人民新報 ・ 第1377号<統合470号>(2019年9月15日)
目次
● 市民野党の共闘をさらに強化し、安倍改憲内閣を打倒しよう
● ヘイト本許さず
● ヨコハマ・カジノ反対
トランプ―米カジノ王―菅などの利権の連鎖を打ち砕け
● 「表現の不自由展 その後」を即刻再開せよ
歴史的事実、表現の自由、民主主義を手離さない
● 対韓輸出規制拡大反対! 韓国除外『政令』撤回! 安倍政権は『徴用工問題』の報復やめろ! 対話で解決を! 官邸前緊急行動
● 「ここがおかしい日韓報道をチェック運動」のよびかけ
日韓市民交流を進める「希望連帯」
● 〈緊急集会〉「韓国は『敵』なのか」
● 平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動
● 関東大震災96周年
歴史に向き合うことなしに未来を語ることはできない〜関東大震災中国人虐殺を考える
● 著名投資家の日本経済論
本の紹介 ジム・ロジャーズ『日本への警告』
● せ ん り ゅ う
● 複眼単眼 / 憲法第96条の含意と安倍改憲
市民野党の共闘をさらに強化し、安倍改憲内閣を打倒しよう
安倍第四次改造内閣が発足した。自民党では二階俊博幹事長と岸田文雄政調会長が続投、内閣では麻生太郎副総理・財務相と菅義偉官房長官が留任した。改造内閣の特徴は、安倍政治の「総仕上げ」にふさわしい極右おともだち閣僚が目白おしの改憲推進体制にある。右翼議員グループ団体「日本会議国会議員懇談会」のメンバーは、前内閣よりは少なくなったとはいえ、依然として安倍を含めた閣僚20人中12人を占める。懇談会には入っていない閣僚も同じようなゴリゴリの右翼信条の持ち主であることもあきらかだ。そして、「国家安全保障に関する重要事項および重大緊急事態への対処を審議する」とされる国家安全保障会議の局長には、外務省出身者ではなく警察官僚出身の悪名高き「ないちょう」(内閣情報調査室)室長で「アイヒマン」(ナチスドイツの親衛隊将校)と呼ばれる北村滋が就任した。内政外交両面にわたる極右政策遂行が予想される。
こうした布陣で、安倍は社会保障制度「改革」や念願の憲法「改正」などにとりくむという。だが、この内閣をとりまく状況はかつてなく厳しいものとなってきている。内閣支持率は経済でささえられている。直近のNHK世論調査(9月6〜8日)によると、「新しい内閣が最も力を入れて取り組むべきだと思うこと」では、「社会保障」28%、「景気対策」20%、「財政再建」15%、「外交・安全保障」11%、「格差の是正」11%、「憲法改正」5%となっている。日本商工会議所の要望書「安倍改造内閣に望む」(9月11日)では、@全世代型社会保障制度の早急な構築、A人手不足への対応とビジネス環境整備、B中小・中堅企業の活力強化、地方創生の加速化、C大規模自然災害からの復旧・復興、防災・減災対策の着実な推進があげられている。企業収益や雇用指標は改善したというが、景気回復の実感は乏しい。大企業はもうかっているが賃上げなど労働者層へまわらず、消費につながっていないからだという現実があるからだ。それをごまかすことはできない。こうしたことになっているのは、安倍経済政策はまず大企業、富裕層優先だということである。
来月1日には、多くのひとびとからの反対の声を圧殺して消費税率10%が施行となる。同時に社会保障制度を維持するため「痛みを伴う改革」という弱者への犠牲のしわ寄せがくる。米中経済摩擦は、アメリカの一極世界支配体制(パックス・アメリカーナ)の歴史的終焉の局面でのトランプ政権の必死の延命策であり、一進一退はありながら長期に続かざるをえないが、これは世界経済とりわけ日本経済を直撃するものとなる。安倍が「100%一致する」とするトランプは、「国際協調体制」を無視して米国第一政策を進め、それは日米経済交渉でも安倍の大幅譲歩を迫るものであることは明らかである。安倍政治の行き詰まりを鮮明にしているのは外交面での難問山積状態である。安倍政権は、日本の植民地支配を反省せず依然として支配者優越者意識をすてきれず日韓政治関係を最悪の状況に落とし込み、一段と敵対関係を強めようとしている。安倍の頼みの対ロシア領土問題に至ってはまったく話にならない。日米軍事同盟の強化と自衛隊増強、集団的自衛権の行使、それらを背景とした政治大国化が安倍の望みだが、それは幻影にすぎない。
にもかかわらず、安倍はその道を強引に進もうとしている。安倍は、「憲法改正を党一丸となって力強く進めたい」と述べるなど改憲への執念を燃やしている。臨時国会で自民党の改憲案の提示や野党を巻き込んでの憲法審査会での憲法論議、国民投票法改正などで改憲の雰囲気をつくりだそうとしている。党の憲法改正推進本部長に細田博之元幹事長、事務総長に根本匠前厚生労働相、事務局長に山下貴司前法相、そして衆院憲法審査会の会長に佐藤勉元国対委員長、審査会の筆頭幹事は新藤義孝元総務相(留任)という配置である。前回の改憲体制が与野党激突型だったのを修正し、何とか野党の結束を切り崩そうとしていることが狙いだ。しかし、7月参院選では改憲派議席は発議に必要な三分の二を下回った。また来年のオリンピックをふくめて今後のさまざまな行事がぎっしりと予定されている。
