人民新報 ・ 第1370号<統合463号(2019年2月15日)
  
                  目次

● 辺野古工事中止、改憲発議阻止、参院選勝利、安倍内閣打倒へ

            辺野古埋立て県民投票に圧勝しよう

● 関西地区生コン支部への弾圧をはねかえそう

            共謀罪適用のリハーサル弾圧に対し、多くの運動が共に闘いを進めよう

● 郵政ユニオン格差是正裁判     西日本裁判の大阪高裁判決

            成果を確認し、マイナス面について上告して闘い続ける

● 平和なくして労働運動なし

            憲法改悪発議を許さない!全労協学習集会

● 巨大IT企業対策としてのEUの一般データ保護規則(GDPR)

            市民よ、GDPRを武器にGAFAと闘え!

● 破綻した安倍政権の原発輸出戦略

            日立も英国への原発輸出計画を凍結

● 電力システム改革の名のもとに

            電力「容量市場」は再生エネルギーへの趨勢にブレーキをかけるものとなる惧れ

● 安倍官邸の質問封じを許すな

            新聞労連が首相官邸の質問制限に抗議声明

● せ ん り ゅ う

            ― アベの顔 ―

● 複眼単眼  /  安倍晋三首相の焦り






辺野古工事中止、改憲発議阻止、参院選勝利、安倍内閣打倒へ

      
 辺野古埋立て県民投票に圧勝しよう

 通常国会開会日の1月28日、国会議員会館前で国会開会日行動(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクション、共謀罪NO!実行委員会)が行われ、さまざまな運動が力をあわせ、野党共闘を強化して、安倍内閣の退陣にむけた闘いの前進をアピールした。
 改憲について安倍は施政方針演説で「国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められるのを期待いたします」と述べた。だが、国会の審議では、厚労省の不正統計とその隠蔽・忖度問題をはじめ、いわゆるアベノミクスの上げ底状況、消費税増税、軍事費の急増など、そして外交政策面でも日韓関係の緊張、日ロ領土交渉問題を追及する野党の攻撃に直面し、安倍本人が追い詰められると気色ばむ場面が何度も報道されている。
 2月10日には、自民党定期大会がひらかれた。その運動方針で、統一地方選・参院選での勝利とともに、「時代の転換点に立つ今、改めて国民世論を呼び覚まし、新しい時代に即した憲法の改正に向けて道筋をつける覚悟」をあげた。
 改憲を党是とする自民党内には、9条改憲について、@ 「1項・2項を維持した上で、自衛隊を憲法に明記するにとどめるべき」との意見、A 「2項を削除し、自衛隊の目的・性格をより明確化する改正を行うべき」との意見があった。そもそも自民党憲法改正草案(2012年)は、自衛隊を国防軍に昇格させるものだった。それなのに、安倍が9条に自衛隊を書き込む形での明文改憲を言い出したのは、9条1、2項に手を付けないままで自衛隊を書き込むこと、また、緊急事態、参院選「合区」解消、教育の充実などで、抵抗を少なくして、ダマシ改憲の手段で突破しようとしたためである。しかし、この改憲は第一弾で、かれらの本来目指すものは、大日本帝国憲法に酷似した自民党改憲草案を実現させることである。
 しかし、安倍の改憲強行の前にたちはだかるものは多い。国会論戦で浮かび上がった難題だけでなく、改憲論議に野党を巻き込むことに失敗し、改憲に慎重姿勢を強める与党・公明党という難問が浮上してきている。そのため、下村博文・自民党改憲推進本部本部長も、9条よりも教育無償化や緊急事態条項などの先行改憲案発議もありうるとしたが、安倍はなんとしても9条を変えることをあきらめてはいない。
 安倍の現時点での改憲姿勢について、右派勢力はどのように評価しているのか。自民党大会翌日の産経新聞主張「自民党の運動方針 憲法改正へ機運の形成を」は、「その言やよし。首相と自民党に期待するのはその実行である」としながら、「首相も自民党も、憲法改正のかけ声は高らかだ。けれども、国民の間へ分け入って、改正の必要性を訴え、賛同の輪を広げる努力は必ずしも十分ではなかった。」「憲法改正の一丁目一番地は、国の守りを固める上で欠かせない、9条関連の改正である」とした。同日の読売新聞社説「自民党大会 丁寧に民意くみ政策に生かせ」は、「運動方針は前文で、『国民世論を呼び覚まし、憲法改正に向けて道筋をつける覚悟だ』と触れるにとどめた。具体的な改正項目と取り組み方針を明記した昨年に比べて、物足りない。…全国で実施する講演会や党のインターネット番組を活用して憲法改正の意義を説き、世論を喚起することが肝要である」とする。
 このように右派マスコミがいかに改憲を煽ろうとも、世論調査(共同通信)では倍首相の下での改憲に「反対」56・7%の数字が出ている。
 自民党はすべての小選挙区支部に改憲推進本部をつくって、下から広範な運動で改憲世論を盛り上げようとしている。右翼改憲勢力もさまざまな策動を行っている。改憲世論づくりのための謀略的な事件も画策されているかもしれない。
 安倍改憲阻止を粉砕するために、より広範な運動を作り出していこう。立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会保障を立て直す国民会議、自由党、社会民主党は、1月28日「野党党首会談合意事項」(二面に掲載)で、安倍内閣打倒運動での協力を確認した。
 そして当面の課題として、2月24日投開票の「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」がある。安倍政権は硬軟両様の卑劣な手法で、県民投票を圧殺しようとしてきたが、失敗した。県民投票では「反対にマル」の圧倒的多数で、米軍基地工事絶対反対の意思を示そう。
 今年は、沖縄の辺野古新基地建設を中止させ、通常国会でも改憲発議を阻止し、参院選で改憲勢力に打ち勝ち、安倍内閣を打倒する闘いの年、政治決戦の年だ。 総がかりの闘い、野党共闘の強化で、勝利しよう。

