人民新報 ・ 第1396統合489(2021年4月15日)
  
                  目次

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市民と野党の固い共闘で、衆院北海道2区・参院長野補選、広島再選挙に勝利し、政権交代をめざそう

          「立憲野党 補欠選挙勝利めざしての市民連合の申し入れ」(2021年4月6日 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)

● 郵政ユニオン 3・19ストライキ貫徹

          大幅賃上げ獲得、非正規差別を許さない職場づくりを

● 3・26 東京総行動

● デジタル法案 衆院通過 参院段階でかならず廃案へ

          デジタル庁構想の目的―政府の権力維持・拡大と資本の利益の拡大

● 3月の19日議員会館前行動

● 画期的な水戸地裁判決

          東海第二原発を廃炉に!

● 福島原発事故10周年さようなら原発首都圏集会

          原発推進政策を必ずストップさせるぞ

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  フェイクを駆使する安倍前首相の論法






市民と野党の固い共闘で、衆院北海道2区・参院長野補選、広島再選挙に勝利し、政権交代をめざそう

菅政権の政策破綻が、明らかになってきた。
 菅は出だしこそ高い支持率を誇ったが、学術会議一部委員の任命拒否、森喜朗オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の女性蔑視差別発言をめぐる問題、河井案里・河井克行の買収事件と議員辞職、菅の息子がらみの総務省をめぐる問題、農相の吉川貴盛衆議院議員汚職疑惑(西川公也元農相も同様)と議員辞職、秋元司衆議院議員のカジノ・統合型リゾート(IR)事業汚職疑惑など次々に噴出してきた。そして、核汚染水の海への放流だ。そのうえ、安倍の残した森友・加計学園、桜を見る会、東京高検黒川問題など疑惑は依然としてくすぶっている。
 菅は、みずから責任を取って退陣すべき事態である。
 にもかかわらず、日米軍事同盟強化・中国包囲路線の下での戦争する国づくり、そのための国民総背番号制・個人情報の国家管理のための「デジタル庁」新設を柱とするデジタル改革関連5法案審議、そして、9条に自衛隊を明記する憲法の改悪、改憲手つづき法改正などを強引に進めようとしている。
 この政権の下では、人びとは安心して暮らしていけない。いまこそ、政治の大転換を実現すべき時だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大はまったく終息の兆しを見せないどころか、これまで以上の深刻さをもたらす第四波が到来した。菅内閣の新型コロナ対策は完全に失敗したのである。
 こうした情勢に慌てた菅は、知事が住民に対して、日中を含めた「不要不急の外出」自粛や「不要不急の都道府県間の移動」も極力控えること、飲食店などには営業時間の短縮を要請・命令することができる「新型コロナウイルス まん延防止等重点措置」を、大阪府、兵庫県、宮城県(いずれも4月5日〜5月5日)につづいて、東京都(4月12日〜5月11日)、京都府と沖縄県(4月12日〜5月5日)に適用するとした。適用対象の都府県の指定された市区において、飲食店などの営業時間を午後8時までとし、飲食店への協力金を中小企業では売上高に応じ1日4〜10万円、大企業は1日最大20万円とし、命令に違反した場合には20万円以下の過料をかすというものだ。
 ふりかえってみれば安倍前政権は、昨年の4月7日、新型インフルエンザ特措法による「緊急事態宣言」を発したが、すでにその時点で対応の遅れ・誤りは明白だった。急速なウイルス蔓延のおそれが言われていたにもかかわらず、なんとしても2020オリンピックの開催にこだわり、感染を放置した。安倍は、オリンピックの「成功」を背景に、政権支持基盤を固め、改憲など反動政策の推進と総選挙での勝利を夢見ていたからだ。安倍の後を継承した菅政権は、GOTOキャンペーンを強引に進めて、コロナウイルスを全国的に広げ,今日のような悲惨な状況をつくりだすというまったくの愚策をすすめた。一方で、感染症対策の基本である大量の検査によって感染者をみつけ、保護するということをやらなかった。その結果、事態の深刻さは隠されることになり、感染者も自宅待機などによって家庭内関係を拡大させるということになったのである。
 今回の「まん延防止等重点措置」の慌てての適用とその拡大は、大阪府の対応にみられるように、少し感染者数が下がったということで、真剣な対策を後退させた結果である。変異型によって感染拡大が激化していると政府や大阪府などは強弁しているが、なにより政府・自治体の姿勢が原因なのである。医療の崩壊が迫り、またワクチン接種についても遅れは必至だ。長年にわたる自民党や維新の会政治による目先の儲け中心の新自由主義政策による医療や科学技術面への予算削減のつけが露呈してきたのであり、これまでの政策の抜本的な見直しが迫られている。早急に大規模なPCR検査と感染者の保護がなされなければならない。

