人民新報 ・ 第1385号<統合478(2020年5月15日)
  
                  目次

● コロナ禍の時期に安倍政権が存在する大惨事

        市民・野党は力を総結集して安倍政権を打倒しよう


● 第91回メーデー

        働く者の団結の力で生活と権利、平和を守れ


● 共謀罪廃止! 秘密保護法廃止!

        MIC議長の南彰さんが講演   「コロナ問題 問われるメディアのあり方」


● 労働者への犠牲のしわ寄せ許さない

        全国ユニオンが厚労省へ緊急申し入れ


● コロナショックと世界恐慌 


● せんりゅう


● 複眼単眼  /  敵は官邸にあり






コロナ禍の時期に安倍政権が存在する大惨事

        
市民・野党は力を総結集して安倍政権を打倒しよう

暴走・迷走する安倍政権

 5月5日、政府は、新型コロナウイルス感染症対緊急事態宣言について、31日まで大幅延長することを決定した。安倍首相は記者会見で「当初予定をしておりました緊急事態宣言について、1か月で終息する、終えるということを目指しておりましたが、残念ながら1か月延長するに至ったこと、内閣総理大臣として責任を痛感しております。それを実現できなかったことについて改めて、おわびを申し上げたいと思います」と述べた。安倍のオリンピック開催強行を優先させた当初の対応の遅れ、その後の後手後手にまわった対策は、この間のモリカケ、桜を見る会、検察人事への介入などのあくどい政治に輪をかけた最大の失策・悪政である。新型コロナウイルスなどへの対策はどこの政府もはじめから十分に対応できるわけではないが、安倍政権のとった手法は国外からも多くの批判が寄せられるようなひどいものであった。なにより、感染病対策の基本は感染者を早期に発見・確定することであり、それを抜きにしての「自粛強要」は百害あって一利なしだ。それも補償抜きで犠牲を一方的に弱者にしわ寄せするものであることに怒りが広がった。
 「医療崩壊の危機」が言われるが、その原因を作り出したのは、歴代自民党政権による医療福祉の切り捨て政策とりわけ小泉純一郎、竹中平蔵らが強行した新自由主義政策によるものだ。一方で日米軍事同盟強化による軍事費増強とトランプ政権の言うがままに高額な米国製武器の大量購入が進んだ。
 いまアメリカのコロナ状況は深刻さをましている。世界一の軍事力を誇り、覇権主義と強権政治を推し進め「戦時大統領」を自任するトランプは、感染の蔓延と死者数の激増に対処できないばかりか、逆に惨状を拡大させるばかりだ。共同して新型コロナウイルスに対処しないかぎり事態の好転は展望できない。にもかかわらず、トランプは、国際間の対立を激化させ、また米国内の階級的人種的な亀裂を拡大させている。
 今求められているのは、拡大する感染症を抑えることであり、そのためには予算、人員を大量に投入するしかない。韓国は軍事を削って新型コロナ対策に充てるが、日本もまたアメリカなどもそのように予算の大幅な組み換えが必要だ。なにが第一に必要なのか。それは多くの人々の命と生活だ。「公共の福祉」とはこのことである。だが、安倍政権は、戦争する国づくりの道を変えようとしていない。人々は生きるために、支援金、雇用保障をはじめとして切実なさまざまな当然の要求を大胆に提出し、連帯した実力で勝ち取っていかなければならない。
 ところが安倍首相は、現在の新型コロナウイルスの蔓延という危機的状況に乗じて、緊急事態宣言を発したことにつづいて、9条に自衛隊を明記させるとともに、憲法に緊急事態条項を入れるなどを提起し、国会憲法審議会を動かそうという。だが、緊急事態宣言と緊急事態条項の違いは大きい。決定的に違うのが国会による統制であるが、緊急事態宣言が国会への報告が義務付けられているのに、緊急事態条項は、強い私権制限を含む政令が、国会とは関係なく政府が出せることだ。それに、どのような状況が緊急事態に当たるのかも政府が勝手に決められるのである。これでは安倍のような反動政治家がいかようにもできる独裁体制をみちびくことになる。安倍の憲法の基本原則に逆行する政治が人々を苦しめている。求められているのは、主権在民、基本的人権の尊重、平和主義という日本国憲法の原則であり、それを生かすことだ。

