人民新報 ・ 第1381号<統合474号(2020年1月15日)
  
                  目次

● 安倍はトランプの戦争政策に加担するな

       自衛隊の中東海域派兵反対

● 改憲発議反対緊急署名を成功させよう

● 東京高裁ハラスメント判決を許すな!

● 均等待遇アクション21

● 南京防衛戦の真相

● 田窪雅文さん(「核情報」主宰)講演

       核戦争の脅威と米国反核運動   日本政府の危険な「核共有」論

● ブラック企業大賞2019

       またも三菱電機が受賞

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  安倍政権が倒れる年が来た





安倍はトランプの戦争政策に加担するな

          自衛隊の中東海域派兵反対


 米・イラン対立の激化は、今年の国際情勢が波乱の展開となる幕開けとなった。危機の発信源はアメリカ・トランプ大統領だが、それに連動・刺激されて世界的な矛盾の激化は避けられない。
 トランプは、イランのイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官をイラクで空爆により殺害した。イランはイラクの米軍基地を弾道弾攻撃し報復した。今後米・イラン対立は激しさを加え、イランとシーア派勢力は中東地域をはじめ世界各地で反撃し、アメリカとその同盟国とりわけイスラエルによる反イランの軍事行動も予想され、各地で数々の悲惨な事態が起こることも予想される。
 トランプは米国に対する「差し迫った脅威」があるとか、「戦争止めるため」だとか言っているが、こうした言葉は侵略者の常とう手段だ。最近ではブッシュがイラク・フセイン政権に戦争を仕掛けたときにも同じようなことが起こった。
 にもかかわらず、この無謀な軍事攻撃に、安倍晋三首相は一切コメントせず、実際には支持するという態度だ。
 だが米・イラン対立の深刻な激化はトランプのイラン核合意からの一方的離脱と経済制裁のエスカレートがもたらしたものだ。
 トランプは、オバマ前政権の中東政策を批判し「若い米兵を帰国させる」ことを公約して大統領に選ばれた。にもかかわらず、今回、中東に米兵3000人を増派する決定をおこなった。トランプは、ウクライナ疑惑で米下院で弾劾にさらされ、窮地に陥っていた。このままでは今年秋の大統領選挙での再選はおぼつかないとして、弾劾問題による政権批判から人びとの目をそらさせるためにイランとの対決を選んだ。私利私欲による戦争の危機煽りだ。
 こうしたなかで、トランプに命じられた安倍政権は、中東地域への軍事的介入を一段と増大させた。すでに、イラクや南スーダンへの自衛隊派遣、アフリカ・ジブチの恒久的自衛隊基地の設置などの憲法を踏みにじる海外派兵を強行し、それに加えての今回の自衛隊を中東に派遣である。
 昨年12月27日に自衛隊を中東に派遣する閣議決定が行われた。「調査・研究」のために護衛艦1隻とP3C哨戒機1機を派遣するというものだ。情報収集活動ということだが、不測の事態が起きれば武器使用の海上警備行動という戦闘行為も発令する。
 反対の声の広がりにもかかわらず1月10日、河野太郎防衛相は中東海域へ自衛隊派兵を命令した。
 米イラン危機の発生で一度は中止と報じられた安倍のサウジアラビアとアラブ首長国連邦、オマーンの3か国訪問は、情勢が一定の安定化があったということで行われることになった。そこで安倍は中東情勢の緊張緩和に向けて各国と意見交換を行うとともに、自衛隊派遣の目的などを説明し理解を求めるとしているが、誰が見てもアメリカの側に立っていること、まさに紛争当事者として日本をアピールすることになる。
 憲法をないがしろにしたこうした行為は、日本を「戦争ができる国」へと進ませようとする安倍政治の暴走だ。
 緊迫する中東情勢を受けて「総がかり行動実行委員会」は、閣議決定の12月27日、首相官邸前での抗議行動、そして1月8日には、東京・新宿駅前で緊急街頭宣伝を行った。
 安倍は、年明け早々にも、改憲を自民党の歴史的使命だと述べ、改憲に向けての動きを加速させている。「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」は、新しい請願署名「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」を呼びかけている。
 安倍は、森友・加計、閣僚辞任、そして「桜を見る会」、IR疑惑など様々な弱点をさらけ出してきている。闘いの時だ。今年こそ、安倍改憲を阻止し、安倍政権を打倒する年にするために、より強力な、大きな運動をつくりだしていこう。
 安倍政権を打倒しよう!


改憲発議反対緊急署名を成功させよう

 有馬頼底、うじきつよし、落合恵子、鎌田慧、鎌田實、香山リカ、佐高信、澤地久枝、杉原泰雄、田中優子、ちばてつや、暉峻淑子、なかにし礼、浜矩子、樋口陽一、前川喜平、益川敏英、田原総一朗、山口二郎、北原みのりのみなさんなどのよびかけによる「改憲発議に反対する全国緊急署名」が新たにスタートした。署名運動を軸に改憲反対の闘いを拡大して、安倍改憲を阻止しよう。  (編集部)

いま新たに改憲発議に反対する全国緊急署名を開始します


   戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
   安倍9条改憲NO!全国市民アクション


安倍晋三首相らが企てる9条改憲に反対しているすべてのみなさん

先の参院選で改憲派が発議可能な3分の2の議席を失ったにもかかわらず、安倍首相は臨時国会終了後の記者会見で「必ずや私の手で(改憲を)成し遂げていきたい」と語り、自らの自民党総裁任期の2021年9月までに実現する決意を語りました。

