人民新報 ・ 第1376号<統合469号(2019年8月15日)
  
                  目次

● 参院改憲派議席は3分の2以下に

         対イラン有志連合への参加・協力阻止!

● 日本政府は対韓国輸出規制を撤回し平和的対話で問題を解決せよ

         日韓民衆の連帯で排外主義を打ち破ろう

● 低賃金の大幅アップを実現しよう

● 権力・右翼勢力の圧力― 「表現の不自由展・その後」中止を許すな

         「中止決定の撤回」「展示の再開」をかちとろう

● 2019夏ピースサイクル

         ピースサイクル浜松

         ピースサイクル埼玉

         ピースサイクル長野

         ピースサイクル広島

● 関生支部弾圧を許さない―警察権力の暴走をとめよう!支援を広げよう!

● 自衛隊・米軍参加の東京都総合防災訓練反対

         中学生を参加させて自衛隊へのリクルートも

● 著名投資家の日本経済論

         本の紹介    ジム・ロジャーズ『日本への警告』

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  団塊世代の哲学的敗北





参院改憲派議席は3分の2以下に

    
対イラン有志連合への参加・協力阻止!

 安倍政権は、7月21日に行われた参議院選挙で、全力挙げた選挙態勢をとり、公明党の協力で圧勝して、一気に改憲を推し進めようとしていた。しかし、ますますひどくなる安倍の悪政に怒る市民と立憲野党は共闘をいちだんと強めた。今回参院選の最大の課題は、改憲勢力を3分の2以下に追い込むことであったが、それを実現し、安倍政権・改憲勢力に大きな打撃を与えた。選挙結果は、沖縄の米軍基地強化、イージスアショア配備、自衛隊の南西シフトなどに反対する反戦平和の闘い広がりが影響したものであり、また各地の闘いの発展に力を加えることになった。
 市民と野党の共闘の力は確認されたが、それは全国各界各層の多くの人びとの奮闘のあらわれである。これからもこの共闘をいっそう打ち固め、政策協定もさらに高い段階に推し進め、安倍政権の暴走を止めさせ、打倒をめざしていかなければならない。
 安倍は、選挙で与党が議席を減らしたとはいえ過半数を取ったことを、安倍改憲が支持されたと強弁し、国会での改憲論議を行い、早期の改憲実現にむけての意欲をあらわにした。しかし、世論調査では、大多数の人びとの優先課題はなにより年金・医療などの社会保障、経済政策という生活に密着するものであり、改憲反対は改憲賛成を上回っている。人びとは改憲の必要を感じていないし、それをうけて野党も安倍の誘いに乗って改憲論議に入り込む状況にはない。なにより安倍自身がこれまでの2020改憲施行の大幅先送りを言明せざるを得なくなっているではないか。
 いま安倍政権は国内外ともにきわめて厳しい立場に追い込まれている。10月に迫った消費税増税を前に、景気の先行き不安はいよいよ深まり、また、米中貿易戦争の激化や米国経済も陰りをみせることなどが、日本経済の悪化を増幅させることになるとみられる。日本株に対する外人投資家の評価はかつてなく低いものとなっていることは、ひとつの兆しであるだろう。
 安倍が「得意分野」だと称する外交の状況はどうか。ここは、内政上にすさまじいことになってきている。ロシアのプーチン大統領との「個人的な親密関係」で「北方領土」問題の解決―2島返還を参院選の争点にして圧勝するなどという虫のいい目論見は消し飛んだ。北朝鮮の金正恩委員長との「前提なし対話」、「安倍平壌電撃訪問」論も、参院選に拉致問題をつかおうという実にバカげた発想であったが、返ってきたのは「日本軍国主義復活」批判の答えだった。安倍のやり方は、日朝国交関係正常化交渉の実現に逆行するものでしかない。なにより米トランプ大統領を国賓としてゴルフや大相撲などで大接待したことだが、ここでも貿易交渉での強硬な対日要求そして駐留米軍経費5倍にしろなどの「ご下命」がその答えであった。そして、八方ふさがりの中で、いらだった安倍の植民地主義の本音を爆発させたのが、韓国徴用工問題や従軍慰安婦問題にからめた韓国に対する輸出規制という暴挙であった。安倍政権は、対韓国緊張外交で排外主義を煽ることで、なんとか政権の支持をもりあげようとしているのである。こうした安倍の姿勢が、民間の右翼排外主義勢力を活気づけて、日本社会を息苦しいものにしている。
 これからの日本の方向に重大な影響を与える大問題は、トランプの対イラン制裁有志連合に安倍がどう対応していくのかという問題だ。8月7日、来日したエスパー米国防長官は岩屋毅防衛相に、有志連合構想について説明し、参加を要請した。すでにエスパーは、航行の自由、商業の自由に関心のある国はどの国も海峡の監視活動に関わるべきだと発言していて、日本に海峡の監視活動などを要求したものといわれる。だが、イラン核合意から一方的に離脱して緊張を煽っているのはトランプその人なのであり、現時点でホルムズ海域は平時なのである。イランに対する国連制裁決議が出来るはずがない。そうしたなかで、独善的なトランプでも武力行使は簡単にはできない。にもかかわらず米国は有志連合で仲間をあつめて戦争への緊張をたかめているのである。だが、ドイツは7月31日、正式に有志連合に参加しないと発表した。さすがにトランプとは常に「100%一致」している安倍も、「慎重に検討していく」と述べざるをえない。だが、日米軍事同盟を強化し、集団的自衛権行使の範囲を拡大させてきた安倍政治の神髄がここで問われているのである。有志連合への日本の参加・協力は、イランとの友好関係を破壊し、中東情勢の悪化・戦争に日本が重大な責任を負うことになる。
 自衛隊の有志連合へのさまざまな形態をとった参加・協力を許さない闘いを推し進めていこう。


