主催は、日韓民衆連帯全国ネットワーク、ピースボート、許すな!憲法改悪・市民連絡会、在日韓国民主統一連合などの呼びかけによる実行委員会。
 初めに日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表の渡辺健樹さんが主催者挨拶。安倍はトランプの政策に「100%一致」を繰り返している。それは朝鮮への圧力の強化であり、戦争の危険を増大させている。3月1日は、日本の植民地支配からの独立を求め朝鮮半島全土で人びとが立ち上がった1919年の3・1独立運動の日である。いま朝鮮半島の軍事緊張は高まり、それに安倍は便乗して、戦争熱をあおり、改憲の口実にしようとしている。朝鮮総連への銃撃テロが起こったが断じて許してはならない。朝鮮半島の緊張状態を平和の方向に転換させるためには、米国が大規模軍事演習を停止し、朝鮮も核・ミサイル開発を停止することが必要であり、対話による問題の解決が求められている。そのためにも日本と韓国民衆は連帯して、朝鮮半島の非核化を目指していかなければならない。
 講演は、東京新聞論説兼編集委員の半田滋さんの「緊迫する朝鮮半島情勢−日米朝があおる危機の正体」。2013年の「防衛白書」には「他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持しない」として「たとえば、大陸間弾道弾、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母の保有は許されない」という記述があったが、この3種の例示は2014年以降の白書からは消えた。また2019年度防衛予算案には「敵基地攻撃」が可能な巡航ミサイルと島嶼防衛用高速滑空弾が登場し、護衛艦「いずも」の空母化も浮上した。自衛隊は世界でも先端の装備品で身を固めている。防衛費は、第二次安倍政権以降プラスに転じ、来年度を含めれば6年連続の増加で、5兆円を突破する。そしてこの上に、安倍首相は憲法9条に3項に自衛隊を書き込むという。安倍政権は戦前のような国家主義国家への回帰、平和や国民の幸福を目指すのではなく、自分の空想する国家、国家のために国民が生命をささげるような独裁国家を目指しているようだ。
 韓国ゲストからの発言では、韓国進歩連帯常任代表のハン・チュンモクさんが「2018年―激変する情勢と韓国民衆運動の方向」について報告。朝鮮半島の情勢は大きく変化し、米朝対決の終結に向けた最終段階に入るだろう。北は、米本土へ攻撃可能な核戦力の保有を宣言し、人民経済の自立性を強調するとともに、ピョンチャン五輪ヘの参加発表し、選手団、応接団、芸術団を派遣した。こうして、米朝関係の主導権をしっかり握ると同時に、南北関係発展にも攻勢をかけるようだ。南の文在寅政権も、北のピョンチャン五輪参加を機に、南北関係の発展と朝鮮半島の平和実現で積極的な姿勢に変わってきている。文在寅政府はキャンドル革命を実現した市民を信じて民族協力を優先させる政策の転換をはかり、南北関係の発展と朝鮮半島の平和実現の意志を高めるべきである。また、市民の大衆的な平和統一運動が求められている。ピョンチャン五輪を機に、南北関係が開かれており、民族共助で米国の圧力をはね返し、新たな平和の局面を開くべきときだ。主体的力量を強めるために、進歩運動は、自主統一運動の団結を強めることから始め、労働者、農民など基層民衆を中心に、各界各層を広範に包括する大きな連帯連合体を作っていこう。そして基層民衆に深く根差した進歩政党を強化する、地域の平和統一運動の強化にむけて、市郡区レベルで参加と運動を大衆的に展開し、その核心となる平和統一運動の活動家・幹部力量の養成と教育に拍車をかけていかなければならない。
 沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、許すな!憲法改悪・市民連絡会、「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW RAC)、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会からの発言があり、最後に集会アピールが採択された。


袴田巌さんの再審を

       検察は即時抗告を取り下げろ

   
 「強盗殺人事件」で死刑が確定した元プロボクサーの袴田巌さん(81歳)の再審を認めるかどうかについて、東京高等裁判所は、この春にも、検察の即時抗告を棄却するかどうかの司法判断を出す予定だ。
 この袴田事件とよばれるものは、1966年6月、静岡県清水市(現静岡市清水区)で、味噌会社専務一家4人が殺され放火された事件で、味噌会社の従業員だった袴田巌さんが逮捕され、拷問をともなう連日の厳しい取り調べにより、無理やり「自白」させられた。しかし公判では一貫して無実を訴えたにもかかわらず、静岡地裁で死刑判決(1968年)、最高裁で死刑が確定(1980年)した。そもそも地裁は、自白は本人の意思に基づいていないとして、ほとんどの自白調書を証拠として認めなかったが、工場のみそタンクから見つかったシャツやズボンなどを証拠品―当時の着衣だと認定して死刑判決となった。だが第2次再審請求で、2014年3月、「証拠とされた衣類」などが、捜査機関によってねつ造された疑いのある証拠の疑いがあるとして、袴田さんの釈放と再審開始の決定をくだした。袴田さんは東京拘置所から獄中48年目にして釈放された。しかし、検察が即時抗告したため、いまだに再審は開始されていない。

