人民新報 ・ 第1371号<統合464号(2019年3月15日)
  
                  目次

● 「辺野古埋め立て」に「NO」の答え ―沖縄県民投票で新基地反対票が圧勝

            安倍内閣を追い詰め打倒へ

● Tカードなどが個人情報を「自主」提供

             「捜査関係事項照会」で監視社会化が進む日本

● 郵政リストラに反対し、労働運動の発展をめざす全国共同会議の春闘第一波行動

● 3・1朝鮮独立運動100周年東京行動

● 「労働情報」連続シンポジウム  

            中野麻美弁護士の講演  「非正規労働者の待遇改善に向けた焦点」

● 私も言いたい移民政策

           〜外国人労働者受入れ政策を問う

● KODAMA  /  追悼 佐野稔先生

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  憲法審の始動と改憲論議を阻止し、発議を止める





「辺野古埋め立て」に「NO」の答え
     
―沖縄県民投票で新基地反対票が圧勝

            
安倍内閣を追い詰め打倒へ

 2月24日の沖縄県民投票(普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに対する賛否についての県民による投票)は、投票率が過半数を上回り、「反対」が圧倒的多数を占め、沖縄県民の辺野古新基地建設反対の民意がまたも表現された。投票率―52・48%、投票総数―605、385票、有効票数―601、888票(99・42%)、賛成―114、933票(18・99%)、反対―434、273票(71・74%)、どちらでもない―52、682票(8・70%)。
 この結果は、昨年9月の沖縄県知事選での玉城デニーさんの圧勝に続いて、安倍政権の対するおおきな打撃となった。安倍政権は、それらを一切無視して埋立工事を強行している。だが、新たに滑走路建設予定地の海底深くにマヨネーズ状とまで呼ばれる軟弱地盤があることが明らかになった。このことは沖縄防衛局の地質調査結果の報告書も認めるところだ。埋立工事では、捨て石を厚く敷き詰め、その上に巨大なコンクリートの函「ケーソン」を設置する。しかし深刻な軟弱地盤が存在するため、海底からさらに地下40メートルにわたっての地盤改良が必要となる。地盤改良には見当もつかないほどの巨額の費用がかかる。それだけではない。環境にも致命的な影響が出ることは明らかだ。そもそもそのような地盤強化工事ができるのか、また一体何年の歳月がかかるのかも全く不明だ。
 県民投票の結果を携えて、玉城知事は、3月1日に、安倍首相と会談し、反対が七割を超えたことに踏まえ「工事を止めてほしい」と要望し、また、政府が米軍普天間飛行場の辺野古移設の根拠としてきたSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意という固定観念からの脱却とSACOに沖縄を加えた新たな協議の場として「SACWO」(SACO with 沖縄)を提案した。しかし、安倍は「普天間の危険除去が最優先」「辺野古移設しかない」と言うだけだ。この状況は、普天間の無期限使用ということに他ならない。沖縄の怒りは一段と強められ、沖縄の声と結びつく全国の闘いは安倍内閣を一段と追い詰めている。
 いま、国会では、厚労省の統計不正問題での政府責任が取り上げられている。また、森友学園問題では、籠池元理事長の裁判が始まり、この問題がふたたびマスコミでも取り上げられるようになった。森友・加計学園不正追及も再度行われるようになる状況も生まれてきている。東北大震災・福島原発事故から8年―被害の厳しさは一層進行している。それだけでなく、頼みのアベノミクスの惨憺たる内実が浮上してきている。統計不正による底上げ状況にくわえて、米中貿易戦争の先行き不透明があり、それは10月に予定されている消費税増税も撤回せざるを得ないほど深刻なものになるだろう。安倍は、戦後最長の景気が続いていると強弁する。アベノミクスの評価の基礎になるべき統計が捏造されていたという問題は深刻な事態だ。そのうえ大企業景況感が3期ぶりマイナスになり、株価の動きも不安定になってきた。とくに、衝撃を与えたのが、最近来日した世界的投資家ジム・ロジャースの発言だ。「日本株は7、8年保有してきたが、昨秋に全て売った。株も通貨も日本関連の資産は何も持っていない。人口減少という構造的な要因に加え、国の債務は増大し続けている。日銀が株や国債を買い支えているのも売りの理由だ」。そもそもアベノミクスは、金融の異次元緩和で金があり余っているかのような錯覚を起こさせ、それで株価を吊り上げるという構造でできている。それに、御用マスコミを動員して「景気はよい」と言い続けさせることだった。
 外交面でも安倍をとりまく状況は一段と厳しいものとなった。日本の植民地支配を正当化しようとする安倍ら右派勢力の動きによって、韓国との関係は、最悪の段階に立ち至っている。ロシアとの「北方領土返還」問題でも、プーチンとの交渉は安倍の思い通りには進まないことがあきらかになった。追い詰められた安倍は、「次は私が金正恩氏と向き合う」と言い出したが、朝鮮敵視政策をかえようとしていないのであり、思惑は外れるだろう。なにより、3月にも始まるアメリカとの通商交渉は、厳しいものとなろう。問題山積のトランプが唯一成果をだせるのは日本との交渉だ。日本だけは脅せば何でも言う事を聞くだろうとして、高価な武器の大量購入、農産品開放や自動車の数量規制要求や為替条項を求めて来る可能性は高い。
 安倍政権はいよいよ追い詰められてきた。この情勢の好転を生かして、安倍改憲NO!の3000万署名に取り組み、「平和といのちと人権を!5・3憲法集会」を大成功させ、国会の憲法審査会の始動と改憲論議を阻止しよう。普天間即時閉鎖、辺野古新基地建設を阻止しよう。統一地方選挙、参院選に勝利しよう。安倍政権を打倒しよう。


