人民新報 ・ 第1384号<統合477>(2020年4月15日)
目次
● 「コロナ自粛」強要、分断策動を許さない
労働者市民の連帯した力で安倍政権を打倒しよう
● 政権の横暴許す悪法は絶対にNOだ
共謀罪・秘密法を廃止せよ
● 近畿財務局職員・赤木俊夫さんの死の責任は、安倍首相夫妻、麻生財務相、佐川局長らにある
公正な調査求める署名に多数の賛同
● 20春闘勝利へ
けんり春闘の経団連抗議集会
● 安倍の検察私物化を許すな
閣議決定撤回と辞職求める署名に賛同を
● 関西生コン支部弾圧を跳ね返せ
経営者、右翼そして警察などの一体化した労組破壊の実態を暴露した新刊本の紹介
● コロナショックと世界恐慌
● せ ん り ゅ う
● 複眼単眼 / 緊急事態宣言と改憲
「コロナ自粛」強要、分断策動を許さない
労働者市民の連帯した力で安倍政権を打倒しよう
決定的な政権の初動ミス
安倍政権は、4月7日、新型インフルエンザ特措法による「緊急事態宣言」を発した。だが、早くから、ウイルス蔓延の指摘があったにもかかわらず、オリンピック「延期」決定までは、極力その危険性を見せまいとしてきたのがこの政権だった。小池都知事も、政府とまったく同様の姿勢に終始した。WHOの言う「テスト、テスト、テスト」という基本中の基本を真っ向から無視し、感染の有無を明らかにするという最低限の対処すら数か月もの間あえてやらずにきた。その結果は、当然にも国中にウイルスが拡散することになってしまった。安倍政権は、感染症蔓延を阻止するという最も大切な初動対応で致命的な失敗を犯したのである。様々な悪事を重ねてきた安倍政権であるが、なにより今回の事態は歴史に残る的な大失政、大悪政となったのである。
初期対応の失敗により、コロナウイルスの感染者・死者の激増をみて、今度は、あわてて、「緊急事態宣言」をおこなった。それも予算の出し惜しみなどで、営業自粛の効果は著しく縮減されるなど内容に問題があるものだ。なにより検査数の制限などによる感染者数の不明など基礎的な情報を隠しながら、政府への信頼が欠如したままで、人びとに、「接触8割削減」の「協力を要請」するなど本末転倒の姿勢である。まして、この悲劇的な事態を利用しての改憲策動強化など、安倍政権の強権政治は決して許されるものではない。
反撃へのさまざまな行動
4月9日、首相官邸前で「緊急事態宣言に異議あり、改憲利用とんでもない!緊急行動」が闘われた。この取り組みは、市民憲法調査会、日本山妙法寺、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくりだす宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会などのよびかけによるもので、緊急かつコロナ「自粛」ムードにもかかわらず、一六〇人余りが駆け付けた。集会では、主催者を代表して許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さん、そして日本山妙法寺の武田隆雄さん、九条の会事務局長の小森陽一さん、全国一般労働組合南部の渡辺学さん、キリスト教協議会総幹事の金性済(キム・ソンジェ)さん、憲法会議の高橋信一さん、憲法生かす会の星野芳久さんたちからスピーチがおこなわれた 最後に、司会の菱山菜穂子さんが「4・9官邸前緊急行動での市民の要求」を読み上げた。それは「この宣言の発令は日本国憲法が定める基本的人権の重大な侵害にあたる恐れがあるだけでなく、新型コロナウィルス対策に関しても極めて重要な問題を含むものであり、私たち市民は主権者としての立場から厳重に異議を申し立てます」「信頼できない政権の下で、私たち市民が危機対応を求められるのは最大の不幸です。ドイツのメルケル首相を少しは見習ってはどうでしょう。モリカケはじめ偽造・ねつ造・隠蔽、違憲・違法・脱法、権力私物化、強権・暴走の安倍政権の責任は重大です。さらに、この期に及んでなお、緊急事態対策に名を借りて自己の政治的野心のための改憲策動を進める安倍首相の改憲推進発言は許されません。私たちはコロナ対策に市民がものを言えない空気を作る政治に反対し、安倍政権の責任を糾弾し、安倍政権の即時退陣を求めます。
市民は安倍政権の分断策動に乗せられるな! 市民は連帯して抵抗しよう、前進しよう!」とアピールしている。
また、すでに3月24日には、官製ワーキングプア研究会・自立生活サポートセンターもやい・首都圏青年ユニオン・女性ユニオン東京など貧困問題を解決するために活動する団体によりに「新型コロナ災害緊急アクション」が結成され活動している。
連帯した力で闘おう
犠牲は社会的弱者に押し付けられている。コロナ禍は人々に一様にかぶさってくるのではない。現在のところ世界最大の感染国となったアメリカでは、黒人、ヒスパニックの感染者、死者の比率が異常に大きいのは貧富の格差の表れだと指摘されている。コロナ災害はさまざまな分野に及んでいる。こうした傾向は世界全体にひろがっている。
コロナウイルスの世界的規模での蔓延は、階級、民族、人種、性差など各種矛盾の急激な激化をもたらしている。犠牲を受ける人々はいっそう生きにくくなっている。生きるためには、みずから要求を掲げて、闘いに立ち上がる以外にない。世界各地で、民衆の自主的な運動をおこし、それらの国際主義的な連帯した力を作り出していかなければならない。なにより、安倍政治をやめさせ、あたらしい政治の展望を切り拓こう。
政権の横暴許す悪法は絶対にNOだ
共謀罪・秘密法を廃止せよ
4月6日、衆議院議院第2議員会館前で「共謀罪廃止!秘密法廃止!