 2月24日、YMCAアジア青少年センター・ホールで「袴田巌さんの再審を開始せよ!全国集会」が開かれた。
 弁護団報告は西嶋勝彦・袴田事件再審弁護団長。有罪判決の中核をなす衣類については、付着する血痕のDNA鑑定と派遣時の色に関する新証拠で説得力ある判断を地裁はおこなった。また捜査機関によるねつ造をうかがわせるとも明言している。しかし、検察側はDNA鑑定(選択的抽出法による袴田さんとは異なるDNAの検出)について根拠のない攻撃を繰り返し、また衣類相互の矛盾や袴田さんの体形に合わないなどの指摘に対して「捜査機関がそのような首尾一貫したねつ造をするのは不自然」だと開き直っている。また検察が「無い」と言っていた袴田さんの取調べ録音テープが警察の倉庫で「発見」されたが、これは調べの異常さをしめしており、自白調書には証拠能力はない。検察官の即時抗告の無謀さと不当さはあきらかだ。一刻も早い再審開始の決定と再審公判への移行が求められている。
 つづいて、「特別抗告を許さない」リレートークでは、ジャーナリストの江川紹子さん、活動家の雨宮処凛さんや冤罪事件の当事者やボクシング関係者、そして狭山差別裁判を闘う石川一雄さんらが発言した。
 そして、お姉さんの秀子さんに連れられた袴田巌さんが登壇しあいさつした。
 映画「獄友」予告編の上映。これは冤罪をテーマに作品を手がけてきた金聖雄監督が、人生の多くの時間を刑務所の中で過ごし、互いを「獄友(ごくとも)」と呼び合う冤罪被害者たちにカメラを向けたドキュメンタリーで、「狭山事件」の石川一雄さん、「袴田事件」の袴田巌さんのほか、「布川事件」の桜井昌司さんと杉山卓男さん、「足利事件」の菅家利和さんの5人が、獄中での出来事や出所後のそれぞれの人生を改めて語り、司法の闇や人間の尊厳とは何かを描いたものだ。「獄友」の金聖雄監督と冤罪で苦しむ人たちを歌を通じて応援する「冤罪音楽プロジェクト イノセンス」の小室等さんによるトークと小室さんの歌があった。
 集会アピールでは「裁判所には、今回の決定が本当の最終ラウンドとなるよう、検察に特別抗告を許す一分の隙も与えずに即時抗告を棄却するよう求めます。検察には、今からでも即時抗告を取り下げること、そして即時抗告が棄却されたなら特別抗告を断念し、連やかに再審公判の開始を受け入れることを求めます。私たちは、再審無罪を勝ち取るまで、袴田巌さんやご家族と伴走し続けることを決意し、司法の正義を求めるすべての人々にこのアピールヘの賛同を呼びかけます。『日本では、犯行着衣のズボンが履けなくても死刑になってしまうんだよ』と教えなくて済む司法を、次世代の子どもたちに残そうではありませんか」と再審開始への運動を強めていくことが確認された。


2・16けんり総行動

    
 すべての争議解決をめざし団結して闘おう

 2月16日、「働く権利 働く者の権利 人間としての権利」をかかげて、第168回けんり総行動が闘われた。
 日本郵政(65才雇止め解雇―郵政非正規社員の「定年制」無効裁判を支える会)から、昼の春闘経団連への要請行動など経て、最後のトヨタ東京本社(解雇・団交拒否―全造船関東地協・フィリピントヨタ労組、フィリピントヨタ労組を支援する会)までの行動が展開された。
 行動の中では、破産・全員解雇を発端として5年余にわたった「フジビ闘争」が和解解決したこと、会社側の巨額なスラップ訴訟最高裁判決は実質的にほごとなり、親会社に解決責任を認めさせたことが報告された。


都教委10・23通達撤回!