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2019年1月28日

野党党首会談合意事項

 立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会保障を立て直す国民会議、自由党、社会民主党は、党首会談において以下について合意した。

○ 本通常国会において、野党5党1会派は協力連携を強め、立憲主義の回復や、また国会の国権の最高機関としての機能を取り戻し、国民の生活を豊かにし権利を守るため、安倍政権打倒をめざし厳しく対峙していく。

○ 内政・外政の山積する課題について徹底審議を行う。

○ 「毎月勤労統計」問題についての全容解明を行う。

○ 今夏の参議院選挙に際し、安倍政権打倒をめざし、32の1人区全ての選挙区において、与党を利することのないよう、速やかに候補者一本化のための調整を図る。

 野党5党1会派の幹事長・書記局長は、これらの確認事項の目的を達成するために、早急に協議し、その具体化を進める。


          立憲民主党            枝野 幸男
          国民民主党            玉木雄一郎
          日本共産党            志位 和夫
          社会保障を立て直す国民会議    野田 佳彦
          自由党              小沢 一郎
          社会民主党            又市 征治


関西地区生コン支部への弾圧をはねかえそう

        
共謀罪適用のリハーサル弾圧に対し、多くの運動が共に闘いを進めよう

 連帯ユニオン(全日本建設運輸連帯労働組合)関西地区生コン支部への一部悪質企業、排外差別主義ヘイト集団と一体となった警察の弾圧が続いている。2月5日、新たに16名の逮捕者が出た(のべ55人の逮捕者)。「恐喝未遂」「威力業務妨害」を口実にした逮捕、起訴、長期拘留による労働運動圧殺の策動を絶対に許してはならない。

 1月28日、衆議院第二議員会館で、共謀罪廃止のための連絡会の院内集会「共謀罪のリハーサル弾圧を許さない!―関西生コン事件の真実―」が開かれた。小谷野毅さん(連帯労働組合書記長)の報告につづいて、太田健義さん(関西生コン弁護団)が報告。この弾圧は、共謀罪の先取りのようなものとなっている。逮捕・勾留よりもかなり前に、大規模な捜索を行い、大量の資料を片っ端から押収した。議事録などの紙媒体だけでなく、スマホのライン・メールやUSBなどが中心だ。現場での実行行為が立証できなくても、大量に収集した資料から、共謀を立証しようとしていることが伺える。弁護団としては、今後、さらなる不当な身体拘束をさせないこと、起訴された事件については無罪判決を得ることに最大限の努力を行う予定である。ここで萎縮してしまえば、むこう側の思うつぼだ。最大限の注意を払いながらも、萎縮しないことこそが重要である。

 2月8日には、全水道会館で、「6か月もの長期勾留は即時中止! 仲間をただちに釈放しろ!不当な接見禁止、いますぐ解除せよ!憲法28条・労働組合法の破壊は許さないぞ!」を合言葉に「関西地区生コン弾圧事件・緊急報告集会」(主催・全日本建設運輸連帯労働組合)が開かれた。
 全日建書記長の小谷野毅さんが弾圧事件の現状について報告。
 海渡雄一弁護士が「大阪現地調査の報告」。ゼネコンは買いたたきで大きな儲けを挙げているが、生コンの単価は東西で大きく違う。関西生コン労組は産業別組合として、また業者とも協力して値崩れをおこさせない。中小の会社もそこで働く労働者もともに利益をとれることになる。また当然の権利としてストライキも政治闘争もおこなっている。ゼネコンや警察はこれを何とかして叩き潰そうとしている。組合を抜けろなどの強要も行われている。それが今回の弾圧事件だ。この事件の報道をマスコミは行っていない。ただ産経新聞の警察発表の垂れ流しだけがでまわっている。昨年12月に秘密保護法対策弁護団は総会で、「全日建関西生コン支部に対する度重なる弾圧に強く抗議する声明」を発表したが、そこでは「これらの事件は、共謀罪が直接に適用された事件ではなく、秘密保護法に関する事件でもない。しかし、労働組合の日常的なコンプライアンス活動や争議権の行使の一部を犯罪事実として構成し、これに関与した組合員を一網打尽で検挙し、デジタル情報の収集によって関係者間の共謀を立証することで犯罪を立証しようとしている点において、担当弁護団が正しく指摘するように、共謀罪型弾圧の大規模な開始を告げるものと捉え、これに対抗する態勢を整えなければならない」とアピールした。関生支部への物心両面にわたる支援を強めていこう。
 宮里邦雄弁護士―この事件は平成労働運動史上最大の弾圧であり、政治的に悪辣な組合つぶしだ。警察法2条には「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない」とあるがこれに完全に違反している。広く真相を知らせ世論を喚起して、真っ向から対決していこう。