この改憲スケジュールからみて、安倍改憲をめぐるたたかいはいよいよ最大の山場にさしかかったというべきでしょう。2020年の通常国会と臨時国会で「改憲発議」を許すかどうか、さらに2021年通常国会会期中に安倍改憲国民投票を許すかどうかの正念場になりました。この安倍首相の企ては絶対に阻止しなければなりません。

安倍首相はこの記者会見で「時がきたと考えればちゅうちょなく解散総選挙を断行する」と述べました。この期間に衆議院議員総選挙に踏み切る可能性が濃厚です。改憲派は時期と条件を選んで、改憲を訴える総選挙を断行するでしょう。そこで圧勝することによって、安倍改憲が世論に支持されたと強弁し、改憲に反対している野党を分断し、両院で改憲に賛成する議員を3分の2以上確保し、改憲発議に踏み切ろうとするにちがいありません。

事態は緊急です。

いまこそ、安倍改憲に反対するすべての人々は共同し、全国の草の根から運動をおこし、世論を盛り上げ、総選挙に際しては安倍改憲に反対する野党と連携して改憲派を徹底的に孤立させる必要があります。

9条をはじめとする自民党の4項目改憲案は絶対に阻止しなくてはなりません。それは日本を米国との同盟の下で「海外で戦争をする国」にするための改憲です。2020年の防衛省予算案は5兆3千億円を超え、過去最大となりました。

自民党9条改憲案は、「必要な自衛の措置」として「戦争する国」にむけ集団的自衛権の全面行使をも可能とするものです。すでに「防衛大綱」などによって9条の空洞化が進んでいますが、この動きを止めなくてはなりません。緊急事態条項導入案は、軍事的な緊急事態に内閣の権限を拡大し、人権の大幅な制約を可能にする危険性があります。大地震などの自然災害の対応についてはすでに充分な法律が整備されており、憲法に置く必要性はありません。さらに、合区に関する問題の解決は公職選挙法等の改正で可能であり、自民党の改憲案は投票価値の平等を侵害するなどの危険性があります。教育の充実に関する改憲案は、教育が「国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担う」として教育への国家介入を正当化する危険があります。教育の充実は国会と内閣がその気になれば、法律や予算措置で可能です。

自民党の4項目改憲案は、いずれも改憲の必要性・合理性を欠くうえに、日本国憲法の基本原理である平和主義、主権在民、基本的人権の尊重を破壊するものです。

2017年秋以来、安倍首相による9条改憲を阻止するため、広範で多様な人々を結集して「安倍9条改O!全国市民アクション」が結成され、3000万人を目標にした9条改憲に反対する一大署名運動(安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名)が展開されました。この運動は約2年間にわたる全国の津々浦々での大きな取り組みとなりました。構成している労働団体は組合員、家族、地域署名を、市民団体や 地域の諸団体は、それぞれの形態・やり方で、あるいは自治体・地域ごとに獲得目標を決め、戸別訪問にも取り組みました。すでに住民の8割の署名を集めた地域もあります。さらに多くの団体により、街頭・駅頭で宣 伝活動と合わせた定期的な署名運動が取り組まれました。全国に署名運動が広がり、対話が進むことによって、「安倍改憲反対」「9条を守れ」の声が市民に確実に届き、組織や地域に広がり、世論を大きく変えてきました。この署名運動に、多くの仲間の皆さんが参加し、すでに1000万筆に迫る署名を集めたこと、これが全国の草の根に強固な改憲反対の世論をつくり出し、立憲野党を励まし、国会の憲法審査会での自民党改憲案などの審議を実質的に阻止し、2年余りにわたって安倍9条改憲の発議を阻止し続けてきました。そして先の参議院選挙で、改憲勢力3分の2割れを勝ち取った原動力であったことは明確であり、3000万署名運動の成果を高く評価する必要があります。

いま、安倍改憲のスケジュールにとって決定的な山場を迎えました。私たちは安倍首相らによる改憲暴走の動きに痛打を浴びせて、安倍改憲と「戦争する国」の企てを阻止しなくてはなりません。
この重大な時期に際し、全国市民アクション実行委員会は、従来取り組んできた署名にかえて、あらためて「安倍9条改憲反対!改憲発議に反対する全国緊急署名」運動への取り組みを呼びかけます。

「安倍首相の下での改憲には反対だ」という点は全国の市民の多数の声であり、国会内の立憲野党すべての一致点です。この声をさらに大きな力に変え、世論を強め、安倍首相らの改憲を食い止めたいと思います。この2年にわたった粘り強い草の根の市民の努力を再始動させ、もういちど行動の力に変えましょう。態勢を整え、この新しい署名を軸に全国の津々浦々で、市民の一大対話運動を繰り広げましょう。そのための共同こそが、この社会の未来を平和で、希望ある社会に変える力となるに違いありません。

私たち市民はこの国の主権者です。この国の未来は私たち自身の手で切り開かなくてはなりません。そのためにこそ、私たち主権者の名において、いまこそ全力をあげて改憲発議を阻止するために立ち上がりましょう。

2020年1月1日


東京高裁ハラスメント判決を許すな!

