人民新報 ・ 第1375号<統合468号>(2019年7月15日)
目次
● 参院選・改憲派議席を三分の二以下に
トランプの有志連合によるイラン攻撃反対 安倍政権の有志連合協力絶対阻止
● ハンセン病家族訴訟 熊本地裁で勝利判決・確定
差別・人権侵害を許さない社会の実現を
● 「生活できる最低賃金」に引き上げを!
厚生労働省の中央最低賃金審議会で、最低賃金引き上げの目安の論議はじまる
● 自衛隊の南西諸島シフト
宇宙に拡がる南西諸島の軍備強化
● 辺野古新基地建設工事阻止
沖縄で基地被害続出 − 安次富浩さんが沖縄の怒りを語る
● 副業・兼業の推進につい労働弁護団が緊急声明
● 秘密保護法の見直しの時に際し
日弁連・秘密保護法の見直し情報開示の拡大を求める意見書を発表
● 前田裕晤さんを追悼する
● せ ん り ゅ う
● 複眼単眼 / 憲法問題で狡猾なすり替え論議
参院選・改憲派議席を三分の二以下に
トランプの有志連合によるイラン攻撃反対 安倍政権の有志連合協力絶対阻止
7月4日、参院選が告示され、21日の投票日までの熾烈な戦いが展開されている。参院選は、暴走安倍政治に大きな打撃をあたえる好機である。憲法改悪と戦争する国づくり、格差と貧困化を拡大させる生活無視の政治に歯止めをかけるため、立憲野党と市民の共同はいっそう強められており、市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)と5野党会派(立憲民主党、国民民主党、共産党、社会民主党、社会保障を立て直す国民会議)が参院選にむけ基本政策で合意し、全国32の1人区での立憲野党の候補者1本化実現をはじめ、勝利に向けての態勢をつくった。市民連合は、参院選公示日に「参議院選挙に当たって市民連合のアピール」を発表した(二面に掲載)。
改憲派に改憲発議可能な3分の2議席を取らせないことが最低の目標であり、その上に、より多くの立憲野党の議席を獲得することが課題だ。
自民党は、選挙公約で、自衛隊の明記などの改憲案を示し「憲法改正に関する国民の幅広い理解を得るため、党内外での議論をさらに活発にする。衆参の憲法審査会で国民のための憲法論議を丁寧に深める。憲法改正原案の国会提案・発議をし、国民投票を実施し、早期の憲法改正を目指す」としている。参院選で改憲派が勝利すれば、2020年安倍憲法施行に向けての策動を加速させることは必至だ。
それは、外交・安全保障政策での「日米同盟をより強固にし、揺るぎない防衛力を整備する。地球儀を俯瞰(ふかん)する外交をさらに進める」「中国の急激な軍拡や海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発などに対し、領土・領海・領空を断固守る。日米同盟や友好国との協力を不断に強化し、抑止力の向上を図る。宇宙・サイバー・電磁波などの新領域での自衛隊の体制を抜本的に強化する。自衛隊の人員、装備の増強など防衛力の質と量を抜本的に拡充、強化する」という政策と結びつけば、どんなことになるのか。揺らぐアメリカの世界覇権を必死で守り、安倍のようにアメリカの言うことを唯々諾々ときかない国や勢力へ攻撃を仕掛けるというトランプの軍事冒険政策に、日本を積極的に巻き込ませることになる。それが安倍政権の集団的自衛権行使の容認ということである。
いま、その危険性が現実化しつつある。一時は核戦争の瀬戸際とまで危惧された朝鮮半島の非核化をめぐる北東アジアでの危機は、韓国のろうそく革命をはじめとした地域の民衆・国家によって一定の緩和の状況をもたらしている。
しかし、トランプ政権は、来年の大統領選挙での再選を目指して、落ち目の人気を挽回し、強固な支持基盤を獲得するために、軍産複合体、軍部強硬派、キリスト教右派勢力などが求める強権政治の外交・軍事戦略をもてあそんでいる。
トランプは、イスラエルへの肩入れを強めている。イスラエル支持のキリスト教原理主義は、ペンス副大統領を政権に送り込んでいる。それらが、あやういが、ようやく一定の安定にある中東で緊張を作り出そうとしている。2015年7月、ウラン濃縮率の上限を3・67%に制限し、遠心分離機を約1万9000基から6104基へ大幅削減するなどを内容とする「イラン核合意」が成立した。その結果、2016年1月には対イラン制裁が解除された。
ところが2018年5月、トランプは突如、一方的に「イラン核合意からの離脱」を宣言したのである。対抗して、イランも、ウラン濃縮の上限を超過させるなど核合意の一部を破り始めるにいたっている。7月8日、ペンス副大統領は「中東地域での国益や米国人を保護するため米軍は準備を整えている」と述べた。その上、米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は、イラン沖のホルムズ海峡近くなどで民間船舶の安全を確保するためとして、同盟国の軍と有志連合を結成するとし、数週間以内に参加国を募ると述べた。有志連合とは、国連安全保障理事会の決議などを経ず、共通の目的を持つ国々が共同で独自の軍事行動などを起こすことだ。2003年のイラク戦争で、当時のブッシュ米政権は、安保理決議を得られず、英国などと共にイラク攻撃に踏み切った経験がある。だが、米国が主張していたイラク・フセイン政権の大量破壊兵器の保有、アルカイダとの密接な関係はすべてウソであったことが明らかになっている。今回も、国連安保理では、反対が多く、同意は得ることはできないだろうが、にもかかわらず、アメリカは対イラン戦争を準備している。海上警備行動は直ちに戦争につながるのである。アメリカから有志連合参加すなわち参戦国化要求に日本政府はどうこたえるのか。集団的自衛権行使を容認する戦争法制があり、トランプから日本は金も血も出せと求められる。
