人民新報 ・ 第1386号<統合479>(2020年6月15日)
目次
● 世界各地に広がる人種差別・植民地主義反対運動と連帯し
安倍をさらに追い詰め、打倒しよう!
● 東京都知事選(7月5日)
全野党共闘で宇都宮健児さんの勝利を
● 秘密保護法・共謀罪を廃止しよう
海渡雄一さん講演「国連自由権規約委員会に共謀罪廃止の声を届けよう」
● 巨大多国籍種子企業の利益 農家と食糧自給に悪影響
種苗法改悪に反対する
● 安倍政権の検察完全支配は失敗
新聞労連が声明−当局との距離感を保ちながら、市民の疑問に応える報道
● 監視国家化に道を開く危険なスーパーシティー法を廃止せよ!
● 武委員長、湯川副委員長の保釈かちとる
関生事件・勝利に向けて闘いを強化しよう
● コロナショックと世界恐慌
● せんりゅう
● 複眼単眼 / 米国市民の闘いと60年安保
世界各地に広がる人種差別・植民地主義反対運動と連帯し
安倍をさらに追い詰め、打倒しよう!
世界は新型コロナウイルスの感染蔓延に苦しんでいる。さまざまな社会的格差がいっそう拡大し、弱者に犠牲がしわ寄せされている。とりわけ超大国・米国ではコロナ感染者・死者の増加という深刻な状況で、さまざまな矛盾・対立が爆発的に進行している。なかでも黒人層のコロナ感染率・死亡率は白人に比べて極めて高く、アメリカ建国以来の奴隷制度の遺産が、公民権運動などによる闘いの成果があっても、いまだに解消されていないことを立証した。事件は、黒人層のみならず格差・貧困・差別に苦しむ人々の怒りに火をつけ、抗議の行動は全米にひろがった。抗議の声は、いま世界に広がりつつある。人種差別からさらに植民地支配へ批判はひろがり、コロンブスなどの像の撤去・破壊もおきている。トランプは、こうした動きを極左勢力によるものだとして、警察の弾圧強化はもとより、連邦軍まで繰り出して鎮圧するとまで言い出した。一方で、かれは恐怖にかられホワイトハウスの地下壕に逃げ込んだことも暴露された。こうしたトランプの言動に、さすがに軍高官は従うことはなく、国防長官、統合参謀本部議長までもがトランプと一定の距離をとりはじめた。共和党の中からも異論が出てきている。
凋落しつつある唯一の超大国アメリカを再強化することを標榜して、かろうじて大統領選に勝利したトランプは、アメリカ・ファースト政策で自国利益優先をはかる。それは一国主義であり、またヘゲモニーなしの強権覇権国家をめざすもので、国内では白人支配層の利益のための政治を行うことだ。だが結果は、トランプの公約とは真逆に、アメリカの国際的な孤立と国内の分断・混乱をもたらすことになった。
社会的な激動はアメリカだけではなく、世界の様々な地域で起こっている。各国では多くの局面での闘争が激しくなり、同時にこれまでの世界的パワーバランス転換も進んでいる。いま時代は大きく変わろうとしている。
日本でも、情勢の変化は激しい。安倍内閣支持率が急落している。1月20日に開会した通常国会は、6月17日に会期末をむかえる。安倍の目論見では、今年中に衆参両院での憲法審議会の開催、国民投票法=改憲手続法の改正を実現し、自民党改憲案の提示をおこない、改憲への道を大幅にすすめるはずだった。ところが、安倍は、昨年末以来顕著になった消費税増税による景気低迷、モリ・カケ問題の再燃、桜を見る会、つづいて前法相の河井夫妻の公職選挙法違反(買収)容疑など難問山積の状況にたたされた。なにより、オリンピック2020年開催にこだわっての新型コロナウイルス禍にたいする初動対応の遅れよる感染者・死者の急速な増加が人々に大きな被害・不安をあたえた。またアベノマスク、1人10万円の特別定額給付金などでもごたごたがつづき内閣批判はひろがっていった。そして、黒川東京高検検事長の定年延長のごりおしは、安倍とその取り巻きたちの犯罪隠ぺいのための検察体制づくりであることが暴露・周知されるようになり、SNSを通じて抗議など圧倒的世論の批判を受け、挫折した。
新型コロナウイルスの感染拡大対策を盛り込んだ2020年度第2次補正予算案の国会審議がはじまったが、予算の3分の1を占める10兆円もの予備費が大問題だ。政府は5兆円の大まかな内訳を示したが、残りの5兆円は文字通り白紙のままで何に使われるかわからない。
改憲をめぐっては、5月28日に、昨年11月以来、半年ぶりに衆議院憲法審査会が今国会で初めて開かれたが、国民投票法改正案をめぐって国民投票の際のCM規制やの意見などが述べられただけだった。参議憲法審査会は2018年2月以来、実質、審議が行われていない。こうして国民投票法改正案は、今国会でも成立が見送られることなる。
安倍は、いままで強引に国会会期を延長して悪法を強行してきたが、いまはなんとしても、国会審議をしたくない。国会が開かれていれば、安倍の失政・悪政が公然化するからであり、なにより安倍自身が国会に出て批判にさらされるのをこわがっている。
この間、安倍内閣や小池都政は、コロナ自粛、自衛強要を押し付けてきた。弱者に厳しく、大企業・金持ちにやさしい政策である。そのうえこのコロナ惨事を利用して大儲けしようとするやからが多いことも安倍政治の一環である。今後、経済低迷・倒産、雇用危機、貧困層の増大というより厳しい事態が来る。労働者、市民、女性、青年、中小零細企業者など社会的弱者は、みずからの力で要求を勝ち取っていかなければならない。各界各層の闘いを大きく合流させて、安倍政治反対、内閣打倒運動の大きな前進を勝ち取ろう。