4・6「12・6 4・6を忘れない6日行動」(共催=共謀罪NO!実行委、「秘密保護法」廃止へ!実行委)が開かれた。コロナ状況にもかかわらず、30名余が参加した。
この4月6日は、2017年、安倍政権が戦争する国造りの一環としての共謀罪法案が衆議院法務委員会で審議入りした日だ(5月23日衆議院本会議で強行採決、参議院では法務委員会の決議を省略して6月15日本会議で強行採決)。政権の暴挙は決して許されない。 しかし共謀罪制定から3年になるが、いまだ一度も適用されていない。多くの人々、団体の反対の声が大きいからだ。
集会では、主催者を代表して、岩崎貞明さん(日本マスコミ文化情報労組会議)があいさつ。4月6日は共謀罪にとって仏教でいうところの祥月命日にあたるといえる。安倍政権はコロナウイルスの蔓延を理由に「緊急事態宣言」を今日明日にも出そうとしている。記者会見でも安倍首相はまじめに答えることをしなかった。こうした今の政権に私たちの人権にかかわるフリーハンドを与えてはならない。政府に十分な説明責任を果たさせなければならない。
高田健さん(総がかり行動実行委員会)が発言。事態はかなり緊迫している。第一次大戦の時のスペイン風邪のような大きな災害だ。これを何とか乗り切って、被害を最小限にをとどめる私たちの手立てをやっていかなければならない。今の事態に安倍晋三が首相であることの不幸をあらためて考えざるを得ない。強権政治、権力の私物化、そうした内閣が「緊急事態宣言」を出した。その拡大解釈に抵抗していかなければならない。この事態は大変な状況でいかに最大限闘っていくのか、それには前を向いて後退するとか、正面突破で退却するとか考えなければならない。なにより私たちの運動の分断を阻止して、闘う力を強めていこう。
つづいて、中野共同プロジェクト、憲法会議、共通番号いらないネット、オリンピック災害おことわり連絡会、盗聴法に反対する市民連絡会のから発言があった。
最後に、共謀罪NO!実行員会の鈴木猛さん(国民救援会)が、今後の行動について提起した。
近畿財務局職員・赤木俊夫さんの死の責任は、安倍首相夫妻、麻生財務相、佐川局長らにある
公正な調査求める署名に多数の賛同
安倍首相夫妻がかかわる森友学園の土地売却疑惑のもみ消し・文書改ざん強いられた元財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さんは、2018年3月7日に自死した。これで、安倍首相、麻生財務相などは、立憲野党や市民団体の執拗な追及から逃げ切り事件の隠ぺいをしたと安堵したかもしれない。
しかし、首相の犯罪は隠しおおせるものではない。3月18日、赤木さんの妻は、夫・俊夫さんの手記と遺書を公表し、国と佐川宣寿元理財局長を被告とする民事訴訟を提起した。「週刊文春」3月26日号に「森友自殺〈財務省〉職員遺書全文公開
『すべて佐川局長の指示です』」が掲載された。そこには、改ざんは「佐川宣寿元財務省理財局長の指示」によるものであること、文書改ざんという公務員にとってあってはならない犯罪行為が上司の圧力によって強いられたこと、その悔しさ、無念さが伝わってくる。
そして3月27日、オンライン署名サイト「Change.org」で「私の夫、赤木俊夫がなぜ自死に追い込まれたのか。有識者によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施して下さい!」というプロジェクトを立ち上げた。
キャンペーンで赤木さんの妻は、「財務省は2018年6月4日に『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書』を発表しました。しかし、この報告書の内容は曖昧で、なぜ夫が自死に追い込まれたのか、その経緯や原因を知ることはできません」「安倍総理や麻生財務大臣は再調査はしないと仰っています。私は『この2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではないと思います』というメモを発表しましたが、それでも再調査が実施される見通しは現在のところありません。このままでは夫の死が無駄になってしまいます。そこで、有識者や専門家(弁護士、大学教授、精神科産業医など)によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施して下さい。地方自治体や民間企業では、過労自殺が発生した多くのケースにおいて、第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施しています」と言う。まさに、疑惑の当事者である安倍首相や麻生財務相が「再調査をしない」など言う資格はまったくなく、究明の対象そのものであること明らかだ。
署名の宛先は衆参両院議長と安倍晋三首相で、署名者はすでに30万に達しようとして、なお拡大している。
安倍政権の腐敗、政権私物化を象徴する森友事件を徹底追及していこう。
