人民新報 ・ 第1373号<統合466号(2019年5月15日)
  
                  目次

● 全国各地で5・3憲法集会

          安倍9条改憲阻止へ

● 中国人戦争被害者へのビザ発給拒否は「集会の自由」侵害という重大な人権侵害だ

          東京地裁国賠裁判・中国からの原告証人尋問

● 第90回日比谷メーデー

          人間としての生きる権利を確立し、平和で民主的な社会を創るために、安倍政権を打倒しよう!

● 秘密保護法を廃止せよ

          衆議院情報監視審査会度年次報告を読む

● すべてのハラスメントをなくすために

          ILOハラスメント包括的禁止条約の批准を実現しよう

● 「アイヌ新法」に異議あり

● 新防衛大綱の下で進む安倍大軍拡に反対しよう

● 朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!4・24集会

          6月の集会・デモ、シンポを成功させよう!
      
          国境を越えた市民の連帯で非核・平和の東アジアを創りだそう!

● 関西生コンを支援する会・結成総会

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  衆院憲法審、再始動したものの






全国各地で5・3憲法集会

         安倍9条改憲阻止へ


 5月3日、東京・有明防災公園(臨海広域防災公園)で、「平和といのちと人権を!5・3憲法集会2019―許すな!安倍改憲発議」(主催―平和といのちと人権を!5・3憲法集会実行委員会、共催―戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクション)が開かれ、6万5千人が参加した。
 集会スローガンに「私たちは、安倍政権のもとでの9条改憲発議は許しません。日本国憲法を守り生かし、不戦と民主主義の心豊かな社会をめざします。二度と戦争の惨禍を繰り返さないという誓いを胸に、『戦争法』の廃止を求めます。沖縄の民意を踏みにじる辺野古新基地建設の即時中止を求めます。被災者の思いに寄りそい、原発のない社会をめざします。人間の平等を基本に、貧困のない社会をめざします。人間の尊厳をかかげ、差別のない社会をめざします。思想信条の自由を侵し、監視社会を強化する『共謀罪』の廃止を求めます。これらを実現するために行動し、安倍政権の暴走にストップをかけます」が掲げられ、安倍改憲内閣を、いたるところからの闘う力を合流させて、打倒しようという人びとが結集した。
 会場には、出展ブースが並び、サブステージやライブステージでは、はやくから盛り上がりが見られ、正午からは、オープニングコンサートがはじまった。
 午後1時から、講談師の神田香織さんの司会でメイン集会がはじまった。
 主催者を代表して集会実行委員会の高田健さんがあいさつ。安倍首相は、ちょうど二年前の5月3日、新しい9条改憲案を提起するとともに、2020年には新憲法を施行したいなどと述べた。これまでの自民党改憲案ではなく、憲法9条に自衛隊を書き込むだけだといったが、実際には、迂回して、戦争する国としようとするものだ。そして改憲発議の策動を強めた。改憲派は、このままだと、災害救援などで働く自衛隊員がかわいそうだなどのキャンペーンを行ってきた。この間、私たちは、国会内の立憲野党と共闘し、署名運動をはじめ安倍改憲反対の運動を広げてきた。この二年の闘いによって、与党・改憲派は、国会の憲法審査会で自民党案の提示すらできなかった。通常国会は残すところあと一か月半だ。かれらは、強引に、この通常国会で改憲発議をやるのか、それができなければ夏の参院選で三分の二を獲得し、改憲にもっていくしかない。本日は全国各地で改憲反対の統一行動が行われている。この力をさらに強め、辺野古新基地建設反対をはじめとする沖縄課題、東北アジアの非核平和を実現する課題、原発再稼働に反対する課題、新防衛大綱など社会の軍事化に反対する課題、社会の格差・貧困をなくす課題、あらゆる差別に反対し人権と平等を実現する課題などと結びつけ、国会の野党と協力して、この通常国会での改憲発議を必ず阻止しよう。そして参院選挙では野党と市民の共闘を実現し、安倍9条改憲派の三分の二を阻止しよう。連休明けには野党各党と市民連合の政策協定も実現する。この上に立って、参院の32の一人区での候補者一本化を必ず実現しよう。野党の候補者を一本化しなければ勝利は問題にならない。そして一本化だけでは勝利は保証されない。そのもとで私たちが互いに支持しあって全力をあげなければならない。今日はその出発点だ。集会を成功させるために最後まで頑張ろう。
 メインスピーチでは、湯川れい子さん(音楽評論家)、元山仁士郎さん(「辺野古」県民投票の会)、高山佳奈子さん(京都大教授)、永田浩三さん(元NHKプロデューサー、武蔵大教授)が思いを語った。
 国会からは、枝野幸男・立憲民主党代表、玉木雄一郎・国民民主党代表、志位和夫・共産党委員長、又市征治・社民党党首、伊波洋一参議院議員(沖縄の風)という党首クラスから政党代表のあいさつ。衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」と玉城デニー沖縄県知事からは連帯メッセージが寄せられた。
 また市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)から、東京大名誉教授の広渡清吾さんが、市民と野党の協力した力で安倍政治を終わらせようとの訴えが行われた。
 リレートークでは、東京朝鮮中高級学校合唱団(朝鮮高校の無償化からの排除問題)、東京大学教授の本田由紀さん(貧困格差問題)、福島原発原告団団長の武藤類子さん(フクシマからの訴え)、移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事の鳥井一平さん(外国籍労働者問題)がアピールした。
 最後に、集会実行委の福山真劫さんが、閉会あいさつと行動提起を行いった。
 クロージングコンサートで「HEIWAの鐘」の合唱の声が流れる中、豊洲、台場コースの二つにコースでパレードへ出発した。
 この日、大阪、神戸、名古屋など全国各地で、多くの改憲反対の催しが行われ、改憲阻止・安倍内閣打倒の声を挙げた。