憲法集会で全国へアピール

 安倍政権の対応の失敗による新型コロナウイルス感染症の拡大によって、例年の5・3憲法集会は大集会方式での開催は中止となり、国会正門前での小集会と各界からのスピーチのインターネット中継となった。午後1時からの集会(平和といのちと人権を!5・3憲法集会実行委員会、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクション)では、はじめに高田健さんが開会あいさつ。73回目の憲法公布記念日は、コロナウイルスという目に見えない危険と安倍政権という人災の中で迎えた。安倍首相は、外交日程やオリンピック開催にこだわった初動体制の遅れなど枚挙にいとまのないほどの失政を続けた。政府は市民に対し繰り返し自粛をもとめたが、それにともなうべき不可欠な補償などの政策は極めて不十分だ。また社会の中で一方的な同調圧力がつよまり集会の自由など憲法の保障する基本的人権の侵害などさまざまなことがおきていることも見逃せない。許しがたいことはこうした重大な事態の中で安倍政権があいかわらず改憲の動きをつよめていることだ。安倍首相は国会憲法審査委員会を動かそうとしているが本当に事態を解決したいならそんなことをしている場合ではない。安倍首相がもくろんでいる憲法9条に自衛隊を書き込み違憲の戦争法を合憲化し自衛隊が世界的規模で米軍とともに軍事作戦を行うことを可能にする改憲はなんの正当性もない暴挙だ。いま憲法9条は輝きをましている。世界最大の軍事大国であるアメリカでは、この災禍にたいし、トランプ政権はなんらまともな対応ができていない。軍事力によって平和が実現しないことはこのことによっても明らかだ。一方で韓国は政府の果断な政策ですでに国内で感染が急速な終息にむかっている。文在寅政権は緊急災害支援金の財源確保のためにF35戦闘機やイージス艦戦闘システムの購入など国防費を財源に充てることを閣議決定した。安倍政権はトランプの道か文在寅の道かどちらを選ぶのか。コロナの災禍は全世界の人々の努力でおそかれはやかれ沈静化にむかうだろうが、しかしそのあとにくる社会が戦争をする国であることを断じて許すわけにはいかない。そのためにも社会に蔓延する同調圧力に抗し、物言わぬ市民になることを拒否し、憲法の基本的人権を守り生かし、お互いに創意工夫して戦後最悪の安倍政権と闘い、近い将来必ず政治を変えるために奮闘しなくてはならない。憲法施行記念日の11月3日には、もしコロナ禍が終息しているなら大規模な集会を勝ち取り安倍政権の改憲発議反対のノロシをあげていきたい。また、遠からず行われる衆議院議員総選挙では立憲野党と市民は協力して全国各地の小選挙区に統一候補を擁立して勝利しよう。安倍政権を倒して安倍改憲を阻止するか、安倍改憲を阻止して安倍政権を打倒するかという、壮大な政治変革の展望が私たちの前にある。全国ののみなさん、ともに頑張ろう。
 つづいて、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党、そして多数の国会議員からのメッセージが紹介された。
 各界からは、浅倉むつ子さん(安全保障関連法案に反対する学者の会・早稲田大学名誉教授) 、稲正樹さん(憲法学者・国際基督教大学教授)、堀潤さん(ジャーナリスト)が発言し、武藤類子さん(福島原発告訴団団長)、青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)、古今亭菊千代さん(芸人9条の会・噺家)、山口二郎さん(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合・法政大学名誉教授)からのメッセージが読み上げられた。
 行動提起を、小田川義和さん(戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター)が、これから毎月19日の国会前行動などを取り組み、11月3日には大規模集会を開き、各地での街頭宣伝などの取り組みを強化し、安倍政権の改憲を許さない闘いをともに進めていこう、と述べた。
 最後に、司会を行った菱山南帆子さんが集会宣言(別掲)を読み上げ、これからの運動の前進と拡大をアピールした。

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  宣 言

      2020平和といのちと人権を!5・3憲法集会実行委員会

 いま、新型コロナという目に見えないウィルスが私たちの社会を覆っています。

 4月7日、安倍政権によって7都府県に、次いで16日、全都道府県に「緊急事態宣言」が発令されました。しかし、いまなお新型コロナウィルスの感染拡大は止んでおりません。ひとびとはそれぞれの場でかけがえのない「いのちの確保」に力をつくしています。

 本日、5月3日は73年目の日本国憲法施行記念日です。

 日本の市民運動は長年にわたって、この日に記念集会を開催し、憲法を守り生かす決意を固めあってきました。とりわけ2015年からは文字通りの「総がかり行動」として、大規模な集会が開催され、反戦・平和・改憲反対の市民運動の支柱となってきました。

 私たちはこの新型コロナウィルス感染の拡大の中で、今回、東京臨海防災公園で予定した大集会の中止を決断しました。しかし、私たちは、この運動の伝統を受け継ぎ、本日、国会正門前からのインターネットによる中継の実施によって全国の市民の皆さんに私たちの思いを発信します。

 2017年5月3日、安倍首相は憲法9条の条文は残して、新たに自衛隊の根拠規定を書き込むという新しい改憲案を提案しました。これは2015年に強行した「戦争法」による集団的自衛権の行使を合憲化し、日本が米軍とともに世界のいたるところで戦争ができる国となることをめざすものです。

 以来、全国の市民運動は立憲野党と連携し、安倍首相の改憲の企てに反対し、3年にわたって、改憲発議を阻止してきました。安倍首相は自らの任期の2021年9月までに改憲を実現しようと画策しています。しかし安倍首相に残された期限は極めてタイトです。追い詰められているのは安倍首相の側にほかなりません。

 安倍首相と与党改憲派は緊急事態宣言発令の最中に、まったく筋違いの緊急事態条項改憲の必要性まで広言し、自民党の改憲4項目を正当化しながら、憲法審査会の始動を狙っています。これは許しがたい火事場泥棒的な仕業です。

 この未曽有のコロナ危機に際して、強権的で独善的な安倍政権の施策は失策を繰り返し、有効な対処ができていません。にもかかわらず、政府や一部メディアからは、過剰な同調圧力が繰り返されています。

 私たちはこうした危険な安倍政権の下であるからこそ、緊急事態宣言のさ中でも平和・人権・民主主義という憲法の基本原理を守り、生かす課題を大切にします。いまこそ日本国憲法の真価が問われています。