東京都知事選(7月5日)
全野党共闘で宇都宮健児さんの勝利を
東京都知事選は、6月18日告示・7月5日投開票で闘われる。オリンピック開催強行を安倍とともにもくろんだ小池知事は、感染蔓延に後手後手の無様な姿を露呈し、被害拡大を阻止できなかった。いまも感染リスクはつづいている。
PCR検査、感染者収容病院不足など医療崩壊を招いたが、これは歴代の自民党政治、保守派都政の結果である。医療をはじめ社会保障ではなく大企業の利潤を重視する新自由主義的政治の破綻はあきらかになった。にもかかわらず、東京アラートなど各種の新たなキャッチフレーズをくりだして、やってる感を出そうとしている。小池はコロナ対策で成果を上げているようなキャンペーンを展開して、支持率アップを狙っている。
今回の都知事選では、二階幹事長など自民党本部は独自候補を擁立を断念し、小池支持にまわろうとしているが、小池と都議会自民党との反目は根深く、決定を見せていない。実質的な自民党支持での小池勝利となれば都政は、これまでの政策継続プラス自民党色が強化されることになる。なんとしても小池都政の継続を許してはならない。
こうした状況の中で、宇都宮健児さん(元日本弁護士連合会会長)が、5月27日に出馬表明の記者会見をおこない、「わが国で貧困と格差が拡大している背景には、『社会保障の貧困』と『労働政策の貧困』があります」「このような『社会保障の貧困』や『労働政策の貧困』を解決できないのは、わが国の『政治の貧困』の結果です」「2020年度の東京都の予算は、一般会計の総額が7兆3450億円、特別会計・公営企業会計と合わせると15兆4522億円となり、スウェーデンの国家予算を超えています。この潤沢な予算を都民生活のために重点的に使っていけば、貧困と格差の拡大を解消し、都民一人ひとりの生活を豊かにしていくことが可能になります」として、「今都政に求められる課題16項目」を発表した。それは、@学校給食の完全無償化〜子どもの貧困をなくす。A
義務教育の完全無償化(修学旅行や教材なども無償にする)、すべての高校の所得制限のない授業料の無償化、夜間中学・夜間定時制高校の拡充、都立大学・専門学校などの授業料の半額化または無償化〜誰もが学べる都政を実現する。B都営住宅の新規建設と家賃補助制度・公的保証人制度の導入、原発事故避難者に対する住宅支援〜住まいの貧困をなくす。C公契約条例の制定、非正規労働者を減らし正規労働者を増やす〜働く者の貧困をなくす。D都立病院(8病院)、公社病院(6病院)の独立行政法人化(実質的な民営化)に反対する〜都民の命と健康を守る。Eカジノ誘致に反対する〜人の不幸を踏み台にする経済政策はとらない。F災害対策(防災・減災・避難者対策など)を強化する〜自然災害から都民の命、財産を守る。G温暖化対策(CO2の排出削減、自然再生エネルギーの充実など)を抜本的に強化するとともに緑と都市農業を守る〜地球環境、自然環境を守る。H道路政策(外環道、特定整備路線)を見直す〜地域住民の意見に耳を傾ける。I保育士・介護労働者の労働条件を改善し、認可保育園・特別養護老人ホームを充実させる〜待機児童、待機高齢者をなくす。J視覚障害者の転落防止のためのホームドアの設置、障害者差別のないバリアフリーのまちづくり〜障害者の権利を守る。K羽田空港新ルート低空飛行の実施に反対する〜都民の命と暮らしを守る。Lヘイトスピーチ対策の強化、朝鮮学校への補助金支給の再開、関東大震災朝鮮人犠牲者の追悼式への都知事の参加、同性カップルのパートナーシップ制度の導入など〜外国人を含む都民の人権を守る。M出前福祉制度を導入する〜江東区兄弟餓死事件のような悲惨な事件をなくし、福祉の行きとどかない死角地帯をなくす。N都民が一定額の予算の使途を提案し、その提案に対する都民の投票の結果を受けて、都民の代表が予算の使途を決める「都民参加予算制度」を導入する〜都民参加型の都政へ転換する。O横田基地へのオスプレイ配備に反対する〜都民の安全と暮らしを守っていく、という政策であり、人々の意見・提言によって、「ジェンダー平等、女性の貧困対策を推進する」などの「課題プラスα」がくわえられていく。
6月3日には、市民と野党の共闘で小池都政の転換を求める「呼びかけ人会議」がひらかれ、立憲民主党の長妻昭都連代表、国民民主党の岸本周平選対委員長、共産党の小池晃書記局長、社民党の吉田忠智幹事長、新社会党の岡崎宏美委員長、緑の党の漢人明子東京都本部共同代表など各野党からの参加者は、知事選への立候補を表明している宇都宮健児さん(元日本弁護士連合会会長)を応援する発言を行った。
宇都宮さんはつぎのように決意表明した。コロナ禍では、社会的経済的に困難がある非正規労働者、母子家庭に大きなしわ寄せが押し寄せている。今の政治はひどい。今回の知事選では都民の雇用、営業、住まい、生活、命を守りきる都政に転換しよう。みなさんと一緒に知事選をたたかい抜く。
国民民主党は自主投票に傾いているが、なんとしても、全野党の共闘を強化・拡大して、小池・自民党都政にNO!をつきつけなければならない。
秘密保護法・共謀罪を廃止しよう
海渡雄一さん講演「国連自由権規約委員会に共謀罪廃止の声を届けよう」