日本政府は対韓国輸出規制を撤回し平和的対話で問題を解決せよ

            日韓民衆の連帯で排外主義を打ち破ろう


 安倍政権は、植民地支配を反省するどころか居直り、安倍に屈服しない韓国への経済政策を使った圧力を強めている。トランプと同様の手口だ。しかし、安倍のこうした姑息なやり方に対する怒りは韓国だけでなく、日本国内にも広がりを見せている。

官邸前の抗議行動


 8月8日、首相官邸前には、在日韓国民主統一連合の呼びかけによる緊急の行動が行われ、在日韓国青年同盟、在日韓国民主女性会、在日韓国人学生協議会、そして安倍政権の暴挙に抗議し日韓の民衆の連帯を求める日本の市民など約200名の人びとが集まり、シュプレヒコールを上げた。集会では韓統連のソン・ヒョングン(孫亨根)議長が発言。韓国では安倍首相の経済措置に抗議する運動が燎原の火のように広がっている。わたしたちは、韓国の闘いに連帯・呼応して、安倍首相の官邸にまでやってきた。戦前日本は朝鮮半島に侵略し多くの人を傷つけ殺し、多くの人に強制徴用を行った。被害を受けた人が、日本政府から真の謝罪と補償を受けなければならい。しかし日本政府は1965年の韓日条約ですべて解決済と強弁している。しかしわたしたちの国民は日韓請求権協定には謝罪も補償もない条約だとして反対してきた。韓国民は韓日条約を心の底から認めていない。日本の国でもどこでも被害者の個人賠償は認められている。なぜこれを安倍政権は受け入れないのか。戦前の侵略を肯定することは、いまも同じ考えで朝鮮半島を見ていることではないのか。再び侵略と戦争の罪を犯そうとしているのか。そういう疑念を持たざるを得ない。日本と韓国の本当の平和は、戦前の侵略と戦争、植民地支配を真に謝罪し、賠償することから始まる。そのことを安倍首相は必ず受け入れなければならない。しかし、それを実現するためには大きな力が必要だ。固い両国民の団結が重要だ。今日の行動は安倍首相に対する第一歩の行動だ。真の謝罪と賠償を勝ち取るまで闘っていこう。
 集会では、全労協の渡邉洋議長などがともに闘う決意をこめての発言を行った。

声明・韓国は「敵」なのか

 日本政府が表明した韓国に対する輸出規制が日韓両国の対立・分断の危機を深めている。この日本政府の敵対的な政策に反対し、即時撤回を求めるための運動が様々に取り組まれている。内海愛子恵泉女学園大学名誉教授、内田雅敏弁護士、大沢真理元東京大学教授、岡本厚・元「世界」編集長などが、呼びかけ世話人となっての声明「韓国は『敵』なのか」への賛同が広がっている。それは「日韓は未来志向のパートナー」「日韓条約、請求権協定で問題は解決していない」として、「私たちは、日本政府が韓国に対する輸出規制をただちに撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・議論を開始することを求めるものです。いまや1998年の『日韓パートナーシップ宣言』がひらいた日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開しています。BTS(防弾少年団)の人気は圧倒的です。テレビの取材にこたえて、『(日本の)女子高生は韓国で生きている』と公然と語っています。300万人が日本から韓国へ旅行して、700万人が韓国から日本を訪問しています。ネトウヨやヘイトスピーチ派がどんなに叫ぼうと、日本と韓国は大切な隣国同士であり、韓国と日本を切り離すことはできないのです。安倍首相は、日本国民と韓国国民の仲を裂き、両国民を対立反目させるようなことはやめてください。意見が違えば、手を握ったまま、討論をつづければいいではないですか」とよびかけている。
 安倍政権は、いたるところで問題を起こしている。安倍政治の暴走を一日でも早く終わらせよう。


低賃金の大幅アップを実現しよう

 7月30日、最低賃金引き上げ額の目安を決める中央最賃審議会の小委員会が開かれた。最低賃金大幅引き上げキャンペーンは、会場の東京・中野サンプラザ前で「中央最低賃金審議会へのアピール行動」をおこなった。

 2019年度の最低賃金(時給)の改定額が9日、全都道府県で出そろった。最高は東京の1013円で、最低額は790円で沖縄県、九州の福岡を除く各県、高知県、鳥取県、宮城をのぞく東北各県など13県となった。依然として、きわめて低い金額であり、また大きな地域格差は是正されていない。これでは、憲法25条の定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するにもとなっていない。しかし、日本商工会議所が、最低賃金の引き上げを推し進める政府方針に反対する要望書を政府・自民党に提出するなど、大幅な引き上げは中小企業の経営を直撃し、事業の存続を危うくするなどとして、最賃アップに反対している。中小企業だけではない。企業は、賃金が安ければ、それだけ儲けが大きい。大企業こそが、低い最賃の非正規雇用労働者の劣悪な労働条件が、労働者全体の低賃金構造固定化に寄与していることを評価しているのである。賃金を低く抑えるのは、資本の本性であり、それを上げるには労働者の力づくでの闘いがなによりが必要なのである。