 アメリカのバイデン政権は、トランプのアメリカ第一主義から、「同盟国重視」に外交政策を転換させた。バイデンは、外交政策についての演説で、「中国は米国と競う野心を抱き、ロシアは我が国の民主主義に打撃を与えようとする強い意思を有する。権威主義の高まりに立ち向かわなければならない」として、中国とロシア、とりわけ中国を「最も重大な競争相手」と呼んで対抗姿勢を強調した。しかし、アメリカが直面する対抗勢力は中国だけではない。ほかにもさまざまな地域へのかかわりがある。バイデンの同盟国重視とは、アメリカ単独での世界支配は無理であることをアメリカ自身が認めざるを得なくなり、他国の力を最大限、覇権維持のために使うことである。
 しかし、すでにアメリカ一極支配の時代は過去のものとなっている。
 米国は、アジア地域に対しては、「自由で開かれたインド太平洋」戦略に、日本、オーストラリア、インドなどを組み込み、それをASEANにひろげて、中国に対する包囲網の構築をめざす。当該各国とくに日本へは軍事力強化と日米軍事一体化の要求を強めてきている。アメリカの超党派の安保問題での対日要求書であるアーミテージ・ナイ・レポートは、最新の第5次文書で、「アメリカと日本は、中国の台頭を制御するために必要な地政学、経済、技術、ガバナンスという4つの戦略的分野のすべてにおいて不可欠な国」だとして、防衛費1%を問題視し、反撃力とミサイル防衛、日米および内部の指揮統制が今後の課題、「ファイブアイズ」に日本を入れる、第一列島線の戦略的重要性、台湾との一層の協力、日米同盟を核に共通の利益と価値に基づくネットワーク化された連携を強化するなどを求めている。
 近く訪米し首脳会談に臨む菅政権は、いっそうの戦争法体制による戦争する国づくりを約束させられるだろう。この危険な流れを断固して阻止しなければならない。

 菅政権打倒、自民党政治を終わらせることが切実に求められている。4月25日には、衆院北海道2区・参院長野補選、広島再選挙がある。
 4月6日には、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合が、「立憲野党 補欠選挙勝利めざしての市民連合の申し入れ」(別掲)を発表した。市民連合は、6日から7日にかけて、立憲民主党、共産党、参院会派「碧水会」、沖縄の風、社会民主党、れいわ新選組、国民民主党への申し入れをおこなった。
 市民と立憲野党の共闘を強めて、この選挙に勝利し、総選挙に向けて一段と共闘の加速と支持層の拡大を実現して、政治の大きな転換を現実のものにしていこう。

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立憲野党

  補欠選挙勝利めざしての市民連合の申し入れ


2021年4月6日

安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合

 新型コロナウイルスの感染者は減少しつつありますが、自宅療養という名で放置された患者が多数亡くなり、医療体制の整備は不十分といわざるを得ません。また、ワクチン確保は見通しが立たず、国民への接種の体制も整っていません。さらに、コロナ禍の中で仕事を失い、生活に困窮する人々への救済も行き届いていません。統治能力を失った菅義偉政権が国民の生命、健康、生活に与えた痛みはあまりにも大きすぎます。
 加えて、国民の常識から乖離した政治家による収賄や選挙違反が相次いで露呈し、今の与党の政治家には危機において国民の命を預かる資格がないと言わざるを得ません。
 次の衆議院総選挙において政権交代を実現することは、政治に常識を取り戻し、国民の生命、生活を救うためにどうしても必要です。4月25日に予定される衆参の補欠選挙は政権交代のための第一歩となる重要な選挙です。この選挙で立憲野党には候補者の一本化により政治転換のための選択肢を示すことが求められます。市民連合は以下の共通政策を掲げて、松木けんこう(衆議院北海道第2区) 羽田次郎(参議院長野県選挙区) 宮口はるこ(参議院広島県選挙区)三候補の当選を実現するために、立憲野党と市民が共に戦うことを強く求めます。

1 憲法の擁護
 ・「安保法制」、共謀罪など違憲の疑いの強い法律を廃止する。
 ・平和憲法を尊重する。
 ・地元合意のない沖縄辺野古での新基地建設は中止する。

2 新型コロナウイルス克服のための医療体制の強化
 ・エッセンシャルワーカーの待遇改善をはじめとする医療体制の拡充、強化のために財政支出を惜しまない。
 ・PCR検査を拡大するとともに、感染した人の治療を受ける権利を保障する。
 ・医療のリストラという従来の政策を転換し、人間の命を最優先する医療体制の整備を図る。

3 仕事と暮らしを守るための支援策の拡充
 ・コロナ禍によって仕事を失ったり、収入が減少したりした人々に対して、所得補償、家賃補助など安心できる支援策を提供する。
 ・営業時間短縮等に協力した事業者に十分な補償を行う。