 すべての市民それぞれが可能なかぎり知恵を絞って行動し、「物言わぬ市民」になることを拒否しましょう。そして、このコロナ禍が終息していたら、今年の11月3日の憲法公布記念日にはより大規模な憲法集会を必ず実現しましょう。全国の市民は連帯し、安倍改憲発議を阻止しましょう。権力私物化、改憲暴走の安倍政権を倒し、政治を変えましょう。ここにこそ、私たちの希望があります。

 以上、私たちは2020年の憲法記念日にあたり、国会議事堂の正門前から、宣言します。

2020年5月3日


第91回メーデー

        
 働く者の団結の力で生活と権利、平和を守れ

 今年の第91回メーデーは新型コロナウイルスの蔓延という状況下で行われた。例年、日比谷公園で行われてきた全労協などによる日比谷メーデーは「緊急事態宣言」が発出されたことにより都施設利用が休止され、また感染防止の観点から、全水道会館での代表者参加の集会、その後の水道橋駅周辺でのメーデーアッピール行動(主にスタンディング)が行われた。

 集会では、はじめに平賀雄次郎中小民間労組懇談会代表が開会を宣言。世界に20年遅れて上野公園で開かれた日本のメーデーは、ことし100年になる。そして、戦争と弾圧で中断の10年があった。その期間、私たちの権利が奪われただけでなく、アジアへの侵略戦争で多大な被害と苦痛を与えたことを今一度深い反省をもって思い返す必要がある。メーデーは国際連帯の日でもある。今回はコロナウイルスのなかで、分裂・孤立化・自己責任を強いられるきびしい状況に追い込まれている。歴史的に見ればこうした状況は差別分断を拡大させる。わたしたちは、命をまもり生活を守り権利を守る闘いを強めていこう。労働者が社会的連帯を失わないことが一番大切だ。今年のメーデーは数は少ないが気持ちは全世界の労働者と一緒だ。このことを皆さんと一緒に確認しながら日比谷メーデーの開会を宣言したい。
 主催者を代表して、国鉄労働組合東京地方本部の鎌田博一委員長があいさつ。新型コロナウイルス感染は、全世界に瞬く間に拡がり、日本国内においても感染拡大の現状は、依然として増加傾向にある。冒頭、新型コロナウイルス感染により亡くなられた多くの方々に対し、心から哀悼の意を表し、あわせて闘病されておられる方々の一日も早く快復を祈りたい。安倍政権は、感染拡大防止策として「改正特別措置法」に基づく「緊急事態宣言」を全都道府県に発令したが、外出の自粛要請の継続をはじめ施設や営業の休止と休業の要請・指示、物資の強制収用など私権制限を伴う措置も取られることになるが、それは、抑圧的・強権的であってはならない。医療従事者は院内感染の不安と闘いながら日々献身的に感染者と向き合っている。医療従事者に感謝するとともに、早急な財政・人的支援を何よりも求めていきたい。同時に物流・介護・食品関係・清掃・公務労働などの労働者も緊迫した労働現場で奮闘していることを忘れてはならない。ウイルス感染を口実とした解雇・内定取り消し・賃金カットが横行し、補償の伴わない営業自粛が強いられる中、雇用と休業補償、中小企業・個人事業主への財政支援が急務だ。私たちは、労働者・市民の生活権を守るためにも、国や自治体が責任を持つ支援体制の確立に向けて全力を挙げなければならない。この緊迫した状況下においても、安倍首相は自民党の改憲4項目に触れて、改憲論議を呼びかけているが、全人類が新型コロナウイルスに立ち向かい、「国民の命と社会を守る」ことに全力を尽くしているにもかかわらず、改憲策動を推し進める暴挙は断じて許されるものではない。同時に、自衛隊の中東派遣をはじめ過去最高の軍事費予算、沖縄県民の民意を踏みにじる辺野古新基地建設の推進や南西諸島への自衛隊の基地化、福島第一原発事故の収束ができないままに帰還政策を推し進め、原発再稼働の強行など、さらなる反動政治を強めている。極めて反動的な安倍政権の政治路線と改憲策動に対し、護憲・平和と民主主義擁護、安心・安定した社会の実現と安倍政権早期退陣に向け、広範な勢力のさらなる拡大、市民・立憲野党との共闘・連携を図る中で、より壮大な闘いとして構築することが求められている。安倍政権の経済政策「アベノミクス」により、大企業は空前の利益を上げる一方、国民生活の実状は景気回復の実感には程遠く、労働分配率の低下や消費増税、実質賃金の低下など、格差と貧困はますます拡大し続け、生活環境の悪化、深刻な雇用破壊となって表れている。また、首相主催の「桜を見る会」の税金私物化疑惑やIR汚職事件、公選法違反疑惑に絡む閣僚の辞任、法解釈をねじ曲げた検察官定年延長問題などの腐敗政治を繰り返し、「働き方改革」という名の労働法制改悪や社会保障費削減など、民主主義をないがしろにした国民不在の政治を押し進めている。景気の回復と雇用の安定、社会保障制度の拡充、非正規労働者・未組織労働者・外国人労働者などの権利拡大と労働条件改善、全てのハラスメントやヘイトスピーチの根絶、障がい者差別・部落差別・LGBT差別・男女差別などあらゆる差別を許さず、誰もが安心して暮らすことのできる共生社会を目指すために、全労働者の確固たる団結で全ての闘いを精力的に展開することが求められている。賃下げ・人員削減を狙う公務員制度改悪反対の闘いと合わせ、公務公共サービスの民営化・民間委託拡大阻止、教職員の長時間労働の解消など官・民統一の闘いを強化するとともに、JAL不当解雇撤回闘争をはじめとする全争議の勝利に向け、支援・連帯した闘いをさらに強化しなければならない。本年は、1920年のメーデー開催から100年を迎えた。改めて、働く者の団結の力で生活と権利、国際連帯強化、反差別・人権の確立、世界の恒久平和を守るためより一層奮闘し合うことを訴える。
 つづいて東京都労働組合連合会(西川晋司委員長)、中央メーデー実行委員会(野村幸裕全労連事務局長)、東京都労働産業局(村松明典局長)、社民党(党首の福島みずほ参議院議員)、韓国民主労総(キム・ミョンファン委員長)、第91回大阪・中之島メーデー実行委員会、5・3憲法集会実行委員会(許すな!憲法改悪市民連絡会・菱山南帆子事務局次長)、第30回京都地域メーデー実行委員会からメッセージが寄せられていることが報告され、民主労総からのメッセージが読み上げられた。
 メーデー・アピール案が読み上げ提案され、参加者の拍手で採択された。
 最後に、渡邉洋全労協議長による「団結がんばろう」で集会を終了した。