権力・右翼勢力の圧力― 「表現の不自由展・その後」中止を許すな

             
「中止決定の撤回」「展示の再開」をかちとろう

 8月1日に名古屋市で開催された「あいちトリエンナーレ」の中の「表現の不自由展・その後」が、突然、展示中止となった。展示物は、さまざまな不当な圧力によって表現の機会を奪われた作品であり、「現代目本の表現の不自由状況を考える」目的で行われた。この催しに対して、排外主義右翼の抗議電話の殺到などの組織的な破壊策動、そのうえ「ガソリンを持っていく」というファックス脅迫までおこなわれ、そして南京大虐殺はなかった妄言などで有名な河村たかし名古屋市長、また菅官房長官など権力側政治家による陰湿かつ狡猾な中止圧力がかけられた。
 主催者の中止決定はテロ脅迫に屈服し、今後に極めて悪い影響を生むものである。こうしたことを断じて許してはならない。権力と排外主義勢力による言論・表現の圧殺であり、圧殺策動を批判する反撃の声を広げて、「表現の不自由展・その後」の再開を実現しなければならない。すでに、各界、各地から闘いの火は上がり始めている。

 8月7日、衆議院会館で、「表現の自由を市民の手に全国ネットワーク」「九条俳句市民応援団」「憲法を考える映画の会」などの呼びかけで、「あいちトリエンナーレ『表現の不自由展・その後 』中止事件緊急集会&記者会見」が開かれた。集会では、展示作品制作者や呼びかけ団体代表などからの発言があった。

 治安維持法研究で高名な荻野冨士夫小樽商科大学名誉教授は、今回の中止事件について次のように述べた。今回の中止事件は、日本の近現代史における重大事件となった。振り返れば、1930年代には、天皇機関説事件が作り出され美濃部達吉をはじめ学界や政界のリベラル派が排撃された事件が起こった。また東大経済学部の河合栄次郎や矢内原忠雄などが発言を封じられた。こうして日本は戦争体制へ突入していった。当時も草の根ファシズムに政府が便乗し、検閲・発禁が強められた。従軍慰安婦問題で元朝日新聞の植村隆さんが講師を務めていた北星学園大への卑劣な脅迫などがあり、いまもかつてのようなことがつづいている。「表現の不自由展・その後」事件もそうだ。安倍政権の対韓国政策を世論の半分が支持するなど根強い排外主義の風潮がある。今回の事態を是正して、歴史に良き前例として記憶されていきたい。
 「表現の不自由展その後」実行委員会からは、元NHKプロデューサーで武蔵大学教授のの永田浩三さんと富山大学名誉教授の小倉利丸さんが発言。実行委員会は、「今回の中止決定は、私たちに向けて一方的に通告されたものです。疑義があれば誠実に協議して解決を図るという契約書の趣旨にも反する行為です。何より、圧力によって人々の目の前から消された表現を集めて現代日本の表現の不自由状況を考えるという企画を、その主催者が自ら弾圧するということは、歴史的暴挙と言わざるを得ません。戦後日本最大の検閲事件となるでしょう」という抗議声明を出したことなどについて述べた。

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あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」中止事件に抗議し、展示の再開を求めるアピール
 
 (前略)
  私たちは、今回の中止に至る過程が、「慰安婦」や「元徴用工」問題で、日本政府が韓国政府に対し威圧的な政策をとり続け、排外主義を煽りたてている中で起きたことにも注目しています。これは「表現の自由への侵害」の問題に留まらず、中止を求めた排外主義扇動者たちの問題でもあります。河村市長は、展示が「日本国民の心を踏みにじる行為」だとしています。戦前目本の「慰安婦」政策により、「踏みにじられた」のはどこの国の人々なのか、歴史的想像力に欠けた発言です。このような発言を許していたなら、ヘイトクライムに市民権を与えてしまうことになります。
 この事件を契機に、同様事件の続発を心配する声も起きています。すでに、7月11日、東京都・文京区で開催予定であった「平和を願う文京・戦争展」で、文京区教育委員会が、展示の一部にトラックで運ばれる「慰安婦」の写真などがあることから。「中立を保つため」との理由で、後援を断る事件も発生しています。
 今回の事件を、ヘイト運動で文化事業を中止、いう「悪しき前例」にするのではなく、中止された事業を、「表現の自由」を求める市民の力によって再開させた「よき前例」にすることが必要です。私たちの「表現ネット」設立の契機となったさいたま市での「九条俳句」事件は、その「よき前例」です。
 戦後最大規模の検閲事件とも言われています。私たちは、この問題に危機意識をもつ各界、各層の方々と共に、「中止決定の撤回」、「展示の再開」を求めます。

