人民新報 ・ 第1390統合483(2020年10月15日)
  
                  目次

 菅内閣の学術会議一部会員の任命拒否の暴挙

               逃げ切りを許さず追撃を

● 民意を踏みにじる再度の住民投票

               大阪都構想・大阪市の廃止にNOを!

● 労働者民衆の生きる術を奪う

               関生裁判・不当判決糾弾

● 日朝ピョンヤン宣言18周年

               朝鮮戦争の終結と日朝国交正常化の実現を

● 市民連合が立憲野党会派に要望書

               総選挙勝利向けて共闘をいっそう強めよう

               立憲野党の政策に対する市民連合の要望書  いのちと人間の尊厳を守る「選択肢」の提示を

● 9・18  さようなら原発 首都圏集会

● 9・19  戦争法強行からまる5年 国会正門前行動

● 朝鮮戦争を終わらせる世界1億人署名運動

               「朝鮮半島平和宣言」

● 追悼  徹頭徹尾オルガナイザーとしての生涯 山原克二さん

● 本の紹介  /  オリバー・ストーンの告発 語られなかったアメリカ史@AB

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  極右とネオリベを合わせた菅新政権






菅内閣の学術会議一部会員の任命拒否の暴挙

               逃げ切りを許さず追撃を


 安倍政権の継承と前進を掲げる菅義偉内閣は、前内閣の反動性に加えて、陰湿さが顕著だ。暗く陰謀めいた雰囲気の官邸独裁の強権政治色が強まる。新内閣発足早々の菅自身による理由なき日本学術会議一部会員の任命拒否はその象徴的な表れだ。日本学術会議は、悲惨な戦争を経験し、その反省の上に立って、1949年1月、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命」(日本学術会議法)とし設立されたものだ。
 8月31日、日本学術会議は、新会員105名を政府に推薦したがその内の6名が任命を拒否された(芦名定道京都大学教授、宇野重規東京大学教授、岡田正則早稲田大学教授、小沢隆一東京慈恵会医科大学教授、加藤陽子東京大学大学院教授、松宮孝明立命館大学大学院教授)。任命拒否された会員候補者は、安倍政権の秘密保護法、安保(戦争)法制、共謀罪などに批判的な言動をおこなった研究者とされていが、これが理由で拒否されたとすれば、学問の自由を侵害するきわめて重大かつ悪質な行為であり、安倍内閣の黒川検事長定年延長ごり押し問題と共通する暴挙であり、断じて許されるものではない。
 この政府の暴挙に対して、日本学術会議181回総会(10月2日)は、菅義偉首相あての要望書(「推薦した会員候補者が任命されない理由を説明いただきたい」「推薦した会員候補者のうち、任命されていない方について、速やかに任命していただきたい」)を決議した。
 誰が見てもおかしいこの任命拒否問題に当然にも多くの批判の声が上がっている。学者・文化人をはじめ各界各層に政権批判のうごきがひろがった。立憲野党、市民運動、労働運動団体をはじめ、法律、歴史、映画、演劇、美術、医療など各分野から政府への抗議声明が発表され、首相官邸前などでは連日抗議集会が開かれている。
 国立大学協会の永田恭介会長(筑波大学長)は、過度に政府を忖度することがあってはならない、と述べ、東京大学は五神真学長名で「日本学術会議からの要請に対する真摯な対応を政府に望む」とした。菅の出身校でもある法政大の田中優子総長は「研究内容によって学問の自由を保障あるいは侵害するという公正を欠く行為があったとしたら、断じて許してはいけない」と批判した。国際的にも英科学誌ネイチャーや米科学誌サイエンスなどもこの事件を取り上げ、日本での学問の自由が侵される危険について指摘している。
 これに対し、菅を始め政府側は「総合的、俯瞰的活動を確保する観点から、今回の人事も判断した」「法に基づき適切に対応してきた」、「思想信条が判断に影響したことはない」などと強弁し続けているが、任命拒否の理由の説明すらできないでいる。
 菅は防戦一方で、9日の記者会見で、菅が任命決裁したのは9月28日で、6人はその時点ですでに除外され、99人だったと述べ、学術会議の推薦者名簿は「見ていない」と苦し紛れに答えた。もしそうだとすれば、誰が、6人を削ったのか。その過程・人物の特定がなされなければならないのは当然である。菅が、学術会議の推薦者名簿を見ることなく、6名の任命見送りを決裁したとすれば、これも「適切」とはいえない。ただちに推薦された6人を任命しなければならないのは当然だ。菅には重大な政治責任がある。
 菅の任命拒否は傲慢さから出たものであり、自業自得的に、安倍の黒川検事長問題同様の批判世論を巻き起こしてしまった。
 この窮地からの脱出・逃げ切りのために、争点ずらしの嘘に嘘を重ねる手法を取ろうとしている。自民党は「学術会議」の在り方を検討し直す必要があるとして作業チームを新たに設けるとした。河野行政改革担当相は、政府の事業全般の検証の中で「学術会議」の予算や機構などについて、検討していくと述べた。甘利明衆議院議員にいたっては、そのブログに、「日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の『外国人研究者ヘッドハンティングプラン』である『千人計画』には積極的に協力しています」などと書き込んでいたが、事実無根であることがあきらかになった。政権御用フジテレビの上席解説委員の平井文夫は、「(学術会議会員は)6年ここで働いたら、日本学士院というところに行って年間250万円の年金がもらえるんですよ」発言したが、これがはっきりとフェイクニュースであったことがわかった。菅擁護論は総崩れだ。
 任命拒否に抗議する世論を大きく広げ、菅内閣をおいつめよう。


民意を踏みにじる再度の住民投票

        
大阪都構想・大阪市の廃止にNOを!

