人民新報 ・ 第1382号<統合475号(2020年2月15日)
  
                  目次

● 安倍9条改憲NO! 改憲発議に反対 !

           新署名運動を成功させ、改憲阻止・安倍政権打倒の声をひろげよう

● 共謀罪法を廃止させよう

           衆院―廃止法案の審議を!   参院―廃止法案提出を!

● 労働組合運動を抹殺しようとする警察、検察、裁判所、大企業、右翼が一体となった攻撃

          関西生コン支部への逮捕・起訴・勾留

● 経団連のいう「ジョブ型」  ―資本が狙う一層の雇用流動化

● 憲法の上に日米地位協定  国会の上に日米合同委員会

          日米合同委員会決定を検証する

● 三宅弘弁護士の講演

          桜を見る会」招待者名簿からみた 公文書管理の現状と課題

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  日本ヨイ国 強イ国  世界ニカガヤク エライ国






安倍9条改憲NO! 改憲発議に反対 !

    新署名運動を成功させ、改憲阻止・安倍政権打倒の声をひろげよう


 安倍政治は暴走の果てに極めて困難な局面に陥りつつある。安倍政権に対する怒りの声がひろがりつつある。いまこそ、全国各地、各界各層の様々な運動の大合流、そして立憲野党の共闘をいちだんと強めて、改憲を阻止し、安倍政権を打倒し、あたらしい政治の段階をきりひらくときだ。

 1月20日、第201回通常国会が開会した。戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクション、共謀罪NO!実行委員会の共催で、衆議院第2議員会館前を中心に「自衛隊の中東派兵反対!『桜を見る会』徹底追及! 権力私物化反対! 安倍改憲発議阻止! 共謀罪廃止! 安倍内閣退陣!」国会開会日行動が行われ、市民と立憲野党国会議員は、市民と立憲野党の総力を挙げて、かならず安倍政権を退陣に追い込もうと声を上げた。

 2月1日と2日、横須賀ヴェルニー公園では、神奈川平和運動センター、三浦半島地区労センターの主催による「海外派兵に道を開く自衛隊派遣に反対!日米軍事強化反対!海上自衛隊・護衛艦『たかなみ』の中東派遣、即時中止を求める緊急横須賀行動」が闘われた。集会の後、海上自衛隊横須賀総監部ゲート前に移動し抗議行動をおこない、護衛艦「たかなみ」にむけて、「護衛艦を中東に送るな」「P3Cの派遣反対」「海上自衛隊横須賀基地の機能強化反対」「自衛隊員のいのちを守れ」などのシュプレヒコールをあげた。海上では、「ヨコスカ平和船団」のメンバーによる2隻の船で、「中東へ行かないで!」などの横断幕をかかげて、派遣反対をアピールした。

 改憲阻止、安倍内閣打倒運動の軸となる「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」が新たにはじまった。2月6日には、東京・王子の「北とぴあ・さくらホール」で「許すな政治の私物化! STOP改憲発議! 新署名スタート! 安倍政権を退陣させる! 市民集会」(主催・安倍9条改憲NO全国市民アクション)が開かれた。古賀茂明さん(元内閣審議官・経産官僚・フォーラム4代表)、宮子あずささん(看護師)が発言。「武器輸出問題」「日韓問題」「沖縄問題」の分野からの闘いのアピールがあり、立憲野党からは、共産党の小池晃書記局長、立憲民主党の杉尾秀哉参院議員、社民党の福島瑞穂副党首があいさつをおこなった。
 最後に共同代表の高田健さんが行動提起して、次のように呼びかけた―2020年、この1年は安倍改憲をめぐっての歴史的な攻防戦になる。憲法9条を壊して、アメリカとともに世界のいたるところで戦争をする国にするのか、それとも安倍改憲を阻止して、憲法を生かし、この国を絶対に再び戦争をすることのない国として確立するのか、この2つの道の争いだ。改憲に反対する市民は、立憲野党の共同を促し、これと連携して、戦争法に反対する署名、安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名を全国津々浦々で展開しながら、行動を続け、世論を喚起して、対抗し、国会内の野党の闘いと呼応し、憲法審査会をはじめ、院外の闘いを、下支えして、国会に自民党改憲4項目を「提示」させず、「発議」できない状態にしてきた。主権者の名において、民主主義の名において、安倍政権を打倒することは私たちの急務だ。安倍の任期切れを目前にして、今年はいよいよ改憲阻止の主戦場である全国の草の根での対決だ。衆議院解散・総選挙も予想され、解散があるなら、立憲野党と市民の共同で、それを迎え撃ち、安倍改憲派を必ず3分の2以下に叩き落とそう。このたたかいにとって、今回の九条改憲発議阻止の署名は最良のツールで、市民との対話を広げ、9条改憲発議阻止の世論を強め、政治を変えよう。

 改憲を阻止し、安倍内閣打倒のためにともに闘おう!


共謀罪法を廃止させよう

    衆院―廃止法案の審議を!   参院―廃止法案提出を!


