人民新報 ・ 第1393<統合486>(2021年1月15日)
目次
● 今年は自民党政治をおわらせる闘いの年だ
● 生活困窮者を救え!
「年越し・支援コロナ被害相談村」が活動
● 政治を変える大きな運動をおこすために
総がかり行動実行委員会全国交流Web集会
● 米国の混迷と衰退トランプの巨大な負の遺産
● 袴田巌さんは無実だ
東京高裁は再審を決定し真実を明らかにせよ!
● 核兵器禁止条約発効へ
日本政府も核禁条約を早急に批准せよ!
● 核兵器禁止条約を日本政府は批准せよ!
● 労働組合つぶしの大弾圧を許さない 元旦行動
大阪府警包囲して抗議
● テレワークの広がりに便乗する資本の横暴を許すな
日本労働弁護団緊急幹事長声明
● ついに労働者協同組合法が成立
働く人が自ら出資し、運営に携わる「協同労働」
● せんりゅう
● 複眼単眼
菅はもう終わりですか
今年は自民党政治をおわらせる闘いの年だ
緊急事態宣言の発出
G0 T0ラベルの強行などで新型コロナウイルスの新規感染者を激増させたうえ、その結果が内閣支持率の急落となるのに直面して驚愕した菅義偉政権は緊急事態宣言を出した。1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)が対象で、期間は2月7日までとした。諸悪の根源が飲食店にあると決めつけ、その営業時間短縮を要請するとした。今後、要請を「拒否」した企業の店名を公表するなどの制裁を加える方向だという。PCR検査が拡大できず、医療体制を破綻危機のままにしたままでただただ自粛の要請である。深刻さと反省の全くない菅の空虚な呼びかけに、人々は応じない。 その一方で、菅首相自身と自民党首脳が、多人数での会食を何のためらいもなく行ったり、自民党幹部が国会議員は会食をやめられないという発言までするダブルスタンダードの態度では、呼びかけに「冗談じゃない」という声をとどめることはできない。なにより、1カ月で感染抑制は極めて困難という発言が、専門家という名の御用学者すじからさえ出るありさまだ。感染病は、なにより感染者を早期に発見し、それらの人びとを隔離・保護することが大前提だ。にもかかわらず東京オリンピック・パラリンピックの開催をめざし、感染拡大の危険性を無視しての初動対応の失敗、大企業からの強い要求で経済優先政策を強行したさまざまなG0
T0キャンペーン(トラベル、イート、イベント、商店街)が、感染蔓延の大きな要因となった。安倍・菅内閣は、「後手後手」というよりも、感染蔓延の決定的な失政をおかしたのであり、重大な責任がある。
菅内閣支持率急落
感染は一都三県にとどまらず、関西二府一県、愛知なども感染状況は悪化の一方であり、「緊急事態宣言」対象地域にするように強い要望がでている。この動きは全国化することは必至であり、菅政権へは、地方自治体からも批判が強まっている。
なにより、全国の多くの人びとが、政権に対する批判、怨嗟の声を上げるようになってきている。菅内閣は、昨年9月16日に発足してから、四か月もたたないうちに窮地に立たされている。共同通信社の全国電話世論調査(1月9、10両日に実施)によると、菅内閣の支持率は41・3%、不支持率は42・8%で、不支持率が支持率を上回った。支持率は前回昨年12月から9・0ポイントの続落である。また、新型コロナウイルス感染拡大で、1都3県に再発令した緊急事態宣言については、79・2%が「遅過ぎた」となった。政府のコロナ対応を「評価しない」が68・3%だった。「評価する」は24・9%で安倍政権下を含め最も低いものとなった。そして、内閣不支持理由では「首相に指導力がない」が41・2%が最多である。その他の世論調査でも同じような傾向がみられる。今回の調査が明らかにしたのは、コロナウイルス蔓延をはじめとする菅内閣の政策が行き詰まりを示しているということだ。菅内閣は致命的な失政を犯した。まさに、菅内閣の政治が日本社会を壊しているのである。その結果が、世論調査のこの数字としてあらわれた。
菅内閣の責任・やるべき事
そもそも、緊急事態宣言とはどのような内容を持つものなのかが明らかでないし、その「解除」の条件も二転三転している。専門家分科会なるものが、いっこうに科学的でなく、政権のその時々の都合に合わせた見解を発表する機関となっている。それぞれのメンバーの中には、菅政権との心中を恐れてか、ここにきてようやく違うことも言い始めたが、それも公然と政府方針との違いを強調するものではない。外部からは、コロナウイルス蔓延の危険について批判的見解が多々出ていたが、これら政府機関の「専門家」たちは、G0
T0キャンペーンは感染拡大に問題などと強弁してまったく展望をしめせず、今日の悲惨な状況を生み出したことに責任がある。
政府は、まず、緊急事態宣言の内容についてはっきりと説明しなければならない。そして医療・検査を情勢に追いつくように拡充し、そのための予算措置を講じることが必要だ。
菅政権には退陣しかない!