郵政ユニオン格差是正裁判     西日本裁判の大阪高裁判決

           
 成果を確認し、マイナス面について上告して闘い続ける

 郵政産業労働者ユニオンに所属する非正規社員が日本郵便に対し、正社員と手当と休暇の格差があるのは違法だとして格差是正を求めた労働契約法20条西日本裁判の控訴審判決が1月24日、大阪高裁であった。
 大阪高裁の中本敏嗣裁判長は請求した五つの手当と休暇については不合理な格差と認め、一審判決を上回る約433万円の不法行為認定による損害賠償の支払いを命じた。
 2014年6月30日に大阪地裁に提訴した西日本裁判は2018年2月21日に判決が行われた。判決では2017年9月14日の東日本裁判・東京地裁判決を上回る住居手当、年末年始勤務手当、扶養手当の10割支給を認めた。
 しかし、同じく東京地裁判決では判決理由の中で不合理と認定した夏期・冬期休暇と有給の病気休暇については損害賠償請求をしていないことから判断は行わなかった。
 今回の高裁判決は一審と同様に住居手当は10割支給を維持した。また、年末年始勤務手当についても10割支給を認め、さらに夏期・冬期休暇と有給の病気休暇、さらに祝日給(1月2・3日が対象)についても不合理と判断し、賃金相当額の損害賠償を認めた。高裁判決は損害賠償額の増額も含めて一審判決をさらに前進させた。その一方で、年末年始勤務手当、夏期・冬期休暇、有給の病気休暇、一部祝日給について「不合理」である認定の「基準」として、雇用期間が5年を超える非正規社員に限り、不合理な格差であるとの判断を行ってきた。これまで全国でいくつかの20条裁判が争われてきたが、不合理かどうかの判断基準に「雇用期間」を持ち出されたのははじめてのケースである。
 判決では年末年始勤務手当の性質は契約社員も正社員と同様としたが、雇用期間の長短を問わず不合理と認めた一審と異なり、不合理の認定を5年以上とした。契約社員は@原則として短期雇用を前提に、その必要性に応じて柔軟に労働力を補充、確保することを目的とした雇用区分であること、A時給制契約社員の退職者の5割以上が1年以内、7割以上が3年以内に退職するという統計結果があることなど、さらに「正社員の待遇を手厚くすることで有為な人材の確保を図る事情」や「各労働条件が労使協議を経て設定されたという事情」が「相当の重みのある労契法20条所定の『その他の事情』」であり、「労働条件の相違が不合理であるとの評価を妨げる事情」であると判断した。
 一方で有期労働契約を反復して更新し、契約期間を通算した期間が長期間に及んだ場合は、「年末年始勤務手当を支給する趣旨・目的との関係で正社員と契約社員との間に相違を設ける根拠は薄弱なもの」となるから不合理と認められるとした。
 被告・会社側さえ主張していない「雇用期間」をとり上げ、何ら根拠もない5年を基準にしたことは「有期であることによる不合理な格差是正」という法律の趣旨に反するものであり、またハマキョーレックス、長澤運輸事件において最高裁が採用しなかった「有為人材確保論」を「その他の事情」として再び持ち出してきたことはこの間の20条裁判の流れに逆行するものであり、極めて不当なものである。
 扶養手当は一審では「生活保障のために基本給を補完するものとして付与される生活保障給」として「職務内容等の相違」に関係なく、支給されるという画期的な判断を行ってきた。しかし、高裁判決は先に触れたように再び「有為人材確保論」と「長期雇用インセンティブ」で「長期雇用を前提として基本給を補完するする生活手当」として格差を容認した。しかも、判決では「契約社員についても家族構成や生活状況の変化によって生活費増もあり得るが、基本的には転職等による収入増加で対応することが想定される」などと、何ら根拠を示すことなく、裁判長の勝手な「憶測」で判決を下すということをやっている。原告代理人の森博之弁護士は「中本裁判長の気まぐれ判決」とコメントしていたが、まさにその通りの判決である。
 一審で不合理としなかった夏期年末手当(賞与)は控訴審において、原告らと比較すべき正社員の夏期年末手当の額を実際に示したうえであまりにも大きな格差が生じていることを主張し、立証してきた。高裁判決は一審の「労使交渉」と「使用者の人事上の裁量」をそのまま踏襲し、不合理と認めなかった。これは昨年末に示された「同一労働同一賃金ガイドライン」の賞与支給の原則にも反するものである。
 郵政労契法20条裁判はたとえ労契法20条が均等ではなく、「均衡」の考え方に基づくものであったしても目の前にある有期雇用を理由とした不合理な格差を是正していく裁判としてとりくまれてきた。
 郵政という企業の性格と全国性という規模、19万人の非正規社員数、さらに裁判開始にあたっての「経団連シフト」、さらに当初は20条裁判で格差是正に消極的な判決が相次ぐ中で、東西裁判で着実に一つひとつの成果を勝ちとってきた。
 今回の大阪高裁判決でのマイナス面は最高裁=上告審のたたかいで何としても覆していかなければならない。