6月8日正午から、衆議院第二会館前で、「秘密保護法廃止へ!実行委員会」と「共謀罪NO実行委員会」の共催で共謀罪廃止!秘密保護法廃止!国会行動がおこなわれた。市民団体や国会議員の発言があり、「共謀罪廃止」「秘密保護法廃止」「みんなの力で政治をかえよう」などのシュプレヒコールをあげた。
午後からは、議員会館で、院内集会「国連自由権規約委員会に共謀罪廃止の声を届けよう」がひらかれた。
講演は海渡雄一さん(共謀罪対策弁護団)が、「国連自由権規約委員会に共謀罪廃止の声を届けよう」と題して行った。この間、コロナ自粛が強要されていて、なかなか集会などが開けない状況にあるが、黒川東京高検検事長の定年延長問題をめぐって、ツイートで反対する声が急速にひろがった。そういう意味でもこのコロナ時代における市民活動というものについて諦めてはいけないと思う。秘密保護法は、2013年12月6日に、また共謀罪は、2017年6月15日に成立させられた。共謀罪については、その年にNGOの方々と一緒に国連の自由権規約の審査にたくさんのレポートを出した。その結果、日本政府に対する質問の中に共謀罪や秘密保護法の問題、表現の自由に関する問題が取り上げられることになった。共謀罪廃止運動は、国際人権法を一つの武器として闘いを続けている。国際人権法には、自由権規約、社会権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、拷問禁止条約、人種差別撤廃条約、強制失踪条約などがある。条約に基づく国別審査が今年の10月に行われる。それで問題となっているのは自由権規約の19条で、全てのものは干渉されることなく意見を持つ権利を持っているとある。この権利には口頭と手書き若しくは印刷、芸術の形態又自ら選択する他の方法により、国境との関わりなく、あらゆる種類の情報および考えを求め、受け及び伝える自由を含む。情報をちゃんと受け取るということが一つの権利になっていて、そしてそれを伝えていく自由、情報の流通の過程の全体を保障しようとしているということで、幅が広い。確かにかなり細かいその制約理由も書かれていているが、必要性の原則でいろいろな制約が合理化されてしまうわけではないということを何度も言っている。自由権規約委員会は日本政府に対する次の審査でどういう事項を審査の対象にするかということを決めた。日本政府の回答期限は2018年の12月だったが、回答が出たのは今年の4月で遅れに遅れた。委員会は今年の10月に審査を実施するということにしていた。審査の日程はコロナ情勢のため不明確になっているが、国連のホームページに、審査をやる、そのためのNGO提出レポートは9月14日を期限にするというのが載った。
委員会のリストオブイシューズには、自民党憲法草案にある緊急な事態のときには、憲法や人権規約に定めた人権が例外的に停止されるとこういうことについて懸念意見を述べ、有事について規定する法令の改正案が規約4に準拠しているかの点について説明せよとした。結構高いハードで、憲法改正に踏み込んだ日本政府は一体どんなことを考えているのかと、それを説明しなさいという質問だ。 次に、共謀罪についてだが、組織的な犯罪への対策法の中で、組織的犯罪集団、計画、準備行為などの共謀罪の構成要件が、法的な安定性と予測可能性の原則を遵守していないこと、またテロリズムや組織的な犯罪とは明らかに無関係な判断が含まれていることから、表現集会結社の自由が不当に制限され、自由および安全の権利並びに公正な裁判を受ける権利が侵害される恐れがある―こういう懸念についても回答してくださいとしている。
この委員会の審査にはぜひ市民の代表を送っていきたい。そういうことで、共謀罪廃止のための連絡会の方で募金を募っていくというようなことも考えている。共謀罪反対の運動がもりあがった2017年当時に協力していただいた市民団体、そしてそれ以外の方々にもぜひ新たに名前を連ねていただければと思っている。多くの団体の連名で、この共謀罪に対する懸念が今も続いていて、廃止の声、これを国際社会の中で確認することができるのではないかと思っている。
巨大多国籍種子企業の利益 農家と食糧自給に悪影響
種苗法改悪に反対する
今国会では、農と食のあり方を大きく変質させる危険がある種苗法改定案(3月3日に閣議決定し国会に提出)が審議されている。「法律案を提出する理由」では「植物の新品種の育成者権の適切な保護及び活用を図るため、輸出先国又は栽培地域を指定して品種登録された登録品種についての育成者権の効力に関する特例の創設、育成者権の効力が及ぶ範囲の例外を定める自家増殖に係る規定の廃止、品種登録簿に記載された登録品種の特性の位置付けの見直し、品種登録審査実施方法の充実・見直し等の措置を講ずる必要がある」としている。表向きは「ブランド農作物の海外流出防止」を掲げているが実態はそのようなものではない。
現行の種苗法は、農作物の新しい品種を開発した人や企業に「育成者権」を認めているが、これは著作権と同じものだ。それと同時に、第二十一条で「育成者権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない」とする。これは、農業者が収穫物の一部を種苗として使う自家増殖については「育成者権」をみとめないということで、違反すると思い罰則が科せられる。