今年は、衆議院議員選挙の年である。 菅は内閣発足当初、支持率の高いうちに、またボロをださないうちの衆院解散・総選挙をもくろんでいたが、それもできず一定の成果を上げてから、選挙での勝利を狙うようになった。
だが、結局、それも難しくなりそうになってきた。年初の新聞、とりわけ週刊誌は、菅政権は長くないという記事が多く出ている。支持率の急落に直面し、今後の好転も期待薄となれば、どうするのだろうか。緊急事態宣言が出ているような状況では「解散・総選挙」に打って出ることはできない。
3月に来年度予算案が成立した後の4月という見方もあるが、その時にコロナ感染が収まっていることはないだろう。
7月の都議選とのダブル選挙は、公明党・創価学会は都議選に力を集中するので、ここからの選挙協力はむつかしい。まして、このところ公明党・創価学会の力は落ちてきている。公明党・創価学会の強力な支援がなければ自民党の勝利はむつかしい。
2021東京オリンピックの「成功」を背景にした9月総選挙論は、オリンピック開催はむつかしいし、強行開催したとしても何が起こるかわからない。9月には自民党総裁選があり、10月衆院任期切れ近くの選挙ということになるしかないのではないだろうか。コロナ状況を早期に収束させ、経済の回復、失業・倒産の解消などというの夢が現実化することはむつかしい。菅では、選挙に勝てそうもないので、首のすげ替えという動きも自民党内で動き始めている。
市民連合は、「年頭所感」(別掲)で、「『いのちと人間の尊厳を守る選択肢』をともにつくるために、市民連合は、市民と立憲野党の大きく力強い共闘」を呼びかけた。総がかり行動の全国的展開・強化、市民と立憲野党の共闘、立憲野党の強固な結束で、菅内閣を退陣させ、政治の新しい展望を切り開こう。
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市民連合 2021年頭所感
コロナ禍のさなかまたもや唐突に安倍晋三が政権を放り投げ、「安倍路線の継承」を唱える菅義偉がその後継に収まった2020年、後手後手の政府対応によって感染は全国で拡大しつづけ、そのことがまた生活や経済を逼迫する状態を招きました。また、年の瀬を迎えてもなお、元農相の大臣室などでの大手業者からの現金受領、違法の定年延長の対象となった元検事長の賭け麻雀の検察審査会における起訴相当議決、桜を見る会前夜祭での安倍による経費補填とその隠蔽のための国会での100回を超える虚偽答弁、さらに嘘を重ね秘書に責任転嫁を図る前首相の醜悪な姿など、一般市民の健康や暮らしとは無縁の腐敗しきった自公政権のていたらくが改めて浮き彫りになりました。
しかし、そうしたなか菅内閣の支持率は急落したものの、立憲野党への支持は総じて伸び悩み、有権者は「静かな絶望」に慣れてしまったかのようにも見えます。今年行われる衆議院選挙でも、民意は政治そのものに背を向けてしまうのでしょうか。
新年を迎えてもなお、昨年11月に起きた痛ましい事件が胸に残ります。
路上生活を余儀なくされていた女性が未明の渋谷区のバス停で撲殺されてしまったのです。派遣労働に従事していた彼女は、住居を失ってもなお人や政府に頼ることなく「自助」を貫き、遺体が発見された際の所持金はわずか8円だったと報じられています。身を横たわることさえできない排除のベンチで束の間の休息を得ていた彼女は、不意に殴られ冷たい地面で最期を迎えた時に何を見たのでしょうか。
こんな社会、こんな経済、こんな政治は、変えなくてはならない、と思います。
私たち市民連合は、2020年9月19日に『立憲野党の政策に対する市民連合の要望書 〜 いのちと人間の尊厳を守る「選択肢」の提示を』を発表し、以後、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組、国民民主党、碧水会、沖縄の風に、政策実現とそのための共闘態勢づくりを要請してきました。2016年、2019年の2度の参議院選挙において、地方1人区(全32区)における立憲野党と市民の統一候補の擁立に成功し、ついに改憲勢力が議席3分の2を占めることを阻止した実績を踏まえ、2017年の衆議院選挙では限定的に終わってしまった野党共闘を今年2021年こそは大きく成功させて、有権者にまさに「いのちと人間の尊厳を守る選択肢」を提示することを目指しています
。
行き場を失くした人がさらに排除され命さえ奪われてしまうようなことがないように、立憲野党各党が小異を残しつつ大同につくことを、私たちは強く求めます。消費税負担の軽減は重要な政策課題ですが、それだけでバス停で起きた悲しい事件が防げたとは考えません。公平な税制に基づいた社会保障制度の再分配機能の強化が、格差と差別のない社会の実現には不可欠だと思います。また、非立憲的な政権がつづくなか有権者が望んでもいない改憲議論を進めるべきだという意見に私たち市民連合が与することはあり得ません。政治家たちが喫緊の課題から逃避するための見せかけだけの「改革」はもうたくさんです。
党利党略を優先するのは、与党だけでなく野党も同じなのか。そう有権者に見透かされてしまうようなことになったら「静かな絶望」はさらに広がり、衆議院選挙においても投票率が50%を割り込んでしまう恐れがあります。それほどまでに数々の失政や不祥事にもかかわらず「この道しかない」と多くの人たちが思い込まされている現実があります。しかし、私たち市民が立憲野党のいっそうの奮起を促し、各党がそれに応える大きな判断を示すところから、政治は変えられるはずです。
2021年、「いのちと人間の尊厳を守る選択肢」をともにつくるために、市民連合は、市民と立憲野党の大きく力強い共闘を呼びかけます。
2021年1月1日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
生活困窮者を救え!