 4 エネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行
 ・一極集中を是正するために、地方でも働けるように交通インフラ、情報インフラ、住宅など生活の基盤を整備する。
 ・地元合意のない原発再稼働に反対するとともに、再生可能エネルギーの拡充により、地域における新たな産業を育てながら、原発のない脱炭素社会を作り出す。

5 差別を許さない自由で公平な社会の実現
 ・ジェンダー、人種、年齢などによる差別を許さないためのルールを確立する。
 ・次の世代を産み育てる社会的条件を整えるため、雇用ルール、介護、保育、教育、医療などケア労働の体制等を拡充する。

6 責任ある政府のもとで支えあうための税制改革
 ・消費税負担の軽減を含めた、所得、資産、法人、消費の各分野における総合的な税制の公平化を実現する。
  
以 上


郵政ユニオン 3・19ストライキ貫徹

          大幅賃上げ獲得、非正規差別を許さない職場づくりを


 3月18日、郵政ユニオンの「賃金引上げ等に関する要求書」への日本郵政グループの回答は、正社員の処遇改善で、6年連続ベアゼロ、定期昇給完全実施、一時金4・3か月など,そして期間雇用社員等の処遇改善では、賃金改善なし、一時金改善なし、などのきわめて不誠実なものであった。しかし直近の第3四半期決をみれば、グループで巨額の純利益を出している。日本郵政グループ全体で黒字経営が続いているにもかかわらず、「ベアゼロ」は納得できるものではない。非正規社員の均等待遇要求については、当然にも求められるべき改善とはまったく言えない。劣悪な非正規社員の待遇を改善するのではなく、逆に全社員を低いところに押し付けるようなものだ。また3月12日、日本郵政グループは楽天グループとの資本・業務提携に合意を発表したが、日本郵政は楽天へ約1、500億円を出資する。
 会社側の「経営環境が厳しい見通し」とする回答は認められるものではない。

 3月19日、前日の日本郵政グループの回答を受け、要求の実現めざし、15職場、26人がストライキに突入した。
 11時からは郵政本社前で「ストライキ突入集会」を開催し、100名の組合員、支援の労働者が参加した。

●3・19ストライキ宣言

 郵政産業労働者ユニオンは本日、21春闘要求に対する会社の不誠実な回答に対し、全国で6局所をスト拠点とし、指名ストと合わせ15職場、26人がストライキに参加、組合員、支援の仲間とともにストライキ突入集会を行い、ストライキに入っていない職場においても早朝から支援・連帯集会を開催するなど、全国でたたかいに立ち上がった。
 私たちは、2月16日、21春闘要求書を提出し、本社交渉を積み重ねてきた。とりわけ今春闘では、最高裁判決で違憲と断罪された手当や休暇をはじめ、非正規社員の処遇改善要求、正社員との格差是正要求、正社員を希望する非正規社員を5年で正社員へ登用することなど、均等待遇の実現をめざし運動を展開してきた。
 さらに6年連続のベアゼロを許さず、大幅賃金引上げと大幅増員の実現、新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、エッセンシャルワーカーとして社会生活を支えてきた日本郵政グループ社員に対して特別手当の支給、健康対策や福利厚生の拡充要求など、労働者の切実な要求として交渉を進めてきた。
 日本郵政グループ各社は、コロナ禍による影響、低金利下の金融情勢、かんぽ生命不正営業による営業自粛などを理由に、「事業を取り巻く経営環境は厳しく、組合要求には応えられない」との対応に終始してきた。
 しかし、第3四半期決算では7000億円もの経常利益を生み出し、3月末の通期予想に対して既に114%の進捗を示し、さらには楽天との業務提携を発表、1500億円の出資を行い、株主には例年通りの配当を行うとしている。しかし、私たちの要求に対しては、十分に応えるだけの体力があるはずだ。社員に対して賃上げもできないなど、到底、納得できるものではない。
 定期昇給の実施や、新型コロナウイルスに罹患した非正規社員に5万円の生活支援金の支給などあったものの、6年連続ベアゼロ、均等待遇要求には背を向け、年間一時金要求にも応えない会社の姿勢を強く抗議する。
 我われは、満身の怒りをもって3・19ストライキを貫徹し、一日の行動を展開していく。21春闘をさらに強め、職場から要求実現の運動をたたかい抜いていこう。大幅賃上げ獲得、非正規差別を許さない職場づくりを全国の組合員、支援の仲間とともに、大きく進めていくことを決意する。

2021年3月19日

郵政産業労働者ユニオン中央闘争委員会


3・26 東京総行動

 3月26日、首切りは許さない! 権利はゆずらない! 全ての争議団・争議組合を勝利させよう! 非正規・外国人・障がい者・女性労働者等の人権確立を! 経団連・多国籍企業の横暴に抗し、生存権・反差別・国際連帯!などをスローガンにして、けんり総行動実行委員会主催による東京総行動(176回目)が闘われ、総務省からJAL本社前までの各省庁と企業に対して抗議行動を展開した。
 昼の経団連への抗議行動では、@経団連は脱原発に舵をきり「原発ゼロ」をめざせ!、A経団連は争議解決に向け傘下企業を指導せよ!などの申し入れをおこなった。