 2017年12月6日、衆議院で共謀罪廃止法案が提出された。継続審議になっているが、まだ一度も審議されていない。

 2月6日、共謀罪NO!実行委と「秘密保護法」廃止へ!実行委の共催で、「共謀罪廃止!秘密法廃止!6日行動」が衆議院議員会館前で行われ、市民と立憲野党の議員が参加した。
 ひきつづいて「共謀罪廃止法案の審議を求める院内集会」が開かれた。
 報告は、共謀罪対策弁護団事務局長の三澤麻衣子弁護士が「共謀罪廃止法案の審議を求める」と題しておこなった。2003年から「共謀罪」法案は3度も廃案になった。だが、菅官房長官が2017年1月の記者会見で、東京オリンピックを利用し「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法「改正案」という形式で「従来の共謀罪とは違う」などと説明し、法務省は対象犯罪を277へ削減して法案提出した。そしてその年の5月19日に維新の修正案を衆議院で強行採決し、6月15日には、「中間報告」という法務委員会採決を省略する異例の手段で参議院本会議における強行採決で成立させられ、7月11日施行された。政権は急いでいた。
 しかし、野党によって2017年12月6日に共謀罪廃止法案が衆議院に提出された。 そもそも、政府の言う法律を作る根拠である「立法事実」は存在しない。国際組織犯罪防止条約はテロ対策を目的とはしていないが、オリンピック対策といえば国民が納得すると思っている。テロ対策は必要だとしても、個別の規定新設で十分であり、「テロ等準備罪がなければオリンピックが開けない」なんてことはない。
 なぜ政府は共謀罪を作りたかったのか。テロ等準備罪での共謀罪という説明を聞いてみても、共謀罪は現行法等で対応可能なのであり不要だ。むしろ一般人が巻き込まれる危険がある問題だらけのものだ。それでも、なぜ作りたいのかといえば、戦争法強行採決前後の状況を見てみればわかる。2015年に戦争法成立、2016年に刑事訴訟法改正で盗聴法拡大、司法取引新設等などができ、その仕上げが共謀罪となった。それは戦争法を推し進めるための監視密告社会の最後の強力な手段となった。公安警察等の違法な監視が見つかっても「適法な捜査だ」と言い訳可能であり、盗聴法拡大で監視方法も拡大し盗聴しやすくなっている。さらに公安お得意の活動団体の協力者・潜入者に「共謀」をでっち上げさせ、自首させて、その人は司法取引で無罪放免し、その他の人の根こそぎ逮捕、起訴が可能となる。
 日本では弁護人立ち合いのない密室での長期間の取調べが可能で、自白強要、冤罪の歴史がつづいてきたが、未だその体制は変わっていない。共謀罪が成立するためには「内心」が重要であり、「内心」の証拠は自白が一番だ。共謀罪においては、これまで以上に自白の強要で冤罪激増の危険がある。
 しかも、共謀罪は弾圧立法である。過去の法案とも根本的に違っており、安倍政権の目的は弾圧立法であり、対象犯罪に挙げられているものは、弾圧に使いやすい危険大なものであり組織的威力業務妨害罪、信用毀損罪、組織的建造物損壊罪など構成要件が漠然としているものばかりだ。そして、公選法違反、相続税法違反など自民党に都合の悪い犯罪だけは抜いている。
 共謀罪には、国際社会からも批判がおこっている。2017年5月、国連特別報告者のジョセフ・カナタチ氏から法案を見直すよう日本政府に公開書簡が寄せられてた。それは「共謀罪は法的な明確性を欠いており、共謀罪の制定が監視を強めることになる」とを指摘し、「プライバシーを守るための法的な仕組みを検討する」よう求めたものだが、政府与党は 無視して法案を成立させ、その後になって、「法的な仕組みは十分」との回答書を出した。 
 これから、共謀罪を「使わせない」運動を強めていくことが必要だ。共謀罪の違憲性を明確にし、発動されたら共謀罪そのものを違憲・無効にしていかなければならない。話したこと、考えたことを処罰するのは、憲法21条、19条違反であり、処罰の範囲がきわめて不明確なのは憲法31条違反、プライバシーを侵害する捜査手法の横行は憲法13条違反となる。また、共謀罪を成立させるために政府は苦し紛れの答弁をおこなってきていているが、その「約束」を守らせることだ。政府の答弁に反する解釈・運用を行えば、共謀罪の正当性は崩壊する。たとえば、実行準備行為について法務省の見解は構成要件として処罰のためには「故意」が必要だとしている。また組織的犯罪集団の団体の行為については、政府の例示ではテロリズム集団、暴力団、麻薬密輸組織、人身売買組織があげられており、普通の団体、運動に適用することは許されない。そして継続性、反復性、共同の目的、指揮命令系統など「団体」要件を厳格にさせなければならない。共謀罪に対する国際的な批判は継続しており、政府の「逃げ切り」を許してはならない。
 政治活動の萎縮、市民の分断が共謀罪の狙いなのだから、人のつながりを広げ、正々堂々と活動することが最大の反撃であり、かつ防御となる。法律はできても、破防法や国公法の政治的行為の禁止など「使えない」前例はある。
 共謀罪法は成立から2年半たったが、まだ適用事例はない。しかし危険な法律であることは変わらない。参議院でも共謀罪廃止法案を提出し、衆議院で継続審議となっている共謀罪廃止法案の審議を行い、国会外の大きな運動と結びついて、共謀罪を廃止法を成立させていこう。


