人民新報 ・ 第1379号<統合472号(2019年11月15日)
  
                  目次

● 東アジア民衆と連帯し、総がかりでスキャンダルまみれの安倍内閣を倒せ

● あらゆるハラスメントの根絶を!

        パワハラ指針を真に実効性のあるものに改定せよ

● 共謀罪法廃止! 秘密保護法廃止!

        マイナンバー違憲訴訟神奈川 地裁判決と控訴審の展望

● 自衛隊の中東派遣認めない!

        憲法研究者が自衛隊のホルムズ海峡周辺への派遣について声明

● 朝鮮幼稚園はずしにNO! すべての幼児に教育・保育の権利を!

        教育を受ける権利、そして民族教育の権利を誰も否定することはできない

● 代替わりを使った学校教育への国家権力の介入

        大阪や東京・八王子の例

● 日本労働弁護団声明

        公立学校教員への変形労働時間制導入に反対する

● 在日米軍  事故多発の実態


● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  緊迫する憲法審査会での攻防






東アジア民衆と連帯し、総がかりでスキャンダルまみれの安倍内閣を倒せ

 安倍の改憲策動が強まっている。自民党は、改憲世論を作り出すため、全国で改憲集会などを行っている。
 10月18日には、二階俊博幹事長のお膝元・和歌山で憲法集会が開かれた。この集会に安倍はビデオメッセージをおくり、「参議院選挙の結果、自民党は国民の皆様から議論を前に進めるべきとの力強い支持をいただきました。各種世論調査でも、『議論すべき』という回答が多数を占めています。…野党各党においてもそれぞれの案を持ち寄っていただき、憲法審査会の場で国民の期待に応える活発な議論を行っていただきたい」とし、「憲法改正への挑戦は決してたやすい道ではありませんが、必ずや皆さんとともに成し遂げていく決意です」といった。そして、下村博文前自由民主党憲法改正推進本部長が改憲を訴えた。
 党政調会長の岸田文雄も、憲法をテーマとした地方政調会を各地で開催している。元幹事長の細田博之改憲推進本部長は繰り返し改憲を主張するなどしている。このように自民党は挙党体制で改憲に取り組み、国民投票法(改憲手続法)の改正と自民党改憲案の提示、改憲発議を実現するため、野党を巻き込んで国会での論議を進めようと狙っている。憲法をめぐる闘いは大きな山場に入った。だが、安倍改憲の日程はタイトになってきていて、また閣僚の連続辞任が起こるなど身内のスキャンダルがつづいている。閣僚の辞任はなお続きそうだし、安倍自身が「桜を見る会」への地元後援会・支持者招待問題で窮地に立ちいたっている。いまこそ、総がかり行動、市民と立憲野党の共同をいっそう強め、安倍改憲阻止、安倍内閣打倒の闘いを幅広く展開していこう。

 11月3日は、日本国憲法の公布から74回目の記念日にあたる。この日、全国各地で憲法集会などの行動が展開された。東京では、国会正門前で、「安倍改憲発議阻止!辺野古新基地建設やめろ!東北アジアに平和と友好 憲法集会」が、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクション、3・1朝鮮独立運動100周年キャンペーンの共催で開催され、10000人が参加した。
 主催者挨拶の憲法共同センター・小田川義和さん―なにより国会憲法審査会で自民党の4項目改憲案を出させないことが重要だ。世論は改憲に否定的だ。米軍は沖縄でパラシュート訓練をしたが、日本政府はこれに抗議もしていない。あいちトリエンナーレ問題、二人の閣僚の辞任、萩生田文科相民間英語試験での「身の丈」発言などがつづいている。安倍政治を許してはならない。
 国会からは、社民党の福島みずほ参議院議員、共産党の穀田恵二衆議院議員、立憲民主党・逢坂誠二衆議院議員があいさつした。
 韓国からの代表団(「安倍糾弾市民行動」「東アジア平和会議」)が紹介され、まず安倍糾弾市民行動共同代表のパク・ソグンさん(韓国進歩連帯代表)が、昨年10月の韓国大法院判決の正しさについて、また日韓関係を改善するには侵略の歴史への真の反省と賠償が前提であり、日韓の平和市民の連帯した力で、GSOMIAをなくし、嫌韓ヘイト・改憲の安倍をやめさせて、東北アジアに平和体制を実現させようと述べた。
 つづいて、東アジア平和会議のイ・プヨンさんは、日本の平和憲法は人類の共同資産であり、韓国でも憲法9条をノーベル賞に推薦することに多くの人が賛同した、米朝対決で朝鮮半島には戦争の危機が続いているが、安倍政権が憲法を廃棄すれば戦争につながる、朝鮮半島の非核化と日本の平和憲法を守ることが東アジアの平和を実現する、と述べた。
 連帯挨拶は、3・1朝鮮独立運動100周年キャンペーン、オール沖縄会議、安保法制違憲訴訟の会、安全保障関連法に反対する学者の会、日本労働弁護団などから行われた。
 高田健さん(総がかり行動共同代表)が行動提起。国会が始まり、立憲野党を応援しながら闘っていく。閣僚辞任、あいちトリアンナーレ、民間英語試験など次々に安倍内閣の膿が出てきている。安倍内閣の責任を追及していきたい。憲法審査委が開かれるが、安倍による改憲案の提示の場にさせない。安倍は自衛隊の中東に派兵しようとしているが、絶対に許さない。この派兵阻止の闘いを全国の皆さんとともに闘いたい。集会には韓国から闘いで忙しい人たちが参加してくれたが、私たちは韓国の皆さんと団結して安倍の韓国敵視を許さない闘いを続けていくことを約束したい。これから緊急の課題がいくつも入ってくる。短時間の連絡で態勢を組む必要がある。安倍政権を打倒する闘いを全国で進めていこう。