デジタル法案 衆院通過 参院段階でかならず廃案へ

          デジタル庁構想の目的―政府の権力維持・拡大と資本の利益の拡大


 4月6日、衆院本会議で「デジタル庁」新設を柱とするデジタル改革関連法案が自公与党と日本維新の会などの賛成多数で可決し、14日からの参院本会議での審議入りとなる。3月9日の審議入りからひと月足らず、30時間にも満たない審議で論点積み残しのままの衆院通過だ。このデジタル改革関連法案は、約60の法律を一括して改正するもので、内容を分からなくさせ、また国会審議をやりにくくさせるものだ。その上に法案に絡んだものに45カ所ものミスが見つかるなど、政府が成立にいかに焦っているか、その拙速ぶりが明らかになった。
 昨年9月、経団連は「デジタル庁の創設に向けて、その役割やあり方に関する緊急提言」を公表した。そこでは、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、わが国経済社会におけるデジタル化が世界に比して大きく立ち遅れていることがあらわとなった。ポストコロナ時代に日本が生き残るためには、経済社会のあらゆる分野においてDX(デジタルトランスフォーメーション)に集中的に投資し、Society 5.0の実現を急がなければならない」、「社会全体のDXを牽引する司令塔と実行組織の設置」「具体的には、国・地方を通じたデジタル政策を一元的に企画立案する内閣デジタル局(仮称)を内閣官房に設置するとともに、中央省庁システムおよび地方公共団体に提供するシステムの企画立案・開発等を一元的に行うデジタル庁(仮称)を内閣府に設置することが有効である。その際、内閣デジタル局およびデジタル庁はデジタル政策・施策に関する予算を一括計上するとともに、行政各部に対する指揮命令権を持つようにすることが必要である」として、全面的に推進するようはっぱをかけている。成長戦略による大企業の儲けのためのものだ。
 そして政府は、利便性を口実に、支配強化のための国民総背番号制・個人情報の官民共同利用体制づくりを狙っている。国家と財界が一体となったデジタル社会づくりが目的だが、その内実が広くわからないうちの法案の成立をもくろんでの国会運営となっている。
 デジタル改革関連の危険性について、デジタル監視法案に反対する法律家ネットワークは、共謀罪対策弁護団、秘密保護法対策弁護団、社会文化法律センター、自由法曹団、青年法律家協会弁護士学者合同部会、日本国際法律家協会、日本反核法律家協会、日本民主法律家協会と三宅弘弁護士(元総務省行政機関等個人情報保護法制研究会委員)、平岡秀夫弁護士(元法務大臣、元内閣官房国家戦略室室長)や青井未帆学習院大学教授などによって、「デジタル監視法案(デジタル改革関連6法案)に強く反対する法律家・法律家団体の緊急声明」(別掲)がだされた。
 マスメディアの一部からも懸念の声が上がっている。4月3日の沖縄タイムズ紙の社説「[デジタル法案] 拙速避け懸念に応えよ」は、「私たちのプライバシーは今後十分に守られるのか、懸念が拭えない」は多くの人びとの思いを代弁するものだ。

 衆院通過の4月6日には、議員会館前で「秘密保護法廃止!共謀罪法廃止!NO!デジタル庁6日行動」が行われた。集会では、立憲民主党、共産党、社民党の国会議員、総がかり行動実行委員会、市民運動グループ「NO!デジタル庁」、デジタル改革関連法案反対連絡会、憲法会議、共謀罪NO!実行委員会から発言が行われた。

 集会の後で、院内集会「デジタル庁と監視社会」が行われ、小倉利丸さん(批評家)が、「超監視社会に向かうデジタル庁構想―オールデジタルにならない社会を目指して―」と題して講演した。デジタル監視社会化法案の背景には、5Gネットワークを使って、ビッグデータを収集し、AIで解析する様々な情報インフラの統合があり、個人の行動把握と行動予測のうごきがある。デジタル庁構想の目的は、政府の権力の維持・拡大と資本の利益の拡大であり、人権や福祉はこれらの目的にとって必要な限りで考慮されるだけである。だから政府文書、選挙公約、法律の文言などではなく実行行為で評価すべきで、個人情報は法では守れないということだ。人生100年時代がいわれる状況で、個人情報は 100年維持されなければならないが、法は個人情報の100年保護を確約できない。だから法をアテにしてはいけない。そのうえ、権力者は法があってもなくても目的を達成するということを忘れてはならない。わたしたちにできることは、個人情報を渡さないネット利用の運動文化をつくる、インターネットへのアクセスは私たちのパソコンやスマホの防衛体制を固める、技術の透明性原則を自分たちのライフスタイルでも確立する、巨大IT企業のサービスをボイコットする、SNSやネットのサービスの利用について、選択の理由を明確にして共通のガイドラインを作成する、デジタル監視社会は私たちがライフスタイルを変えることで阻止できるということなどで、政府・企業と異質なネット文化を創造する必要がある。