労働組合運動を抹殺しようとする警察、検察、裁判所、大企業、右翼が一体となった攻撃

             
関西生コン支部への逮捕・起訴・勾留

 全日本建設運輸連帯(連帯ユニオン)関西地区生コン支部への弾圧が続いている。
 1月23日、連合会館で、「関西生コン事件」報告集会(主催・「関西生コンを支援する会」)が開かれた。
 主催者を代表して、「関西生コンを支援する会」共同代表の菊池進全日建委員長が、関西生コンへの不当逮捕・起訴・勾留は労働組合運動を抹殺しようという警察、検察、裁判所、大企業、それに右翼などが一体となった攻撃だ、関西生コンを支援する輪は広がっている、大きく団結した力で反撃し、闘いに勝利していきたいとあいさつ。
 小谷野毅全日建書記長が、「関西生コン事件」の現状について報告した。
 刑事弾圧事件では、現在までのところ、組合員、事業者あわせて逮捕者のべ89人、起訴が、のべ71人で、武建一委員長、湯川祐司副委員長は2年つづけて拘置所で越年させられた。勾留期間は明日1月25日で515日にもなる。
 はじめに弾圧事件を類型別にどのような組合活動が事件とされているのかについて報告したい。滋賀では、18年7月のフジタ事件(1次)から19年8月の日本建設・東横イン事件まで10件、逮捕者45名でそのうち44名が起訴された。事件とされた組足活動は、安全・品質をないがしろにする法令違反や生コンの安売りなど不公正な取引を規制するコンプライアンス活動が、1年以上経ってから、「恐喝未遂」「威力業務妨害」とされた。汚水の垂れ流しなど違法行為を記載したビラを配布しただけの組合員も威力業務妨害で逮捕・起訴されている。大阪では、18年9月の宇部三菱SS事件から18年11月の宇部三菱・中央大阪事件まで、3件で、逮捕者28名うち起訴15名で、運転手の賃金引き上げの原資となる運賃引き上げの約束を守れと要求したストライキが、9か月後に「威力業務妨害」事件とされた。京都では、19年6月の加茂生コン事件から19年9月のベストライナー事件まで3件で、逮捕者11名、起訴9名で、日々雇用労働者の正社員化や保育園に提出する「就労証明書」を要求したことが「強要」にあたるとされた。破産や企業閉鎖に対し、工場占拠やストライキで雇用補償の解決金を獲得した労働争議(いずれも3年前、5年前に解決済み)が「恐喝」とされている。和歌山は、19年8月と11月の和歌山広域協組事件で逮捕5名、起訴3名となっている。元暴力団員を使って組合結成を妨害した業者団体に抗議・謝罪を求めたことが「強要」「威力業務妨害」とされていることが事件とされている。
 裁判の進行状況については、大津地裁(コンプライアンス活動)では、検察側立証がほぼ終了し、2〜3月にも弁護側立証となる。大阪地裁(ストライキ)では、検察側立証は概ね終了し、検察申請証人は残ったままいったん弁護側の主張となる。京都地裁(団交申し入れ、破産・企業閉鎖にともなう工場占拠闘争)は、3件とも公判前整理続行中で、和歌山地裁は公判前整理の段階にある。
 労働委員会事件では、12月10日、加茂生コン事件で大阪府労委が組合勝利命令をだした。そこでは、組合員の労働者を認め、団交実施とポストノーチス(不当労働行為の救済命令における救済方法の一つで、使用者に対して、当該行為が労働委員会から不当労働行為と認定された旨及び今後同様の行為を繰り返さないよう留意する旨等を記載した文書を掲示させること)を実現させた。ただし、就労証明書拒否と企業解散は不当労働行為と認めなかったので、われわれは中労委に再審査申立てた。また同様に会社も申立wくぁめておおこなった。大阪広域協組が主導した組合員排除・就労拒絶の不当労働行為については次々勝利・和解している。
 この間、関生支援の輪は広がっている。昨年12月には「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない―関西生コン事件についての労働法学会有志声明」が記者会見で発表され、労組の取り組みや各地で支援の組織結成が続いている。
 つづいて、西山直洋・関生支部執行委員が弾圧事件について特別報告。
 国労佐藤書記長、全水道東水労渡邉委員長、全国コミュニティユニオン会長全国ユニオン鈴木会長からの連帯発言がおこなわれた。
 最後に、「関西生コンを支援する会」事務局長の勝島一博・平和フォーラム事務局長が行動提起をおこない、2月15日、16日に東京と大阪で開かれる「検証シンポジウム 関西生コン事件を考える」を成功させ、不当弾圧への国家賠償訴訟への支援、支援する会の会員拡大、そして関生弾圧の真実を広く社会に知らせる活動を強力に行っていこう、と訴えた。


経団連のいう「ジョブ型」  ―資本が狙う一層の雇用流動化

 経団連の経労委報告(2020年版)は、財界の春闘方針であるが、巨大な内部留保にもかかわらず、いろいろな理屈をつけての賃上げ要求の拒否はいつものことだが、「雇用システム」についても述べている。これまで、産業界と政府は、労働者を正規、非正規に分化させ後者の激増となった。つづいて、正社員をさらに限定正社員として区分してきた。そして、今回は、正社員nい「ジョブ型」の導入だ。「ジョブ型」とは、仕事(ジョブ)に労働者を張り付けることだが、この日本的「ジョブ型」では配置転換があるという。これでは、「ジョブ型」本来の職種別熟練度別横断賃金は適応できない。まぎらわしい名前だけの「ジョブ型」の狙いは、一段と雇用の流動化を加速させることだ。働き方改革なるものの労働強化の政策推進に他ならない。