トランプの戦争挑発政策とそれへの安倍政権の追随を許してはならない。
参院選で、市民と野党と共闘で、改憲勢力に大きな打撃を与え、安倍政権を早期に退陣させなければならない。
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参議院選挙にあたって市民連合からのアピール
7月4日に参議院選挙が公示されました。市民連合は有権者の皆さんに、日本の立憲主義、民主主義を守るとともに、社会保障や雇用など私たちの生活を立て直すために、立憲野党に投票するよう呼びかけます。
このまま安倍晋三政権が続けば、今年11月には憲政史上最長の首相在位を記録することになります。しかし、安倍首相の政権運営は国民に対する説明責任を果たしたまっとうなものとは言えません。憲法53条に基づく臨時国会召集要求や参議院規則に基づく予算委員会開会要求をことごとく無視したことに現れているように、安倍政権と自民党は自分たちにとって不都合なルールは平然と破っています。森友加計疑惑や統計偽装など、安倍政権は国民に対して嘘をつき、事実を隠蔽して恥じるところがありません。このように順法精神を欠いた政権が憲法改正に手をつければ、史上最長政権によって立憲政治は破壊されることになるでしょう。
6年間のアベノミクスは、円安による輸出企業の収益増をもたらしただけで、富は企業に抱え込まれ、社会では格差、貧困の拡大が進行しています。金融審議会の専門家委員会が出した報告書で、95歳まで生きる人には2千万円の資産が必要と指摘されたことで、国民の社会保障に対する不安は高まっています。企業優先の安倍政権に代わって、国民生活優先の政権によって社会保障を立て直すことが急務です。
安倍政権は2015年に安保法制を成立させ、日本は集団的自衛権を行使できる国になりました。また、2017年9月には、北朝鮮によるミサイル発射を奇貨として国難打開を叫んで衆議院を解散し、政権を維持しました。しかし、緊張を煽り、恐怖や憎悪をテコにして支持を集めるという手法が、真の外交や平和創出に逆行していることは、G20直後の朝鮮半島における平和創出の動きを見れば明らかです。
各種の世論調査では、安倍政権は依然として安定した支持率を保っています。支持の理由は、他に適当な人材がいないというものが最多です。そうした諦めが、日本政治の劣化をさらに推し進めています。この参議院選挙に当たって、市民連合と5野党会派は共通政策をまとめ、社会保障と雇用の立て直し、アジアにおける平和の創出と沖縄の基地負担の軽減、憲法と法の支配の回復など、当面の最重要課題について、別の選択肢を打ち出しました。そして、32の1人区で候補者の一本化を実現しました。安倍政権に代わる政権を作ることは可能ですし、安倍政権を退陣に追い込まなければ日本社会の持続可能性が危うくなるのです。
この歴史的選挙において、自分自身の生活と日本の将来を救うために良識の1票を立憲野党に投じるよう有権者の皆さんに訴えます。
2019年7月4日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
ハンセン病家族訴訟 熊本地裁で勝利判決・確定
差別・人権侵害を許さない社会の実現を
国のハンセン病強制隔離政策によって、患者の家族も家族というだけで深刻な差別被害を受けてきた。
国のハンセン病患者に対する政策は、終身強制隔離して絶滅を企図とするものだといえる。90年に及ぶ国の強制隔離・終生隔離政策のため特別な法律として、「癩(らい)予防ニ関スル件」(1907年制定)、「癩予防法」(1931)があった。戦後も、すでに治療法が確立しつつあった状況にあったにもかかわらず「らい予防法」(1953年)が作られ、それが廃止されたのはようやく1996年になってからだった。
患者は親族から引き離されて施設に入れられ、患者・家族はきびしい差別・人権侵害を受けてきた。こうした差別・人権侵害は、厚生労働省(旧厚生省)だけでなく、法務省、文部科学省(旧文部省)、そして、なにより歴代政権に責任があるのはいうまでもない。
しかし、強制隔離することを定めた「らい予防法」が、憲法違反であるとして提起したハンセン病違憲国賠訴訟は2001年5月11日の熊本地裁で全面勝訴し、当時の小泉内閣は控訴を断念した。2009年には「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」が「ハンセン病の患者であった者等が、地域社会から孤立することなく、良好かつ平穏な生活を営むことができるようにするための基盤整備は喫緊の課題であり、適切な対策を講ずることが急がれており、また、ハンセン病の患者であった者等に対する偏見と差別のない社会の実現に向けて、真摯に取り組んでいかなければならない」として制定された。その18条では「国は、ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復を図るため、国立のハンセン病資料館の設置、歴史的建造物の保存等ハンセン病及びハンセン病対策の歴史に関する正しい知識の普及啓発その他必要な措置を講ずるとともに、死没者に対する追悼の意を表するため、国立ハンセン病療養所等において収蔵している死没者の焼骨に係る改葬費の遺族への支給その他必要な措置を講ずるものとする」としている。