2019年8月7日

表現の自由を市民の手に   全国ネットワーク


2019夏ピースサイクル

ピースサイクル浜松
 静岡県内を走った19ピースサイクルは、7月24日、ピースサイクル浜松・ピースサイクル神奈川・はまネット(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)のメンバーで、浜岡原子力発電所の現地において、中部電力社員と意見交換の場を持ち、事前に提出していた質問書の項目、@使用済み核燃料棒の保管状態及び今後について、A浜岡原発1号機・2号機の廃炉方法について、の回答を受けてから話し合いを行なった。
 中部電力社員からの説明では、使用済み核燃料棒の保管数量は3号機・4号機・5号機の合計で6542体、燃料プールの保管容量は7550体で空き容量は1008体、乾式貯蔵施設には10年以上冷却したものを入れる予定のため、2200体入るものを申請中で、使用済み核燃料は、最終的には六ヶ所再処理工場へ移送していく予定という。
 1号機・2号機の廃炉方法では、「廃炉スケジュールは、すでに終了している2009年度から14年度までを第1段階の解体工事準備期間、第2段階が15年度から22年度で現在進行中の原子炉領域周辺設備解体撤去期間、以降の第3段階・第4段階が終了する2036年度を最終目処として行なう。廃棄物の処理状況では、廃棄物を@低レベル放射性廃棄物(0・2トン)、Aクリアランス対象物(687・2トン)、B建屋の外側の壁など(6・2トン)は放射能を帯びていない―の3種類に分けて行なっているため安全」という説明があった。このような説明を受けて、放射能測定値を示していないため本当に低レベルなのか分からないので、廃棄物の種類ごとの測定値を明らかにするように要請した。さらに、現在停止中の3号・4号・5号機についても廃炉にし、廃炉に関する住民説明会の開催、中部電力が原発を廃炉にして原発なしでの経営判断をするよう強く要請した。
 7月25日は、浜松市に対して事前に提出していた「平和行政の確立を求める要請書」の回答を受けてから、話し合いを行なった。その後、航空自衛隊浜松基地へ行き、美保飛行教育隊の浜松基地への移転反対、浜松基地の縮小・撤去、AWACS・PAC3の撤去、夜間訓練飛行の中止などの要請書を読みあげて自衛官に手交した。
 7月26日は、愛知県の陸上自衛隊豊川駐屯地において、申し入れ書を読みあげて自衛官へ反戦平和を訴えた。

ピースサイクル埼玉
 今年は新たな催しとして5月27日にミニピースを取り組みました。さいたま市にある鷺山記念公園への行程を自転車6台とコンダラ2台を牽き、東京から助っ人に来てもらい取り組みました。
 反原発の旗とコンダラが目立つので沿道の人からも声をかけてもらいました。鷺山記念公園に到着すると埼玉の仲間が主催する,前日からキャンプをしていた家族たちと短時間でしたがバーベキューと交流を行いました。帰りは駅前でご苦労さん会をして解散しました。
 7月17日には、埼玉県庁、さいたま市役所、北本市役所、川越市役所の4自治体要請を行いました。前日までの天気予報は梅雨前線が停滞して雨マークでした。ところが当日は快晴となり急な夏日となりました。今年の要請書は項目を3点追加しました。昨年までの「自然再生エネルギーの積極的導入」に「原発再稼働反対、原発ゼロ」を加え、「国連における核兵器廃絶条約を日本政府は批准するよう国への働きかけ」「沖縄普天間基地撤去とともに、沖縄県民の民意を尊重した、辺野古新基地建設の中止と日米地位協定の見直しをするよう、国に働きかけ」など、他の項目を合わせて7点の要請項目で提出しました。
 午前9時45分に埼玉県庁東門に集合し、車組と自転車組で取り組まれました。9時10分より県庁へ要請行動を東門の時計台の下で行い、今年は県知事選も8月下旬にあるが、知事名はまだ変更ないので上田県知事名で出しました。
 9時30分にはさいたま市役所の東側外通路で行いました。この後、簡単な打合せをして10時ごろ北本市役所に向けて出発しました。車組は早くついてしまうので途中上尾の丸山公園で小休止をして桶川に向かう途中で牧場に立ちよっていたところ電話が入りアクシデントがあり自転車ルートに引返ししました。自転車の1人が荒川土手のサイクリングコースの車止め柵にぶつかり転倒しました。幸い打撲ですみましたが今後気をつけないと反省するところです。
 北本市へはアクシデントがあったので昼食時間がなくなってしまいましたが、ネットで調べておいた北本市近くの中華屋が空いていたので要請に間に合いました。北本市役所三宮幸男市長は今年春の地方統一選挙で当選、市長の交代があり要請文読み上げの時名前を間違えてはいけないと調べてみたら「サングウユキオ」氏でした。要請文宛名は案外気を使います。北本市では例年だとロビーで要請行動ですが、今年は参議院選のせいか相談室の小さな部屋で行われました。このあと敷地内にある記念パネル(世界連邦平和宣言都市、非核平和都市宣言都市、男女共同参画宣言都市)などの前で記念写真を市職員の方に撮ってもらいました。最後に川越市役所に到着すると社民党議員、無所属議員、平和フォーラムの人たちの出迎えがあり一緒に要請を行いました。
各自治体とも好意的に迎え入れてもらえたと思います。
自治体からはピースサイクルあてのメッセージ文書や回答書がだされ、非核化や戦争への風化させないための市民への啓蒙活動が紹介されました。
 今年は新たに女性が1人参加しましたが、初めてなので車同乗になりましました。来年は自転車で走りたいと感想が出されました。浦和駅に5時50分頃到着して解散となりました。