あらゆるハラスメントの根絶を!

    
パワハラ指針を真に実効性のあるものに改定せよ

 さまざまなハラスメントが、職場、学校、家庭など社会全体に蔓延している。
 今年の5月に「職場でのパワーハラスメント防止を企業に義務付ける労働施策総合推進法の改正法(パワハラ防止法)」が成立した。それに基づき10月21日、厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会は「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」を示した。ところがこの指針では、パワハラに「該当しない例」を示すなど、逆にパワハラを加速させ労働者にとってとんでもないしろものだとして批判が広がっている。

 11月12日、日本労働弁護団による「あらゆるハラスメントの根絶を!真に実効性のあるパワハラ指針の策定を求める集会」が開かれた。
 基調報告は日本労働弁護団事務局次長の新村響子弁護士―指針の特徴は、ハラスメントの範囲をきわめて狭くして、使用者の責任を少なくしていることだ。労働側は、これを批判したが、職場でハラスメントが広がることは、労働者だけでなく、職場が暗くなり混乱するなど使用者にとっても不利なことが多くなるだろう。
 まず指針では、「職場におけるパワーハラスメントの内容」で「職場におけるパワーハラスメント」を「職場において行われる@優越的な関係を背景とした言動であって、A業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、B労働者の就業環境が害されるものであり、@からBまでの要素を全て満たすもの」だと定義したが、「なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務措示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」とする。わざわざ「業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務措示や指導」はパワハラにはあたらないとしたのである。
 次に「職場」とは、「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所。当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、『職場』に含まれる」というが、パワハラは「職場以外」でも行われて居ると言うことを無視する。
 そして、「優越的な関係を背景とした」言動とは、「当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの」としているが、「当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係」というのであれば、パワハラの判断に極めて高いハードルを課すものとなる。
 また、「暴行・傷害(身体的な攻撃)」では、「該当すると考えられる例」で「殴打、足蹴りを行うこと。怪我をしかねない物を投げつけること」をあげるが、同時に、「該当しないと考えられる例」で「誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること」をあげる。「脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」での、「該当しないと考えられる例」として、「遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意をすること。その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、強く注意をすること」があげられている。「隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り難し)」でも「該当しないと考えられる例」をあげている。こうした該当しない例をわざわざ入れることは、パワハラをやってもその抜け道を事前に教えることに他ならない。
 国会での論議の結果も指針には全くと言っていいほど生かされていない。今年の5月28日、参議院の厚生労働委員会で、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」では重要なことが入った。それは、「パワーハラスメント防止対策に係る指針の策定に当たり、包括的に行為類型を明記する等、職場におけるあらゆるハラスメントに対応できるよう検討するとともに、次の事項を明記すること」として、「@パワーハラスメントの判断に際しては、『平均的な労働者の感じ方』を基準としつつ、『労働者の主観』にも配慮すること。A自社の労働者が取引先、顧客等の第三者から受けたハラスメント及び自社の労働者が取引先、就職活動中の学生等に対して行ったハラスメントも雇用管理上の配慮が求められること。B職場におけるあらゆる差別をなくすため、性的指向・性自認に関するハラスメント及び性的指向・性自認の望まぬ暴露であるいわゆるアウティングも雇用管理上の措置の対象になり得ること、そのためアウティングを念頭においたプライバシー保護を講ずること」があげられている。きわめてとうぜんのことばかりだが、これらが無視されている。
 このような穴だらけの指針では、ハラスメント問題解決はむしろ後退してしまう。世界では、ことし6月に採択された「仕事の世界における暴力及びハラスメント」に関するILO条約・勧告などハラスメントを広くとらえる流れが主流だ。
 つづいて、連合総合政策推進局の井上久美枝総合局長が情勢報告。
 パワハラ被害者、裁判闘争の当事者からの訴えがあり、各団体からのアピールは、LGBT法連合会、日本俳優連合国際事業部、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)フリーランス連絡会、真のポジティブアクション法の実現を目指すネットワークがおこなった。
 参加者一同は「パワーハラスメントをなくすという法の趣旨を全うし、あらゆるハラスメントを根絶できる実効性ある指針とするため、素案を抜本的に修正することを求め」る集会アピールを確認した。
 最後に閉会挨拶で徳住堅治日本労働弁護団会長は、法律でこの指針のように抜け道を教える国はない、人格破壊のパワハラ被害者の感情は非常に大きい、法律には禁止条項を必ず入れるなど、あらゆるハラスメントを根絶していかなければならない、と述べた。
 集会は緊急に開かれたが130人の参加があった。


共謀罪法廃止! 秘密保護法廃止!