 参加者は水道橋駅前に移動し、すでにスタンディングを行っていた労働者・市民と合流してメーデー・アピール行動をおこなった。


共謀罪廃止! 秘密保護法廃止!

        MIC議長の南彰さんが講演   「コロナ問題 問われるメディアのあり方」


議員会館前で抗議行動

 5月7日、衆議院議員会館前で、共謀罪廃止!秘密保護法廃止「12・6 4・6を忘れない6日行動」(秘密保護法廃止へ!実行委員会、共謀罪NO!実行委員会)が行われ、主催者を代表して、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)事務局長の岩崎貞明さんがあいさつ。新型コロナウイルスの蔓延を利用して、政府は非常事態宣言をだし、危機意識をあおりながら改憲、戦争体制づくりを進めている。秘密保護法、共謀罪法はその目指すものがいよいよ明らかになってきている。今日のような厳しい情勢の中でも自粛強要に抗して、声を上げていくことはぜひとも必要だ。
 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、日本山妙法寺、北大生・宮澤弘幸「スパイ冤罪事件」の真相を広める会、破防法に反対する共同行動、国民救援会からの参加団体の発言がつづいた。
 首相官邸に向けて、戦争法と一体の秘密保護法今すぐ廃止、共謀罪も今すぐ廃止、政治を変えよう、などのシュプレヒコールをあげた。

問われるメディアのあり方

 議員会館前集会につづいて、衆議院第二議員会館会議室で、院内集会が行われた。
 MIC議長・新聞労連委員長の南彰さんが、「コロナ問題 問われるメディアのあり方」と題して講演した(レイバーネットTVでのライブ配信)。政府のマスコミ対策は厳しいものだが、今日のような状況の中でますますひどくなっている。政府だけでなく、マスコミ各社の対応にも問題がある。「緊急事態宣言」以降、報道各社の状況は、次々発熱するスタッフが離脱し、残された者たちは疲弊する一方だ。MICのアンケート調査によると現場の労働者は状況は大変なことになっていることがあきらかになった。「明日感染するかもしれない」とフルストレスの中にいる悲惨な状況を東京の放送局関連社員は訴えている。また通信社社員からは「マスクもなく社が安全性を考えていない」という声が上がっている。そのなかでも圧倒的に多かったのは、通常の「対面取材」が難しくなったということだ。テレワーク推進後、現場に入る記者が減り、発表原稿が増えた。またコロナとバッシングの怖さから現場を見ていなくてもやむを得ないという雰囲気もある。感染が確認された業者が貼り紙やサイトで公表しているのに行政が発表しないと掲載しないということもある。「医療崩壊」ということについても、菅官房長官や小池都知事など政府や自治体の長が「ギリギリ持ちこたえている」というとそれを検証もせずに垂れ流している。だが安倍首相が「わが国は幸いなことに、今のところ諸外国のような医療崩壊といった最悪の状況は生じていない」といっても、日本医師会は「医療危機的状況宣言」をだしている現実がある。コロナ禍の背景には、公権力の情報公開の消極性と無責任性がある。それは同時に、官邸への権限集中に抗して情報を開示させるメディア側の改革の遅れでもある。アンケートの回答には、「スクープをとるには多くに場合、政権側と伴走するのが有利で、御用記者があとをたたない」、「経営幹部が政権ににらまれないなどリスク回避が最優先になっている」、「過剰な忖度だとはわかっていても面倒に巻き込まれたくない」などがあがっている。
 総理会見では、記者の質問にまじめに答えず、打ち切ってしまうことが常態化している。2月29日の安倍首相の新型コロナウイルスの感染拡大防止策の説明として開かれた記者会見のやりかたが典型例だ。また3月7日の総理の福島視察の際も、取材の場で地元の記者が参加できないということがおこった。事前の告知がされず、東京から同行した内閣記者会のみが参加できるという建付けになっていて、地元の記者には取材場所も知らされていなかった。首相の会見は東京からの記者が代表して一人だけ3・11とコロナ対策を含めて全部束ねて質問し、総理が3分か4分ほど事前に用意したものを長々答えるだけで帰ろうとした。しかし朝日新聞の南相馬支局の記者がぶら下がり会見の場をみつけて、東京オリンピック招致の際に「アンダーコントロール」といったことについて、いまでもそう思っているのかという質問をなげかけた。しかしその場面は、残念ながら官邸のホームページからは、総理にとって不都合なのか削除されている。発信の仕方もきわめてアンフェアーだ。地元の含めて多くの記者が疑問と思っていることを聞ける場が用意されるということが大切だ。
 これに対して「十分な時間を確保したオープンな首相記者会見」を求めるネット署名を呼びかけたところ、わずか1週間で3万人を超える賛同署名が集まり、3月12日に署名簿を首相官邸に提出した。その2日後の14日に開かれた首相会見では、質疑を打ち切ろうとした官邸側に対して、記者会の抗議で続行させた。
 3月18日には、MIC(新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、 映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)「共同声明・市民の疑問を解消する 首相への質問機会を取り戻そう」をだした。それは、日本記者クラブでの首相会見の早期実現、視察先での地元記者の質問権の保障を含め、日常的に首相へ質問する機会の復活をもとめるものだ。官邸での首相会見にこだわっているが、それは、日本中枢のスタイルが全国に広がっていく恐れがあるからだ。しっかり質疑をして政治家に言いっぱなしにさせないということだ。
 だが、官邸側も巻き返しをはかった。感染防止を理由に官房長官の記者会見に出席する記者を一社一人に制限する、官房長官の番記者以外を排除した。これではかつての記者登録制を導入するなどしての大本営発表と同じ戦前と同じ過ちを繰り返す危険がある。こうしたときだからこそ多様な角度からの取材がなされなければならない。