安倍に対抗するため、市民と野党の共闘を一段と強めていこう。安倍政権の右翼排外主義による反韓政策に抗して、米日政府の政策に反対する日韓民衆の間の連帯の輪はより強固になり広がっている。
さらに大きく団結して、改憲阻止、戦争政策反対、民主主義の破壊を許さず、人びとの生活をまもる闘いを前進させ、安倍内閣を打倒しよう。
ヘイト本許さず
『週刊ポスト』(小学館)9月13日号(9月2日発売)は「『嫌韓』ではなく『断韓』だ 厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」というタイトルで出版された。『怒りを抑えられない韓国人という病理』という記事は、「韓国の成人の10人に1人が治療―怒りを抑制できない『韓国人という病理』」というふざけたものだ。
「韓国になら、何を言ってもいい」―安倍政権の下で反韓嫌韓の風潮がまき散らされているが、完全にこれに便乗した売らんかなの企画だ。当然にも広く抗議の声、運動が巻き起こった。週刊ポストの寄稿者や小学館から本を出版したりしている作家たちからも、執筆拒否などの強い意思表示も出された。小学館とは今後、仕事をしないと宣言した内田樹さんは、「僕は今後小学館の仕事はしないことにしました。こんな日本では、これから先『仕事をしない出版社』がどんどん増えると思いますけど、いいんです。俗情に阿らないと財政的に立ち行かないという出版社なんかとは縁が切れても」と言っている。作家の柳美里さんは「日本で暮らす韓国・朝鮮籍の子どもたち、日本国籍を有しているが朝鮮半島にルーツを持つ人たちが、この新聞広告を目にして何を感じるか、想像してみなかったのだろうか?」とツィートした。
こうした反応に驚愕した版元の小学館『週刊ポスト』編集部は、「弊誌特集『韓国なんて要らない!』は、混迷する日韓関係について様々な観点からシミュレーションしたものですが、多くのご意見、ご批判をいただきました。なかでも、『怒りを抑えられない「韓国人という病理」』記事に関しては、韓国で発表・報道された論文を基にしたものとはいえ、誤解を広めかねず、配慮に欠けておりました。お詫びするとともに、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります」という謝罪文を出した。公式サイトには載せるとしたものの、次号でのお詫びの掲載や雑誌の回収については考えていないとしているように、決してまじめな謝罪ではないことは明らかだ。
9月5日には、小学館のヘイト雑誌を許さないアクションには緊急行動にもかかわらず150名が集まり抗議のシュプレヒコールを上げた。
9月6日、日本新聞労働組合連合(新聞労連)は、声明「『嫌韓』あおり報道はやめよう 他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう」(別掲)を発表した。
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2019年9月6日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南 彰
「嫌韓」あおり報道はやめよう 他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。
国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。
先月末、テレビの情報番組で、コメンテーターの大学教授が「路上で日本人の女性観光客を襲うなんていうのは、世界で韓国しかありませんよ」と発言した。他の出演者が注意したにもかかわらず、韓国に「反日」のレッテルを貼りながら、「日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しないといかん」などと訴える姿が放映され続けた。憎悪や犯罪を助長した番組の映像はいまもなお、ネット上で拡散されている。
今月に入っても、大手週刊誌が「怒りを抑えられない韓国人という病理」という特集を組んだ。批判を浴び、編集部が「お詫びするとともに、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります」と弁明したが、正面から非を認めることを避けている。新聞も他人事ではない。日韓対立の時流に乗ろうと、「厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」という扇情的な見出しがつけられたこの週刊誌の広告が掲載されるなど、記事や広告、読者投稿のあり方が問われている。
日韓対立の背景には、過去の過ちや複雑な歴史的経緯がある。それにもかかわらず、政府は、自らの正当性を主張するための情報発信に躍起だ。政府の主張の問題点や弱点に触れようとすると、「国益を害するのか」「反日か」と牽制する政治家や役人もいる。
でも、押し込まれないようにしよう。
「国益」や「ナショナリズム」が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない。そして、時流に抗うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない。