      
マイナンバー違憲訴訟神奈川  地裁判決と控訴審の展望

 11月6日、「共謀罪法廃止! 秘密保護法廃止! 12・6、4・6を忘れない」国会前行動(共謀罪NOO!実行委、「秘密保護法」廃止へ!実行委の共催)がおこなわれた。
 集会には、国会から高良鉄美参議院議員(沖縄の風)、山添拓参議院議員(共産党)、高木錬太郎衆議院議員(立憲民主党)があいさつし、共謀罪対策弁護団事務局長の三澤麻衣子弁護士、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表の高田健さん、日本山妙法寺、藤沢9条の会、共通番号いらないネット、憲法会議、出版労連、中野共同プロジェクトなどからの発言が続き、国会に向かって「共謀罪法廃止!」「秘密保護法廃止!」などのシュプレヒコールをあげた。

 つづいて院内集会が衆議院第二議員会議室でおこなわれた。
 メディア総合研究所事務局長の岩崎貞明さんが「表現の不自由展中止事件とは何だったのか」と題して発言。あいちトリアンナーレ「表現の不自由展・その後」は、検閲・自粛や自主規制を受けた作品を集めて展示する企画だった。日本社会が抱えている不都合な真実かもしれないものを、それを芸術作品として昇華させたものであり、日本の市民が直面しなければならない作品であり、本当に語らなければならない作品だった。だが、新聞などで不自由展の内容が報道されると、抗議や脅迫の電話・ファックス・メールが事務局などに殺到した。抗議電話対策などを不自由展実行委からトリエンナーレ側に提案していたが人員・予算などを理由にほとんど実施されず、不自由展実行委や出展作家の了解なく、トリエンナーレ実行委会長の大村県知事と津田大介芸術監督だけでの協議で一方的に中止を決定した。展示会場内はほぼ平穏だったが、8月3日をもって展示中止にされた。ただちに再開を求める声がさまざまのところで上がった。不自由展実行委は県側に公式協議を申し入れ、決裂した場合の法的手段も検討し、弁護士らと仮処分申請を準備した。再開協議に事実上応じてもらえないため、名古屋地方裁判所に展示再開を求める仮処分を申し立て、第三回審尋で和解となり、再開は中止前と同一性保持が条件で「10月6日または8日」となり、不自由展側は申請を取り下げた。不自由展中止事件が残した課題は多い。まず、抗議電話などへの脆弱性があげられる。予算・人員の関係でも不十分な対策であり、「ガソリン缶持って」のFAXなどの脅迫・テロ予告などへ毅然とした対応が不足していた。県から一方的な展示中止の決定という作家外し、また文化庁の補助金不交付決定など政府からの露骨な圧力があったなどがあげられる。「表現の自由」とは、思想性などと関係ない普遍的価値であり、公金・公共施設にこそ多様性が確保されなければならないのである。
 つづいて、共通番号いらないネット(共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会)の宮崎俊郎さんが「マイナンバー違憲訴訟神奈川の地裁判決と控訴審の展望について」報告。違憲訴訟裁判で、原告は、憲法13条で保障されたプライバシー権である自己情報コントロール権すなわち 自分の個人情報の収集・保存・利用・提供を自分でコントロールする権利をマイナンバー制度は侵害しているとして利用等の差止を求めた。これにたいして、国は、自己情報コントロール権は差止請求の根拠となる実体法上の権利ではないと主張した。原告は、マイナンバー制度に対しては、漏えいやなりすましの危険とともに、国家による個人情報の一元的管理の危険があることを、政府も認めてきたのであり、その個人情報の保護措置としてある個人情報保護委員会や特定個人情報保護評価や罰則などの制度が機能していないことを、具体的に指摘してきた。ところが9月26日、横浜地方裁判所第4民事部(関口剛弘裁判長、斎藤巌裁判官、川野裕矢裁判官)のマイナンバー違憲訴訟神奈川訴訟(230名原告)で「マイナンバー制度は憲法13条のプライバシー権を侵害するものではないとして、原告らの請求を棄却する」という不当判決が言い渡された。裁判長が入廷してから「原告の請求を棄却する」と判決を言い渡し、退廷するまでが僅か10秒だった。個人情報保護措置が機能していない実態をまったく見ない判決だ。住基ネットを合憲とした最高裁判決(2008年 3月6日)に沿って、憲法 13条は「みだりに第三者に開示または公表されない自由」を保障しているとして、自己情報コントロール権には言及しなかったけれど、横浜地裁は、原告の主張を受けて「収集、保有、管理、利用等の過程でみだりに第三者に開示又は公表されない自由をもその内容に含む」といっている。これは最高裁判決より解釈を若干広げてはいる。
神奈川訴訟は、地裁判決を不当として控訴した。これから7つの地裁での判決が予定されている。裁判所に公正な判断を求め、共通番号いらないの声を広げていこう。


自衛隊の中東派遣認めない!