だが改正案は、登録品種の一部に限られていた無許可での自家増殖・自家採種禁止を登録品種すべてにまで拡大するとしている。
これで利益を得るものは、バイエル・モンサント、シンジェンタ、ビルモラン、ナンザ、サカタのタネ、タキイ種苗、ライク・ズワーンゲノム編集など遺伝子を操作した作物を開発する多国籍種子企業とりわけ欧米企業だ。
一方で、日本の農家は、禁止対象の「登録品種」を栽培する場合には、種や苗を全て購入するか、または「許諾料」を払って自家増殖するかをということに追い込まれることになる。
この種苗法改正の背景には、安倍政権の「成長戦略」があり、大企業の利益を大幅に増やす狙いがある。
そして、ただでさえ低下中の日本の食糧自給は多国籍企業によっていっそうの打撃をこうむることになる。
種苗法改正案は、ひろがる反対の中で、今国会での成立は見送りになりそうだが、必ず廃案にしよう。
安倍政権の検察完全支配は失敗
新聞労連が声明「当局との距離感を保ちながら、市民の疑問に応える報道」
不祥事連続の安倍内閣が最後に頼るのは、たとえ犯罪事態が明るみに出ても、警察そして検察を自分の言うことを聞く人物で中枢を固めておくことである。自分とお友達の犯罪隠ぺいのために検察ナンバー2の黒川弘務東京高検検事長を定年延長して、検事総長にすえるという見え見えの手口はその切り札だった。
しかし、姑息な目論見は圧倒的世論の批判を受け、なおかつ黒川氏とマスコミ記者・元記者の「賭けマージャン報道」で検察庁法改正案は廃案となり、見事に破産した。2017年には陸上自衛隊の駐屯地内で賭けマージャンをしていた隊員9人が停職の懲戒処分を受けた経緯がある。だが、賭けマージャンでの黒川処分が懲戒にはならない「訓告」というきわめて軽いものだったことは、ますます批判の声を広げることになった。
かつてのロッキード事件のとき日経連の桜田武は「日本はこれから危機を迎える、しかし検察・警察・裁判所および所要の官僚機構がしっかりしているならば、もう一つは、職場を基礎とする労使関係が安定しているならば、この危機を乗り越えることができる」と述べていた。いま、非正規労働者の増大・格差拡大などにより労使の安定帯は緩み始めているが、同時に「検察・警察・裁判所および所要の官僚機構」の劣化も著しい。
今回の事件では、マスコミの危機的な状況もまたあきらかになった。黒川氏の賭けマージャン仲間は、産経新聞の記者2人と朝日新聞の管理職社員(元記者)だった。すくなくとも権力と一定の距離を置くべきマスコミがこのざまである。
日本新聞労働組合連合は、5月26日に「声明「『賭け麻雀』を繰り返さないために」(別掲)を発表した。
また、新聞労連、民放労連、出版労連などで構成する日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は、5月29日に森雅子法相あてに、「『法務・検察行政刷新会議(仮称)』に関する要請書をだし、そこでは「法務・検察に対する国民・市民の不信・批判が高まっている要因の中心は、『法務・検察と首相官邸との関係性』にあります」と指摘している。
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新聞労連声明・「賭け麻雀」を繰り返さないために
新型コロナウイルスの感染拡大をうけた緊急事態宣言下、産経新聞の記者2人と朝日新聞の管理職社員(元記者)が、東京高検の黒川弘務検事長と賭け麻雀をしていたことが発覚しました。賭け麻雀は賭博罪に抵触します。報道機関の人間が、権力者と一緒になって違法行為を重ねていたことは、権力者を監視し、事実を社会に伝えていくというジャーナリズムの使命や精神に反するもので、許しがたい行為です。しかも、この賭け麻雀は、検察庁法改正案に関連して、黒川氏の異例の定年延長に市民の疑念や批判が高まっているさなかに行われました。市民はメディアと権力の癒着を感じ取り、黒川氏の問題を愚直に追及してきた新聞記者たちの信頼をも揺るがしています。
今回の問題は、3人を断罪すれば、解決する話でもありません。
公権力の取材においては、圧倒的な情報量を持つ取材先から情報を引き出すために、新聞記者は清濁合わせ呑む取材を重ねてきました。特に、捜査当局を担当する記者は、ごく少数の関係者が握る情報を引き出すために、「取材先に食い込む」努力を続けています。公式な説明責任に消極的な日本の公権力の動きを探り、当局が把握している事実を社会に明らかにしていく上で有用とされ、そうしたことをできる記者が報道機関内で評価されてきました。
しかし、こうした取材慣行は、ときに「犯人視報道」による人権侵害につながっていると指摘され、取材記者のセクシュアルハラスメント被害の「泣き寝入り」の温床にもなってきました。長時間労働を前提にしてきた無理な働き方で、育児などとの両立も難しく、結果的に女性が育児を担うことが多い日本社会において、女性の参入障壁にもつながっています。
さらに、捜査関係者と並走することによって政治権力の不正を暴き、権力監視の一端を担うことができた環境からも変化しています。平成の30年あまりの政治・行政改革によって、首相官邸への権限集中が進みました。今回の黒川氏の問題で取りざたされたように人事権を通じた官邸の影響から捜査当局や裁判所も無関係とは言えません。逮捕状の執行が見送られた末、刑事事件では不起訴になったものの、民事裁判で性暴力が認定された伊藤詩織さんの事件や、公文書を改ざんした当時の財務省幹部らが全員不起訴になった森友学園事件のように、捜査当局の判断に市民が疑問を感じるケースが増えています。当局との距離感を保ちながら、市民の疑問に応えられる取材・報道のあり方が強く求められています。