私たちの社会はいま、観光や労働の目的で多くの外国籍の人が訪れたり、移り住んだりする状況が加速している。また、来年にはオリンピック・パラリンピックが開催され、日本社会の成熟度や価値観に国際社会の注目が集まる。排外的な言説や偏狭なナショナリズムは、私たちの社会の可能性を確実に奪うものであり、それを食い止めることが報道機関の責任だ。
今こそ、「嫌韓」あおり報道と決別しよう。
報道機関の中には、時流に抗い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力している人がいる。新聞労連はそうした仲間を全力で応援する。
ヨコハマ・カジノ反対
トランプ―米カジノ王―菅などの利権の連鎖を打ち砕け
アベノミクスの第三の矢の「成長戦略」は、武器や原発の輸出そしてカジノ誘致が柱だといえよう。
カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法は、2018年、自民党・公明党・日本維新の会などの賛成多数で成立した。菅義偉官房長官は、「日本を観光先進国に引き上げる原動力」と強調した。さっそくアメリカなどのカジノ業者が動き出した。とりわけ米カジノ大手「ラスベガス・サンズ」が積極的だ。同社の会長シェルドン・アデルソンは、トランプ大統領の有力支援者である。
政府は、この秋、カジノ事業者の適格性を判断する「カジノ管理委員会」を設け、設置区域の認定基準などを定める基本方針案を公表し、地方自治体と事業者による申請に向けた準備を進めるとしている。
カジノ認定地域は全国で最大3カ所で、大阪、和歌山、長崎、北海道、愛知などが名乗りを上げている。
10月からの臨時国会の動きを前にして、8月22日、横浜市の林文子市長は、カジノ誘致を発表した(横浜港の山下ふ頭 横浜市中区山下町 47ヘクタール)。 林市長は、09年に横浜市長選挙に、民主党から出馬し当選。しかし2013年の市長選では、菅官房長官(選挙区は神奈川2区 横浜市西区、南区、港南区)が応援に入った(自民も公明も対立候補を出さず)。この選挙の代償が、カジノ誘致だったといわれる。
だが、最近の2017年選挙では、市民はもとより、外資と国の主導で地場企業に利益がないことを知った横浜港運協会などが反対に転じたのだ。こうして市長選はカジノ誘致が争点のひとつになったが、林市長は、公約は「カジノは慎重に検討」とした。ところが3選を果たした林市長は、今回、選挙公約を撤回して、誘致の発表を行ったのである。
林市長の「裏切り」に怒り、治安悪化やギャンブル依存症の問題をはじめカジノに付属する様々な危険について危惧する声は急速に広まっている。そもそも2017年市長選時の出口調査(共同通信社)の結果では、「誘致すべきではない」が61・5%、「誘致すべきだ」は
16・3%だった。横浜市の中期計画素案のパブリックコメントには、カジノ・統合型リゾート(IR)に関する意見で否定的なものが90・4%となった。反対の運動は大きくなっていく。
横浜市は市民の声を真摯に聴きカジノ誘致を直ちに撤回せよ。
「表現の不自由展 その後」を即刻再開せよ
歴史的事実、表現の自由、民主主義を手離さない
国際芸術祭のあいちトリエンナーレ2019の企画展『表現の不自由展・その後』(名古屋市)の中止は、排外主義勢力による大量殺人をほのめかす卑劣な組織的脅迫や河村たかし名古屋市長、菅義偉官房長官、黒岩祐治神奈川県知事などの右派政治家などによる不当な弾圧である。表現の自由は民主主義社会の根幹であり、今回は政治的争点となり得る芸術作品の展示が中止されたことはきわめて重大な事件であり、けっして許されることではない。早期の展示再開が求められている。
地元愛知では、「表現の不自由展 その後」の再開をもとめるあいち県民の会などの市民団体がスタンディング、集会、デモなどを連続的に行うなど粘りつよい運動を展開している。
8月22日には緊急シンポジウム『「表現の不自由展・その後」中止事件を考える』が開かれ、出展した写真家、美術家などが発言し、再開を求める声を上げた。
企画展「表現の不自由展・その後」中止に抗議し、再開を求める声明は、愛知県弁護士会をはじめ各界各層各地にひろがっている。日本ペンクラブ、漫画家協会、美術家連盟、日本出版者協議会、そして市民団体や労働組合などがぞくぞくと声明をだしている。
いま、展示の再開をもとめる「共同要請書」が多くの団体に呼びかけられていて、あいちトリエンナーレ2019実行委員会(大村秀章・実行委員会会長、津田大介・実行委員会芸術監督)あてに提出する。「共同要請書」の内容は次のようなものだ―「旧日本軍戦時性奴隷制度(いわゆる「従軍慰安婦」問題)は歴史的事実であり、旧日本軍および当時の日本政府の戦争犯罪もまた争う余地のない歴史的事実です。私たちはこれらの事実を否定、歪曲、隠蔽する一切の言動に反対します。今回の「表現の不自由展・その後」に対する脅迫と圧力は、表現の自由と民主主義に対する脅迫と圧力に他なりません。私たちは歴史的事実、表現の自由、そして民主主義を私たちの手から手離さないために以下要請します。『表現の不自由展・その後』を即刻再開してください。
対韓輸出規制拡大反対! 韓国除外『政令』撤回!