       
憲法研究者が自衛隊のホルムズ海峡周辺への派遣について声明

 安倍内閣が強行しようとしている自衛隊の中東派遣に反対する声がひろがっている。
 憲法研究者は、「ホルムズ海峡周辺へ自衛隊を派遣することについての憲法研究者声明」を発表した。
 11月1日、国会内で行われた記者会見では、稲正樹・元国際基督教大学教授が「ホルムズ海峡周辺へ自衛隊を派遣することについての憲法研究者声明」の取り組みの経緯について報告した―この夏以来中東情勢が緊張したということで自衛隊の派遣ということがいわれるようになった。とくに10月にはいって国家安全保障会議での動きなどからホルムズ海峡周辺のオマーン海域まで自衛隊を出すような動きが強まった、これは憲法学者としては見過ごすことの出来ない事態であると考え、緊急に声明案をつくり全国の憲法学者に賛同の呼びかけをおこなった。昨日10月31日までで賛同者は125名となった。これからも賛同を呼びかけていきたい。
 つづいて、永山茂樹・東海大学教授が、「憲法研究者声明」の概要について説明し、清水雅彦・日本体育大学教授などの憲法研究者が発言した。

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ホルムズ海峡周辺へ自衛隊を派遣することについての憲法研究者声明


 1、2019年10月18日の国家安全保障会議で、首相は、ホルムズ海峡周辺のオマーン湾などに自衛隊を派遣することを検討するよう指示したと報じられている。わたしたち憲法研究者は、以下の理由から、この自衛隊派遣は認めることができないと考える。

 2、2019年春以来、周辺海域では、民間船舶に対する襲撃や、イラン・アメリカ両国軍の衝突が生じている。それは、イランの核兵器開発を制限するために、イラン・アメリカ等との間で結ばれた核合意から、アメリカ政府が一方的に離脱し、イランに対する経済制裁を強化したことと無関係ではないだろう。
 中東の非核化と緊張緩和のために、イラン・アメリカ両国は相互に軍事力の使用を控え、またただちに核合意に立ち戻るべきである。

 3、日本政府は、西アジアにおける中立外交の実績によって、周辺地域・周辺国・周辺民衆から強い信頼を得てきた。今回の問題でもその立場を堅持し、イラン・アメリカの仲介役に徹することは十分可能なことである。またそのような立場の外交こそ、日本国憲法の定めた国際協調主義に沿ったものである。

 4、今回の自衛隊派遣は、自衛隊の海外派遣を日常化させたい日本政府が、アメリカからの有志連合への参加呼びかけを「渡りに船」で選択したものである。
 自衛隊を派遣すれば、有志連合の一員という形式をとらなくとも、実質的には、近隣に展開するアメリカ軍など他国軍と事実上の共同した活動は避けられない。しかも菅官房長官は記者会見で「米国とは緊密に連携していく」と述べているのである。
 ほとんどの国が、この有志連合への参加を見送っており、現在までのところ、イギリスやサウジアラビアなどの5カ国程度にとどまっている。このことはアメリカの呼びかけた有志連合の組織と活動に対する国際的合意はまったく得られていないことを如実に示している。そこに自衛隊が参加する合理性も必要性もない。

 5、日本政府は、今回の自衛隊派遣について、防衛省設置法に基づく「調査・研究」であると説明する。
 しかし防衛省設置法4条が規定する防衛省所掌事務のうち、第18号「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」とは、どのような状況において、自衛隊が調査・研究を行うのか、一切の定めがない。それどころか調査・研究活動の期間、地理的制約、方法、装備のいずれも白紙である。さらに国会の関与も一切定められていない。このように法的にまったく野放し状態のままで自衛隊の海外派遣をすることは、平和主義にとってもまた民主主義にとってもきわめて危険なことである。

 6、わたしたちは安保法制のもとで、日本が紛争に巻き込まれたり、日本が武力を行使するおそれを指摘してきた。今回の自衛隊派遣は、それを現実化させかねない。
 第一に、周辺海域に展開するアメリカ軍に対する攻撃があった場合には、集団的自衛権の行使について要件を満たすものとして、日本の集団的自衛権の行使につながるであろう。
 第二に、「現に戦闘行為が行われている現場」以外であれば、自衛隊はアメリカ軍の武器等防護をおこなうことができる。このことは、自衛隊がアメリカの戦争と一体化することにつながるであろう。
 第三に、日本政府は、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合について、存立危機事態として集団的自衛権の行使ができるという理解をとっている。しかし機雷掃海自体、極めて危険な行為である。また戦闘中の機雷掃海は、国際法では戦闘行為とみなされるため、この点でも攻撃を誘発するおそれがある。
 このように、この自衛隊派遣によって、自衛隊が紛争にまきこまれたり、武力を行使する危険をまねく点で、憲法9条の平和主義に反する。またそのことは、自衛隊員の生命・身体を徒に危険にさらすことも意味する。したがって日本政府は、自衛隊を派遣するべきではない。

2019年10月28日

             憲法研究者有志


朝鮮幼稚園はずしにNO!