ピースサイクル長野
 安倍政権による「戦争参加」の危険が迫る情勢の中、昨年同様に台風の進路が心配された7月27日、2019夏のピースサイクルは長野県松代(大本営予定地下壕跡)を出発し、7月28日に新潟県柏崎市(東電柏崎刈羽原発)までの約150kmを合計10名(10歳〜72歳)が、「まもろう9条」「なくそう原発」の旗を付けて自転車で走った。
 7月27日は台風6号の紀伊半島上陸が伝えられたものの、進路が南へそれ長野県は晴れ模様。朝から暑くなりそうな状況。午前9時過ぎにマツシロ大本営跡地下壕に近い松代象山神社前から出発した。今年は小学4年生、中学3年生を含む8名で元気に出発。前日まで雨続きのうえ、台風に追いかけられる出発だった。
 松代は、29年前の1回目の長野ピースサイクルの出発点で、私たちは75年前の日本の戦争加害の原点と位置づけ、ヒロシマ、ナガサキ、オキナワなどの戦争被害の地へ思いをつなげようと、意識的にこの場所を選んできた。とかく戦争を被害の立場からしか見ない視点を克服して、厳然たる加害者の立場からも、あの戦争の歴史をとらえて行こうとする認識を込めている。2日間のピースサイクルの終着点は柏崎だが、長野県内の多くの市町村長や議長、市民のピースメッセージを携えて、最終的には8月6日広島市長、8月9日には長崎市長、そして沖縄県知事へとそれが届けられるように取り組んでいる。
 途中、毎年立ち寄らせてもらっている須坂市の長野ソフトエネルギー資料室では、今年もまたメンバーと交流し、スイカなどをいただきながら、脱原発と改憲反対、安倍内閣退陣への願いを共有していることを確認しあった。ここは脱原発を訴えた母の記録「聞いてください」の著者故・坂田静子さんが市民運動を始めた拠点でもあり、太陽光発電の最初の自作設備が30年近く動き続けている。メンバーの高齢化もあって、残念ながら資料室は来年の3月で閉じられることになり、長野ピースサイクルの訪問は今年が最後になってしまう。原発や自然エネルギーに対する膨大な資料や書籍が集まっていて、現在その行き場を探している。私たちも何冊かの書籍をいただいた。20数年の時の流れを感じ、後ろ髪をひかれる思いで別れを告げた。原発や核兵器の廃絶をソフトエネルギーへの転換という視点から取り組まれた運動の拠点が、原発廃止を見る前に消えていくのはとても残念である。
 その後20名が参加し、徐々に暑さが増してくる中、いよいよ長野ピースサイクルならではの急な坂道に。今年は昼飯時毎年9条の会の人達から歓迎を受けていた飯綱公民館が使えないため、最も急な坂道を登り切ってから食堂での遅い昼飯となった。
 それから後は、心配していた台風の影響もなく、ほんの少し雨がぱらつく程度の中、間もなく新潟県に入り、新井のホテルまで一気に坂を下って、この日の走行を終えた。ゆったりと風呂にも入り、夕食はホテルの隣のラーメン屋で。1日目の無事終了に乾杯した。夕食後の交流会は、ホテルの一室でゆっくりと楽しく語り合った。
 7月28日は朝から曇り空。昨夜半から朝方まで雨が降っていたらしく、閉め忘れた伴走車の天窓から吹き込んだ雨水が車の中を濡らしていた。台風の雲が遠くに見える感じの空から、時折小雨がぱらつく中を午前8時過ぎに順調に走り始める。じりじりと暑さが増す中、いつ熱中症になってもおかしくない状況ながら、柏崎刈羽原発めざして田園地帯をひたすら走る。昼前には海の近い国道8号線へと進み、海沿いを走る。今年は佐渡ヶ島が見えないが海は穏やかだ。昼食は昨年と同じ、高速道路の開通でさびれてしまった米山森林浴公園の駐車場でシートを広げてのんびりと食べ昼寝も。長野ピースサイクルの途中休憩はコンビニを使うことが多いが、今年も自転車の小旗を見て「頑張って下さい」とか、「暑いのに頑張っているね」と声をかけられた。
 自転車は元気に柏崎刈羽原発手前の急な坂を登り切って、3時過ぎに柏崎刈羽原発へ到着した。すでに到着していたピースサイクル新潟2019のメンバーと一年ぶりの再会。ここで、東京電力に対して要請行動を行ったのだが、東電側は昨年とは違い、一般客の駐車場の一角、テプコ館の外での対応となった。要請書は「福島原発事故の加害責任を明らかにし、事故前にあるはずだった生活状態が安定しておくれるような損害賠償をきっちり行い、柏崎刈は原発の再稼働をやめ、原子力発電から撤退すべきです!」と表題に掲げ、事故被害者に対する救済処理の不備、無責任さを追求し、最近の原発管理におけるいい加減な事例をあげて批判し、柏崎刈羽原発の再稼働をやめるよう要請した。
 暑い屋外での対応や「要請をきちんと上司に伝えます」に終始している応対者に何人かが抗議の発言や質問を行い、昨年の要請にどう対応したのかなど怒りをぶつける場面もあったが、今年の要請行動は不発に終わった感を残したまま終えた。東京電力がちっとも事故の反省をせず、利益優先、住民負担を平気で押し付ける企業体でしかないとあらためて強く感じる結果となった。
 この後、ピースサイクル新潟のメンバーと別れを告げ、長野ピースサイクルの夏の実走を終了した。長野ピースサイクルの実走参加者はこの数年減少傾向で高齢化も進んでいるが、今年も小、中学生を含む参加者もあり、楽しく充実したピースサイクルとなった。
 これから秋には活動報告集作成や秋のホリディピースサイクル、その他企画をしながら、当面来年の30周年へ向けて、「平和への想いをつないで」活動していくことにしている。