Tカードなどが個人情報を「自主」提供

     
  「捜査関係事項照会」で監視社会化が進む日本

 3月6日正午から、国会前で、共謀罪NO!実行委、「秘密保護法」廃止へ!実行委の共催で、「共謀罪法廃止!秘密保護法廃止!国会行動へ!6日行動」が行われ、共謀罪廃止、秘密保護法廃止、安倍内閣を退陣させようなどのシュプレヒコールを上げた。

 午後1時半からは、衆議院第二議員会館会議室で、院内集会。横山雅弁護士(元自由法曹団事務局次長)が、「捜査関係事項照会と監視社会」と題して報告。
 はじめに、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが「人々が政府のことについてすべてのことを知っていること、これが民主主義だ。政府が多くのことを知っているが人々が政府のことを知らない、これは専制政治である」という言葉を紹介して話に入りたい。
 この間の新聞報道などで、捜査機関が、店やサービスを利用するとポイントがたまるTカード(利用者は約7千万人)から裁判所の令状をとらず「捜査照会」によって個人情報(利用履歴など)を取得していることが明らかになった。それだけでなく、防犯カメラ映像、フリーマーケットの取引履歴などのさまざまなカード情報が、会員本人に知らせず、捜査当局が利用できるようにする動きが加速している。このような令状もなく、個人情報を取得できる「捜査照会」について、このままでよいのか。
 まず、条文の確認をしよう。刑事訴訟法197条は「1項 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。2項 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」とあるが、捜査関係事項照会は第2項が根拠条文となる。1項の意味は、強制処分(強制捜査)とは個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段ということだ。そして、強制処分法定主義(強制処分を行うには法律上の根拠が必要であること)、令状主義(強制処分を行うには裁判所の発行する令状が必要であること)が求められる。このように三権分立による行政(捜査機関)への統制がかかっており、強制処分に該当しない捜査は全て任意処分(任意捜査)である。任意処分は法律上の根拠は必要なく令状も必要ない。だから、照会を拒否することが可能だ。しかし、Tカードの運営会社(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)が、裁判所の令状もなく、個人の情報を「捜査関係事項照会書」に基づき提供していた。しかも、これは「T会員規約」に当局への情報提供を明記せず、当局も情報を得たことを本人に知られないよう「保秘」が徹底されていた。「捜査関係事項照会書」には、「保秘の徹底を願いたい」といった一文が記載されている。
 つぎに、個人情報保護法から検討してみる。個人情報保護法第23条は「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、他人データを第三者に提供してはならない」として、「法令に基づく場合」「国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」としている。なんと個人情報保護法は捜査関係事項照会に、お墨付きを与えてしまっている。
 捜査関係事項照会を受けた企業は回答を拒否しても罰則はないが、実際は数日で関連する資料のコピーを添付する形で任意に返答することが多い。個人情報保護法がお墨付きを与えているし、拒否しても令状を取得して情報を得ることが可能となるからだ。
 これに対し対抗を考えなくてはならない。捜査照会やそれに基づく個人情報が適正に利用されているか否かの監視は不可欠であり、場合によっては国家賠償などの検討が必要だ。現行の刑事訴訟法の制定は昭和23年である。同時に、会員規約があってもろくに確認しないまま同意し犯罪と関わりのないユーザーの個人情報が。ユーザーの知らないところで提携企業に日々提供され、セールスなどに利用されている実態が問題にされなければならない。
 しかも、ポイントカードのみならず交通系カードにも捜査関係事項照会は可能だ。クレジットカード払いや口座引落しだと、カード会社や銀行などに捜査照会をすることで、カードや預金口座の利用情報を簡単に取得できる。
 ポイントカードや交通系カードの発行会社に捜査関係事項照会を行えば、登録時の個人情報の、氏名、生年月日、缶所、電話番号、メールアドレス、登録クレジットカードや預金口座などがわかる。
 『監視大国アメリカ』(アンドリュー・ガスリー・ファーガソン著 原書房)に次のようにある。「警察は昔から容疑者に関する情報を収集してきたが、現在はその情報が利用可能かつ共有可能なデータベースで保管できるようになって、監視能力が向上した。ひと昔前なら警察官が街頭で怪しい人物を見かけても、その人物の危険性について過去や未来の状況まではわからなかった。だが、間もなくデジタル化された顔認識技術がその人物の身元を特定し犯罪データが犯罪歴の詳細を洗い出し、アルゴニズムが危険度を判定して、市内全域に設置された大量の監視カメラ映像が数時間前からのその人物の行動状況をビデオ監視という形で提供するようになる。ビッグデータは容疑の見えなかった部分に光を当てる。ただしそれはまた、監視対象を捉えるレンズを拡大することにもなる。」
 アメリカでは、愛国者法にもとづいてさえメクデーダ入手のために令状が必要なのに、日本はそうでない。共謀罪の立証、盗聴法の拡大が行われやすい。
 いま是非とも必要なことは、捜査機関は、令状や第三者・チェック機関の許可なしには、顧客情報を得られないというシステムの確立だ。


郵政リストラに反対し、労働運動の発展をめざす全国共同会議の春闘第一波行動

      19春闘勝利!非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇を!