「年越し・支援コロナ被害相談村」が活動
新型コロナウイルスの感染拡大と感染予防策により、増加する生活困窮者を支援することに目的にして、年末年始の3日間「年越し・支援コロナ被害相談村」が新宿区立大久保公園で行われた。
【年越し・支援コロナ被害相談村実行委員会趣意書】―新型コロナ経済危機によって雇用や職を失った労働者やフリーランサーなどの人たちの相談に乗り、助け合う活動ですから、潮流や党派は関係ありません。純粋に、コロナの影響で職を失い困っている人たちを助けるためのボランティア活動を年末年始の休みを返上でやるものです。実行委員会形式で全ての労働組合、労働団体に有志として参加してくれる人たちを広く募集します。今後、ますます悪化する雇用情勢の中で、皆で協力して知恵を出し合い、困っている人たちに何をすべきか、何ができるのかを話し合って決め、全ての団体と連帯して活動するものです。
この呼びかけに応えて、急きょのとりくみにもかかわらず、趣意書で言うように、「潮流・党派」の枠を超えて、多くの団体、労働組合、有志がボランティアとして参加した。
この3日間で約350人超が参加し、多額のカンパも集まった。
相談村の活動は、困窮者への相談活動を軸に、東京都の「TOKYOチャレンジネット」による宿泊施設への案内と申請手続きの支援、食事および食料の提供と少額生活費給付を行った。相談結果は計337人で、その内女性は57人だった。外国籍は約20人だった。
2008〜9年のリーマンショックによる年越し派遣村と比較して、年代、性別、国籍が広範囲となっていることが特徴だった。(以上の数字等は「年越し・コロン相談村ツイッターより」)
コロナ禍の年末年始には都内ではこれ以外にも「年越し大人食堂2021」、「越年越冬活動(新型コロナ災害緊急アクション)」、「緊急相談会(NPO法人もやい)」等の多くの活動がとりくまれた。
新型コロナウイルスの感染拡大は年明けも拡大の一途をたどっている。
首都圏では緊急事態宣言発令された。
多くの非正規労働者、女性、外国人労働者などの社会的弱者が職を失い、日々の生活に困窮する事態がさらに拡大する。
「コロナ相談村」のような総がかりの支援とともに、政府に対して給付と補償、職の確保などの「公助」を強く求めていくこと必要である。
政治を変える大きな運動をおこすために
総がかり行動実行委員会全国交流Web集会
12月22日、「菅政権に代わる政権で、コロナ危機を乗り越える政治を実現するために、総がかり行動の取り組みも前進、発展が求められます。その論議を深めるために」、総がかり行動実行委員会(1000人委員会、9条壊すな実行委員会、憲法共同センター)の第1回全国交流Web集会が開かれた。
共同代表の高田健さん(憲法9条を壊すな!実行委員会)が主催者あいさつ―2014年に総がかり行動実行委員会が結成されて以降、この6年、団結こそ勝利、連帯こそ勝利で闘ってきた。今日は、全国をつなげて共通の確信を作っていきたい。菅政権の政策は、コロナ無策、軍事化、東アジア緊張、改憲などだが、その菅内閣への支持率は急減している。総選挙にむけて、共闘・候補者一本化を実現しよう。菅政権を共同して倒そう
共同代表の小田川義和さん(憲法共同センター)が問題提起―安倍9条改憲阻止し安倍を退陣に追い込んだ到達点を確認し、安倍政治継承政権にかわる政治を実現しよう。6年間、学者の会やシールズなどと連携し、国会前集会にはのべ43万人が参加した。戦争する国づくりをくいとめ憲法理念を実現するため大同団結し、戦争法廃止、そして辺野古新基地建設反対、共謀罪廃止、朝鮮半島と東アジアの非核平和、森友、加計、桜を見る会疑惑、検事長定年延長、学術会議会員任命拒否など国民的関心の高い課題についても闘ってきた。当面の闘いとして、@改憲反対署名、A政治を変える、B辺野古など諸課題、C市民と野党の共闘で菅政権に代わる政権をつくる、D毎月の19日集会、5・3憲法集会を行う。さまざまな課題での共闘を継続・発展させよう。
「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」から、運営委員の福山真劫さんが、民連合の結成、三回の国政選挙、来る衆院選への取り組みなどについて報告した。
つづいて地方からの発言。北海道(道労連)、長野(信州市民アクション)、岩手(いわて労連)、愛知(憲法をくらしと政治にいかす