労働者への犠牲のしわ寄せ許さない

        全国ユニオンが厚労省へ緊急申し入れ


 4月1日から、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」)が施行された(中小企業については2021年4月1日から法律が適用)。この法律で、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者)の間の不合理な待遇差が禁止されるとされるが、今回のような新型コロナの蔓延などのようなウイルス対策はまったくなされていない。いまウイルス対策での雇用形態による格差は深刻さを増していて、それへの企業、政府の対処は待ったなしの状況だ。これは、正規・非正規の格差がそのまま生命と健康による格差となってでてくる。

 全国コミュニティ・ユニオン連合会(全国ユニオン)は、3月7から8日にかけて「同一労働同一賃金ホットライン〜新型コロナウイルス対策の雇用形態間格差を是正しよう!〜」を開設した。その集計結果を見てみると、「新型コロナウイルス対策の影響による休業にあたって、正社員には休業手当を支給するが非正規は(正社員とは)別だといわれた」、「有給休暇を使って休んでくれと言われた」、「3月1日から休んでくれと言われたが補償がない」、「新型コロナの影響で仕事がなくなった。正社員は有給だが、パートは無給と言われた。理由を聴いたら『パートだから』と言われた」、「パートには補償はないといわれた」など、正規と異なる取り扱いを受けているという相談が多く寄せられた。また、派遣先の正社員は、在宅勤務や自宅待機などになる中で、派遣労働者が出勤を続けているという相談、中でも「派遣先の正社員はリモートワークや自宅待機になった」、「正社員がほとんどいない中、派遣が出勤している」、「ぜんそくがあるので同様にリモートワークができないかと聞いたら、年休を使って休むように言われた」、「派遣先の管理者のみ出社しているが、先日、正社員が出社したら出勤している派遣の前で『感染したら大変なんだから出社するな!』と叱責されていた。派遣は感染してもいいと思われているようで、悲しくなった」、「派遣先で派遣を含めて全員休むことにする、休業の補償もすると発表があった。しかし、実際には派遣だけ出勤させられている」などの実態が明らかになった。

 4月23日、こうした調査をもとに全国ユニオンは厚労省に緊急要請を行い、解雇・雇止めなど労働者のきわめて厳しい状況を訴えるとともに、加藤勝信厚生労働大臣あての「緊急要請書」(別掲)を手渡した。

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全国コミュニティユニオン連合会緊急要請書


     (前略)