 3月4日、郵政リストラに反対し、労働運動の発展をめざす全国共同会議(郵政産業労働者ユニオン、郵政倉敷労働組合)の19春闘第一波全国統一行動が闘われた。
 大手町の日本郵政本社前では、「19春闘勝利!非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇を求める本社前要請行動」が行われ、150名が参加した。
 郵政ユニオンの日巻直映委員長があいさつ。集会に先立って、郵政本社に「郵政に働く非正規社員の正社員化と均等待遇を求める要請署名」(要請事項―@希望する非正規社員全員を正社員へ採用(登用)すること、A正社員へは公正・公平な採用(登用)を行うとともに、単年度の登用数を大幅に拡大すること、B時給制契約社員の最低賃金を全国どこでも時給1000円以上にすること、C夏期・冬期休暇は正社員と同様に付与すること、また、病気休暇は有給とすること、D正社員との間にある諸手当、福利厚生面の格差を是正すること)2万5858筆の署名提出し、延べ29万1663筆となった。不合理な格差差別をやめさせ、8時間働けば暮らせる賃金を求めて春闘を闘い抜こう。
 郵政本社前集会アピール(別掲)を確認して、シュプレヒコール、団結頑張ろうで闘いの前進を確認した。

 午後からは、衆議院議員会館で院内集会。
 平井哲史弁護士(郵政20条東日本裁判弁護団)が、「郵政20条裁判を生かして待遇と組織の前進を」と題して講演。この間の20条裁判はいくつかの成果を勝ち取ってきた。いま求められているのは、働く仲間の差別をなくしていくために労働組合の出番だ。これから、春闘要求と合わせて裁判の到達点を広く職場に知らせる教宣活動を行い、組合が多くの請求希望者を組織することだ。組合でとりまとめて請求し、交渉をおこなう。そこで会社が理不尽に拒否すれば、集団請求訴訟をおこすことだ。会社に賃金原資は十分ある。
 
講演の後、全国から参加した非正規雇用の仲間から闘いに向けてのアピールがつづいた。

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3・4郵政本社前集会アピール

 非正規差別を許さない」「希望者全員の正社員化を」…この当たり前の要求を獲得するために、私たちは毎年、ここ郵政本社前に集い、声を上げてきた。だが今年、この集会はこれまでにない特別な意義を特つものとなっている。
 東日本で3名、西日本で8名の郵政ユニオン組合員である非正規社員が自ら原告として立ち、正規・非正規を超えた職場の仲間たち、地域の仲間たちが連帯し全力で支えてきた郵政労契法20条裁判が、東京・大阪両地裁に続き、両高裁でさらに大きな前進となる画期的な勝利判決を勝ち取った。まさに歴史を大きく切り拓く瞬間に私たちは今、立ち会っている。
 私たちは今日、まず第一に日本郵政グループ各社に伝えなければならない。司法は、郵政の職場における給与や休暇をめぐる規定のいくつかに対して、法に反していると判断を下した。会社はこの事実を真摯に受け止め、直ちに改善に取り掛かり、職場の正規と非正規との格差解消に努めなければならない。

 全国共同会議は今年も春闘アンケートをとりくみ、多くの非正規労働者の声を集約した。要員が足りない、賃金が安い、そして正社員との格差を訴える声が、毎年、途絶えることなく上がっている。この声は今、日本全体を包囲し、戦後最悪というべき安倍政権の下ですら、同一労働同一賃金を言わざるを得なくなっている。ガイドラインの中では、非正規社員の処遇改善と引き換えに正社員の処遇を引き下げることを明確に否定している。
 にもかかわらず日本郵政グループは、昨年の春闘で、他のどの産業も企業も思いつかなかったようなやり方で、悪しき前例を作った。正規と非正規との間のみならず、正社員同士、非正規社員同士、それぞれの中にも格差と分断を持ち込む会社のやり方は、職場から夢を、働く誇りを奪うものだ。今春闘で再びこれを繰り返すことは、いまだ政府が多数の株式を保有する企業として断じて許されない。そして私たちは、それを決して許さない。

 今、全国には2000万人を超える人々が非正規雇用という厚い壁の中に追い込まれ、差別と貧困を強いられている。私たちはこれまでも、この課題に正面から立ち向かってきた。そして今日までに、多くの成果を勝ち取ってきた。このことに自信と確信をもって、これからもあらゆる攻撃を跳ね返していこう。
 すべての非正規労働者と連帯し、この集会の名のもとに、社会を取り巻く状況を打ち破る行動の先頭に立とう。正規・非正規の別なく、すべての労働者、市民の生命とくらし、権利を守り、生きる誇りを取り戻そう。未来へ向けて固く団結し、19春闘をたたかい抜こう。


3・1朝鮮独立運動100周年東京行動

    東アジアは大きく変わろうとしている。日本は過去の支配の歴史を清算し、近隣諸国との平和・共生の道に踏み出さなければならない。


 今からちょうど百年前、朝鮮全土で日本帝国主義の植民地支配からの解放を求める大規模な運動が起こった。激しい弾圧に抗して闘いは続けられ、闘いの火は朴槿恵大統領を退陣に追い込んだキャンドル革命にも継承されてきた。東アジアは大きく変わろうとしている。だが、安倍政権は植民地支配を正当化し、逆流を起こしている。日本は過去の支配の歴史を清算し、近隣諸国との平和・共生の道に踏み出さなければならない。