中国人戦争被害者へのビザ発給拒否は「集会の自由」侵害という重大な人権侵害だ

            東京地裁国賠裁判・中国からの原告証人尋問


 2015年11月27日、東京で、「村山首相談話の会」が中心となった実行委員会主催の「戦争法の廃止を求め、侵略と植民地支配の歴史を直視し、アジアに平和をつくる集い」が開催され、中国から招聘された日本軍の細菌戦争の犠牲者の遺族と支援団体の弁護士・公務員など12名の来日予定者全員が日本外務省によってビザ発給を拒否され、日本への入国ができなかった。12人は、11月上旬に北京の日本大使館と上海の総領事館にビザを申請したが、大使館側は「調査中」などとして、引き延はしたうえで、25日になって「発給しない」としたのである。中国から招聘者は参加できず、こうした日本外務省の行為は集会に対する妨害行為外の何ものでもない。このビザ発給拒否は、集会の名称に「戦争法の廃止を求め」との文言があるのを口実にしたもので、日本国憲法が保障する「集会の自由」を侵害する憲法違反の暴挙だ。
 これに対し、日中の6名が原告となって、中国人戦争被害者へのビザ発給拒否は、戦争法廃止を求める「集会の自由」侵害という重大な人権侵害であり、その責任を追及して、国家賠償請求の裁判を東京地方裁判所に提訴し、闘いがつづいている。

 4月18日には東京地裁103号大法廷で「ビザ発給拒否国賠裁判」が行われ、多くの市民が、監視・傍聴のために法廷に入った。原告の高峰さん(中国湖南省の細菌戦被害者)と田中宏さん(一橋大学名誉教授)が証言した。
 そののち、衆議院議員会館で報告集会(主催―ビザ発給拒否・集会妨害裁判を支援する会)が行われ、政治評論家の森田実さん、高嶋伸欣・琉球大学名誉教授、昨年12月に靖国神社で抗議行動をおこなった香港の2人の逮捕・起訴・長期勾留について長谷川直彦弁護土が報告し、そして、原告の二人と弁護団から発言があった。
 原告のひとり田中宏さんは次のように述べた。今回、千円札の肖像が渋沢栄一にかわるが、聖徳太子から伊藤博文にかわったのが1963年だった。伊藤は植民地支配の責任者の一人であり、そうしたことに全く反省のない日本政府の姿勢があった。当時、外国で会った人から、日本は植民地支配のことをどう考えているのか、清算する気があるのか、という質問をうけることが多くあった。当時は、林房雄の「大東亜戦争肯定論」が雑誌「中央公論」に掲載されたり、また東京オリンピック、東海道新幹線、首都高速道、東京モノレールなどの雰囲気があおられ、戦没者叙勲が再開された。一方で、ベトナム戦争の激化があり、反戦運動も盛り上がったが、その中で、ベトナム人留学生に当然のようにフランス語で話しかける東大生があり、その後も『赤旗』の広告には「日本ベトナム友好協会・フランス語講座―インドシナ三国で普及しているフランス語を学んで、インドシナ人民と友好を」などとあり、植民地支配にたいする日本人の鈍感さに驚かされた。それはいまもつづいている。今回の日本政府のビザ発給拒否・集会妨害は、決して許されるものではなく、裁判に必ず勝利しなければならない。
 最後に、伊藤彰信さん(日中労働者交流協会会長)が閉会挨拶を行った。
 
 次回の口頭弁論は5月17日に行われる。


第90回日比谷メーデー

         人間としての生きる権利を確立し、平和で民主的な社会を創るために、安倍政権を打倒しよう!


