人民新報 ・ 第1395統合488(2021年3月15日)
  
                  目次

● 
デジタル庁NO!

     国民総背番号制・個人情報の官民共同利用を許すな

● 絶対に許されない!

     沖縄戦戦没者の遺骨を含む土砂での埋め立て

● 宗教者共同声明―戦没者の遺骨が含まれている土砂を辺野古新基地建設に使わせてはなりません

● 3・1朝鮮独立運動102周年 東京集会・アクション

     植民地支配の反省を!東北アジアに非核・平和を!

● 九条の会 学習会

     菅政権の成立と改憲問題の新局面―改憲発議阻止のために―

● 第23許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会

     改憲阻止、菅政権打倒の運動の発展にむけて

● 21春闘勝利!けんり春闘

     経団連抗議要請行動

● 辞任で幕引きは許さない。森喜朗 東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会元会長の「女性差別」発言に関する抗議声明(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)

● せんりゅう

● 複眼単眼 /  森差別発言問題は終わっていない






デジタル庁NO!

    
 国民総背番号制・個人情報の官民共同利用を許すな

 3月9日、衆議院本会議で、デジタル庁設置等6法案が審議入りした。菅政権は、マイナンバーの活用拡大、行政手続きのオンライン化、地方自治体のシステム統一・標準化を経済成長につなげるという。政府・与党は今国会中の成立を目指し、9月1日に500人規模で発足させるとしている。
 「デジタル社会形成基本法案」「デジタル庁設置法案」「デジタル社会の形成を図るための関連法律の整備に関する法律案」「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案」「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案」「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案」の6種の法案の狙いは、官民のデジタル化推進による国民総背番号制と個人情報の官民共同利用であり、極めて危険なものであり、絶対に制定を許してはならない。
 デジタル庁は内閣に設置され、「デジタル庁の長及び主任の大臣は内閣総理大臣」で「内閣総理大臣を助け、デジタル庁の事務を統括するデジタル大臣を置」く。その「分担管理事務」は「デジタル社会の形成に関する重点計画の作成及び推進」「個人を識別する番号に関する総合的・基本的な政策の企画立案等」「マイナンバー・マイナンバーカード・法人番号の利用に関すること並びに情報提供ネットワークシステムの設置及び管理」「情報通信技術を利用した本人確認に関する総合的・基本的な政策の企画立案等」「商業登記電子証明(情報通信技術を利用した本人確認の観点から行うもの)、電子署名、公的個人認証(検証者に関すること)、電子委任状に関する事務」「データの標準化、外部連携機能、公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)に係る総合的・基本的な政策の企画立案等」「国・地方公共団体・準公共部門の民間事業者の情報システムの整備・管理に関する基本的な方針の作成及び推進」「国が行う情報システムの整備・管理に関する事業の統括監理、予算の一括計上及び当該事業の全部または一部を自ら執行すること」とされる。縦割り行政打破のためデジタル庁は各府省への勧告権など強い権限を持つ。そして、全閣僚による「デジタル社会推進会議」を新設して政府一丸となって取り組む体制をつくる。
 このように首相直轄の機関であり、首相の目となり耳となるものの創設である。
 「情報提供ネットワークシステム」の関係では、現在、個人情報は、行政機関、自治体、民間に、様々な法律で分散管理されている。その個人情報の垣根をなくし、民間を対象とする個人情報保護法に統合しようする。そのため、マイナンバーの普及・国民背番号制への転換がはかられる。
 本人に同意なしに収集された個人情報が首相の下に集中され、利活用されるが、陰湿・強権の菅政権が何のために使うかははっきりしているだろう。このような法制度による日本社会の変貌はきわめて大きなものになることは明らかである。またこの法案に関連する法律も大変な数に上るものであり、長時間の国会審議、広範な社会的合意が必要である。それを6法案を一本化して内閣委員会、総務委員会のみの審議、まして今国会だけで成立させようとするのは、法案の中身が広く知られるのをおそれ短期に無理やり成立させようとする国会無視の菅政治の暴走いがいのなにものでもない。
 この法案の問題点は、審議初日にもさっそくあきらかになった。所管する平井卓也デジタル改革担当相は、衆院本会議で「多数の誤りがあったことをおわびする。訂正させてもらう」と陳謝したが、誤りがあったのは要綱で9カ所、新旧対照条文で8カ所、参照条文で28カ所もあった。菅政権がいかに焦ってこの法案を出してきたかを自己暴露したものとなった。
 立憲野党やさまざまな市民団体、労働組合などが、デジタル庁法案に反対の声を上げている。共謀罪NO!実行委員会と「秘密保護法」廃止へ!実行委員会は、3月3日、声明「国民総背番号制と個人情報の官民共同利用を狙うデジタル庁設置法等6法案に反対します」で「政権のために、内閣情報調査室が野党の議員は当然のこと、政権党の反対派、官僚の掌握のためなどなどに個人情報が、この情報システムから引き出されないという保障はありません。組合や市民運動家、NGO関係者の個人情報は当然狙われるでしょう。個人情報は誰のものか。当該の市民のものです。私たちは、プライバシー、個人情報を守るために、デジタル庁設置等6法案に断固反対します」とアピールした。そして、審議入りの9日には、国会前で、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会とともに「共謀罪廃止!秘密保護法廃止!デジタル庁NO!」行動を行った。
 デジタル庁設置等6法案反対の闘いを進めよう!