 12月24日、東京高等裁判所前で「ハラッサーは裁判所か! 抗議のリレートーク! ハラスメント判決に抗議」行動が行われた。 東京高裁(阿部潤裁判長)は、11月28日、ハラスメント裁判で不当な逆転判決を出した。2008年に語学スクール運営会社「株式会社ジャパンビジネスラボ」社に正社員として入社した原告女性は、語学スクール部門のコーチ職として育児休業を取得した。しかし、育児休業の取得後、会社は、正社員から契約社員とし、契約社員の契約は週3日だった。原告女性は、週5復帰前提を信じ週3で職場復帰したが、会社は週5に戻すのを拒み続け、ついに雇止めにしたのである。
 訴訟は、正社員に戻れるはずだが雇止めまでされたのは「マタニティーハラスメント」だとして、勤務先に慰謝料などを求めたもので、正社員としての地位、契約社員としての雇用の継続、損害賠償請求が認められるのかなどが争われた。 一審・地裁判決は、会社は「働き方の多様性を甘受するかのような姿勢を標榜」しておきながら、「実際には会社の考えや方針の下に原告の考えを曲げるように迫り」「原告の姿勢を批判・糾弾した」として、会社の不誠実対応は「原告が幼年の子を養育していることを原因」として、会社に損害賠償を命じた。JBL社は「ブラック企業大賞」にもノミネートされた。
 今回、東京高裁は、原告の請求をほぼ全面的に否定して控訴棄却とし、正社員の地位は認めない、雇止めは有効、提訴記者会見は名誉棄損として55万円の損害賠償の支払いを命じた。
 会社側は、雇止めの理由に、マタハラを裏づける録音を取ったこと、記者会見で状況を説明したのは名誉棄損などと主張し、高裁は、会社側の主張をほぼ全面的に受け入れた。

 高裁前集会では、労働者にデメリットを説明しないままメリットだけ説明しても契約改悪が認められる、労働者の録音を禁じる会社の指示に従わなかったら解雇してもいいことになる、労働者はどうやってハラスメントを立証すればいいのか、記者会見で社会的に訴えたら会社に損害賠償を支払うことになるのか、こんな不当な判決が最高裁で確定してしまえば、ハラスメントが横行することになる、絶対に許せない、運動を広く起こしていこう、などの発言が続いた。
 女性ユニオン東京は、「東京高等裁判所での逆転不当判決に対する抗議声明」で、「高裁判決は、一原告労働者に対する攻撃にとどまらず、労働者が声をあげること、権利主張することに対する攻撃であり、社会的に訴えることへの制裁と言えるものだ。こうした高裁判決を許してはならない。原告は『新たな闘いのスタート』と最高裁に上告及び上告受理申出を行った。女性労働者が出産しても安心して働き続けられる社会の実現を目指して労働者が声をあげ、司法が労働者のおかれた状況を理解し、正しく判断することを期待し、私たちは最後まで闘い続ける決意である。多くの仲間の皆さん、共に!」と訴えている。


均等待遇アクション21

      
 パワーハラスメント指針案の問題点

 昨年5月、女性活躍推進法等とハラスメント関連法案が成立し、企業には、パワーハラスメントについて規定し、その防止をするための措置を講じる義務が課されることになった。パワハラ指針案が定められるのに伴い、厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課が意見を募集(パブリックコメント)した。

 均等待遇アクション21は、「パワーハラスメント指針案の問題点」をつぎのように上げている。
 指針案は、パワハラの判断基準を狭くしている―@指針案は、「優越的な関係」を「抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係」と狭く解釈していますが、職務上の地位や人間関係、専門知識など何等かの事由による優位性を背景としたパワハラが実際に起きています。国会の付帯決議は、同僚や部下からのハラスメント行為も対象であることを周知すべきとし、裁判ではそれらについて使用者責任や環境整備義務違反が認められている例もあります。「優越的な関係」は、様々な要因から生じた人間関係を広く含む概念であることを明記すべきです。A指針案は、6類型のそれぞれにパワハラに該当する例としない例を例示していますが、労働局のパワハラ相談件数は年間8万2千件もあり、6類型は裁判になった深刻な事例をまとめたもので、実態を十分に反映しているとは言えません。パワハラに当たらない例を列挙することは、それらにお墨付きを与え、パワハラを助長する危惧もあります。パワハラに該当しない例を例示する必要はありません。Bパワハラは、通常の職場や出張先等業務を遂行する場所だけでなく、懇親会や電話、メールなど様々な場所や手段でも行われていることを明記すべきです。C付帯決議では、パワハラの判断には「労働者の主観」にも配慮することを明記するよう求めています。指針案では相談窓口で「当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮」するよう記載されていますが、これだけでは極めて不十分です。Dパワハラの対象について、就活生やフリーランス、個人事業主は対象外とし、企業には「必要な注意を払うよう配慮する」にとどめています。「必要な注意」ではなく、付帯決議にあるように「雇用管理上の配慮」を明記すべきです。E性的指向・性自認に関するハラスメント及び性的指向・性自認の望まぬ暴露であるいわゆるアウティングについて、指針案では、精神的な攻撃に該当する一例に「性的指向・性自認に関する侮辱的な言動」、この侵害に該当する一例に「性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれる」と記載されていますが、これは「なお書き」です。性的指向・性自認に関するハラスメント及びアウティング等はパワハラとしてプライバシー保護も含め、雇用管理状の措置の対象となることを明確にすべきです。