 大阪市を廃止し、4つの特別区に分割(新「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」)するという大阪都構想の住民投票(「大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票」)が11月1日に予定されている。大阪市は消滅し、政令指定都市としての権限も失われ、政策や財源に関する裁量権が大幅に減少する。そして、自前の病院はなくなり、水道料金などの値上げなど行政サービスの低下は明らかだ。橋下時代の2015年「都構想」の賛否を問う住民投票では反対多数となった。だが、今回、大阪維新の会などは、公明党を取り込んで、再度、住民投票を強行しようとしている。維新の大阪府政・市政は、コロナ禍の拡大という状況で、PCR検査の拡充など真剣な対策を取っていない。そもそも病院・医療体制を壊してきたのは維新の会だったのである。しかも、この時期に、あえて住民無視の自治体民営化の強行をおこなおうとしているのだ。断固反対し、住民投票に勝利していかなければならない。

 台風14号接近の中、10月10日の土曜日午前10時、大阪府民は大阪市役所横の中之島公園に集まった。集会は大阪・市民交流会がよびかけた。
 コロナパニックという状況で国から地方自治体までが右往左往しているにもかかわらず、党利党略を最優先して、大阪維新の会と公明党によって、住民投票が行われるが、今回の住民投票は我欲のためなら何でもやるという橋下ら維新政治の極みといえる。今回も前回と同様に投票率のアップが勝敗の要となっている。
 集会途中で、天候は急転し雨は上がり、700人が御堂筋に向けて、パレードに出発した。太陽がギラギラする陽気の中で2時間かけてなんばまで行進した。GO TOトラベルキャンペーンの影響でなんば界隈は車も多く人出で繰り出してきており、シュプレヒコールひとつあげなかったが、拍手や車イス大阪に人からの声援があり、この日の行動は、都構想反対・住民投票の勝利に向けての闘いの大きなスターとなった。これから、大阪の各地域に入って、都構想のウソを暴露していくことを決意しあった。

大阪市内での活発な活動

 11日の日曜日の午後には、阪急淡路駅の東西商店街で、1時間ほど「大阪市廃止反対!」を訴えて、のぼり・ポテッカー(ポスターでもなく、ステッカーでもなく、その中間的なもの)、さらにビラをまいてアピールした。ビラは約350枚ほどをまいた。
 自民党大阪府連は、完全に一致した対応ではないが、大阪市廃止の都構想に反対の議員が多数だ。この商店街は自民党市議の地元で、「都構想反対」ののぼりも立っていた。当日、都構想反対の他のグループもいたが、かれらはよそに移動してくれるなどしてくれた。あと3週間の切迫したとりくみだ。前回の投票時での活動は個人だったが、今回は違って、グループ行動になっている。政令指定都市返上を市民が選択しないように頑張っていきたい。


労働者民衆の生きる術を奪う

      
 関生裁判・不当判決糾弾

 連帯ユニオン関西生コン支部にたいする弾圧は、2018年以来、ストライキやビラまきなどの組合活動を理由として刑事事件がつくりあげられ、のべ 81人もの組合員が逮捕され、4か所の裁判所(大阪、大津、京都、和歌山)で8つの事件に分けて刑事裁判がつづいている。

 10月8日、「大阪ストライキ第2次事件」の一審判決が大阪地方裁判所で出された。この大阪地裁が、最初に出される判決だ。この事件は、2017年12月に、関生支部と全港湾大阪支部が「運賃引き上げの約束を守れ」と要求したストライキおよび付随した団体行動を威力業務妨害だとしたものだ。
 当日8時前から大阪地裁前の西天満若松浜公園には、降りしきる雨と風の中、早朝から労働者や市民グループが続々と結集してきた。今日は、この間の大量不当逮捕そして起訴され、とくに640日も連帯ユニオン関西生コン支部委員長・副委員長を長期拘留して組合弾圧を許してきた警察・検察のデッチ上げ事件の第一弾の大阪地裁の判決日だ。
 今回のでっち上げは、正当なストライキを「威力業務妨害罪」として現場にいない組合執行部が逮捕・起訴されたものだ。
 集会に結集した仲間はやく250名で、傍聴抽選後判決まで、シュプレヒコールや決意表明がなされた。
 10時に判決が出たが、その判決たるや、役員、組合員の二人に対して、ともに懲役2年6ヵ月・執行猶予5年という検察の主張を丸のみにした求刑通りの有罪判決であり、まったくの不当判決だ。
 判決後の集会では、この不当きわまる司法の攻撃に、労働者からはつぎつぎにますます強まる風雨ぬ負けず怒りと闘う決意の表明があった。とくに私の心に響いたのは、非正規雇用の教育労働者からの発言だ。今コロナで全国で6万人が解雇されたが、非正規の女性が多い。みんな組合に頼ってきている。なのにストライキで逮捕されは生きてゆく術(すべ)がない。国会では議論もなされていない。裁判闘争しながら職場で権利を広げ権利を主張し労働三権を手にしようというアピールだった。
 この闘いへの無関心・非協力は、いずれわが身に及んでくることになるだろう。火の粉が降りかかってからでは手遅れだ。ストライキが打てるまともな労働組合を多く作り出すことが求められている。