ピースサイクル広島

 8月5日の朝8時過ぎ、広島ピースサイクルは、前日に四国電力伊方原発への申し入れ行動を行ってきた、九州PC・四国PCと呉市で合流し、原爆ドーム前の広島到着集会にむけて早朝から降りそそぐ猛暑のなかを出発した。
 実走はアクシデントもなく、予定の11時過ぎには郵政ユニオン中国の仲間たちが待つ原爆ドームに到着した。午前中に開催される到着集会では、地本委員長、ピースサイクル全国共同代表から激励の挨拶、大阪PC、広島PCからも報告があった。
 また、長崎から駆け付けた代表からも8月8日にむけての取組みや「8・8集会」成功にむけた呼びかけと連帯の挨拶があった。
 夕方6時からは、ピースサイクルも賛同している「8・6ヒロシマ平和のつどい2019 〜 被爆の原点からヒロシマの責務を考える〜東アジアの平和のために〜」の集会に参加をした。はじめに4名の方から「韓国情勢、南北関係、朝米関係について」「沖縄辺野古新基地建設阻止について」「福島原発事故被害の責任を追求し反被曝へ」「天皇代替わり・象徴天皇制強化との闘いについて」「核兵器廃絶(核兵器禁止条約、NPT2020再検討会議)」というテーマで問題提起がされた。
 韓国徴用工問題で日本政府は数々の弊害を生み出しているが、政権の市民感覚との隔たりを感じ、また「表現の不自由展」中止に生きづらさを感じながら、問題提起を受け止めた。
 つづいて、一橋大学大学院言語社会研究科特任教授の鵜飼哲さんが、「東アジアの平和のために」と題した記念講演を行なったが、残念ながら講演については次の行事の時間制約もあり聴くことは叶わなかった。
 なお、集会では1986年から34回目を数えたピースサイクルの取り組みも紹介された。退席時の会場は参加者180名で溢れんばかりになっていた。
 19時半からの「8・5広島平和交流会」には既に30名余りの郵政ユニオン組合員が集まっていた。全国の平和運動の取り組みや被爆2世の方からの貴重なお話を聞くなど、長かった一日は夜遅くまで続き、熱い交流で充実した時を刻んだ。
 明けて6日は被爆74年の原爆ドーム前。早朝から時折り小雨が降る中で「市民による平和宣言」の配布、7時45分からの「グランドゼロのつどい」、8時15分からの「ダイイン」と行動が続いた。昨年から機を見てビラ配布やデモや集会の規制を試みている広島市が今年の式典参列者約4千人に規制に関するアンケート調査を実施し、音量測定も行った。式典に規制を検討しているのは広島市だけだという。これに反対の意を示す被爆者団体は「静かな祈り」と「表現の自由」の狭間で苦慮していると聞く。被爆者の方の静かな祈りに配慮しつつ、過度な自主規制にならぬように行動しようと思った。
 8時半頃からは台風の影響で本降りの雨に見舞われながら、平和公園から中国電力本社前までのデモ行進となった。それでも中電前の座り込みは多くの参加者で埋め尽くされた。上関原発建設を諦めない中国電力へ怒りのシュプレヒコールが響き渡った。


関生支部弾圧を許さない警察権力の暴走をとめよう!支援を広げよう!

 この猛暑の中、連帯ユニオン(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)の10名を越える労働者が不当に勾留され続けている。とくに武健一委員長は健康を害しても放置するという仕打ちを受けてきた。しかし、手錠の拳は力強く外の仲間たちを激励し続けている。
 この時期になぜ関生支部なぜ攻撃されているのか。それは国策捜査であるからだ。
 関生への弾圧に反対する運動に参加しているが、これからも闘い、学び、団結してスクラムを広げていこう。連帯ユニオンの「ストライキしたら逮捕されまくったけどそれってどうなの?(労働組合なのに…)」(旬報社発行)を読んだ。なにより学習だ。   (大阪 R・K)


自衛隊・米軍参加の東京都総合防災訓練反対

          
 中学生を参加させて自衛隊へのリクルートも

 9月1日に、東京都と多摩市の合同という形で総合防災訓練がおこなわれる。多摩市、東京都、警視庁、東京消防庁、そして自衛隊の諸部隊が参加する。多摩センター駅周辺では「自助・共助訓練」「救出・救助訓練」「医療救護訓練」「展示・体験、応急復旧等訓練」「緊急交通路確保訓練」「炊き出し訓練」がおこなわれる。8月31日から9月1日にかけては、多摩市立多摩中学校で「避難所運営訓練」がおこなわれ、中学生も参加する。
 すでにオリンピック期間中に首都直下地震が起こったという想定で、自衛隊・米軍も参加する訓練まで行われている。「防災」訓練が軍民一体の治安・戒厳態勢づくりになっている状況がある。