      
 「日の丸・君が代強制反対」の闘いを広げていこう

 東京都教育委員会の10・23通達「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」は、「国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり、教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われることを、教職員に周知すること」とするもので、都教委は、これまで教員に対して大量の過酷な処分を行ってきた。

 2月25日、「日の丸・君が代」強制反対!10・23通達撒回!総決起集会(主催・都教委包囲首都圏ネットワーク)がひらかれた。
 集会では、評論家の小倉利丸さんが、「『明治150年』と改憲攻撃〜『日の丸・君が代』強制反対の闘いの意義〜」と題して講演。学校現場でのコンピュータ教育では、ほとんどが「ウインドウズ」のソフトを使っているが、マイクロソフト社日本法人は「働き方改革」に全面的に賛同している。ここにもあらわれているように多国籍企業のグローバリゼーションと安倍政権の極右ナショナリズムが結びついている状況の中に置かれている。明治150年をめぐる動きは、いまの憲法を壊すものだと言われるが、戦後は明治から継承した面が多い。グローバリゼーションのなかで各国でナショナリズムを煽るうごきがある。日本でも自民族の優秀性と他民族への蔑視の言動が多くなっている。国民という枠で主権の主体を作る国民国家、国民主義によるものだ。オリンピックも日の丸・君が代とナショナリズムの高揚させる場となっている。
 つづいて闘いの現場からの報告。朝鮮学校の無償化排除との闘い、都立高校の「君が代」強制処分との闘い、河原井・根津さんの「君が代」不起立処分と裁判闘争、道徳教育の教科化と闘う、PCログオンでの静脈認証反対の闘い、オリンピック・パラリンピック・防災訓練への反対の取り組み、共謀罪適用の現実と廃止の闘いや各地での教員の闘いが紹介された。
 今後の取り組みとしては、卒業式への「ご卒業おめでとうございます。在校生・在校生、教職員、保護者の皆さん。誰にも立たない、歌わない自由があります」というビラ配布などの取り組みなどが提起された。
 集会アピールは次のように呼びかけた。「教職員・市民・労働者と子どもたちによる『日の丸・君が代』強制との闘いは、国家権力の思想の根幹を揺るがす内容を有していました。すなわち、戦争と改憲、そして天皇制―国家権力の本質を揺るがす闘いであったのではないのか。であるからこその、大弾圧だったのではないでしょうか。教育現場において、自由と『民主主義』を求める闘いが国家権力の本質に肉迫していったのではないか。私たちは、あらためて、この闘いが切り開いた闘いの意義を再確認し、次の闘いに向けて前進していこうではありませんか。戦争と改憲を許してはなりません。私たちは、天皇代替わりを迎える時代における『日の丸・君が代』強制反対の闘いを進めていきます。『明治150年』と改憲攻撃―『日の丸・君が代』強制反対の闘いを一体的に進めていきます。私たちは、2018年における『日の丸・君が代』強制との闘いを、反戦・反改憲、そして教育勅語復活阻止として闘います。教職員・労働者・市民・学生の共同した闘いで今春期の攻防を闘いぬきましょう!」。


米朝戦争をさせない! 東アジアに非核・平和の大きな輪をつくり出そう

         戦争させない・9粂壊すな!総がかり行動実行委員会が集会


 3月6日、日本教育会館大ホールで、「戦争させない 東アジアに非核・平和を!集会」(主催―戦争させない・9粂壊すな!総がかり行動実行委員会、協賛―「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会)が開かれた。
 主催者挨拶で内田雅敏弁護士は、平和の問題、憲法の問題でのいまの課題とは具体的に沖縄の現状を注視し、新軍事基地を阻止することだ、と述べた。
 和田春樹東京大学名誉教授は、「平昌オリンピックと米朝戦争の危険」と題して講演し、最後に、日本のなすべきこととして、次の四点を指摘した。第一に、安倍首相のトランプ協力の姿勢を問いただすことがなされなければならない。第二に、2020年の束京オリンピックと米朝戦争の関係について、政府と国民は考えなければならない。オリンピックをやりたければ、2020年まで戦争をしないでほしいと米国政府に頼むべきではないのか。第三に、平和憲法を守る人は憲法9条1項をかかげて米朝戦争を防ぐための平和外交を要求すべきだ。米国と一緒に北朝鮮を軍事力行使で威嚇するのは9条1項違反である。そうしながら、9条1、2項に3項をつける憲法改正案を推進するのは国民を二重に愚弄する。第四に、日本には、日本にしかない対話のチャンネルがある。日朝国交正常化である。
 軍事評論家の前田哲男さんは、米朝対抗と日本の軍備増強が進むなかで、それに抗して「護憲・9条を守れ」の世論を高め、それを背景に野党共闘を強めて、国会での徹底審議を通じて改憲発議を封止しようと強調した。
 基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表の高里鈴代さんは、沖縄は国の方針に立ち向かっている、沖縄問題の本質をアメリカ市民に、国際社会にもっとしらせていきたい、と述べた。
 つづくアピールでは、イージスアショア配備反対する地元・秋田、止めよう!辺野古埋立て国会包囲実委、3000万人署名の呼びかけが行われた。