だが、ハンセン病にたいする国の抜本的政策転換は行われておらず、依然として差別と偏見、人権侵害がつづいている。裁判も数多く闘われている。
6月28日、ハンセン病家族による国に対する謝罪と損害賠償を求める集団訴訟で、熊本地裁は、国の責任を認め、損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡した。主な争点は、隔離政策の違法性という国の責任の有無、そして時効が成立するかどうかだったが、判決は、「主文、被告は損害賠償を支払え」とし、「隔離政策により、家族が国民から差別を受ける一種の社会構造を形成し、差別被害を発生させた。家族間の交流を阻み、家族関係の形成も阻害させた。原告らは人格形成に必要な最低限度の社会生活を喪失した」と認定した。
熊本地裁判決は、ハンセン病家族の苦難の人生が国の隔離政策が原因であるとした画期的なものとなった。しかし、同種の訴訟では、鳥取地裁と控訴審の広島高裁松江支部が原告の請求を退けている。
ハンセン病家族訴訟弁護団は、弁護団声明で「本判決は、らい予防法及びそれに基づく隔離政策が、病歴者の家族に対しても違法であったとして、厚生大臣及び国会議員の責任を認めたのみならず、らい予防法廃止後にも厚生及び厚生労働大臣、法務大臣、文部及び文部科学大臣に対し、家族に対する差別偏見を除去すべき義務に反した責任を認めた画期的判決である。その一方で、平成14年以降の国の違法行為を認めず、一部の原告の請求を棄却した点は不当と評価せざるを得ない。しかし、違法行為の終期に関する法的評価にかかわらず、いまだ社会的に無視できない程度のハンセン病患者家族に対する差別被害が残っていることは、裁判所も認めたとおりであり、その解消に国が責任を負うべきことに変わりはない」「本訴訟は、当初59名の原告で始まった第1次提訴後、裁判の存在を知った多くの家族から声が上がり、わずか数カ月で500名を超える原告による第2次提訴となった。この原告数こそ、家族被害の深刻さと現在性、ひいては社会内におけるハンセン病問題が全面解決に至っていないことを如実に示すものである」として、「国は、本判決を真摯に受け止め、控訴することなく直ちに同判決の内容を履行するとともに、差別・偏見の解消、家族関係の回復に向けて、直ちに我々と協議を開始すべきである」と要求した。
安倍政権は、控訴を検討していたが、世論の動向を配慮し、なにより、参院選への影響を危惧して、7月9日になって、熊本地裁判決について控訴を断念した。控訴断念は当然のことであり、原告・弁護団が求めているように、国は「直ちに同判決の内容を履行するとともに、差別・偏見の解消、家族関係の回復に向けて、直ちに我々と協議を開始すべき」であり、医療・介護体制を充実しなければならない。
差別・人権侵害を許さない社会を実現していこう。
「生活できる最低賃金」に引き上げを!
厚生労働省の中央最低賃金審議会で、最低賃金引き上げの目安の論議はじまる
7月4日、最低賃金引き上げの目安を決める厚生労働省の中央最低賃金審議会が議論を開始した。7月中に目安が決まり、10月に改定が実施される予定だ。
6月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針
2019」では、「最低賃金の引上げ」について、「経済成長率の引上げや日本経済全体の生産性の底上げを図りつつ、中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境整備に積極的に取り組む。生産性向上に意欲をもって取り組む中小企業・小規模事業者に対して、きめ細かな伴走型の支援を粘り強く行っていくことをはじめ、思い切った支援策を講ずるとともに、下請中小企業振興法に基づく振興基準の更なる徹底を含め取引関係の適正化を進め、下請事業者による労務費上昇の取引対価への転嫁の円滑化を図る。最低賃金については、この3年、年率3%程度を目途として引き上げられてきたことを踏まえ、景気や物価動向を見つつ、地域間格差にも配慮しながら、これらの取組とあいまって、より早期に全国加重平均が1000円になることを目指す。あわせて、我が国の賃金水準が他の先進国との比較で低い水準に留まる理由の分析をはじめ、最低賃金の在り方について引き続き検討する」としている。
2018年度では、最高時給は東京の985円、最低は鹿児島の761円だった。全国平均の最低賃金は874円(前年度比26円増)で「過去最高を更新」といわれる。だが、最低賃金を全国平均してもあまり意味はない。日本の最低賃金は761円と言うべきだ。そもそも、現状の最低賃金では、フルタイムで働いてもまともな生活できない実態となっている。また東京と鹿児島では200円以上の差があり、この地域間格差が、外国人を含めた地方からの人材流出がとまらず、都市部へとりわけ東京への一極集中をもたらしている。
最賃は今闘われている参院選でも焦眉の課題の一つとなっており、自民党と公明党は全国平均1000円以上、立憲民主が1300円、国民民主は1000円以上、共産・社民は1500円などの政策を打ち出している。