改憲NO!あいち総がかり行動)、大阪(大阪憲法会議)、広島(ヒロシマ総がかり行動実行委員会)、山口(山口県平和運動フォーラム)、高知(高知憲法アクション)が、それぞれの取り組みを報告した。
最後にまとめの言葉で、共同代表の藤本泰成さんが、菅政権の幕引きをおこなおう、と述べた。
米国の混迷と衰退トランプの巨大な負の遺産
トランプ時代が終わろうとしている。しかし、大統領選挙をめぐってアメリカ政治は混迷を極めている。
1月6日には、大統領自身が、大統領選挙結果を審議している議会議事堂を襲うように扇動し、それに応じたトランプ支持派群衆が議会内に侵入して破壊行動をおこない、議会審議を中断させた。再開された議会では、ペンス副大統領(上院議長)がバイデンの勝利、次期大統領確定を宣言した。
トランプの大統領任期の終わりが迫ったが、トランプはなお悪あがきをやめようとしない。敗北を認めればこれまでの罪悪が明らかにされ、脱税などの経済犯罪裁判ともなり、トランプ一家の破滅的な未来が到来するからだ。しかし、頼みの綱のペンスも「裏切り」、その他の側近たちも、難破船から逃げ出すネズミのように、ボスからの距離を取り出している。
こうなってもトランプとその熱狂的支持者たちはな、おあきらめていない。今後も、20日の新大統領就任式をめぐって、ワシントンだけでなく全米各地で集会をひらき、極右勢力は武装反乱さえ呼びかけている。
時代の進行は、唯一の超大国アメリカの深刻な現実を全世界に自己暴露するものとなっている。
4年前のトランプの登場の背景には、中国をはじめとする新興勢力の経済的政治的軍事的な力の強大化によって、米の相対的国力の低下があり、それは、米国内の格差・貧困、人種差別の拡大などによるかつてない社会分裂を促進させた。
この事態にいたったのは、アメリカの繁栄をもたらした第二大戦後の国際的条件が喪失したこと、アメリカ国内に歴史的に形成されてきた諸矛盾がついに爆発せざるを得ないところまでに到達してしまったこと、根本的には資本主義の目先の利益だけを追求する搾取・収奪構造にこそある。だが、トランプは、アメリカ民衆の直面する困難を、排外主義、人種差別主義をあおることによって、追い詰められ貧困化する白人保守層を支持基盤とするという戦略によって大統領職を勝ち取ったのであった。
だが、トランプ戦略の実現はもともと無理なものであり、対外的には超大国の地位の一層の後退、対外的孤立、国内的には白人至上主義の蔓延をもたらした。加えて、新型コロナウイルスの蔓延に対して非科学的な言動を繰り返し、対処に完全に逆行して、世界一の感染者・死者をもたらした。そしてBLM運動や女性差別反対運動などさまざまなトランプの政策に反対する動きを活性化させ、米国内に左翼・社会主義潮流の影響を復活させることになった。
トランプの政策は、国内的国際的な矛盾の激化をもたらし、世界史の趨勢を促進する結果を生んだのである。これが、トランプという奇妙な人物の歴史的役割であった。
次期バイデン政権が向かい合う課題は、トランプ政権以前からの難問に加えて、トランプの4年間が付け加えたより解決しにくい米国内の決定的な分断という事態だ。狂信的なトランプ派バイデン新政権を倒すために極端な手段にも出てくるだろう。
新政権発足を直前にして、米民主党は、トランプの大統領職からの解任をもとめて、米憲法修正25条による解任、また議会の弾劾決議の動きを強化している。 現在、議会乱入者たちの逮捕・起訴が続いているが、新政権下でさらに拡大していくだろう。今後も、トランプ支持者への締め付けを続けるのは必至だ。トランプ派とバイデン派の対立は一段と激しくなっていくものとみられる。
こうした中で、バイデンは「融和」を呼びかけたが、アメリカの分断を克服するのは不可能に近い。バイデン、ハリスに対する期待が高まっているが、米国が抱える内外における諸矛盾を、新政権が解決するのはきわめてむつかしいだろう。
アメリカは、一段と、超大国としての地位から滑り落ちていく。このことが、世界情勢に決定的な影響をもたらす。アメリカ頼り一辺倒の日本政府は、深刻な危惧をもって新しい情勢を迎えることになった。菅政権に抗する闘いにとって有利な状況が加わることになるだろう。
袴田巌さんは無実だ
東京高裁は再審を決定し真実を明らかにせよ!