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デジタル監視法案(デジタル改革関連6法案)に強く反対する法律家・法律家団体の緊急声明

2021年3月17日

1.はじめに 
 政府は、デジタルデータの活用が不可欠であるなどとして、デジタル改革関連6法案を2月9日に閣議決定し、今国会での早急な成立を目指している。
 関連法案は、内閣総理大臣を長とする強力な総合調整機能(勧告権等)を有するデジタル庁を設置し、個人情報関係3法を一本化し、地方公共団体の個人情報保護制度も統一化した上で、デジタル庁が市民の多様な個人情報を取得して一元管理し、その利活用を図ることなどを定めるが、個人のプライバシー権(憲法13条)保護の規定を欠き、政府と警察による徹底した市民監視を可能とする、「デジタル監視法案」というべき危険な法案である。
 私たち法律家・法律家団体は、個人のプライバシー権を保障し、国家による市民監視を許さない立場から、以下に述べるとおり、デジタル改革関連6法案(以下「デジタル監視法案」という。)の成立に強く反対する。

2.憲法13条のプライバシー権に対する重大な脅威であること
(1) 分散管理から一元管理となることの危険性
 従来、各省庁、独立行政法人、及び地方自治体が、データを分散管理することにより、個人情報の保護を図ってきたが、デジタル監視法案は、これらの規制を取り払い、デジタル庁に、すべてのデジタル情報を集中して、マイナンバーと紐づけて一元管理することを目指している。しかし、デジタル庁に集積される個人情報は膨大な量であり、その中には、例えば、地方公共団体の保有する医療、教育、福祉、所得、税に関するデリケートな情報も大量に含まれている。ひとたび、これらが流出、漏洩、悪用された場合の被害の範囲と大きさは分散管理のときとは比較にならない。行政の外部委託化により、集約された膨大な個人情報を民間企業が取り扱う機会も増えており、外部流出等の危険性は高い。システムが統一化されることにより、外部からのサイバー攻撃を受けた際に被る被害も甚大なものとなる。デジタル監視法案は、これらのリスクの増大に見合う対策が何ら講じられていない欠陥がある。
(2) 個人の同意なく情報が利活用される危険性
 個人情報の利活用を図るためには、データ主体の権利保護が大前提であり、それが、EU一般データ保護規則(GDPR)をはじめとする国際標準である。しかし、デジタル監視法案は、データ主体の個人の権利保護規定が致命的に欠けており、運用が始まれば個人のプライバシー権が侵害される危険が極めて高い。とりわけ問題は、デジタル庁に集められた膨大な個人情報が、権利主体の同意なく、企業や外国政府を含む第三者に提供され、目的外使用に供される危険である。整備法案では、個人情報保護法の69条として、既存の行政機関個人情報保護法8条と同様の例外規定をおくが、第三者提供が厳格に制限される保証はない。「所掌事務の遂行に必要」、「相当な理由」があるなどの理由により、個人の同意原則が骨抜きにされる怖れが極めて大きい。この怖れは、デジタル監視法案の目的が第一義的に、「我が国の国際競争力の強化」に置かれているとおり、経済界の強い要請に基づく個人情報保護規制の撤廃による国際競争力の強化に置かれていることからも裏付けられる。

3.政府・警察による監視国家の推進
 デジタル監視法案のもとでは、各省庁と地方自治体の情報システムが、すべて共通仕様化され、デジタル庁に一元管理される。さらに、マイナンバーによって、健康情報、税金情報、金融情報、運転免許情報、前科前歴情報などが、紐づけされて一覧性の高い形での利用できるようになるのである。これは、市民のセンシティブ情報を含むあらゆる情報を政府が、「合法的に」一望監視できる国家、すなわち監視国家の体制整備を意味する。とりわけ内閣総理大臣を長とするデジタル庁は、内閣情報調査室と密接な関係を持ち、そうなれば、デジタル庁が集約した情報は、官邸・内閣情報調査室を介して警察庁・各都道府県警察と共有されることになる。個人の私生活が丸ごと常時、政府と一体となった警察によってデジタル監視されるような社会は、民主主義社会とは言えない。

4.地方自治の本旨に反すること
 デジタル監視法案は、これまでの分権的な個人情報保護システムの在り方を根本から転換し、国による統一的な規制を行うとするものである。このような制度は、各公共団体において、住民との合意のもとで構築してきた独自の個人情報保護の在り方を破壊し、公共団体による先進的な個人情報保護制度の構築を後退させるものになりかねない。自治体において収集した個人情報をどのように管理するかは、自治事務の一環であり、国がこれを一方的に支配・統合することは、地方自治の本旨(憲法92条)に反するというべきである。