 5月1日、第90回日比谷メーデーが6000人の結集で開かれた。全労協、けんり春闘、中小民間労組懇談会などで構成される実行委員会の主催で、「働く者の団結で生活と権利、平和と民主主義を守ろう!」をメインに「9条改憲反対!辺野古新基地建設阻止!安倍政権の退陣を!」「なくせ貧困・格差 8時間働けば暮らせる社会を!」「外国人労働者との連帯・共生を! 原発ゼロ社会の実現を!」をスローガンにかかげた。
 集会をはじめるにあたって、「インターナショナル」を参加者全員で歌った。
 主催者を代表して、鎌田博一国労東京地本委員長があいさつ。安倍政権は、改憲発議、国民投票で2020年新憲法施行を強行しようとしている。いま、平和憲法に対する最大の危機の局面にある。沖縄辺野古基地建設、オスプレイの全国配備、日米軍事同盟強化の反動政治を行っている。福島原発事故で5万人もの故郷を奪われた人がいるのに、つぎつぎに各地の原発を再稼働させている。非正規労働者は増加し続け、格差と貧困が広がっている。働き方改革、改正入管法、水道民営化など安倍政権は多くの人びと生活を破壊している。労働者の団結ですべての闘いを前進させよう。参院選、またそれが衆参同時選挙となっても、安倍与党に打撃を与える勝利を勝ち取り、安倍政権の早期退陣をめざして闘おう。
 連帯あいさつは、西川晋司都労連委員長と第90回中央メーデー実行委員会(全労連などの代々木メーデー)の野村幸裕全労連事務局長が行った(なお、代々木メーデーでは、中岡基明全労協事務局長が日比谷メーデーを代表してあいさつした)。藤田裕司東京都産業労働局長と福島みずほ社民党参議院議員が来賓あいさつ。
 決意表明・訴えは、非正規雇用(全国一般東京労組メトロセルビス分会)、外国人労働者(全国一般東京南部)、反戦平和(5・3憲法集会実行委員会)、争議組合(全日建関西地区生コン支部)から行われ、メーデー・アピールが採択された。そこでは「私たちは、すべての労働者の要求実現に向けストライキで大幅賃上げ、非正規労働者の均等待遇、最低賃金の引き上げを要求すると共に、労働法制の大改悪に反対して雇用破壊を許さず労働者保護のために闘っていきます。また、戦争国家体制に反対し、平和憲法9条を活かし自衛隊の『国軍』化への転換となる憲法改悪を阻止していきます。…人間としての生きる権利を確立し、平和で民主的な社会を創るために、安倍政権を打倒しましょう。今こそ、貧困と格差社会反対、憲法改悪反対、震災復興、脱原発、平和と民主主義を掲げ、すべての労働者市民、そして戦争に反対する全世界の人々と手をつなぎ、ともに闘っていきましよう」と訴えた。
 渡邉洋金労協議長による「団結がんばろう」で第一部が終了し、第二部の「みちばたチャンプル」の演奏のなか、土橋、鍜治橋の二つのコースのデモに出発した。


秘密保護法を廃止せよ

        
 衆議院情報監視審査会度年次報告を読む

 森友・加計問題によって、公文書がキチンと保存されないばかりか、隠蔽、改ざんがおこなわれていたというとんでもない事態が明らかになった。秘密保護法は、防衛・外交・治安などに関する情報を市民の目から隠そうとするいがいのなにものでもない。そして、何が「特定秘密」なのかも秘密にされるので、主権者である市民には何も知らされないまま、ことは進められていくことになる。
 こうしたなかで、立法府につくられた議員で構成される衆参の情報監視審査会は、厚いベールにつつまれた行政の「秘密指定」の実態にメスをいれることのできる可能性をもった機関と思われる。

 5月7日、秘密保護法廃止!共謀罪法廃止!12・6―4・6忘れない6日行動」は、昼の国会前抗議行動につづいて、衆議院議員会館で院内集会おこなった。専修大学教授の山田健太さんが「衆議院情報監視審査会『平成30年度年次報告書』を読み解く」と題して講演した。いま、公文書の改ざん・隠蔽・廃棄と巧妙化する「見せない化」がすすんでいる。そして、監視を監視するジャーナリズムの「無関心」が広がっている。不完全な制度の固定化がなされようとしている。今年の12月で、秘密法の施行から5年たつ。施行後5年は運用基準(特定秘密の指定及びその解除並びに適正評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準)の見直しの年だ。これまでの国会監視活動から見えてきたものは、限られた権能だが、それをうまく活用し一定の成果をあげたといえる。今後、不安の払拭と日本型モデルの構築が必要だ。まず視点として求められているのは、@特定秘密に関する監視活動をどのように行っていくか、A政府内部の監視活動との差異をどのように示すのか、B特定秘密の実態をどのように効果的に把握するのかC現局の秘密保護法の運用が監視活動を阻んではいないかD行政との信頼関係の構築と国民からの信頼感の獲得をいかに同時実現するか、ということだ。それに将来に向けての課題として、@審査会の審査対象についてA審査会の機能・役割についてB特定秘密保護法の監視体制についてC特定秘密保護法の構造についてD情報公開法・公文書管理法との関係について、明らかにすることである。必要とされるのは、現行枠組みを超えた制度改善への道筋をつけることで、意思決定過程を含む会議公開法の制定、そして、行政文書公開法から司法・立法含めた国家情報公開法の制定へということである。