12月22日、最高裁はいわゆる袴田事件で東京高裁の決定を取り消して、審理を差し戻す決定をした。
袴田巌さんは、1966年に静岡県静岡市清水区でみそ製造会社の役員の一家4人が殺害された事件で、死刑が確定した。しかし、その捜査・証拠は杜撰なものであった。袴田さんは、無実を訴えて再審を申し立て、静岡地裁は再審開始を認めたが、東京高裁は再審請求を棄却した。
静岡地裁は、事件の1年余り後に会社のみそのタンクから見つかった犯人のものとされるシャツの血痕のDNA型が袴田さんのものとは一致しなかったという鑑定結果などをもとに再審を認めたが、東京高等裁判所は「鑑定の信用性は乏しい」として再審を認めなかった。
今回、最高裁は、「1年余りみそに漬け込まれた血痕に赤みが残る可能性があるのか、化学反応の影響に関する専門的な知見に基づいて審理が尽くされていない」として、5人中3人の裁判官が、「再審理を同高裁に差し戻す」、2人は「再審を開始すべきだ」とする反対意見を付けた。2人は反対意見の中で、血痕が袴田さんのものではないという重大な疑いが生じているとして、再審を認めるべきだとした。
最高裁決定は、再審開始の結論を出したわけではない。再審が認められるか否かは差し戻し審(東京高裁)での審理次第となる。警察・検察は、自身の犯した杜撰・違法な捜査・起訴を認めようとしていない。袴田さんは、事件当時は30歳、今は84歳である。東京高裁は直ちに再審を決定し、真実を明らかにせよ!
核兵器禁止条約発効へ
日本政府も核禁条約を早急に批准せよ!
条約締結国は86か国に
核兵器が国際法で違法とされる核兵器禁止条約が、1月22日に発効する。核兵器禁止条約2017年7月に採択され、2020年10月にホンジュラスが批准書を国連事務総長に寄託して50か国となり発効要件が満たされた。
いま、条約締結国は、昨年12月9日、新たにニジェールが署名して86か国となった。
核兵器禁止条約は、冒頭に「あらゆる核兵器の使用から生ずる壊滅的で非人道的な結末を深く憂慮し、したがって、いかなる場合にも核兵器が再び使用されないことを保証する唯一の方法として、核兵器を完全に廃絶することが必要であること」をあげている。
8月には、昨年コロナ禍で延期された核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれる。
また年内には禁止条約の締約国会議が予定されている。
広がる核兵器禁止の声
核兵器禁止条約の発効で、核兵器廃絶の動きは加速している。米国でさえも核兵器反対の声は広がっている。昨年9月の「核兵器禁止条約を支持する公開書簡」には、20の北大西洋条約機構(NATO)加盟国、日本そして韓国の元大統領、元首相、元外相、元防衛相、そして元国連事務総長(潘基文)、2名の元NATO事務総長など56名が署名している。それは「1万4000発近い核兵器が地球上の数十カ所の施設や常に巡航する潜水艦の中に置かれており、その破壊力は私たちの想像を超えるものです。責任あるすべての指導者は、1945年に起きた惨劇を決して繰り返させないために今行動しなければなりません。私たちが行動しなければ、いずれ私たちの幸運は尽きるでしょう。核兵器禁止条約は、究極の威嚇から解放された、より安全な世界のための基盤を提供しています。私たちは今この条約を支持し、他国もまたそれに加わるよう働きかけなければなりません。ひとたび核戦争が起きれば、回復は不可能です。予防こそが、唯一の選択肢なのです」とアピールしている。保守勢力の人びとの中でも核兵器・核戦争の危機を押しとどめようと声を上げたのである。
核戦争の脅威は増している
だが、新型コロナウイルスのパンデミックの惨禍が広がる中で、核戦争の脅威は増大している。新型核兵器の開発と蓄積は止まっていない。核超大国のトランプ政権が示したように、核兵器使用・核戦争の引き金を引こうとする国家指導者がいる。まして、サイバー攻撃などによって偶発的な対応が核兵器使用に結び付く危険性はかつてなく高まっている。そもそも、核兵器禁止条約が発効するまでに多くの国家が選択したということがこの脅威が深刻になってきていることへの反応であるのはいうまでもない。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の「世界の核兵器保有数(2020年1月時点)」は次のように報じている。米国・5800、ロシア・6375、英国・215、フランス・290、中国・320、インド・150、パキスタン・160、イスラエル・90、北朝鮮・30〜40(?)となっている。
米ロ両国が圧倒的保有しているが、核兵器の拡散も顕著だ。
核兵器依存日本政府
この核兵器の製造、保有等を違法とする国際規範の誕生は、日本が国是として掲げる非核三原則「作らず」「持たず」「持ち込ませず」の精神と相通ずるものである。昨年末には政権与党の山口那津男・公明党代表は、核兵器禁止は日本に課せられた役割であり会議へのオブザーバー参加すべきだと語った。