7月4日、午後、中央最低賃金審議会で地域別最低賃金額改定の目安に関する諮問が行われている厚労省前で「最低賃金大幅引き上げキャンペーン実行委員会」の「中央最低賃金審議会に声を届けよう行動」が行われ、最低賃金の大幅アップと労働者の暮らしに寄り添った審議を求めて、シュプレヒコールをあげた。
自衛隊の南西諸島シフト
宇宙に拡がる南西諸島の軍備強化
自衛隊の南西諸島へのシフトが進められている。2013年12月17日に閣議決定された「国家安全保障戦略」は「我が国の安全保障をめぐる環境が一層厳しさを増している」とした。また、国境離島新法(有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法)が2017年4月に成立した。その法律の目的は、「この法律は、我が国の領海、排他的経済水域等を適切に管理する必要性が増大していることに鑑み、有人国境離島地域が有する我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に関する活動の拠点としての機能を維持するため、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別の措置を講じ、もって我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に寄与することを目的とする」である。「領海、排他的経済水域等の保全」とされるが、実際には、きわめて軍事的な危険な動きとなっている。
背景には、アメリカの対中国包囲・抑制戦略の一環に日本をしっかりと組み込むもの意図がある。いま進められている奄美諸島、沖縄、宮古、石垣、与那国などの島をむすぶ琉球列島弧における軍事力強化は、中国海軍を封じ込め、東シナ海・南シナ海からフィリピン、シンガポール、オーストラリアなどをむすぶ共同作戦の最前線を陸海空自衛隊が担うものである。
これは、対中国「島嶼戦争」の準備に入っていることだ。 同時に、軍事的緊張の激化は宇宙においても進められている。自衛隊の行動にはアメリカによって運用されるGPS(全地球測位システム)が必要不可欠だ。それを補完する準天頂衛星システム(準天頂軌道の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システム)は、南西諸島に地上管制局を持ち、島々に配備されるミサイルや無人偵察機などの誘導を行っている。
7月6日、「宇宙に拡がる南西諸島の軍備強化―大軍拡と基地強化にNO!アクション2019発足集会」が開かれ、宇宙科学研究者の前田佐和子さんが、軍事要塞と化す南西諸島を宇宙軍拡の視点から検証する講演をおこなった。
自衛隊が南西諸島に増強されている。石垣島、宮古島、久米島、沖縄恩納村、種子島には、すでに日本版GPSと言われる「みちびき」(準天頂衛星システム)の地上施設がある。2018年12月18日に閣議決定された新「防衛大綱」は、「宇宙領域における能力」の項目で「情報収集、通信、測位等のための人工衛星の活用は領域横断作戦の実現に不可欠である一方、宇宙空間の安定的利用に対する脅威は増大している。このため、宇宙領域を活用した情報収集、通信、測位等の各種能力を一層向上させるとともに、宇宙空間の状況を地上及び宇宙空間から常時継続的に監視する体制を構築する。また、機能保証のための能力や相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力を含め、平時から有事までのあらゆる段階において宇宙利用の優位を確保するための能力の強化に取り組む」としている。防衛省は準天頂衛星「みちびき」を、自衛隊の運用に本格的に活用する方針を固めた。これは通常利用している米国のGPSが他国の攻撃を受けて使えなくなった場合などに備えるためである。海上自衛隊の機雷敷設艦と潜水艦救難艦などに「みちびき」の受信機を配備し、運用し、今後、「いずも」などヘも受信機を配備する。また陸上自衛隊や航空自衛隊の装備への活用も検討されている。
自衛隊が予想している島嶼戦争は、米軍指揮下での自衛隊の運用である。米軍基地への陸上自衛隊常駐計画では、キャンブ・シュフブとキャンプ・ハンセンに750人、辺野古に800人とされる。防衛大綱では「米軍、自衛隊の施設・区域の共同使用の拡大」がうたわれ、在沖米軍の最高司令官であるニコルソン四軍調整官は「全米軍基地の自衛隊との共用」をいう。そして、軍民混在の島嶼防衛戦が予定される。陸上自衛隊富士学校隊内誌(2012年)には、太平洋戦争の反省を踏まえて、沖縄は地形上、防衛が困難であるため、島嶼防衛戦は、敵に離島占領させた後、強襲上陸し奪還するものであるとしている。そして、占領などの際は、「領域保全を優先」するため「住民混在」の「国土防衛戦」を行う、とかかれている。住民優先ではないのだ。
戦争ではミサイル(地対艦誘導弾、地対空誘導弾)が重要だが、このミサイル誘導方式には、慣性誘導、アクティブ・レーダー・ホーミング、そして、人工衛星によるミサイル誘導がある。この最後のものは、4つ以上の衛星からの電波情報を元に計算によって、受信地点の正確な3次元情報と時刻をえるものだ。準天頂衛星「みちびき」による衛星測位がそれで、準天頂衛星は、2010年度1機、2018年度4機、そして2023年度に7機体制とするとされる。
2015年には「新宇宙基本計画」が、米関係者と意見交換し、米側の意向を調査したうえで、立案された。それは中国が米GPS機能を破壊する可能性を想定し、日本がバックアップするというものだ。内閣府宇宙政策委員会委員長の葛西敬之はJR東海名誉会長で、安倍首相にきわめて近い人物だ。