 1、以下を理由にした解雇・雇止めや派遣切りは、労働契約法16条または19条違反となるという行政解釈を示し、周知徹底すること。
 @本人及び家族など近親者が感染したあるいは感染した疑いがあること、または濃厚接触者(以下「感染または感染の疑いがある者」)であること
 A学校や保育所などが休校したことに伴い休業を申し出たこと
 B本人にいわゆる基礎疾患がある、あるいはいわゆる基礎疾患がある家族と同居する労働者及び老親・年少者と同居または支援・介護をする労働者(以下「家族等と同居する労働者」)が休業を申し出たこと
 C新型コロナウイルスの影響により受注などが減少したこと
 D休業中の補償を求めたこと及び労働条件について説明を求めたり、意見を述べたこと
 2、感染拡大を防止するためには、企業とりわけ中小企業に対する経済対策を充実させることが急務である。事業主が雇用している労働者を休業させる積極的な措置が必要であり、現在の雇用調整助成金では限界があります。こうした状況を打開するため、引き続き、雇用調整助成金の一層の迅速化を図る一方、事業主が雇用している労働者を積極的に休ませることを選択するため、休業時間に応じて助成する制度(例えば、全社員の休業時間の合計に助成額を乗じるなど)を創設すること。申請にあたっての証明は必要最小限(例えばタイムカードと就業規則の提出など)にとどめ、基本的に事業主の申告に基づいて支給すること。
 3、家族等と同居する労働者は不安を抱えながら通勤し、就労しています。国民。市民の生命と健康を守り、感染者・重篤者を低減するために以下の措置を講ずること。
 @家族等と同居する労働者が休業を申し出た場合、事業主は労働契約法5条の安全配慮義務により休業をさせなければならないという行政解釈を示し周知徹底すること。
 A家族等と同居する労働者が休業した場合、会社都合による離職と同様の雇用保険の基本手当を支給すること。
 B濃厚接触者など感染の疑いがある者の休業を禁止するとともに会社都合による離職と同様の雇用保険の基本手当を支給すること。
 4、新型コロナウイルス対策の雇用形態間格差は、健康と生命の格差です。未だに正規と非正規の間で休業手当の支払いの割合に差をつける、休業手当は非正規には支給しない、などという企業もあります。
 新型コロナウイルス対策の雇用形態間格差は有期パート法における「不合理な格差」であることを周知徹底し、同じ扱いとすること。
 5、就労せざるをえない業務の場合、マスクの配布、消毒薬の設置、空気の入れ替え、小休止を増やすなどなど、感染者を出さないよう労働環境を整備すること。


コロナショックと世界恐慌 

                 関 考一

F過剰生産の深奥の動因=コンピューター・ITによる労働手段の革命的変革

U 機械から質的に飛躍した労働手段の登場

 機械の革命的生産能力は、その制御の面において大量の人間労働を機械に付属させる苦役を強いる問題を新たに生み出した。しかし絶え間ない資本の増殖過程は科学技術の生産へ飛躍的応用を発展させ機械生産に欠如していた制御の機能(人間の知的労働・精神労働)を担うコンピューター・IT自動制御と機械の統合であるコンピューター制御生産体制を新たに生み出し今や生産財生産部門の主流となりあらゆる鉱工業生産と農業生産に拡大している。新たな労働手段(コンピューター・IT)の圧倒的な発展は、その生産性と生産能力が飛躍的に増大する一方、これまでの機械による生産に欠如していた人間による制御労働を大幅に減少させるのであるから、資本による大量の労働力の削減や複雑・専門的な労働から単純労働への置き換えが可能となった。このことが世界的な正規雇用労働者の削減と非正規労働者の異常な増加の根底にあり、また実質賃金の低下による深刻な貧困問題をひき起こしている大きな要因となっている。そして今、問題となってきた恐慌発生の根源と深く結びついているのである。「この生産様式(資本主義)にとっては、労働力を一日に一二時間から一五時間も働かせることがもはや必要でなくなれば、早くも労働力は過剰となる。労働者の絶対数を減らすような、すなわち、国民全体にとってその総生産をよりわずかな時間部分で行なうことを実際に可能にするような、生産力の発展は、革命をひき起こすであろう。なぜならば、それは人口の多数を無用にしてしまうだろうからである。この点にもまた、資本主義的生産の独自の制限が現れており、また、資本主義的生産がけっして生産力の発展や富の生産のための絶対的な形態ではなく、むしろある点までくればこの発展と衝突するようになるということが現れている。部分的にはこの衝突は周期的な恐慌に現れるが、このような恐慌が起きるのは、労働者人口のあれこれの部分がこれまでどおりの就業様式では過剰となるということからである。」(資本論 第一五章 この法則の内的な諸矛盾の展開)

Gケインズ主義(国債発行)による延命策の限界

 過剰生産による恐慌は資本主義に深刻な動揺を与えたため、1930年代以降、各国は「有効需要の創出」=「ケインズ主義」を採用するようになった。それは民間の需要だけでは過剰生産を解消出来ないので、政府支出を財政赤字によって賄い、大規模な公共投資を通じて消費・投資需要の不足を補うことを主柱とした。しかし繰り返される不況のたびに、大企業の救済のため大規模な公共投資や核兵器(原発を含む)軍事費の膨張を支えた「軍事ケインズ主義」により財政赤字は膨大な国債の累積を生み出し、1980年代からは新たに発行する国債の大半が実体経済への刺激効果がない赤字国債と利払いにだけ当てられるという「マネーゲーム」現象を招く大きな要因の一つとなった。実際、2019年度末「普通国債残高(前倒しで発行した借換債の額を除く)763兆円のうち、利息で発生した借金が335兆円を占めており約44%が利息支払いのためにした借金」なのである。(「データが語る日本財政の未来」明石順平 インターナショナル新書)「国債という資本の蓄積が意味するものは、…租税額のうちからある金額を先取りする権利を与えられた国家の債権者という一階級の増大以外のなにものでもない」(資本論 第三〇章 貨幣資と現実資本T)のであり、経済のバブル化の根源の一つがここにある。そして恐慌回避・不況脱出の切り札であった「ケインズ主義」の無力化と肥大化する元利払いを迫られる国債累積の重圧は、新自由主義構造改革と称される国家財政の緊縮策・消費税などの大増税の背景となった。