 2月24日、文京区民センターで、3・1朝鮮独立運動100周年東京行動の主催による集会が開かれた。
渡辺健樹さん(日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表)が主催者あいさつ。3・1朝鮮独立運動100周年の日が間もなく訪れる。この集会につづき3月1日100周年の当日にも新宿アルタ前でリレートークとキャンドルアクションを行う。また、6月には総がかり行動と協力して朝鮮問題の国際シンポジウムと大集会・デモに取り組む。安倍政権が進めた改憲・軍事大国化の道と過去の加害の歴史の隠蔽・改ざん・正当化はまさに表裏の関係にある。3・1独立運動から100年を経た今日、朝鮮半島の平和と統一に向けた歴史的な大転換期を迎えている。しかし、安倍政権は、こうした朝鮮半島の平和への動きの妨害者として振る舞っている。今なお植民地主義を清算せず居直り、改憲・軍事大国化の道をひた走る安倍政治を一刻も早く終わらせることが、3・1独立運動から100周年を迎える私たちがなすべき課題ではないだろうか。朝鮮半島の人びとの努力に寄り添い、日本が平和国家として進むためにも、歴史を直視し「過去」の清算と植民地主義からの脱却、日朝国交正常化の実現、朝鮮半島の平和と続一に寄与する道を歩んでいこう。

 つづいて、「3・1独立運動から100周年に想うこと」では、3人が発言。
 外村大さん(東京大学教授)―3・1運動から100年が経過した今日においては、もはや、1919年の状況を自分の鮮明な記憶として語られる証言に新たに出会うことは難しい。また、残念ながら3・1運動やそれを記念する朝鮮の人びとの活動を、反日という奇妙な記号でのみ語るような雰囲気も一部にある。これに対して、まず、私たちは、3・1運動が、東アジアの平和と人権を目指した運動であることを確認する必要があろう。と同時に、3・1運動を自身や自身に連なる身近な歴史のなかでとらえなおし、その意義を改めて認識していくことが求められている。
 渡辺美奈さん(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」wam館長)―独立運動100周年の記念日のこの3月1日から来年3月まで、特別展「朝鮮人『慰安婦』特別展―日本の植民地責任を果たすために」を開く。植民地支配の責任を果たそうとせず、日本軍「慰安婦」制度の事実を認めないで、いまもつづく日本の植民地主義を問うものにしたい。
 森本孝子さん(「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会共同代表)―日本社会に蔓延する在日朝鮮人差別は、官製ヘイトである。朝鮮学校の無償化からの排除は、日本現代史の問題であり、排除反対の闘いは、人権の問題として子どもたちに笑顔を取り返すことだ。

 韓国からの代表団4名が紹介され、ソン・ジョンモク(孫政睦)さん(4・27時代研究院国際分科長)が報告―朝鮮半島の現代史は、日本と米国という外国勢力による支配と分断の歴史だった。同時に日本の植民地支配から脱するための闘い、米国による分断と支配の歴史を終わらせるための抗争の歴史だった。民族解放と国民主権の実現のための闘いから100年目にして、朝鮮半島はついに外勢による支配と干渉の歴史を終わらせ、継続する戦争の危険と緊張の歴史に幕を引く新たな時代を迎えている。朝鮮半島の恒久的平和と統一という民族の歴史における最も重要な問題を実現する日が目前に追っている。ハノイでの朝米首脳会談の基本的性格は、核保有国同士の対話であり談判だ。会談の本質は、朝鮮が核武力を完成させ相互に核攻撃が可能となった条件のもとで、高まる核戦争の危険を避けるための平和会談だ。
 「朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制の構築」は、朝鮮半島の平和協定と東北アジアにおける新たな安保体制を築くことになるだろう。ここでポイントは、朝米の平和協定だ。平和協議における核心的議題は米軍の撤退問題だ。「朝鮮半島の完全な非核化」は、朝鮮の一方的核廃棄ではなく、米国による相応の安全保障を前提とする。ここで安全保障とは、終戦宣言、制裁緩和のような非軍事的措置ばかりではなく、実質的な軍事的脅威が除かれたときに実現される。残された課題は、米国側が朝鮮の核凍結に相応の軍事的安全保障措置をどのように講じるかということだ。
 キム・ジョンウン委員長は新年の辞で「全民族の合意に基づく平和的な統一方策の模索」を今年の中心的課題とした。これは北側が多者間平和協定とともに、南側と平和統一の方策の合意を積極的に進めることを予告している。朝鮮半島の平和協定は、平和統一実現の決定的土台となろう。既に南北では、2000年の6・15共同宣言により連合連邦制方式の統一方策について合意している。平和的統一方策を民族的に合意するのは、時代と民族にとって切実な要求だ。
 平和統一を民族全体で合意していくには、南北や海外の政府、政党、社会団体や各界各層の代表が参加する「全民族会議」、「統一大団結」のような大規模な政治会合を催すことが重要だ。このためには、事前に南北、海外の各界各層から統一方策に関する意見を集約する全民族の努力が求められる。政府をはじめ、地域や民間レベルの民族挙げての統一運動こそが、南北海外の民族的統一団結をつくる動力であり、平和統一に向けた民族的合意を実現させる方法だ。私たちは4月27日から9月19日まで、6・15南北共同委員会が定めた南北共同宣言の実践運動期間中に、朝鮮半島と東北アジアの平和定着のための国際宣言運動を提案したい。この宣言には、朝鮮半島の平和協定の締結、朝米関係の正常化、韓米日軍事同盟の解体などにより、朝鮮半島と東北アジアの平和を願う日本や世界の人々の願いを込めていきたい。
 日本の安倍首相はこの1月の施政方針演説で、北朝鮮との不幸な過去を清算し国交正常化を目指すとして、朝鮮との根本的関係改善の意思を明らかにした。注目すべきは、これまで朝鮮が提起しつづけてきた」過去清算」の要求を受け入れたということだ。しかし日本政府はこれまで日本軍「慰安婦」問題や強制徴用問題について知らん顔をし続け、既に韓日間の合意で解決済みの問題だとして、その責任を認めていない。慰安婦問題や強制徴用問題は全て、過去清算の主要な事実だ。安倍政権は朝鮮に過去を清算しようとしつつ、朝鮮と韓国が共通に提起している過去の歴史問題については顔をそむけると言う両面性をみせている。まさに、この点について日本の本気度を疑わざるを得ない。
 もはや朝鮮半島の南北、朝米関係の平和定着に向けた流れは逆戻りさせることは出来ない。また、中国や口シアは支持しており、唯一、日本だけが過去の冷戦の思考から抜け出せずに、大国の顔色をうかがっている状況だ。安倍政権は3・1―100周年を迎え、朝鮮半島の植民地支配の原罪をきっぱり清算し、朝鮮半島の平和統一を積極的に支持し、東北アジアの平和体制構築に寄与すべきだ。その道に進まなくして、日本の名誉と尊厳を守る道はあり得ない。