平和なくして労働運動なし

        
憲法改悪発議を許さない!全労協学習集会

 1月30日、文京区民センターで、「憲法改悪発議を許さない!全労協学習集会」が開かれた。

 主催者を代表して、渡邊洋全労協議長が、あいさつ。安倍内閣は2020年新憲法施行をあきらめていない。憲法問題は労働運動にとって死活的な課題である。全労協は安倍改憲の阻止のため多くの人びとや運動とともに闘っていく。

 講演は、宮里邦雄弁護士(元日本労働弁護団会長)が「安倍改憲がもくろむもの〜その内容と狙い」と題して行った。安倍は、@自衛隊明記、A緊急事態条項、B参議院・合区解消、C教育の充実(「教育の無償化」)をあげ、「抱き合わせ改憲」を行おうとしている。
 自衛隊明記の自民党9条改憲案は、9条1・2項を維持したうえで、「9条の2」として、以下の条項を加えるとしている。それは「前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」とする。憲法に自衛隊を明記することの意味は、憲法の下位規範である法律(自衛隊法)によってその存在を認められた自衛隊を憲法上の地位に格上げして、憲法上、国会、内閣、裁判所と同格の存在とさせることだ。そして、「9条の2」は、9条1項・2項の例外規定とされることにより、9条1項・2項が空洞化することになる。「後法は前法を破る」とされるだからだ。こうして、自衛隊の任務・活動に対する立憲的コントロールすなわち憲法による抑止力が失われることになる。また、これまでの自衛隊合憲論の骨格であった「わが国を防衛するための必要最小限度の実力組織」の制約が取り払われ、全面的な集団的自衛権行使の容認へということになる。自民党案では「必要最小限度」の文言もなくなっている。そして、自衛隊違憲論、集団的自衛権行使違憲諭を封ずるというのである。
 安倍首相は、「自衛隊を明記するだけであり、現状を1ミリも変更するものではない」とか「自衛隊の任務と権限に変更はない」というが、自衛隊は憲法上の存在として「変質」するのだ。同時に、これまでの解釈改憲と明文改憲とは大きく違う。安保法制制定にあたり、「集団的自衛権の行使容認」の閣議決定がなされ、9条の解釈改憲(「存立危機事態」による合憲化)が拡がったが、解釈改憲には憲法適合性の解釈操作(「合憲的限定解釈」)を要するため、一定の限界が伴った。9条は憲法規範として自衛隊を統制する重要な機能を果たしてきたし、これからも果たし得るが、自衛隊明記の改憲によって「合憲的限定解釈論」は不要となり、自衛隊に対する憲法上の歯止めがなくなる。自衛隊明記がもたらすものは、「国是」の変更である。これは、「専守防衛」「攻撃的兵器保有の禁止」「武器輸出三原則」「非核三原則」「海外派兵の禁止」など「国是」とされてきた重要政策の見直し・変更、全面的な集団的自衛権行使の容認、自衛隊のさらなる増強、海外での武力行使などで「平和国家」として歩んできた「国のかたち」が大きく変わる。そのうえ、自衛隊に関する秘密は憲法上の保護を受ける重大な軍事秘密として保護され、知る権利や報道の自由などの基本的人権保障が損なわれるおそれが大きい。労働運動としても、改憲反対を大きな課題として取り組まなければならないのである。
 そして強調したいのは「平和なくして労働運動なし」ということをしっかりとつかまなければならないということだ。戦争体制下で戦前の労働運動は窒息させられた。この歴史の教訓に学ぶことがぜひとも必要だ。1936(昭11)年、内務省はメーデー禁止の通達を出し、陸軍工廠の組合加入・ストを禁止した。1937(昭12)年、日中戦争が勃発し、軍需工場動員法が施行され、全日本労働総同盟第2回大会は「事変中スト絶滅宣言」を決めた。1938(昭13)年には、国家総動員法がだされ、日本海員組合は「興国海員連盟」に改組された。翌年には、賃金統制令、国民徴用命施行となり、1940(昭15)年には、日本労働総同盟中央委員会は「解散宣言」し、大日本産業報国会創立となった。その「創立宣言」には、「およそ皇国産業の真姿は、肇国の精神に基づき全産業一体・事業一家、もって職分に奉公し、皇運を扶翼し奉るにあり。全産業人は、資本・経営・労務の有機的一体を具現し、皇民勤労の真諦を発揮し、もって国力の増強に邁進せざるべからず」「職場はわれらにとって臣道実践の道場なり。勤労はわれらにとって奉仕なり。歓喜なり、栄誉なり、手段にあらずして目的なり」とある。そして、1941(昭16)年、太平洋戦争が勃発し、言論・出版・集会・結社等臨時取締法が公布された。戦時中には、重要事業場労務管理令、労働調整令、工場法戦時特例、船員動員令、国民勤労動員令などが次々に公布され、戦場のみならず工場などでも悲惨な状況が生み出された。そして、終戦となり、戦後労働運動は平和憲法下で再出発して、憲法改悪の企みを許さず、平和憲法を中心的に支える労働運動として展開されてきた。生存権的基本権といわれる労働基本権は、憲法前文と9条などに表現されている「平和のうちに生存する権利」と不可分一体の関係にある。まさしく「平和なくして労働運動なし」である。平和憲法を支え、守り抜く主体として、労働組合、労働運動のもつ役割への期待は大きい。


巨大IT企業対策としてのEUの一般データ保護規則(GDPR)

                
 市民よ、GDPRを武器にGAFAと闘え!