絶対に許されない!

     
沖縄戦戦没者の遺骨を含む土砂での埋め立て

 沖縄・辺野古新基地建設の埋め立て予定海域では軟弱地盤が見つかり、震度1以上の地震が発生すれば護岸崩壊の危険がある。2本の活断層があり、海底から90メートル以深にぐじゃぐじゃの地層という構造だ。この「絹ごし豆腐より軟らかい地盤」が明らかになったにもかかわらず、菅政権は、新基地建設を強行している。沖縄防衛局は、新基地建設に関し公有水面埋立法に基づく設計変更を沖縄県に申請したが、埋め立て土砂の県内調達量を当初計画の約6・7倍にした。その地域は、糸満市・八重瀬町という南部地区が7割以上を占める。南部地区は、唯一の地上戦が戦われたところであり、多くの県民、兵士が犠牲となり、遺骨はまだその地に眠っていて、収集作業は今も続けられている。菅政権は、この遺骨が含まれる本島南部の土砂を辺野古新基地建設に使用するというのである。この1月には、糸満市の採掘業者が沖縄戦跡国定公園内の「魂魄の塔」近くの鉱山での自然公園法に基づく開発届けを県に提出した。県が受理すれば工事再開ということになるところだが、糸満市は意見書を添えて県に届け出を送付しており、県が受理の可否を審査しているところだ。だが、玉城知事は「南部一帯が県民にとって特別な場所だとしっかり分かってほしい」といい、県の対応については「取り得る対応をしっかり確認している」と述べている。自然公園法同法33条2項には「環境大臣は国立公園について、都道府県知事は国定公園について、当該公園の風景を保護するために必要があると認めるときは、普通地域内において前項の規定により届出を要する行為をしようとする者又はした者に対して、その風景を保護するために必要な限度において、当該行為を禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置を執るべき旨を命ずることができる」とある。
 菅は、参院での答弁で、「採石業者において遺骨に配慮した上で土砂の採取が行われる」「厚生労働省と県が役割を分担してご遺骨の収集を進めている」と言い、岸防衛相は「採石業者によるしっかりした対応を求めていく」と述べた。だが、遺骨収集は簡単なものではない。いまも遺骨が見つかっているのである。
 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは、南部に未回収の遺骨が特にたくさん残っていること、余程丁寧に精査しなければ土砂と遺骨の見分けがつかないこと、首相や防衛相の遺骨の扱いを専門ではない業者任せにしていることに抗議し、3月1日から那覇市・県民広場でハンガーストライキを始めた。ガマフヤーとは、沖縄言葉でガマを掘る人=遺骨を掘る人という意味だ。具志堅さんは、「遺骨は石灰岩や土の色と同化している。見た目ではほとんど分からず、手で持った重さでようやく判別できる」「時間の経過とともに骨は崩れる。指や子どもの骨は小さく、どうしても見逃してしまう」とも指摘している。
 3月3日には、具志堅さんたちは、県議会に対して、鉱山開発の中止命令と南部地区の未開発緑地帯の土砂等の採取を禁止する条例の制定を陳情した。

 遺骨を含む土砂による埋め立て工事強行に対する反対の声は広がっている。宗教者による「共同声明―戦没者の遺骨が含まれている土砂を辺野古新基地建設に使わせてはなりません」(別掲)は、すでに15000筆を大きく超えた。3月6日には、渋谷駅ハチ公広場で、「平和をつくり出す宗教者ネット」「基地のない沖縄をめざす宗教者の集い」の呼びかけ、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」「フォーラム平和・人権・環境」「辺野古への基地建設を許さない実行委員会」「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の協賛で、約100人が参加して「沖縄県庁前断食行動に連帯する東京行動」が行われた。

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宗教者共同声明―戦没者の遺骨が含まれている土砂を辺野古新基地建設に使わせてはなりません

「戦没者の遺骨がまじった土砂を辺野古新基地建設に使うなんて、死者への冒涜です」「戦争で亡くなった人の遺骨を、土砂と一緒に軍事基地を造るための埋め立てに使ってはならない」
こう訴え、憤るのは、沖縄戦犠牲者の遺骨を三十八年間、収集してきた沖縄戦遺骨収 集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんです。
沖縄戦でお亡くなりになられた方々の遺骨が収集されないまま、土砂と一緒に、辺野 古新基地建設の埋め立てに使われようとしています。
これは、防衛省がこの4月に、公有水面埋立法に基づき、設計変更を沖縄県に申請した結果、埋め立てに使う土砂の採取地として現行計画にない沖縄本島南部が追加されたためです。本島南部には、今でも多くの遺骨が残存しています。遺骨は死者の尊厳をあらわすものです。遺骨をないがしろにすれば、死者の尊厳を踏 みにじることになるでしょう。命を尊ぶ宗教者として、これを許すことはできません。
 戦争で命を奪われた方々の遺骨を軍事基地建設に利用しないでください。戦争犠牲者への尊厳の念をもって、菅義偉首相は、ただちに沖縄本島南部地域からの土砂の採取を中止すべきです。
今、菅義偉首相が、真っ先に優先すべきことは、遺骨の収集であり、遺骨を遺族の 方々に一日も早くお返しすることです。
物言わぬ遺骨とその魂の叫びは、「遺骨を助けてほしい」と私たちに迫っております。
 戦没者の遺骨が含まれている土砂を戦争のための基地建設に使ってはなりません。これは、戦没者を二度殺すことと同じなのです。 私たち宗教者は、辺野古新基地建設のため、沖縄戦激戦地の土砂使用計画をただちに撤回し、沖縄戦犠牲者の遺族の方々に謝罪することを菅首相に強く求めるものであります。