      
すべての幼児に教育・保育の権利を!

               教育を受ける権利、そして民族教育の権利を誰も否定することはできない

 政府は、10月1日、消費税10%への引き上げに合わせて、幼児教育・保育の無償化をスタートさせた。これは、安倍政権が推進する「全世代型社会保障」の一環として、消費税増税分を財源に幼稚園や認可保育所、認定こども園の利用料を無料にするというものだ。 幼児教育・保育の無償化措置では、「各種学校」の認可を受けた全国の外国人学校が支援の対象から外され、それには朝鮮学校幼稚園が含まれていている。これも安倍政権の反朝鮮政策の暴挙という以外にない。
 北朝鮮外務省のスポークスマンは、10月24日、「在日朝鮮人子女を高等学校支援対象から排除したことも足りなくて幼稚班幼児に対する保育支援さえ完全拒否したのは朝鮮に対する露骨な敵対行為であり、許せない非人道的暴挙である」と糾弾する談話を発表した。

 11月2日、東京・日比谷野外音楽堂で、「朝鮮幼稚園はずしにNO!すべての幼児に教育・保育の権利を!全国集会」が開かれた。集会実行委員会の構成団体は、平和フォーラム、朝鮮学園を支援する全国ネットワーク、高校無償化からの朝鮮高校排除に反対する連絡会、日本朝鮮学術交流協会、朝鮮幼稚園保護者会全国連絡会、朝鮮学校オモニ会全国連絡会、朝鮮学園理事会全国連絡会である。
 主催者を代表して、南昇祐(ナン・スンウ)朝鮮幼稚園幼保無償化中央対策委員会委員長があいさつ―日本当局は、悪名高き「朝鮮学校閉鎖令」をもって朝鮮学校を銃剣で弾圧した1948年から70数年間、一貫して民族教育に反対し、差別と規制、政治的圧力と弾圧を続けてきたが、近年、朝鮮学校生徒だけを高校無償化制度から意図的に排除し、朝鮮学校に対する地方自治体の教育補助金支給を停止、削減させる悪行を重ねたあげく、ついには、その黒い魔手を3歳から5歳の幼い児童にまで伸ばすに至った。これは、民族教育の初課程である幼稚園を無くして在日同胞の民族性を喪失させ、究極的には在日同胞社会自体を消滅させようとする許しがたい犯罪行為だ。日本帝国主義による植民地支配の犠牲者である在日同胞とその子孫たちを優遇し保護すべき法的、道徳的義務を拒否し、子どもの権利条約をはじめとする国際法をも踏みにじり、幼い子どもたちにまでためらいもなく民族排他と差別の刃を向ける、このように卑劣で厚顔無恥な政権が他にあるだろうか。在日朝鮮児童らはわが同胞社会の宝であり、朝鮮の学校、幼稚園で学ぶ子供たちの純粋無垢な瞳と天真爛漫な姿にわが同胞社会の明るい未来がある。日本の友人のみなさん!在日朝鮮同胞は、みなさんが、在日朝鮮人の民族教育に対する支援を惜しまず、日本当局への抗議の声を上げてくださっていることに大きく励まされている。私は、すべての在日同胞を代表して、みなさんに心から感謝の意を表す。私は、朝日友好・連帯運動の新たな一ページを開く本集会とパレードを契機に、みなさんと一層固く連帯し、幼保無償化の権利を獲得するまで、一歩もひるむことなく、最後まで闘い続ける決意を表明します。
 つづいての主催者あいさつを、藤本泰成朝鮮学園を支援する全国ネットワーク事務局長(平和フォーラム共同代表)が行った。
 政党あいさつは、立憲民主党の初鹿明博衆議院議員、共産党の宮本徹衆議院議員、社会民主党の福島瑞穂参議院議員がおこなった。
 来賓として、寺脇研京都造形芸術大学教授(元大臣官房審議官、元文化庁文化局長)と保坂正仁日朝友好促進東京議員連絡会共同代表(公明党荒川区議会議員)があいさつした。 
 つづいて、朝鮮幼稚園の保護者と園児によるパフォーマンスがおこなわれ、朝鮮幼稚園アボジ会、日朝学術交流協会などからの発言がつづいた。
 さいごに、日本政府、文部科学省、厚生労働省に対しての要請文が提案され、参加者一同の拍手で確認された。
 要請文(要旨)―2013年、日本政府・文部科学省は、文部科学省令を改定して、高校授業料無償化措置の対象から朝鮮高級学校を排除し、今また、朝鮮幼稚園を無償化措置から排除した。教育を受ける権利、そして民族教育の権利を誰も否定することはできない。
 日本に生きているすべての幼稚園児、保育園児、そして高校生に、無償化が適用されるよう、私たちは日本政府、文部科学省、厚生労働省に対して、以下のことを要請する。
 1、各種学校の幼児教育・保育施設を含め、すべての幼児教育を無償化の対象とすること。朝鮮学園付属幼稚班を無償化の対象とすること。そのため、制度の見直しを進めること。
 2、各種学校の幼児教育・保育施設の保育料無償化のために、国及び地方自治体による財政的措置を講じること。