 2月6日正午から、共謀罪NO!実行委員会と「秘密保護法」廃止へ!実行員会による、「共謀罪法廃止!秘密保護法廃止!国会行動」が行われた。当日は冷たい雨の中でシュプレヒコールを上げた。

 国会前抗議集会の後は、衆議院議員会館会議室で、院内集会「EUの一般データ保護規則(GDPR)を読み解く」が開かれた。
 石村耕治さん(プライバシー・インターナショナル・ジャパンPIJ代表)が、「巨大IT企業GAFA対策としてのEUの一般データ保護規則(GDPR)読み解く―わが国は、『市民よ、GDPRを武器にGAFAと闘え!』のEUに学べるか?」と題して講演した。
 GAFAとはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの略で巨大IT企業(デジタル・プラットフォーム企業)のことだ。いま経済のデジタル(電子)化の流れがグローバルに加速している。ビッグデータ、機械学習、AI(人工知能)、アルゴリズム (自動情報処理手順)、インターネット・オプ・シングス(何でもインターネットにつなげる)といった横文字が飛び交うデータエコノミー中心の社会が目の前に広がっている。こうした時代の流れを受けて、GAFAというグローバルな巨大IT企業であるビッグ4は、全人類の約8割の個人情報を握るに至っているといわれる。わが国のIT企業は束になっても、彼らと対等に競争するのは至難である。「このままでは、世界中の市民や企業活動の首根っこをGAFAに掴まれてしまう。何とかしないといけない」ということで、世界各国は大騒ぎである。
 こうしたなか、EUが採った策は、データローカライゼーションの視点に立って、新たなデータ保護法制を整備することだった。それは個人の情報上のプライバシー権すなわち個人情報の自己コントール権を徹底的に保護することをGAFA対策の核に据えるものである。
 EUは、2018年5月、一般データ保護規則(GDPR=General Data Protection)を制定した。これは、EUが「市民よ!GDPRを武器にGAFAと闘え」という政策を選択したことを意味する。しかし一方、わが国は、市民に、徹底した個人情報の自己コントール権を認めることなどは決してない。
 GDPRには、EU加盟国とノルウェー・リヒテンシュタイン・アイスランドが参加した。これまでのEUデータ保護指令はモデル法のような存在で、データ保護は、各加盟国が制定した国内データ保護法によっていた。だが、指令から規則へ移行したことで、各加盟国のデータ保護法は、監督機関に関する部分を除き、原則廃止となり、GDPRは、加盟国全体に適用されることになった。ただし、雇用・ジャーナリズム・研究などについては一部例外がある。
 GDPRで法認したプライバシー権では、いつでも個人データの取得の際にした同意の撤回ができる。個人の自己データにアクセスする権利に加えて、データ主体に対し忘れられる権利・いわゆる「削除権」を法認した。プロファイリング等の「自動処理のみに基づく自動意思決定を規制するために、自動処理のみに基づく決定には服さなくともよい権利、自分の個人データがダイレクトマーケティング(DM)に使用されることの拒否する権利、そして、EU市民の個人データの域外への持出し・移転の原則禁止などを規定している。
 たとえば、ダイレクトマーケティンを拒否する権利とはこういうものだ。ネット上でホテルの空室を検索する、あるいは商品を購入すれば、すぐさま付近のホテルや同じような商品のPRがパソコンなどのスクリーンに頻繁に表示され、メールが送りつけられてくるクッキー技術を使った「ターゲティング広告」がある。これは、GAFAの重要な収入源である。これらの多くのサービスは無料を装っているが、消費者は、自分の知らないうちに自分の個人データを利用されて、しかも、どれだけ利用されているかもわからない。GDPRは、こうした個人データ利用にデータ主体が拒否することができる法的ルールを定めたものだ。
 日本では、2018年9月28日に、政府は関係閣僚会議を開き、AIの本格的な導人にむけた総合戦略の策定に着手した。IT総合戦略本部や知的財産戦略本部など政府の科学技術関連の会議を実質的にイノベーション会議に一元化し、官邸主導でAI戦略をとりまとめるものだ。国会に「デジタルファースト法案」を提出し、成立を図る方向だが、この法案では、グローバルな巨大IT企業であるGAFAや中国の3強であるバイドゥ、アリババ、テンセントと対峙できる内容になるかどうかは不透明だ。この法を成立させ、6月のG20首脳会議で、日本政府のAI・ITの取り組みを世界に発信するとしている。これはアベノミクス成長戦略の核心だとされる。しかし、市民のプライバシー保護がまったく不十分で、世界から評価されないだろう。また、2018年7月に、政府は経産省、総務省、公正取引委員会が参画した「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備の関する検討会」を設置した。昨年末に出された「中間報告」では、独占禁止法でのGAFA対策を打ち出しているが、個人情報の自己コントロール権にはまったく消極的だ。
 わが国のIT企業はGAFAなどとは力の差がありすぎる。にもかかわらず、わが国では「AI大国を目指す」と言っているが、絵空事にすぎない。データ寡占が競争政策上問題であるという視点にたち、独占禁止法で新たな対策を打ち出すのはよいとしても、独禁法ではなく、個人情報保護の強化で対策を急ぐべきだ。政府の考えているのは優先順位が違う。これは「国内IT企業ファースト、市民・国民の人権保護ラスト」となっている。EUに真剣に学ぶ必要があるのではないだろうか。