呼びかけ団体(6団体)
   辺野古に新基地を造らせない島ぐるみ宗教者の会
   日本宗教者平和協議会
   基地のない沖縄をめざす宗教者の集い
   日本カトリック正義と平和協議会
   平和を実現するキリスト者ネット
   平和をつくり出す宗教者ネット


3・1朝鮮独立運動102周年 東京集会・アクション

     植民地支配の反省を!東北アジアに非核・平和を!


 2月27日、「3・1朝鮮独立運動102周年 東京集会・アクション―植民地支配の反省を!東北アジアに非核・平和を!」(主催―「3・1朝鮮独立運動」日本ネットワーク、協賛―戦争させない!9条壊すな!総がかり行動実行委員会)のリモート集会が行われた。
 主催者を代表して渡辺健樹さんが挨拶。今日は、1919年の3・1独立運動、23年の関東大震災時の朝鮮人虐殺、そして長期にわたる植民地支配を問い直す日だ。だが、安倍・菅政権は、植民地主義を反省していないし、北朝鮮との国交正常化すらしていない。米韓合同軍事演習も予定されており朝鮮半島情勢は緊張している。いまこそ平和の意義を問い直すときだ。
 はじめの講演は「3・1運動を記念する意義と方法―歴史喪失に抗して」と題して、外村大・東大大学院教授がおこなった。1980年代以降、日本に深刻な意識の変化が起こった。時系列に沿って様々な出来事の関係をとらえる、それらが現在とどのようにつながっているかを考えるという歴史の手法が失われ、「いま」と「むかし」という区分だけになってしまった。3・1独立運動については、新聞等で言葉の解説がおこなわれて、その言葉を聞いた日本人は多くなったが、いまは、その報道があったとしても韓国大統領の発言が「反日」かどうかということになっている。3・1運動のことは「むかし」のことで、現在とは切り離されている。また、1919年3月の日本の新聞等は、妙な宗教団体に惑わされている朝鮮民衆と報じているなど、相手を独自な判断力を持つ主体、対等な存在とはみなしていないが、これが植民地支配の前提だ。そうした態度は、現在の日本にもある。韓国人の主張は奇妙であり、対話すべき相手ではないと考える日本人は少なくない。なにより、3・1運動に立ち上がった人々がどのような願いを持っていたのかを知ろうとすることが重要なのだ。
 二つ目の講演は、「東アジア共同体の可能性」と題してインサイダー編集長、ザ・ジャーナル主幹の高野孟さんがおこなった。トランプに変わったバイデン政権は、多国間主義を押し出しているが、実は中国に対抗するための旧西側だけの「部分的多国間主義」の可能性が強い。バイデンは、2月19日のミュンヘン安保会議で「民主主義が勝利するために、中国との長期にわたる厳しい戦略競争に備えて我われ米欧は準備しなければならない」と述べた。中国は「敵」ではなく「競争相手」といい、そこはトランプと違うが、米国が西側の盟主で同盟国を率いて悪の帝国に立ち向かうという冷戦時代の図式の亜流である。ドイツのメルケルは、同会議で、「中国はシステム上の競争相手だが、世界的な問題を解決するためには中国は必要だ」といっているが、これが本当の多国間主義だ。いま、世界構造の転換が起こっている。やがて経済規模で、中国やインド、そしてインドネシアやブラジルが米、独、日などを追い越すことになる。これは好き嫌いの問題ではない。だが、冷戦に勝利し唯一の超大国となったと錯覚したアメリカは好き勝手な行動をし、NATO強化・東方拡大、カラー革命などを進めた。いまも米国覇権時代のノスタルジアに浸っているが、それが「インド太平洋構想」だ。あらかじめ誰かを「敵」とし、それに向かって味方を結集しイザとなれば戦争だと身構えるのは時代遅れの「敵対的軍事同盟」の思想だ。だれもを敵とすることなく、すべての国がラウンドテーブルについてあくまで話し合いで解決を図るのが、「集団的安全保障体制」であり、これこそが「多国間主義」というものだ。その原理は国連憲章で説かれており、それに合わせて日本国憲法も作られた。ASEANは、1976年に「東南アジア友好協力条約」で「紛争の平和的手段による解決、武力による威嚇または行使の放棄」をうたった。これに中国、インド、韓国、ロシア、オーストラリア、モンゴル、北朝鮮、アメリカ、EUが加盟し、94年にはこれらの国を含む「アセアン地域フォーラム」ができ、信頼醸成、紛争予防の論議を重ねている。北東アジアでは朝鮮半島非核化のための6ケ国協議ができたが休会のままだ。これを再開し北東アジアの冷戦後遺症克服のための多国間協議の場とすることが必要だ。