代替わりを使った学校教育への国家権力の介入

        
  大阪や東京・八王子の例

 安倍政権は天皇代替わりに際して天皇制賛美キャンペーンを推し進めている。4月2日、新天皇即位について「御即位当日における祝意奉表について」(@国旗を掲揚すること。A地方公共団体に対しても、国旗を掲揚するよう協力方を要望すること。B地方公共団体以外の公署、学校、会社、その他一般においても、国旗を掲揚するよう協力方を要望すること」)を閣議決定した。そして各省庁はそれぞれ通達をだした。文部科学省は、全国の教育委員会へ「国旗掲揚」の通達を出し、4月22日には文部科学省初等中等教育局が、都道府県教育委員会教育長、指定都市敦育委員会教育長、都道府県知事、附属学枚を置く国公立大学法人の長などにあてた「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に際しての学校における学童生徒への指導について(通知)」をだした。そこでは「各学校においては、あらかじめ適宜な方法により…天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位について、また、御即位に際し、国民こぞって祝意を表する意義について、児童生徒に理解させるようにすることが適当と思われますので、あわせてよろしく御配慮願います」とされている。
 天皇代替わりで学校・児童はどうされようとしているのか。
 
 11月4日、都教委の暴走をとめよう!都教委包囲・首都圈ネットの主催で、討論集会「天皇代替わりと学校教育―天皇『代替わり』儀式そのものと、それに伴う学校教育への国家権力の介入を許さず、共に闘う方向を共有していく集会」が開かれた。
 主催者からの問題提起―天皇代替わりをきっかけにして、4・22通知が文科省から出され、大阪や八王子で戦前の天皇制国家を想起させるような動きが、教育の現場・学校で起きた. こうしたことに対する危機感を持ち、現場教職員の認識・見解を聞き、認識にずれがあれば認識の共有化を図る努力をしたい。現下の情勢の特徴の一つは、露骨な国益の衝突であり、トランプの登場が、このことをより明瞭にした。国益の露骨な衝突は、ナショナリズムや排外主義を伴走する。また、それらは、差別・ヘイトを強め、右翼の台頭を生み出す。戦後、日本の国民統合の役割は憲法、民主主義が中心だった。だが、憲法・民主主義の持つ国民統合の生命力の衰退で、その代わりに、国民統合の役割を天皇制の復活・再生に求める意見が出されている。戦後、天皇制の生命力は枯渇したわけではない。神道指令は、政教分離を形式的に実現したにすぎず、国家神道は存続し、代替わり儀式もまたそうだ。教育に関しては、1999年の国旗国歌法成立は1980年代における学習指導要領の改悪の集約としてあり、国旗・国歌強制が公然とおこなわれるようになった。80年代、「作る会」系の教科書が採用され始め、道徳教育の縛りが強まり、2000年には東京の国立市の民主的教育が攻撃され、抵抗した教職員が処分され、「日・君」攻撃が本格化した。2002年から教育基本法の改悪に向けた中教審の作業が始まり、2003年には都教委の「10・23通達」がだされた。第1次安倍政権で教基法が改悪され、愛国心教育が強められた。第2次安倍政権では、教育再生実行会議を文科省の外郭に設置し、安倍の右翼のお仲間知識人をそこにはめ込み、文科省官僚や中教審の良識的・民主的学者を排除した。そして「教育勅語」復活への一歩である道徳の教科化がすすめられたが、これは戦前の修身と同じ位置づけだ。このような一連の攻撃の背景には、組合の力が大きく後退していたことがある。総評は労資協調の右翼労働運動に敗北し、弱体化し、解散に追い込まれ、日教組もこれに連動した。民主主義の弱体化・危機と対局に専制政治・独裁政治体制の拡大傾向がある。より重大なのは、主体の危機状況である。この主体の危機の克服をさまざまな運動の展開の中で実現していこう。
 