破綻した安倍政権の原発輸出戦略

         日立も英国への原発輸出計画を凍結


 1月17日、日立製作所のイギリスへの原発輸出計画(イギリス中西部アングルシー島ウィルヴァで計画し、2020年代前半の運転開始を目指していた原発2基の建設計画)が正式に凍結となった。すでに東芝は子会社だった米原子力発電子会社ウェスチングハウス(WH)が経営破綻して巨額損失を抱え込み、原発輸出からの撤退を決めた。また日本の原発輸出はベトナムやリトアニアでも撤回や凍結など計画の見直しが相次ぎ、これで日本政府の原発輸出案件が全滅することとなった。3・11福島第一原発大事故にもかかわらず、原発再稼働を強行するとともに、アベノミクスの成長戦略の目玉として海外輸出さえ行おうとした安倍政権は当然の報いとして重大な打撃を受けている。しかし、菅官房長官は、「従来の方針に変更はない」と語り、依然として原発推進・輸出路線を変えようとしていない。

 2月1日、衆議院第一議員会館で、「日立による英原発事業の断念を求める院内集会」が開かれた。
 福永正明さん(岐阜女子大学南アジアセンター)が、「破綻した安倍政権の原発輸出戦略」と題して報告。日立のウィルヴァ原発中止で、日本政府の原発輸出案件が全て頓挫してしまった。振り返れば2000年代はじめ、アメリカのブシュ政権が原子力の活用に注目し、地球環境開題への対策として、「やさしい電力である原子力」などとして「原発ルネサンス」といわれる時代の到来が言われた。とくに電力が必要となる新興国への輸出が目標となった。東芝がウエスティングハウス社を買収したときには、「時流に乗った買い物」と評された。日立はジェネラルエレクトリック(GE)、三菱重工はフランスのアレヴァとともに、原発建設を推し進めようとしてきた。民主党政権(2009〜2012)は、新しい成長戦略の柱として新幹線と原発の大型インフラ輸出をあげ、第2次安倍政権は原発輸出が既定路線となった。産業競争力会議では原発建設がインフラ輸出の「主戦場」であると指摘された。日立のウィルヴァ原発計画は、東電福島第一原発事故の翌年の2012年10月からだ。6億7000万ポンド(約854億円)で、ホライズン社を完全子会社とし、原子炉(日立製出力130万キロワット級)2基で、2019年着工、2020年代半ばの運転開始を目指していた。しかし、税金での原発輸出支援への批判の高まり、総工費見込みの膨れあがり(3兆円)、また現地会社の運営、広告費など、日々の経費が拡大するなどの「逆風」が強まり、工事は予定通り進行なくなった。許認可申請のため日木原電がロンドン事務所を新設するなどで施設型式認可、環境認可などは、着々と進められたが、事故時の賠償が表面化して、日立は英政府と協議を重ねざるをえなくなった。
 しかも、イギリス政府は、EU離脱問題でこの問題に対応できる状況ではない。また日本政府も、「民間企業として判断すること」とした。こうしたなかで、日立は企業イメージが悪化し、株価低迷となり、社内とくに社外取締役からの批判がつよまった。日立は、英政府に追加支援策を要請して、「やる気はあるが、英政府が対応しないから凍結する」という態度をとったが、3000億円の損失を計上した事業を誰が再開しようというのか。
 こうして、ウィルヴァ原発計画はとん挫した。
 日本からの原発輸出を止める運動の意味は大きい。広島・長崎での被爆体験、東電福島第一原発事故の現実がある。国内原発の再稼働を全面中止させて「原発ゼロ」を実現するとともに、「世界のどこにも原発はいらない」活動を進めていかなければならない。
 つづいて、原発メーカー訴訟原告団共同代表の大久保徹夫さんが、「日立英国原発輸出と原賠法(原子力損害の賠償に関する法律)をテーマに報告。原賠法はどうしてできたのか。1953年、アイゼンハワー米大統領による国連での「原子力平和利用演説」で、米国内に原発建設の機運高まった。しかし、GEやWHなどの原発メーカーは建設をためらった。なぜなら、原発事故の被害はすさまじいものとなり、事故発生時の莫大な損害賠償で倒産を免れないからだ。そのため、1957年にプライス・アンダーソン法(PA法)が成立し、国際的管理組織(IAEA)も設立された。法律の目的は、公衆の保護であるともに、原子力産業の発展である。事業者(電力会社)の無過失責任を認め、メーカーには製造物責任法が適用されない。賠償額126億ドル(有限)とし、それを超える場今は連邦議会による決議で処理し、これにより、メーカーは一切の責任を負わずに原発建設ができることになった。原発輸出でも、当該国でもプライス・アンダーソン法のコピーを作らせ、原発メーカーは原子力事故の賠償責任を一切負わずに、利益は自社に、損害賠償は電力会社とにという有利な条件で世界に拡散した。とは言え、原子力事故は一国を滅亡させるほどの被害、周辺国へも甚大な被害を引き起こすため、数〜数十カ国が賠償の連帯保証条約を設立し、原子力事故が起こった際の共通な補償体制、裁判権などの基本的ルールを決めた条約を成立させている。こうしたことで、原発メーカーは、一切の責任から免れ、設計・製造ミスがあっても免責され、モラルハザードがおきやすい。安全性より経済性を重視する事業者は、安全神話をまきちらす。設計・製造・稼働の責任はメーカーにあるのに、法律上は電力会社となっている。日立は2012年にホライズン英国原子力発電会社を買収し、子会社化し、そこに旧式原発の建て替えに自身の日立製原発2基を輸出する。しかし、原発が稼働し、もし大規模な原発事故が起これば、親会社日立は、原子力賠償責任を一手に引き受け、倒産する。これは、東芝の二の舞だ。そのため、何としてもホライズン社を「子会社」から切り離すため、資本を他社に売りたいが、買い手がいなかったのだ。
 この背景として、「自然エネルギー」技術の発達、風力発電コストの急速な低下が見込まれ、とくに英国では常時安定的な偏西風が吹く「洋上風力発電」が急速に進展していることがある。