 3月1日、新宿駅西口前で、「3・1朝鮮独立運動」日本ネットワークの主催で「3・1朝鮮独立運動102周年キャンドルアクション」が行われ、日本の植民地主義の清算、北東アジアの非核・平和の実現を訴えた。
 3月3日には、アメリカ大使館に対し、米韓合同軍事演習の中止を求める行動がおこなわれた。


九条の会 学習会

    
 菅政権の成立と改憲問題の新局面―改憲発議阻止のために―

 2月17日、文京区民センターで、9条の会事務局主催の学習会「菅政権の成立と改憲問題の新局面―改憲発議阻止のために―」が開かれた。

アーミテージレポート

 九条の会事務局長の小森陽一さんの開会あいさつに続いて、ジャーナリストの布施祐仁さんが「バイデン政権の成立と日米軍事同盟の強化―第5次アーミテージレポートにもふれて―」と題して講演。アメリカが日本に影響を行使するものに、アーミテージレポートがある。これは米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)が発行するもので、リチャード・アーミテージ元国務副長官(共和党)とジョセフ・ナイ元国防次官補(民主党)が中心になってまとめている日米同盟に対する超党派の提言書だ。2000年の第1次レポートは、新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)の実行、有事法制の成立、PKO(国連平和維持活動)への全面参加、BMD(弾道ミサイル防衛)への協力を求め、「集団的自衛権の禁止が同盟協力の制約になっている」といった。2007年の第2次では、改憲論議に期待し、海外派遣恒久法の制定、武器輸出3原則の撤廃、「共同作戦司令センター」の設置などを求めた。第3次が2012年に出たが、「日本は一流国であり続けたいのか、二流国に甘んじることを許容するのか」と迫り、「時代遅れの制約である集団的自衛権禁止」の解消、南シナ海での日米共同監視、PKOでの駆け付け警護などが言われた。2018年の4次レポートは、米軍と自衛隊の一体運用という基地の共向使用、西太平洋の緊急事態に対処する日米合同統合任務部隊の創設、共同作戦計画の策定、武器の共同開発、宇宙・サイバー・AI等ハイテク分野での協力、防衛費の増額(GDP)1%超えなどだ。
 そして、最新の昨年2020年の5次では、「日本は必要不可欠で対等な同盟国となった」「米国と日本は今日、歴史上かつてないほどにお互いを必要としている」「アメリカの外圧の時代から日本のリーダーシップヘの大きな転換」をいい、集団的自衛権の行使容認・安保法制制定と「自由で開かれたアジア太平洋構想」を提唱した安倍政権を称賛し、「アメリカと日本は、中国の台頭を制御するために必要な地政学、経済、技術、ガバナンスという4つの戦略的分野のすべてにおいて不可欠な国」だとして、防衛費1%を問題視し、反撃力とミサイル防衛、日米および内部の指揮統制が今後の課題、「ファイブアイズ」に日本を入れる、第一列島線の戦略的重要性、台湾との一層の協力、日米同盟を核に共通の利益と価値に基づくネットワーク化された連携を強化するとして、米日豪印のQUAD、ASEANとの連携を求めた。これは、日米一体となり、その他の国々も巻き込んで中国に対抗し、中国との大国間競争にアメリカが勝利することを目指すものだ。
 振り返ってみれば、1980年代の米ソ冷戦時代のシーレーン防衛以降、日本は、地域におけるアメリカの「力の優越」を支え、それを「補完」する役割を果たしてきた。ソ連崩壊以後、唯一の超大国として世界支配をめざし、それに対する中東・イスラム勢力などのなどの反撃を押しつぶそうと対テロ戦争を行ってきた。しかし、米国防省は2018年1月に10年ぶりに「国家防衛戦略」を発表し、「テロとの戦い」から「中国・ロシアとの大国間競争」に回帰しようとしている。「米国は軍事的競争における優位性が劣化していることを認識する『戦略的衰退の時代』に生きている」「中国やロシアはシステムの内側から、その利益を利用しながら、同時にその諸原則の価値を既め、国際的な秩序をひそかに傷つけている」「中国は軍事近代化計画を推進し、近い将来にインド太平洋地域の覇権を追求し、米国を追い出し、将来におけるグローバルな優越を獲得しようとしている」と分析し、今後「米国は統合戦力の軍事的優位性を全世界および重要な地域において保持する」「同盟国を軍事的侵略から防衛し、脅迫に対してパートナー国を支援し、共通の防衛の責任を公平に担う」と大きな戦略転換をおこなった。