5.結論
 デジタル監視法案は、上記以外にも、そもそも誰のためのデジタル化推進かという立法事実の議論をはじめ、転職時における使用者間での労働者の特定個人情報の提供を可能とする、国家資格をマイナンバーに紐づけて管理するなど、極めて問題が多い法案である。慎重にも慎重な審議が必要である。デジタル監視法案に反対する法律家ネットワークは、本年2月25日に法案の修正撤回を求める意見書を発表しているが、特に、個人情報保護の徹底とプライバシー権侵害の危険の払しょく及び警察権力の規制をはじめ監視国家化防止策が徹底されない限り、デジタル監視法案は、廃案にすべきである。


3月の19日議員会館前行動

 3月19日、衆議院第2議員会館前を中心に、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会と安倍9条改憲NO!全国市民アクションの共催による「いのちとくらしと雇用・営業をまもれ!改憲手続法強行許すな!衆参3補欠選挙勝利!国会議員会館前行動」が開かれ、400人が参加した。

 主催者を代表して総がかり行動実行委の小田川義和さんが発言。菅内閣のコロナ対策は無為無策で行き詰っている。首相の親族が官僚を接待して忖度させ行政をゆがめる、辺野古埋め立てを強行して戦争する国造りをすすめる、そんな菅政権を一日もはやく退陣に追い込むためにも4月25日の3つの国政選挙で、野党は市民と共闘をしっかりと進めてほしい。法大教授の山口二郎さん(市民連合呼びかけ人)は、野党のいっそうの共闘をよびかけた。社会民主党の福島みずほ党首、共産党の山添拓参院議員、立憲民主党の小西洋之参院議員があいさつした。新聞労連の松元ちえさんは、森元首相らの発言にみられる女性差別、それは現実の仕事生活を脅かす現実があり、それと闘ことが大事だと強調した。在日ミャンマー人のマキンサンサンアウンさんは、国軍の軍事クーデターが起き、多数の人びとが犠牲となっている、日本政府は、国軍の指導者らに圧力をかけるようにみなさんが声を上げてほしいと述べた。


画期的な水戸地裁判決

          東海第二原発を廃炉に!


 日本原子力発電(日本原電)の東海第二発電所(茨城県那珂郡東海村)は首都圏にある唯一の原子力発電所だ。日本一の人口密度地帯にあり、30km圏内には94万人が生活する。150km圏内の首都圏には4000万人が住む。過酷事故発生すれば首都壊滅となるのは明らかだ。
 この原発は、1970年代初頭に米国GE社によって設計された40年を越えた老朽原発である。そしてこの地域は頻発する地震、また赤城山噴火の可能性も高い。
 東海第二原発運転差止訴訟原告団は、2017年7月に水戸地裁へ提訴し、裁判官に次の11項目の判断を求めた。@原発の存在が憲法違反であること。A司法は高度な安全性を審査すべきであること。B老朽化原発であること、特にケーブル難燃化が完全でないこと。C経理的基礎が欠如していること。D基準地震動が過少であること。E耐震性が不足していること。F津波想定が過少であること。G津波漂流物の評価が欠落していること。H火山評価が過少であること。Iシビアアクシデント対策が不備であること。J立地審査指針不適合、日本一人口密集地帯で避難は困難であり、事故が発生すれば人格権を侵害することは必至であること。

 3月18日、水戸地裁(前田英子裁判長)の判決は、原告らの訴えを基本的に容れて、東海第二原発の運転を差し止めるという画期的なものとなった。原告団・弁護団声明は次のように評価している。「今日の判決は、原発の安全性について判断する枠組みについて、深層防護の第1から第5までのレベルのいずれかが欠落し、不十分なことが具体的危険であるとしました。そして、第1から第4までのレベルについては看過しがたい過誤欠落があるとは認められないとしたものの、避難計画などの第5の防護レベルについては、原子力災害重点区域PAZ(放射性物質が放出される前の段階から予防的に避難等を開始する地域)、UPZ(屋内退避などの防護措置を行う地域)内の住民が94万人にも及ぶにもかかわらず、実現可能な避難計画、これを実行しうる態勢が整えられているにはほど遠い状態であり、この区域内に居住する原告には人格権侵害の具体的な危険があると判断したものです。このような判断の背景には、裁判所が具体的な事故の危険性があるという判断が前提となっており、看過しがたい過誤欠落とまでは認められませんでしたが、地震、耐震設計、老朽化、経理的な基礎の欠落、火山、津波、火災、重大事故対策などの多くの論点について原告側が展開した論点についての立証も、結果としては活きていると考えます。福島原発事故から10年を経過し、国民の過半数が脱原発を望んでいる状況の下で、また、多くの地域住民の再稼働を止めてほしいという切なる願いにこたえたものであり、画期的な司法判断であるといえます。このような判断を下した勇気ある裁判官の皆さんに、心からの敬意を表します。」
 日弁連も「東海第二原発差止訴訟水戸地裁判決に対する会長声明」で、「当連合会は、原子力規制委員会に対し、本判決を受けて避難計画等を規制基準に盛り込むことを求めるとともに、政府に対して、従来の原子力に依存するエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、これまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである」としている。
 しかし、日本原電は、判決をうけいれず、「条件反射的に控訴」した。
 東海第二原発運転差止訴訟原告団世話人会は、3月31日、「原告団見解(控訴にあたって)」を発表し、「水戸地裁判決が人格権を侵害する具体的危険性があるとした原告住民は、今度は日本原電から控訴されて『被控訴人』という立場に置かれてしまいました。そうならざるを得ないならば、水戸地裁判決の意味を確かなものにし、さらに拡張することで確定判決を得るために、請求を認められなかった原告も控訴し、被控訴人原告らとひとつになって控訴審に臨むことといたしました」と、新たな闘いの出発をアピールした。