南京防衛戦の真相

      南京大虐殺から82年  世代を越えて戦争の記憶を受け継ごう


 12月11日、全水道会館で「南京大虐殺から82年 2019東京証言集会―世代を越えて戦争の記憶を受け継ごう―」(主催・南京集会東京実行委員会)が開かれた。

 主催者を代表して田中宏さんが開会のあいさつ。南京虐殺問題は、日中関係の中心問題であり、まさに世代を越えて戦争の記憶を受け継いでいかなければならない問題だ。

 証言の葛鳳瑾さんは、虐殺をまぬかれた父親の葛道栄さんについて語った。「南京大虐殺幸存者葛道栄の状況」―1926年生まれで華僑路高家酒館在住の葛道栄は、3人の肉親が南京大虐殺で殺害された。母のいとこ、王釣生は港で石炭の積卸しの仕事をしていたが、その日城門が閉ざされていたため家に帰ることができず、1937年12月13日に日本兵によって港の作業場で殺害され、遺体は見つかりません。王釣生が殺害された後、老母は肺結核を患い、5歳と2歳の2人の幼児をかかえた若い妻は生活のための収入が途絶え、極度に苦しい生活を送った。日本の侵略者による大虐殺が作り出した罪業だ。母方のおじの濤兆祥は、温厚、誠実な一般市民で、私は彼の養子になりました。彼は安い雑穀を買いに行ったところ、城門が堅く閉ざされ家へ戻れなくなり、12月13日、日本兵により揚子江のほとりで殺されました。父方のおじ葛之雙は開業前の漢方医で、私たち家族は全員難民区に逃げ込みましたが、おじは一人逃げようとしませんでした。彼は「私は病を治し人を救う医者で兵になったことはない。日本人が私に何をするというのか。それに、私は机の上に置いている3体の玉製の仏像を守らなければならない。これはおば一家が四川から逃げる時私に保管を頼んだ菩薩で、盗まれる訳にはいかない」と言っていた。14日の夜、母に連れられて家の状況を確かめに来た時、おじは無事でした。だが、私達が寝ようとしたその時、3、4人の鬼のような兵士が大声で話しながら、まさに塀を壊し院の中に入ろうとしていました。おじは、「自分は年をとっているので大丈夫だ」と言いながら、私達に早く逃げるよう促したので、母は私を引っ張りながら難民区へ逃げ帰りました。2日後の夜、母はおじが心配なので、私を連れて家を見に戻りましたが、おじはすでにめった斬りにされ殺されていました。床に倒れたおじの顔や頭は膨れ上がり、全身血だらけで、目は大きく見開き、片方の靴は足に、もう片方はその傍らに落ちており、机や椅子は動かされた形跡があり、3体の玉製の仏像は持ち去られていた。おじは家や院や玉の仏像を守ろうとして、この様に家の中で殺されました。この受難した3人の肉親の名は、受難同胞記念館の嘆きの壁に刻まれています。
 1937年12月12日、私達一家は南京金陵大学に逃げ込み、南天院の難民区に避難しました。北大院は執務棟で、何棟かの教室棟がありましたが、難民で溢れていたので、私達は仕方なく向かいにある花や野菜を植えていた南天院の小さな教室棟の中の地面に布団を敷き寝ました。12月中旬の朝早く、日本軍は取り調べのために、北院にある大きな運動場に全ての難民を集めました。かなり大きな南天院に残ったのは10歳の私、5歳の妹葛秀珍と2歳の弟葛道昌で、3人は布団に座り、心配しながら窓の外を見つめていました。真冬の寒風がピューピュー吹き荒れ、取り調べ中おかゆの配給もなかったので、お腹が空き、寒さと恐怖が私達3人の子供に襲いかかりました。誰も一言も口にせず、私は妹と弟をきつく抱き締めました。その時更に恐ろしいことが突然起こりました。ドン、という音と共に、教室のドアが蹴り開けられ、3人の鬼が飛び込んで来ました。一人は刀を持ち二人は銃剣を抱えながら、大声で訳の分からない鬼語をペラペラと喋っていました。私達は初めて日本兵の鬼のような様相をみて、恐ろしさから放心状態になり、どうしていいのか分からなくなりました。一人の鬼兵が私の右腿を銃剣で一突きし、激しい痛みが私を襲いました。更に、刀を持った鬼が私の綿入れの上着の右肩部分をつかみ、私を立ち上がらせました。それでも私は妹と弟を「怖くないよ、怖くないよ」と大声であやしながら抱きしめ守ろうとしました。鬼は手を伸ばし手のひらで私を二発打ちました。私の頭はクラクラし、目の前はチカチカしました。少し経ち、3入の鬼たちは既に意気揚々と立ち去っていました。その後母が北院から戻った時、私はやっと右腿から流れ出た血が綿入れのズボンにベットリとこびりついているのを知りました。