 韓国でのユース・スタディツアー参加の4人の若者からの発言があり、青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)が、アピール「沖縄県民投票の当日に寄せて」について報告し、「日本からの応答ー3・1朝鮮独立運動100周年にあたっての民衆宣言」が読み上げられた。
 
 行動提起で、野平晋作さん(ピースボート共同代表)は、この3・1朝鮮独立運動100周年東京行動、そして6月の朝鮮問題の国際シンポジウムと大集会・デモなどで、より多くの人と協力して、日韓民衆の共同した平和への動きをひろげていこうと述べた。

 最後に、石橋正夫さん(日朝協会会長)は、日朝・日韓関係の歴史を事実に即しての習すること、朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化という二つの課題に取り組んでいこうと閉会あいさつをおこなった。

 3月1日、東京・新宿アルタ前で、「3・1朝鮮独立運動100周年」のキャンドル集会が行われ600人の人びとが集まった。
 集会では、リレートークが行われ、日韓民衆の連帯、東アジアの非核・平和の実現、沖縄辺野古新基地建設反対、安倍内閣の退陣などについてアピールした。

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日本からの応答  −3・1朝鮮独立運動100周年にあたっての民衆宣言


           2019年3月1日  3・1朝鮮独立運動100周年キャンペーン実行委員会


 2019年3月1日、日本からの独立を求め朝鮮全土で人びとが立ち上がった3・1朝鮮独立運動から100周年を迎えました。私たちは、あらためて歴史を直視しながら日本と朝鮮半島やアジアの人びととの平和な関係をいかに築くのかを問い直す新たな契機としたいと思います。