日朝ピョンヤン宣言18周年

        
朝鮮戦争の終結と日朝国交正常化の実現を

 9月17日、文京区民センターで、「日朝ピョンヤン宣言18周年集会〜朝鮮戦争の終結と日朝国交正常化の実現を」が開かれた。主催は「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を」市民連帯行動(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、「3・1朝鮮独立運動」日本ネットワーク)。
 ジャーナリストの布施祐仁さんが、「対米従属の源流-朝鮮戦争と日米安保」と題して講演した。―今年は、朝鮮戦争70年だ。これが日米関係の原点であり、対米従属の出発点だ。その結果、日本の空は、米軍が思うがままに使っており、日本の空とは言えない。イージスアショアなど高価な兵器もアメリカの言うがままに買わされることがつづいている。
 1950年6月、今から70年前に朝鮮戦争がはじまり、当初は、北朝鮮軍が釜山にまで進撃した。アメリカは国連軍という形で戦争に介入し、マッカーサーが仁川に上陸し巻き返した。中国が義勇軍という形で参戦し、その結果、結局、38度線付近という戦争が始まる前のところあたりで膠着状態となり、1953年7月に休戦となった。だが、戦争が終わったわけではなく、依然として、単なる休戦という状態だ。
 朝鮮戦争が始まると、アメリカは、朝鮮に行った米軍の代わりとして、日本に「警察予備隊」を創設させた。こうして憲法9条で軍隊を持たないとしているのに、再軍備が始まった。アメリカの対日講和方針が決まるが、そこでは、講和後にも実質的に占領状態と変わりない特権を保有して、講和後も日本に対する独占的影響力を行使することにされた。こうした形で、1952年4月、講和条約、安保条約、行政協定が発効した。朝鮮戦争で戦う国連軍の司令部は日本にあり、日本全土が後方基地となった。それだけでなく、日本は機雷除去や輸送で米軍を支えた。アメリカは、物資の面で日本の協力なくして朝鮮戦争は戦えなかったし、人的にも朝鮮をよく知っている日本人の協力がなかったら戦えなかったのだ。
 米軍が自由に使えるようにしたいと思っていたが、占領後の安保の下でも、米軍はこれまでどおり日本の全土で自由に基地につかえることをはじめ日本を米軍への全面協力という体制においた。警察予備隊はその後、自衛隊となった。日本の戦力を活用できることは、アメリカの世界戦略にとって、極めて重要であり、米軍との共同してどこでも戦えるようにするために活用するつもりであった。
 日米安保体制は、日本を守ってくれているものといわれ、多くの人がそれを支持しているが、そうではなくなによりアメリカのためのものであることはあきらかだ。
 1953年7月、朝鮮戦争は休戦協定が結ばれたが、和平に向けた政治的合意ではなく、たんなる「停戦」という形がいまも続いている。1958年には中国軍が撤退したが、アメリカは、居残ったままだ。その後、韓国とソ連や中国との国交樹立、南北の国連同時加盟など状況の変化で、孤立感を深めた北朝鮮は核兵器の開発にむかった。そして、朝鮮半島核危機が起こった。アメリカは、北朝鮮の核基地への先制攻撃も考えたが、韓国政府の反対が強く中止せざるを得なかった。アメリカは日本の協力を要求したが、このときは日本は根拠法がないことを口実に従わなかった。
 キャンプ座間、横須賀海軍施設、佐世保海軍施設、横田飛行場、嘉手納飛行場、普天間飛行場、ホワイトビーチ地区に在日米軍基地がある。横田には朝鮮国連軍の後方司令部がある。もし朝鮮半島で戦争が起こった時には日本が自動参戦することになる。
 いま問題になっている「敵基地攻撃能力保持」だが、それは朝鮮戦争が始まってしまったら、在日米軍基地が狙われる、日本に向かってミサイルが発射される前に敵基地をたたくのは自衛権の範囲だという主張だ。しかし、ミサイルが発射されたら防ぐことは到底できない。なによりミサイルを打つような状況を作らせないことが大事だ。そのためにも、日朝国交正常化交渉をすすめなければならない。2002年の日朝ピョンヤン宣言に立ち返って、問題を包括的に解決していく交渉を始めなければならない。また、日本は核兵器禁止条約に参加しなければならない。戦争をおこさせない外交こそが必要なのである。
 つづいて、韓国からは「安倍糾弾市民行動」がビデオメッセージで、闘いの様子が伝えられた。
 朴金ウギさん(在日本朝鮮人人権協会)が、特別報告「生み出され続ける朝鮮学校差別2010―2020」を行った。
 各運動団体からのアピールに続いて、最後に、「9・17日朝ピョンヤン宣言18周年集会アピール〜朝鮮戦争を終結させ、停戦体制から平和協定へ」が拍手で確認された。―朝鮮半島では、日本からの解放と同時にもたらされた南北分断から今年で75年。朝鮮戦争の停戦協定からも67年が経過しましたが、いまだ戦争は終結していません。これこそが朝鮮半島の「危機」の根源です。南北首脳による板門店宣言、史上初の米朝首脳会談は、朝鮮戦争の終結と朝鮮半島の平和体制・非核化へ向かう歴史的転機をもたらしましたが、段階的解決を無視した米国の一方的要求により、こう着状態のまま重大な岐路を迎えています。しかし、米朝共同声明で合意された4項目の包括的目標は同時的かつ段階的に進められることが必要であり、その信頼醸成があってはじめて朝鮮半島の平和体制・非核化も実現可能です。朝鮮戦争を終結させ、停戦協定を平和協定に転換させることがその核心です。…安倍政権は、この間、拉致問題を政治利用し「拉致の解決なくして国交正常化なし」などとしていますが、それ自体が日朝ピョンヤン宣言の歪曲であり、拉致問題の解決も含め日朝関係が一歩も進んでこなかった要因です。私たちは、日本政府が、東北アジアの平和のために、南北・米朝首脳会談で確認された朝鮮半島の平和体制構築と完全な非核化実現のために積極的役割を果たし、日朝ピョンヤン宣言を基礎に、不幸な過去の清算を基礎とした日朝国交正常化を速やかにめざすことを強く要求します。