20春闘勝利へ
けんり春闘の経団連抗議集会
4月3日、20けんり春闘全国実行委員会は、中央総行動として経団連にたいする要求を突きつける行動を展開した。
集会は、主催者を代表して、民間中小労組懇談会の平賀雄次郎さんがあいさつ。この春闘は極めて厳しい状況で闘われている。コロナと闘い、生活と権利を守る闘いだ。労組の力こそ改善の力だ。大幅賃上げ、最賃値上げ、同一労働同一賃金、人権を守り差別・いじめに反対する課題を実現しよう。コロナ禍は一人ひとりの労働者の責任ではない。経団連は、大企業を指導して、雇用を守らせなければならず、コロナによる被害に対する負担にたいしても率先して取り組むべきだ。20春闘勝利のために、ともに団結して頑張ろう。
つづいて、全労協の渡邉洋議長が発言。この春闘では、くれぐれも健康に留意しながら闘い抜こう。コロナによる犠牲のすべてを労働者、外国人など社会的な弱者に押し付ける理不尽を絶対に許してはならない。病院関係者の命と権利をまもりぬこう。大企業には、膨大な内部留保を吐き出させなければならない。コロナ倒産などに反対する大きな課題をともに闘おう。
郵政産業労働者ユニオン、全国一般東京労組、全水道東水労、神奈川シティーユニオン、全造船関東地協、宮城合同労組、JAL争議団が闘いの報告をおこなった。
「20けんり春闘中央総行動アピール」が確認された。そこでは、「20春闘での大企業労組の賃金引き上げ交渉は、残念ながら軒並み昨年に比して低額での妥結となった。中小・零細企業で働く労働者、非正規雇用労働者、移住労働者の生きるための闘いは今本番を迎えている。声を上げることなく闘いを放棄すれば直ちに生活が成り立たなくなってしまう。公務職場で働く非常勤労働者も同様だ。かろうじて最低賃金を少し上回る賃金で働く多くの労働者、ダブルワークによって身を粉にして家族を支える労働者には『8時間働けば生活できる賃金』は最低にして不可欠な要求である」として、「私たち20けんり春闘は以下の要求を掲げて最後まで闘う」と、五点をあげた(@中小零細企業労働者、非正規労働者に生活できる大幅賃金引き上げを!、A休職・自宅待機等の労働者、フリーランスに賃金保障を100%実施すること、B経団連は新型コロナ問題に便乗した解雇、雇い止め、内定取り消しを行わせないこと。技能実習生・移住労働者の雇用と生活を保障すること。C政府は医療関係の統廃合など合理化を中止し、早急にコロナウイルス罹患者のために、医療従事者に医療資材を確保し、十分な医療体制を再構築すること、Dイベントや営業自粛に伴う損失補填を直ちに行うこと)。
最後に、参加者全員での春闘の勝利に向けて、シュプレヒコール、団結して頑張ろう、で闘い抜く決意を確認した。
安倍の検察私物化を許すな
閣議決定撤回と辞職求める署名に賛同を
安倍政権は閣僚だけでなく首相自身も真っ黒な様々な疑惑に取り囲まれ、人々の批判が強まっている。安倍政権は、少しも反省是正することなく開き直っているばかりか、検察人事に介入してのもみけし工作に走っている。
東京高等検察黒川弘務検事長を法律に違反して定年延長し、検事総長に就任させて、検察を政府の思うがままに支配しようというのだ。政権の横暴ぶりは頂点に達している。民主主義を全面否定するこうした暴挙は絶対に許されない。断固糾弾し、違法人事をやめさせなければならない。
3月24日、総がかり行動実行委員会と法律家6団体連絡会(社会文化法律センター、自由法曹団、青年法律家協会弁護士学者合同部会、日本国際法律家協会、日本反核法律家協会、日本民主法律家協会)は「東京高等検察黒川弘務検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回と黒川検事長の辞職を求め、検察庁法改正案に反対する共同声明」を発表した。共同声明は、「安倍政権は、2020年1月31日、同年2月7日に定年退官する予定であった東京高検検事長の黒川弘務氏を同年8月7日までその勤務を延長することを閣議決定しました。定年延長の狙いは稲田伸夫検事総長の後任に充てる目的であるとも指摘されています。この定年延長は、検事総長以外の検察官の定年を63歳と定める検察庁法22条に違反しており、安倍内閣が定年延長の根拠にあげる国家公務員法81条の3は検察官には適用されないとする立法当時からの一貫した政府解釈にも反しており、黒川検事長の定年延長は法的根拠を欠く違法な閣議決定に基づくもので、無効というほかありません。検察官人事に不当に介入する本件閣議決定は、独立公正であるべき検察庁の地位を侵し、ひいては刑事司法制度の独立に対する不当な介入に道をひらくものであって強く抗議します」「私たちは、憲法秩序を破壊し、法の支配を蹂躙する安倍政権に強く抗議し、黒川弘務東京高検検事長の定年延長を認める閣議決定の速やかな撤回と、黒川弘務検事長の即時辞職を求めるとともに、今般国会に提出された検察庁法改正案の撤回を求めるものです」と述べている。