(1)3・1独立運動100年ー侵略・植民地支配の歴史とアジアの民族解放運動
 昨年は明治元年(1868年)から150年日にあたり、安倍政権は「明治の精神に学び、日本の強みを再認識することは、大変重要」として、日本のアジア侵略と軍国主義の歴史を隠蔽する明治150年美化のキャンペーンを推進してきました。
 さらに今年は、国家主義的国民統合のための天皇の代替わり儀式も連続的に予定されています。
 しかし、明治の日本は、「蝦夷地」支配から台湾出兵と江華島事件、琉球王国の強制併合を皮切りにアジア侵略と植民地支配の道を突き進みました。1894年には本格的対外侵略戦争として日清戦争を発勤し、台湾を「割譲」させ、さらに日露戦争を経て1910年「韓国(強制)併合」に至りました。日清・日露戦争は朝鮮と中国東北地方の支配権等をめぐる争いであり、戦場となった朝鮮では農民軍や抗日義兵などの抵抗闘争が闘われました。
 日本国内では、自由民権運動を抑圧し、天皇主権の大日本帝国憲法(1889年)を制定し、翌年、教育勅語を下付して国民(臣民)に「忠君愛国」「滅私奉公」を求めました。やがて、これらの延長として中国侵略戦争、アジア太平洋戦争へと突入し、1945年の敗戦へ至ることになります。
 その間、第一次世界大戦後の民族自決の流れは日本の植民地支配に対するアジアの人々の民族解放の闘いを促しました。とりわけ1919年の朝鮮3・1独立運動と中国5・4運動は、その規模と広がりにおいてアジアの民族解放運動の画期をなすものでした。私たちは「3・1朝鮮独立運動100年」をこうした歴史的視点に立って見ていく必要があります。
(2)日本の敗戦ー朝鮮解放・分断から74年、停戦協定から66年
 中国、朝鮮をはじめとするアジアの人びとの長期にわたる民族解放闘争を背景とした、1945年の日本帝国主義の敗戦は、民族解放と脱植民地化のうねりをもたらしました。
 しかし、朝鮮では日本からの解放の喜びもつかの間、米ソによる南北分割占領が行われました。それは当時すでに始まっていた米ソ対立の結果であるとともに、日本軍の武装解除などを名目として行われたことに示されているように、日本の朝鮮植民地支配の結果もたらされたものであることを忘れてはなりません。
 分割占領された朝鮮では、1948年4月南北連席会議が開かれ多数の政党・社会団体代表が集まり、思想・信条を越えて統一国家樹立のための努力が続けられました。しかし、アメリカ主導の国連による南朝鮮だけの単独選挙強行などを経て、南北朝鮮の分断固定化は決定的なものとなりました。そして1950年には朝鮮戦争が勃発し、膨大な人的物的犠牲を出しながら1953年7月27日に停戦協定が締結されました。しかし、その後66年におよぶも朝鮮戦争の終結はなされず、現在の朝鮮半島の「危機」の根源となっています。
 こうした中でも、朝鮮半島の主人公である南北の人々は、6・15南北共同宣言(2000年)、10・4南北首脳宣言(2007年)など平和と統一へのたゆまぬ努力を重ね、昨年の4・27板門店宣言を経て、歴史上初めての米朝首脳会談を実現させるなど朝鮮戦争の終結と平和体制構築、非核化への大きな転機を勝ち取りつつあります。
(3)朝鮮半島の平和と日本の責任
 日本は戦後、朝鮮戦争で隣人たちがおびただしい犠牲を強いられているのを尻目に戦争「特需」により経済復興と再軍備をすすめ、またGHQの指令とはいえ掃海艇部隊や強襲揚陸艦要員を参戦させました。1965年には米国の指図に治って韓国と国交を結びましたが、その時の日韓条約は、日本の朝鮮侵略・植民地支配を「合法」と居直り、朝鮮半島の南北分断に自ら関与して締結されたものです。同時に結ばれた日韓請求権協定の「完全かつ最終的に解決済み」の記述を盾に被害者の賠償請求を拒み続けています。
 こうして戦後の日本と朝鮮半島の関係が決定づけられました。いまだ朝鮮民主主義人民共和国との間には国交すらなく、国交を結んだ韓国の被害者からも賠償請求が繰り返し発せられるのはここに起因しています。
 とりわけ、安倍政権はこの間の朝鮮半島の平和への動きの「蚊帳(かや)の外」で妨害者として振る舞っています。「北朝鮮の脅威」などと煽り、圧力と制裁を叫び、朝鮮半島の緊張を持続させようと躍起になってきたばかりか、こんどは韓国大法院が元徴用工の賠償請求を認めるや、請求権協定によっても「個人請求権は存続する」という従来の政府見解や日本の最高裁判決からも逸脱し、「国際法違反」などと声高に主張しています。さらに「高校無償化」から朝鮮学校だけを不当にも排除しています。こうした安倍政権の政策がヘイトスピーチなどを拡散させているのです。
 ここで浮き彫りになっているのは、いまだ植民地主義を清算できずにいる日本の姿です。今なお植民地主義を清算せず居直り、改憲・軍事大国化の道をひた走る安倍政治を一刻も早く終わらせることが、これらの状況を打開する一歩であり、3・1独立運動100周年を迎える私たちが今なすべき課題です。
 私たちは、今日においてなお「未完の解放」「未完の光復」としてその「完結」をめざす朝鮮半島の人びとの努力に学び、日本が平和国家として進むためにも、歴史を直視し「過去」の清算と植民地主義からの脱却、日朝国交正常化の実現、朝鮮半島の平和と統一に寄与する道を歩んでいきましょう!


「労働情報」連続シンポジウム第1回

       
中野麻美弁護士の講演  「非正規労働者の待遇改善に向けた焦点」

 2月20日、全水道会館で、「共同センター・労働情報」の連続シンポジウム《これからの労働運動を考える》の第一回が開かれた。
 中野麻美弁護士が「非正規労働者の待遇改善に向けた焦点〜労使の綱引きは障壁を乗り越えられるか」について問題提起。
 「日本型非正規雇用」とは、@日本型雇用システムの適用を受けない法の埒外におかれた労働、A自立して生きる基盤を奪われた、自立して生きようとすれば死ぬほど働く労働、B正規雇用のバッファーとして差別的に擬制を強いられる、C社会的差別やハラスメントによる影響を各段に受けやすい、D労使交渉の中心から排除された労働だ。雇用平等とは、前記のすべてを根絶することであり、そのために必要なことは非正規雇用の差別的構造を撤廃することだ。その法的根拠あるいは理念は、@労働における人権の保障〜不合理な差別の撤廃、A正規雇用=常用代替防止と非正規の雇用安定の権利を結合させる、B分配の正義、だ。
 長時間労働と非正規格差を是正させるという名目の「働き方改革関連法」が順次施行される。正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止は、@通常の労働者と同視すべきパート・有期・派遣労働者(派遣労働者の場合は派遣先の通常の労働者)に対する待遇ごとの差別の禁止。A通常の労働者と同視すべきでなくても賃金・待遇ごとの不合理な格差の禁止。B通常の労働者との均衡を考慮しつつ、職務の内容、職務の成果、能力、経験その他の就業の実態に関する事項を勘案し賃金等待遇を決定する「均衡待遇」努力義務。C使用者には、待遇格差の内容及び理由について説明義務を負担させる。D均等・均衡処遇に関する紛争については個別労使紛争処理制度を利用できるようにする。E労働者派遣関係においては、派遣先ごとに通常の労働者にも待遇が異なることから、前記の均等・均衡処遇のための規制枠組みに加え、同種の業務に従事する通常の労働者の平均賃金を下回らない金額で賃金協定を締結したときには均等・均衡義務を免れさせることとし、派遣元に前記の説明義務を負わせるとともに派遣先には情報提供義務を課した。
 こうした「改正」法は利用できるが、市場原理・使用者側の裁量権を克服する唯一の武器は、労使交渉であり、労働組合の力を強めて行くことだ。