H歯止めなき「財政ファイナンス」=アベノミクス

 「財政再建」を掲げた新自由主義の「緊縮政策」は厳しい痛みを強いるものであり「デフレ」状態を生み出した。この状況を一気に打開しようとしたのが「アベノミクス」であり、「高成長」を名目にして実質的な「財政ファイナンス」=(中央銀行による国債の直接引き受け)を推し進めてきた。その結果、大企業は内部留保を463兆円(2018年)に増やす一方で、日本の実質賃金指数は1997年を100とした場合2016年は89.7と低下傾向が続いている。そして日本の債務残高は対GDP比236%(2018年財務省)となった。これは1944年の204%を上回り「第2の敗戦」とまでいわれている。アベノミクスの「6年間で約60兆円のGDPが増えたといいますが、国と地方の借金は175兆円も拡大した」のである。(19年1月30日 小林喜光経済同友会【当時】代表幹事 朝日新聞)更に本来であれば毎年の国会で承認を得て「特例国債」の発行が可能とする法規制を、安倍政権は2016年から5年間、歯止めない国債発行ができるように特例公債法の改悪まで行っているのである。

I更なる大量の国債発行を要求するMMT(現代貨幣理論)の問題性

 T 昨今「反緊縮」を掲げてMMTを実行すべきと主張する動きがある。れいわ新選組(以下れいわ)が代表的であるが、その主張は、消費税廃止や歳出拡大のため国債を増発して財政赤字を拡大してもインフレにはならないというものである。れいわのブレーンらは国の借金が膨らんでも「財政破綻」にならないとして「財政危機はまやかし。国債の半分は無いのと同じ」としている。その理由について、日銀を政府の子会社と考えれば国債の半分は返済が終えており政府はお金を返さなくてもよい」とする「統合政府論」を唱えている。具体的に2017年3月末のデータで統合政府のバランスシート(図表1)を考えてみると国債は、日銀の資産(440兆円)と政府の負債(同909兆円)の両側に計上されることになるので、440兆円は相殺される。しかし統合政府の国債という負債が469兆円に減少するが、日銀当座預金という負債343兆円と発行銀行券という負債100兆円に変わっただけである。政府が発行し民間金融機関が購入した国債は、日銀が発行残高の約46%を買取っているが、その代金は日銀当座預金に置かれている。統合政府論を採用したところで、それを所有しているのは民間銀行などであり消滅させることは出来ない統合政府の負債なのである。日銀当座預金には金利支払い義務があり、その大半は0・1%の付利金利であり、支払利息は1873億円(17年3月末)となっている。日銀当座預金残高は2019年9月末で408兆円に増加しており付利金利を1%引き上げれば年間4兆800億円の支払利息増となり2%なら8兆円増、3%なら12兆円増となる。日銀の自己資本金は約8・3兆円であり、日銀が持つ国債の受取利息1.1兆円を加えた計9・4兆円(引当金勘定+準備金)しかなく、赤字がこの限度を超えると「債務超過」(民間における倒産)に陥る。日銀の赤字が拡大すれば、金利上昇を抑える目的の大量の国債発行=貨幣の増発を余儀なくさせ、激しいインフレに直結する。マルクスは資本主義の下における「国債は国庫収入を後ろだてとするものであって、この国庫収入によって年々の利子がまかなわなければならないのだから、近代的租税制度は国債制度の必然的な補足物になったのである。国債によって政府は直接に納税者にそれを感じさせることなしに臨時費を支出することができるのであるが、しかしその結果はやはり増税が必要になる。」(資本論 第24章 いわゆる本源的蓄積)としている。したがって政府と日銀が統合して国債を相殺すれば「政府は事実上おカネを返さなくいい」という根拠はまったくない。単なる帳簿の書き換えで現実の徴税もなく「借金を返済」するということは、鎌倉時代から始まった権力を笠に着た借金棒引きの「徳政令」の現代版であり、政府がデフォルト(財政破綻)を宣言するに等しい。

U あるMMT論者は「相殺論」に加えて「50兆円分の1兆円硬貨を発行し日銀保有国債を買い取って、一気に消滅させる」と主張している。各国が中央銀行制度(通貨発行権を含む)を採用しているのは、歴史的にインフレや戦争を招いた「権力の濫用」を制限する目的がある。政府からの中央銀行の独立性に基づき日銀が主に紙幣を発行し、貨幣の鋳造を独立行政法人造幣局(元財務省)が行うのは、あくまで補助的なものである。貨幣の額面が少額であることや素材価値が低い金属で鋳造されることが多いこともそれを裏付けている。然るに外形的に紙幣発行が日銀、貨幣鋳造が造幣局(政府)と分離していることを奇貨として「50兆円分硬貨で日銀保有の国債を消滅」が可能とするのである。硬貨は造幣局が鋳造して日銀に交付した時点を「貨幣の発行」といい、日銀から市中に流通してはじめて「貨幣の流通」とされており、現在の法制度の下では貨幣は鋳造・発行されただけではそのまま政府の歳入にならない。歳入確保や「国債償還」の目的で政府・造幣局が貨幣を鋳造・発行しても、市中に流通しなければ、日銀に返済された50兆円分の硬貨は単なる「物」=金属塊に過ぎない。こうした現実性と合理的根拠を全く持たないトリッキーな空想的計画を主張するMMT論者は、現代における「通貨の錬金術師」という他ない。