まさに人工衛星が戦争の帰趨を決めると言っても良いが、世界ではすでに人工衛星破壊(ASAT)実験が行われてきた。米国は、2008年2月に偵察衛星をミサイルで墜落させ、旧ソ連は1968年に最初の衛星破壊実験をおこない、中国は2007年1月に自国の衛星を弾道ミサイルで破壊した。
日本は、2022年度に宇宙専門部隊(100人程度)を設置し、2023年度には準天頂衛星7基体制を確立し、2026年度に島嶼防衛用高速滑空弾を実用化させるとする計画を進めている。
このように自衛隊の南西諸島シフトによる島嶼戦争は、宇宙戦争の先駆けなのである。
辺野古新基地建設工事阻止
沖縄で基地被害続出 − 安次富浩さんが沖縄の怒りを語る
7月6日、何度も示されている沖縄の声を圧殺して強行されている辺野古新基地建設・土砂投入に抗議して、沖縄・キャンプシュワブゲートで移設工事反対の集会が行われ、「基地建設を強行する政権の横暴を許さない」などのアピールが続いた。
同日、東京、文京センターで、「辺野古へ行こうキャンペーン第2弾
止めろ!土砂投入7・6集会」が開かれた。
はじめに6月下旬に沖縄での闘いに参加した仲間が、映像を示しながら座り込みの現地報告した。
つづいて安次富浩さん(ヘリ基地反対協議会・共同代表)が沖縄からの訴え。 辺野古基地建設の不当な工事が強行されているが、粘り強い反対運動のために、遅れに遅れている。沖縄は空も海も米軍訓練が激化している。その中で、汚染水問題、米兵による女性殺人事件などがつぎつぎに起こってきた。パラシュート降下訓練は、SACO合意で制限されているはずだが、安倍政権が例外措置として容認して、まったく形骸化している。嘉手納基地・普天間基地では汚染水問題がおこっているが、有毒なものがふくまれているのに基地立ち入り調査権がない。4月には米海軍3等兵曹が女性を殺害して、その後に自殺した。こんなことは絶対に許すことはできない。沖縄の怒りはすさまじいものだ。ぜひとも日米地位協定の改正が必要だ。
3月の新たな土砂投入に反対する県民大会は1万人以上の参加で成功し、抗議決議文を政府に提出した。沖縄の辺野古基地建設問題はますます重大な局面を迎えている。まず、水深90mの軟弱マヨネーズ状地盤の問題だ。7万7千本の砂杭を使用しても、工事は難しくなっている。県の試算では工期13年及び予算2兆5千億円だが、政府の方は建設期間及び経費を明らかにできない。すくなくとも地盤の改良に3年8か月かかるとされているが、玉城県知事は設計変更届を承認していない。次に、高さ制限の問題で、航空法上、滑走路から50メートル以上の高層建築物は撤去されなければならないが、沖縄高専の建物や沖縄電力の送電燈及び携帯無線局はそれに抵触する。また、活断層の存在が明らかになり、辺野古断層と楚久大断層との間の辺野古弾薬庫の存在が問題となっている。
こうした状況で、辺野古埋め立て土砂搬出反対全国連絡協議会の活動が展開されている。安倍政権は、アメリカからの武器爆買い、イージス・アショア、また年金問題などで厳しい立場に追い込まれている。かつて翁長知事を中心とする建白書は、@普天間基地の即時撤去、A欠陥機オスプレイ配備反対、B辺野古新基地建設反対を軸に、オール沖縄の理念を掲げた。いま玉城知事は、沖縄の自己決定権、平和的生存権の確立を主張し、一国二制度を提案している。「沖縄のアイデンティティーの確立」「非暴力・抵抗闘争」などをモットーにして、翁長知事の遺言を継承していこう。そして、象徴天皇が過去の日本軍によるアジア侵略、持久戦による沖縄戦の悲惨な状況と広島・長崎原爆投下された戦争責任を隠蔽して、各地の「慰問行幸」を続けていることを批判していこう。
つづいて、花輪伸一さんが「辺野古新基地建設による環境破壊と杜撰な保全対策―サンゴ類・海草藻場・ジュゴンについて―」と題して話した。辺野古・大浦湾には、「環境省2017海洋生物レッドリスト」でも、オキナワハマサンゴを絶滅危惧U類、ヒメサンゴを準絶滅危惧としてあげている。それで、環境省は、2018年7月下旬に移植をおこなったが、その約9か月後結果は、9群体のうち、5群体が良好な状態を維持、または大きく改善。2群体が大きな変化がない、またはやや改善。2群体が生存部が縮小とされている。しかし、これについては大いに疑問がある。そもそも、サンゴの移植は、サンゴ礁生態系の保全ではない。日本サンゴ学会「造礁サンゴ移植の現状と課題」(2008)は、「サンゴ移植は全体的なサンゴ礁保全策、統合沿岸管理の一部として位置づけるべきで、ドナー群体の損傷など負の効果を認識し、開発の免罪符に使われることに注意しなければならない」、としている。また大久保奈弥・東京経済大学準教授は「環境監視等委員会が、急ピッチで進む防衛省の基地建設事業にお墨付きを与えるだけの機関になっていないか危惧しています。辺野古の埋め立て予定地と周辺海域に残る貴重なサンゴ礁生態系を破壊し、再生不能な状態に導くことがあれば、科学者として後世に恥ずべき行為と言わざるを得ません」といっている。
海草藻場の埋立に、現状の保全対策ないのである。泡瀬干潟では、大面積の海草移植は失敗したのである。海草は、光合成をする種子植物で、海中で花を咲かせ種子をつくる。太陽光が届く、比較的浅くて、透明度が高い海底で、海水の流れが弱く、漂砂もほとんどない場所に、生育するのである。辺野古の浅瀬が護岸と埋立地となってしまえば、新たな海草の種苗移植は、どこでやるのかということだ。その上、ジュゴン保護や、マヨネーズ地盤のこともある。