私も言いたい移民政策

          
 〜外国人労働者受入れ政策を問う

 2月23日、明治大学リバティタワー教室で「移住者と連帯する全国フォーラム・東京2019プレフォーラム 私も言いたい移民政策 〜外国人労働者受入れ政策を問う〜」が開かれた。
 鳥井一平さん(NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事)が発言。少子高齢・人口減少社会による労働力不足が、加速化し、「2018年受入れ論議」となった。しかし、実はすでに約30年前から「労働者不足の事態」は明らかとなっていた。それがとりもなおさず「外国人労働者問題」であった。今回の入管法改正をメディアは一斉に、「政策の大転換」、「有史以来の初めての外国人労働者受け入れ」などとしているが、在留資格「特定技能1号・2号」の新設と入管局から庁への格上げのみで、それ以外は明確な説明が未だ行われていない。昨年秋の臨時国会の論議でも安倍政権は「移民政策と異なる」と強弁し、「4月施行」ありきで本当の議論をしない方針を貫徹した。だが一方で、わが国は外国籍労働者、移民の存在なくして成り立たない社会であることが明らかとなった。政府の移民政策は、依然として外国人を監視、管理の対象とするものである。外国人労働者を「労働者として」受け入れていないこの社会の実態は、外国人労働者総数約146万人の内、労働者としての在留資格での入国者(在留)は全体の19%に過ぎず、技能実習生と留学生で40%を越えていることに表れている。産業別にみると、外国人労働者の内、農業で79%、建設では67%が技能実習生となっている。また、地方においては、外国人労働者の大半を技能実習生が占める。技能実習制度の表向き建前の「技術移転」や国際貢献とは何ら縁もゆかりもなく、また、開発途上国の求める職種や業種ではなく、専ら日本の人手不足に対応していることを示している。私たちが求める外国人労働者受入れ論議は、この30年間の労働問題、人権侵害の事実を直視し、すでに移民外国人労働者がこの社会を支えている事実に立脚したものでなければならない。それは労働者が労働者として移動できるということに尽きる。この4月以降、外国人労働者は増大する。新たにやってくる外国人労働者を使い捨てにさせてはいけない。労働組合や市民団体の役割も問われる。「違い」を尊重しあう多民族・多文化共生社会へすすむための移民政策こそがこれからの社会に求められる。そこにこそ民主主義の深化の道があり、次の社会、持続可能な社会への展望が見いだせる。
 つづいて、外国人労働者からの発言があった。


KODAMA

       追悼 佐野稔先生(元和歌山大学教授)


2019年2月6日、佐野稔氏の他界の報告がもたらされた。94歳であった。
新年の年賀状が届いていたことを考えるとまさに寝耳に水であった。
佐野先生には関西での山川暁夫氏の講演会に参加していただいていた。また「人民新報」の読者でもあった。そして何よりもかなりご高齢になられた後も関西の反戦反安保、沖縄の集会やデモにも参加されていた。
 佐野先生は1924年札幌に生まれ、現役兵として電信第二五連隊に入営された経験をもち、9ヶ月で敗戦を迎えている。東北大学を卒業された後労働調査に関わったりした後、北海道大学法文学助手を経て和歌山大学に転任された。1990年同大学を定年退職された後、いくつかの大学で教鞭をとられてきた。この間、労働運動や労働運動史の研究をされてきた。その著書もイギリス労働運動史や日本の労働運動に関するものである。そして国鉄労働運動の研究や三菱重工の労働運動、全金南大阪の地域闘争といったような実践的な分析が多い。さらに国有林を巡る労働問題、白ろう病闘争の歩みと問題点といったような広範多岐に渡る分析をされてきた。1987年に書かれた地域ユニオン運動の分析は今日的に考えても興味深い。「現在の死に体の組合運動にとって起死回生の即効薬はあるわけではない。このような時、労働者が初めて人間の証として労働組合を創った原初、人間らしく生きるために職場と地域に戦いの自立的な組織を築く原則に立ち上がることが何よりも大切である」。これは現在に通じる視点である。
 ここ1、2年は国際労働運動研究者だった戸塚秀夫氏らの翻訳された水道や水資源の再公営化の世界的な事例に関するパンフレットや朝鮮半島を巡る本を送られてきた。問題提起であっただろうが、私などは日本社会では民営化に対して「公契約」で対抗という問題意識でさらに、その先の再公営化までは視野がいっていなかったといえる。
 私が佐野稔氏の名前を聞いたのは1970年代初頭であった。71年、阪神現代社から『季刊労働運動』を出版し、佐野先生が3冊の購入の電話をかけてこられた時、たまたま電話をとったのが私であった。それ以来、直接の接触はなかったが私の中では意識された存在であった。
 私は2018年3月にたまたま三里塚管制塔占拠40年集会が縁で雑誌『ピープルズプラン』編集部白川真澄氏より原稿依頼を受けた。同誌80号の「複数の1968」の中で、労働現場にいた経験者の原稿がないということであった。そして「個人史と社会史の交差点」という文章を書かせてもらった。関西ではこの本はあまり読まれていないと考えていた。
 数ヶ月して佐野先生よりハガキがきた。『ピープルズプラン』に掲載された私の一文を読んだという感想であった。まさか佐野先生が読まれているとは思ってもいなかったのでびっくりしてしまった。私のような社会運動の下積みを生きてきたものにとって何よりの《励み》となるものであった。
 その後もなにかと本やら送られてきた。何よりもご高齢に関わらず頭脳は最後まで明晰であられた。戦争経験者がまた一人私らの周りから消えていくのは何よりも寂しいものである。
 活動の先輩でありシベリア抑留の経験者であった砂場徹さんと佐野先生とが共通の空気を共有されていたのだと、今さらながらに思い出される。想いの一部だけでも残された私たちが背負っていくしかない。 (蒲生楠樹)