すべてのハラスメントをなくすために

           ILOハラスメント包括的禁止条約の批准を実現しよう


 財界主導の新自由主義の風が吹きまくり、企業が目先の利益をあげるため職場では各種のハラスメントが横行し、社会が壊れていく。さすがに、政府も、ハラスメントに関する法改正を含む女性活躍推進法等の改正法案(「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」)を、4月25日に国会に提出して、衆議院本会議で可決され、審議は参院に移された。しかし、それもパワハラについて、事業主の措置義務を定めるのみで、禁止規定の法制化は見送られ、セクハラについても、明確な禁止規定はないなどきわめて不十分なものだ。今年6月のILO(国際労働機関)総会では、ハラスメントを包括的に禁止する内容の条約(「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶に関する条約」)が採択される。その条約(案)第1条は、ハラスメントを「仕事の世界における『暴力とハラスメント』とは、一回性のものであれ繰り返されるものであれ、身体的、精神的、性的または経済的危害を目的とするか引き起こす、またはそれを引き起こす可能性のある、許容しがたい広範な行為と慣行、またはその脅威をいい、ジェンダーに基づく暴力とハラスメントを含む」としている。同第4条(b)は、ハラスメントの加害者に「国内法および慣行に即したクライアント、顧客、サービス事業者、利用者、患者、一般の人々を含む第三者」が含まれていて、あらゆる形態のハラスメントを包括的に禁止する内容となっている。
 しかし、日本政府はこれを批准するかを明らかにしていない。
 いま、ハラスメント被害の実態を明らかにし、ILO条約の批准と必要な国内法の整備が求められている。

 4月25日、連合会館大会議室で、日本労働弁護団主催の「ILOハラスメント禁止条約を批准しよう!〜ハラスメント対策後進国と呼ばれないために〜」が開かれた。
 労弁護団事務局次長の新村響子弁護士が報告。今回の法改正では、パワハラに対する事業主の措置義務が定められたことは第一歩として評価できるが、それでは足りない。措置義務が施行されてから10年たってもセクハラはなくならない。根本的な法律が必要だ。労働弁護団は、すでに「職場のいじめ・嫌がらせ防止の立法提言」を行っている。そこでも指摘しているが、パワハラ、セクハラ、マタハラだけでなく、すべてのハラスメントを対象とすべきであり、そして事業主に対する措置義務だけではなく、労働者の権利規定、行為禁止規定を設けるべきである。また指針や運用においても、実効性のある内容でなければならない。
 連合の井上久美枝総合男女雇用平等局総合局長は、ハラスメント対策関連法案はあらゆるハラスメントを禁止するものになっていないとし、ILO条約を速やかに批准させ、国内の法整備させる運動の広がりをよびかけた。また、南彰さん(新聞労連委員長)、池田宏さん(LGBT法連合会共同代表)、竹下郁子さん(ジャーナリスト)、白河桃子さん(少子化ジャーナリスト、作家)が発言し、最後に集会アピール(別掲)が参加者の拍手で確認された。

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「ILOハラスメント禁止条約を批准しよう!〜ハラスメント対策後進国と呼ばれないために〜」集会アピール

 職場のハラスメント(職場のいじめ・嫌がらせ)は、深刻な社会問題である。本日の集会でも、登壇いただいた皆さまの報告から、職場における様々なハラスメント被害を救済する必要性が明らかとなった。
 政府は、現在審議中の通常国会に、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」を提出し、衆議院で可決された。
 この中で、事業主に対して職場のパワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講じることを法律で義務付けるとの方向性が示された。
 また、附帯決議において、第三者からのハラスメントを受けた被害者あるいは加害者に対しても雇用管理上の配慮が必要であること、性的指向・性自認に関するハラスメントやアウティング行為もパワハラの対象となること、就活生やフリーランスに対するセクハラ防止措置が必要であることなどを指針に定めることとされた。
 日本労働弁護団が従来から述べてきたように、パワハラ・セクハラ・マタハラというカテゴリーに分類してそれぞれ規制する法制度の在り方には限界があり、本来であれば、あらゆるハラスメントを包括的に防止・規制する独立の「職場のハラスメント防止法」の立法が必要である。その中には、雇用、就業形態に関係なく職場で働くすべての労働者が保護対象とした上で、事業主の措置義務規定に加え、ハラスメントのない環境で働く労働者の権利を確認する規定を設けるべきである。
 また、ハラスメント防止の実効性を確保するためには、附帯決議でも触れられているように、損害賠償義務の根拠規定となりうるハラスメント行為禁止規定の創設が求められる。
 6月のILO総会では、極めて広範なハラスメントを対象とした仕事の世界における暴力とハラスメントの禁止条約が採択される予定である。日本もこの条約を批准するとともに、国内法を整備すべきである。
 今回、新たにパワハラに対する事業主の措置義務が設けられ、ハラスメント対策が進んだことは評価できるが、あるべきハラスメント防止法の観点から見れば、改善すべき点はまだ多い。私たちは、この法案を着地点とすることなく、より実効性のある法整備を目指していくとともに、職場におけるあらゆるハラスメントの根絶に取り組んでいくことを宣言する。