電力システム改革の名のもとに

         
 電力「容量市場」は再生エネルギーへの趨勢にブレーキをかけるものとなる惧れ

 電力システム改革が段階的に行われている中において、電力市場についても新たな制度がつくられようとしている。その一つが、発電設備の固定費の一部を小売電気事業者から徴収するしくみである「容量市場」といわれるもので、2020年から導入されることになっている。しかし、このうごきは、再生エネルギーへの趨勢にブレーキをかけるものとなる惧れが多分にある。

 1月21日、参議院議員会館で、「セミナー これからの電力市場について考える〜容量市場とは何か?そしてその課題は?」が開かれた。
 松久保肇さん(原子力資料情報室事務局長)が、「容量市場―その概要と問題点」について報告。現状では、電力不足は発生していないが、需給ひっぱく時に価格が高騰することはある。本来であれば卸電力取引所の上場商品需給調整は十分に達成可能だが、現状は流動性が不十分なため、価格変動が大きくなる。そのために、「電力容量」を設定して、発電事業者を売り手に、電力広域的運営推進機関が目標調達量を一括して買い取る。そのコストは小売電気事業者と一般送配電業者が費用を支払い、最終的に消費者が負担することになる。電力自由化のなかで、一時的に容量不足に陥るリスクは存在する。だが、実際に容量不足に陥るかどうかは、系統運用の効率化や再エネ電源の大量導入に向けた各種対応いかんにかかわってくる。また、市場が成熟してくれば卸電力におけるシグナルで十分投資回収予見性は確保することもできる。容量市場の導入は固定費回収が終わった老朽化した電源の稼働延長を促すものとなる。このやりかたでは原発は老朽化してリスクの高いもの、また火力発電ではCO2排出量の多いものが生き残ることになってしまう。容量市場は複雑かつ大規模なシステムであり、導入したら撤退することは難しい。リスクを過大に言い立てるのではなく、やれことから取り組むべきだ。
 つづいて、安田陽さん(京都大学教授)が、「容量メカニズムと容量市場〜そもそも何のためにあるのか?〜」について報告。
再エネ大量導入がもたらすものについて日本は世界の動きとまったく違う方向を目指している。日本では、スポット価格の低下には電力会社の採算悪化が心配され、調整力不足の懸念され、容量市場の議論が出てきた。だが、世界での議論は、スポット価格の低下は、本来、消費者にとって良いこと、火力発電の退潮は地球環境にとって良いことだとされる。調整力不足の懸念には柔軟性の市場調達がもとめられ、再エネからの供給となる。日本では「容量市場」が既定路線とされるが、こうしたものは、官製市場となり、また従来型プレーヤーに過度に有利になる。たしかに、「市場は失敗する」ことがあり、政府が介入することで市場の失敗を是正する。だが「政府も失敗する」ことがあり、政府が過剰介入すると市場の効率性が却って悪化する。市場の失敗を正すのは政府だが、政府を監視するのは国民であり、市場と政策の間には絶えざる緊張がある。是非とも、公平性・被差別性、客観基準と定量評価、透明性が実現されなければならない。


安倍官邸の質問封じを許すな

        新聞労連が首相官邸の質問制限に抗議声明


 安倍内閣の失速の状況が、様々なところで出てきた。首相官邸のスポークスマンでもある菅義偉官房長官は、毎日、記者たちからのさまざまな質問に答えなければならない。
 しかし、本質を突いた鋭い質問には、嘘と詭弁で乗り切らざるを得ない状況になる。
 菅は、それがいやでいやでたまらない。
 その結果ついに、質問封じにでてきた。昨年12月28日、上村秀紀・内閣官房総理大臣官邸報道室長名で官邸の記者クラブ(内閣記者会)あてに申し入れ文書を送った。
 それは、12月26日の定例記者会見で、東京新聞の望月衣塑子記者の辺野古埋め立てで粘土分をふくむ「赤土」が使われているなどの指摘が「事実に基づかない質問」だとして、「厳に慎んでいただくようお願い」するものだ。

 菅官房長官やその他の大臣たちも記者の質問にまじめに答えようとしない姿が連日テレビ映像で流されているが、その元凶ともいえるのは安倍首相本人である。
沖縄がらみでは安倍首相のサンゴ移植のデマ発言がある。