 各地の学校現場の状況について報告された。
 大阪からは、大阪市立泉尾北小学校での「天皇即位」児童朝礼について―これは、もはや公立版「森友小学校」だ。5月8日の児童朝礼の時に、小田村直昌校長が、「元号も日本古来から続いている」「(新天皇を)126代目」と述べ、また日本会議の「ありがとう自衛隊」キャンペーンに協力している「愛国の歌姫」と呼ばれる山口采希(あやき)がゲストとして登場し、明治時代の唱歌「神武天皇」「仁徳天皇」などを歌った。またオリジナル曲「行くぞ!日の丸」も歌った。それは「うつむいた日は過ぎた/時が来た まっしぐら/行くぞ!行くぞ!日の丸が行くぞ!/ああ勇ましく 日の丸が行くぞ」というものだ。山口は、「教育勅語」の現代語訳を歌詞にした曲を作り、森友学園が運営していた塚本幼稚園などでで披露している。大阪市の民間人校長として小田島直昌校長は、橋下、松井などの維新市政に任命されているが、じつは、小田村四郎(日本会議副会長、日本教育再生機構顧問、日本戦略研究フォーラム評議員、「日本の建国を祝う会」会長などを歴任)の次男であり、太い日本会議人脈につながっている。
 つづいて、「天皇奉迎」に子どもを動員する八王子市の状況について―代替わり直前の4月に、八王子市教委は、「天皇皇后両陛下 武蔵陵昭和天皇山陵に親謁の儀に伴う八王子奉迎(沿道お迎え)対応について」を出した。それは、平成天皇が昭和天皇陵に行く沿道への市内小中学校児童生徒の動員要請である。「学校用の小旗が70本事前に準備されているとのことです。当日についてもある程度の小旗が用意されているとのことですが、必ず全員に配布されるとは限りません。また、参加の場合、どこでお迎えをするとのことですが、沿道に出ると警察等の方から指示があるとのことですので、そちらに従ってくださいますようお願いします。なお、子どもは優先して前列にしてくださるようです」として、「以下の内容についてお知らせ願います。@参加の可否A参加の場合の人数B小旗についての希望」というものだ。出迎えに応じない学校もあったが、一方で沿道でない学校でも積極的に取り組む学校もあった。こうした取り組みに抗議する市民団体の問い合わせに市教委は、「天皇については学習指導要領6年生社会科で『理解と敬愛の念を深める』と示されている。したがって沿道に立たせたのは、学習指導要領に則った指導だ」と答えている。
 八王子市は、文科相になった萩生田光一の選挙地盤だ。萩生田は「はぎうだ光一の永田町見聞録」(4月26日)で次のように自分の「手柄」を書いている―「…天皇皇后両陛下は、昭和天皇への退位のご報告の為、八王子の武蔵陵を訪問されました。警備の関係もあり、いつもはギリギリまで日程が公表されないのですが、今回は宮内庁から3週間ほど前に内示があり、町自連、安協、八王子まつりやいちょう祭りの実行委員会にも呼びかけ、『両陛下をお迎えする会』を組織し準備をしました。八王子インターから浅川大橋、追分から御陵まで、沿道にはかつてないほどの市民が出迎え、両陛下は長い道のりを窓を開け、手を振り続けてくださいました。日の丸の小旗4000本はたちまち無くなり、沿道の小学校、幼稚園、保育園の子供たちは手づくりの小旗で集まってくれました。…」
 集会では、また小学校、高校の学校現場や教職員組合の現状について報告があった。
 北村小夜さんが、教育勅語や修身について話した。
 会場討論をおこない、教育現場の事態の深刻さにたいして有効な反撃をしていくことなどを確認した。


日本労働弁護団声明

     公立学校教員への変形労働時間制導入に反対する

 いま日本の教育現場は崩壊的な状況を迎えている。安倍政権による改正教育基本法のもとに国家主義的に教育内容が変更され、各教育委員会の強引な指導の下に、日の丸・君が代の強制、校長・教頭の権限の強化、教職員の分断化、自主性と労組の排除などが強行されてきた。そして、長時間・過密労働が教職員をおそっている。こうした事態は一刻も早く解決されなければならない。しかし、政府・経済界によって事態は真逆の方向に進められている。
 いま、日本では「働き方改革」の名で、実際には、長時間・過密労働が広げられている。これは、少ない賃金で目いっぱい働かせるという資本の論理の蔓延であるが、それが公立学校にもいっそうおしこまれるようになっている。
 政府が10月18日に閣議決定した「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)の改正案では、公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を適用できるようにすることを狙っている。こうした法案をこの臨時国会で成立させようとしている。これを許してはならない。

 日本労働弁護団は、11月7日に「公立学校教員への1年単位の変形労働時間制導入に反対する緊急声明」をだした。それは「本改正案は夏休み等の長期休業期間において、『学校における働き方改革を推進するための総合的な方策の一環として』『夏休み中の休日のまとめ取りのように集中して休日を確保すること等が可能となるよう』にすることが目的であるという(法律案概要)。これによれば、授業期間を繁忙期として所定労働時間を増やし、長期休業期間を閑散期として所定労働時間を減らすことが可能となる。しかし、本制度は、現在も多くの職場で労働時間規制を緩和して残業代を削減しようとする使用者の手法として利用されているものであり、総量としての労働時間を削減する効果などない」として、「本制度導入の方針が示された中央教育審議会の答申(平成31年1月25日)に至るまでの本制度に関する議論は全く不十分なものであった。かかる拙速な方法で上記のとおり弊害だらけの本制度を導入することによって真の教員の働き方改革を妨げてはならない」としている。