だが、菅義偉首相は年初7日の記者会見でも、「署名する考えはない」とし、締約国会議へのオブザーバー出席に関しても「慎重に見極める必要がある」と語った。日本政府の考えは、「日本は唯一の戦争被爆国であり、政府は、核兵器禁止条約が目指す核兵器廃絶という目標を共有しています。一方、北朝鮮の核・ミサイル開発は、日本及び国際社会の平和と安定に対するこれまでにない、重大かつ差し迫った脅威です。北朝鮮のように核兵器の使用をほのめかす相手に対しては通常兵器だけでは抑止を効かせることは困難であるため、日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要です」ということだとし「核軍縮に取り組む上では、この人道と安全保障の二つの観点を考慮することが重要ですが、核兵器禁止条約では、安全保障の観点が踏まえられていません」「核兵器を直ちに違法化する条約に参加すれば、米国による核抑止力の正当性を損ない、国民の生命・財産を危険に晒(さら)すことを容認することになりかねず、日本の安全保障にとっての問題を惹起(じゃっき)します。また、核兵器禁止条約は、現実に核兵器を保有する核兵器国のみならず、日本と同様に核の脅威に晒(さら)されている非核兵器国からも支持を得られておらず、核軍縮に取り組む国際社会に分断をもたらしている点も懸念されます」という点をあげている。あくまで、核抑止力論にたつ米国の核の傘のもとにいるということを強調している。
だが、「米国による核抑止力の正当性」を支持するということは米核戦略態勢の維持のため、日本がその最前線としての一翼を積極的に担うとの宣言である。
条約への参加を求める
日本政府に核兵器禁止条約への参加を求める地方議会の意見書は、520に達した。
様々な市民運動、労働組合などが核兵器禁止条約批准を求める活動を行っている。日本労働組合総連合会(連合)、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)、核兵器廃絶・平和建設国民会議(KAKKIN)の三団体は、「核兵器廃絶1000万署名」に取り組み、12月23日には、署名総数8、247、714筆の目録を外務省で外務大臣政務官に手交した。
核兵器禁止条約を日本政府は批准せよ!
労働組合つぶしの大弾圧を許さない 元旦行動
大阪府警包囲して抗議
コロナ禍の蔓延の中で、資本の側は労働者・労働組合の権利を制限してきている。その典型が連帯ユニオン関生支部への弾圧だ。
この間、大阪地裁が、正当なストライキを「威力業務妨害」として有罪判決を出すなど、警察、悪徳企業、右翼勢力そして裁判所までもがそれに加担するというとんでもない構図ができている。今年は、裁判では判決が出される。闘いを強めていかなければならない。
1月1日、恒例の大阪府警本部前で年初の抗議行動「労働組合つぶしの大弾圧を許さない 元旦行動」が行われた。労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会の主催で、近畿の勝手連や反原発、沖縄辺野古新基地建設反対を闘うなどの様々市民団体や労働組合、自治体議員など総勢400名が結集した。
なにはの法円坂に朝日がさす午前9時過ぎから労働者や市民が続々と集まり始め、NHKビルと大阪府警のビルの谷間に強風が吹き抜ける中、午前10時から行動がスタートした。主催者を代表して、「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」の樋口万浩樋口実行委員長(全港湾大阪支部委員長)が、あいさつ。関生支部坂田冬樹副委員長が、支援へのお礼、経過報と決意表明がなされた。
この一年で組合員全員の釈放は勝ち取ったが、組合活動妨害のためさまざまな禁止条項を強制されているため、武委員長は集会に出ることができなかった。
また東海、九州などからの参加もあった。
集会後は、大阪府警を包囲して抗議の声をあげた。
現在、関生闘争は、地方労働委員会では全面勝利がでている。反面2件の有罪判決など国家権力、大資本が一体となった攻撃が強まっている。自民党、維新の会による人災であるコロナ禍のなかでも、若い人たちがこの闘いはカッコいいと感じ、圧倒的な団結した力を持つために、組織化を進めていこうという決意の集会であった。
テレワークの広がりに便乗する資本の横暴を許すな
日本労働弁護団緊急幹事長声明
新型コロナウイルス蔓延に対する菅政権の失策によって、感染者、重症者、死者の数は日増しに増えている。こうした状況下でテレワークが広がっているが、政府・財界はこの事態をも利用して労働強化を図ろうとしている。
政府の成長戦略会議実行計画(2020年12月1日)は、「第4章
ウィズコロナ・ポストコロナの世界における我が国企業の事業の再構築」で、「ウィズコロナの時代がある程度の期間、続くことを考えると、従来のビジネスモデルを単に維持していくということは難しく、むしろ、積極的に構造改革を起こす必要がある」「時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方として、テレワークなど新たな働き方の導入・定着を図ることが重要である。今回、コロナ禍でのテレワークの実施により、その有効性が確認された。一方で、課題も明らかになった」として、「テレワークの定着に向けた労働法制の解釈の明確化」をかかげた。