憲法の上に日米地位協定  国会の上に日米合同委員会

           
日米合同委員会決定を検証する

 2004年、在日米軍や自衛隊が使用する施設の取得、工事、管理、周辺対策を任務とする当時の防衛施設庁は、神奈川県逗子市のアメリカ海軍池子住宅地区の追加建設を突如として提起し、市民そして市政もが粘り強い反対運動を繰り広げてきたにもかかわらず、米軍の家族住宅が不足しているという理由で、14年の間に5億円あまりの税金が投入され、地質調査、環境影響評価が行われてきた。ところが2018年11月14日、日米合同委員会は、米艦船乗組員用の宿舎が不足している状況を踏まえ、横須賀海軍施設に独身下士官宿舎の整備などとして、「池子住宅地区及び海軍補助施設(横浜市域)における家族住宅等の建設は、双方の合意により取り止めます」と公表した。
 
 2月1日、横浜の「かながわ県民センター」で、「池子住宅地区の追加建設に反対する会」の主催の集会「池子米軍家族住宅追加建設中止から見えてくること―日米合同委員会決定を検証する」が開かれた。集会は、この間の池子と横須賀の変化を振り返り、取り組むべき課題を論議するために開かれた。
 はじめに、市民の会から、写真で見る池子住宅地区追加建設中止への歩み、つづいて池子米軍住宅施設の費用、契約者についての報告がおこなわれた。