 つづいて、江蘇省社会科学院研究員の孫宅巍さんが「悲壮な南京防衛戦の真相」と題して講演。1937年末の南京攻略戦は、日本軍国主義によって引き起こされた侵略戦争であり、世界の平和を破壊した重大な責任がある。近年日本の右翼による激しい論争の中、南京大虐殺という歴史的悲劇はますます全人類共通の歴史に刻まれるべき記憶となっている。
 南京大虐殺という残虐行為の発生と南京防衛戦の進行は、密接に関係している。南京大虐殺は南京防衛戦の失敗により引き起こされ、南京防衛戦は南京大虐殺の発生により終わりを告げた。
 日本侵略軍が中国で起こした全面的な侵略戦争では、先ず始めに中国の首都南京を攻略する事が重要な目標だった。早くも1937年8月15日、盧溝橋事件の発生から1か月後、淞滬会戦(いわゆる第二次上海戦役)勃発の2日後、松井石根大将は天皇に上海派遣軍の司令官に任命された時、次のように公言した「蒋介石政権を倒すには、南京攻略以外に道はない。これは必ず成し遂げねばならない使命だ。」そして、南京へ進撃する部隊に命令を下した。「南京は中国の首都で、南京を占領する事は国際的な事件だ。それ故に周到な研究を重ね、日本の武力を発揚し、中国を服従させよ。」11月19日になると、上海派遣軍は中国側の呉福国防線をすでに越え、錫澄線に向け追撃を開始していた。第10軍も既に嘉興より出発し、太湖の南岸沿いに西側の湖州方面へ向かっていた22日、華中方面軍は東京の参謀本部へ正式に報告を出した。「事変を迅速に解決させる為、現在の敵側の劣勢に乗じ、南京を攻めるべきだ。」それによると、華中方面軍が蘇州、嘉興ラインに留まった場合、戦機を失うだけでなく、中国軍の闘志が回復し、戦闘能力を立て直すことになり、事変の解決の遅れを促すことになるとして、「事変を解決するのに、首都南京の占領は最大の価値がある。」従って、「現在有する兵力が最大の犠牲を払うことを惜しむべきではない。」日本で発足したばかりの最高統帥機関である大本営は、11月24日、第一回御前会議を開き、「華中方面軍は上海周辺での勝利の成果を利用し、時機を失わず果敢に追撃を進めなければならない。統帥部門は今後の状況に鑑みて、この方面軍の新たな準備状況を整え、南京或いは他の地区を攻撃しなければならない。」同日、「第二期戦闘計画大綱」を制定し、12月上旬には一挙に南京を攻略する準備を完成させた。11月28日、日本の参謀本部は正式に「南京に向けての追撃」命令を下した。この命令は天皇玉璽が捺された詔書で、12月1日には多田駿参謀次長自ら上海へ持参した。勅令には、「華中方面軍司令官は海軍と連携し、敵国の首都南京を占領せよ」と書かれていた。
 南京防衛戦が歴史上に占める重要な位置は次のようなものだ。南京防衛戦は、双方が使用した兵力と戦場での死傷者及び持続した時間からすると、抗戦の歴史上中程度の規模の戦役にしか数えられないと同時に失敗した戦役になるが、それが持つ重要な歴史上の地位には影響を及ぼさない。南京防衛戦は、中国人民による抗日戦の正面からの戦闘中重要な戦役である。
 第一に、これは首都を守る戦いである。民族戦争の中で、首都を防衛する戦争は歴史上国内外から注目を浴び、全国人民の戦闘士気にも重大な意義と象徴的な意義を持つ。抗日戦争を指揮する総司令官である蒋介石は日記の中でこう記している―「南京城は必ず守らなければならない。上も、下も、国も、民も、特別な感情を抱いている。」
 南京防衛戦は淞滬会戦と徐州戦という大きな戦いの間で起こり、戦略上重要な過渡期で、承継的な作用がある。淞滬戦役に負けたばかりで、多くの兵士が淞滬戦場から撤退して来ており、すでに傷だらけの部隊には時間が必要で、相対的に安全な場所で休息、整備と補充をしなければならなかった。同時に、北上して徐州を奪取しようと意図していた日本軍に対し、中国部隊は徐州で新たな戦場の準備をしなければならず、時間が必要で、日本軍が順調に北方へ進軍することを許してはならなかった。