 8月2日、多摩市永山公民館で「自衛隊(米軍)参加の東京都・多摩市総合防災訓練反対集会」が開かれ、「防災訓練反対闘争の20年」「地域社会と防災」「オリンピックと自衛隊」などの報告があった。 
 戦争いらない多摩市民連合の永井栄俊さんは、「教育再編と浸透する自衛隊」のテーマで次のような報告を行った。7月11日には、多摩中学校校長名では、2学年保護者あてに「合同総合防災訓練について」が出されている。そこでは、「近い将来に首都直下地震等の発生が予想」されるとして、「自分の命を守り、次に身近な人を助け、さらに避難所の運営など地域に貢献することが中学生にも求められる」ことになるとの口実で「避難所宿泊訓練及び自助共助訓練等」への「参加」を求めている。その目的としてあげられたのは、@避難所の宿泊体験を通して、震災時の生活についで考えさせ、自分たちがとるべき行動や態度を身につける。A高齢者や障害者の被災支援を想定した活動を通して、将来にわたって地域の担い手として貢献できる知識や能力、態度を育成する、である。
 こうした訓練などの取り組みで、若い時から自衛隊と接触させ、自衛隊に好感を持たせ、また自衛隊へのリクルートの場にしようとしている。
 しかし、自衛隊の本来の役割はなにより戦争なのだ。総合防災訓練は軍事訓練の側面を持っている。このことを明らかにして、自衛隊・米軍参加の東京都総合防災訓練反対の運動を広げていこう。


著名投資家の日本経済論

      
 本の紹介    ジム・ロジャーズ『日本への警告』

 ジム・ロジャーズは、米国アラバマ州出身でジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立し10年で4200%という驚異的なリターンを叩き出し「世界三大投資家の一人」とされる。日本経済の崩壊は、いよいよ目と鼻の先に迫っているとして『日本への警告―米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』(講談社+α新書)をこの7月に緊急出版した。今日の日本経済の実態を把握するためジム・ロジャーズの主張の主要な点を紹介してみたい。(DAM)
 
 ―もし私がいま10歳の日本人ならば、自分自身にAk‐47(ロシアの自動小銃)を購入するか、もしくは、この国を去ることを選ぶ。現在の日本経済の惨状を目の当たりにして、私はこの意をますます強くしています。借金は雪だるま式に増え続け、高齢化はとどまるところを知らず、政治も問題を先送りするばかりで、打つ手を見いだせない。くわえて、世界に目を向ければ、米中の貿易戦争が激化し、日本も重大な影響を被ることが目に見えています。あまりの暗澹たる様相に、昨年の秋には保有していた日本株をすべて手放しました。いまは株であれ、通貨であれ、日本に関連する資産は一切持っていません。それほどまでに、日本は絶望的な状況に置かれているのです。この10年間で中国を始めとした近隣のアジア諸国がどれだけ力をつけたかを考えれば、日本の凋落ぶりには、めまいを覚えるほどです。このままでは、50年〜100年後には日本という国がなくなっているかもしれません。なぜ、日本人はこうした現実を直視しないのか。皆さんにも、この危機的状況を理解していただきたいのです。まず、直近の話から始めましょう。今年から来年にかけて、日本の景気衰退に拍車をかける出来事が、三つ連続して起こってきます。10月の消費税の8%から10%への増税、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催、そしていつ何時起こってもおかしくない「第二の世界金融危機」です。一つ目の消費税に関しては、14年に5%から8%に上げたときもクレイジーな政策だと思いましたが、10%などもはや正気の沙汰とは思えません。増税して得た予算は、社会保障の充実に使われるとされていますが、まさかそれを本気で信じている人はいないでしょう。二つ目、いま東京ではオリンピック・パラリンピックに向けてあらゆる建設が急ピッチで進められています。道路は改善され、真新しいスタジアムができあがろうとしています。確かに、こうした事業に関わる人たちにとって、オリンピックは一定の経済的恩恵があるかもしれません。しかし、その効果はあくまで一過性のものです。歴史的に見れば、オリンピックが国家にとって金儲けになった例は見たことがありません。持続的、あるいは中期的な効果はまったくないのです。むしろ、たった1ヵ月のお祭り騒ぎのために、日本の借金は大きく膨らむことになる。宴の後にくる反動のほうがはるかに心配です。建設業を筆頭にオリンピック・バブルの終焉で停滞、不振に陥る業種が増え、そのダメージは、消費増税とあわせて日本経済の致命傷になる可能性すらはらんでいます。そして三つ目は、世界に目を転じたとき、08年のリーマンショックに続く、「第二の世界金融危機」が刻一刻と近づいているということです。アメリカはいま、10年以上にわたる史上最長の財政的問題を抱えています。18会計年度のアメリカの財政赤字は、7790億ドル(約84兆円)にのぼり、世界のどこかで経済危機が起これば、一気に破綻しかねない危険性をはらんでいます。トランプ政権と、習近平率いる中国との間の貿易摩擦も激化の一途をたどっています。私は、今年の後半から来年にかけてトランプ氏はより本格的な貿易戦争をしかけると予想しています。最終的に、中国からのすべての輸入品に超高額の関税をかけ、一時的な国交断絶に陥ることも想定しなければなりません。関税が強化されれば、そのコストはアメリカ国内の企業と家計に重くのしかかり、インフレが一気に進みます。それによって消費の減退と、金利の上昇が起こり、結局は、アメリカ自身も苦しむことになる。大量の公的債務を抱え、かつアメリカと一蓮托生の貿易大国である日本は、この戦争の大きな被害を受けることになります。7月24日には、日産の営業利益が前年同時期に比べて約9割減になるという衝撃的なニュースがありましたが、これもアメリカ市場の不振の影響を受けたものです。今後、同様にアメリカ経済の落ち込みの影響を受ける日本企業がたくさん出てくるでしょう。こうした国際的な要因は、消費増税やオリンピックの反動といった国内的な要因と相まって、数十年の中・長期的視野で見た際に、日本経済に甚大なダメージを与えることになります。すでにご存知の通り、日本は先進国の中で最悪の「借金大国」です。抱えている長期債務残高は、国だけで897兆円にのぼります。約10年前の08年度末の時点では546兆円だったことを考えれば、恐ろしいペースで増えていることがわかります。そして、ベネズエラやジンバブエなどの例をあげるまでもなく、莫大な債務を抱えた国は、歴史上例外なく無残な終焉を迎えています。いま50歳前後の日本人であれば、30年後は80歳ですから、誰かがケアをしてくれるかもしれません。国庫に老年人口を支えるおカネもギリギリ残っているでしょう。しかし、その頃40歳になる、いま10歳の日本の子どもたちが老後を迎える頃には、生活を保障するおカネはどこにも残されていません。結局、借金はさらに膨張し、その返済のための延命措置として増税が度々くり返されることになります。しかし、絶対的な納税人口が減少していく以上、とても返済しきれないので、今度は年金などの社会保障がすさまじいスピードで取り崩されることになるでしょう。日本人の生活水準はそうして徐々に悪化し、生活苦にあえぐ人々が激増し、いよいよ打つ手はなくなります。 (次号につづく)