環境へのダメージが小さい今のうちに、工事を中止し、新基地計画を撤回し、埋立護岸と土砂を取り除いて、自然再生に取り組み、自然環境と生物多様性を保全し、自然保護区として活用する計画に改めるべきである。
副業・兼業の推進につい労働弁護団が緊急声明
労働者に目いっぱい働かせること―これが資本主義の基本だ。それに、低賃金なら申し分ないということである。賃金・労働条件を悪くしておいて、労働者が「自発的」に過重労働を行う―これこそ企業にとって理想状態ということになる。低所得層の非正規、正規の労働者が複数の仕事を掛け持ちして「所得を増加」させる社会の創造だ。その目的は、少子高齢化社会の進行の中で、労働者人口の全体の数が増加することである。その未来は非正規雇用の労働者が主な雇用形態となる悲惨なものだ。
厚生労働省は、2017年3月の「働き方改革実行計画」(働き方改革実現会議決定)を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っている。2018年1月に厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」と「改訂版モデル就業規則」を発表した。そこでは「副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にある。副業・兼業を行う理由は、自分がやりたい仕事であること、スキルアップ、資格の活用、十分な収入の確保等さまざまであり、また、副業・兼業の形態も、正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主等さまざまである」としている。 現在、労働政策審議会(労働条件分科会労災保険部会の副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会)において、副業・兼業先の労働時間の把握方法、割増賃金、健康管理などの検討を進め、6月4日には、「副業・兼業の場合の労働時間管理及び健康管理の在り方に関する主な論点の整理」について論議された。
日本労働弁護団は、6月12日、「本業の充実化や副業・兼業労働者に対する適切な保護を実施しないまま副業・兼業を推進することに反対する緊急声明」を発表した。それは、「もはや日本社会においては、本業だけでは生活をしていくのに十分な収入を得ることができないため、やむなく副業・兼業を余儀なくされている労働者の実態である」として次のような対処を求めている。「政府が、副業・兼業のかかる実態を無視し、キャリア形成や自己実現追求という明るい側面のみを強調して副業・兼業を積極的に推進することは許されない。政府がまず行うべきは、本業に1日8時間従事すればきちんと生活できるだけの収入が得られるようにするための労働政策(最低賃金の大幅な引き上げ等)を検討、実施していくことである。その上で、副業・兼業を認めるにしても、副業・兼業労働者の長時間労働を抑制し、副業・兼業労働者の生命・健康を保護するべく、本業先・副業先には客観的な方法でそれぞれの就業先における労働時間を把握させ、長時間労働が認められる場合には労安法所定の健康管理措置を実施することを義務付けるとともに、労基法38条の遵守を厳格に義務付けるべきである。政府内では、割増賃金の算定の場面において、異なる使用者で就労する場合に人単位の労働時間の通算を否定し、使用者単位で通算すればよいとする向きの議論があるようだが、現状でも、副業・兼業労働者の長時間労働抑制は野放し状態にある。割増賃金制度の趣旨は長時間労働の抑制にあるという原則論に立ち返り、長時間労働抑制に相反するような法解釈を行うことは決して許されない。また、現状の労災実務では、副業・兼業をしていたとしても、本業先と副業先との労働時間の通算が認められていない上、労災の支給額の算定は、労災に遭った勤務先から得ている賃金のみを基に行われている。そのため、本業と副業とを合わせて過労死ラインを超える長時間労働をしていたとしても、労災としては認められない上、仮に労災認定がされたとしても、労災に遭う前の賃金保障はされないため、被災者は生活の困窮に直面することになる。これでは、安心して副業・兼業に従事することなどできない。国家的な方針として副業・兼業を推進していくのであれば、これまでの実務運用を改め、万が一労災に遭ってしまった場合の補償をきちんと行うための法整備を進めていく必要がある。加えて、副業・兼業が社会に浸透し、就労時間の短い雇用が乱立すれば、現状の雇用保険や社会保険の加入要件を満たさない労働者が増えていくことが予想される。副業・兼業を推進するのであれば、雇用保険及び社会保険が全ての労働者にとっての生活保障として機能するものとなるよう、直ちに制度的な手当てを行うべきである」。
秘密保護法の見直しの時に際し
日弁連・秘密保護法の見直し情報開示の拡大を求める意見書を発表
6月20日、日本弁護士連合会は「秘密保護法及び関連法令の最低限の見直し並びに情報開示の拡大のための対策を求める意見書」を発表した。日弁連はこれまで、秘密保護法の廃止を含む抜本的な改正を求めて意見書を発表してきた。