 南京の戦役により、後に徐州、武漢での戦いで主力作用を発揮した部隊は、手はずを整えるために必要な時間を得ることができた。
 第二に、戦役中城を守った将兵は、血みどろになって奮戦し、愛国的な壮挙を行い、中国人民の偉大で栄光ある抗戦精神を体現し錬磨した。南京の戦役中、中国軍の大部分は淞滬戦場から撤退してきたばかりで、休息、整備が間に合わず、新兵は訓練を経ておらず、日本軍の戦闘能力に比べ大きな差があった。彼らはこのような不利な状況の下、やらなければならない事を明白に理解し、国を愛する溢れんばかりの熱情を持って、全身全霊で強敵に立ち向かった。その精神は称賛に値する。この防衛戦の中で合計8名の将軍と11名の連隊長以上の指揮官が陣地或いは日本軍の包囲を突破する中で犠牲になった。彼らの鮮血と命は中国人民の勇敢さ、頑強さ、不僥不屈の精神と、堅忍不抜の抗戦精神を形成している。これは中華民族の貴重な精神的財産で、中国軍人と人民の誇りであり誉れである。この精神は中国の人々が抗日戦争全体の中で勇敢に戦い、抵抗し、最終的に勝利を手にするまでの支柱となった。 第三に、戦役の失策と、それがその他の戦役に血の教訓を与えたことである。南京戦役中、比較的大きな失策は二つある。一つ目は、消極的な防御と攻撃に対する受動性で、二つ目は、無策な撤退と甚大な損失である。これは南京防衛戦の中で、戦役指揮上の致命的な弱点である。唐生智大将率いる11師団からなる主力部隊と教導部隊は、二層の部署を担っていたが、それぞれの部隊が担う正面の範囲がとても広く、縦方向の配備は手薄だった。教導総隊部分の軍官は、日本軍が紫金山を猛攻している時、機動兵力を全て集中させ、積極的に日水軍駐在地に出撃し、日本軍後方を威嚇し、主導権を奪うよう提議した。だが、この案は唐生智司令官と桂永清総隊長の承認を得ることが出来ず、紫金山陣地を更に危機に陥れた。南京陥落3ヶ月後、中国軍は台児庄での会戦中、消極的防御の方法を改変し、輝かしい戦果をあげた。無策な撤退に関しては、それまで南京防衛軍の損失の85%が撤退中に発生していた。これは一般戦役の中でも珍しく高い数宇だった。退却は先ず自己防衛の為であると同時に、更に敵を消滅させる為である。もし退却後に自己の維持が出来なければ、退却せずに敵と共に消耗し、共倒れになった方がましだ。5ヶ月の時を経て、日本軍が行なった徐州地区の包囲と封鎖に対し、1938年5月中旬、第5戦区の4、50万の大軍が5つのルートに分かれ、包囲を突破するのに成功し、武漢防衛戦の為に力を蓄え条件を整えた。私達は徐州会戦での積極防衛と撤退の成功という例を得て、指揮官による指揮能力と素質の差異という素因がある中で、南京防衛戦の血みどろの教訓が与えた積極的な作用をはっきりと見出す事ができた。
 南京防衛戦は初期の全面抗戦の中で、国を挙げて注目する戦役となり、中国人民抗日戦争の中で歴史的に重要な歴史的地位を当然にも占め、中国人民による抗日戦争と世界人民による反ファシスト闘争の輝ける歴史に刻まれている。
 今日、悲壮な南京防衛戦から82年の時を経て、その真相を温め直すことは、深い恨みを継続させるためではなく、冷静に歴史的経験を総括し、人類に災難をもたらした日本軍国圭義が再燃するのを警戒し共に世界の永続的な平和を勝ち取り、維持する為である。中日両国人民が子々孫々友好的に付きあって行くことを願い、中日両国の友好の木が常に青々と茂ることを願う!