安倍政権は『徴用工問題』の報復やめろ! 対話で解決を! 官邸前緊急行動
韓国最高裁(大審院)の元徴用工への賠償判決にたいして、安倍政権は植民地支配を反省し真摯に解決に向かうのではなく、逆に対韓報復政策を続けざまに強行している。8月28日は、韓国をいわゆる「ホワイト国」から除外する政令施行日だった。
8月27日、首相官邸前で「対韓輸出規制拡大反対!韓国除外『政令』撤回!安倍政権は『徴用工問題』の報復やめろ!対話で解決を!官邸前緊急行動」が行われた。この行動は、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」と「3・1朝鮮独立運動100周年キャンペーン」の共催で取り組まれた。緊急の呼びかけにもかかわらず、市民、労組など350人が集まった。
主催者を代表して、小田川義和さん(憲法共同センター・全労連議長)が発言。明日、日本政府は、輸出関連でいわゆる「ホワイト国」除外を発効させる。韓国政府は日韓軍事機密包括保護協定(GSOMIA)破棄を決定した。韓国との関係はいま著しく悪化の連鎖がおこっているが、はじめに安全保障問題を口実に対立をエスカレートさせたのは安倍政権であることを厳しく指摘しなければならない。一日も早くの話し合いでの解決を強く求めていきたい。
矢野秀喜さん(強制動員問題解決と過去清算のための共同行動)、白石孝さん(希望連帯)などの発言がつづいた。
韓国から「安倍糾弾市民行動」と「社会市民団体連帯会議」から来日した3人が参加し発言した。「安倍糾弾市民行動」の代表は、すでに金で解決したと強弁して過去の植民地支配の清算をおこなわない安倍政権を糾弾し、わたしたちは安倍首相自らの心からの謝罪の言葉を聞きたいと思っているし、ここにきて日本の政治家がいかに反韓感情を煽っても韓日民衆は固く連帯していることを確信できた、これからもともに闘っていこうと述べた。
在日韓国民主統一連合の宋世一副議長が発言し、最後に、高田健さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動)が行動提起を行った。
「ここがおかしい日韓報道をチェック運動」のよびかけ
日韓市民交流を進める「希望連帯」
8月27日、衆議院第2議員会館「多目的室」で、「パク・ウォンスンソウル市長訪問報告とメディアのファクトチェック運動のスタート院内集会」が開かれた。ファクトチェック運動(「ここがおかしい日韓報道をチェック」運動)は、日本メディアの韓国ムンジェイン政権攻撃と嫌韓煽りを正す運動である。
主催の日韓市民交流を進める希望連帯は、8月下旬、韓国を訪問し、8月21日にはソウル市庁舎市長室で、革新的な市政を進めているパク・ウォンスン市長と意見交換をおこなった。パク・ウォンスン市長表敬訪問に際しての「希望連帯」からのアピールは次のように述べている―最悪という日韓の政府関係を修復してさらなる友好を構築するには、「@現在の日韓問題の本質は、安倍政権による一方的で卑劣な文在寅政権への攻撃です。私たちは『反日・反韓』に染まることなく、『反安倍』で団結して反撃します。1910年日韓併合からの侵略の歴史を正当に認識し、日韓請求権協定は日本からの恩恵だとか、韓国大法院判決は協定を無視しているという誤った歴史認識を日本社会から払拭します。新自由主義政策の下、日韓ともに格差が拡大し、貧困が深刻化しました。それに対して韓国では民主の精神であるキャンドル革命によって保守政権を打倒しました。キャンドル精神によって誕生した文在寅政権は、対極にある安倍政権から攻撃を受けています。反安倍でまとまり、日韓市民の交流と連帯で友好関係をさらに強めていきます。A日本においてはマスメディアが余りにも偏向し、安倍政権に忖度、迎合して事実を歪曲した報道が垂れ流され、世論をミスリードしています。私たちは、心あるメディア関係者や市民による共同作業で、報道調査活動(ファクトチェック運動)を行います。その活動を通して、誤った方向に導かれている日本世論に正当な歴史認識に基づいた事実を提供します」。
集会では、希望連帯の瀬戸一郎事務局長が訪韓の報告をおこなった。
つづいて、日本における韓国報道がデマに満ちている状況について、テレビに連日登場して反韓を煽っている元駐韓国大使で現・三菱重工顧問の武藤正敏などの例が挙げられた。
希望連帯の白石孝代表は、「メディアチェック運動」について説明し、協力をよびかけた。この運動の基本的な考えは、@チェック運動参加者募集〜個人参加方式でジャーナリストと市民が対象、Aそれぞれが、自分のチェックする紙誌、番組を決める、Bチェックし、問題と感じた内容をメーリングリストで報告、C検討チームで検討、分析、D問題ありと判断したら、公開質問状を出し、回答を求める、D結果を公表、ということで、希望者の参加登録を求める。
希望連帯― kibourentai@gmail.com
〈緊急集会〉「韓国は『敵』なのか」
岡本厚・元「世界」編集長などが、呼びかけ世話人となっての声明「韓国は『敵』なのか」が出され(7月25日)、賛同が広がり、またこの声明にも呼応する形で、韓国では元首相や元国会議長などによる「東アジア平和会議」など各界の人たちからも声明が出されている。