市民連合が立憲野党会派に要望書

         総選挙勝利向けて共闘をいっそう強めよう


 安倍晋三は8月28日に首相辞任表明を行い、9月16日、安倍政治の継承を掲げて菅義偉内閣が発足した。衆院議員の任期は来年10月であり、それまでに総選挙が行われることになる。立憲野党の共闘をしっかりとすすめ、政権交代に向けて総選挙での勝利を勝ち取らなければならない。
 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(「市民連合」)は、昨年2019年参院選で、「立憲野党4党1会派の政策に対する市民連合の要望書」(13項目)を提起し、それが野党結集の政策の共通土台になった。そして、32の1人区で10議席を獲得するなどで、改憲勢力の3分の2を打ち破った。
 今回の総選挙に向けて、市民連合は、「立憲野党の政策に対する市民連合の要望書―いのちと人間の尊厳を守る『選択肢』の提示を」(別掲)を提起し、各党に要請を行った。
 9月25日、日本共産党への要請では、志位和夫委員長らが出席した。立憲民主党への要請では、枝野幸男代表らが出席した。社会民主党への要請では、福島みずほ党首らが出席した。10月6日、れいわ新選組への要請では、沖永明久事務局長らが出席した。10月7日、国民民主党への要請では、足立信也組織・団体委員長らが出席した。参院会派碧水会への要請では、嘉田由紀子参議院議員が出席した。10月8日、沖縄の風への要請では、伊波洋一参議院議員、高良鉄美参議院議員が出席した。

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市民連合 要望書―立憲野党の政策に対する市民連合の要望書 いのちと人間の尊厳を守る「選択肢」の提示を

はじめに
 私たち、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合は、2015年の安保法制反対運動以来、憲法に基づく政治を求めてきた。しかし、法と道理をわきまえない安倍晋三政権およびその継続を公称する菅義偉政権の下で新型コロナウイルスの蔓延を迎える状況となった。人間の尊厳を顧みず、為政者の自己正当化のために情報を隠蔽してきた安倍・菅政権の対策が的外れであることは、必然の帰結である。我々は今までの運動の延長線上で、法と道理に基づいて人間の生命と尊厳を守る政治を確立するために運動を深化させなければならない。そして自民党政権に代わり、新しい社会構想を携えた野党による政権交代を求めていきたい。
 政治の最大の使命は、いのちと暮らしの選別を許さないことにある。新型コロナウイルスの危機のさなか、医療、介護、福祉など「この人たちがいないと社会は回らない」エッセンシャルワーカーたちが注目を浴びた。と同時に、このエッセンシャルワーカーたちが、この30年間の「小さな政府」や「柔軟化」を旗印とする雇用破壊によって、過酷な労働を強いられてきたことも明らかになった。彼ら・彼女らの過酷な状況は、一部の企業に富を集中する一方で働く人々に貧困と格差を押し付けてきたこれまでの経済システムの象徴である。個々の人間の尊厳、およびジェンダー平等はじめ互いの平等という基本的価値観の上に立ち、このシステムを転換し、社会を支える人々の尊厳を守ること、さらにすべての働く人々が人間らしい生活を保障されることを、新しい社会像の根幹に据えなければならない。
 次期総選挙は、自民党政権の失政を追及する機会であると同時に、いのちと暮らしを軸に据えた新しい社会像についての国民的な合意、いわば新たな社会契約を結ぶ機会となる。野党各党には、この歴史的な転換を進めるべく、以下の政策について我々と合意し、国民に対して選択肢を提示し、その実現のために尽力するよう要望する。