2018年2月には、ホワイトハウスが「インド太平洋における戦略的枠組みに関する覚書」を策定した。これは、@沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線の域内で、中国が制空・制海権を長期間確保することを防ぐ、A台湾を含む第1列島線に位置する国を防衛する、B第1列島線の域外では陸海空など全領域を支配することを目標に掲げている。そして、2019年6月、国防省は「インド太平洋戦略報告」を発表した。そこでは次のようなことが言われた。力による平和の達成のためには、紛争初期からの勝利に向けて備えられた戦力が必要で、戦闘力の高い戦力をインド太平洋地域に前方配備し、高烈度の軍事能力を保有する敵に備えた決定的な攻撃力に向け優先的に投資し、特に遠征能力、空戦力の動的展開、特殊作戦、対潜能力、サイバー・宇宙部隊、ISR(情報収集・警戒監視・偵察)能力を開発する。地域全体でのより動的かつ分散したプレゼンスとアクセスのため、南アジア、東南アジアおよび太平洋州における態勢の発展と能力の調節を追求する。アメリカの同盟とパートナーシップをネットワーク化された安全保障構造に進化させる。経済、政治および安全保障の重要なつながりを認識した上での統合的な取組が必要だ。
 昨年2020年4月には、米インド太平洋軍司令官が「優位性の奪還」と題する報告書を議会に提出した。これは、アメリカにとって最大の危機は通常戦力による抑止力の弱体化であり、アメリカの有効かつ説得力のある抑止力がなければ、中国とロシアはアメリカの利益を奪取するためにインド太平洋地域において大胆な行動をとることになるとして、インド太平洋軍の焦点は、共有された領域におけるアクセスと作戦行動を確実なものにすること、これにより、敵国が第一列島線沿いでアメリカの同盟国に対して侵略行為や強要を行うことを抑止することが可能であるとする。そのためには、精密打撃ネットワーク、特に第一列島線沿いの地上配備型対艦および対空ミサイルを有する組織化された統合部隊の配備、第二列島線沿いの統合防空ミサイル防衛、および分散配備に備えて強化された部隊態勢が必要であり、インド太平洋軍の戦力設計および態勢は、マルチドメインからの能力の集中を可能にするとともに、集中の脆弱性を伴うことなく量における強みを獲得しなければならないという。そのポイントは、分散しているが、陸・海・空・サイバー・電磁波・宇宙のすべての領域すなわちマルチドメインで統合された部隊態勢の構築が必要だとする。第二列島線上の島々は、陸上自衛隊と米海兵隊(沿岸海兵連隊を新編)と米陸軍のマルチドメインタスクプオースで死守し、そこを拠点に、第一列島線の内側に中国軍を封じ込める。これが、アーミテージ報告の「西太平洋における緊急事態に対応する共同統合任務部隊の創設」の意味であり、「共同統合」の課題は、指揮統制を「調整」から「統一」へということに他ならない。
 今後の焦点は台湾だ。1月28日、中国国防省報道官は、「『台湾独立』派に警告する。火遊びをする者はやけどする。『台湾独立』は戦争を意味する」といった。米中双方とも「台湾有事」に勝利するための軍備を進めようとしているのだ。「台湾有事」では、「重要影響事態」または「存立危機事態」で日本に波及というケースが最も可能性が高い。昨年7月19日の朝日新聞は「自衛隊は17年、台湾有事を想定した図上訓練を実施。防衛省関係者は 『台湾有事における日米共同作戦は、3つ存在する』と話す」と報じた。
 2月5日の日経新聞は、自民党外交部会に「台湾PT」を新設し、アメリカの「台湾関係法」と同様の法律を議員立法すべきとの意見もあると報じている。
 こうしたときに、日本がとるべき外交・安全保障政策は次のようなものでなくてはならない。日本、特に沖縄・南西諸島を再び「戦場」にしてはならない。何よりも「台湾有事」をはじめアメリカと中国の戦争を絶対に防ぐ。「抑止力による平和」を信奉し、アメリカの軍事戦略に追随するのは非常に危険であり、ASEAN外交に学び、ASEANと連携して、「誠実な仲介者」の役割を果たすということだ。
 米中戦争の予防は可能である。第5次アーミテージ報告でさえも「競争的共存のための新しい枠祖みをどのように構築するか」と述べている。冷戦時代の米ソとは異なり、経済的相互依存関係から「共通の利益」も大きい。
 すでにアメリカ一国では覇権を維持できなくなっているのであり、多国間の安全保障協方の枠組みこそが求められているのである。