在日米軍

      
事故多発の実態 

 米軍機の事故が多い。米軍は世界各地に軍事基地を置いているが、日本での事故は、日本政府が、抗議らしい抗議もしないことで、まったく再発防止とはなっていない。昨年12月には6人が死亡・行方不明になる高知県沖で第242(全天候)戦闘攻撃中隊のFA18戦闘攻撃機と別の部隊のKC130空中給油機が接触した事故と、2016年4月に沖縄県沖で起きたFA18とKC130の接触事故を調査した第1海兵航空団(沖縄県)の調査報告書が出た。空中給油中に発生したこの事故は、同じ米海兵隊所属の攻撃中隊に所属するFA18側に責任があるとされた。いずれの事故とも、操縦士が月明かりのない暗闇で初めて空中給油を受けている最中に起きたもので、操縦士が機体の高さや体勢を把握できなくなる失調状態に陥っていたとされている。問題は事故の背景として報告書があげていることだ。戦闘機内で手放しの操縦や読書、ひげをそりながらの自撮り行為、部隊内に薬物乱用、アルコール過剰摂取、不倫などの存在、隊長が機内で酸素マスクを外した姿を撮影、墜落事故の乗員から睡眠導入剤の成分の検出など「職業倫理にもとる実例」が多々あったとされることである。


せ ん り ゅ う

  勲章といふタヌキ術にひれ伏し

      勲章と赤紙どこか似ています

  文化の日明治にせよと馬と鹿

      九条の祈りの力文化なり

  民権の自由あらそう主戦場

      学問も軍事色へとアベノミクス

                                ゝ 史

2019年11月


複眼単眼

         緊迫する憲法審査会での攻防


 10月31日、筆者にとっては実に久しぶりに議面集会をやった。前回がいつかは覚えていない。
 WPNのときのイラクでの人質3名の救出運動の時に、衆院議面内外の超満員の集会を覚えている。
 議面は厳しい規制で拡声器が使えない。そこで私たちは議面内の発言者はワイアレスのマイクだけを持って発言する。トラメガのスピーカーは議面の窓の外から、議面の中に向けて音をだす。「これで文句はないだろう」と議面集会をやったことがある。
 今回はそれほど派手な行動ではなかったが、急遽、憲法審査会の傍聴者を中心に「無許可」で開催した。
31日の憲法審が中止になった。この日の憲法審を傍聴する予定だった総がかり行動実行委員会などのメンバー約40人ほどが衆議院議員面会所で「報告集会」を行った。集会では経過と現状の報告が行われ、つづいて駆け付けた共産党の赤嶺政賢委員らから報告を受け、自民党の4項目改憲案の提示阻止、改憲発議阻止に向けた運動の強化を確認しあった。
 もともとこの日は9月に衆院憲法審査会が欧州4カ国(ドイツ、ウクライナ、リトアニア、エストニア)の憲法事情を調査したことの報告に限定して開かれる予定だった。この視察報告自体は従来から知られている程度のことで、改憲論議に影響を与えるほどのものではないが、与党はこの報告会を呼び水にして、その後の憲法審査会の開催継続につなげようという魂胆がある。
 しかし、わずか1週間の間に安倍内閣の閣僚2人が相次いで辞任した。第2次安倍内閣以来では10人の閣僚交代であり、驚くべき多数の違法・不祥事閣僚の続出だ。安倍首相は「任命責任は私にある」などというが、具体的には何の責任も取らない。31日は野党の抗議で国会のすべての審議がストップした。
 11月7日に再開された衆院憲法審査会は前回流れた「欧州視察団の報告」を行った。
 視察団の団長以下の報告の後、これに関する自由討議が行われた。
 報告自体には注目すべきことはほとんどない。なぜなら調査した欧州各国の憲法事情などは、とうに知られていることばかりだからだ。
 維新の馬場信幸委員が「今回の調査で1299万円も使ってやるべきことか」と批判したのには笑えた。
 ただ一つ、注目したのは立憲民主党の山尾志桜里委員が「改憲手続法のCM規制の議論をすることと合わせて、憲法の中身についての自由討議を行うべきだ。手続法の議論が終わらない限り、憲法の中身に一切入れないのはおかしい。議員が自らの憲法論を語ることから始めるべきだ」と発言し、野党の対応を批判した。
これに対して自民党の新藤義孝筆頭幹事が我が意を得たりとばかりに、「恐れずに議論をやろうではないか。この状況は早く打開したほうがいい」と応じた。
 このやり取りをみても、山尾氏がいかに政治闘争について無知な人物であるかが、はっきりする。少しでも早く改憲案の議論を行い、発議にもっていきたい新藤氏らの狙いに「塩を送る」ものだ。憲法審で議論が始まれば、自民党はどこかの時点で自らの改憲案を採決し、発議にもっていきたいわけで、この意図は明白だ。
 山尾発言に対して立憲民主党の執行部は「国会の議論の段取りは国会対策マターだ。党の方針は明白だ」と述べ、枝野代表は「国民投票法を変えるのであれば、CM規制をセットで結論を出さなければならない」と発言した。
 山尾氏のような波乱要因を党内に抱えたとしても、今後、野党が結束して安倍改憲を促進しようとする自民党の企てにあらがっていくことが求められている。  (T)