新聞労連は、事実を報じるためにあらゆる取材手法を駆使する記者に敬意を表し、安易な取材規制には反対です。しかし、報道機関を支えているのは、権力者ではなく、市民であることを忘れてはなりません。市民の信頼なくしては存立することはできません。森雅子法相が5月26日の記者会見で、今回の賭け麻雀問題を受けて「法務・検察行政刷新会議」を設け、対応策を検討していく考えを明らかにしましたが、公権力主導での取材規制に陥らないよう、報道機関が自らを律して、改革をしなければなりません。
「賭け麻雀」は市民や時代の要請に応えきれていない歪みの象徴です。
次世代の記者が同じような歪みを我慢し、市民からの不信にさらされないように、各報道機関の幹部には体質の転換に向けた具体的な行動を強く求めます。
2020年5月26日
監視国家化に道を開く危険なスーパーシティー法を廃止せよ!
5月27日、昨年の通常国会で廃案になり、臨時国会でも提出見送りとなった改正国家戦略特別区域法(「スーパーシティー法)が成立した。同日の参議院本会議では、野党側は、個人情報の目的外使用や第三者への提供などの危険があり、問題の多い欠陥法案だと述べたが、与党側は、討論を行わず、一気に、採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立させられた。
内閣国家戦略特区は、「スーパーシティー構想」の背景に「AI(人工知能)及びビックデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるような都市設計の動きが、国際的には急速に進展」していることをあげ、また、世界各国でも「まるごと未来都市(エネルギー、交通などの個別分野にとどまらず生活全般にわたり、最先端技術の実証を一時的に行うでのではなく暮らしに実装し、技術開発側・供給側の目線ではなく住民目線で未来社会の前倒し実現)は、未だ実現していない」として、日本もそれを目指しているが「我が国にも、必要な要素技術は、ほぼ揃っているが、実践する場がない」として先行実験実施の体制を作るという。
この法律は、AIやビッグデータなどの先端技術を活用して未来の暮らしを先行導入するとして、行政や企業などが有する各種データを分野横断的に収集・整理する「データ連携基盤」(都市OS)の整備事業を法定化するものである。また複数分野にわたる規制改革を一括して実施できる手続きも定め、キャッシュレス決済、行政手続きのワンスオンリー化、遠隔教育・医療、自動走行など、複数の先端的サービスを同時に実装する実験を行うという住民や企業のデータを活用しながら、最先端技術の実証実験を街全体で行うものだ。
これは個人のプライバシーと権利を侵害するもので、日本を「監視社会」とする重大な危険性をもつものである。
共謀罪NO!実行委員会と「秘密保護法」廃止へ!実行委員会の声明「『スーパーシティ』法案を廃案にしよう!」(5月17日)は、二つの「重大な問題点」を指摘している。第一に「こうした構想は住民のニーズに基づいたものとならず、決定されたサービスを享受したくなくても、自分の情報やサービスの提供を拒否することができないこと」、第二に「住民の個人データが一元的に管理・利用され、監視社会に道を開く危険性が高いこと」をあげ、「これまでの国家戦略特区の在り方を見ているとその説明を鵜呑みにするわけにはいきません。特区担当大臣・首長・事業者などで構成する『区域会議』が住民の意向を受けて実施事業を選択することになっていますが、住民の意向の反映についてはかなり怪しいと思われます。しかも『区域会議』から提案を受け取った首相が関係省庁に特例措置の検討を要請できる『総理認定』という仕組みが用意されており、首相に包括的に規制緩和の対象を特定できる権能を与えています」としている。
武委員長、湯川副委員長の保釈かちとる
関生事件・勝利に向けて闘いを強化しよう
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部にたいする悪質経営、右翼そして警察・裁判所などの一体化した労組破壊攻撃の刑事弾圧は前代未聞の酷さだ。デッチ上げ口実による同労組幹部と組合員に対する不当な逮捕と長期勾留は絶対に許されない。弾圧は労働運動そのものの存在すら否定する暴挙である。関西生コン支部にたいする支援の輪は、各地の労組や市民団体をはじめ労働法学者や弁護士、自治体議員に広がっている。
武建一委員長は、2018年8月28日に逮捕され、なんと1年9ヵ月にわたる勾留されていたが、5月29日にようやく保釈が認められた(勾留期間・641日)。6月1日には、武委員長とともに逮捕された湯川裕司副委員長の保釈も認められた(同・644日)。