秘密保護法「運用基準」では、「特定秘密保護法の施行後5年を経過した場合においては、その運用基準について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする」とされており、今回の意見書は、「少なくとも以下の見直しを行うことを求めるもの」として以下の点を挙げている。@特定秘密記載文書については、全て国立公文書館等に移管することを公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)、秘密保護法又はその他の特別法において規定すべきである。A特定秘密の指定要件である非公知性については、不特定多数の人に事実上知られるに至った場合は非公知性が失われるとする規定を秘密保護法に設けるべきである。B秘密保護法、衆議院情報監視審査会規程及び参議院情報監視審査会規程又は公益通報者保護法において、両院情報監視審査会等を通報先とする内部通報者保護規定を設けるべきである。C適性評価を行う場合であっても、取得の対象となる情報を、評価対象者の秘密取扱いに適するものに厳しく限定すべく、秘密保護法の改正を行うべきである。また、適性評価の実施に関し、評価対象者が不同意とした場合や、評価の結果不適格とされた場合に不利益を受けないことを担保する制度を設けるべきである。D情報保全監察室においては、外部からの職員採用や、幹部職員については出身機関に戻らないこととする「ノーリターン・ルール」を検討するなどして情報保全監察室の独立性と専門性を確保すべきである。E各議院の情報監視審査会のいずれかからの求めがあったときは、行政機関は、全ての非開示情報等の報告等をしなければならない旨の規定を国会法等に設けるべきである。また、特定秘密に関して、「サードパーティールール」(第三者に情報を提供する場合、当該情報を提供した外国の情報機関等の了承を事前に得た上で行う原則)に係る特定秘密であることを理由とする提供拒否は原則として許されないとした上で、提供を拒否することができる場合について明確な要件や手続が定められるべきである。F国会法等を改正して、両院情報監視審査会及び内閣府独立公文書管理監に、特定秘密の指定の是非のみならず各行政文書に記載された情報が特定秘密として法律の保護の対象となり得るものかどうかについて審査する権限を持たせるべきである。また、両院情報監視審査会及び内閣府独立公文書管理監において、特定秘密以外の秘密の指定の適否も審査し得るようにすべきである。G両院情報監視審査会における調査の実効性を確保するため、衆議院情報監視審査会規程及び参議院情報監視審査会規程に、特定秘密の提出又は提示の要求のための採決要件を緩和した明文の規定(例えば委員2名以上の賛成)を置くべきである。H国民が秘密指定の是非を争うことができる制度を設けるべきである。
前田裕晤さんを追悼する
6月28日、G20サミットおおさか開催抗議行動の場で前田裕晤さん死去の報がもたらされた。「えっ」と絶句された方が多かったのではなかろうか。氏の強靭な社会運動に対する想いと車椅子に乗ってのまでの各種行動への参加は、多くの人の心に残っている。
86歳での他界であった。
6月30日、雨の後の霧のかかった六甲山を前にした芦屋川沿いのクレリ芦屋ホールで通夜が持たれ、翌7月1日に告別式が行われ、多くの親族の参加し、また前田さんの多様な社会活動を反映して多様な社会運動関係の人びとが訃報をきいてかけつけていた。
通夜では朝日健太郎さんと石田俊幸さんが弔辞を述べられた。朝日さんからは日本社会の定期的な分析や社会主義運動について議論が重ねられ政策を練り上げてきた経緯がのべられた。ゼネ石労組出身の石田さんからは全労協運動の中で全国的に活動する前田さんに対して、主に関西地域の視点からであったけれど全労協に後継者として関わってきたことが述べられた。
告別式では新開純也さんからは、社会主義運動の中での先達としての役割、なかんずく共産主義者同盟(ブンド)のなかでの活動について話された。
2日続きの雨にも関わらず、通夜も告別式もその間だけは幸いにも雨は降らなかった。
前田さんは多方面で活動されてきたのでそれぞれの分野で今後、語り告がれていくのではと思われた。
まずは戦後のレッドパージの吹き荒れていた時代に、前田さんは、日本電信電話公社大阪中央電報局に就職されて以後の労働現場での体験を皮切りとして電報局の方式自体の電極式―SK方式―自動化―ディスプレイ方式へと変化していくのを体験された。それは同時に平行しての労働組合運動の変化でもあり、最終的には民営化による職場のあり方の変貌でもあった。この中で労働組合的には少数派労働運動への転換を余儀なくされてきた。労働運動の右傾化と「連合」の形成とそれに抗して全労協運動へと前田さんは全身全霊を打ち込んでこられてきたといえる。
もうひとつはそうした職場の関わりでの戦後、日本共産党の果たしてきた役割と大衆運動への敵対という事態に直面しての思想的な葛藤と共産主義者同盟への関わりがあったが、ただこの面に関しては人によって強く意識された人とそうでない人とあったのではないだろうかと言う印象がある。それほど大衆運動への関わりが強かったせいとも言える。
こうした中で60年代反戦平和運動、ベトナム反戦運動を大阪「中電」を基礎にして全国の反戦闘争と連携しながら共同闘争に牽引的な役割を果たされてきた。
前記とも関わるが労働運動の右翼的再編に抗するために「労働情報」が「季刊 労働運動」に続いて発行され、これの維持、発展のためにも前田さんは奮闘された。全労協運動と「労働情報」を両輪として駆け抜けていったという印象が強いのではないだろうか?