「アイヌ新法」に異議あり
 
 四月一九日、参議院本会議において与野党の賛成多数で「アイヌ新法」(正式には、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」)が可決、成立した。しかし、アイヌ民族が受け続けてきた差別や収奪の歴史を考えた時、あまりにも拙速で、不十分な審議のままでの成立であり、改めて人権意識の希薄な政治の在り方が浮き彫りにされた。
 今回成立した「アイヌ新法」は、次の内容を骨子としている。
 ●法律として、初めてアイヌ民族を「先住民族」として位置付けたこと。
 ●アイヌ民族への差別や権利侵害を禁止したこと。
 ●北海道白老町に開設予定の国立アイヌ民族博物館を含む民族共生象徴空間(通称「ウポポイ」)の管理規定を設けること。
 ●アイヌ文化継承や観光振興などにつながる地域計画を策定した市町村に対する交付金制度を創設すること(首相によって認可)。
 ●アイヌ文化伝承を目的とした特別措置として、国有林の樹木採取の規制緩和、サケの捕獲への配慮、商標登録の手数料軽減を行うこと。
 また、参議院国交委員会の「付帯決議」には、次のことが盛り込まれている。
 ◆「先住民族の権利に関する国連宣言」の趣旨を踏まえ、諸外国の先住民族政策の状況にも留意し、アイヌ施策のさらなる検討に努める。
 ◆アイヌ民族への不当な差別的言動の解消に向けた実効性のある具体的措置を講じる。
 ◆施行後、施行状況について適時適切に検討を行い、課題に必要な措置を講じ、その際にはアイヌ民族の意見を十分踏まえる(なお、「新法」の成立により、一九九七年に制定されたアイヌ文化振興法は廃止となる)。
 この「新法」については、アイヌ民族の中でも大きく賛否が分かれている。北海道アイヌ協会の幹部を中心として「歴史の大きな一ページになる」と評価している人たちがいる一方、「アイヌを利用して観光振興をしたいだけでは」と疑問視する声、さらにはアイヌ民族が長年求めてきた先住権や生活、教育支援等が盛り込まれなかったことへの落胆の声もある。
 今回の「アイヌ新法」をめぐっては、アイヌ民族有志らでつくる「先住民族アイヌの声実現!実行委員会」がアイヌ側の要望を取りまとめた要求書を、二〇一八年一二月一四日、国(内閣官房室)に提出している。その内容は、二〇一八年春以降、内閣官房アイヌ総合政策室と継続的に行なったチャランケ(アイヌ語で「談判」の意)を踏まえたもので、要求は一二項目にのぼっていた。
 主な要求項目として、@従来の国のアイヌ政策でアイヌの権利や文化が深刻な打撃を受けたことへの国の反省と謝罪、A「アイヌ民族議会」などを通じた自決権の確立、B新設の「交付金制度」は、アイヌが幅広い目的で主体的に使えるようにする、Cアイヌ文化復興に向け漁労、狩猟、採集を認める。登録制による伝統的サケ漁の解禁、生存捕鯨の権利確立、自然条件に恵まれた土地の返還、などを求めている。また、アイヌ遺骨問題をめぐっては、I国および当事者である大学や研究機関の謝罪、問題解決に向けた枠組み作り、今後の研究利用をやめることなどを要求している。
 そして、三月三日には、札幌市においてアイヌ政策市民会議、アイヌ民族の有志ら一〇〇余名が参加して「世界標準の先住民族政策を求める」として緊急集会、デモ行進が行われた。
 ところで、アイヌ民族の歴史をふり返ると、明治期に行われた北海道の開拓政策は、アイヌモシリ(人間の住む、静かな大地〜北海道)に対する侵略・植民地化そのものであり、「開拓使」が次々と布達を出し、「人が亡くなった時の家焼きの風習の禁止」「女性の入れ墨、男性の耳環の禁止」さらには「創氏」を強制され、アイヌ語を話すこと、鹿猟やサケ漁も事実上禁止になり、北海道の開拓が始まって約三〇年間の間に、アイヌ民族は、次々と土地や狩り場、漁場を奪われ、貧困状態は深刻化し餓死者も出るなど、まさに民族の存亡にかかわる事態に追い詰められていった。さらに、アイヌ民族を「旧土人」と蔑み、彼らの生活と文化を否定した、徹底した差別的同化政策でもあった。その手法は、後のアジア・太平洋戦争期における、中国や朝鮮などのアジア諸国に対する植民地政策にも継承されていったのである。
 今回の「アイヌ新法」の最大の問題点は、国のアイヌ政策によってアイヌの権利や文化が深刻な打撃を受けたことへの「国の反省と謝罪」がないことである。既にネット上では、ネット右翼等から今回の「アイヌ新法」に対して「疑問の声」が多数投稿されている。その大きな根拠となっているのが「法の下における平等」(憲法一四条)で、「何故アイヌだけ特別扱いするんだ」という声が飛び交っている(参議院本会議でも、保守派の議員から同様の意見が出ていた)。こうした声に対して、政府は、アイヌ民族に対して行った「歴史的不正義」についてきちんと説明し、まず「反省と謝罪」を行う責務があり、それが「多民族・多文化共生社会に向けての立脚点」になるのではないかと思われる(もちろん、先住権、土地所有権、民族自決権なども重要な解決すべき課題である。それらの解決に向けて、まず国が「反省と謝罪」することが、すべての起点となるはず)。
 世界に目を向けると、最近では台湾やカナダなどにおいて、二〇〇七年に採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」に基づいて、先住民族に対してくり返されてきた「侵略・収奪」的な行為に対して、行政の代表が正式に謝罪し、先住民族の権利をどう具体化し、どういう政策を決定していくべきか、「歴史的不正義委員会」(先住民族の代表が議長を務める)などを設立して建設的な議論に入っている。
 「アイヌ新法」を、今回のはなはだ不十分な内容のまま終わらせるわけにはいかない。われわれもまた、先住民族としてのアイヌ民族の権利について、より深く理解し、「アイヌモシリを侵略、植民地化した」国としてどういう政策をとっていくべきか、アイヌ民族の声に真摯に耳を傾け、考えていく必要があるのではあるまいか。  (北海道一読者)