田窪雅文さん(「核情報」主宰)講演

       核戦争の脅威と米国反核運動
  日本政府の危険な「核共有」論

 12月22日、文京区民センターで、「核・ミサイル軍拡を許さない!集会」(主催・大軍拡と基地強化にNO!アクション2019)がひらかれた。
 田窪雅文さん(「核情報」主宰)が、「日本の反核運動の課題」と題して講演。
 日本においても、2017年7月7日に122か国・地域の賛成多数により採択された核兵器禁止条約について関心が高まっている。一方で、二つの核大国米ロの核兵器について法的拘束力を持つ制限が消滅する可能性が大きくなっている。米ロ両国の間の核削減関連条約は、1987年の「中距離核戦力(INF)」全廃条約、2011年発効の新「戦略兵器削減条約(START)」の2つだが、前者は、19年2月に米国が破棄を通告し、ロシアも義務履行停止で応じ、8月初めに失効した。INF条約は、旧ソ連が1970年代末に西ヨーロッパを射程に入れた新型中距離弾道ミサイルSS―20を配備したのに対応して、北大西洋条約機構(NATO)は、1979年、米ソに交渉を求めると同時に、米国の地上発射巡航ミサイル「トマホーク」と中距離弾道ミサイル「パーシングU」の配備を1983年末から欧州で開始するとの「二重決定」を行った。緊張が高まるなか、レーガン大統領とゴルバチョフ大統領が1987年末に署名し、翌年発効したのが射程500〜5500kmの地上発射弾道・巡航ミサイルの生産・実験・保有を禁じたのがINF条約だ。
 新START条約は戦略核兵器である大陸間弾道弾(ICBM)発射装置、潜水艦発射弾道弾(SLBM)発射装置、それに核兵器搭載可能重爆撃機などを合計した配備運搬手段の上限を700基と定めたものだ。新START条約は、2021年2月に失効する。
 いま、かつてなく核戦争の脅威が高まっている。こうしたなかで米国の州や自治体の議会で、米国政府に核兵器禁止条約の受け入れと、核戦争防止のための緊急措置の実施を同時に要請する動きが広まりつつある。これは、「社会的責任を考える医師の会」と「憂慮する科学者同盟」が2017年秋に構想した「瀬戸際からの生還:核戦争防止のコール」というキャンペーンがもたらしたもので、条約に即座に署名し批准せよと迫るのではなく、「考え」として受け入れるよう求め、それに加えて、核兵器の先制不使用を宣言したり、数分で核兵器を発射できる一触即発の警戒態勢を解除したりすることよって核戦争の可能性を小さくすることを要請しているのが特徴だ。キャンペーンは、現在では反核・核軍縮・平和団体、宗教関連団体など200団体以上の支持を得ている。「核戦争防止のコール」は、「核戦争の危機は現実のものであり、増大しつつある。我々は、人類全体を脅威にさらす壊滅の瀬戸際に向かって歩んでいる。今、行動を起こさなければならない」として、米国が講じるべき「常識的な5つの措置」(@核兵器を先に使うオプションの放棄を宣言する、A核攻撃を開始する上での米大統領の独占的かつチェック体制のない権限を停止する、B米国の核兵器を一触即発の警戒態勢から外す、C米国の核兵器すべてを機能強化型に変える計画をキャンセルする、D核兵器全廃のための核兵器保有国間の検証可能な協定を積極的に追求する)を提示し、諸団体・市民に対し、このコールを支持し、政府にその採用を働きかけることを求めている。
 この12月5日には、2020年の大統領選挙候補者らに核の脅威削減に向けた政策を明示するよう求める公開書簡がニューハンプシャー州の6紙に全面広告の形で掲載された。それは、「現在、地球上に約9000発の核兵器が残っている。その90%以上を米ロが保有している。しかも米国は、核戦争を始めるオプションを維持したままだ。米国大統領は、米国の核兵器を使う唯一の権限を持っていて、何百発もの核兵器を一触即発の警戒状態に置いている。間違って発射してしまうリスクも高まっている。トランプ政権は、複数の軍備管理の取り決めから脱退しており、そして、向こう数十年で1兆ドルをかけて保有核兵器すべてを改良型にすることを計画している。人類は、その存続を脅かす脅威に直面しているが、それは、気候変動と核戦争である。今こそ、大胆な行動と米国の指導力発揮の時である。解決を将来の世代に委ねることはできない。私たちの子供や孫は、あなたに期待している」とする内容だ。
 書簡の掲載を企画したのは「憂慮する科学者同盟」で、このキャンペーンの意義を「次期大統領は、核の瀬戸際から引き返すために行動するのかどうか。これは、私たちの安全保障、私たちの家族、愛する人々の安全に関するものであり、これ以上重要なことはない。大統領候補が核の脅威を減らすための対策を提示することを私たちは必要としているが、有権者に関心がないと思えば、候補らはこの問題を取り上げないだろう」として、5つの州で世論調査を実施した。「米国は決して核兵器を先に使ってはならない」「大統領候補が核問題についての考えを表明することが重要だ」とする内容が含まれ、賛同の回答者の割合は、ニューハンプシャー州(73%、84%)、アイオワ州(57%、82%)、ミシガン州(67%、82%)、オハイオ州(65%、84%)、ジョージア州(61%、86%)というものだった。これをもとにして公開書簡は、このような関心の高い問題だから、態度を明らかにせよと候補らに迫った。大統領選挙を活用して、核問題についての関心を高め、同時に、選挙に影響を与えようという戦略であり、日本の反核運動にとっても参考になる動きだ。
 なお日本政府は、核を先には使わないとの「先制不使用(ノー・ファースト・ユース)」策を米国がとることに反対している。2016年8月16日、核兵器禁止条約について議論していた国連核軍縮作業部会(OEWG)で、先制不使用宣言をしないように米国に働きかけている日本と韓国の両政府の姿勢が、元豪外交官に非難され注目を浴びた。そして同月19日に行われた条約の交渉を2017年から始めるよう勧告する報告書の採択に際して日本は棄権した(賛成68、反対22、棄権13)。先制不使用に反対の日本が禁止条約交渉を本気で求めるはずがないことは最初から明らかだった。ありうるのはごまかしか、棄権か、反対だけである。
 そして安倍政権の下で、日米の核共有論も出てきている。2009年に米議会委員会で証言した日本側の一人(秋葉剛男公使・現外務省事務次官)が、日本の不安を解消するには「ニュークリア・シェアリング(核共有)」しかないといったとされる。また米「憂慮する科学者同盟)」のグレゴリー・カラキー氏によると、秋葉氏は2009年11月にカラキー氏と会った際、米国は本当に核で日本を守ってくれるだろうかという日本側の懸念を解消する「唯一の方法は、米国が日本に米国の核兵器をいつ使うかを決める権限を与え、このような『核共有』の取り決めについて北朝鮮と中国の両方に明確に伝えることだ」と述べたと書いている。秋葉氏は核共有について話したことを否定しているが、核共有は政府関係者にとって魅力的なようだ。核兵器を先には使わないという「先制不使用」策を米国が採用することに反対し、核共有に魅せられる日本という姿がある。「共有」といっても核使用決定権は最後まで米大統領にあることはいうまでもない。日本政府は、核保有国と非核兵器国の橋渡しをしたいとする表向きの主張とは裏腹に、こうした実態にあり、この問題にも日本の反核運動は取り組むべきである。