せ ん り ゅ う

  貧乏をつくり富豪のでかい顔

      産業の搾取深まりアベノミクス

  人権は紙の上だけ貧困人

      文化って巨大資本の金の智慧

  非文化を売り出している情報誌

      あそびあり文化のひかり笑ってる

                        ゝ 史

2019年8月


複眼単眼

       
 団塊世代の哲学的敗北

 天皇制の危機は昔から事あるごとに語られてきたし、多少長い目でみれば、これが人類史上から消滅するのは歴史的必然だ。
 2016年8月8日、危機感を持った昭仁天皇が、憲法違反を承知で「おことば」として「生前退位」の意向を表明して以降、再度、大きな議論になった。これは現行法では想定していないことなので、2017年6月9日の参議院本会議で、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が可決・成立し、2019年の退位時期や、その後の昭仁の称号などが決められた。
 これにそって、元号も、従来の「平成」が変わることになり、2019年4月には安倍政権によって新しい元号、「令和」が公布された。新元号制定にあたっては、従来の「漢籍」ではなく「和書」から採用するなどの安倍晋三政権一流のナショナリズム仕立ての小細工も施され、大々的に宣伝されたが、「代替わり」と「新しい時代」の宣伝は、その割に浸透せず、安倍政権と天皇制維持論者にとっては思うに任せない事態が進んでいた。
 この時期にいまさら天皇生前退位と天皇代替わりの演出で、「天皇の御代、ひいては、天皇を戴く日本が末永く続きますように」でもあるまい、新元号制定に伴う「新時代」の到来でもあるまいと思うのが歴史の流れになりつつあったからだ。
 本稿では論じないが象徴天皇制であっても、憲法3原則とは相いれないものであることは明らかだ。いずれ、憲法3原則実現の闘いの過程で、この矛盾は解消されていくべきものだ。こんなことは、この国で60年代、70年代を闘った市民社会の共通認識だった。
 天皇即位儀式、新元号騒ぎのなかで、筆者は歴史の流れを確信し、「元号」など、どこか舐めていたところがあった。「私はもともと『平成』も無視してきたのだから、金輪際、『令和』なんて使うまい、そのうち消えてゆくさ」程度に思っていた。
 ところが第25回参議院選挙をまえに、こうした「楽観主義」の頭がガツンと衝撃を受けた。
 山本太郎氏らの「れいわ新選組」の登場にともなって「れいわの大合唱」が始まったからだ。合唱に加わっている人々をみると、結構、あの学園闘争などを闘った「団塊世代」の人びとがいる。筆者はめまいを覚えた。
 いかに安倍政権への怒りとそれに対抗する野党のふがいなさを恨んでいたとはいえ、「まってました」とばかりに「れいわの合唱」に参加できるリベラルとはいったいなんだ。堂々と加われない人は「令和と使いたくないから『山本』と使う」とか、漢字の令和ではなく、ひらがなの「れいわ」だから、とおずおずと合唱に加わる。
 この歴史観の貧困、哲学の貧困にはげんなりする。併せて党名につかわれた「新選組」と重ねて、ほとんどが司馬(遼太郎)史観のレベルだ。実はあの運動には当時から司馬史観の影響を強く感じていた人は少なくないだろう。ちょうどあの時代のサラリーマンの多くがそうだったように。
あの党派の品川駅での街宣で、候補者たちがみな袖に幕末の新選組ばりに山形模様を描いたピンクの羽織を着て、選挙の演壇に登った写真とそれを熱狂的に応援する聴衆をみて、恥ずかしくなった。いくら支持者にもらったものだといっても、これは「哲学的敗北」だ。
 そういえば「維新」と名乗る政党が跋扈し、立憲野党の第1党が「令和デモクラシー」をキャッチフレーズにしたのが今回の参院選だ。そして共産党までがわざわざ「天皇制」は民主主義革命の課題ではなく、今後は「天皇の制度」と呼ぶのだと立場を変えたのもこの流れか。さらに、思い違いだったら幸いだが、この間、市民社会のなかで「天皇制反対のイデオロギー運動」をやっていた人々からの新党批判の声がほとんどないのはなぜだろうか。もしかしたら、動機はさまざまでも共通の「総崩れ」現象が起きているのではないか。
 しかし、それでも歴史は進む。(T)