 講演は、ジャーナリストで『「日米合同委員会」の研究―謎の権力構造の正体に迫る』などの著者である吉田敏浩さんが、「基地の提供を密室で決める米軍優位の日米合同委員会」と題して行った。米軍優位の不平等な日米地位協定が、米軍の特権を認めている。1952年に対日講和条約、日米安保条約、日米行政協定が発効し、1960年の安保改定で日米地位協定と改称した。全28条で、日本における米軍と米軍人・軍属とそれらの家族の権利など法的地位を定めているが、米軍側に多くの特権がある。米軍基地の場所が限定されず、日米合同委員会の合意で決める「全土基地方式」で、基地の運営などに「必要なすべての措置をとれる」強力な排他的管理権がある。日本側は米軍の許可がないと立ち入れない。米軍は出入国自由で、基地返還の際の原状回復や補償義務を負わない。また、米軍人・軍属の公務中の犯罪(過失致死傷など)の第1次裁判権は米軍側にあり、公務外の事件・事故の被疑者の身柄が米軍側にあるときは日本側が起訴するまでは身柄の引き渡しをしないなど、米軍側に有利な規定となっている。米軍機墜落事故でも米軍が現場を封鎖し、日本側は現場検証も事情聴取もできない。米軍は事故原因の究明は二の次で訓練飛行を再開し、日本政府は容認してばかりいる。基地周辺の住民による米軍機騒音訴訟で、騒音公害として違法性と損害賠償は認められるが、飛行差し止めは認められない。米軍の活動に日本政府の規制は及ばないため差し止めはできないと裁判所は判断する。米軍の活動に対し日本の行政権も司法権も及ばないのが実状だ。危険な低空飛行訓練も野放しである。このように、米軍という外国軍隊により主権が侵害され、そして憲法で保障された人権も侵害されているのであり、こうした状態で、日本は真の独立国・主権国家といえるのか。
 米軍優位の地位協定の構造をより強固にする裏の仕組みが、日米合同委員会である。日米合同委員会は1952年4月28日の対日講和条約、日米安保条約、日米行政協定の発効とともに発足し、日本の高級官僚と在日米軍の高級軍人で構成し、日米地位協定の解釈や運用に関する協議機関だが、その実態は謎である。日本側代表は外務省北米局長で、代表代理は法務省大臣官房長、農林水産省経営局長、防衛省地方協力局長、外務省北米局参事官、財務省大臣官房審議官だ。アメリカ側代表は在日米軍司令部副司令官、代表代理は在日アメリカ大使館公使、在日米軍司令部第五部長、在日米陸軍司令部参謀長、在日米空軍司令部副司令官、在日米海軍司令部参謀長、在日米海兵隊基地司令部参謀長だ。それが本会議で、その下に施設・財務・調達調整・労務・出入国・通信・周波数・民間航空・刑事裁判管轄権・民事裁判管轄権・環境など分科委員会、建設・港湾・道路橋梁・陸上演習場・海上演習場など部会があり、これらが日米合同委員会と総称される。そこでは、米軍基地・演習場の場所の決定、基地・演習場のための土地収用、滑走路など各種施設の建設、米軍機に関する航空管制、米軍機の訓練飛行や騒音、墜落事故などの被害者への補償、米軍が使う電波の周波数、米軍関係者の犯罪の捜査や裁判権、基地の環境汚染、基地の日本人従業員の雇用など、さまざまな問題が協議される。
 通常の国際協議ではあり得ない文官対軍人の組み合わせで、アメリカ側は軍事優先で協議にのぞみ、要求を出す。米軍優位の日米地位協定が土台にあり、ほとんどの場合米軍に有利な合意が結ばれている。
 日米合同委員会の合意では、領土・領海・領空の一部を施設及び区域として外国軍隊に提供する、国家主権に関わる重大な決定を、憲法第41条のいう「国権の最高機関」である国会が関与できない。日米合同委員会の密室協議に任せていいのか。まったく憲法の国民主権の原理に反することがつづいている。本来なら国会に詳細な情報提供がなされ、主権者の代表である国会議員により必要性や住民への影響などを自治体や住民の意見も聞いて審議された上で承認あるいは不承認とする、といった民主主義にふさわしい手続きをするべきだ。ところが、日米合同委員会の秘密協議による合意だけで済ませている。「正当に選挙された国会における代表者」(憲法前文)として主権者の信託を得た国会議員の関与なしに、外務省北米局長という一官僚が、「日本政府代表]として署名するという仕組みそのものが不透明で、憲法の基本原理からはずれている。
 この仕組みは最初から、国会を関与させないためにつくられたのだ。地位協定第2条には、「個々の施設及び区域に関する協定は、第25条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない」とあり、その第25条で、「合同委員会は、特に、合衆国が相互協力及び安全保障条約の目的の遂行に当たって使用するため必要とされる日本国内の施設及び区域を決定する協議機関として、任務を行う」と定めている。本来は、「合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない」ではなく、「国会での審議・承認を通じて両政府が締結しなければならない」とすべきだ。しかし、「合同委員会を通じて」密室協議に持ち込むことで、米軍が望む基地提供をスムーズにできるための仕掛けがつくられた。しかも合同委員会の文書は原則非公開として、国民・市民、国会議員などがチェックできないようにしている。日米合同委員会の密室協議に大きな決定権を持たせ、主権や人権に関わる重大な決定に国会を関与させない仕組みは異常である。これは、占領時代の米軍優位の構造を受け継ぐ日米合同委員会ということだ。