せ ん り ゅ う

    ずるっこいアベの不正が踊ってる

       悪夢とかアベ暴言暴政ぶり

    アベ答弁まるで大本営のごと

       夢のないアベ暴君のたったいま

    フクシマの猫君やはり白血病

       フクシマにおき残された犬猫たちを集め愛護。二匹の猫君を引き取り家に飼った方から話を聴いた。・・・一匹は三ヶ月で一匹は一年で白血病で死んだ。難病で医療に何十万も…東電に払ってもらいたい…すごく可愛い猫でね

       ゝ 史

2019年3月


複眼単眼

      
 憲法審の始動と改憲論議を阻止し、発議を止める

衆議院での予算案審議が決着して、参議院に回った。統計偽造の問題も、巨大な防衛予算の審議も、沖縄の県民投票もそっちのけで衆院予算委員会は職権で採決に持ち込んだ。
このあとの国会は、大きな対決法案がないと言われていることなどから、安倍改憲はいよいよ正念場に来た。
 衆院を予算案が通過する予定の3月1日、自民党・公明党の与党と、与党「協力会派」(というのだそうだ)の日本維新の会、希望の党、衆院会派「未来日本」の各憲法審査会メンバーに衆院憲法審の森会長も加えて衆院憲法審査会の与党側「幹事懇談会」を開くという動きがあった。
 この懇談会のあと、憲法審の与党筆頭幹事の新藤義孝幹事は「与野党が憲法論議を深めるのを国民が期待している(註・そんなことはない)。政局を離れて、国家・国民のための議論を深める使命を果たしたい」と発言し、憲法審査会を3月中に再始動させる考えを表明した。今後の野党との日程協議は新藤幹事に一任された。
 3月2日の読売新聞の報道では「(自民党は再始動させた憲法審査会で)継続審議となっている国民投票法改正案を早期に成立させたうえで、今国会中に『自由討議』を開き、4項目の党改憲案を提示するシナリオを描いている」という。記事では公明党も「自由討議までは容認する構えだ」。
そして「自民党では立民と国民が重視する国民投票をめぐるCM規制の議論を先行させ、憲法論議の呼び水にする案も浮上している」という。
 昨年の通常国会で継続審議になったのは公選法の改正に合わせた改憲手続法の微修正法案だった。国民や立憲は同法を修正するなら、単なる微修正ではなくテレビのCM規制の問題も議論すべきだという立場だ。この議論は同法の大きな改正の問題であり、簡単には終わらない。立憲の枝野代表は18年10月のラジオ番組で国民投票の際に賛成・反対の両派が流すテレビCMを規制する国民投票法改正の必要性を強調。「表現の自由にかかわるので1〜2カ月でできる話じゃない。ここから数年はこの議論をせざるを得ない」と指摘している。
しかし、国民と立憲が指摘する同法の問題点は、いまのところTV・CM問題に限られており、他の問題点、例えば最低投票率規定がないこと、国民投票運動期間の短さ、公務員・教員の国民投票運動規制が強いこと、などなどは視野に入っていない。同法を問題にするなら、国会はこれらの問題点を含めた抜本的改定に取り組まなくてはならない。運動と世論が野党に働きかけて、憲法審査会でこうした議論ができるかどうかが課題だ。
共産党は審査会再始動阻止という主張で、同法の抜本的再検討という立場ではなく、議論に加わっていない。自民党は同法の修正案でTV・CM規制の議論の容認を含めて野党を分断しようとしている。
本稿の冒頭でみたように新藤与党筆頭幹事は、野党筆頭幹事の山花郁夫幹事(立憲)に圧力をかけて、憲法審の再始動を働きかけるだろう。国民はすでに改憲手続法の修正案を党議決定している。
山花幹事と立憲が自民党の撒く餌に食いついてしまう可能性は少なくない。
憲法審査会の再始動をできるだけ遅れさせ、もし再始動したとしても審査会で改憲手続法の議論を引き延ばすだけ引き延ばし、自民党改憲案の「提示」をさせないことが当面の重要な戦術問題だ。これによって、今国会における改憲発議を食い止めなくてはならない。
 これに成功すれば、次は参院選で改憲反対派が最低でも3分の1以上確保し、改憲発議を不可能にすることだ。  (T)