「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」は、「東京高検黒川検事長の定年延長に関する
閣議決定撤回と黒川氏の辞職を求める」賛同署名を呼びかけている。
アジア諸国・民衆の共同した力で、コロナ・パンデミックに対処しよう
緊急特別シンポジウム・コロナウイルス渦とアジア防疫食品安全保障基金の構築
新型コロナウイルスの世界的蔓延を克服するためには、世界各国の協力での共同対処が必要だ。日本はとりわけアジア近隣諸国との緊密な連携を進めなければならない。
3月19日、参議院議員会館会議室で、緊急特別シンポジウム「コロナウイルス渦とアジア防疫食品安全保障基金の構築」が開かれた。主催は、国際アジア共同体学会、一帯一路日本研究センター、アジア連合大学院機構で、村山首相談話の会、日本ビジネスインテリジェンス協会、日本華人教授会議が共催団体となった。
谷口誠元国連大使は、開会あいさつで、日本は中国、韓国など東アジアの国々との協力を強め、東アジアの共同体を目指そうと述べた。公明党の伊佐進一衆議院議員(日中次世代交流委員会事務局長)、林敏潔(南京師範大学アジア学研究所長)があいさつした。
日中韓連携の道
第二部では、矢吹晋横浜市立大名誉教授が「コロナウイルス渦の国際政治経済学―日中韓連携の道」と題して発言。コロナウイルスの発生場所やその構造についてはまだわからないことがおおい。今後の課題だ。L型やS型があるという。WHOや各国の機関がともに解決していかなければならない。中国は制圧しつつあるが、とにかく世界で一日も早く解決していくことだ。イタリアなどでも感染者数が驚異的にひろがっているが、アメリカではどこまで拡大するかわからないほどだ。米中の対抗は、この事態で一層進むが、アメリカの衰退が加速している。このなかで、パンデミックだけでなく、デマ情報の拡散などインフォデミックという状況が生まれているが、しっかりと情報の分析をしなければとんでもないことになる。
非常事態への対応
つづいて、大西広慶応義塾大学経済学部教授が「非常事態への中・台・韓国型の対応をどう評価するか」と題して発言。日本政府の対応の問題点とされるものとしては、ダイヤモンド・プリンセス寄港後対応への専門家の苦言、専門家意見を聞かずに始められた小中学校全国一斉休校、中韓両国が収まりかけてからの両国からの入国制限、ヨーロッパからの入国制限も遅すぎた。そして、感染者数の過少認定問題がある。根源的には、医療体制の充実を怠ったことだ。そのどれもが「専門家の軽視」と「役所の官僚体質」が関わっている。日中とも同じ官僚体質がある。
ここでは、社会制度の問題として考えてみたい。中・台・韓はそれに日本もよく感染拡大を抑えているという評価もあり、これは「東アジアの集団主義」のおかげという意見もあり、それとも「過剰な反応」だからか。いずれにしてもイタリアの正反対の事態である。
私のゼミの中国、韓国などアジアからの留学生も本気に中国を誇りに思うようになってきているということがある。中国の「独裁体制」批判から、中国政治制度の高い制御能力の評価という変化が顕著だ。また検査体制を急遽整備できた韓国(「ドライプスルー検査」「ウォーキングスルー検査」)への称賛だ。「感染をどう防ぐか」への関心から「経済恐慌にどう対処するか」「経済活動をどう再開するか」への関心の変化がみられる。
では、感染症につよい社会システムとは何か。日本に、ふたつの考え方がある。@中国(+韓国)的な徹底した対策を評価するものとA今次感染症への対応を「過剰」と評価するものだ。後者は、致死率の低さから普通のインフルと同様に扱うべきとの考えだ。矢野邦夫・浜松医療センター病院長は「新型コロナウイルスは所詮は、単なる風邪の一種。過剰に恐れる必要はなく、守ることさえ守って、普通に生活すべき」(デイリー新潮3・17)という。しかし、それでも、もっと強力な感染症ならやはり中国(+韓国)的な対応は不可欠だ。中国の「社会」制度から学ぶべきものは、@自衛隊と人民解放軍の違い。これは国防だけない中国の軍隊の役割に関係する。A企業へのコントロールのあるなし。日本政府は学校の統制にのみ関心をよせたが、中国では企業に様様な義務を課している。B国民一致団結の精神。これは東アジアでは共通する。遠隔医療システム各社の対応も立派だし、企業もその立場に立っている。C国民の政府への信顧問題。米大手広告会社エデルマンの2018年調査では、「自国政府を信頼する」とした国民の比率が、中国84%、アラブ首長国連邦77%、インドネシア73%などとなっている。われわれは「中国人は圧故に苦しんでいる」と勝手に思っているが、実態を見極める努力が必要だ。
東京宣言の提起
つづいて、高橋五郎愛知大学名誉教授、大野芳一一帯一路促進会代表、今井敬喜健康福祉実践協会理事長、岡田充共同通信客員編集委員、坂東賢治毎日新聞論説室専門編集委員が発言した。