8月31日、韓国YMCAで、〈緊急集会〉「韓国は『敵』なのか」が開かれた(主催―「韓国は『敵』なのか」声明の会、協賛―戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)。集会では、岡本厚さんが開会の言葉。声明は7月に出されたが、昨年の韓国大審院判決以降の日本政府のきわめて危険な対韓国政策に危惧が広まったからである。1937年、かつての中国への戦争の時に、当時の近衛首相が、「爾後国民政府を対手とせず」との声明を出したが、これは事実上の国交断絶声明であり、解決の門を閉じ、両国関係を泥沼状態に自らおいたものだ。圧力をかければ相手はすぐに屈服するという安易な考えであり、相手がどう反応してくるかという想像力がまるでない、稚拙なものだ。いまの日本政府のやりかたは非常によく似ている。韓国には植民地支配の記憶が国民的にあることを忘れている。安倍政権のやり方に対して、当然のように、日本製品不買運動や訪日中止などの反応が出てくることが全く分からない。だから安倍政権は予想できずに驚いている。声明は広がって、昨日の段階で9375人の賛同者となった。アクセス数は26万をこえた。意見も多く寄せられている。韓国もこの声明に呼応する動きが出てきている。韓国の進歩的な新聞「ハンギョレ」は日本でのこうした動きを「干天の慈雨」と報道している。しかし、日本ではテレビ、新聞が、嫌韓感情を指導する状況が強まっている。日韓両国の和解を早急に進めなければならない。だが、その前提は植民地支配への謝罪である。
つづいて内田雅敏弁護士が、「韓国大法院判決の意味」について報告。大法院判決は、日本の裁判では「日本の韓半島と韓国人に対する植民地支配が合法的であるという規範的認識」を前提に、「国家総動員法」と「国民徴用令」を韓半島の人びとに適用することが有効であると評価しているが、このような判決理由が込められた同事件の日本判決を承認してその効力を認定することは出来ないとした。また
65年の請求権協定に植民地支配に基づく強制労働の慰謝料請求権の問題は入っていないし、
請求権協定で放棄されたのは国家の外交保護権であって、個人御請求権そのものは放棄されていない。西松建設中国人強制労働事件最高裁判決でも、日中戦争の遂行中に生じた中国国民の日本国又はその国民若しくは法人に対する「個人請求権そのもの」は放棄されていないとしている。そのほかの裁判でも、「当事者間の自発的解決が望ましい」付言しているなど、個人請求権は認められているのである。
和田春樹東大名誉教授は、「安倍首相と韓国・北朝鮮」と題する発言で、日本政府の朝鮮半島政策を批判した。安倍首相の原点は、1997年に作られた「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」にある。安倍晋三が事務局長を務め、中川昭一など右派議員が参加し、歴史教科書、慰安婦、南京事件問題などで歴史を歪曲してきた。また、安倍は拉致問題3原則を言っている。これは、@拉致問題は日本の最重要課題であること、A拉致問題の解決なしには国交正常化もないこと、B拉致被害者の全員帰国、つまり全員が生きて帰って来ることだとしている。これでは問題は解決できない。安倍内閣は、2016年に集団的自衛権を行使できる「安保」法制を強行成立させた。当時の統幕議長は朝鮮半島での戦争に自衛隊も参加することになっていたと証言している。ムン・ジェイン大統領は、朝鮮半島での軍事行動を許さず、南北休戦、そして米中対話の橋わたしをおこない、金正恩・トランプ会談を実現させるうえで大きな役割を果たした。このような情勢の急変に安倍首相は大変なショックをうけることになった。一部週刊誌は、統一朝鮮、中国、ロシアに対抗する日米そして台湾との軍事同盟を呼びかけるなど右翼的な論調を叫んでいるが、こんなバカげた展望はない。すぐに消えてしまうだろう。
つづいて、福田惠介さん(東洋経済新報社)、板垣雄三さん(東京大学名誉教授)、金性済さん(日本キリスト教協議会総幹事)、金子勝さん(慶応大学名誉教授)、香山リカさん(精神科医)、羽場久美子さん(青山学院大学教授)、コン・ヨンソクさん(一橋大学准教授)、佐川亜紀さん(詩人)、山口二郎さん(法政大学教授)、岡田充さん(共同通信客員論説委員)からの発言が続いた。
平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動
8月10日、「平和の灯を!ヤスクニの闇へ
第14回キャンドル行動」が行われた。在日本韓国YMCAでの集会では、主催者を代表して主今村嗣夫さんがあいさつ。ヤスクニ「合祀」拒否をしているアジアの遺族のさまざまな苦悩を想起して、キャンドル行動を続けていこう。シンポジウムでは、パネリストの高橋哲哉さん(東京大学教授)、竹内康人さん(強制動員真相究明ネットワーク)、渡辺美奈さん(女たちの戦争と平和資料館館長)、金世恩さん(日本製鉄強制動員訴訟原告代理人・弁護士)が発言し、韓国人遺族証言、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動、即位・大嘗祭違憲訴訟の会、「韓国は『敵』なのか」声明の会から報告があった。愛知トリエンナーレ「表現の不自由展・その後」で「平和の少女像」を出品した彫刻家・キムソギョンさんが、なぜあの作品を作ったのか、そして今回の事態について語った。
午後7時からは「キャンドルデモ」が行われた。
関東大震災96周年
歴史に向き合うことなしに未来を語ることはできない〜関東大震災中国人虐殺を考える
1923年9月1日の10万をこす死者・行方不明者を出す関東大震災の際には、「朝鮮人が暴動を起こしている」といった流言蜚語で自警団などが無防備の相手を集団の残忍な方法で1週間以上にもわたって朝鮮人、中国人、日本の社会主義者(亀戸事件)、無政府主義者(甘粕事件)などに対する虐殺事件がおこった。警察は流言を拡散させ、戒厳令で出動した軍隊の一部も直接虐殺をおこなった。