6月5日、全日本建設運輸連帯労働組合(菊池進委員長)、同近畿地方本部(垣沼陽輔委員長)、同関西地区生コン支部(武建一委員長)は連名で、「全国のみなさまへの御礼に代えて 武委員長・湯川副委員長の640日ぶりの保釈にあたり」を発表した。そこでは「あらためて言うまでもなく、この『関西生コン事件』は、関生支部の組合員と事業者がのべ89人逮捕され、のべ67人が起訴されるという、組合活動を理由とした刑事弾圧事件としては戦後最大規模の事件です。今回の2人の保釈でようやく全組合員の保釈が実現しました。しかし、すでに多くの機会にお知らせしてきたとおり、保釈されたとはいえ、裁判所は、武委員長や湯川副委員長をはじめ多くの組合員に対し、組合事務所への立ち入りや組合員同士の
接触、面会、電話、メールの一切を禁止するとの保釈許可条件をつけています。事実上の組合
活動禁止にほかなりません。これら憲法違反、ILO条約違反、国際人権規約違反の保釈条件を取り消させることが焦眉の課題です。しかも、警察・検察・裁判所が一体となった労組壊滅作戦に終止符が打たれたと楽観的にとらえることは時期尚早だと私たちは認識しています。大阪広域生コン協組が主導した関生支部
排除の攻撃もつづいています。ひきつづき警戒心を高め、反撃の条件づくりに全力をあげていく決意です」とアピールした。
武委員長、湯川副委員長を取り戻すことができ、闘いは勝利にむけて新たな段階に入った。デッチアゲ事件の全面無罪をかちとる闘いと、、コロナ禍の中で進行する解雇、賃金・労働条件切り下げ、労組活動の権利はく奪を許さない運動を強めよう。
コロナショックと世界恐慌
関 考一
J 長期的に低落する日本経済と「再成長」の幻想
アベノミクスの名目は経済を再び成長させ所得と貯蓄の増大を目指すものであったがその失敗は覆い隠せなくなっている。日本経済の停滞の問題は、安倍政権以前から長期的傾向として存在している点は疑いのない事実である。図2-1は、成長率が高度成長期は毎年平均で9・3%、これがオイルショック〜バブル期には平均4・3%と半減し90年代からは約1%まで落ち込んでいることを示している。この長期的衰退の要因は、日本の人口動態と密接な関連があり少子高齢化が大きな影響を与えていることは明白である。他の要因の中でも注目すべきは、アベノミクスによる日銀のETF(上場投資信託)の購入=株の爆買いによって2020年3月末で日銀保有ETFの総額が31兆1738億円(時価)になったことである。日銀による買い入れは民主党時代に4500億円で始まったが、黒田総裁の下で実に69倍に膨れ上がった。コロナショックで年間購入額を6兆円から12兆円に倍増させたこともあり今や日銀は日本企業の「大株主」となっている。3月末で株式を保有している上位には「ユニクロ」のファーストリテイリング(保有シェア19・6%)ファミリーマート(16・93%)など10%以上所有する企業は56社に上る。本来日銀の役割は金融システムと通貨の安定を保ち、金利の操作等を通じて民間経済への間接的影響を行使する金融政策にある。しかし日銀が特定企業の株主となることは、その利害に関与することになり、それは金融政策を逸脱し、国会の承認を受けない財政政策であり財政民主主義の破壊である。日銀の株式購入は大企業=東証一部上場の約2200社だけが恩恵を受け、残りの大企業1万社・中小企業358万社を排除している。それは日本の巨大企業が新技術開発や産業構造の変革等を免れて「既得権益」に安住し内部留保を大量に溜め込むことによって、経済成長率の低迷を引き起こしているのである。それはまた、株式を購入しているG7の中央銀行は日銀以外にはなく経済成長率がOECD(経済協力開発機構)37ヵ国中34位(2018年)と低落していることに表れている。
K利潤率低下の法則と恐慌
T 利潤率低下の法則とは何か
利潤率の低下の法則とは、資本の蓄積に伴って剰余価値を不変資本により多く投入すると資本の有機的構成が高度化し、それが利潤率を低下させる基本的要因であり、利潤率の低下は資本主義的生産の下での生産力の発展の表現であることをマルクスがはじめて明らかにした。これを、不変資本C、可変資本V、剰余価値Mとする式で表せば、資本家が剰余価値M(生活に必要な労働を超えた剰余労働《不払労働》が対象化された価値)を、可変資本V(労働力)よりも不変資本C(生産手段の購入資本)に多く投資すると、資本の有機的構成(不変資本C/可変資本V)が高度化し、総資本(C+V)に対する剰余価値Mの比率が低下する。すなわち、利潤率‘p=は傾向的に低下する。‘m(剰余価値率)はM/Xであるから‘mが一定であれば、資本の有機的構成(‘C)が高度化するにつれて利潤率(‘p)は低下する。つまり、剰余価値Mを総資本(C+V)で割った数値が利潤率‘pとなる。すると、資本家が不変資本Cに投資すればするほど分母が大きくなって利潤率はどんどん低下することになる。マルクスはこの法則の重要性について「資本主義生産にとってこの法則は大きな重要性があるのであって、アダム・スミス以来の全経済学はこの法則の不可解さの解決をめぐって旋回していると言ってよい」(資本論第3編第13章)と述べている
U 利潤率低下の法則の特質は「傾向的な展開」にある