まとめの発言を、一帯一路日本研究センター代表の進藤榮―国際アジア共同体学会会長が、東アジア防疫食料安全保障基金設立・シルクロード都市連盟ジャパン発足にむけた「東京提言」(別掲)について述べた。そこでは、アジア経済の一体化の進展、日中関係の一層の強化、危機を機会にかえることについて強調した。
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コロナウイルス・パンデミック化への政策戦略「東京宣言」
いまコロナウイルス渦が世界を襲い続けています。世界同時株式安が展開し、リーマンショックを超える「第二の世界大恐慌」の展開すら予測させています。かつての16世紀ペストの蔓延が神聖ローマ帝国の終焉と「中世の秋」(ホイジンガ)を招来したように、21世紀コロナの蔓延がアングロアメリカ帝国の終焉と「近代の秋」を招来させ始めているかのようにさえ見えてきます。
いったい私たちは、この人類史的危機にどう対処すべきなのか。日中韓三国の産官学の総力を結集し、以下三様の政策戦略の展開を東京から発信し、広湖の賛同を求める所以です。
第一。ユーラシア太平洋を軸にしたグローバル・サプライチェーン再強化のために、一帯一路のダイナミズムを生かした「第三国市場協力」を再展開させます。そしてユーラシア大陸規模の「人ロボーナス」と「空間ボーナス」を市場・投資・通商の各領域で最大化し、「一国第一主義」を脱し、脱「新自由主義」経済社会戦略を展開します。
第二。東西の「都市」相互間の連携を軸に物流と人波と文流を進めた6世紀シルクロードの歴史のひそみに倣って、産官学三者連携によって日中韓三国シルクロード都市連盟を構築します。共同事務局設置と共同事業の企画推進によって、三国間の歴史問題を克服し、インバウンド観光文化・地域新産業の創出推進と次世代育成を新たに企画拡延し、「大リセッション」の波を乗り切ります。「国家」を超えて「都市」が連携して危機を反転させる仕組みです。
第三。国家間の対立抗争を潜在的に生む近代軍事安全保障戦略から脱却し、防疫・防災を重視し、食料安全・エネルギーと持続可能な発展に向けた「人間安全保障」戦略への転換を進めます。そのために日中韓三国は、現存国防軍事予算の2割を「人間安全保障予算(基金)」(仮題)に組み替え、防疫防災食品部門とグリーン産業部門と新先端技術・文化協力部門に振り向け、SDG実現のための日中韓・人間安全保障プログラムを共同推進します。
それを、東アジア・ヒューマンセキュリティーシステムの構築と約言できましょう。
関西生コン支部弾圧を跳ね返せ
経営者、右翼そして警察などの一体化した労組破壊の実態を暴露した新刊本の紹介
最新刊の『労働組合やめろって警察に言われたんだけどそれってどうなの?』(旬報社
本体1300円)で、連帯ユニオン関西生コン支部への刑事弾圧を詳しく且つ力強くその法律違反の実態を明らかにしている。
一年前に出された『ストライキしたら逮捕されまくったけどそれってどうなの?』では、レイシトと大阪広域協組(大阪広域生コンクリート協同組合)が、労働争議の現場に同時にあらわれた異常さに驚かされたものだが、今度は、警察そのものが経営者に代わって、組合脱退や組合潰しを実行している事が暴露されている。でっち上げられた犯罪が、裁判の過程を通じてねつ造されたものであることが解明される。「警察のストーリーを検証する―私もだまされた」の章では、フジタ事件、宇部三菱SS・中央大阪生コン事件、加茂生コン事件などが分析されている。「なぜ私たちは関西生コンを支援するのか」の章には、「労働基本権保障への挑戦―労働運動への権力弾圧」(宮里邦雄)、「この労働組合つぶしは何を意味するか―関西生コン支部弾圧の現場から」(熊沢誠)、「労働運動への共謀罪型弾圧に対して国際的なネットワークで反撃する!」(海渡雄一)と弁護士、労働法学者の説得力ある解明がつづき、また、「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない―関西生コン事件についての労働法学会有志声明」、「共謀罪のリハーサル? ストライキしたら逮捕!―全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部弾圧事件 弁護士共同アピール」、「民主主義の危機です! 連帯ユニオン関生支部への大弾圧に反対する自治体議員の声明」などの資料もあり、また月刊『世界』(岩波書店)に三ヶ月にわたって掲載された鎌田慧さんと竹信三恵子さんによる特別対談「関西生コン弾圧はなぜ起きたのか? 希薄化する働く人の権利意識」など迫力満点の本だ。
戦後労働運動の中で、三井三池闘争は60年安保闘争と結合し、その後の坑内炭塵爆発のCO闘争へと継承された。国鉄の分割民営化反対闘争は、中曽根政権の行革合理化や日米同盟強化・日本の不沈空母化制作に反対する闘いとむすびつき、清算事業団闘争が闘われた。今回の関西生コン支部への大弾圧攻撃は、田んぼの中の一本煙突のように奮闘してきた闘う労組への弾圧だ。これからは、土筆からミニ煙突を全国に何本もおっ立ててゆけるかの闘いであり、安倍・維新による改憲策動との闘いとなる。コロナ・パニックのなかで強権政治安倍に与えてはならない。