敵基地攻撃能力保有の狙い

 続いての講演は、軍事評論家の前田哲男さんの「敵基地攻撃能力保有策動の狙いと憲法9条」。安倍政権の末期に、弾道ミサイル迎撃システムである「イージス・アショア」の導入(秋田県、山口県)見直し、白紙撤回、導入断念の発表となったが、その一方で、「敵基地攻撃能力保有論」となり、菅内閣は「先送り」と報じられたが、実際には、昨年12月8日の閣議決定で、「イージスアショアの代替措置としてイージス艦2隻を整備する」ことを記載し、また「自衛隊員の安全を確保しつつ、わが国への攻撃を効果的に阻止する必要があることから島嶼部を含む我が国への侵攻を試みる艦艇等に対して、脅威圈の外からの対処を行うためのスタンド・オフ防衛能力の強化のため…多様なプラットフォームからの運用を前提とした12式地対艦誘導弾能力向上型の開発を行う」としている。「スタンド・オフ能力」とは、敵の脅威圏外からの攻撃に対し対抗できる攻撃能力であり、敵基地攻撃能力ということである。閣議決定文書は「敵基地攻撃」を「スタンド・オフ能力」に言い換えただけの言葉あそびにすぎない。「自衛隊員の安全」を名目に、実質的な能力構築への動きが現実に進行中である。21年度防衛予算に盛られた「敵基地攻撃兵器」の開発計画をみると、「12式地対艦誘導弾」の射程を50キロから100キロに延伸(335億円)、F―35に搭載できる「長距離巡航ミサイルJSM」(射程500キロ)の取得(149億円)、相手国のレーダーを無力化させる「スタンド・オフ電子戦機開発」(100億円)などなっている。
 いま、南西諸島に「ミサイル基地の鎖」が形成されつつある。奄美大島〜宮古島〜石垣島に「ミサイル基地ネットワーク」の建設が進行中である。奄美駐屯地・瀬戸分屯地(主装備―03式中距離防空用地対空誘導弾、12式地対艦巡航ミサイル)、宮古駐屯地(主装備―03式、12式)、与那国駐屯地(陸自西部方面隊直轄部隊、西部方面情報隊、沿岸監視隊、警備小隊、レーダー班)で、2019年着工した石垣駐屯地(主装備―03式、12式)となっている。奄美・石垣・宮古への2021年度整備予算額432億円となっている。総合ミサイル防空能力開発費(高速滑空弾等スタンド・オフ能力向上)は1148億円にのぼる。鹿児島県馬毛島に3自衛隊共有の「自衛隊馬毛島基地(仮称)」計画も進んでいる。基地建設に向けて自衛隊が環境アセス開始した。陸上自衛隊が、オスプレイからの「空挺降下訓練」「PAC3機動展開訓練」、海上自衛隊が「水陸両用訓練」「エアクッション艇操縦訓練」、航空自衛隊が「模擬艦艇発着訓練」「連続離発着訓練」「機動展開訓練」を行うとしている。
 そして辺野古新基地の「日米共同基地化」での陸自・水陸機動団第3大隊の配備で密約がなされたと沖縄タイムス(1月25日)が暴露した。こうしたことから「専守防衛」から「抑止・対処」型防衛へ、80年代の対ソ「三海峡封鎖」が「三海域封鎖」として復活して際限ない軍拡競争に突入しようとしている。
 だが、こうしても「安全と安心」は得られない。必要なのは、まず地元の意思尊重であり、そして自衛隊の改編提案であり、長期的には東アジアの平和と安定構想だ。「自衛隊馬毛島基地」の西之表市長選で「反対」の現市長が再選され、阻止派は活気づいている。自衛隊を「専守防衛」にとどめる具体的方策を提起し、INF条約(中距離ミサイル全廃)を東アジアでも実現させなければならない。


第23許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会

     
改憲阻止、菅政権打倒の運動の発展にむけて

 2月27日、第23許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会がオンラインで形式で開かれた。

 開会のあいさつにつづいて、高良鉄美参議院議員(沖縄の風)が連帯の発言をおこなった。

菅政権とこれからの課題

 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合の中野晃一さんが、「菅政権とこれからの課題」と題して講演。
 菅内閣に変わったがそれをどう位置づけるか。安倍もひどかったが菅はもっとひどいとあきられている。安倍は意味のないことをしゃべっていたが、菅は官僚の作った文章を棒読み、それも言い間違いがひどい。
 しかし、安倍政治はわかりやすいといえたが、菅政治はよくわからないところがある。菅は、安倍の雑用係だったし、責任と自覚がない。安倍なき安倍政治として、責任を取らない、憲法・法律無視、説明なし、公務員倫理の蹂躙などが続いている。無責任体制となっており、事態は深刻だ。
 自民党はスーパー世襲政党となっている。菅は秋田のたたき上げをアピールしたが、安倍や麻生と比べればだれでもたたき上げだ。菅の役割は、安倍家の生ごみの蓋の取っ手のようなもので、引き続きフタをすることがその仕事だといってよい。安倍は辞任寸前に敵基地攻撃論をいい、その実現を菅に負わせた。菅の頼りは二階しかいない。いまの状況では、解散もできない。
 だが、菅だって長期政権を狙っている。
 安倍の桜を見る会がまた問題化したが、菅はそれを止めなかった。
 ヤクザの抗争のような派閥争いが始まっている。秋田フーズがらみの農水省事件では、元農水相の西川公也は内閣官房参与で、二階派の事務総長だった。
 総務省がらみでは菅の息子の東北新社は秋田つながりだ。これを暴露したのが「赤旗」でなく、「週刊文春」で、保守内部で争っている。
 たしかに、菅政権の支持率は下がってきているが、そろそろ下げ止まりかもしれない。30%以下にはなかなか下がらない可能性がある。保守の強固な基盤があり、それに小選挙区制だから、多くの人は投票しないし、政治不信となる。あとは、維新の会や小池百合子などの改革保守との協力で乗り切れる形も予想される。
 今後の展開いかんでは、菅がダメとなれば、麻生、菅に担がれた河野太郎、それに神奈川つながりということで小泉進次郎が加わっての新自由主義の方向がある。
 二階は歴代最長の幹事長だが、次の政権でも幹事長を続けたいと思っている。そのために派閥の拡大をしてきたが、その結果、第三派閥にはなったが、そこには政界吹き溜まりというような議員が多い。二階は、野田聖子を幹事長代行として押し出している。これでは、女性を使ってのおじいさんの権力となる。オリンピック・パラリンピック組織委員会での橋本聖子と同じだ。
 では、今後どうやって闘っていくのか。
 若者は保守化しているといわれるが、かれらは、自民党政権しか知らない、そして説明責任なきいまの状況を新常態と思わされている。
 しかし、実際には両極分化が進んで、リベラルな人も多くなってきている。今年が正念場だ。向こうが内ゲバしている。いまがチャンスだ。