T 憲法に基づく政治と主権者に奉仕する政府の確立

 1 立憲主義の再構築
 公正で多様性にもとづく新しい社会の建設にむけ、立憲主義を再構築する。安倍政権が進めた安保法制、特定秘密保護法、共謀罪などの、違憲の疑いの濃い法律を廃止する。自民党が進めようとしてきた憲法「改定」とりわけ第9条「改定」に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす。日本国憲法の理念を社会のすみずみにいきわたらせ、公正で多様な社会を求める市民、企業、団体との連携をすすめ、安倍政権で失われた民主主義の回復に取り組んでいく。
 2 民主主義の再生
 主権者が、自分たちの生きる公共の場をどのように作り出すか自由闊達に議論し、決めていくという民主主義を取り戻す。そのために、国会の行政監視機能の強化、選挙制度の見直し、市民参加の制度の拡充、学校教育における自由な主権者教育を実現する。また、地方自治体の自由、自立を確保するために、中央省庁による無用な制度いじり、自治体の創意工夫を妨げる統制、操作、誘導を排し、一般財源を拡充する。
 3 透明性のある公正な政府の確立
 安倍政権下ですすんだ官邸主導体制の下で、権力の濫用、行政の歪みが深刻化している。政府与党による税金の濫用や虚偽、隠蔽により生じた市民の政府への不信の高まりが、効果的な新型コロナウイルス対策を妨げている。透明性のある公平な行政の理念のもと、科学的知見と事実に基づく合理的な政策決定を確立し、政策への信頼を取り戻すことが求められている。内閣人事局の改廃を含め、官僚人事のあり方を徹底的に再検討する。一般公務員の労働環境を改善し、意欲と誇りをもって市民に奉仕できる体制を確立する。国民の知る権利と報道の自由を保障するために、メディア法制のあり方も見直し、政府に対する監視機能を強化する。

U 生命、生活を尊重する社会経済システムの構築
 4 利益追求・効率至上主義(新自由主義)の経済からの転換
 新型コロナウイルスの危機は、医療、教育などの公共サービスを金もうけの道具にしてきた従来の改革の失敗を明らかにした。医療・公衆衛生体制、労働法制、教育政策等への市場原理の導入により、社会的な危機が市民の生活の危機に直結する事態が生じている。信頼できる有能・有効な政府を求める世論の要求は高まっている。利益・効率至上主義を脱却し、国民の暮らしと安全を守る新しい政治を目指していく。
 5 自己責任社会から責任ある政府のもとで支えあう社会への転換
 小さな政府路線と裏腹の自己責任の呪縛を解き、責任ある政府のもとで支えあう社会をめざす。新しい社会をつくりあげるために、財政と社会保障制度の再分配機能を強化する。消費税負担の軽減を含めた、所得、資産、法人、消費の各分野における総合的な税制の公平化を実現し、社会保険料負担と合わせた低所得層への負担軽減、富裕層と大企業に対する負担の強化を図る。貧困対策においては、現金・現物の給付の強化と負担の軽減を組み合わせた実効的対策を展開し、格差のない社会をめざす。
 6 いのちを最優先する政策の実現
 新型コロナウイルスとそれに伴う経済危機による格差の拡大を阻止するための政策が求められている。医療・公衆衛生体制に国がしっかりと責任をもち、だれでも平等に検査・診療が受けられる体制づくりをめざす。感染対策に伴う社会経済活動の規制が必要な場合には、労働者、企業への補償に最優先の予算措置を講じ、公平性、透明性、迅速性を徹底する。
 7 週40時間働けば人間らしい生活ができる社会の実現
 先進国の中で唯一日本だけが実質賃金が低下している現状を是正するために、中小企業対策を充実させながら、最低賃金「1500円」をめざす。世帯単位ではなく個人を前提に税制、社会保障制度、雇用法制の全面的な見直しを図り、働きたい人が自由に働ける社会を実現する。そのために、配偶者控除、第3号被保険者などを見直す。また、これからの家族を形成しようとする若い人々が安心して生活できるように公営住宅を拡充する。
 8 子ども・教育予算の大胆な充実
 出産・子育て費用の公費負担を抜本的に拡充する。保育の充実を図り、待機児童をなくし、安心して働ける社会を実現する。教育予算を拡充し、ゆとりある小中高等学校の学級定員を実現する。教員や保育士が安心して働けるよう、待遇改善をすすめる。教育を受ける機会の平等を保障するために、大学、高専、専門学校に対する給付型奨学金を創設するとともに、大学、研究機関における常勤の雇用を増やす。学問の自由の理念の下、研究の自立性を尊重するとともに、政策形成に学問的成果を的確に反映させる。

V 地球的課題を解決する新たな社会経済システムの創造

 9 ジェンダー平等に基づく誰もが尊重される社会の実現
 雇用、賃金、就学における性差別を撤廃し、選択的夫婦別姓を実現し、すべての人が社会、経済活動に生き生きと参加する当然の権利を保障する。政治の世界では、民主主義を徹底するために議員間男女同数化(パリテ)を実現する。人種的、民族的差別撤廃措置を推進する。LGBTsに対する差別解消施策を推進する。これらの政策を通して、日本社会、経済の閉塞をもたらしていた政治、経済における男性優位の画一主義を打破する。
 10 分散ネットワーク型の産業構造と多様な地域社会の創造
 エネルギー政策の転換を高等教育への投資と結びつけ、多様な産業の創造を支援する。地域における保育、教育、医療サービスの拡充により地域社会の持続可能性を発展させる。災害対策、感染対策、避難施設の整備に国が責任をもつ体制を確立する。中小企業やソーシャルビジネスの振興、公共交通の確保、人口減少でも安心して暮らせる地域づくりを後押しする政策を展開する。
 11 原発のない社会と自然エネルギーによるグリーンリカバリー
 地球環境の危機を直視し、温暖化対策の先頭に立ち、脱炭素化を推進する。2050年までに再生可能エネルギー100%を実現する。福島第一原発事故の検証、実効性のある避難計画の策定をすすめる。地元合意なき原発再稼働は一切認めない。再生可能エネルギーを中心とした新しいエネルギー政策の確立と地域社会再生により、原発のない分散型経済システムをつくりあげる。
 12 持続可能な農林水産業の支援
 農林水産業については、単純な市場原理に任せるのではなく、社会共通資本を守るという観点から、農家戸別補償の復活、林業に対する環境税による支援、水産資源の公的管理と保護を進め、地域における雇用を守り、食を中核とした新たな産業の育成を図る。また、カロリーベースの食料自給率について50%をめどに引き上げる。