今後の闘いは、助け合いとくに弱者とともにやってゆく者でなければならない。労働運動と市民運動の正念場である。 (河田良治)
コロナショックと世界恐慌
関 考一
中国武漢に端を発した新型コロナウイルス感染症は今や全世界に拡散しWHOは3月12日にパンデミック(ある感染症の顕著な感染や死亡被害が著しい事態を想定した世界的な流行)と表明した。
当初の中国及び日本・EU・アメリカは初動を誤り国内・域内の感染拡大に直面している。
感染の蔓延を防ぐため学校の一斉休校・外出・スポーツ・イベントの自粛やEU・アメリカなどの非常事態宣言などが相次ぎ実体経済は急激に悪化している。
感染蔓延はイタリアの医療崩壊、スペイン・フランス・アメリカなど全世界に緊急事態を引き起こしている。
各国政権による外出と地域外や国外からの出入りを禁止する措置は、日常の消費活動と労働市場を麻痺状態に陥れている。
@深刻化する雇用危機
世界中に雇用不安が広がっている。
感染拡大によって世界各国に出入国制限の動きが広がり、非常事態宣言や自粛要請により、旅行や飲食需要が消滅し、ホテル・レジャー、運輸業や小売業は実質休業に近い状態が拡大している。これらの三業種の雇用者数は日米欧で全雇用者の4分の1に相当する1億人に上りGDPに占める比率の13%に対し雇用面における存在は大きい。
また製造業においても中国とのサプライチェーン(部品供給網)の寸断により自動車産業など生産活動を停止する工場も出ている。
欧米では臨時休業を余儀なくされた飲食店やホテルではレイオフ(一時帰休)が始まっておりインドでも約13億人を対象に21日間の外出禁止措置が出された。
これにより、世界人口の3人に1人余りが新型ウイルスの流行による外出制限・労働制限を受けている状態となった。
今後、外出禁止や経済活動への自粛・規制が数ヶ月に及び長期化すれば、労働者の雇用は危険な状態にさらされることになる。
A動揺する株式・金融市場
3月12日の米株式市場は1987年10月のブラックマンデー以来の暴落となった。
世界の株価の時価総額は過去最高を記録した1月20日の88兆ドルに比べ、3月13日には約69兆ドルへと約22%減少した。
日本株も1月半ばに始まったコロナショックで日経平均は、わずか2カ月で29%の暴落となった。下落スピードの速さ、下落率の大きさにおいて、類のない暴落となっている。
米トランプ大統領と安倍首相はともに就任以来、「株価の高騰」を自らの功績としてきただけに、大きなダメージを受けており挽回するために躍起となっている。
米連邦準備理事会(FRB)は以前よりトランプ大統領から株価上昇のための利下げを要求されてきたが、3月16日緊急に10%の大幅利下げに踏み切った。政策金利は、2008年の金融危機以来のゼロ金利とした。また米国債などを無制限に購入する量的緩和政策を復活させただけなく、これまで対象としていなかった社債や住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れまで決めた。これでアメリカは利下げの弾を打ち尽くした。
更にインフレ懸念を恐れて縮小してきた金融緩和を制限なしに拡張する極端な政策を取り始めた。一方、現在の政策金利がマイナス0・1%の日銀は、利下げは出来ず、年6兆円としている上場投資信託(ETF)の購入目標額を倍増し12兆円とする株の爆買い始めたほか、大企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)・社債の購入決めた。
その後日米の株式市場は値上がりする日もあったが、悪化する実態経済を反映し一進一退を繰り返しており、その効果は疑問視されている。
B恐慌の勃発に怯える資本主義
世界的に実態経済の麻痺が継続すれば、多くの家計や企業はいずれ資金が枯渇しそうだ。
3/26米ジョセフ・スティグリッツ教授(ノーベル経済学賞受賞)が、ラジオ局WCBSで、コロナショックの特殊性を説明し、これが大恐慌より険しいものになる可能性を警告している。
「米市民のとても大きな割合が、銀行預金を500ドル(約55000円)も持っておらず、給料(週給が多い)を1回もらえなければ食べ物を買えず、家賃も払えない。米国の失業保険制度は先進国の中でもっともお粗末で、多くの人が対象外とされている。」対策を迫られたトランプ政権は過去最大の2兆ドル(約220兆円)の緊急経済対策を打ち出し、家計への現金給付や中小企業が雇用と給与を維持すれば返済の免除をする。
しかし多くは経営危機に陥った航空大手ボーイング社などへの資金供給や社債の購入など大企業の救済に振り向けられる。
問題はコロナの蔓延が長期化した場合だ。緊急の延命策は数ヶ月の有効期限しかない。