福島原発事故10周年さようなら原発首都圏集会

        
 原発推進政策を必ずストップさせるぞ

 2011年3月11日を決して忘れない。あの悲惨な東日本大震災による福島第一原発事故から10年目を迎えた。いまも多くの人が故郷をおわれ避難生活を余儀なくされたままだ。事故の収束には途方もない時間がかかる。政府、東電の甘い見通しとウソは現実によって完全に破られた。
 だが菅政権は、依然として、原発推進策を続けている。そして、なんと大量の核汚染水を海に放出しようとしているのである。
 脱原発社会を実現するためにいっそう奮闘していこう。

 3月27日、日比谷公園野外音楽堂で「福島原発事故10周年 さようなら原発首都圏集会」が開かれた。新型コロナウイルス感染爆発状況で、会場は1300人で収容人員に達し、入りきれないで会場外にも200人が参集した。

 はじめにルポライターの鎌田慧さんが主催者あいさつ。福島原発事故から10年たったが、政府はいまだに2030年に電力の20%を原発でやるといっているが、とんでもないことだ。事故の全く反省がないのだ。福島の人たちは、故郷、家族、畑、海を捨てて、ちりぢりに逃げまどわらずを得ないという苦痛、その中で多くの人の命を落とした。こうしたことを起こした政府はわたしたちはまだ倒せないでいる。それがとても残念だ。私たちの運動は原発をなくすという思いで10年前に始まった。様々な地域、様々は人とともに、脱原発・さよなら原発の声を広げてきた。1000万を目指す署名運動は、先日881万となり、追加の部分を国会に提出してきた。まだまだ署名が集まってきている。こうした運動の中で8割の人が原発反対といっている。だが、原発で甘い汁を吸い続けたいという不道徳な連中が原発を推進している。それが国会に力をもっている。これは民主主義ではない。この3月18日、水戸地裁は、東海第二原発の運転禁止という判決が出た。これからもこうした判決をだす裁判官の英断に期待したい。現在、汚染水の放出をやめさせるなどますすます脱原発の力を大きくしていきたい。六ヶ所再処理工場の19年も運転していない。このように原子力はすべての面で行き詰っている。私たちは、核兵器禁止条約と同じような核発電所禁止条約を世界の人たちと作り広げていきたい。さらに多くの人びとに呼びかけて頑張っていこう。

 つづいて澤地久枝さんが発言。去年で90歳になったが、いのちあるかぎり若い人に反原発を訴えていきたい。日本は核兵器禁止条約にも加わっていない国だ。だが、原発をやめることは政府が決めれば簡単にできる。原発事故は福島の人びとから暮らしを奪った。安倍や菅に憎しみを持つ。ここにあつまった一人が二人に、二人が四人にと反原発の声を広げていこう。

 福島原発刑事訴訟支援団の千脇美和事務局長が報告。福島からの聖火リレー開始が強行されたが、福島はオリンピックどころではない。先日起きた東北地方の地震では1号機、3号機の格納容器の水位が下がったので、注水を増やしたと報道があった。このように地震や台風のたびに原発事故を心配することになる。こんなことがいつまで続くのか。いまも事故の実態がわからないままに、政府は各地で原発を再稼働させようとしている。事故後の安全管理も十分なものではない。日本では放射性物質の総量規制の法律がない。性能が不十分な施設で薄めれば汚染水の海洋放出が可能とされ、いま全国の漁連や海外からの声も無視して強行されようとしている。そのうえ事故後の規制値や基準値は恣意的に変更されている。原発推進のため嘘をついたり金をバラまいたりしていることが続いている。福島原発事故刑事訴訟は、2019年9月に元経営陣だれの責任もとらない全員無罪という不当な判決が出た。しかし決してあきらめない。控訴審など各地での裁判が闘われていて、絶対に事故の責任を明らかにしていきたい。