W 世界の中で生きる平和国家日本の道を再確認する
 13 平和国家として国際協調体制を積極的に推進し、実効性ある国際秩序の構築をめざす。
 平和憲法の理念に照らし、「国民のいのちと暮らしを守る」、「人間の安全保障」の観点にもとづく平和国家を創造し、WHOをはじめとする国際機関との連携を重視し、医療・公衆衛生、地球環境、平和構築にかかる国際的なルールづくりに貢献していく。核兵器のない世界を実現するため、「核兵器禁止条約」を直ちに批准する。国際社会の現実に基づき、「敵基地攻撃能力」等の単なる軍備の増強に依存することのない、包括的で多角的な外交・安全保障政策を構築する。自衛隊の災害対策活動への国民的な期待の高まりをうけ、防衛予算、防衛装備のあり方に大胆な転換を図る。
 14 沖縄県民の尊厳の尊重
 沖縄県名護市辺野古における新基地建設を直ちに中止し、環境の回復を行う。普天間基地の早期返還を実現し、撤去を進める。日米地位協定を改定し、沖縄県民の尊厳と人権を守る。さらに従来の振興体制を見直して沖縄県の自治の強化をめざす。
 15 東アジアの共生、平和、非核化
 東アジアにおける予防外交や信頼醸成措置を含む協調的安全保障政策を進め、非核化に向け尽力する。東アジア共生の鍵となる日韓関係を修復し、医療、環境、エネルギーなどの課題に共同で対処する。中国とは、日中平和友好条約の精神に基づき、東アジアの平和の維持のために地道な対話を続ける。日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止向けた多国間対話を再開する。(以上)


9・18

     
さようなら原発 首都圏集会

 東日本大震災による東電福島第一原発事故から9年半がたった。しかし、事故炉の廃炉はすすまず、無謀な汚染土、放射能汚染水処理政策によって汚染被害は拡大している。避難被災者はいまだに数万人をこえる。
 いま世界的に原発は「廃炉の時代」を迎えた。日本政府が固執する核燃料サイクル政策もいきづまり、原発輸出に至ってはまったく見込みのないことになった。しかし、安倍を引き継いだ菅政権は、原発推進を強行している。いまこそ、脱原発とエネルギー政策の根本的転換のときだ。

 9月18日、日比谷公園大音楽堂で、「さようなら原発 首都圏集会」(主催・「さようなら原発」一千万署名・市民の会)が、ひらかれ、1300人余りが参加した。さようなら原発1000万人アクション呼びかけ人の落合恵子さんは、コロナ状況だからこそ原発に反対する大きな声を上げていこうと挨拶。佐高信さんは、菅に首が変わっただけの安倍政治に対する批判を強めようとのべた。
 つづいて、福島原発かながわ訴訟原告団長の村田弘さん、青森県反核実行委員会の山田清彦さん、原子力資料情報室の沢井正子さん、茨城平和擁護県民会議の設楽衛さん、気候ネットワーク東京桃井貴子さんがアピールをおこなった。
 最後の閉会の挨拶で、さようなら原発1000万人アクション呼びかけ人の鎌田慧さんが、すでに原発推進政策は完全に破綻しているのに菅内閣はかたくなに継続しようとしているが、終わらせることが絶対に可能だと述べた。
 集会を終わり、デモに出発、途中の東電本社前では、抗議のシュプレヒコールをあげた。


9・19

    
 戦争法強行からまる5年 国会正門前行動

 9月19日午後、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会と安倍9条改憲NO!全国市民アクションの主催による「戦争法強行からまる5年 戦争法は廃止!いのちをまもれ!改憲発議とめよう!国会正門前行動」がおこなわれ、3500人が参加した。
 主催者を代表し、小田川義和共同代表があいさつ―わたしたちの運動が、安倍政権の行き詰まりをつくり、安倍退陣を実現した。安倍政治を後継する菅内閣は、敵基地攻撃能力の保有など立憲主義に対抗した政治を進めようとしている。憲法9条をいかし、野党の共闘とそれを市民がさえる力で自公に代わる政権を実現しよう。
 福島みずほ参院議員(社民党)、辻元清美衆院議員(立憲民主党)、志位和夫衆院議員(共産党)ら野党国会議員からの発言があった。それぞれ、防衛費の拡大、南西諸島での自衛隊基地強化など菅内閣の憲法破壊と闘おうと強調した。
 つづくあいさつでは、法政大学教授の上西充子さんが、デモや小さな集会などを積み重ねて闘う力を強めていこうと述べた。
 「止めよう!辺野古埋め立て」国会包囲実行委員会の木村辰彦さんは、防衛省が辺野古新基地建設の「設計概要の変更申請」に多くの人から意見書をだしてほしいと述べた。
 安保関連法に反対するママの会の町田ひろみさんは、みんなでいろいろなところから声をあげていこうと述べた。