すでにコロナ危機以前から世界中の金融機関や投資家が保有するグローバル金融資産(株式、債券、非金融部門に対する融資)の対国内総生産(GDP)比率が17年末には340%を超えており実体経済からかけ離れた巨大なバブルが膨張を続けていた。大企業の負債を一時的に肩代わりしても大半の企業の多くは日々の売り上げが短期で回復しなければたちまち資金繰りに行き詰まり大量倒産が現実化する。
そうなれば資金を貸し出していた銀行など世界の金融システム全般へ波及する事態になる。マルクスは通貨の兌換性の下で「信用がゆらげばーそしてそういう局面は近代産業の循環ではつねに必然的に出現するーたちまちいっさいの物的な富が、現実ににわかに貨幣すなわち金銀に転化させられなければならなくなる。それは常軌を逸した要求だとはいえ、この要求は制度そのものから必然的に出てくるのである。」(資本論 第三五章 貴金属と為替相場)と指摘したが、不換制でも「資本の還流」が停滞し信用主義の基盤を失えば「Cash
is King(現金は王様)」=流動性の枯渇が全面化する。
C世界大恐慌の再来とは
私たちが直面している危機は、これまでの不況やリーマンショック級の再来ではなく、1929年米株式市場の大暴落を契機に始まった世界大恐慌に匹敵する規模の壊滅的な経済危機なのである。
世界大恐慌は、1930年代後半まで10年近く続いた。それは20世紀の中で最も長く、最も深く、最も広範な大不況となった。 世界大恐慌による打撃は次のようになっている(『世界同時デフレ』山田伸二著、東洋経済新報社)
・国民総生産(GDP)…ピーク時から半減(1929年 100→1933年 53・6)
・生産指数…ピーク時の半減(1929年 100→1932年 54)
・卸売物価指数…3割の下落(1929年 100→1933年 69・2)
・失業者数…最大1283万人(1933年)
・失業率…最大24・9%(1933年)
・金融機関…銀行倒産件数6000行
・株価…ピーク時から89・2%の下落。
街には失業者があふれ当時の救済金では食費で無くなり、家賃が払えず家族ごとホームレスになる人々が大量に発生した。
ちなみに現在の日本に置き換えると労働者数は、就業者数6687万人(2020年1月、労働力調査より、以下同)、雇用者数6017万人、完全失業者数は159万人。単純に失業率が25%になれば、日本の完全失業者数は1671万人となり4人に一人が仕事を失うことになる。
それでは何故「恐慌」は引き起こされるのか考えていきたい。
D恐慌の根本的要因=過剰生産
マルクスは、恐慌を象徴的にも「社会的疫病=過剰生産の疫病」にたとえ、過剰となった資本価値を暴力的に破壊することであるとした。
「商業恐慌のときには、既製の生産物ばかりか、すでにはたらいている生産力までも、その大部分が、周期的に破壊される。恐慌期には、これまでのどの時代の目にも不条理とおもわれたであろう社会的疫病―すなわち過剰生産の疫病が、発生する。社会は突然一時的な野蛮状態につきもどされたことに気づく。なにか飢饉が、なにか全般的な破壊戦争が、社会からいっさいの生活資料の供給を断ったかのように見える。工業も商業も、破壊されたように見える。いったいなぜか。あまりにもおおくの生活資料、あまりにも多くの工業、あまりにも多くの商業を、社会がもっているからである。」(共産党宣言 ブルジョアとプロレタリア) 恐慌の様々な諸現象としては株価の暴落・多くの企業・銀行の倒産・信用制度の崩壊・失業者の増大などが発生するが、必ず「過剰生産」がその根底に存在するということである。
恐慌とは「過剰生産」=「巨大な不均衡」を暴力的に解消し資本主義的生産の総過程を再更新するプロセスなのである。
E恐慌の究極的原因=生産と消費の矛盾
マルクスは恐慌発生の根源について次のように述べている。
「他方、労働者の消費能力は、一方では労賃の諸法則によって制限されており、また一方では、労働者は資本家階級のために利潤をあげるように充用されるかぎりでしか充用されないということによって制限されている。すべての現実の恐慌の究極の原因は、やはり、資本主義的生産の衝動に対比しての大衆の窮乏と消費制限なのであって、この衝動は、まるでただ社会の絶対的消費能力だけが生産力の限界をなしているかのように生産力を発展させようとするのである。」(資本論 第三〇章貨幣資本と現実資本T)
資本主義的生産はより大きな剰余価値の創造を目指して、労働者の消費を限られた限界に押しとどめ、いかなる制限も乗り越えて生産諸力を発展させようとする衝動に駆られている。ここに過剰生産と恐慌発生の根源があるのであって決して中央銀行の金融政策の誤りやバブルの発生など個々の経済現象に解消出来るものではない。
F過剰生産の深奥の動因=コンピューター・ITによる労働手段の革命的変革
T 労働手段とは何か。