日本労働弁護団は、「テレワーク従事者に対する労働時間把握方法等に関する緊急幹事長声明」(2020年12月22日)で、次のように問題点を指摘した。実行計画では、テレワーク勤務時において、自己申告制による労働時間管理が認められることを当然の前提としているが、「テレワークは特に長時間労働を誘発しがちであるという実情がある。連合が2020年6月30日)に発表したテレワークに関する調査では、通常の勤務よりも長時間労働になることがあったと半数超(51・5%)が回答している反面、時間外・休日労働をしたにも関わらず申告していない回答者が
6割超(65・1%)に上った。申告しなかった理由は、「申告しづらい雰囲気だから」(26・6%)や「時間管理がされていないから」(25・8%)が上位に挙がっており、いずれも使用者の労働時間把握が不十分であることを示すものであった。始業・終業時刻をその時点で確認・記録しない自己申告は、実際の始業・終業時刻とは異なる時刻を記入させるなど、曖昧かつ杜撰な時間管理の温床となることから、政府は自己申告による方法は厳に慎むよう指導すべきである」。
また、「実行計画を検討・決定した成長戦略会議の出席者は、経済学者である竹中平蔵氏や企業トップ、総理大臣等であり、労働側の代表者はおろか、厚生労働大臣すら不在の中で、重要な労働政策が決定されているのである。このような労働政策の決定のあり方は、労働政策の当事者の意見をないがしろにするものであり、民主主義の精神に反し、断じて許されない」「加えて、一部の経営者からは、テレワーク勤務時における事業場外労働のみなし制の適用を求める声が広がっている」と批判し、「日本労働弁護団は、長時間労働になりがちなテレワーク従事者に対し、適切に労働時間規制が適用されるべきであること、及び労働政策が公労使の三者間における慎重な議論のもと決定されるべきであることを強く求めるものである」としている。
テレワークの広がりに便乗する資本の横暴を許してはならない。
ついに労働者協同組合法が成立
働く人が自ら出資し、運営に携わる「協同労働」
全会派一致で採択
「労働者協同組合法」が12月4日ついに成立した。公布後2年以内の政令で定める日から施行することになる。
与野党全会派の合意・賛同を得て作成、議員立法として提出されたものであり、全会派一致で採択された。
労働者協同組合法の必要は、各界からも求められおり、1000ちかい地方議会が早期制定の意見書・決議をおこない、労働者福祉中央協議会、日本協同組合連携機構や国際協同組合同盟は強力な支援をつづけてきた。
「法の目的」は「この法律は、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じて事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とすること」と規定している。
日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会の古村伸宏理事長は、同法の成立に当たって次のような談話を発表した。
「今、社会は新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックの中にあり、私たちは出口の見えない不安と混乱のさなかを生きています。その中で『労働者協同組合法』が日本に誕生したことの必然性を感じずにはいられません。法律の意図するものは、単に新たな協同組合の仕組みづくりに止まらず、『自治』『人権』『民主主義』といった、あるべき社会の原理を取り戻す挑戦と受け止めています。…私たちが40年かけて磨き上げた『協同労働』という宝が、社会全体の宝となり、みんなの手に渡る時代、多くの人々がワーカーズコープをつくり、協同労働が身近になる時代が始まります。だれもがこの社会の主体者となり快く働く時代を、みんなで力一杯切り拓いていきましょう。…働くことに誇りあれ。働くことに未来あれ。『協同労働運動』の新たな幕が開く」と述べた。
労働者協同組合法は、みんなで出資し、経営に参加し、生活と地域に必要とされる仕事をおこなう出資・経営・労働を一体化した協同労働を行う組織に法人格を与える法律である。
これまでの日本の法体系では、労働者は雇われる人という雇用労働だけであった。働く人たちが、地域に役立つ仕事を協同して事業を発展させようとしようとしても、それに対応した法律はなかった。
これまでに農業協同組合法、水産業協同組合法、消費生活協同組合法、中小企業等協同組合法の4つの協同組合法がある。
だが、そこで労働する主体に焦点があたった法律なかった。
生協などで働いている人も雇用労働者という位置づけであった。
だが、ワーカーズ・コレクティブ、NPO、障がい者団体などが出資・経営・労働を一体化した働き方をしている人たちは多くいるが、ようやくそれにふさわしい働く人たちが主体になりうる法律ができたということだ。
労働者協同組合とは
労働者協同組合は「労働者協同組合法に基づいて設立された法人で、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織」とされ、@組合員が出資すること、Aその事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること、B組合員が組合の行う事業に従事すること、という「基本原理に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とするものでなければならない」ものされる。