中国人虐殺は、大島町(東京府南葛飾郡大島町)で9月3日の約300人をはじめ都内、神奈川などで700余人が犠牲となった9月12日には、旧中川の逆井橋付近でで、日本に留学し、中国人労働者が多く住んでいた大島町で在日中国人を助ける運動をしていた中国人救済組織である僑日共済会会長の王希天(吉林省長春出身、日本で周恩来らとともに活動)が野戦重砲兵第1連隊第6中隊の垣内八州夫中尉によって斬殺され、遺体は中川に投げ込まれた。日本政府は、隠ぺい工作を続けたが、中国への帰還者の証言によって事実が暴露された。日中間の大問題となり、1924年5月清浦奎吾内閣は、被害者への20万円(当時)の賠償を決定したが、交渉は、日本の軍国主義・侵略戦争への傾斜によって中国との交渉を中断させるなど、日本政府は問題を解決しようとはしなかった。遺族たちは、いま日本政府に関東大震災で虐殺されたに対する謝罪と賠償を求めて闘っている。
9月8日、東京江東区の東大島文化センターで、「関東大震災96周年 中国人受難者追悼式」(主催・関東大震災中国人受難者を追悼する会)が行われた(大島文化センターはかつての中国人虐殺現場あたりに建てられている)。
追悼式では、一橋大学名誉教授の田中宏さん主催者を代表してあいさつ。黙祷のあと、集会に参加した王希天の遺族の王旗さん(王希天研究会会長)をはじめ大島町での犠牲者遺族(浙江省温州市)などからあいさつがあった。中国大使館、福島瑞穂参議院議員、中村まさ子江東区議会議員から追悼の言葉が述べられ、参加者による献花が行われた。
午後からは、「歴史に向き合うことなしに未来を語ることはできない〜関東大震災中国人虐殺を考える集い」(主催・関東大震災中国人虐殺を考える集い実行委員会)が開かれた。
はじめに黙とうが行われ、四人の遺族からの発言があった。
つづいて、法政大学教授の愼蒼宇さんが「関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺」と題して講演。日本の「戦争観」の問題点が問われている。戦争とは、1941年12月8日以降の戦争なのか、それともアジア地域でも戦闘が行われたことを指摘する「15年戦争」なのか。15年戦争は満州事変、中日戦争の全面化も対象とするが、抜けている視点がある。それは19世紀末以降の中国・朝鮮での軍事行動であり、「50年戦争」という視点である。朝鮮から見ると日本との関係はけっして15年戦争でけなく、50年戦争なのであり、その間は継続した戦時、または準戦時だったのである。清日戦争以降の連続性が強調されなければならず、植民地(朝鮮・台湾・満州)での「戦争」は、1894年から1945年であり、「植民地戦争」と定義すべきだ。「治安戦」は、日本の軍事暴力と武装群衆の抗争であり、軍事力の圧倒的な非対称性があり、日本軍による一方的なジェノサイドだ。植民地では「戦争」は日常の中に埋め込まれていたということである。強制労働や女性に対する性暴力などはもとより、直接的な武力も「秩序維持」や「反乱の防止」のために日常的に行使されたのである。武力行使の主体は軍隊に限らず、警察や、またしばしば武器を持つ入植者でもあった。植民地においては いわば「戦時」と「平時」が隣り合わせになっていたということであり、「植民地責任」を国家間の戦争の問題だけに限定することはできないのである。関東大震災でも、朝鮮人・中国人虐殺の主体は、日本軍・憲兵・警察であり、そして在郷軍人・自警団だった。ジェノサイドの「銃後」があったのである。 50年戦争を通じて朝鮮・中国(台湾)での日本軍隊による虐殺・迫害経験が関東大震災での虐殺を生んだのである。朝鮮における日本軍による苛酷な弾圧では、「もうひとつの清日戦争」としての東学農民戦争でのジェノサイドがあった。その前には台湾そして、三・一独立運動、シベリア戦争、間島で虐殺がつづいた。関東大震災時の戒厳では、軍司令官・参謀長・各司令官の朝鮮や台湾、中国での植民地戦争・ジェノサイドの経験が影響している。とくに多いのは武断政治期の朝鮮派兵経験で、そこでは民族独立運動への激しい憎悪がある。それらの戦争では、軍法違反の蛮行の日常化していたのである。その朝鮮植民地戦争に全国各地の師団が送られてきたが、そこでは郷土部隊の蛮行の経験とその蓄積が行われてきた。
関東大震災では、関東のみならず地方における流言のなかで、軍隊の出動も行われ、迫害が広がった。関東大震災の朝鮮人・中国人虐殺はこの延長線上にあるのである。姜徳相さん(在日韓人歴史資料館初代館長)は「官民一体の関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史的背景をみるなら、軍隊、警察のみならず日本人庶民もまた偏見、差別の持主であった。自警団の主体となった在郷軍人、消防団員、青年団のメンバーをはじめ町の八百屋や魚屋、豆腐屋のおじさんたちはみな清日戦争、露日戦争、義兵戦争、シベリア戦争、三・一大虐殺、間島大虐殺に参加した日本兵士の軍歴を持ち『明治』以降の日本のマスコミの朝鮮人蔑視観・敵視の風潮に染めあげられていた天皇教徒であった」と書いている。
日本近代史では、植民地での「戦争」ということが「不在」だ。日本政府の戦後70年談話でも、中国と朝鮮とを差別化し、満州以前のものは一切していないことが指摘されなければならない。
そして今改めて中朝連帯の歴史的意義を捉えなおす必要がある。
著名投資家の日本経済論
本の紹介 ジム・ロジャーズ『日本への警告』
ジム・ロジャーズ『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』(講談社+α新書)の主要と思われる部分の引用の後半です。 (DAM)
― 先人たちがずっと先延ばしにしてきたツケをひたすら払わされ、生活水準が目も当てられないほどに落ち込めば、当然のこととして社会不安が膨れ上がります。30年後、人々の鬱憤はあらゆる形で噴出し、日本は、より多くの犯罪が起こる国になります。政府に対する反乱や暴動が、毎日のように起きているかもしれません。そうなったとき、残された手段は国を捨てて逃げ出すか、あるいは自分の身を守るために武器をとるしかありません。冒頭の私の発言には、そういう意図が込められているのです。「日本は違う、そんなことが起きるはずがない」と思っていませんか?