 中野さんの講演に対する質疑応答が行われた。

改憲動向と私たちの課題

 つづいて高田健さんが、「改憲動向と私たちの課題」と題して行動提起。
 市民運動全国交流集会の歴史の大半が、歴代政権で初めて公然と改憲を主張した安倍晋三政権の7年8カ月とのたたかいだった。
 この間、私たちは一貫して反改憲勢力の統一を訴え、市民が全国で連携して、励ましあい、学び合って活動してきた。私たちにとって「総がかり」と「市民連合」の誕生はその結節点だった。
 安倍改憲を「継承」する菅首相は、臨時国会所信表明演説で「憲法審査会において、各政党がそれぞれの考え方を示した上で、与野党の枠を超えて建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていくことを期待」と述べ、自民党改憲推進本部を挙党体制で組織化し、憲法審査会での改憲手続法の議論で明文改憲をめざすことと、9条違反の戦争法・敵基地攻撃能力の保有にみられる実質的な改憲を進めようとしている。
 そして、公選法並びの改正案を強行しようとしている。だが、必要なのは同法の抜本的な検討であり、一旦、廃案にすべきであり、自公案の採決反対の声をあげるべきだ。
 自公政権を倒すために、野党共闘を強め、自公政権に代わる新しい選択肢を掲げて政権交代を実現しよう。いのちと人間の尊厳を守る「新しい政治」の選択を提示が必要で、市民連合の「15項目の政策要望」は立憲野党の共通の政策たりうるものだ。
 市民と野党の共同と小選挙区の候補者の1本化が勝利の前提条件であり、立憲野党は菅自公政権打倒で共同し、とりわけ与野党激戦区の1人区で必ず候補者の統一を実現しよう。
 4月25日の北海道2区、長野選挙区、広島選挙区の3国政選挙は衆院選の前哨戦である。
 政権交代はすでに視野に入っている。
 すべての立憲野党は自公政権打倒、政権交代の大義の下に協調し、人々の自公政治の転換の切実な声にこたえるべきで、「希望のある政治」を実現させよう。

 高田さんの行動提起についての質疑討論ののち、各地からの報告では、北海道、長野、三重、神奈川、愛知、大阪、広島、大分、そして日本山妙法寺からの発言が行われた。


21春闘勝利!けんり春闘

     
経団連抗議要請行動

 2月19日、21けんり春闘の経団連会館前での抗議要請行動が行われた。

 主催者を代表して、けんり春闘共同代表・全港湾委員長の間島勝重さんがあいさつ。この春闘では、大企業は儲けをため込むとともに中小企業や非正規労働者へしわ寄せをおこなっているが、医療・介護をはじめとして社会を支えるエッセンシャルワーカーの雇用と権利を守らなければならない、労働条件向上、作業環境の整備こそ必要であり、普通に生活できる賃金の確立、安全な職場環境のために団結して闘おう。
 
 つづいて、東京清掃労組、全統一労組、全造船関東地協、郵政ユニオン、全国一般なんぶ、ユナイテッド航空争議団から闘いの経過報告やアピールが行われた。

 連合の早期の終結に抗して労働者の闘いを作り上げていこう。


辞任で幕引きは許さない。森喜朗 東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会元会長の「女性差別」発言に関する抗議声明

                 
 2021年3月2日   戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

 森喜朗元会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」発言は明らかに女性差別発言であり絶対に許せません。

 私たち総がかり行動実行委員会は森喜朗元会長の女性差別発言を徹底的に弾劾します。
 「物事を決める場に女性はふさわしくない」「女はただ従えばいい(わきまえろ)」という考えは構造的差別に他なりません。

 こんな発言が重要な公の場で堂々と飛び出し、更にそれを制止するどころか笑い声が起こったこと、正面から辞任を迫るわけでもなく留意しようとした事実は、日本がジェンダーギャップ指数121位という「性差別国家」であることを物語っています。

 性差別が貫く日本の社会構造の根深さを重く受け止めると同時にこれは森喜朗氏の問題だけではなく、職場や学校、地域、そして私たち市民運動や労働運動の中での問題でもあるのだと、自分たちのこととして捉えなくてはなりません。

 よく、世代間問題として転換されがちですが、問題の本質はそこではなく、遅れたジェンダー感覚を見直すこともせず、自身のアップデートを怠った結果がこの差別発言につながったのではないでしょうか。