ブラック企業大賞2019

         またも三菱電機が受賞


 パワハラ、セクハラ、残業代未払い、長時間労働、派遣差別、偽装請負などが横行し、悲惨な過労死、過労自死の報道がつづいている。資本主義企業は、出来るかぎり労働者を低賃金で長時間働かせて儲けを最大化するものだ。労働者の闘いはこうした状況への抵抗として歴史を重ねてきたが、政府の新自由主義政策と労働運動の力の後退のなかで、職場の状況の悪化はとどまるところをしらない。
 企業の中で、極端な搾取を行っているのが、「ブラック企業」といわれるものだ。それらの企業は社会的にも注目されつつあるが、個別事例の調査やその問題の発信・解決も簡単ではない。

 ブラック企業大賞実行委員会は、ブラック企業の個別の事例分析、それらを生み出す背景や社会構造の問題を広く伝え、誰もが安心して働ける環境をつくることをめざして2012年に「ブラック企業大賞」を立ち上げた。「ブラック企業を見極める指標」としては、長時間労働、セクハラ・パワハラ、いじめ、長時間過密労働、低賃金、コンプライアンス違反、育休・産休などの制度の不備、労組への敵対度、派遣差別、派遣依存度、残業代未払い、求人票でウソなどが上げられている。

 12月23日、「今年1番のブラック企業」を決める「第8回 ブラック企業大賞2019 授賞式&シンポジウム 最悪の企業はどこ?どうすれば闘える?」が開かれた。  
 ノミネートされたのは、KDDI、セブンイレブン・ジャパン、電通、ロピア、長崎市、トヨタ自動車、三菱電機(メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社)、吉本興業、楽天などであった。
 「大賞」は「三菱電機」。「特別賞」は、電通(再三にわたる労基法違反)とセブンイレブン・ジャパン(残業代未払い問題)の2社が受賞。「Web投票賞」は楽天(パワハラ)が、「#MeTooo賞」は長崎市(市の幹部が女性記者に対し性暴力)が受賞した。
 三菱電機株式会社(メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社)は二年連続の大賞受賞である。そのノミネートの理由は以下の通り―三菱電機株式会社は、家電から発電機まで様々な電気製品を製造するメーカー企業であり、我が国の代表的な大企業である。また、メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社(以下「MSEC社」)は、三菱電機パワーデバイス製作所(福岡市)内に本社を置く三菱電機の子会社であり、MSEC社の役員の過半数は、三菱電機の社員であるという。報道によると、2017年末、MSEC社では、当時40代の技術者が自死し、20019年10月に但馬労働基準監督署(兵庫県豊岡市)によって長時間労働による労災であると認定された、とのことである。三菱電機グループでは、2014年以降に、社員が自死したり精神障害を発症したりしたケースが判明したのは、これで3人目となる。また、三菱電機では、2014年〜17年にシステム開発の技術者や研究職の男性社員5人が長時間労働が原因で労災認定され、うち2人が過労自死だったことも報道されているところである。
 こうしたことから、三菱電機は、「ブラック企業大賞2018」の大賞を受賞した経歴もある。複数の過労自死を出した大企業の子会社において、新たな過労自死が発生していることは重大であることから、三菱電機及びその子会社であるMSEC社をノミネートした。なお、三菱電機では、20代の男性新入社員が2019年8月に自死し、教育主任だった30代の男性社員が自殺教唆の疑いで兵庫県警三田署によって神戸地検に書類送検され、自死の現場には、教育主任から「死ね」などと言われたことなどを書いたメモが残されていたとの報道もなされおり、衆目を集めたところでもある。


せ ん り ゅ う

   万人が苦悩を生きる年の明け

      使い捨て大臣量産消耗品

   首相枠凸権としてアキエ枠

      反社会その真ん中にアベの席

   わがままな武器爆買いの餓鬼大将

      国会無視独裁閣議で出兵し

   くさっても肥料にならぬアベ自民

                  ゝ 史

2020年1月


複眼単眼

        安倍政権が倒れる年が来た


 2020年は安倍晋三政権が倒れる年だと思う。
 安倍晋三首相は昨年11月20日で首相の座にのべ2886日座ったことになった。日露戦争当時に首相を務めた桂太郎内閣を超えて歴代在位日数第1位になった。
 なぜ安倍内閣がこんなに長期政権になったのか。つまり「他に代わりがいない」「他よりよさそう」という「しかたがないから支持する」のが各種の世論調査から見た安倍晋三支持の理由の大半だ。
 このもとで、安倍はいくつかの方策をとって、長期政権を維持した。
 第1に、選挙制度を小選挙区制中心に変えた結果、官職と議員の椅子を求めて党内が忖度政治のヒラメの巣窟となり、権力が総裁(幹事長)に集中することになった。
 第2に、NHKを手始めに、宴会政治的な術策を弄して大手マスメディアを支配下に置き、太鼓持ちの報道をさせた。
 第3に、内閣人事局の機能を駆使して、霞が関の官僚機構を屈従させた。
 第4に、日銀など国家財政・金融機関を、私物化し、幻想のアベノミクスによる好況感を演出した。
 この時代に生きる多くの人々が安倍の「がんばってる感」にまどわされ、安倍を支持をしてきた。
 しかし、少し冷静に見ると、安倍政権には政治の実績がほとんどない。経済の安倍(アベノミクス)というキャッチフレーズは空白。外交の安倍(北方領土、拉致。日米貿易交渉、武器の爆買い。地球儀を俯瞰する外交の失敗・韓国との対立、etc.)は壮大なマイナスだ。
 モリカケ疑惑から始まって、「桜を見る会」、IR疑惑などなど、さまざまな腐敗・疑惑事件が続発し、政権周囲からは腐臭がするようになった。
 安倍の頼みの綱である米国トランプ政権が招いたイラン情勢の緊迫は、円高を引き起こし、株価は急落して、長期不況のもとでのデフレ感が露わになってききた。多少の波はあっても、この傾向は長期に続くだろう。
 長期政権ということはそれだけでは何の自慢にもならない。肝心なのは中身だ。多くの人々がここにきてようやく気が付きつつある。
「王様は裸だ」と。
 それでもなぜか続いてきた安倍政権への世論の高支持率が、年末になって急落し始めた。
 12月14〜15日に行った共同通信の内閣支持率は42・7%で、不支持率が43・0%、内閣支持率は2か月連続で低下した。
 12月21〜22日の朝日新聞の世論調査では、内閣支持率が38%で、不支持率が42%、実に1年ぶりの逆転だった。
 こうなると、政権の切り札であるべき早期の解散・総選挙のブラフがきかなくなってくる。補正予算の終了後の2月解散説、予算成立後の3月解散説は現実味を持たなくなってくる。支持率の低下を見て、野党は「やるならやってみろ」と啖呵をきることができる。
週刊誌などでも、2月解散総選挙なら「自公で83議席減。安倍『改憲』の夢費える」(FLASH)などの見出しをつけるものが現れる。これからドミノ現象が起きないとも限らない。
 安倍首相は年頭記者会見で「(改憲を)私自身の手で成し遂げていく考えは全く揺るがない」と精いっぱい強がってみたが、舌の根も乾かないうちに「改憲スケジュールありきではない」などと及び腰だ。「あれあれ、自らの任期中に」とスケジュールを示し、改憲の時期を区切ったのはどこのどなただったのか。
 「改憲論議をすべきか、否か」という「超一般的な問いに、「すべきだ」という声が多かったことをもって、「改憲は国民の声だ」などとすりかえてみても、まやかしは明白だ。共同の調査でも「安倍政権の下での改憲に反対」が過半数の54・4%、賛成派わずか31・7%というありさまだ。
 さあ、追い込み時だ。院外の市民運動の力をもって安倍政権を追い詰め、その力をもって国会内の野党を激励し、結束させ、安倍政権を追い詰めよう。
 安倍政権打倒が空言ではない時期がやってきつつある。 (T)