そして、備えなければならない「要件」として、@組合員が任意に加入し、又は脱退することができること、A組合とその行う事業に従事する組合員との間で労働契約を締結すること、B組合員の議決権及び選挙権は、出資口数にかかわらず、平等であること、C組合との間で労働契約を締結する組合員が総組合員の議決権の過半数を保有すること、D剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行うこと、があげられ、「組合は、営利を目的としてその事業を行ってはならないこと」「組合は、特定の政党のために利用してはならないこと」とされている。
社会的に有用な労働・事業
コロナウイルスの蔓延の中で、日本社会の脆弱性が鮮明となってきた。失業、廃業、生活苦そして自死、それらと並行して排除、ヘイトが深刻化している。
長期にわたる新自由主義政策による格差拡大・貧困化、医療・社会保障の切り捨て、安倍・菅政治がこの国を壊している元凶だが、根本には儲け第一の資本主義の原理が横たわっている。こうした時に、労働者協同組合法が成立した意義はきわめて大きい。
その原理は、資本の原理とは違うものである。だが、いまの企業優先社会のなかでの労働者協同組合の発展は、利潤第一主義と対立せざるを得ない。
しかし、この法律が、自民党を含む全会派一致で採択されたことにしめされる状況は、時代が労働者協同組合を必要とする必然性を示すものであるとともに、それが企業社会の補完物、また資本原理への取り込まれという傾向との対立抗争を伴わざるを得ない。
ながい闘いの結果、ようやく労働者協同組合が法認されることになった。この法律をてこにして、社会的に有用な仕事を自ら創り、地域の需要にかなう事業で、主体的に働くこと、多様な雇用機会の創出が期待される。
せんりゅう
ひしょですとウソ吐き捲り涼し顔
レガシィは嘘にまみれたでかい顔
虚偽政権支えていたのは誰だった
AI化アベノアバターもういます
なさけないとんでもないんでスガ
拝金GoToコロナごてごて
ゝ 史
2021年1月
複眼単眼
菅はもう終わりですか
1月8日、菅義偉首相が「緊急事態宣言」についての記者会見をやったが、これが与野党を含めて、すこぶる評判が悪い。
菅首相は一貫してうつむいて原稿を抑揚もなく棒読みした。官邸官僚が作成した文章は菅の自分の言葉になっていない。時々顔をあげれば、眼はうつろだ。
そして20分余りの発言の最後を「いま一度、御協力賜りますことをお願いして、私からの『挨拶』とさせていただきます」と締めたのはお笑い草だ。緊急事態宣言の説明・訴えの首相会見の最後を「挨拶」などと言い間違えた首相は、自分が何をするためにこの場にいるのか理解していないのではないか。
首相はこの日に先立って、1月4日、仕事始めにあたっての記者会見をやったが、その会見に「東京新聞」は社説で「心に響く誠実な言葉で」と注文を付けた。
そして、「首相は『強いメッセージ』が必要と言いますが、国民の共感と協力を得るために必要なのは『強いメッセージ』ではなく、『誠実なメッセージ』ではないでしょうか。いくら間違いを避けるためでも自分の心からのことばでなく、手元の紙に目を落として読み上げるのでは心に響くわけがありません」とわざわざ異例の忠告をしたが、首相の耳には届かなかったようだ。
安倍前首相のプロンプターを駆使した演説も鼻につくが、うつむいて紙を見ながらボソボソやるのも、東北人の私でもさすがに何とも言い難い。政治的立ち場の評価はさておき、キューバのカストロ元首相とは言わないまでも、欧州各国のリーダーたちの演説はこうではないようだ。ドイツのメルケル首相やニュージーランドのアーダン首相などは聞く人々の心に訴えている。誰かが言っていたが、どぶ板と根回しで勝ち上がった日本の政治家はたくさんの人びとに訴える言葉を持たないとか。そうかもしれない。
そして記者会見の質疑応答は担当官が仕切り、あらかじめ通告してあった記者クラブの幹事社からの質問を先にさせ、あとは担当官が指名して数十分で終わる。記者から首相が困るような質問はでない。
以上は8日の会見の形の問題だが、今回の「宣言」の説明の中身もひどい。
「感染爆発」状況ともいうべき緊急事態を招いた政治の責任に関する反省は皆無だ。後手後手の菅政権が、「先手先手」を絶叫して、責任を人々に転嫁して、上から説教している。
対策の決め手となるべき方策は、飲食店の営業時間の制限、テレワークの徹底化、外出の自粛、イベントの人数制限など、人々に対する自粛の要請だ。
これで人びとが協力しなければ、失政は免罪される。昨年末の「勝負の3週間」はどうだったのか。go toキャンペーンは何だったのか。なぜ首相は外国のビジネス関係者の入国制限を拒否するのか。大規模なPCR検査体制はなぜ進められないのか。トランプ政権に強要されて武器の爆買いに走っていたことと比べ、エッセンシャル・ワーカーのみなさんと医療機関への保障が貧困すぎないか。そもそもなぜ保健所体制を削りつくしてきたのか。コロナ禍のなかで衣食住を失っている最貧困層への支援が民間の有志に任されている現状をどう改善するのか。
この事態の中で菅政権はいまなお、東京五輪の実施にこだわっている。これが菅首相の解散戦略と不可分だからではないのか。業界・財界配慮と東京五輪実行へのこだわり、これが菅内閣のコロナ対策を誤らせている二大要素ではないか。
こんな調子では総選挙前に自民党から菅おろしが噴きあがってくるかもね。 (T)