また居住地であった芦屋市では市内の住民運動にも参加されていたようである。
こうした全国、関西、地域と活動できた根底には奥様の浩子さんの支えがあったということが通夜、告別式での浩子さんの発言を通じて深く感じられた。
私自身は70年代初頭に前田さんがある時期、阪神地区に「政治亡命」していたことがあり、その時に身近に接したのであった。丸々とした体形にいつも太めの万年筆を抱えた前田さんの姿があった。そしておりおり、上記に述べた多様な活動のどれかに接してきた。「労働情報」としての関わりが多かったのではと思い出す。
前田さんは東京で1934年に生まれ、学童疎開で和歌山に転じ、中学、高校と進学し、途中から京都電気通信学園に入学し、さらに働きながら進学していったという稀有な経歴の人であり、労働運動、社会運動と広範に社会のなかを駆け抜けていった。
多くの全国政治に関わり、国際的にも実践していける活動家をまた一人失ったという喪失感には深いものがある。 K・K(労働者)
せ ん り ゅ う
階級の意味しらぬまま大学生
選挙費の万の万倍族議員
針のある餌をぶらさげ自民党
食わせものテレビの毒に浮かれてる
ひきずりて戦後のままを悶え萌え
米軍がいなくなる日に光あり
改憲の息の根止める参院選
貧乏を増やし足りぬと2000万
ゝ 史
2019年7月
複眼単眼
憲法問題で狡猾なすり替え論議
参議院選挙が始まった。7月21日の投開票の結果、安倍政権与党と改憲派が参議院の総議席の3分の2を占めることを阻止することができるのかどうか、この国の前途を左右する重大な闘いとなっている。
安倍首相らはこの選挙戦において、奇妙な「争点」をつくり出した。
自民党の下村改憲推進本部長は5日、「憲法論議をする政党を選ぶのか、議論に反対する政党を選ぶのか、そういう選挙だ」と争点を示した。
従来、国政選挙に臨む際には、安倍首相の自民党は改憲を重要政策といいながら、実際に選挙が始まると世論の動向を恐れ、憲法問題は後景にさげ、争点化しないできた。
しかし今回は少し様相が違っている。安倍首相は福島での第一声をはじめ、「(国会の憲法審査会で改憲の議論が進めないのはおかしい)。今回の選挙は改憲の議論をする候補者や政党か、審議を全くしない政党や候補者であるかを選ぶ選挙だ」などと叫んでいる。
だが、憲法審査会で改憲の議論が進んでいないのは安倍首相がいうような野党の怠慢や議論の回避にあるのではない。
ほとんどの世論でも、改憲を望んでいる割合は少数で、改憲を急いでいるのは安倍首相と自民党のみだ。改憲には与党公明党までもが消極的なことは周知の事実だ。
にもかかわらず安倍首相が憲法99条の憲法尊重擁護義務に反して、首相としての立場もわきまえず改憲発言を繰り返し、立憲主義を破壊しているゆえだ。
野党はこれを放置したまま憲法審査会を開くことはできないと安倍首相の責任を追及している。
憲法審査会は国会法で@憲法に関する広範かつ総合的な調査、A改憲原案等の作成の2つの任務をもっている。
安倍首相の99条違反を放置したまま憲法審査会を始動させれば、「改憲原案」の作成に道をひらくことになる。
憲法審査会のもう一つの任務である「憲法問題に関する総合的な調査」は予算委員会で十分可能だ。野党は憲法論議をここでやればいいと主張している。にもかかわらず、自民党はこの国会で2か月以上にわたって予算委員会を開かない。自民党の議論のサボタージュによる異常な事態だ。
今回の党首討論では安倍首相の議論はなりふり構わず、野党の分断を謀ることにあった。とりわけ32の1人区で野党5党会派が候補を一本化したことに対する異常な攻撃に出た。
まず安倍首相は福井県で野党が共産党の候補者に1本化したことに矛先を向け、福井の候補者は自衛隊を違憲だというが、枝野氏はこの候補に一票をいれるのかどうかと挑発した。
次いで沖縄の統一候補の高良鉄美氏が日頃、「自衛隊は憲法違反だ」といっているが、これでいいのかと攻撃した。
枝野氏は野党は「集団的自衛権の行使は憲法違反」という点で、野党は一致している。自衛隊が違憲だという主張は今回当選した後、少なくとも6年間は国会では言わないことにしている、と答えた。
市民連合と立憲野党の政策合意は自衛隊違憲論で統一しているわけではなく、 枝野氏の発言は当然だろう。憲法学者としての高良氏の信念と国会で自民党と何をもってたたかうかの間に差異があって当然だ。
安倍改憲を阻止するために、改憲派に3分の2を取らせないよう、全力で闘い抜こう。 (T)