V またMMT論者は「経済対策の財源は国債の日銀引き受けで」を主張している。しかし第二次世界大戦おいて日本は「財政ファイナンス」で膨大な戦費調達を賄った。その結果戦後の激しいインフレと「預金封鎖」「新円切り替え」となり多くの企業倒産と失業者の増大を引き起こし人々の生活は困窮を極めた。この深刻な教訓から憲法第9条2項の「戦力の不保持」が制定されたのであり、それは「まずもって軍に対する財政支出を禁止する、立憲的財政の観点が含まれている」(「改憲の論点」集英社新書 第8章 石川健治東大教授)のである。また「建設国債を除き、借金財政を禁ずる財政法4条。『特別の事由』がなければ、日銀の国債引受を禁ずる財政法5条。いずれも戦前の轍を踏まないように定められた条文であること、とりわけ九条との関連を意識しておかれた条文である」(前掲書)そしてなによりも憲法9条2項は「政治的権力と経済的権力の分離」(前掲書)を明確に規定しており、安倍9条改憲NO!は、平和主義と「安全保障」の問題としてだけでなく、軍備拡張と戦争への財政的な裏付けを絶対に許さないことを不可欠な構成要素としており、戦前の政府のような権限を再現することになる「統合政府論」とは決して相容れない。自衛隊の存在で9条改憲を正当化出来ないことと同様に、安倍政権によって事実上の「財政ファイナンス」が行われているとして「財政法4条と5条の廃止」を正当化し「統合政府論」を主張することは財政面から改憲容認の根拠を与えるものである。(つづく)


せんりゅう

    平和へのゆび切りげんまん第九条

      のらりくらり桜いまだに咲き残り

    答弁は嘘の皮張りきくに堪えない

      愚政だぞ万民個々に睨んでる

    国民の口塞ぎたいアベノマスク

      発熱外来なきまま緊急事態

    アベの腹ここぞ儲けの穴さがし

      民衆にはコロナ上流には勲章

    自粛おしつけ自己責おしつけ

      雑草のようなもんだと踏んづける

                    ゝ 史

2020年5月


複眼単眼

       敵は官邸にあり

 うろ覚えなのだが、その昔に読んだ毛沢東の書物に「敵はだれか、味方はだれか、この問題が革命運動の最も重要な問題だ」というような指摘があったように思う。
 毛が言ったかどうかは別にして、筆者は、この指摘は、今日、市民運動にとってもなお重要な問題だと思うのだ。
 敢えて言っておけば、中国の文化大革命において、毛自身がこの問題で敵と味方を間違えてしまったことが悲劇だとは思うのだが。

 筆者は最近、ある雑誌に新型コロナウィルスへの対処問題で、以下のように書いたことがある。
「外出自粛以外に有効な手立てが見つからない現状では、国や地方政府が感染拡大防止のために人々ができるだけ自宅にとどまることを奨励することに反対はしない。
しかし、国家が憲法に保障された一部人権まで制限する緊急事態宣言を発令して、半ば強制的に社会に同調圧力を加えることには賛成できない。この間の幾度もの大災害の教訓が物語るように、こうした対策は基本的には一元的に国家に権力を集中して実行されるべきものではなく、地方自治体などに権力を分散して行い、国はそのサポートに徹すべきだ。まして、今日の安倍政権のように権力の私物化、改憲暴走政治を繰り返してきた政権のもとで独裁的に行われていることの危険を指摘せざるをえない」と。

 洪水のようにあふれるコロナウィルス関連の報道で、安倍政権や小池東京都知事による市民への自粛要請が繰り返される。
 ウィルスを抑え込めないのは「国民の自粛がいま一歩足りないからだ。引き続き努力せよ」ということだ。この政府の責任転嫁と同調圧力は言語道断だ。

 そしてこのウィルスとのたたかいが「戦争」に例えられる。「戦争」なら、あれこれ言わずに、敵に対して「安倍司令部」のもとに結束せよという「同調圧力」が加えられる。
 「自粛」して家にこもった市民は毎日毎日この報道を聞かされる。これでは平衡感覚が保てない。

 それにしても、あたかも感染者が悪いかのような報道は酷い。感染者の自己責任だとでもいうような風潮だ。
 これはイラク戦争におけるボランティアが攻撃されたような、いつか来た道ではないか。
 そして被害者に対して「お前が加害者だ」と言いかねないようなバッシングがある。
 これと医療従事者にたいする差別は対極にある。「敵」は誰かを見失った典型的な事象だ。

 いま、インターネットの世界で「自粛警察」という用語がしばしば用いられる。
 この自粛警察を気取っている人々は、「マスクをしないで歩いている」「公園で子どもが遊んでいる」「店が開いている」「他県のナンバーの車が入ってきている」「パチンコ屋が開いている」などと摘発し、攻撃をかける。
 まさに15年戦争末期の「自警団」であり、「国防婦人会」であり、江戸時代の「五人組」だ。

 敵は官邸にいるぞ。「敵」と間違えて、味方を撃つな。(T)