新防衛大綱の下で進む安倍大軍拡に反対しよう

 2018年12月18日、安倍政権は「31年度に係る防衛大綱」を発表し、同時に新中期防衛計画を発表した。防衛大綱は10年を目安とするとされながら、前回の防衛大綱は5年で見直された。それから間もなく5カ月目になり、この内容について分析した多くの文献なども出ているが、前防衛大綱に基づく前中期防衛計画と今回の新防衛大綱と新中期防衛計画を私なりにあらためて比較検討を加えてみた。すでに、世に出ている批判などとの重複を承知の上で、少し述べてみたい。

 新防衛大綱と中期防衛計画は、まさに軍拡路線であり、2015年安保法制によって踏み出した「戦争する国」への、具体的な軍事力保持の現実化に向かうものであることがはっきり見えてくる。
 岩屋防衛大臣は2018年12月18日の記者会見で「専守防衛を前提に、従来の延長線上ではない、真に実効的な防衛力のあるべき姿を見定めるために、防衛省内での検討や、閣僚間での議論を重ね、本日、結論を得るに至ったところでございます。…(中略)…望ましい安全保障環境の創出、脅威の抑止、さらには、万が一の場合における脅威への対処といった3つの防衛の目標を明確に示しております。また、これを達成する手段である、我が国の防衛体制につきまして、すべての領域の能力を融合させる領域横断作戦等を可能とする、真に実効的な防衛力として、『多次元統合防衛力』を構築してまいります」と述べた。
 実際に詳しく新防衛大綱と中期防衛計画を読んでみると、許すな!憲法改悪・市民連絡会の第133回市民憲法講座のなかで小沢隆一さんが話されている「専守防衛の完全な変質と多次元統合防衛力」の姿がはっきり見えてくる。
 少し具体的にみると、つい先ごろ墜落事故を起こしたF35Aの導入についても、これまでの導入目標を42機(現在までで13機が導入されているという)から147機に拡大し、そのうち、42機をF35Bにするとしている。ちなみに、F35BはSTOVL機と言われ、短距離離陸、垂直着陸機能を有するというもので、これまで「ヘリ空母」とされてきた、いずも型護衛艦(「いずも」「かが」)の改修による空母化及び増艦(新造)とセットになっている。F35AもF35Bもともに敵地攻撃型のステルス戦闘機であることは衆知のことである(F35Aの事故に関しては前号で記事になっているので省略)。
 政府は「専守防衛を前提」とする建前上、護衛艦改修による「空母化」について、「空母ではなく、大災害時の避難船、病院船など多機能護衛艦にする」としているが、「いずも」や「かが」とほとんど同じ長さ(250m)の甲板滑走路を備えたアメリカ軍の強襲揚陸艦と酷似している(この問題については、4月28日の毎日新聞に関連記事があるので参考にされたい)。 現にF35B導入のための自衛隊幹部の見学会は、佐世保に配備された米第7艦隊の強襲揚陸艦上で行われたことが発表されている。日本政府が「空母」というかどうかではなく、問題はその機能が使われ方によって、いとも簡単に攻撃型の軍艦になってしまうことにある。
 「いずも」や「かが」の改修及び同型の追加建造や、これらを含む計7隻の護衛艦を多機能型へ改修することは最近改めて発表された。だが、これらの護衛艦はすでにアメリカ軍の原子力空母と訓練を共にしてアジア太平洋に展開し、実際の米艦護衛任務も行っている。改修後にはアメリカ軍のF35Bの着艦も想定のなかに入っているという。まさに、日米軍事同盟の強化のなかで、日米共同軍事行動の具体化が進むことになる。
 これらはジブチの自衛隊基地の恒久化とともに、「アジア太平洋地域の安全環境の改善」の一環との表現ともあいまって、海外展開を正当化している。
 その他に、空対地のミサイル、中距離ミサイルの装備や空中給油体制の拡充といった装備面での敵地攻撃力の強化や遠距離移動能力の強化が盛り込まれている。もちろん、以前から問題になっているイージス・アショアの導入やオスプレイの導入も明記されている(前回の中期防衛計画ではオスプレイはテルトローター機という表現であったが今回はオスプレイと表現している)。 そのうえ、前回まではオスプレイは大型ヘリの代替えとしての導入であったはずなのに、オスプレイも大型ヘリの新規購入も追加されることになっている。
 さらに、新中期防衛計画の「衛生」という項目にはまさに海外での戦闘を想定したとみられる「戦傷医療対処能力の向上」という言葉が使われ、「第一線から最終護送先までのシームレスな医療・後送体制の強化、速やか医療拠点を展開し患者の病状を安定化させるためのダメージコントロール手術を行う機能・護送中の患者の管理機能の充実」と明記されている。前回までとは大きく変化している。
 そして、今回の最大特徴は、「宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする、真に実効的な防衛力と して、多次元統合防衛力の構築に向け、 防衛力の大幅な強化を行う」という表現に表れている。
 その具体的展開は最近の日本と米国の2+2、つまり防衛・外務の4閣僚会議の結果として公表された「日本が重大なサイバー攻撃を受けた場合に日米安保条約第5条の適用対象になる」ことについてのアメリカと合意である。
 さらに、これに関連して岩屋防衛大臣は国会の防衛外交委員会で、「日本がサイバー攻撃を受けた場合に自衛隊が他国に武力攻撃をすることがありうる」という内容の答弁をした。
 サイバー攻撃がどのような形で行われて、どのような危険かの判断はアメリカが行うという前提での話しだから、極めて危ない。サイバー攻撃はどこの誰が行ったかなどについて、それがどれほどの被害をもたらしたかなど、いくら技術が進んでも、監視を強めても、その被害を把握するのは簡単ことではない。サイバー攻撃が「国民の生命、生存に影響している」という判断にいたっては簡単にできる話ではない。それなのに、「重大なサイバー攻撃を受けた」ということ、もしそれが嘘でも「武力攻撃」が始まってしまう危険があるのだ。
 サイバー攻撃という、どこの誰がどこからやってもすぐには特定できない曖昧な状態でも、日米安保条約第5条が適用され、自衛隊が「相手国に武力攻撃する」など、もはや戦争そのものであり、これを「専守防衛」などとくくることはできない。こんな危険なことを防衛大臣が平然と国会で答弁できてしまう状況が、新防衛大綱・新中期防衛計画のもとで進み始めているのである。
 また、宇宙空間での問題に関しても、本来平和的な研究開発機構であるはずのJAXAとの連携も公然と組み込まれ、宇宙空間の争奪の分野における米軍との連携も進められようとしている。最近、そのための司令部を横田基地に置く話も出され、ここでも米軍と自衛隊の一体化が報道されている。
 さらに、電磁波関連でも軍事使用目的のための、周波数の再割り当てが急速に進められ、監視が強化されることも予想できる。そして、これらの運用のための高度な知識を持った人材の確保のために、自治体や教育機関への政府の介入が一層強まることも予想できる。
 こうした流れは2013年に始まった国家安全保障戦略に端を発していて、日米ガイドラインが基礎になっていることもはっきりしている。2014年7月の集団的自衛権行使を容認する憲法9条の解釈改憲から、2015年に強引に法制化された安保法制2法(戦争法)の具体的展開である。 戦争への道は確実に進んでいる。もはや、この国の軍事力は「解釈改憲」では説明がつかない段階に至り、さらに拡大されようとしている。
 世間は新元号とともに、何かを期待する情緒的な「新しい時代」に浮かれ気味の傾向があるが、とんでもない戦争準備が着々と進んでいるのだ。
 だからこそ、「憲法9条への自衛隊の明記」などという改憲を絶対にさせてはならない。
 5年間で27兆6700億円という膨大な防衛費とさらに、17兆1700億円という後年度負担(借金)を含めた軍拡予算に反対する市民運動を展開していかなければならない。 (N)


朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!4・24集会

       6月の集会・デモ、シンポを成功させよう!   国境を越えた市民の連帯で非核・平和の東アジアを創りだそう!

  「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」や「3・1朝鮮独立運動100周年キャンペーン」などによる「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!市民連帯行動」実行委員会は、「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!みんなの願いを一つに集まろう!」を合言葉に、6月7日(金)に集会(日比谷野外音楽堂)とその後のデモ、8日(土)のシンポジウム(星稜会館)を予定している。掲げられたスローガンは、「東北アジアに非核・平和の確立を!安倍政権は平和の流れを邪魔するな!日本政府は核兵器禁止条約を支持し、批准を!加害の歴史を直視し、過去の清算を!日本軍『慰安婦』課題、徴用工課題の解決!日朝国交正常化を!在日韓国・朝鮮人の人権の確立!朝鮮高校の授業料無償化の実現を!日本国憲法9条の破壊反対!日韓・日朝市民の連帯と共生!」だ。この取り組みを大きく成功させて、平和の動きに逆行する安倍政権やアメリカ政府の戦争の動きを押しとどめよう。そして東アジアの平和と朝鮮半島の南北統一、民族や国境の壁を超えて民衆連帯を発展させ、東北アジアで新しい秩序が形成しよう。

 4月24日には、同委員会の主催で、文京区民センターで「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!集会」が開かれた。岡本厚さん(元「世界」編集長)、小林愛子さん(広島被爆者、張本勲さんの姉)、李泳釆さん(恵泉女学園大学准教授)が発言した。