 日本の主権を侵害し、「憲法体系」を無視して、米軍に特権を認める日米合同委員会の密約の数と全貌はわからないが、わかっているだけでも多々ある。それは、@「民事裁判権密約」(1952年)―米軍機墜落事故などの被害者が損害賠償を求める裁判に、米軍側は不都合な情報は提供しなくてもよく、そうした情報が公になりそうな場合は米軍人・軍属を証人として出頭させなくてもいい。A「日本人武装警備員密約」(1952年)―基地の日本人警備員に銃刀法上は認められない銃の携帯をさせてもいい。B「裁判権放棄密約」(1953年)―米軍人・軍属・それらの家族など米軍関係者の犯罪事件で日本にとっていちじるしく重要な事件以外は第1次裁判権を行使しない。C「身柄引き渡し密約」(1953年)―米軍人・軍属の犯罪事件で被疑者の米軍人・軍属の身柄を公務中かどうか明らかでなくても米軍側に引き渡す。D「公務証明書密約」(1953年)―米軍人・軍属の犯罪事件で米軍が発行する公務証明書を、起訴前の段階でも有効と見なし公務中として、日本側が不起訴にする。E「秘密基地密約」(1953年)―軍事的性質によっては米軍基地の存在を公表しなくてもいい。F「富士演習場優先使用権密約」(1968年)―自衛隊管理下で米軍と自衛隊の共同使用になった富士演習場を、米軍が年間最大270日優先使用できる。G「航空管制委任密約」(1975年)―「横田空域」や「岩国空域」の航空管制を法的根拠もなく米軍に事実上委任する。H「航空管制・米軍機優先密約」(1975年)―米軍機の飛行に日本側が航空管制上の優先的取り扱いを与える。I「米軍機情報隠蔽密約」(1975年)―米軍機の飛行活動に関する情報は、日米両政府の合意なしには公表しない。J「喜手納ラプコン移管密約」(2010年)―「嘉手納進入管制空域」の日本側への移管後も、嘉手納基地などに着陸する米軍機をアメリカ側が優先的に航空管制する、などである。
 また、「民事裁判権密約」が、米軍関係の事件・事故の真相解明と責任追及を阻んでいるのではないだろうか。たとえば1977年の横浜での米軍ファントム機墜落事故の被害者夫妻が損害賠償を求めた民事裁判で、米軍の事故調査報告書の法廷への提供を要求したが、提出されなかった。日米合同委員会の事故分科委員会の調査報告書も全文は公表されなかった。2006年の横須賀での米兵による強盗殺人事件の被害者女性の夫が、損害賠償を求めた民事裁判でも、在日米海軍の飲酒規制や外出規制などの記録の法廷への提供を求めたが、提供されなかった。その理由を米軍側は明らかにしなかったり、記録が存在しないとの理由を述べたりしたが、そうした対応の背後には、米軍側は不都合な情報は裁判所に提供しなくてもよく、そうした情報が公になりそうな場合は米軍人・軍属を証人として出頭させなくてもいいという「民事裁判権密約」があるからではないか。最高裁部外秘資料に「民事裁判権密約」(1952年)が載っている。それでは、「しかしながら当該情報が機密に属する場合、その情報を公開することが、合衆国政府に対する訴の提起を助け、若しくは法律上若しくは道徳上の義務に違反する場合、合衆国が当該訴訟の当事者である場合、又はその情報を公にすることが合衆国の利益を害すると認められる場合には、かかる情報を公表し、又は使用に供することができない」などとされている。
 しかも、こうした米軍側に有利な部分が、外務省ホームページの「日米地位協定各条に関する日米合同委員会合意」では削除されている。
 日米合同委員会は「地位協定又は日本法令に抵触する合意を行うことはできない」とされている。従って、上記の「合意事項」は日本法令に抵触しており、そもそも日米合同委員会で合意できるものではない。
日米合同委員会の合意はそれほどの効力を持つと考えられるものなのか。ところが、琉球新報社が入手した日米地位協定に関する政府の基本解釈となる機密文書「日米地位協定の考え方」によると、「地位協定の通常の運用に関連する事項に関する合同委員会の決定(いわゆる『合同委員会の合意事項』)は、いわば実施細則として、日米両政府を拘束するものと解される」とされている。国会にさえも公開せず、主権者である国民・市民とその代表である国会議員に対して秘密にしたまま、ごく限られた高級官僚と在日米軍高官とが日米合同委員会の密室で結んだ合意が、「いわば実施細則」として、法律を超越して「日米両政府を拘束する」ほどの巨大な力を有しているというのだ。在日米軍司令部の内部文書「合同委員会と分科委員会」(2002年)にも、日米双方の代表は単に日米合同委員会委員の代表としてだけではなく、日米双方の「政府を代表する」とあり、「合同委員会での合意は日米両政府を拘束する」という説明がある。まさに、日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会があるということになっている。
 日米合同委員会は米軍の占領時代からの特権を維持し、変化する時代状況に応じて新たな特権を確保してゆくための「政治的装置」「密約機関」なのである。
 民主主義にとっての情報公開は重要だ。日米合同委員会の情報は公開されなければならない。
 そして、米軍有利の合意・密約を廃棄し、合同委員会は廃止されなければならない。