 このような性差別構造を根本的に変えていくために、まず私たち自身も変わっていかなければなりません。

 そしてオリンピック・パラリンピック組織委員会会長に新たに橋本聖子氏が就任しました。これも、公式な会議も持たない中で川淵三郎氏が森後任会長と報道されたのと同じく、密室人事に変わりありません。

 橋本氏は森氏を「父のよう」「特別な存在」などと「わきまえた」発言をしました。

 橋本氏の後釜に就任した五輪相であり男女共同参画担当相の丸川珠代氏は選択的夫婦別姓制度導入に賛同する意見書を地方自治体で採択しないよう求める文章を送っていたことが明らかになりました。

 会長が女性になったところで今回の問題は何も解決はしていません。むしろ「わきまえた女」でなければこの国では発言の権利さえも与えられないということがはっきりとしてしまいました。

 忘れてはならないのは、いつの時代も、戦争を「話し合い」決定する場には女性はおらず、男が決め、女や子ども、社会的弱者や少数者が巻き込まれていきました。命と暮らしと尊厳を軽んじる政治や性差別、女性や弱者を排除する社会や民主主義に基づかない政治は簡単に戦争に転化します。

 声を上げることは「和を乱す」といって抑圧し排除する政治風土は何よりも女性の闘いなくしては変えられません。

 性差別撤廃、命と暮らしが最優先にされる社会に向けて私たち自身も変わっていく努力を続けつつ、外に向かっても声を上げ続けていきます。


せんりゅう

   またですか不徳だらけで自民党

       同盟というけど属国軍事予算

   五輪とは資本家たちの金金金

       不用不急は五輪ご遠慮ください

   お花見も自粛賃上げも自粛

       私物化の夫人長男こんなもの

   五輪とは資本家たちの金金金

       不用不急は五輪ご遠慮ください
               
                    ゝ 史
2021年3月


複眼単眼

    
 森差別発言問題は終わっていない

     「東京五輪」は中止を 安倍晋三前首相が福島原発事故を「アンダー・コントロール」して、菅首相が「人類がコロナに打ち勝った証として」開催するという東京五輪・パラリンピックの準備は極めて異常なものだ。
 3・11から10年、4万人に近い避難者がいまだに苦しんでおり、原発がだす放射能は終息していない。フクシマ事故はいまだ終わっていない。
 緊急事態宣言の2度目の延長、ワクチンの投与が始まったとはいえ、7月開催予定の東京五輪・パラリンピックまでに新型コロナ感染症のパンでミックが終息している状況はあり得ない。
 虚偽の宣伝文句で固めた土台の上に強行されようとしている東京五輪が如何に危ういものであるか。
パンデミックの危険の最中、外国の観戦者のいない五輪、多くの国々から選手団が来ない五輪、菅義偉政権は来る総選挙での自公連立政権の勝利のためという自らの野望にしゃにむに五輪を利用しようとしている。
 2月20日に開かれたG7首脳によるテレビ会議の宣言は「新型コロナにうち勝つ世界の結束の証として安全・安心な形で今夏に開催するとの日本の決意を支持する」と表明した。しかしこれは「日本(菅)の決意を支持する」と述べたにすぎない。米国のバイデン大統領は「安全に開催できるかどうか科学的に基づき判断すべきだ」と念を押している。
 この間、飛びだした森喜朗前組織委員会会長の女性差別発言によって、五輪の準備は重大な危機に直面した。ドタバタ劇の末に橋本聖子新会長が選出されたが、問題は解決していない。大勢の市民ボランティアが協力を辞退する意志を明らかにしただけではなく、島根県知事までもが「現状のままでは賛成できない」と表明し、成果リレーなども現状のままでは協力できないと表明した。
 森前会長は2月3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、以下のように発言した。「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげて言うと、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね」「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困ると言っておられた」「私どもの組織委員会にも女性は7人くらいおりますが、みんなわきまえておられて。我々は非常に役立っております」。
 とんでもない女性差別発言だ。
 しかし、会議の場では、この差別発言が制止されるどころか、笑い声が上がったという。これは森喜朗氏の個人の問題ではない。JOCの体質の問題であり、日本社会に極めて根深い女性差別問題の氷山の一角が森発言に現れたに過ぎない。
オリンピック憲章は「性別や性的指向に基づく差別」を禁じるとある。
 森発言はこれに背くものだ。森発言後、直ちに各界から批判と疑問の声が上がり、若者たちが始めた署名運動にはたちまち15万人の賛同が集まった。
 にもかかわらず、この問題について、会長交代劇の過程で組織委員会が真剣に議論し、総括されてはいないし、今後、組織委員会がジェンダー問題や人権問題についてどのように取り組んで行くのかは全く明らかにされていない。問題が森氏個人の発言に切り縮められ、後継者選びにすり替えられた。これでは森発言の問題は解決されようがない。
 JOCと、この組織委員会に東京五輪を開催する資格はない。今回の会長交代劇は菅官邸の指示のもとに進められている。菅政権の責任は重大だ。
 世論の大多数が東京五輪の中止か延期を求めている。開催賛成はわずか2割強程度だ。
 コロナ感染症を全国に拡大しかねない「聖火リレー」などをやめ、オリンピックの予算を直ちにコロナ対策に振り向け、選手村などの施設をコロナ感染症対策のために転用すべきだ。 (T)