せ ん り ゅ う

   この冬はよく出ましたねモリとカケ

      アベ宅へ道すじかくしサガワびん

   裁量で国会なんて自在だぜ

      三権も統治行為で単権に

2018年3月 
                       ゝ 史


複眼単眼

      
戦争反対、北東アジアの平和をめざす日韓の市民運動

 3月6日、北朝鮮訪問から帰国した韓国代表団は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談の結果、4月末、板門店の韓国側施設で、南北首脳会談を開催することで合意したと発表した。
 韓国の発表では、北朝鮮は朝鮮半島の非核化の意志と、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され、体制の安定が保障されれば、核を保有する理由はないという立場を表明した。
 また、北朝鮮は非核化問題と米朝関係の正常化に向け、米国と対話の用意があり、対話が継続している間は、核実験や弾道ミサイル発射を再開しないと表明した。
 この南北朝鮮の合意は画期的なものであり、この間の朝鮮半島の軍事的緊張と戦争の危機を平和的に打開していくための極めて重要な一歩だ。
 米国のトランプ政権は硬軟両面作戦ながらも、この南北会談を積極的に評価し、米朝対話を検討していると報道されている。米国政府は韓国文政権が切り開いたこの対話の流れを拒むことはできないだろう。
 しかしながら、韓国平昌での冬季五輪・パラリンピックの開会式に周囲の声に促されてしぶしぶ出席せざるをえなかった安倍晋三首相は、この平和への動きに対してもこころよからずで、7日、菅官房長官は「北朝鮮との過去の対話が非核化につながらなかった教訓を踏まえるべきだ」などといい、小野寺防衛相は「あらゆる方法で圧力を最大限にかけていく姿勢に変わりはない」などとコメントするありさまだ。
もともと安倍首相は韓国で2月9日に開かれた文在寅大統領との会談で、「米韓合同軍事演習を(さらに)延期する段階ではない。予定通り実施することが重要だ」などと発言をした。
米韓合同軍事演習は韓国と米国が北朝鮮の核実験やミサイル開発を口実に行ってきた威嚇のための一大軍事演習だが、これは韓国と米国が当事者である問題だ。これに対して戦争と武力による威嚇をしないという憲法第9条をもつ日本の首相が、他国に威嚇のための軍事演習を要求したことは、あきらかな憲法違反であり、韓国にたいするあからさまな主権の侵害・内政干渉だ。
 しかし、このようなかたくなな態度をとる安倍政権も、事実上、蚊帳の外におかれてしまい、結局、米国政府に追従するしかないだろう。
 1950年6月からの朝鮮戦争は53年7月に停戦協定が成立したが、以来、米朝間はいまだに停戦状態のままで、平和協定が締結されていない。いま飽和状態に達しそうな北東アジアの戦争の危機の出発点はここにある。60年以上にわたる米朝間の軍事的緊張の中で、核抑止力論にたつ北朝鮮は核兵器やミサイルを開発し、核保有超大国の米国に対抗してきた。米朝双方の核威嚇と軍事挑発の応酬は北東アジアの軍事的緊張を極限にまで高めている。安倍首相は米国政府が主張する「すべての選択肢がテーブルのうえにある」という強硬で危険きわまりない政策を「100%支持する」などという立場をとり、憲法9条をもつ日本政府の本来の立場であるべき朝鮮半島の平和のための対話実現のイニシアティブをとれず、くりかえし「対話のための対話は無意味」などという硬直した外交姿勢に終始してきた。このため、日本を含む北東アジアの平和のために、日本政府はなんらの積極的役割を果たすことができなかった。
 わたしたち日本の市民の叫びは「武力で平和は作れない。戦争を煽るな。対話で平和を」だ。
このたび、朝鮮半島の平和実現のための日韓民衆の多様な努力の一つとして、  3月13日、韓国ソウルのソウル市庁大講堂を会場に「日韓平和市民シンポジウム」が開催される。これは韓国のキャンドル革命を受け継ぐ「主権者全国会議」と、日本の「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が共催し、日韓の市民運動家が参加し、北東アジアの平和実現の道を探るものだ。
 このシンポジウムを契機に、この間の平昌冬季五輪の開催を機に米韓合同軍事演習が延期され、南北対話が再開され、南北首脳会談と米朝対話の可能性が開かれたという新たな情勢の下で、米朝対話をはじめさまざまな平和のための努力が進み、朝鮮半島に平和協定が実現し、北東アジアの平和と非核武装地帯化が実現するよう日韓市民が協力して声を上げたい。 (T)