しかし、80年代後半、日本で大型のバブルが発生したときも、「日本だけは違う、バブルではない」と強気に言い張っている人がたくさんいました。その後、日本経済がどんな結末を迎えたかは、皆さんがご存知のとおりです。「自分たちだけは違う」という根拠のない思い込みほど、危険な兆候はないのです。先ほどの日本株の話に戻すと、そもそも私が日本株を買い始めたのは、東日本大震災の直前でした。その後、震災による株価の下落を受けてさらに買い増しを進めていました。というのも、短期的に見れば、日本の景気は間もなく回復すると踏んでいたからです。それに、日銀も資金供給を増やすという方針を明らかにしていました。政府が印刷機を回すとき、おカネが最初に向かう先が株式市場であることは、自明の理です。実際、黒田東彦総裁が率いる日本銀行がジャブジャブと紙幣を刷り、日本株や日本国債をたくさん買ったことで、日本の株価は跳ね上がりました。逆に言えば、ここ数年の日本株の活況はあくまでも日本政府が人工的に株価を上げているに過ぎず、実態が伴っていなかった。景気にしても、異次元の金融緩和で円という通貨の価値を切り下げたことで、一部の大手企業がその恩恵を受けるのみでした。一般的な日本人の生活や暮らしが改善したかといえば、答えははっきりNOでしょう。そして、このアベノミクスの一番危険な点は、人工的に低金利の状況を作って、借金をしやすくしていることにあります。雪だるま式に増えている日本の借金は、猛烈なペースで進む人口減少のなかでは、健全に返済していくことはとうてい不可能です。
将来のことを考えれば、日本政府がただちにやるべきことは、財政支出を大幅に削減し、同時に減税を進めることです。この2つを断行すれば、状況は劇的に改善したはずです。ところが、安倍首相がやったのはすべてこれとは真逆のことでした。彼が借金に目をつぶっているのは、最終的に借金を返さなくてはならない局面になったときには、自分はすでにこの世にいないからなのでしょう。これから20〜30年後に歴史を振り返ったとき、安倍首相は、日本の経済に致命傷を与えた人物として、その名を刻んでいるはずです。そして冒頭で述べた通り、日本が抱える最大の問題は、言うまでもなく極端に高齢化が進んだ、その人口構成にあります。日本は世界でもっとも出生率が低い国の一つであり、かつ、国民年齢の中央値が世界で最も高い国の一つです。人口動態から見れば、21世紀の終わりを待たずして、日本の人口がいまの6割ほど、約7500万人程度になるのは明らかです。
人がどんどん減っていくという絶対的な危機を乗り越えるには、選択肢は2つしかありません。すなわち、いまいる日本人に子どもをたくさん産んでもらうか、あるいは他国からの移民を受け入れるかです。現在の日本の人口を維持するには、女性1人あたり2人以上の子どもを生む必要があるとされています。ところが、実際の出生率は1・4人程度ですから、遠く及びません。となれば、残るは移民を受け入れることしかありません。移民の受け入れは日本にとってもはやbetterではなく、mustの選択なのです。ところが、日本政府は、事ここに及んでも、積極的に移民を受け入れようとはしていません。
日本は、21世紀に入ったいまも相変わらず外国人参政権を認めておらず、18年には国連から「在日外国人に対する雇用差別、入居差別、教育差別がある」と勧告を受けているほどです。その根底にあるのは、同質性の高い国民性や同一言語を当然のものと考える、鎖国以来の意識ではないでしょうか。ここで思い出されるのが、かつてアジアでもっとも裕福な国だったビルマ(現・ミャンマー)のことです。1962年以来、独裁政権によって支配され外国人を追放したビルマは、アメリカの経済制裁やインフラ不足を背景に、わずか50年のうちにあっという間にアジア最貧国のひとつへと転落してしまいました。「日本の場合は大丈夫」といえる根拠は、どこにもありません。人口減少に、移民の受け入れの遅れ、そして巨額の公的負債―。ここまで指摘してきた危機に対して、私は15年も前から警鐘を鳴らし続けてきました。別に、予言という程のことでもありません。なぜなら、こうした事実は足し算や引き算ができて、統計を見ることができれば、簡単に割り出すことができるからです。しかし、多くの日本人は、この現実から目をそむけてきました。もう一度言います。皆さんはいまこそ問題を直視し、現実的な対策を取るべきです。自分や子どもたちの未来は、自分でしか守ることができないのですから。