資本主義的生産の目的は資本の増殖である。すなわち剰余労働の取得であり、剰余価値、利潤の生産であるから、そのために生産力を絶えず発展させるにもかかわらず、それを追求することが利潤率の低下を引き起こすのである。したがって利潤の増大を目指す資本の傾向と利潤率の低下は絶対的に矛盾することになる。そのためマルクスは、資本主義的生産自身が自己を否定する、資本主義的生産の「制限」と「矛盾」を示す法則として重視したのである。「利潤率の下落は、…資本主義的生産の過程の発展を脅かすものとして現れる。それは過剰生産や投機や恐慌を促進し、過剰人口と同時に現れる過剰資本を促進する」(同前第15章)のである。そのため資本は利潤率の低下をより高い比率の投下総資本量の増大によって埋め合わせて利潤量を増大させようとする必然的傾向を生み出すことになる。マルクスはこれを「増大する絶対的な利潤量を同時にともなう利潤率の低下という二重性格の法則」と指摘している。またこの利潤量の増大とともに利潤率の低下に対抗的に作用する一般的な諸要因―剰余価値率の上昇、不変資本の低廉化・既存資本の減価、労働力の価値以下への切り下げ、相対的過剰人口の増大、貿易、株式資本の増大―によって「この一般的法則を一つの傾向でしかないという性格を与える」(同前)としている。しかし利潤を目的とする社会的生産力の発展と資本の有機的構成の高度化は進行せざるを得ないのであるから「利潤率の下落を阻むことや遅らせることはできても、廃棄することはできない」のである。(同前)
V この法則の内的諸矛盾の展開とは
資本は利潤率の低下を乗り越えようと生産力を絶えず発展させ、相対的剰余価値の増大、不変資本の低廉化、相対的過剰人口を生み出しながら資本構成の高度化を進行させると同時に、不変資本に比べての可変部分の相対的な減少を進展させる。可変資本の減少は労働時間の延長や労働強度の増大・労働力の価値以下への労賃の切り下げを引き起こし、剰余価値率を上昇させ利潤率の上昇にも寄与するが、それには明確な限界があり、限界に達すればもともと狭い労働者の消費制限を縮小し、市場を狭隘化させ「剰余価値を実現する条件」を喪失することになる。こうして資本は、利潤の増大を目的とする諸方法を行うが、その進行に伴い利潤獲得の諸条件を失っていくのである。「資本主義的生産は、それ自身に内在するこのような制限を絶えず克服しようとするが、しかしそれを克服する手段は、この制限をまた新たにしかもいっそう強大な規模で自分に加えるものでしかないのである。」(同前)
W 利潤率の低下は「競争戦」と投機・信用思惑・恐慌を引き起こす
マルクスは「蓄積に結びついた利潤率の低下は必然的に競争戦を呼び起こす。利潤量の増大によって利潤率の低下を埋め合わせということは…十分に備えのある大資本家について言えるだけである。新たな、独立に機能する追加資本にとってはこのような補償条件は与えられていないので、これからそれを戦い取らなければならない。このようにして利潤率の低下が諸資本の競争戦を引き起こすのであって、その逆ではない。」「ある限界を超えれば、利潤率の低い大資本のほうが利潤率の高い小資本よりも急速に蓄積を進めるからである。この増大する集積は、それ自身また、ある高さに達すれば、利潤率の低下を引き起こす。これによって、分散した小資本の大群は冒険の道に追い込まれる。投機、信用思惑、株式思惑、恐慌へと追い込まれる。いわゆる資本の過多は…利潤率の低下が利潤量によって償われない資本…の過多に、またはこのようなそれ自身で独自の行動をする能力のない資本を大きな事業部門の指導者たちに信用の形で用だてる過多に、関連している」(同前第15章)としている。現実の経済においても低成長の下で「投機、信用思惑、株式思惑」などの冒険の道に突き進む大きな流れがある。その代表格は孫正義氏のソフトバンク・グループであり、投資・買収で拡大してきたが今やその思惑ははずれ巨額の損失と赤字に直面している。第2のサブプライムローンといわれる高金利だが元金保証がないローン担保証券(CLO―信用力の低い米国企業向けの貸出債権を束ねた金融商品)を低金利のもと農林中金やゆうちょ銀行・地銀・信金などが大量に保有しており、破綻が拡大すれば、世界経済に巨大な衝撃を与えるとされる。
X 今日における利潤率の低下の法則の「否定論」とは
利潤率の低下の法則に対し、その「反対に作用する諸要因」がマルクスの予想を以上の強さと大きさがあるとして(a)独占資本主義の最新の技術の独占による特別剰余価値の長期確保(b)独占資本による地球全域の経済支配が巨額の利潤を流れ込ませる体制(c)国家独占資主義体制の確立などを理由として否定する論がある。それはマルクスが資本主義の『「永続的な作用」である利潤率の低下から「一時的な」現象である恐慌や過剰生産を説明した』としてそれを誤りとするものである。しかしこの法則は「傾向的」に展開することに極めて大きな特質があるのであり、利潤率低下と恐慌との関連を「否定」することは出来ない。現在の「ゼロ金利」「膨大な内部留保」「経済成長率の低下」「ITバブル」等の現象は、資本の増殖が利潤率の低下と「資本の過多」によって困難になってきた表れである。「利潤量によって利潤率を埋め合わせることができるわずかばかりの既成の大資本の手中でしか資本形成が行わなくなれば、およそ生産を活気づける火は消えてしまうであろう。生産は眠り込むであろう。利潤率は資本主義的生産では推進力であって、ただ利潤を伴って生産されるものだけが、ただそういうものであるかぎりでのみ、生産されるのである。」(同前)これは現在不足が慢性化しているマスクや医療用品が国内で生産されていなかった理由のひとつである。