関西生コンを支援する会・結成総会

 全日建関西生コン支部にたいする大阪府警や滋賀県警による権力弾圧がつづいている。
 4月15日、参議院議員会館で「関西生コンを支援する会」結成総会が開催された。
 呼びかけ人は、鎌田慧(ルポライター)、佐高信(評論家)、宮里邦雄(弁護士)、海渡雄一(弁護士)、内田雅敏(弁護士)、藤本泰成(平和フォーラム共同代表)、菊池進(全日建委員長)の皆さんで、会の目的と活動は、@全日建関西地区生コン支部の役員・組合員らに対する不当な長期勾留と接見禁止の即時中止および保釈、A組合つぶしを目的とした、憲法28条・労働組合法1条2項に違反する不当捜査の即時中止、B公正かつ迅速な裁判による無罪判決の追求、だ。
 総会後の記念講演で、宮里邦雄弁護士は次のように述べた。団結禁止法時代のイギリスでは、労働運動は刑事弾圧されてきたが、これ対する長く苦しい闘いが労働基本権を確立させてきた。今回の関生事件は、労組の正当な活動が、強要罪・恐喝罪だとして弾圧されており、かつてのイギリスと同じようなことになっている。こうした暴挙は、労働者、労働組合にとって極めて重視しなければならない事態であり、おおきく連帯した運動で反撃していかなければならない。


せ ん り ゅ う

平か成らず貧富の差ひどく成

     令下す天下人には和の暮らし

ウン万円五輪チケット誰のもの

     文明はすすむ自然をぬすみぬすみ

猫より安く買える外国の手

     人材という国策の奴隷です

来日の希望と夢は嘘の国

                  ゝ 史

2019年5月


複眼単眼

       
  衆院憲法審、再始動したものの

 衆院憲法審査会は5月9日、約1年半ぶりに実質審議が行われ、憲法改正手続法(国民投票法)で定めるテレビCMのあり方をめぐり参考人聴取を行った。
 参考人は日本民間放送連盟(民放連)の幹部。
 同法では憲法改正の是非を問う国民投票の実施日の14日前まで広告・宣伝活動への規制はなく、テレビCMも自由となっている。これが資金力量の多寡によって大きな格差が生じることなど、この間、同法の問題点が各方面から指摘され、法的規制、自主的規制の必要性が指摘されてきた。
 しかし、この日、民放連は表現の自由に抵触する恐れを理由にCM量の自主規制に反対する立場を表明し、法的規制にも反対した。
 立憲民主党の枝野幸男代表は質疑で「同法は自主規制が前提で作られた。自主規制をしないなら、立法の前提が崩れ、現行法は欠陥法となる。このままでは施行できない」「憲法審査会に同法案を作成した、当時の与党筆頭幹事の船田元氏や、野党筆頭幹事だった自分を参考人として招致し、議論すべきだ」と主張した。
 自民党はこの日の意見聴取をもって審議を打ち切り、次回は昨年の通常国会以来、継続審議となっているこの改憲手続法を改正公選法に合わせて投票の利便性を図る問題に絞った改正案の審議・採決をするよう野党に提案したが、野党側は応じなかった。
 今後、憲法審査会の運営をめぐって与野党の攻防が激化する局面にある。
 実は、この日に先だって、4月18日、萩生田光一自民党幹事長代行はインターネットテレビの番組で、衆議院の憲法審査会が野党との調整がつかず、開催の見通しが立たないことについて「この状況を国民は望んでいない」「やるしかないところまで来ている」と発言した。「新しい時代になったら、自民党は少しワイルドな憲法審査を進めていかないといけない」と言った。彼は「ここまで丁寧に我慢してきた。令和になったらキャンペーンを張るしかない」とも発言した。 
 この発言はとんでもない暴言だ。
 「元号が変わったら、憲法審査会の運営を改めて、ワイルドにやる」というのは、理解しがたい議論だ。萩生田氏は野党の反発の前に「撤回」したが、これが萩生田氏の本音であることは疑いない。
 9日の審査会の再始動はこうした経過の中で行われたもの。
 しかし、次回が、定例日の16日に開かれるかどうか、議題が何になるか、予断を許さない。
 この通常国会は短期延長の可能性を含むが、6月末に会期末がくる。
 自民党はこの期間に憲法審査会の運営を正常化して、自民党改憲案を「提示」し、改憲論議を始める突破口にすることを狙っている。
 しかし、たとえ自民案を「提示」したとしても、わずか1カ月で憲法改正の「発議」をすることなどできない。
 改憲発議は早くても7月の参院選の後にならざるを得ない。
 であるならば、自民党にとっては、この参院選で改憲発議に必要な議席である3分の2を確保できるかどうかだ。
 この後、焦点は参院選挙で改憲派に3分の2を確保させるかどうかになる。
 野党は1人区の1本化で対抗する。
 これは自民党など改憲派にとって容易ではない課題だ。
 安倍首相ら改憲派は追い詰められている。
 いよいよ改憲問題は正念場に来た。  (T)