朝鮮戦争を終わらせる世界1億人署名運動

           
  「朝鮮半島平和宣言」

 2018年の9月、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長は北朝鮮のピョンヤン市で首脳会談を行い、「平壌共同宣言合意書」に署名した。そこでは、南北軍事共同委員会を早期に稼働し、偶発的な武力衝突防止のために緊密に協議することや、ケソン工業団地とクムガンサン観光事業の正常化、北の核廃棄の具体化、金委員長のソウル訪問などが、書き込まれ、朝鮮半島と東アジアの平和の実現に大きなステップとなった。
 しかし、アメリカそして日本は対北強硬策を変えようとはせず、依然として軍事的緊張は解消されていない。

 韓国の350以上の市民社会団体と宗教界、個人提案者が参加している「朝鮮半島終戦平和キャンペーン」は、朝鮮戦争勃発から70年の2020年から休戦協定締結70年になる2023年までのあいだに、朝鮮半島平和宣言に対する全世界1億人の署名と各界の支持宣言を拡散し、朝鮮戦争を終結させ朝鮮半島の平和を実現するために進めている運動だ。この運動には世界的な広がりをみせ、日本では、「日韓 和解と平和プラットフォーム」などが署名をよびかけている。

 いま、平壌共同宣言2周年を迎え、朝鮮半島に終戦と平和をもたらすために、朝鮮戦争を終わらせる世界1億人署名運動「朝鮮半島平和宣言」(KOREA PEACE APPEAL)が取り組まれている。要請項目は、「朝鮮戦争を終わらせ、平和協定を締結しましょう。核兵器も核の脅威もない朝鮮半島と世界をつくりましょう。制裁と圧迫ではなく、対話と協力で葛藤を解決しましょう。軍拡競争の悪循環をやめ、市民の安全と環境のために投資しましょう」で、この署名は南、北、米、中を含めた朝鮮戦争関連国政府と国連に提出されることになっている。
  [日本語] 朝鮮半島平和宣言(https://en.endthekoreanwar.net/posts/15)


追悼 

    
徹頭徹尾オルガナイザーとしての生涯 山原克二さん

 去る7月23日、元ゼネラルユニオン委員長であった山原克二さんが膵臓がんで亡くなられた。
 73才、膵臓がんとしては永い闘病生活であったがついに他界された。暑いコロナ感染症拡大の中をニュースが駆け巡った。
 山原さんと最後にあったのは昨年7月1日、前田裕裕晤氏の葬式の帰りであった。
 奥さんの押す車いすに乗った山原さんは芦屋の駅から大阪まで闘病生活と運動史(資料整理)について熱心に話された。
 大きな体でいつも眼鏡の奥からにこにこと話されていた。徹頭徹尾労働運動のオルガナイザーとしての生涯であったと言える。

立命館大学の学生運動から全国金属のオルグへ
 大学での生活の様子はよく分からないが日共系の強い構内で活動しづらかったようであった。そのため大阪の社青同の事務所周辺(現PLP)にいることが多かったようである。社青同より「卒業するものがいるので全金に入れて欲しい」との依頼が全金オルグのK氏にあったようである。そうしたいきさつから当初1年ほど内勤として就労されたようである。その後東大阪、奈良担当(6つの地協の1つ)のオルグに出るようになった。

日韓連帯運動へ
 1970年代の東大阪では線材、釘、ボルト、ナット、有刺鉄線など製造業の基本部品を製造していた。そして企業はこぞって韓国への進出を図っていた。山原氏は労働者の戦いを組織しながら韓国における日本企業の収奪構造についても調査することになっていった。日韓、日朝連帯運動に合わせて在日朝鮮人、韓国人の政治犯救援運動も地元から起こってきた。アジアスワ二ー労働者の来日闘争を受けての四国への日本側の支援、連帯運動もその典型の一つであった。

国際連帯

 こうした日韓、日朝連帯運動やベトナム反戦運動に取り組みながらアジアレベルの国際交流にも取り組むことになっていった。草の根の国際交流の一環としてその労働者版APWSL(アジア太平洋労働者連帯会議)が結成されていった。1989年関西での大がかりな代表団の受け入れに山原さんはそれまでの運動と独特の英会話で活躍されていった。

ゼネラルユニオンの組織化と全労協

 英会話学校に働く移住労働者の組織化は福井の中国人労働者、高校、大学での非正規労働者の取り組みとともに瞬く間に拡がっていった。そして支援としての組織化から移住労働者自身が組織運営するところまで発展していったことはつとに知られている。

 私は山原さんとは主としてAPWSLの活動を通じて活動をともにした。外国からの労働者の来日に通訳として関西の労組を訪問した。印象に残っているのはアジアスワニー、台湾訪問、福井の中国人労働者について熱心に語る様子であった。さらにAPWSL関西集会に参加したインドの活動家の一人が後日ノーベル平和賞を受賞したが「彼はわしの家に民泊した」と愉快そうに語っていた。又、ゼネラルユニオン組織化の前哨戦になったフィリピン労働者の労組結成への支援ではオルガナイザーとしての面目躍如であった(日本で初めての移住労働者による労組結成)。

 山原さんの足跡をたどり、資料を整理しながら東大阪での労働運動、日韓、日朝連帯運動をベースにアジアでの国際連帯に拡がっていった。国内での移住労働者の問題に取り組みながらゼネラルユニオン運動へと飛翔していった。労働情報に実務的にも内容的にも関わり全国的に展開していった。 労働戦線再編では全国金属を退任し、全労協運動へと舵をきり、その中でゼネラルユニオン運動を足場に大きな役割を果たした。それぞれの行間からあのおおきな体とにこにこした顔がのぞいている。私より1歳若かったがそれをまったく感じさせない風格があった。