L 資本主義の矛盾が収斂する時代の到来
資本主義の成立以来200年あまりが経た現在、《1》世界最大の覇権国としてのアメリカ帝国主義の衰退《2》「生産と消費の矛盾」と「過剰生産」の結果としての膨大な累積債務の重圧《3》新たな労働手段=コンピューターIT生産体制の驚異的発展《4》利潤率の傾向的低下法則の具現化等、資本主義の根源的・構造的諸矛盾が複合的かつ重層的に、そしてまた同時代的に収斂し爆発しようとしている。コロナショックによって景気は悪化しているにも関わらず、各国政府と中央銀行は、大量の資金投入によって株価を人為的に上昇させている。しかし無制限の国債増発による負債の拡大を、永続させることは出来ない。今後実態経済が悪化し混乱が起きれば、巨大な不均衡に対する市場の暴力的な調整は現実化する。この危機の中で私たちが指針としたいマルクスの言葉を写し取って終りとしたい。「しかしおよそ社会改革というものは、強者の弱さによって生じるものではない。それは必ず弱者の強さによって遂行され、また遂行されるであろう」(全集4巻298P)
参考文献 「社会経済学」大谷禎之介 桜井書店 「『資本論』第3部第3編草稿の課題と意義」宮田惟文 季刊経済理論第51巻第2号
せんりゅう
困ったねアベノウィルス自民党
自分だけ大丈夫ですアベ自民
マスクして答弁なおさら嘘っぽい
マスク二枚二枚舌をおもわせて
この危機に儲け処はアベの筋
気が付けば不要不急はアベ総理
先進アメリカいまだ有色蔑視
ゝ 史
2020年6月
複眼単眼
米国市民の闘いと60年安保
5月26日夕刻、米国ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性(ジョージ・フロイドさん)が警官に殺害された。タバコを購入したフロイドさんは偽札を使用した疑いで、4人の警官に拘束されて、後ろ手に手錠をかけられ9分間にわたって首筋を膝で押さえつけられ、殺害された。これは米国社会の人種差別・人権侵害容認の体質の一端を示すものであり、政治的、経済的、社会的差別の氷山の一角を示したものだ。
この事に対して、米国全土50州300以上の都市をはじめ欧州など各地で巨大な抗議行動が巻き起こっている。
米国の各界各層の人びとがこの闘いに連帯を表明し、弾圧に動員された警官達の中からも連帯を示す者が現れている。
これに対してトランプ米国大統領はツイッターなどを使い、「過激派・極左勢力が暴力行為を主導している」などと攻撃し、「市や州が必要な行動を取るのを拒否するなら、米連邦軍を出動させることになる」と軍事力による弾圧を公言した。
連邦軍の弾圧は1992年のロサンゼルス暴動の際に、当時のジョージW・ブッシュ大統領が行って以降はない。
連邦軍を動員するという大統領の方針にエスパー国防長官、マティス前国防長官が厳しく反対した。
市民の闘いが今後どのように展開するか、容易に予測はつかないが、国家の軍隊が市民の正当な抗議行動に銃口を向けるという事態が、世界最大の民主主義国と自称する米国で起きていることに心からの怒りを感じる。
31年前の天安門事件を思い出すまでもなく、国家の軍隊というものは対外的な戦争に対応するだけでなく、治安維持のための弾圧にも使われるという側面を持つことは古今東西の歴史が示している。
戦後の日本でも同様の事態になる可能性があった。
1960年の安保闘争の最中だ。6月15日、日米安保条約改定に反対する闘争の最中、学生デモ隊の中にいた樺美智子さんが警官の弾圧で殺された。これを契機に闘いはさらに全国で高揚し、国会前でも数十万人、全国で数百万人のデモが起こった。
当時の岸信介首相は自衛隊の投入による治安出動を検討した。
すでに前年から自衛隊では戦車(自衛隊では特車と呼ぶ)を含めた出動が訓練されており、市谷駐屯地には1個大隊の治安部隊が待機しており、6月からは練馬駐屯地などで2万人の自衛隊員が出動準備を済ませていた。当時、市民の闘いにおびえた岸内閣の閣僚の間では自衛隊出動の話が日常的に持ち上がっていた。そして、6月13日(14日か)、赤城宗徳防衛庁長官が岸首相の私邸に呼ばれ、強く防衛出動の要請を受けた。しかし赤城はこれを拒否した。武器を持って出動しても、持たなくても、いずれにしても市民の批判は強まり、政権は持たない。「どうしても自衛隊を出動させるというなら、私を罷免してからにしなさい」と岸につめよった。岸は自衛隊投入を断念した。
まさに今回の米国におけるエスパー国防長官の抵抗と同様の事態があったのだ。
改めて自民党憲法改正草案(2012年4月)の第2章から「国防軍の任務」の内乱条項を確認しておく。
第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保する(略)国防軍は第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命
若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
まさにこの項だ。「公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」 (T)
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