三宅弘弁護士の講演

    
桜を見る会」招待者名簿からみた 公文書管理の現状と課題

 11月20日、通常国会の開会日にあたっての恒例の抗議行動「自衛隊の中東派兵反対!『桜を見る会』徹底追及! 権力私物化反対! 安倍改憲発議阻止! 共謀罪廃止! 安倍内閣退陣! 国会開会日行動」(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクション、共謀罪NO!実行委員会)が衆議院第二議員会館前を中心に行われ、その後に、院内集会が開かれた。

 院内集会「桜を見る会問題と公文書管理」では、内閣府の公文書管理委員会の委員長代理もつとめた三宅弘弁護士が、「『桜を見る会』招待者名簿からみた公文書管理の現状と課題」と題して話した。安倍首相は、いま大問題になっている「桜を見る会」についても、森友、加計問題の時と同様に、記録がないので答えられないという。「首相枠」での参加者についてすでにマスコミでも実名があげられているにもかかわらずこの答えである。行政の記録はかならず文書記録として残すというのは世界の常識だ。日本も行政機関情報公開法(2001年4月1日施行)などでその流れが出来たが実際にはそれに逆行した事態となっている。行政機関情報公開法は、「第一条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする」ことをあげ、「行政文書」を「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう」と規定している。その趣旨は、「あるがままの行政運営に関する情報を国民に提供するものであるが、開示請求の対象を、情報が一定の媒体に記録されたもの(文書)とすることとした。また、文書の媒体の種類については、情報・通信システムの進展をも踏まえ、幅広くとらえる必要がある」と説明されている。 
 また2009年制定の公文書管理法4条は、「行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない」と規定している。その趣旨は、作成から利用までの文書のライフサイクルのうち、第1段階である「作成」について法律上の義務を定めたものである。作成義務を課されている主体は「行政機関の職員」であり、作成義務の対象となる客体は「文書」である。作成あるいは取得した結果として「行政文書」になるので、作成前の段階の義務を定めた本条では、客体を「行政文書」ではなく単に「文書」としている。「文書」の定義については、本法2条4項に「図画及び電磁的記録…を含む。…」とある。これに加えて、公文書管理法8条は、「行政機関の長は、保存期間が満了した行政文書ファイル等について、…国立公文書館等に移管し、又は廃棄しなければならない」とし、また「前項の規定により、保存期間が満了した行政文書ファイル等を廃棄しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならない」と規定し、原則として、公文書の移管と廃棄の最終判断権者を内閣総理大臣としている。この他、公文書管理法に制度上盛り込まれているコンプライアンス確保のための仕組みとして、内閣総理大臣への報告、同大臣による調査、勧告、国立公文書館による実地調査、公文書管理委員会による勧告案の調査審議がある。このように公文書の保存のために、積極的に権限が行使されるべき建て付けとなっている。しかし、政府のこの間のやりかたは、まったくそうなっていない。
 これまで事例を見てみよう。内閣法制局の集団的自衛権行使に関しては、横畠裕介法制局長官は集団的自衛権の行使を認めた閣議決定(2014・7)に関連して作成した「想定問題集」(2016・2)は行政文書ではないとして開示請求を拒否したが、その後、総務省の情報公開・個人情報保護審査会の答申に従い公開することになった。ここでは、行政文書の該当性が問題とされた。
 つぎに南スーダンへの陸上自衛隊PKO派遣部隊の日報(2016・12)で、防衛省は当初、情報公開請求を受けた日報は、保存期間が1年未満のため廃棄したとし不開示決定をしていた。その後、別な部署で見つかったとして一転して公開した。ここでは、1年未満の保存期間が問題とされた。
 森友学園問題では、財務省の森友学園との交渉記録(2016・6)についてだ。近畿財務局が国有地を森友学園に8億円引きの格安価格で販売したが、財務省は売買契約に関する学園側との交渉記録は保存期間1年未満の軽微な文書であり廃棄したと答弁したが、1年未満の保存期間が問題とされた。
 加計学園の獣医学部新設に関する問題では、文科省内部文書(2016・5)に「総理のご意向」などと書かれたものにつき、当初政府は「怪文書」扱いしていたが、文科省の再度の調査の結果、文書が保存されていたことが判明した。しかし、これに対応する内閣府の文書は不存在だという。内部討議について記録を作成していないというが。ここでは、説明資料等の行政文書該当性が問題とされた。 こうした公文書管理上の問題4事例から、公文書管理委員会における審議を経て、2017年12月に行政管理ガイドラインを改正し、これに基づき2018年3月末までにすべての府省庁において、行政文書管理規則を改正した。すべての府省庁で統一的に規則改正がなされたことは、1889年の内閣制度の設立以降、初めての画期的なことであった。
 公文書管理法7条1項本文は、行政文書ファイル等の分類、名称、保存期間等を記載した「行政文書ファイル管理等」の作成及び公表について規定している。ただし、同1項ただした書は、政令で定める期間未満の保存期間が設定された行政文書ファイル等については、同管理簿の作成義務の対象外とし、これをうけて本法施行令12条により、保存期間が1年未満のものは、対象外としている。森友学園問題にみる国有地の売買契約の交渉過程の記録は、紙媒体の文書も電子データも保存期間1年未満と解釈して廃棄された。このような誤った措置がとられないように、行政文書管理ガイドラインは改正された。同ガイドライン第4の保存期間の設定及び保存期間表においては、「歴史公文書等に該当しないものであっても、行政が適正かつ効率的に運営され、国民に説明する責務が全うされるよう、意思決定過程や事務及び事業の実績の合理的な跡付けや検証に必要となる行政文書については、原則として1年以上の保存期間を定めるものとする」という規定が新設された。
 ところが「桜を見る会」問題についてもまだ同じことが繰り返されてしまっている。内開府は、2019年5月に、予め総理大臣主催「桜を見る会」の招待者名簿の保存期間を1年未満と定めたことをふまえて、開催から1ヵ月足らずで廃棄した。この内閣府の姿勢は、公文書管理法の所管官庁として、公文書管理法を全く遵守していないものといえる。政府は森友・加計学園問題等で批判を受け、2017年に行政文書管理のガイドラインを改正し、行政の意思形成過程や事業の検証に必要な文書の保存期間を原則1年以上にすると決めた。「桜を見る会」は、招待者が年々増え、支出額が毎年予算額を超えている。名簿は検証に必要な文書にほかならない。これに対し、内閣府は、2018年に至り、「桜を見る会」招待者名簿の保存期間を1年未満とした。しかし、招待状の送付手渡しにかかる招待者名簿は,定型的な棄務連絡には該当しない。また、保存期間表に、保存期間1年未満と設定することが適当なものとして、業務単位で具体的に定めた。一体、誰が定めたのか。上記公文書管理法4条及び原則1年以上の保存期間を定めた趣旨に反する。重要又は異例な事項に関する情報を含む場合には、通常は1年未満の保存期間を設定する行政文書の類型であっても、合理的な跡付けや論証に必要となるものは、1年以上の保存期間であることを要する。それゆえに国権の最高機関であり国政調査権を有する国会の議員による資料要求に対しては、直ちに、1年以上の保存期間の運用に変更すべきであった。しかしその運用すらしていない。
 バックアップデータが残っていることも、資料要求時点で隠した。内閣府は廃棄の理由を「大量の個人情報が含まれ、適正な管理が困難なため」と説明したが、2万人に満たない個人情報は役所では珍しくない。行政機関個人情報保護法に基づいて保存するのがあるべき姿である。
 廃棄されたのは共産党議員の資料要求があった直後だった。この時点でバックアップデータが残っていたのに、内閣府は行政文書ではないとして提供しなかった。一般の職員が使用できず「組織共用性」がないとの説明は、法の解釈をねじ曲げている。そもそも国権の最高機関である国会(憲法41条)に属する議員への対応として問題がある。組織共用文書とは、本来は個人メモを除く趣旨である。当該行政機関の組織において、業務上必要なものとして、利用または保存されている状態のものに他ならない。仮に、内閣府の説明のとおり、バックアップデータによる組織共用性がないとしても、国権の最高機関である国会に属する議員からの資料要求に対しては、公文書管理法4条及び「公文書が健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であることから、バックアップデータから文書を再度作成し国会に提出するのが、行政の国会に対する正しい対応である。「桜を見る会」については、各省庁の文書管理体制を監視する公文書監察室が内閣府に設けられているが、歯止めにならなかった。抜け道だらけの危機的な状況である。専門家でつくる公文書管理委員会の権限を強めるか、独立した「公文書管理庁」のような新組織をつくる必要がある。森友問題等をきっかけとして、公文書管理についての人材養成・体制強化がはかられた。独立公文書管理監を省庁横断的な公文書管理の最高責任者とし、各府省庁において公文書監察室を設けた。内閣府公文書監察室は、森友事件で公文書の改ざんと廃棄が問題になったことをきっかけにできた部署であるから、その報告書を内閣官房、内閣官房長官ひいては公文書廃棄の最終同意権限を有する内閣総理大臣だとすると、極めて問題である。
 権力の待つ情報は民主主義の根幹を支える知的資源である。国民が今回の問題を「たかが名簿の話」と考え、権利を土張しなければ、健全な民主主義は育たない。情報公開法改正、特に裁判所での弁論期日外行政文書証拠調手続・裁判官だけが情報公開請求文書を裁判官室で見る手続であるインカメラ蜜理や情報公開制度全般を見直す「情報公開審議会」の設置、さらに国会議員の資料要求を含み重要又は異例な取扱いをした文書については用済み後廃棄を認めないこととする公文書管理法改正を対立軸の1つとした政権構想を国民に提示することも大切である。 日弁連は、2009年4月24日「公文書管理法の修正と情報公開法の改正を求める意見書」において、「公文書管理庁」の設置を求めている。