 山原克二さん、ご苦労様でした。そして偉大な足跡を残して下さり、有り難うございました。 (K・K)


本の紹介

       オリバー・ストーンの告発 語られなかったアメリカ史@AB (あすなろ書房)


 若い世代向けの本ではある。読んで一番痛感したのは、アメリカの支配層にア恐怖に基づく差別と偏見が根強いことである。
 とくに人種差別であり、黒人そして東洋人などにたいするみにくい差別である。
 「虫けらのように嫌われていた日本人」という節では、日系人強制収容所、原爆投下からそして第五福竜丸などについてが詳しく書かれている。戦後の「世界をアメリカ化せよ」では、CIAの暗躍によって、弱小国に傀儡政権をつくり民衆を支配していく非道の限りがえがかれている。あらん限りの組織力と宣伝力を使って政治方向性を見据えて、時には非合法的に、民衆を操作していくのが、裏面史としてよくわかる。
 日本の社会もこの手法で、テレビ・インターネットを駆使して対米従属植民地的日本にさせらているのだと感じさせる。目的達成のためなら、どんな手段行使でも「よし」とする。こうしたアメリカの傲慢さは、これにたいする闘いを決意させる。そんなシリーズだ。 (河田良治)


せんりゅう

      だまされない自民菅のアベ色深し

         裏方の吊り紐引き加減も見え

      軍服のような思想を脱ぎなさい

         自助共助、公助うけると後ろ指

      総合的俯瞰的に駄目総理
             
                      ゝ 史

2020年10月


複眼単眼

    
 極右とネオリベを合わせた菅新政権

 突然、政権を投げ出した安倍晋三前首相に代わって「安倍政権の継承」を謳って登場した菅義偉政権の本性が急速に露わになってきた。
 新政権は安倍的な「日本会議内閣」的な「戦争する国つくり」と憲法破壊の強権政治の継承という性格に加えて、「自助・共助・公助」の1周遅れのスローガンを掲げた「新自由主義」路線を推進する構えだ。
 トランプ米国大統領といち早く電話会談をして前任者の安倍前首相の日米同盟強化の路線を確認した菅首相は、その道に不可欠な改憲を強力に推進する方向を明らかにしている。 
 菅首相は「任期中の改憲」を掲げて達成できなかった安倍前首相のように、改憲のための期限を区切った目標は掲げないものの、実質的に強力に改憲を進める決意を示すかのように、今回、成立させた自民党執行部の改憲布陣は異様なほどの挙党態勢になっている。
 菅首相(自民党総裁)は国会対策としては、衆議院憲法審査会会長に細田博之氏(元官房長官、党内最大派閥細田派会長)、衆院憲法審査会筆頭幹事に新藤義孝氏(元総務相)をあてた。自民党憲法改正推進本部長には改憲強硬派の衛藤征士郎氏(元衆院副議長)を配置し、本部長代行の党内きっての極右派・古屋圭司氏は続投とした。
 党改憲推進本部は顧問に閣内にある麻生副総理を除くすべての派閥の会長(石破茂氏を含む)を配置、副本部長には野田聖子氏、稲田朋美氏ら5人の女性を起用、事務総長には新藤義孝氏をあてた。
 8日に開かれた推進本部の第1回役員会には二階自民党幹事長を含め、この連中がほとんど顔をそろえて、デモンストレーションした。安倍政権当時も見られなかったようなこのデモンストレーションに寄せる菅新執行部の改憲への並々ならない決意は軽視できない。
 この会合では、二階幹事長が継続審議となっている改憲手続法の早期成立への決意を確認し、衛藤本部長は、「自衛隊の明記」や「緊急事態対応」などの自民党の4項目の改憲案(たたき台)に手を加え「憲法改正原案」に変更するため、起草委員会を立ちあげることを決めた。
 この改憲布陣に加えて、菅新内閣は安倍前政権同様、改憲強硬派の「日本会議」内閣であることは見逃せない。
 内閣の構成は首相を含めて閣僚21名中、「日本会議国会議員懇談会」メンバーが15名、「神道政治連盟国会議員懇談会」メンバーが18名、このいずれかに属するもの19名という超右翼内閣で、菅首相自身が日本会議議連の副会長だ。この結果、麻生副総理や上川法相はカトリック信徒であるにもかかわらず神道議員連盟懇にも加わっているという摩訶不思議なことも起きている。
 新内閣はこの安倍前政権継承の歴史反動色に、「改革保守」、ネオリベラル的な色合いをまぶして安倍長期政権に飽いた世論を引きつけようとするくわだてが進んでいることも見逃せない。
 菅首相が官房長官当時から飼いならしてきた御用マスコミを使ってキャンペーンをはる「デジタル庁」設置や、「はんこ行政廃止」「携帯電話料金の引き下げ」「GO―TO」キャンペンなど、子どもだましの目先をかえる「政策」が進められている。
 この「改革」を菅が安倍政権時代に設置した「内閣人事局」を使って霞ヶ関の官僚支配を推進する。総裁選の最中に菅は「政府の政策に反対するものは変わってもらう」と脅していた。
 今回明らかになった学術会議人事への前代未聞の強引な介入もその一環だ。学術会議人事への不当な介入は、菅政権の本性を早くも露呈したものだ。(T)