過剰生産こそ資本主義の下で恐慌へ駆り立てる要因であるが、今日の過剰生産の背景にはコンピューターという革命的な新技術の集積の下に、IT技術と機械を高度に融合させたコンピューター制御生産体制が主流となったことがある。これは従来の機械を越える質的に新しい労働手段の驚異的な発展である。マルクスによれば「労働手段とは、労働者によって彼と労働対象のあいだに入れられてこの対象への彼の働きかけの伝導体として彼のために役立つ物またはいろいろの物の複合体である。」(資本論 第五章労働過程と価値増殖過程)「なにがつくられるかではなく、どのようにして、どんな労働手段でつくられるかが、いろいろな経済的時代を区別するのである。労働手段は人間の労働力の発達の測度器であるだけでなく、労働がそのなかで行われる社会的諸関係の表示器でもある。」(同前)
「……機構のこの両部分(原動機と伝導機構)は、ただ道具機に運動を伝えるためにあるだけで、これによって道具機は労働対象をつかまえて目的に応じてそれを変化させるのである。機械のこの部分、道具機こそは、産業革命が十八世紀にそこから出発するものである。」(同前)
またマルクスは動力自体の発展に着目しつつも「それ(蒸気機関)は、どんな産業革命をも呼び起こさなかった。むしろ反対に、道具機の創造こそ蒸気機関の革命を必然的にしたのである。」(同前)として道具機=機械こそが時代を隔絶する爆発的資本主義的生産の根底にあることを解明した。 (次号につづく)
せ ん り ゅ う
疫病神の尻にのっかるでかい顔
人を見ぬ金許りみる法案
逃げ水のように大臣誤答弁
嘘の中で生きる羽目なり首相の座
運動のありてその声世の光
立正安国を捨て公明党
アベの居る滅びに至る道広し
ゝ 史
2020年4月
複眼単眼
緊急事態宣言と改憲
新型コロナウィルスの感染拡大の危機の中でも、自民党など改憲派は動揺を重ねながらも改憲の策動を続けていることが注目される。
前号で紹介した自民党の2020年度大会は、3月17日に自民党両院議員総会を開催することで、大会に代わって運動方針を採択した。
今年の運動方針の特徴は改憲を前面に打ち出し、草の根から改憲運動を強める決意を鮮明にしたところにある。
総会の冒頭、安倍首相は「憲法改正も含め、運動方針にのっとって一致結束して全力を尽くしていきたい」と述べた。改憲に関する言及は少なかったが、その意思は明確に示された。
しかし、新型コロナ感染問題が緊急の課題となっている時に、この運動方針は情勢にマッチしないという指摘は各方面から起こった。延期した日から数えても10日あまりある期間に、この修正ができなかったはずはないとの指摘だ。改憲を前面に出した運動方針の修正に手を付けなかったことに、現在の自民党の本音が表れているといわれても仕方がない。
批判を受けて自民党の二階幹事長は、「憲法改正について、「このような時に『憲法改正がどうだこうだ』と持ち出すのは適当でなく、どさくさの感じがある。もう少し落ち着いてから対応すべきことではないか。じっくり対応していけばいい」と述べた。
コロナウィルス問題が持ち上がった今年初め、自民党の幹部たちから相次いで「憲法に緊急事態条項を新設する」自民党改憲案を正当化する発言が起こった。「惨事便乗型改憲論」との批判の中で、いったんは後景に下がったかに見えた、この改憲論議がまたぞろ頭をもたげてきていることは見逃せない。
3日、公明党の斉藤幹事長は記者会見で「(緊急事態条項は)今後の憲法改正の大きなテーマになりうる」と述べた。
2月段階では北側公明党憲法調査会長は「(コロナウィルスの問題の」検証作業をする中で、改善した方がいい部分もあるかもしれないが、当然、法律の改正でやっていくべきで、憲法に緊急事態条項を入れても抽象的な規定しか書けない」と述べ、否定的な考えを示していた。
山口代表は3月はじめ新型コロナウイルス感染の拡大を受け、自民党内で憲法改正による「緊急事態条項」創設の必要性を訴える意見が出ていることに対して、「現行法でできる限りのことをやるのがまず重要だ。それで対応できない時には立法的な措置を取る必要があるかを検討するのが議論の順序だ」と述べていた。
3日の斉藤発言は公明党が従来の慎重論の一線を越えて、大きく自民党の緊急事態条項改憲に接近したことを意味する。
こうした動きの中で、衆院憲法審査会の与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民党)が、野党筆頭の山花郁夫氏(立憲民主)に新型コロナウィルス感染に伴う緊急事態をテーマに4月9日に憲法審査会を開くよう申し入れた。
山花氏は即答しなかったが、改憲派の動きは油断も隙もない。
新型コロナウィルス問題でいま必要なことは、改憲論議ではない。憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」に従って、即刻、有効な施策を実施することではないか。
一方、野党の一部も含めた国会議員らでつくる新憲法制定議員同盟は4月28日に予定していた改憲推進大会を延期すると発表した。安倍首相が来賓として参加を予定していた。 (T)