………以上のジム・ロジャーズ氏の日本への警告は、一貫して最大のリターンを追及してきた冷徹な投資家の視点で日本経済の実態を分析したものであり示唆に富むものと考える。ここにきて、あからさまな民族排外主義を扇動する安倍政権の下で進行する底なしの政治の劣化は、日本経済が刻一刻と破綻の危機に向かっている「集中的表現」に他ならない。いかなる危機が表面化することになっても、安倍政権に反対して積極的、自主的、行動的に参加してくる市民と労働者が急速に、急激に増大することを確信して闘い抜くことが迫られてる。
せ ん り ゅ う
三線のうた声ありて反基地深む
辺野古にんげんをかえせ埋立やめろ
辺野古いまだ軍隊にふみにじられ
情報の海に溺れて兎さん
トランプさん宇宙とじゃれて戦争ごっこ
ゝ 史
2019年9月
複眼単眼
憲法第96条の含意と安倍改憲
参議院選挙では安倍首相ら改憲派が虎の子の議席である3分の2を失った。これは改憲反対派の大勝利だ。私的感覚的でいえば、「よくぞ勝ったものだ」と思う。
改憲反対派にとって、不利な材料はたくさんあった。
野党と市民連合の政策合意が成立するのが遅れ、32の1人区での統一候補が決定するのが遅くなった。
2013年の参院選で与党が大勝したため、今回の野党の統一候補は新人が圧倒的に多く、知名度に欠ける。
野党第1党の立憲民主党と第2党の国民民主党の「争い」ばかりが、メディアに面白おかしく書かれ、野党にまとまりがないという報道が相次いだ。
ようやく、野党候補の1本化は成立したが、2016年参院選、2017年衆議院選をへて、1本化自体が目新しく映らず、1本化しただけでは有権者の魅力を掻き立てられず、柳の下でドジョウがとれるわけではなくなっていたこと。
自民党は2016年参院選の敗北(野党11議席)を教訓に、それらの選挙区を主たる対象にして重点区を指定し、必勝を目指して、そこに人もカネもつぎ込んできたこと。
有権者が安倍1強政治と微力な野党に飽いて、選挙戦自体が盛り上がらなかったこと。これは投票率の低下を招いた(安倍政治への支持にしても、大方のマスコミの調査でみると、「安倍に代わるものがいない」という消極的な支持に過ぎないのだが)。
そういう野党に不利な条件が少なくない中で、改憲派の3分の2を打ち破り、自民党は単独過半数を失った。政府は与党が過半数を確保したので勝利だと強弁するが、実のところ、安倍晋三の心胆を寒からしめたのではないか。
一部には改憲派と改憲反対派の議席数の差が数議席しかないことをもって、改憲派による「引き抜き」工作での議席差の逆転を危惧する向きがある。そのことで、勝利と言ってもたいしたことではない、薄氷上の勝利だと強調するわけだ。
しかし、改憲派に引き抜かれそうな議員の誰彼の動向に一喜一憂する必要はない。
自民党が発議強行という脅しの議席を失った点での今回の参院選の結果が意味するものは大きいことを確認したうえで言うのだが、安倍改憲の実現は数議席程度の差の引き抜き工作による穴埋めなどでは解決しない。
安倍改憲派にとって必要な条件は、改憲反対の個々の議員の引き抜きなどではなく、野党共同戦線の一角を切り崩し、力関係を大きく再編することにある。
もともと憲法96条が規定する改憲発議必要条件の3分の2の規定は、与党のみで改憲発議にはしることなく、最低限、主な野党の賛成も得て発議することが想定されている。この考えでいけば主な野党(できれば野党第1党、すくなくとも第2党や第3党)を改憲派に引き込むかどうかこそが、安倍改憲達成の眼目となる。
今後の第200回臨時国会以降の安倍首相らの改憲多数派工作の中心は、公明党と維新の会を抱え込むだけでなく、野党第改憲陣営に引き込むことだ。
これこそ発議の後に控える改憲国民投票という高いハードルを乗り越え、2021年まで引き延ばした「安倍首相の任期中の改憲」を実現する道だ。こうしなければ、改憲の発議はできても、国民投票に勝利することは困難だ。改憲派は負けそうな発議、負けそうな国民投票に踏み切ることはない。もしも、いったん敗北すれば、ほぼ半永久的に改憲ができなくなる。
私たちは次回の衆院選でも改憲派を大きく3分の2割れに追い込むたたかいをやりぬかなくてはならない。もとより、安倍与党の過半数割れを実現して政権交代に持ちこむことはベストの選択だが。 (T)