 原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)会長の吉原毅さん(城南信用金庫顧問)の発言。原発を自然エネルギーに転換することは雇用にも経済にもプラスだ。原発反対は多くの人の声になっている。市民運動の人も保守の人も原発反対、自然エネルギー推進で大きく力を合わせていけば、かならず原発を止めることが出来る。3月11日には、細川護熙、村山富市、小泉純一郎、鳩山由紀夫、菅直人の元首相5人の脱原発宣言がだされている。

 集会に参加した菅直人元首相は、原発を止めるのは国会で過半数の議員が脱原発を決めればいい、選挙でそうした議員を増やすことが必要だ、とのべた。

 東海第二原発運転差止裁判原告団の大石光伸共同代表の報告。3月18日、水戸地裁は、策定が義務づけられている日本原子力発電東海第二原発の周辺30キロ圏の自治体の避難計画について、「整えられているというにはほど遠い」として運転の差し止めを命じる画期的な判決を出した。今後、この判決を生かして、廃炉を実現していきたい。

 集会を終わって、パレードに出発した。


せんりゅう

  いつの日か超高層は廃墟風景

        原発がわが人生を洗い去り

  謝罪の弁内心本心顔に出て

        消しゴムで消去するよう解任辞職

  傀儡の糸(意図)見えみえでスガ訪米

        コロナ河で座礁のおそれ五輪船

  マイbニかなんとか監視

        コロナ禍も行政禍もありて貧困禍
               
                             ゝ 史
  2021年4月


複眼単眼

          フェイクを駆使する安倍前首相の論法


 病気という事で政権を投げ出した安倍晋三前首相の改憲発言が、久しぶりに飛び出した。
 安倍晋三前首相は3月27日、新潟市内で開かれた自民党新潟県連のセミナーで講演し、「自衛隊は憲法違反という立て看板が立てられている。その状況に終止符を打つことが私たちの責任だ」と述べ、「早期の憲法改正が必要」との考えを改めて強調した。
 この場で安倍氏は第2次安倍政権発足以降の約8年間について触れ、「憲法改正を達成することはできなかった。残念な思いだ」と語って、つづけて「今なお自衛隊の多くは命がけのスクランブル(緊急発進)のために飛んでいる」。このような命がけで国を守るために活動している自衛隊を憲法9条に明記しなくてはならないと強調した。
 さらに次期衆院選について言及し「菅政権は一生懸命がんばっている。なんとしても勝ち抜いて更なる安定政権を確立して、策を力強く前に進め、国益を守り抜かなければならない」と安倍絵後継改憲政権の維持を訴えた。
 安倍氏が講演した新潟県の航空自衛隊新潟分屯基地周辺に「自衛隊は憲法違反」という立て看板が立てられているかどうか、筆者は寡聞にして知らない(安倍氏がいうような立看は新潟にあるかもしれないし、ないかもしれない。あったところで悪いわけではないと思う)。
 しかし、おそらく、そういう看板がいま掲げられていることはないだろう。筆者は「自衛隊は憲法9条に反する」と考えているが、いま、運動のスローガンとしてこの課題を看板にして掲げようとは思わない。現在、この問題で争点として掲げるべきは「市民連合」が昨年9月に野党に提起した要望書で、冒頭に述べた「立憲主義の再構築」を謳で「安倍政権が進めた安保法制、特定秘密保護法、共謀罪などの、違憲の疑いの濃い法律を廃止する」という点だと考える。「集団的自衛権の行使」に反対することだ。
 この安倍発言で思い出すのは、安倍氏が2020年3月22日、防衛大学校の卒業式の訓示で、「(護衛艦『たかなみ』が中東に向けて出港した際の市民の抗議行動で)、『自衛隊は憲法違反』とプラカードが掲げられていた」と市民運動を非難したことだ。いのちがけで中東に出かけようとしている自衛隊員を憲法違反と罵倒したと言いたかったのだろう。
 実はこれは安倍氏によるフェイクだった。市民が掲げていたのは「自衛隊の中東派兵は憲法違反」というものだ。
 同様に、2019年2月13日の衆議院予算委員会で、安倍首相(当時)が改憲の理由としてたびたび使う「自衛隊員の息子が学校から戻って『お父さんは憲法違反なの』と涙を浮かべながら言った」という話を首相が聞いて、胸が張り裂けるような思いがしたという発言が問題になった。
実はこの浪花節のようなエピソードも安倍氏が聞いたというのは嘘で、ずいぶん前の何かの雑誌に書いてあった記事の刷り込みに過ぎず、結局、安倍氏は国会で発言の根拠を示すことができなかった。この記事すらも伝聞の紹介だった。
 こういうフェイクを乱用する論法は安倍晋三氏の特徴だ。(T)