せ ん り ゅ う

   軽薄なテレビしんぶん何故か見る

     都の空は米国籍なんだってさ

   トランプの阿修羅の道は資本道

     中東の修羅場で稼ぐ畜生道

   大臣もスマホまかせかロボット君

     答弁は底無し馬尻(バケツ)笊大臣

   総理だがねずみみたいに逃げ廻る

     悪政に言失いし川柳子

                     ゝ 史

2020年2月


複眼単眼

     日本ヨイ国 強イ国  世界ニカガヤク エライ国


 安倍首相は第201通常国会の施政方針演説の「おわりに」で、オリ・パラを改憲と結び付け、「世界のまんなかで輝く日本」とうたい上げた。なんとノー天気な演説であることよ。
年頭から安倍首相は躍起になって、改憲の発言を繰り返している。 
 1月6日の「年頭記者会見」では「憲法改正を私自身の手で成し遂げていくという考えには全く揺らぎはない。しかし、同時に、改憲のスケジュールについては、期限ありきではない。まずは通常国会の憲法審査会の場において、与野党の枠を越えて、活発な議論を通じて、国民投票法の改正はもとより、令和の時代にふさわしい憲法改正原案の策定を加速させたい」とのべた。
 「改憲の期限ありきではない」との発言は奇妙だ。「私自身の手で」ということは「自分の総裁任期中に」といっているのに他ならない。彼の言っていることは支離滅裂だ。
 16日、自民党中央政治大学院主催の会合で、こう訴えた。「歴代総裁が時代に応じて全力を尽くしてきたが、党是である憲法改正はいまだ成し遂げることができていない。かならずや、今度こそ成し遂げたい」と。 稲田朋美幹事長代行は、女性層を対象とした取り組みに力を入れている。「自民党の集会に足を運んでくれるような人は、もともと改憲への理解が深い。本当の国民運動にするなら、むしろ反対派や9条に抵抗のある女性層などに訴える取り組みも必要だ」「女性にとっては『憲法改正なんかして生活が良くなるの』という気持ちもあると思う。でも、自民党にとって憲法改正は党是中の党是だ」と。そして、改憲の具体的な中身にも触れ「核は憲法9条だ。9条の改正なくして自民党が改憲したとはいえない」と訴えた。
 こうした安倍首相を先頭にした露骨な改憲の動きに対して、戸惑いを見せているのが連立を組んでいる公明党だ。
 1月16日、公明党の山口那津男代表は記者会見で憲法改正をめぐって安倍晋三首相が「私自身の手で成し遂げたい」と繰り返し主張していることへの対応を問われると、「安倍総理大臣として憲法を決定する権限はない。『総理大臣として』との言い方は誤解を招くので考えてもらいたい」と反発し、記者の質問に気色ばんで発言した。
 山口代表は「(自民党の)安倍総裁が憲法改正に意欲を示していることは承知している」と言い換えて反撃した。
 記者団が「総理は『私自身の手で憲法改正を成し遂げたい』と発言している。総理大臣としてめざしているとの意欲に聞こえる」と再質問すると、山口代表は「そういう風に聞こえるはずはない」と反論。語気を強めて「憲法のどこに、総理大臣が発議したり、採決したりということが書いてあるのか。発議権は国会にしかない」と主張し、憲法上行政府の長である首相には、憲法改正の権限がないことを改めて強調した。
 これは記者への反論の形を借りて、安倍首相が憲法99条の憲法尊重擁護義務に抵触する発言を繰り返していることへの、反発に他ならない。
 安倍首相の1月20日の約40分にわたる「施政方針演説」の締めくくりはこうだった。
 「新しい時代をどのような時代としていくのか。……令和の新しい時代が始まり、オリンピック・パラリンピックを控え、未来への躍動感にあふれた今こそ、実行の時です。……国のかたちを語るもの。それは憲法です。未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないでしょうか。新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で、共に、その責任を果たしていこうではありませんか。世界の真ん中で輝く日本、希望にあふれ誇りある日本を創り上げる」と。
 思い出す、戦前の国定教科書は子どもたちに「日本ヨイ国 強イ国 世界ニカガヤク エライ国」と教えていたことを。  (T)