 2月5日、日本新聞労働組合連合(新聞労連)は南彰委員長名で、声明「首相官邸の質問制限に抗議する」を発表した―「…記者会見において様々な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことは、記者としての責務であり、こうした営みを通じて、国民の「知る権利」は保障されています。政府との間に圧倒的な情報量の差があるなか、国民を代表する記者が事実関係を一つも間違えることなく質問することは不可能で、本来は官房長官が間違いを正し、理解を求めていくべきです。官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の「知る権利」を狭めるもので、決して容認することはできません。厳重に抗議します。… 日本の中枢である首相官邸の、事実をねじ曲げ、記者を選別する記者会見の対応が、悪しき前例として日本各地に広まることも危惧しています。首相官邸にはただちに不公正な記者会見のあり方を改めるよう、強く求めます」。
 安倍官邸のデマと逃げ切りを許してはならない。


せ ん り ゅ う

       ― アベの顔 ―

   分厚いな格差の壁とアベの面

       アベの顔財界穢れの権現面

   アベの顔武断政治をしたい顔

       また太る赤字達磨でトボケ顔

   アベの顔なにをやってる感ちがい

       改憲で市民の声に敗けた顔

                     ゝ 史

2019年2月


複眼単眼

        
 安倍晋三首相の焦り

 この間、たびたび指摘してきたように、2020年の改正憲法施行という安倍晋三首相らのスケジュールは容易ではなく、改憲派は窮地に陥りつつある。
 しかし、安倍首相は改憲発議をあきらめてはいない。
2月10日の自民党大会の運動方針では4月統一地方選や夏の参院選での改憲問題の争点化もねらい、「改めて国民世論を呼び覚まし、新しい時代に即した憲法改正に向けて道筋をつける」と強調して、広報戦略の強化に取り組もうとしている。自民党改憲推進本部はインターネットでの発信や講演による啓発活動をすすめるなどの取り組みを強化する一方、「全国に289ある衆院小選挙区の自民党支部ごとに憲法改正推進本部を設置し、「改憲の国民投票に向けた世論を喚起するため、(日本会議など極右改憲勢力など)民間団体による連絡会議の設立」を進めようとしている。
 こうした流れの中で、第198通常国会の安倍首相の発言には、この世論喚起を意識してか、改憲問題でかなり踏み込んだものが目立っている。
 施政方針演説では「憲法は、国の理想を語るもの、次の時代への道しるべであります。私たちの子や孫の世代のために、日本をどのような国にしていくのか。大きな歴史の転換点にあたって、この国の未来をしっかりと示していく。国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待いたします」とのべ、行政府の長が立法府に指図するのは憲法99条違反だとの各界からの指摘を無視して改憲論議の活性化をよびかけた。
 そのうえで、安倍首相は代表質問に立った自民党の二階幹事長の八百長質問に答える形で、異例の発言をした。その内容はあまりにも情緒的で、国会での議論にふさわしくない低レベルのものだが、改憲の世論喚起を意識したものだ。
 「本来差し控えるべきだが、私の気持ちを述べよとのことなので丁寧にお答えをさせていただきたい」などと前置きして、2017年5月3日以来、固執してきた安倍9条改憲論の正当化の議論を展開しながら、憲法の平和主義を擁護する市民運動や憲法研究者たち、地方自治体の行政に露骨に敵意を示した。
 安倍首相は災害出動やPKOなどの自衛隊の活動を礼賛したうえで、「自衛隊は、かつては厳しい目で見られた時代もありました。それでも、歯を食いしばり、ただひたすらに職務を全うしてきた。今や、国民の約九割は、敬意を持って自衛隊を認めています」と述べた。そのうえで 「しかし、近年の調査でも、自衛隊は合憲と言い切る憲法学者は二割にとどまります。君たちは憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれというのは、余りにも無責任ではないでしょうか。多くの教科書に、自衛隊の合憲性には議論がある旨の記述があります。その教科書で自衛隊員のお子さんたちも学んでいるのです。さらには、今なお、自衛隊に関するいわれなき 批判や反対運動、自治体による非協力な対応といった状況があるのも事実です」などと例示して、攻撃した。
「例えば、自衛隊の、自衛官の募集は市町村の事務ですが、一部の自治体はその実施を拒否し、受験票の受理さえも行っていません。また、防衛大臣からの要請にもかかわらず、全体の六割以上の自治体から、自衛隊員募集に必要となる所要の協力が得られていません」と自治体の現状を批判した。そして、 「このような状況に終止符を打つためにも、自衛隊の存在を憲法上明確に位置づけることが必要」と強調した。そして「同時に、国民のため命を賭して任務を遂行する隊員諸君の正統性を明文化し、明確化することは、国防の根幹にかかわること」と述べた。
 このような虚実ないまぜにした改憲の主張によって、改憲反対の運動を挑発している。
 現在、改憲派は衆参両院で3分の2以上の議席を持っている。憲法第96条に規定されている改憲の発議にとって、絶好のチャンスだ。この機を逃して、もし7月の参議院選挙で改憲派が3分の2の議席を失うなら、2020年の安倍改憲は完全に不可能になる。だからこそ、安倍首相らは衆参ダブル選挙も考慮に入れて、あわよくば参議院選挙の前に、この通常国会期間中に、なんとしても改憲発議を実行したいと考えている。   (T)